バトルスピリッツ コラボストーリーズ   作:バナナ 

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20コア「三王VSカラーリーダー!!凄まじきガンダム!!」

アスラ達の旅は続く。

 

ダスト・トラッシュ、不滅のダストが巻き起こしたユキカイ町での一件も熱りが冷め、ようやくアスラ達は4番目の町を目指して歩みを進めていた。

 

今はその道中にある小さな村に身を置いている。その村の名前は「トッチュ村」と呼ばれ、ユキカイ町と4番目のカラーリーダーの待つ町である「ライライ町」の間にあり、旅人達の疲れを癒す憩いの場のような村であった。

 

 

「お、おぉ……これが噂で聞いたプリン……!!」

「むえ〜!」⬅︎うまそう!

 

 

そんな小さな村の小さな喫茶店。そのオープンフロアにて、村の風景を楽しみながら、アスラとエール、ムエは食事をしようとしていた。

 

アスラが注文したのは何の変哲もない普通のプリンだ。彼は田舎者ゆえ、プリンという極上のオヤツを見た事がなかった………

 

 

「………アンタホント田舎者なのね、プリンも知らないなんて」

 

 

エールが砂糖全開のコーヒーを口に濯ぎながらアスラに言った。なんだか偉そうだ。

 

 

「そりゃもう……オレとロンが育った村は国の隅っこにあるスーミ村だからな〜……おぉ、歯応えねぇ……」

 

 

アスラはプリンの独特な食感を噛みしめながら答えた。

 

 

「てか、エールこそあんまりこう言うの知らないんじゃない??……オマエあの堅物兄さんの言いつけであんまり外出られなかったんだろ?」

 

 

今度はアスラがエールに訊いた。

 

そう、エールは実の兄であるエレン・オメガに『煌臨できないオマエはエックスの、オメガ家の恥だ』と称され、基本的な外出を禁じられていた。

 

もちろんエレンはそんな事微塵も思ってはおらず、エールを閉じ込めていた本当の理由は単なる過保護なだけなのだが、彼の素直になれない性格のせいで、エールが今年で16歳になる年になっても今だに勘違いされたままなのである。

 

 

「人を箱入り娘みたいに言わないでよね。週一くらいでテンドウかシイナ様が遊びに連れてってくれたわよ………あと、カナさんもね」

「!!」

 

 

エールがそこそこ外の世界を知る事ができたのは頂点王シイナとテンドウ兄妹のおかげと言っても過言ではなかった。故に、エールは彼らを実の兄と同等に慕っているのだった。

 

しかし、彼女の口から「カナ」の名前が出た瞬間、和んでいた場が一瞬にして凍りついた。アスラはトゥエンティのライダースピリットを奪取し続ける理由を思い出した。

 

 

「………カナさんの病気ってそんなに重かったのか?……アイツがあんな躍起になる程」

「えぇ、いつ危ない状況になるかもわからないんだって………でも知らなかった、まさかトゥエンティがカナさんの恋人だったなんて」

 

 

恋人であるカナのために、トゥエンティはライダースピリット使いを倒して回っていた。

 

エールはカナに恋人がいる事は常々聞かされていたが、まさかあのコラボダンジョンで初めて出会ったトゥエンティだとは思ってもいなかった。

 

 

「まっ……堅っ苦しい事は考えててもしょうがないや。テンドウさんに『バカは自分の夢だけを見てれば良い』って言われたんだよな。だから先ずは頂点王になる!!……でもってそれが終わってからトゥエンティを助ける!!……どうよ、我ながら良い作戦!!」

「ははっ!!……アンタらしいわね!!…流石バカの中のバカ、バカスラ」

「だから誰がバカスラだァァァー!!」

「むえ〜」⬅︎日向ぼっこ〜

 

 

アスラの大雑把な目標に、エールは思わず笑ってしまった。

 

不思議な事に、アスラのこう言う誓いや掲げられた目標は達成できる気がしてならない。彼ならいつか必ず頂点王になってトゥエンティやカナさんを救ってくれるとエールは感じた。

 

そしてムエはテーブルの上でお日様の光で日向ぼっこしていた。

 

 

「それじゃ、さっさと次の町に向かうわよ!!……別に次の町が娯楽の町だからって理由じゃないんだからね!!」

「おう!!絶対4番目の黄色のカラーカードもゲットしてやるぜ!!」

 

 

徐々に普段通りの状態に戻っていくアスラとエール。

 

その昂ったテンションを次の町まで歩き行く力に変えようと喫茶店を出ようとするが………

 

その瞬間だった。村人だか旅人だかの男性2人の声が耳の中に入ってきてしまったのは…………

 

 

「おい、聞いたか!?……このトッチュ村のコロシアムでカラーリーダーと三王がバトルするんだってよ!!」

「えっ…やべぇ……今すぐ向かおうぜ!!」

 

 

ー!!

 

 

この世界で最も栄誉ある職種とされるカラーリーダーと三王。何とその両名の各1名がこの村でバトルすると言う情報だった。

 

村人中の人々がそのコロシアムに向かっている事から、その情報の信憑性の高さが窺える。

 

 

「マジか!!……オレ達も行ってみようぜエール!!」

「言うと思った………ま、まぁ、アンタがそこまで言うなら一緒に行ってあげなくもないわ!!」

「えぇ!?…なんで偉そうなのぉ!?」

「フン……私はエックスよ?」

「………久し振りに聞いたぞその決まり文句」

「むえ〜!」⬅︎let's go!

 

 

この国の強者同士のバトルだ。アスラが食いつかないわけがない。

 

ムエもどうやらそのバトルが気になるようであり、アスラの頭の上に飛び乗りながらlet's goと言わんばかりに短い前脚を突き出した。

 

そのが2人と1匹は村人達を辿るように村のコロシアムへと足を運んだのだった…………

 

 

ー……

 

 

ここはトッチュコロシアム。オウドウ都やその周辺の大きな町などと比べると大したサイズではないものの、村人500人程は余裕で収まる。

 

その中の一角にアスラとエールはいた。

 

今は一眼見ようと集まった大勢の村人達や旅人達と共に噂の三王とカラーリーダーを待つだけだ。

 

 

「カラーリーダーは誰かはわかんねぇけど、三王側はテンドウさんじゃねぇかな?…昨日までずっと一緒だったし」

「うーーん。テンドウ、こういうところでバトルするのは性に合わなそうだけどね……かと言ってお兄様だとちょっと気まずいしなーー」

 

 

エールは実の兄、エレンに「二度と顔を見せるな」とまで言われた別れ際の事を思い出していた。

 

 

「じゃあ最後の1人、デジタルスピリットの三王かもな!!……楽しみだぜ!!」

 

 

アスラは元気よくそう言った。

 

三王とは、この世界においての世界三大スピリットである「ライダースピリット」「デジタルスピリット」「モビルスピリット」でわけられている。

 

テンドウならライダースピリット、

 

エレンならモビルスピリット、

 

当然ながらデジタルスピリットの使い手の三王もこの国に存在することになるのである…………

 

しかし………

 

 

「あぁ、それはないわ。今デジタルスピリットの三王はいないの…10年くらい前はお母様が三王だったけど死んじゃったし」

「!!」

 

 

エールは割と衝撃的な内容をサラリと口にした。

 

そう、エールの母である「エレナ・オメガ」こそ、この国の三王であったが、とある事件で死去。彼女に代わるデジタルスピリットが現れない事と、そもそもカラーリーダーを全員倒せない人物が多すぎることもあり、今現在、この国のデジタルスピリットの三王は空席なのである。

 

 

「……な、なんかごめんな」

「なんでアンタが謝るのよ……別にどうでもいいわ。アンタも親いないんでしょ」

 

 

嫌な事を思い出させてしまうような発言をしてしまった事を反省するアスラ。

 

エールとて、母がいない事は気にしてはいない。かれこれもう10年以上も経つのだ。母といた時間よりシイナやテンドウと居た時間の方が遥かに長い。

 

エールはとにかく今を大事に生きていたかったのだ。

 

 

そんな時だ。観客と化した大勢の村人や旅人達の声援と言う名の轟音が飛び交い始めたのは………

 

アスラとエールは遂にカラーリーダーと三王が来たのだと推理してスタジアムの中央へと首を向けた…………

 

そしてそこに居たのは…………

 

 

「まさかこのタイミングでアンタに下克上する事になるなんてな!!……三王、エレン・オメガ!!」

「黙れ元レア。エキシビジョンマッチとは言え容赦はしない。その身に余の強さを刻むが良い」

「あっ!!ヘラクレスさん!?」

 

 

その光景に思わず大きな声を上げるアスラ。

 

それもそのはず、目の前にいたのは予想していたエレン・オメガに加えて緑のカラーリーダー、ヘラクレスも居たのだから………

 

そんなヘラクレスとエレンもアスラの大声で彼らの存在に気づいて………

 

 

「お久し振りでェェェーす!!」

「うん?……誰やこのブサイクチビ」

「スーミ村のアスラっすよ!?……忘れたんすかァァァー!!…あんだけ良いバトルしたのに!!」

「ハッハッハッハッハ!!!…オレは男の顔は1日と覚えへんからな!!………おっ、エールちゃん久し振りぃ〜〜〜元気だった??……今日も可愛えぇね!!」

「………キモッ!!」

 

 

アスラは覚えていないが、エールの事はきっとりと覚えていたヘラクレス。目をハートにしてエールに言い寄るが、エールはそれを一言で一蹴して見せた。

 

 

「スーミ村のアスラに、エールか………」

「お、お兄様………」

「二度と顔を見せるなと告げたはずだ。何故こんなところにいる」

「す、すみません………ただカラーリーダーと三王のバトルが観てみたくて………」

「相変わらずいけすかねぇ兄貴だな」

 

 

実の妹であるエールと目が合うなり冷たい言動を取るエレン。その表情も冷酷の一言で表せる程だ。

 

しかし………

 

 

(なんでエールがここにいるんだァァァー!!!)

 

 

と、本当は内心で凄まじく焦っている。彼としては三王として単にカラーリーダーの実力を測るためのエキシビジョンマッチに来ただけだったのだ………

 

ただそれだけであったと言うのに偶然とも言える確率でエールと出会してしまった…………

 

 

(相変わらず可愛い……流石は余の妹、そして冷たい態度取ってすまない。お兄ちゃんは本当はオマエを愛しているのだ。許してくれ……………て言うかここにいるって事はあのドブネズミは白のカラーリーダーゴゴ・シラミネを突破したと言うのか!?……くっ……ますます腹が立つあのコモンめ……さっさと負けて諦めれば良いものを………そうすればエールはオウドウ都に帰って来てくれると言うのに………)

 

 

冷静な表情を他所に心の中で思考を張り巡らすエレン。本当にエールが大事であり、彼女の横にいるアスラが目障りでしょうがないようである。

 

 

 

「へーーー…エールちゃんの兄貴は三王のエレンやったんか、初耳や〜…………ハッ!!…つまりこのバトルで勝ったらワイとエールちゃんの交際を認めてもらえる!?」

「……な訳ないでしょ」

 

 

エレンとのバトルに勝利すればエールと交際できると錯覚するヘラクレス。エールは冷静な口調でそれを全力で否定するが…………

 

 

(な、なんどと………この軟派な男、余のエールを狙っているのか!?…………ゆ、許さん!!)

 

 

エレンはエールを狙うヘラクレスに対して密かに怒りの感情を募らせる。

 

 

「さぁお義兄様!!……ワイとエールちゃんの交際を賭けてバトルや!!…まけへんでぇ!!」

「フン……軟派な男め、余の強さを軽んじた事、後悔するが良い!!(エールのために貴様はこの場で余がぶち殺す!!)」

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

アスラとエール、100人近い観客達が見守る中、緑のカラーリーダー、ヘラクレスと三王エレンのバトルスピリッツがコールと共に幕を開けた………

 

………先行は三王、エレン・オメガだ

 

 

[ターン01]エレン

 

 

「メインステップ……先ずは母艦ネクサス、クサナギをLV2で配置する」

 

 

ー【クサナギ】LV2(1S)

 

 

モビルスピリットのデッキにおいては必須レベルの強力カード、母艦ネクサスを早速背後に呼び寄せるエレン。宙に浮かぶ巨大な戦艦がヘラクレスに少なくないプレッシャーをかける。

 

 

「ターンエンドだ」

手札:4

場:【クサナギ】LV2(1S)

バースト:【無】

 

 

[ターン02]ヘラクレス

 

 

「さぁメインステップや!!…ワイもネクサスカード、大樹茂る天守閣をLV2で配置!!」

 

 

ー【大樹茂る天守閣】LV2(2)

 

 

ヘラクレスが初手で配置したネクサスカードは聳え立つ神城の天守閣を貫く大樹。

 

 

「バーストをセット………ほな、ターンエンドや……どっからでもかかって来いや」

手札:3

場:【大樹茂る天守閣】LV2(2S)

バースト:【有】

 

 

さらにバーストを伏せてそのターンを終えるヘラクレス。彼の表情は非常に自信に満ち溢れている。

 

 

[ターン03]エレン

 

 

「メインステップ……余はこのスピリット、ストライクガンダムを召喚する……その際、クサナギはLV2効果で白のシンボルが3つとなり、全ての軽減を満たしての召喚となる」

 

 

【ストライクガンダム】LV2(2)BP6000

 

 

エレンの場に現れたのは彼を象徴するスピリットの1体、モビルスピリットストライクガンダム。白色をベースとしたそのボディの光沢が今日も光り輝く。

 

 

「召喚時効果、カードを2枚オープンし、その中の対象カードを手札に加える…………」

「………ストライクガンダムってあんな効果だったか?」

 

 

龍騎に似たような召喚時効果を持つストライクガンダム。エレンは新たにカードを手札に加える。しかし、以前ストライクガンダムを見たアスラは僅かながら違和感を感じていて………

 

 

「相手の効果によって手札が増えた事によりバースト発動!!……千枚手裏剣!!」

「!!」

 

ヘラクレスはエレンの手札が増えたタイミングを逃さない。すかさずバーストを反転させた。

 

 

「効果によりリザーブにコア2つを追加し、ストライクガンダムを疲労させるで!!」

 

 

およそ一千枚程の手裏剣がストライクガンダムに襲い掛かる。ストライクガンダムはそれに被弾してしまい、疲労する………

 

かと思われたが………

 

 

「甘い!!……ストライクガンダムの効果【PS装甲:4以下】!!……コスト4の千枚手裏剣の効果は受けない!!」

「!!」

 

 

千枚手裏剣は全く通じてはおらず、ストライクガンダムはそれら全てを強固たる装甲で弾き飛ばしていた。

 

 

「どうした元レア、その程度でカラーリーダーは務まらんぞ!!…アタックステップ!!……ストライクガンダムで攻撃する!!」

 

 

強気に攻めに出るエレン。ストライクガンダムが拳を固めて戦闘態勢に入るが…………

 

 

「この程度なわけないやろ!!……配置していたネクサス、大樹茂る天守閣の効果発揮!!……デッキの上から1枚をオープン、それが殻人スピリットならノーコストで召喚できる!!」

「!」

「カードをオープン!!……効果は成功、成熟期スピリット、カブテリモンや!!…よってLV2でノーコスト召喚!!」

 

 

ー【カブテリモン】LV2(3)BP8000

 

 

大樹茂る天守閣の効果がここで起動。その大樹の中から甲虫型の成熟期スピリット、カブテリモンが飛び出してきた。

 

 

「すげぇ!!…相手の攻撃に反応してスピリットを召喚した!!」

「気持ち悪いヤツだけど流石カラーリーダーではあるわね………」

 

 

三王のエレンが相手なのもあってヘラクレスが勝つと思っている人物は相当少ないはずではあった。しかし、その見事な豪運は流石カラーリーダーであると認めざるを得なくて………

 

 

「そのアタックはカブテリモンでブロック!!……返り討ちや!!」

 

 

ストライクガンダムに迫るカブテリモン。強靭な4本の腕でストライクガンダムを鷲掴みにして見せる。そのまま装甲事粉々に粉砕する気でいるのだろう………

 

 

「返り討ち?……それは余のセリフだ!!」

「っ!?」

 

 

エレンの威圧に思わず怯むヘラクレス。そしてエレンはストライクガンダムに眠るある効果を発揮させる………

 

 

「相手のスピリットがアタック、ブロックした事により、ストライクガンダムの『零転醒』を発揮!!……1コストを支払い、さらなる姿へ昇華させる!!」

「て、転醒やと!?」

 

 

ストライクガンダムのカードを反転させるエレン。その裏側は別のカードの絵柄や効果テキストが光と共に出現していた。

 

フィールドではストライクガンダムがカブテリモンを蹴り飛ばし、その間に赤くて大きな盾とビームガンする。

 

 

「転醒により、ストライクガンダムの姿はエールストライクガンダムに変わる」

 

 

ー【エールストライクガンダム】LV1(1)BP5000

 

 

「な、なんだなんだ!?……カードの裏側がスピリットカードに変化したのか!?」

「あれは転醒……一部のスピリットが持つ稀有な効果……エレンお兄様のストライクガンダムはその稀有な存在の1つなのよ」

 

 

転醒するストライクガンダムに驚愕するアスラや周囲の人々の中、エールがそれを簡潔に説明した。

 

転醒………

 

それは煌臨とチェンジに並ぶスピリットの強化方法。特定の条件を満たすと裏側に新たなカードが現れ、反転すると共に状況を一変させる強力なカードだ。

 

 

「エールストライクガンダムの転醒時効果、ボイドからコア1つを追加し、このターンの間エールストライクガンダムのBPを5000アップ!!」

 

 

ー【エールストライクガンダム】LV1➡︎2(1➡︎2)BP5000➡︎12000

 

 

「なんやと!?……マジックカードも無しにカブテリモンのBPを上回ったやと!?」

 

 

エールストライクガンダムの効果でその出力が上昇。ビームガンから赤色のビームを放ち、カブテリモンを撃ち抜く。カブテリモンは堪らず爆散してしまった………

 

 

「ターンエンド………カラーリーダー、三王たるもの、如何なる状況であっても冷静に対処しなければならない。その心情を刻むがよい」

手札:5

場:【エールストライクガンダム】LV2

【クサナギ】LV2

バースト:【無】

 

 

「はんっ!!……どこまでも上から目線かいな!!…これだからイケメンで高身分のヤツはムカつくんや!!……見とけよ!!…このバトル、最後に立つんはこのワイや!!」

 

 

エレンの転醒がヘラクレスのバトスピ魂に火を灯す。

 

彼はさらにやる気に満ちた表情を見せながらそのターンシークエンスを進行させていった………

 

 

[ターン04]ヘラクレス

 

 

「メインステップ!!……テントモンを2体連続召喚や!!…そして効果でコアブースト!!」

 

 

ー【テントモン】LV1(2)BP2000

ー【テントモン】LV1(2)BP2000

 

 

てんとう虫型の成長期スピリット、テントモンを2体呼び出したヘラクレス。その効果で総合コア数も増加する。

 

 

「さらに増えたコアを使い、もう1枚ネクサスカード、アルバ大草原を配置や!!」

 

 

ー【アルバ大草原】LV1

 

 

ヘラクレスの足元を中心に緑の大草原が優雅に生い茂って行く。

 

 

「大樹茂る天守閣のLVを2に戻し、アタックステップ!!…2体のテントモンでアタックやで!!」

「ライフで受ける………」

 

 

〈ライフ5➡︎4➡︎3〉エレン

 

 

2体のテントモンが体当たりしてエレンのライフを粉砕するが、エレンは痛みなどなかったかのように平然と立ち振る舞っていた。

 

 

「ターンエンド!!……さぁ来いやエックスで三王の高スペック野郎!!……このヘラクレス様の才能をみせたるで!!」

手札:1

場:【テントモン】LV1

【テントモン】LV1

【大樹茂る天守閣】LV2

【アルバ大草原】LV1

バースト:【無】

 

 

「カラーリーダーに抜擢されたとは言え、貴様は所詮レア。余との格の違いをまだ理解できていないのか?」

「身分は関係あらへん!!……ワイはそこのブサイクチビとそのライバルからそれを学んだんや」

 

 

エレンはそう言われてアスラの方を振り向く。

 

アスラのバトスピに対する熱意、頂点王を目指す情熱はロンをはじめ、様々な人々に伝播して行った。このヘラクレスもまたそれに当てられたというべきであろう。

 

しかし、エレンは叱責するようにすぐさま「愚か者め」と口ずさむと、己のターンを進行して行った。

 

 

[ターン05]エレン

 

 

「メインステップ………余はこのスピリット、フリーダムガンダムをLV3で召喚!!」

 

 

ー【フリーダムガンダム】LV3(4)BP13000

 

 

ストライクガンダムよりも一回り大きなモビルスピリットが青き鉄の翼を羽ばたかせ舞降りる。その名はモビルスピリット、フリーダムガンダム。

 

三王エレンのエースカードだ。

 

 

「召喚時効果、貴様のテントモン2体をデッキの下に戻す!!」

「!!」

 

 

現れるなりビームサーベルを手に持ち、それを振るって突風を発生させるフリーダムガンダム。テントモン達はそれに抵抗もできず、粒子と化してデッキの下に強制送還されてしまった。

 

 

「アタックステップ!!……行くがいい、エールストライクガンダム!!…その効果でコアを増やし、BPを5000上昇!!」

 

 

ー【エールストライクガンダム】(1➡︎2)BP5000➡︎12000

 

 

エールストライクガンダムが背についているストライカーパックと呼ばれる飛行物体を起動させて低空飛行で宙を翔ける。

 

狙うは当然今だに1つも破壊されていないヘラクレスのライフだが………

 

 

「大樹茂る天守閣の効果!!……カード1枚オープンし、殻人スピリットならノーコスト召喚!!」

「またその効果か、運頼みで超えられる程余は甘くはない!!」

「うっさいわボケ!!……見とけよ、ここからがワイのバトルスピリッツやァァァー!!」

 

 

気合を入れながらカードをドローするヘラクレス………

 

そしてそのめくられた運命の1枚は…………

 

彼のデッキの強力なデジタルスピリット、アトラーカブテリモンであり………

 

 

「よし!!……効果成功や!!……来たれ、完全体、アトラーカブテリモンッ!!」

 

 

ー【アトラーカブテリモン】LV2(3)BP13000

 

 

ヘラクレスが圧倒的な豪運で呼び寄せたのは赤き甲虫型のデジタルスピリット、アトラーカブテリモン。巨大な体躯から放たれる奇声がその場の者達全ての耳を通過した。

 

 

「召喚時効果!!…相手スピリット2体を疲労させるか、疲労している2体のスピリットを手札に戻す!!」

「フリーダムガンダムには【PS装甲:コスト7以下】により、効果は効かぬ!!」

「んなもん百も承知や!!…コスト4以下のPS装甲しかないエールストライクガンダムを手札に戻させてもらうで!!」

「っ!!」

 

 

アトラーカブテリモンは登場するなり、その強靭な一角から赤き稲妻を解き放つ。それは瞬く間に宙を翔けるエールストライクガンダムにヒット。エールストライクガンダムは粒子と化し、エレンの手札に帰還してしまった。

 

 

「さぁどないするエックスの三王様よ!!…そのモビルスピリットで相討ち覚悟の特攻でもかますか!?」

「…………ターンエンドだ」

手札:5

場:【フリーダムガンダム】LV3

【クサナギ】LV2

バースト:【無】

 

 

フリーダムガンダムを失うわけにもいかないため、ここはあっさりターンを終了させる三王エレン。ヘラクレスのカードバトラーとしての実力が彼にターンを終了させたとも例えられる。

 

ヘラクレスはこの機を逃すまいと一気に畳み掛けるべく、そのターンシークエンスを進行させていく………

 

 

[ターン06]ヘラクレス

 

 

「メインステップ!!……全てのカードのLVを最大にする!!……アルバ大草原はLV2の時、殻人スピリットを手札デッキに戻す効果から守る!!…これでお得意のバウンス効果は効かんで!!」

 

 

白属性しかいないエレンのモビルスピリットデッキにおいて、アルバ大草原の効果はかなり刺さる。このカードの存在だけでヘラクレスはこのターンを強気に攻める事が可能になった………

 

 

「アタックステップ!!……行けや、アトラーカブテリモン!!」

「アタック時効果はフリーダムガンダムには通じんぞ!!」

「んなもんわかるわボケェ!!……その程度の壁、ワイのデッキなら余裕で超えられるわ!!」

 

 

ヘラクレスはエレンにそう叫びながら、手札にある1枚のカードを引き抜いて見せた………

 

 

「フラッシュ煌臨発揮!!…対象はアトラーカブテリモン!!」

「!!」

 

 

その正体は煌臨のカード。

 

デジタルスピリットで煌臨と言えば、あのカードしかない………

 

 

「究極進化!!……来たれ、最強のカブテリモン……究極体、ヘラクルカブテリモンッッ!!」

 

 

 

ー【ヘラクルカブテリモン】LV2(6)BP18000

 

 

 

アトラーカブテリモンを中心に吹き荒れる竜巻。

 

その中で体をさらに肥大化させ、甲殻の色も輝かしい黄金に変わる。やがてその竜巻を気合だけで弾き飛ばしたかと思えば、そこには究極体、最強のカブテリモンの称号を持つヘラクルカブテリモンが存在していた…………

 

 

「うおぉぉぉお!!メチャクチャスゲェ!!」

「カラー戦の時にはなかったわよねこんなカード………これがヘラクレスの本気!?」

「せや!!これがワイのエースカードにして最強の切り札!!……ヘラクルカブテリモンや!!」

 

 

その存在に驚愕するアスラ、エール。そして周囲の観客達。そしてヘラクレスは煌臨した直後のヘラクルカブテリモンの効果を起動させていく………

 

 

「ヘラクルカブテリモンの煌臨時効果!!……煌臨元となったアトラーカブテリモンを手札に戻す事で、コアを3つこのスピリットに追加や!!」

 

 

アトラーカブテリモンのカードがヘラクレスの手札に舞い戻り、ヘラクルカブテリモンのカード上にコアが3つ追加された。

 

これだけでも十分に強力な効果であると言えるが、まだまだこんなモノではない。ヘラクレスはヘラクルカブテリモンのさらなる効果を発揮させる………

 

 

「ヘラクルカブテリモンの効果!!…このスピリットのコア3つを支払い、相手のスピリット1体を疲労させ、ヘラクル自身を回復させる!!」

 

 

ー【ヘラクルカブテリモン】(疲労➡︎回復)

 

 

 

「っ!!」

 

 

ー【フリーダムガンダム】(回復➡︎疲労)

 

 

コストの支払いに伴い、雄叫びを上げるヘラクルカブテリモン。その瞬間に突風が発生、その突風により、フリーダムガンダムは膝をついてしまうが、逆にヘラクルカブテリモンは回復状態となって見せた。

 

 

「ヘラクルカブテリモンのコストは8!!……もうPS装甲は通じんで!!……アタックは継続や!!」

「ライフだ」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉エレン

 

 

この状況でまだ冷静さを欠かないエレン・オメガ。ヘラクルカブテリモンの攻撃をライフで受ける宣言を堂々と告げる。

 

ヘラクルカブテリモンはその極太の腕で彼のライフを叩きつけ、それ1つを粉々に粉砕した。

 

 

「まだや!!……ヘラクルカブテリモンで再アタック!!……フラッシュ効果で3コストを支払い回復や!!」

 

 

ー【ヘラクルカブテリモン】(疲労➡︎回復)

 

 

再びエレンに目を向けるヘラクルカブテリモン。その効果で今一度回復して見せる。

 

 

「エレンお兄様のライフはあと2つ………ヘラクルカブテリモンのアタックが全て通れば負ける!?」

 

 

気負うようにエールがそう呟いた。エレンは彼女にとって唯一の肉親という事もあってか、彼の負ける瞬間を見たくはないという思いがその言葉には込められていて………

 

しかし、エレンもまた内心ではエールの前で負ける事は許されないと考えているため、手札にある1枚のカウンターカードを引き抜いて見せた………

 

 

「フラッシュマジック、リミテッドバリア!!……このターン、コスト4以上のアタックでは余のライフは減少しない」

「なに!?」

「さらにコストの支払いにソウルコアを支払った事により、貴様のネクサスカード1枚を手札に戻す!!……余はこの効果で大樹茂る天守閣を手札に戻す!!」

「ぐっ!?」

「そのアタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ2➡︎2〉エレン

 

 

大樹茂る天守閣が手札に戻された挙句、鉄壁の防御を張られたヘラクレス。ヘラクルカブテリモンがいくら彼のライフを砕こうとしてもそれは傷一つ付かない。

 

 

「………どうした?……その程度、挑戦者には通じても、三王たるこの余には敵わんぞ……」

「ぐっ……くそ、エンドや」

手札:2

場:【ヘラクルカブテリモン】LV1

【アルバ大草原】LV2

バースト:【無】

 

 

結果的にヘラクルカブテリモンをブロッカーとして残し、そのターンをエンドとしたヘラクレス。

 

だが、彼の場には手札デッキに戻す効果を無力化するネクサス、アルバ大草原がある上、まだライフは全開の5。

 

全力の攻撃を仕掛けたとは言え、まだ余裕があった…………

 

しかし…………

 

 

「興醒めだヘラクレス………貴様とのバトルに付き合うのはここまでだ」

「なんやと!?」

 

 

まるで次のターンで勝利すると言わんばかりに宣言したエレン。

 

いくら最強の三王と言ってもそれは無理があると、その場の誰もが考えた。だが次のターン、その常識は覆る…………

 

 

[ターン07]エレン

 

 

「メインステップ……先ずはそのネクサスから消す!!…クサナギのLVを2に戻し、パーフェクトストライクガンダムをフル軽減で召喚する!!」

「!!」

 

 

ー【パーフェクトストライクガンダム】LV2(2S)BP8000

 

 

エレンの場に現れたのはまたしてもストライクガンダム。

 

しかし、その装備は剣やランチャー、ビームガンまでをも装備して見せたまさに完璧な装備を施したストライクガンダムである。

 

 

「召喚時効果!!……貴様のネクサスカード1つをデッキの下に戻す!!……消え去れ、アルバ大草原!!」

「!!」

 

 

パーフェクトストライクガンダムは手に持つ剣を横一閃に振い、斬撃を飛ばす。それはヘラクレスのアルバ大草原を瞬く間に切り裂いて見せた。

 

これでヘラクルカブテリモンに与えられていた手札デッキに戻す効果の耐性は消滅。エレンはすかさずアタックステップへと移行し………

 

 

「アタックステップ!!………フリーダムガンダムで攻撃する」

 

 

フリーダムガンダムで攻撃を仕掛けるエレン。だが、誰が見てもまだこのターンで勝てる程の状況は確立されていないのがわかる。

 

しかし、エレンはその考えを覆してしまうようなとんでもない一手を手札から引き抜いて…………

 

 

「フラッシュチェンジ………フリーダムガンダム・ハイマットフルバーストを発揮!!……対象はフリーダムガンダム!!」

「っ!?……モビルスピリットがチェンジ!?」

「貴様の物差しでバトルを測るな!!」

 

 

その刹那。フリーダムガンダムは内包する武装全てを解放、強力な機関銃をいくつも展開して見せる………

 

本来、チェンジの効果はライダースピリットの十八番。しかし、ごく一部のデッキでも稀にその効果を発揮できるモノもある。それがこのエレンのストライクフリーダムデッキであり…………

 

 

「この効果により、合計コスト40までスピリットを手札に戻す!!……消えろヘラクルカブテリモン!!」

「40までやと!?」

 

 

全武装から一斉射撃を行うフリーダムガンダム。ヘラクルカブテリモンはなすすべなくそれに撃ち抜かれ、粒子も化して手札に帰還してしまった。

 

 

「そして回復状態で入れ替える………バトルは継続!!」

 

 

ー【フリーダムガンダム[ハイマットフルバースト]】LV3(4)BP17000

 

 

全武装一斉射撃を今度はヘラクレス本人に向けるフリーダムガンダム。もちろん効果が手札に戻す効果のみなわけがなく…………

 

 

「ハイマットフルバーストの効果!!……このターンの間、白のシンボル1つを追加する!!」

 

ー!!

 

「よってダブルシンボルとなり、一度のアタックで貴様のライフ2つをいただく!!………食らうがいい!!」

「うぉぉぉおっ!!?」

 

 

〈ライフ5➡︎3〉ヘラクレス

 

 

自力でダブルシンボルとなったハイマットフルバーストの一斉射撃がヘラクレスを飲み込む。そのライフが一気に2つ砕ける………

 

 

「まだだ!!……二発目ェェェー!!!」

「………ぐ、ぐぉぉぉぉぉっ!?!」

 

 

〈ライフ3➡︎1〉ヘラクレス

 

 

まだまだ攻撃は続く。ヘラクルカブテリモンに対する一撃含め、三発目の一斉射撃がヘラクレスのライフをさらに撃ち砕く。

 

 

「な、なんや……このデタラメな強さ………これが三王エレン……」

 

 

三王エレンのあまりの強さに戦慄するヘラクレス。今まさにカラーリーダーとして、三王とカラーリーダーの圧倒的な力の差を認識していた………

 

そして………

 

 

「これで終いだ……パーフェクトストライクガンダムでアタック………!!」

「ッ………はは、お見事、ワイの負けや……!!」

 

 

〈ライフ1➡︎0〉ヘラクレス

 

 

パーフェクトストライクガンダムのビームガンから放たれる赤いビームが、お手上げだと言わんばかりに掌を上げたヘラクレスの最後のライフを無慈悲にも撃ち貫いて見せた………

 

ヘラクレスのBパッドから彼の敗北を告げるかのように「ピー…」と無機質な機械音が流れる………

 

 

 

「これが余のモビルスピリット、余のガンダムッ!!」

 

 

エレンの言葉に合わせ、2体のモビルスピリットが勝ち誇るように腕を組む。

 

これにより、勝者は三王エレンだ。アスラとエールを除く周囲の人々はその圧倒的な強さを見せつけての勝利に轟音という名の歓喜を上げた。

 

 

「流石やわ!!……でも良いバトルやったさかい。またやろな!!」

「フン……元レアと馴れ合う気はない」

「なんで!?……せっかくこのワイが珍しく男と仲良うしようちゅうんに!!……最後くらい笑えや!!」

 

 

彼に握手を求めるヘラクレスだったが、エレンはそれを拒否。寧ろ背を向けてこの場からすぐさま立ち去ろうとする………

 

 

「余は多忙の身。相手してやっただけ光栄に思え」

「なにぃ!?……やっぱ腹立つわアンタ!!……今に見ておれ、必ずそのふんぞり返った態度ぶっ壊してやるからな!!」

 

 

エレンはこの場から立ち去るが、本当のところ、「エールと同じ空間に長居はできない」と考えた結果である。彼は最後に自分の妹であるエールを名残惜しそうに視界に入れながら、このスタジアムから去ってしまった。

 

 

「お兄様………」

「メッチャつえぇ………アレがオレの超えるべき相手……三王か………」

 

 

エールもそんなエレンを視線だけで見送った。アスラはこのバトルで実感した三王エレンの実力をその胸に刻んでいた。

 

バトルが終了したことにより、イベントは終了。周囲の旅人や村人がぞろぞろとこのトッチュスタジアムを離れて行った………

 

 

******

 

 

「うおぉ!!…負けたったァァァー!!……親愛なるエールちゃん、今こそ慰めのハグをォォォォー!!」

「やらないわよッ!!」

「ぐへぇ!!」

 

 

一段落してから、エールに飛びかかるヘラクレス。エールはそれを思いっきりグーで殴り返り討ちにして見せた。

 

 

「えぇやんけ一回くらい!!…ワイ結構頑張ったやん!!…お願い、この通り!!」

「フン…私はエックスよ、なんでアンタにそんな事しないといけないのよ」

 

 

どこまでも女好きな緑のカラーリーダーヘラクレス。エールに殴り飛ばされながらもまだまだ食い下がる。流石にここまで来ると逞しい………

 

 

「ヘラクレスさん凄かったっす!!……あのヘラクルカブテリモンもちょー強かったです!!」

「はぁっ……オマエの感想は聞いてないねん………」

「えぇぇぇぇ!?…テンション下がったァァァー!?」

 

 

逆にアスラが目をギラギラさせながらバトルの感想を言うと、男に褒められるのは嫌なのか、彼はテンションを下げてしまう。

 

 

「つーかブサイクチビ、ここまで来たっちゅー事はあの難関中の難関、ゴゴ・シラミネのおっさんを突破したんかいな?」

「ハイィィィ!!!…頑張りましたがまだまだです!!」

「ふーーーん…じゃあ次はライライ町の黄のカラーリーダーか………ワイ、アイツ苦手なんよな、男やし」

「えぇぇぇぇ!?…男ってだけで!?」

「もちろんそれだけやないで?……まっ、おうたらわかるわ、この上ないくらい面倒やから」

「アンタがそこまで言うなんてよっぽどなのね………」

 

 

話しているうちに内容が黄のカラーリーダーの話に逸れる。

 

ヘラクレス曰く、少々変わり者が多いこの国のカラーリーダー達の中でも、黄のカラーリーダーは特に変人であるらしく………

 

 

「……と、言うわけでどーやエールちゃん。この国随一の娯楽が集まるライライ町で一緒に洒落込まへん?」

「なんでそうなるのよ………イヤよ、て言うかアンタは仕事以外でオオカブ町を離れたらだめじゃない」

「なんのなんの!!…エールちゃんとデートするためならばたとえ火の中水の中!!……あっ、最近あそこでっかい遊園地ができたんや〜…一緒に行かへん?」

「いいからさっさと帰りなさい」

 

 

会話のワンクール事にエールをナンパし続けるヘラクレス。それに対してエールは終始ツンツンしている。

 

その様子を見てヘラクレスは何かに気がついたように「ハッ」と言葉を漏らすと………

 

 

「わ、わかったで、エールちゃんそこまでこのブサイクチビとデートしたいんやな??……ワイは邪魔者言うんかい」

「??…オレ?」

「っ!?!……ち、違うわよ!?…なんでこんなチビでバカで……し、しししかもコイツはコモンよ!?……私はこの国で1番身分が高いエックス!!…つ、釣り合うわけないじゃない!!」

「なんかよくわかんねぇけど、言われようがひでぇ!?」

 

 

ヘラクレスにそう言われて焦るに焦りまくるエール。

 

顔は真っ赤になって、滑舌も悪くなり、身体からは変な汗も流れて来た。実際アスラと一緒に遊園地に行きたいのは確かなのだが、素直じゃない性格故になんとか誤魔化そうとしているのがヘラクレスにはバレバレであり………

 

そんなエールの気持ちなどつゆ知らず、アスラは彼女の方に顔を向けると…………

 

 

「その遊園地??……ってのは知らねーけど、行けるならオマエと一緒に行きたいぞ!!……あっ、ついでにムエも」

「むえむえ〜」⬅︎行こ行こ〜

「ーーー……!!〜〜〜なっっっ…何言ってんのよこのバカスラァァァー!!!!!」

「ぶわぁぁぁぁぁー!!!」

 

 

今一番言われたい言葉を他でもないアスラに言ってもらったエールだったが、気恥ずかしさが頂点を極めた彼女は思いっきりアスラを殴り飛ばしてしまう。

 

ヘラクレスは地平線の先まで飛んで行ったアスラを見て、腹を抱えて大爆笑していた。

 

 

そんなこんなで、生まれながらにソウルコアが使えないコモンの少年アスラとエックスの名家オメガ家に生まれた少女エール……………あとついでに謎のオレンジ小動物ムエの2人と1匹の旅はまだまだ続く…………

 

 

 

 

 

 




《用語設定》
【トッチュ村】
ユキカイ町とライライ町の間にある小さな村。喫茶店とコロシアムがあるくらいで、他には特に無い。旅人達の憩いの場的な存在の村である。


******


最後までお読みくださり、ありがとうございました!!

なんとなんと、今回ブラストさん作の『バトルスピリッツ7Guilt』とのコラボ回を書いてもらいました!!
コラボ先↓
https://syosetu.org/novel/211455/

もちろんコラボ回だけでなく本編も面白いので、是非この機会に読んでみてください!!

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