バトルスピリッツ コラボストーリーズ   作:バナナ 

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23コア「戦慄、仮面ライダー王蛇」

ライライ町………

 

オウドウ都周辺にある広大な街の一つであり、黄色のカラーリーダーが住う場所。

 

華やかなパレード、優雅なテーマパークなど、兎に角娯楽に富んでいるこの街だが、それは飽くまで表面ではの話。裏路地、いわゆる裏面では、今日も無法者達がたむろしている。

 

だが、そんな裏路地を……ニヤニヤと薄笑いを浮かべる無法者達の前を堂々と素通りしようと歩みを進みていく人物が1人………

 

それはアスラの最高の友にして最大のライバル、黒髪の癖毛で、高身長なイケメン、ロンだ。

 

 

「おっと止まりな兄ちゃん……!」

 

 

悪趣味なドクロの首飾りをした無法者集団の1人の男性が、そんなロンの行手を阻んだ。

 

そしてこの後に想像できるパターンはほぼ一択………

 

 

「へっへっ……オマエ、ライダースピリット所持者のスーミのロンだろ?……オマエのライダースピリットを置いていきな。さもねぇと……どうなんのかわかってるよな〜?」

「………」

 

 

ライダースピリット狩りのつもりなのか、男のその言葉を歯切りに、無法者集団がゾロゾロと集まっていく。その数約10数名と言ったところか………

 

白のカラーリーダー、鉄壁の防御力でライフ5を維持し続けるゴゴ・シラミネを下した事によって、ロンやアスラは今ではそれなりに名前が知れ渡っている。特にロンは端正な顔付きや背の高さもあって、身分を問わずに主に女性からの人気が高い。

 

しかし今回はその人気の高さが仇となり、今現在こうしてライダースピリット狙いの無法者達に行手を阻まれているわけだが………

 

 

「………御託はいい。奪いたければ勝手に奪え……ただし、力づくでな」

 

 

ロンは無法者達にそう言い放ちながら自分のBパッドを展開した。

 

 

「この数を1人で相手しようってか!!……やっぱコモンのイキリ野郎って噂は本当なんだな!!」

 

 

無法者達もまたロンに合わせてBパッドを展開した。

 

………「力づく」と言えば己の肉体で殴り合うのが一般的に脳裏に浮かんでくるだろうが、この世界は違う。何度も言うように、バトルスピリッツこそが至高であり、バトルスピリッツの優劣こそが絶対なのだ。

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

そして、ロンのライダースピリットを力づくで奪うべく、彼と無法者達によるバトルスピリッツがコールと共に開始される………

 

しかし、このバトルの決着が着いたのは僅か数分だった。

 

無法者達が数で押し切るかと思えば、1人、また1人とロンに次々と倒されていき…………

 

 

「………う、ウソだろ………この数をたった1人で………」

「さっさとどいてもらおう。オレは早く5番目のカラーリーダーのいる紫の町に行かないといけないからな」

 

 

あっという間に残り1人にされていた。その残っていた人物は最初にロンの前に現れた者であり、彼こそがこの無法者集団のリーダー的存在だったのだが、やはりその程度のチンケな組織の頭ではロンには敵わなくて………

 

ロンは一刻も早く5番目の町に赴きたかった。理由は単純にこの町の黄色のカラーリーダーは倒したから。用済みなのだ。チンタラしていると、あのうるさい幼馴染みがやって来る。

 

それだけは避けたいロンはこうして裏路地と言う近道を通っていたのだった。

 

 

「仮面ライダーナイト………アタックだ!!」

「ヒィィィィイ……ッ!?」

 

 

ロンが自身の持つライダースピリット、ナイトにアタックの指示を送ると、完全に威勢のなくなった男は情けない声を上げてしまう。

 

そしてナイトは装備された黒槍を手に、その男の最後のライフを一刀両断にして見せて………

 

 

「そ、そんなバカな……ただのコモンにこんな力が………」

「………約束通り先を行かせてもらう」

 

 

酷く落ち込む無法者。

 

こう言う時は何かカッコいいセリフでも掛けて上げながらこの場を立ち去るべきなのだろうが、基本無口なロンがそんな事を言うわけもなく、というかどこの誰かも知らない相手にそんな言葉を掛けてあげるわけもなく、ただただ歩みを進めてこの場から立ち去ろうとするが…………

 

 

「おい、待ちな」

「!!」

 

 

無法者達とはまた別の男の声がロンの耳を通過する。その声はなぜだかはわからないが、妙な殺気を感じさせるものがあった。

 

ロンがその方へと首を向けると、そこには茶髪の大男がニタニタと不気味に笑いながらこちらを見つめていて………

 

 

「あ、アイツは……」

「こ……ここ、殺し屋……大蛇のオロチだ………」

「殺される………」

「逃げろ……逃げろォォォー!!!」

 

 

そのオロチと呼ばれる大男を目に移すなり血相を変え、一目散に逃げ去っていく無法者集団。無論悪い意味でだが、余程この人物が有名なのが伺える………

 

 

「何だオマエは。生憎だがオレには時間が無い。用があるならさっさとしてくれ」

 

 

ロンは不気味な殺気を常時放っているオロチに対しても臆する事なく強気な物言いで接する。オロチと言う人物そのものを知らない事もあるのだろうが、常人であれば卒倒してしまう程の空気の中で平然としているのは流石と言える。

 

 

「なぁに。オマエ強そうだからな。ちょっとこのオレと遊んで欲しいだけさ……無論、コレでな」

「………バトルか」

 

 

オロチはそう言いながら自分のBパッドを取り出した。

 

彼が要求しているのは間違いなくロンとのバトルスピリッツだ。売られたバトルは高値で買うのがこの世界のカードバトラー………ロンもそれに合わせて当然のようにBパッドを構える。

 

バトルしてくれると思い至ったオロチはその様子に再びニタニタと不気味に笑い出して………

 

 

「そうこなくちゃな……!!」

「さっきも言ったが、オレには時間が無い。チンタラしてたらあのバカが追いついて来るからな。さっさと終わらせてやる」

「へっへ……期待してるぜ〜」

 

 

常に闘争本能と殺気が剥き出しの大男。ロンとてこの大男が普通のバトラーとは掛け離れた存在かは一目でわかる。

 

しかし、『頂点王になる』と言う夢を掲げでいる以上、誰が相手であろうと挑まれたバトルからは避けられない。

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

そしてこのライライ町の裏路地の片隅にて、コールと共にスーミ村のロンと、謎の大男オロチのバトルスピリッツが幕を開ける………

 

 

先行はロン………

 

 

[ターン01]ロン

 

 

「メインステップ、オレはネクサスカード、ミラーワールドを配置」

 

 

ー【ミラーワールド】LV1

 

 

ナイトと龍騎の戦う世界、ミラーワールドが配置される。その影響で現実のこの世界が鏡像の世界へと移り変わる。

 

 

「フッ……ミラーワールドね〜」

「……何がおかしい?」

「いや、何でも……」

「……オレはこれでターンエンドだ」

手札:4

場:【ミラーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

ロンのミラーワールドを視認するなり、何を思っているのか、不気味な乾いた笑い声を晒すオロチ。

 

ロンはそんな彼の笑いに疑問を浮かべながらも、このターンをエンドとした。

 

 

[ターン02]オロチ

 

 

「メインステップ……バイ・パイソンをLV2で召喚……!!」

 

 

ー【バイ・パイソン〈R〉】LV1(2S)BP3000

 

 

「オレと同じ……紫か」

 

 

オロチが初手で呼び出したのは白蛇の姿をしているスピリット、バイ・パイソン。白い身体の所々に埋められている紫のアメジストがそれなりのインパクトを残す。

 

 

「アタックステップ!!…バイ・パイソンでアタック!!…効果で自身のソウルコアをトラッシュに置く事で2枚ドローだ」

「!!」

 

 

ー【バイ・パイソン〈R〉】(2S➡︎1)LV2➡︎1

 

 

貴重なソウルコアがトラッシュへと送られる。

 

しかし、払った代償はきっちりと等価交換で返ってくる。オロチは2枚のカードを新たにデッキからドローした。

 

 

「アタックはライフで受ける!!……ッ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉ロン

 

 

バイ・パイソンはロンのライフバリアに噛みつき、それを破壊した。

 

ロンにそれなりに大きなバトルダメージが蓄積される。そしてこの時の感覚を彼は何となく覚えていて…………

 

 

「この感じ………あのチート野郎の時と同じ……!?」

 

 

彼の言うチート野郎とはトゥエンティの事である。何故かは知らなかったが、あのコラボダンジョンでの一件では普通のバトルでは先ず有り得ないダメージがあった。

 

今回のそれはあの時と似ている………

 

 

「どうした?…オレはこれでターンエンドだ……かかって来いよ」

手札:6

場:【バイ・パイソン】LV1

【バースト:【無】

 

 

「ッ……オレのターン!!」

 

 

余裕のある表情を浮かべるオロチ。ロンはこれ以上深い事は考えず、己のターンを進行していった………

 

 

[ターン03]ロン

 

 

「メインステップ、オレはアーマーバットと仮面ライダーナイトを召喚!!」

 

 

ー【アーマーバット】LV1(1)BP1000

ー【仮面ライダーナイト】LV1(1S)BP2000

 

 

「来たか同型……唆るな」

 

 

ロンの場に鎧を装着した蝙蝠型のスピリット、アーマーバットと、自分を選んだライダースピリット、ナイトが現れる。

 

その際、ナイトを見たオロチはボソっと「同型」と意味深に呟くが、ロンの耳には伝わってはおらず………

 

 

「召喚時効果でドロー!!…さらにミラーワールドのLVを2に上げ、アタックステップ!!…駆けろナイト!!」

 

 

早速召喚したナイトで攻撃を仕掛けるロン。ミラーワールドのLV2効果でカードがオープンされるが、アドベントカードではなかったため不発。カードは手札への加えられた。

 

 

「来いよ、ライフだ!!………ッ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉オロチ

 

 

ナイトの剣から繰り出される斬撃がオロチのライフを襲う。1つが紙の如く斬り裂かれるが…………

 

 

「やっぱいいなオマエ……どうした?…もう一発打って来い……!!」

「!?」

 

 

まるでアタックが快感であったかのように、不適に喜び出すオロチ。ロンにさらなるアタックを要求してきた。

 

単に彼を挑発しているのか………それともまた何か深い理由でもあるのか………はたまた何も考えずにバトルと言う名の戦いを楽しんでいるのかは彼の溝知る事だ。

 

 

「………ターンエンドだ」

手札:5

場:【アーマーバット】LV1

【仮面ライダーナイト】LV1

【ミラーワールド】LV2

バースト:【無】

 

 

「んだよ、来ねぇのか」

 

 

しかしロンは冷静だった。追撃は控え、アーマーバットを次のターンの防御に回した。オロチはロンのプレイングに少々落胆しながらも己のターンを進行して行った…………

 

 

[ターン04]オロチ

 

 

「メインステップ……ボーン・ダイルを召喚」

 

 

ー【ボーン・ダイル】LV1(1)BP2000

 

 

オロチの場に骨化したワニ型のスピリットが現れる。効果なのか、そのスピリットの頭上には常に白のシンボルが2つ浮いている。

 

そしてオロチはさらに手札にあるカード1枚を引き抜いて………

 

 

「さらにコイツ……月光死龍ルナヘイズ・ストライクヴルムの声を聞け!!」

「!!」

 

 

ー【月光死龍ルナヘイズ・ストライクヴルム】LV2(2S)BP10000

 

 

ボーン・ダイルが不足コストで消滅する。

 

しかしその直後、オロチの背後に神秘的な満月が現れたかと思えば、死煙を纏いし漆黒のドラゴンが咆哮を張り上げ、武器である死神のような鎌を手に、この場へと参上した………

 

 

「コイツは………」

「凄いだろ?…だが見た目だけじゃない」

 

 

その迫力に僅かばかり意識を呑み込まれるロン。そしてオロチはその後徐に「アタックステップ……」と、宣言して………

 

 

「ルナヘイズでアタック!!……その効果、手札のカード1枚を裏向きで手元に置き、このスピリットのBP以下のスピリット1体をデッキ下に戻す!!」

「なに!?」

「オレは手札のカード1枚を裏向きで手元に置き、ナイトを消す!!」

 

 

ルナヘイズの鎌が漆黒の闇を纏う。ルナヘイズはその鎌でロンのナイトを斬り裂いてみせる。するとナイトはたまらず粒子と化してロンのデッキの一番下へと送られてしまった………

 

 

「アタックは継続中だ」

「くっ……ブロックだアーマーバット!!」

 

 

咄嗟のブロック命令。しかしアーマーバットでは全く敵にならない。鎌を振るう一撃であっさりと斬り裂かれてしまった。

 

 

「続けバイ・パイソン!!」

「ライフだ!!……ぐっ」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉ロン

 

 

またしてもバイ・パイソンがロンのライフバリアを噛み砕く。

 

 

「……ターンエンドだ。どうした?…祭りはこれからだろ?」

手札:4

場:【バイ・パイソン〈R〉】LV1

【月光死龍ルナヘイズ・ストライクヴルム】LV2

手元:【裏向き】×1

バースト:【無】

 

 

「どうしたどうしたと喧しいヤツだ……いいだろう、ここから全力で相手してやる!!」

 

 

決してロンが手を抜いていたわけではない。

 

しかし、オロチにはそれなりの覚悟を持って戦うしかないと考えた彼は、ここからこのバトルに対しての意識をさらに向上させていって………

 

 

[ターン05]ロン

 

 

「メインステップ、2体目のアーマーバットを召喚」

 

 

ー【アーマーバット】LV1(1)BP1000

 

 

今回2体目となるアーマーバットがロンの場で翼を翻す。そして立て続けにロンは立て続けに手札のカードを構えて………

 

 

「そして……第二のナイトをLV2で召喚!!」

 

 

ー【仮面ライダーナイト[2]】LV2(2S)BP6000

 

 

通常よりも性能が向上した第二のナイトがアーマーバットの横に並ぶ。

 

 

「召喚時効果!!…敵スピリット1体のコア2つをリザーブへ送る!!…ルナヘイズを対象に取る!!」

「無駄だ!!…ルナヘイズの【重装甲:紫/白】でそれを無効!!…代わりにバイ・パイソンで受けてやる!!」

「ッ……!!」

 

 

第二のナイトが黒槍を振い飛ぶ斬撃を発動させる。しかしバイ・パイソンはそれに引き裂かれてしまうものの、ルナヘイズは重厚な装甲でそれを弾き返してしまう。

 

 

「また装甲か……なら直接ライフを攻めるのみ!!……行けナイト!!」

 

 

ロンの指示で黒槍を構えて走り出す第二のナイト。ミラーワールドの効果でカードが手札に加えられた。

 

彼は紫の効果では突破し辛いルナヘイズを無視してライフを削る作戦に出たのだろう。

だが………

 

 

「ルナヘイズのさらなる効果!!…敵スピリットがアタックした時、回復。その後1枚引く」

「なに!?」

「ルナヘイズ、相手してやれ」

 

 

第二のナイトがオロチの眼前に迫った直後、ルナヘイズが眼光を輝かせ、回復。巨大な手でナイトを鷲掴みにし、持ち上げて見せる。

 

 

「さらにブロック時、手札1枚を裏向きで手元に置き、今度はアーマーバットをデッキの下に戻す」

「ぐっ……」

 

 

アーマーバットがルナヘイズの鎌に斬り裂かれる。さらに鷲掴みにされた第二のナイトが地面に叩きつけられ、堪らず爆散。

 

ロンの場は再びミラーワールドのみとなった。

 

 

「……ターンエンドだ……」

手札:6

場:【ミラーワールド】LV2

バースト:【無】

 

 

自分のターンのまさかの惨劇………

 

しかしそう簡単に試合を投げ出すわけにはいかない。彼は頼みの綱である手札を確認しながらそのターンをエンドとした。

 

 

 

[ターン06]オロチ

 

 

「へっへっ……メインステップ、先ずはバーストを伏せ……手元からボーン・ダイルを呼ぶ」

 

 

ー【ボーン・ダイル】LV1(1)BP2000

 

 

いわゆる罠のカードであるバーストが伏せられると共に、ルナヘイズの効果で裏向きで置かれていたカードが反転。オロチの場へと置かれる。再び骨化したワニ型のスピリット、ボーン・ダイルが姿を見せるが………

 

 

「さらに不足コストをそのボーン・ダイルより確保……手元より2体目のルナヘイズをLV2で召喚!!」

「なに!?」

 

 

ー【月光死龍ルナヘイズ・ストライクヴルム】LV2(2)BP10000

 

 

またしてもすぐさま消滅するボーン・ダイル。その代償により、2体目のルナヘイズがオロチの場へと顕現……それは最初の1体目と共鳴するように咆哮を張り上げた。

 

 

「くっ……」

「アタックステップ!!…2体のルナヘイズで攻撃!!」

 

 

オロチの指示を聞くなり死神のような鎌を手に構えて宙を翔ける2体のルナヘイズ。場がガラ空きのロンはこれをライフで受ける以外の選択肢が無くて………

 

 

「ライフだ!!……ッ」

 

 

〈ライフ3➡︎2➡︎1〉ロン

 

 

両サイドから2体のルナヘイズが鎌を振い、ロンのライフを斬り裂く。

 

その残り数は風前の灯。一気に追い詰められてしまった………

 

 

「ターンエンド……どうした?…終わっちまうぞ。まだまだオレと遊んでくれ」

手札:5

場:【月光死龍ルナヘイズ・ストライクヴルム】LV2

【月光死龍ルナヘイズ・ストライクヴルム】LV2

バースト:【有】

 

 

狂気のオロチ。それが操る強力なスピリット、ルナヘイズ。普通のカードバトラーならばこの上ない恐怖を植え付けられるような状況。

 

だが…………

 

 

「突破できないわけではない」

「……ほお?」

 

 

その恐怖とやらを全く感じ得ないロンの言動。寧ろ絶対的な勝利を確信しているようにしか見えない。

 

………関係ないのだ。どんなに狂気に満ち溢れた指名手配中の殺人鬼が相手だろうと、死神のようなドラゴンが相手でも………

 

自分はあのアスラと競い合い、シイナをも超えて頂点王になる男なのだから…………

 

その心情が恐怖と言う感情を寄せ付けず、彼の身体を突き動かしているのだ…………

 

 

「オレのタァァァーン!!!」

 

 

そして気迫に満ち溢れたロンのターンが幕を開ける………

 

 

[ターン07]ロン

 

 

「メインステップ、第一のナイトを召喚!!……効果で1枚ドロー!!」

 

 

ー【仮面ライダーナイト】LV3(6)BP6000

 

 

今回は2体目となる第一のナイト。その効果で順当にカードをドローする。

 

ロンはそのドローカードを見るなり、彼としては珍しく思わず頬が緩んだ。

 

……その理由はただ1つ。来たのだ。バトルにおいて絶対的な信用を寄せる自身の最強カードが………

 

 

「アタックステップ!!…ナイトでアタック!!…ミラーワールドの効果でカードを1枚手札に!!」

「BP6000?…その程度じゃルナヘイズは突破できないぞ。2体分のルナヘイズの効果、2枚ドローし、2体を回復!!」

 

 

ー【月光死龍ルナヘイズ・ストライクヴルム】(疲労➡︎回復)

ー【月光死龍ルナヘイズ・ストライクヴルム】(疲労➡︎回復)

 

 

ナイトのアタックに反応し、疲労していた2体のルナヘイズが回復状態となり起き上がる。このままではまたしてもナイトを即座に叩き潰してしまうだろう…………

 

だが、本題はここからだ。ロンは手札にある最強カードをこのタイミングで使用する………

 

 

「それは知っている!!……フラッシュ煌臨発揮!!…対象は第一のナイト!!…この瞬間、ナイトは自身の効果でコスト5として扱う!!」

「!!」

 

 

リザーブのソウルコアがトラッシュへと送られる。これはソウルコアをコストにしてスピリットを進化させる煌臨の下準備だ。

 

そしてその煌臨で新たに現れるスピリットは………

 

 

「来い、ナイトサバイブ!!」

 

 

ナイトはベルトにあるカード束から1枚のカードを引き抜くと、レイピア状の剣が瞬く間にして騎士の剣を内蔵した青い盾に切り替わり、疾風の如く風が吹き荒れる………

 

 

………サバイブ!!

 

 

 

ー【仮面ライダーナイトサバイブ】LV3(6)BP16000

 

 

 

ナイトがその引き抜いたカードを青い盾のバイザー部に装填すると、その無機質な音声と共に強化形態、仮面ライダーナイトサバイブへと進化を遂げる………

 

 

「ほぉ、唆るな。そんな隠し球まで持ってたか」

 

 

ロンのエースであるナイトサバイブの登場により、オロチは彼に対する期待を高める。だがそんな事ロンが気に留めるわけもなくて…………

 

 

「ナイトサバイブの煌臨アタック時効果!!…スピリット1体のコア2つをトラッシュへ送る!!」

「あぁ?…さっき身をもって体感しただろ。ルナヘイズにコア除去は効かねー」

 

 

ナイトサバイブの強力なコア除去効果。しかし、それは所詮紫属性の効果であるのは違いなくて………

 

はたからみればルナヘイズの持つ紫と白の重装甲に難なく弾き返されてしまうだろう………

 

しかし………

 

 

「……フッ……それはどうかな?」

「?」

 

 

ロンが鼻で笑いながらそう言うと、ナイトサバイブは盾から引き抜いた騎士の剣を振い、その切っ先から疾風の斬撃をルナヘイズへ向けて発射させる。装甲を持つルナヘイズはそれを弾くかに見えたが…………

 

 

ー【月光死龍ルナヘイズ・ストライクヴルム】(2➡︎0)消滅

 

 

「………なに?」

 

 

分厚かったルナヘイズの装甲をまるで紙のように斬り裂いたナイトサバイブの疾風の斬撃。堪らず消滅してしまうルナヘイズを前に、ロンはオロチにカラクリを説明する。

 

 

「ナイトサバイブのこの効果発揮時、自身の色を無いものとして扱う。色がなければ装甲の効果は意味をなさない……!!」

「成る程。なかなか面しれーじゃねぇか」

「……ナイトサバイブのもう1つの効果で自身を回復」

 

 

 

ー【仮面ライダーナイトサバイブ】(疲労➡︎回復)

 

 

 

ナイトサバイブの効果を聞いても全く焦りを感じないオロチ。どこまでも嘲笑うかのようにニタニタと薄気味悪い笑顔を浮かべている。

 

そんな彼に対し、ロンは畳み掛けるべく、回復したナイトサバイブを対象にさらなるカードを手札から切って…………

 

 

「フラッシュマジック、ファイナルベント!!」

「!!」

 

 

必殺のアドベントカード、ファイナルベントがここで発動。

 

ナイトサバイブがベルトから引き抜いた1枚のカードを青い盾に装填………

 

 

………ファイナルベント!!

 

 

と、無機質な音声が鳴り響き、どこからともなく黒い翼のモンスターがナイトサバイブの元まで現れる。しかし、その姿もほんの一瞬であり、ナイトがサバイブへと進化した影響により、その黒き翼は鋼を纏う疾風の翼へと強化される。

 

ナイトサバイブはその疾風の翼の背に飛び乗る。

 

 

「ファイナルベントの効果!!…BP15000以下のスピリット1体を破壊し、このバトル中、ナイトサバイブのシンボルを1つ追加!!…ダブルシンボルとなる!!」

「へへ……知ってるさ

 

 

ロンの効果説明に、オロチはそう呟く。だがその間にナイトサバイブを乗せた疾風の翼がバイク型のマシーンへと変形。ルナヘイズへ向けて走り出す。

 

 

「疾風断!!」

 

 

ナイトサバイブのなびく黒いマントがバイクごと包み込み、一本の巨大な黒槍を形成。そのまま突進していき、ルナヘイズへと激突。ナイトサバイブはそれを貫通させ、難なく撃破して見せた………

 

そして守る壁がいなくなったオロチのライフまで突き進み…………

 

 

「ッ………!!」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉オロチ

 

 

そのライフをも砕いて見せた。ロンは見事に逆境の状況から形成逆転して見せる。流石はアスラのライバル、頂点王を目指す者だ………

 

しかし………

 

 

「へっ…やっぱいいなオマエ」

「!!」

「そうだ。その調子だ。その調子でこのオレをもっと楽しませてくれ……!!」

 

 

先程までとは比べ物にならないオロチの異常な殺気。流石のロンもその迫力に一瞬たじろいでしまう………

 

同時に彼の考えを僅かに理解した。

 

自分がルナヘイズを突破してくるのを待ち望んでいたのだ。そして仮に突破できたら使う予定だったのだろう…………

 

あの伏せられたバーストカードを…………

 

 

「ライフ減少によりバースト発動……!!」

「!!」

 

 

ロンの予想通り、やはり伏せられていたオロチのバーストカードがここに来て発動。勢いよく反転して見せる………

 

そのカードとは…………

 

 

「召喚!!…仮面ライダー王蛇………!!」

「!!」

 

 

ー【仮面ライダー王蛇】LV2(3)BP8000

 

 

ロンとナイトサバイブの眼前に現れたのは紫に包まれたボディが特徴的な邪悪なライダースピリットの1体、仮面ライダー王蛇。

 

 

「……オマエもライダースピリットを………」

「あぁ、まぁな。ここからが本番だ………さぁどうする?…まだ来るか?」

「………ターンエンドだ」

手札:5

場:【仮面ライダーナイトサバイブ】LV2

【ミラーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

フルアタックしてもまだ勝負を決められない事や、見たこともないライダースピリットの効果も把握していないのに無闇に飛び込むのは危険であると判断し、ナイトサバイブをブロッカーとして残してそのターンをエンドとしたロン。

 

次は自身のライダースピリットである王蛇を召喚して見せたオロチのターンだ。その止まる事を知らない狂気はこのターンでさらに爆発する………

 

 

[ターン08]オロチ

 

 

 

「メインステップ!!」

 

 

オロチのメインステップ。彼はさらにロンが驚愕せざるを得ないカードを手札から切って見せて…………

 

 

 

「さぁ行くぞ、オレは……いやオレも!!……ネクサスカード、ミラーワールドをLV2で配置する!!」

 

 

ー【ミラーワールド】LV2(2)

 

 

「ッ……な、何!?……ミラーワールド………」

 

 

オロチがターン開始早々に配置したのはまさかのミラーワールド。既にロンが配置していた事もあり、これといった変化は無いが、アスラとロンのデッキ以外ではお目にかからないこのカードを何故オロチが手にできているのかが疑問であり………

 

 

「何故オマエがそのカードを………」

「そりゃ、オマエとオレのライダースピリットは同型だからなぁ」

「ッ……ど、同型………ナイトと、オマエのライダースピリットが!?」

 

 

信じられない。自分のライダースピリットが殺人鬼の持つライダースピリットと同型など。

 

しかし現実に彼はミラーワールドを配置した。それが彼らのライダースピリットが同型であるという何よりの証拠であって…………

 

 

「はっはっは………お待ちかなのアタックステップだ!!」

「ッ……!!」

 

 

深い事を考えている暇は無い。少々揺さぶられたが、よくよく考えてみればそんな事自分には全く関係のない事だ。

 

ロンはオロチの攻撃に備えて身構えるが…………

 

その時だった…………

 

 

「そこまでですよ………!!」

「ッ……」

 

 

その声にアタックしようと王蛇のカードに手を伸ばしていたオロチの手が止まる。彼とロンがその声の方へと首を向けると、そこには他でも無い。ライダーハンターズの主任、ウィルがいて………

 

 

「オマエ、あの時の………ちょび髭シルクハット」

「ふふ、自己紹介がまだでしたね。私の名はウィル。最近巷で噂のライダーハンターズの主任を務めさせていただいております」

 

 

ロンがウィルに出くわすのはあのコラボダンジョンでの一件以来だ。この時点でロンはオロチがあの連中と何らかの関わりがある事を察する。

 

 

「おい主任!!…今いいとこだったろ、邪魔すんな!!」

「まぁまぁ、落ち着いてください。オロチにはもっと良い相手を用意してあげますよ。この少年は生かしておきなさい」

「もっと良い相手??……誰だ」

 

 

無理矢理バトルを中断させられた事にはらわたを煮えくり返すオロチ。いくら相手が主任でも激怒してしまう。

 

しかしウィルはその事も想定済みなのか、オロチをロンではない別の誰かとバトルさせようとしていた…………

 

それは…………

 

 

「ふふ、貴方もお分かりでしょう。ソウルコアが使えないあの薄汚い小僧………ヤツを始末してきなさい。ライダースピリットの強奪も忘れないようにね」

「ッ……アスラの事か……」

「あぁ、成る程ね。ここで暴れ足りなかった分、それに関しちゃ好きにやらせてもらうぜ」

「はい。いいでしょう……私は目標を達成してくれればそれで構わないので」

 

 

そう。

 

その相手とは他でもないロンの最高の友にして最大のライバル、ソウルコアが使えない故に最後まで諦めない心と龍騎を手にする事ができた少年アスラ。

 

何が理由なのか、ウィルはアスラを目の敵にしており、今回、痺れを切らして殺人鬼であるオロチにそれを自ら依頼しに来たのだ。

 

 

「じゃあな。次に戦う時まで腕磨いとけよ」

「………オマエもな」

 

 

オロチはロンにそう言い残すと、Bパッドでワームホールを形成。ライダーハンターズの隠れ家へと戻っていった…………

 

このライライ町の裏路地に残されたのはロンとウィルのみ。ウィルはお互いに目を合わせるのを確認すると、不適に笑いながら徐に口を動かした………

 

 

「ところでロンさん。貴方、私たちライダーハンターズに入団する気はありませんか?」

「??」

「ライダースピリットを20枚。私に納品してくれましたらなんでも願いを叶えてあげますよ?」

 

 

ウィルからの突然のスカウト。何の意図があっての事なのかは定かでは無いが、どちらにせよ何か企みがある事をロンは悟る………

 

 

「断る」

 

 

当然返事は拒否の一択、尚且つ即答。得体の知れない組織の親玉を前にしても恐れずに堂々とした態度でそれを言い放って見せる。

 

 

「ふむふむ。ライダースピリットを20枚集めてくれたら、貴方の夢でもある頂点王にしてあげてもいいのですがね〜」

「馬鹿言え。頂点王は自分の力でなるものだ。オマエみたいなちょび髭シルクハットに叶えてもらうモノじゃない…………」

 

 

 

そして………

 

 

アスラはオマエ達には負けない

 

 

 

「アイツに勝てるのはこの世でただ1人……オレだけだ」

 

 

強く言い切るロン。

 

彼にとってその得体の知れない組織というのは自分達の夢の障害のような存在でしかない。つまり彼らが何を企てようともどうでも良いのだ、興味が無い。

 

 

「ほう。言ってくれますね。この世の欠陥品とも呼べるゴミが我々に勝つと………天才の貴方が何故あのソウルコアも使えないゴミを好敵手と認めるのかいささか謎ですが。まぁ良いでしょ、味方にならないと言うのであれば邪魔立てだけはしないでくださいね」

「邪魔立てしてるのはアンタらだろ」

「ふふ、それではご機嫌よう」

 

 

ウィルもまたそう言い残し、オロチと同様の方法でこの場を去っていった………

 

いよいよ本格的に蠢き出してきたライダーハンターズ。アスラやロンはこの驚異を乗り越える事ができるのか…………

 

 

「来る障害は全て跳ね除けるくらいじゃないと頂点王にはなれない………そうだよなアスラ。必ず勝ち上がって来い……その上で、必ずオレが勝つ!!」

 

 

アスラが言いそうな言葉を口にしながら、再び歩みを進めるロン。しかし、その表情は最高の友が狙われていると知っていながら、何故か笑っていた。

 

アスラが必ず勝ち上がって来る事を確信しているのと、彼との最後の決戦を心待ちにしているのが理由であろう。一見変に見えるが、これは幼き日々からアスラと共に過ごしてきた彼だからこその感覚であって………

 

こうして、アスラの最大のライバル、ロンの旅もまだまだ続くのであった。

 

 

******

 

 

ライライ町の門前、ここからでも華やかなパレードが認識できる中、アスラとエール、そして謎のオレンジ色の犬みたいな生物、ムエは立ち止まっていた。

 

何やらアスラとエールが言い争いをしているようであり………

 

 

「カラー戦が先だ!!…オレは早くロンのヤツに追いつかねぇと行けねぇんだよ!!」

「フン、アンタの都合なんて知らないわよ!!…なんと言おうがテーマパークに行くのが先よ!!」

「むえ〜」

 

 

割と珍しく本気で口論している2人。それはライライ町で先にカラーリーダーに挑戦して来るか、華やかなテーマパークに観光に行くかを決めるモノであった。

 

アスラとしては先にカラーリーダーに挑戦したい。当然だ。当初の目的はそれのみだったのだから。しかしエールがそれを譲らない。なんとしてもテーマパークの観光を優先させようとしている。

 

 

「楽しみはとっとけよ!!…オレだってちょっと楽しみなんだぞ!!」

「アンタがカラー戦やってるうちに時間が潰れるじゃない!!…やっぱりテーマパークが優先よ!!」

「じゃあムエと2人で行けばいいじゃねぇか!!」

「そ、それはダメよ!!」

「なんで?」

「な、なんでって………そりゃ………」

「………そりゃ?」

「い、いいから貧相なコモンは偉大なるエックスに従いなさい!!」

「理不尽!?」

 

 

エールとしてはどうしてもアスラと一緒にテーマパークに行きたい。その時間をカラー戦で費やしたくなかった。アスラもエールの気持ちに気づいていれば何か気の利いたセリフの1つや2つを吐けていたのだろうが、当然気がついているわけもなく、今現在こうして口論するに至っている………

 

 

「じゃあバトルだ!!…バトルで勝った方が決めるのはどうだ?」

「嫌よ。なんでこんなクソ暑い日に熱苦しいアンタとバトルなんてしなきゃいけないのよ」

「なにぃ!?…オマエ人気投票1番だったからってちょっと調子乗ってんじゃねぇだろうな!!」

「何の話よ」

 

 

この世界ではもっともな決め方を提案するアスラだったが、エールはこれをスマートに拒否。いつもの事だが尊大な態度でアスラを一蹴する。

 

結局この後ジャンケンで決める事になったのだが、アスラがグーで負け、最終的にはテーマパークが先という結果に落ち着いた。この結果にエールが内心でどれほど喜んでいたかは計り知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、この後そのライライ町のテーマパークにて、とんでもない事件が起こってしまう事など、今の彼らでは知る由もなかった事だろう。


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