………ゲートオープン、界放!!
広大な空間を有する洞窟の最奥部、そこで赤のオメガのカード達を欲するオロチと、紫のオメガを取り戻すべく勇気を振り絞って立ち上がったエールのバトルスピリッツがコールと共に幕を開ける…………
エールの孤独な戦いが始まったのだ………
先行はオロチ。殺人鬼らしい狂ったような不気味な笑みを浮かべながらターンシークエンスを進行していく。
[ターン01]オロチ
「メインステップ、ネクサスカード、ミラーワールドを配置してエンドだ」
ー【ミラーワールド】LV1
アスラとロンのみが所有していたネクサスと全く同じカードを配置するオロチ。その影響で情景が鏡像へと切り替わった。
[ターン02]エール
「メインステップ、勇気の紋章をLV2で配置してエンド」
ー【勇気の紋章】LV2(1S)
エールもすぐさま擬似太陽とも呼べる存在を背後に配置し、そのターンをエンドとした。
お互いにネクサスと言う名の足場を配置し、地の利を固め合ったこの最序盤。ここからバトルがより加速するのは誰の目から見ても明らかであって………
[ターン03]オロチ
「メインステップ、バイ・パイソンをLV2で召喚!!…バーストも伏せる」
ー【バイ・パイソン】LV2(2S)BP3000
白蛇の見た目をした紫属性のスピリット、バイ・パイソンがオロチの場に現れる。そしてついでのように配置されたバーストを見て、エールは目を細めた。アスラ戦でも使用したライダースピリット、仮面ライダー王蛇を警戒しているのだろう。
「アタックステップ、バイ・パイソンでアタック。効果でソウルコアをトラッシュに置き、2枚ドロー」
ー【バイ・パイソン】(2S➡︎1)LV2➡︎1
動き出したバイ・パイソン。その効果でソウルコアがトラッシュへと弾かれ、オロチに2枚のカードを与えた。
「ライフで受ける!!………ッ」
〈ライフ5➡︎4〉エール
前のターンでネクサスの配置にコアを使い果たしたエールにこれを防御する術はなく、そのままライフで受けた。バイ・パイソンの体当たりがそれを1つ砕き、彼女に多大なバトルダメージを与える。
だが、ただで転ぶわけでもなくて………
「勇気の紋章の効果、私のライフが減った時、BP5000以下のスピリット1体を破壊する!!」
「!」
「消えなさいバイ・パイソン!!」
擬似太陽の中心から火炎弾が放たれる。それは一直線にオロチのバイ・パイソンの元まで飛び行き、焼き尽くした。
「馬鹿ね。警戒くらいしなさいよ」
「その効果は知ってたさ。知ってて殴った」
「は?」
「カードを増やしたかったからな〜……何よりライフを減らした方が面白いだろ?……これは食うか食われるかの勝負!!祭りだ!!……バトラーもスピリットも命を張ってこその存在だ……そう思わないか?」
「何言ってんのよアンタ………」
兎に角狂った発言が目立つオロチ。
バトルスピリッツを楽しむという価値観を持つカードバトラーならこの世界にだって大勢いるが、命の削り合いを楽しむなどと言う狂った価値観を持つカードバトラーなど、おそらく彼くらいなものだろう。
「ターンエンドだ。本気で来い。じゃねぇと唆らねー」
手札:5
場:【ミラーワールド】LV1
バースト:【有】
そんなオロチの言葉に背筋を凍らせながらも、エールは回って来た自分のターンを全力で開始する。
[ターン04]エール
「ドローステップ、勇気の紋章の効果。ドロー枚数を1枚増やし、その後1枚捨てるわ」
勇気の紋章の効果がここでも起動。エールの手札の質が向上していく。
「メインステップ!!…創界神ネクサス、八神太一を配置!!…神託の効果でコアを増やす!!」
ー【八神太一】LV1(1)
エールの創界神ネクサス、八神太一が配置される。特に何が出現したわけでもなく、変化もないが、破壊されづらい強力なネクサスを配置できたのに変わりはない。
神託の効果も成功し、カードには1つのコアが置かれた。
「さらに!!…勇気の紋章のコアを使って、太一のアグモンをLV2で、第二のアグモンをLV1で連続召喚!!」
ー【太一のアグモン】LV2(2)BP4000
ー【アグモン[2]】LV1(1S) BP2000
エールの場に2体のアグモンが召喚される。太一のアグモンの召喚時効果でその手札に追加で1枚のカードを加えられ、神託により、八神太一にはコアが2つ追加された。
「八神太一の効果!!…コア3つをボイドに送り、1枚ドロー」
創界神ネクサスとしての効果が起動。エールの手札はさらに増える。
「アタックステップ!!…太一のアグモンの【進化:赤】を発揮!!…成熟期スピリット、グレイモンに進化!!」
ー【グレイモン】LV1(2) BP4000
太一のアグモンの身体がが青白く発光すると、その姿形を大きく変化させ、最終的には巨大な3本の頭角を持つ恐竜のようなデジタルスピリット、グレイモンに進化を遂げた。
新たなデジタルスピリットの登場により、八神太一にコアが1つ追加される。
「アタックステップ!!…第二のアグモンでアタック!!」
しかし、エールは強力な効果を持つグレイモンではなく、成長期の第二のアグモンで攻撃を仕掛けた。前のターンでコアをほとんど使い切ったオロチはどちらにせよライフで受けるしかないのだが………
「ライフだ!!……ッ」
〈ライフ5➡︎4〉オロチ
「よしっ!!」
アグモンがその鋭い爪で彼のライフを1つ切り裂いて見せた。エールはその様子にグッと拳を握りガッツポーズを見せる。
オロチは多大なバトルダメージを受けるも、その表情は不気味にニヤついていて………
「わかるぞ。オレにはわかる……オマエはオレの王蛇を警戒してるな」
「!!」
「だからわざわざグレイモンじゃなくてソウルコアが置かれているアグモンから殴って来た……違うか?」
「………!」
図星だ。仮面ライダー王蛇の効果で最も警戒すべきは破壊効果でもコア除去効果でもなく、召喚時で破壊したスピリットのソウルコア以外のコアをボイドに送ると言う事だ。
コアが増え辛い赤デッキのエールはこの手の効果は嫌でも警戒してしまっていた。だから破壊されても最小限で済むようにソウルコアしか置かれていない第二のアグモンからアタックを仕掛けた。
だが………
「警戒し過ぎなのは良くねぇな!!……バースト発動!!…絶甲氷盾!!」
「ッ……王蛇じゃない!?」
「効果でライフ1つを回復!!」
〈ライフ4➡︎5〉オロチ
勢い良く反転して出て来たのは予想していたライダースピリット、王蛇ではなく、なんの変哲もない汎用マジック。その効果でライフ1つが瞬時に回復してしまった。
「エックスのバトルは素直過ぎる。教科書に載ってるような戦い方だ………だから負けたんだよ、この国で最強と言われた三王でさえも、このオレに!!」
「ッ………アンタがお母様を語るな!!」
手札:4
場:【グレイモン】LV1
【アグモン[2]】LV1
【勇気の紋章】LV1
【八神太一】LV1(1)
バースト:【無】
自分の母親であるエレナの事を語るオロチに怒りを露わにするエール。人間として間違いなく底辺であるあの男にそう言われるのが悔しくてしょうがないのだろう。
だがここはそのターンを終え、オロチにターンを渡した。
[ターン05]オロチ
「メインステップ、ネクサス、水銀海に浮かぶ工場島を配置!!」
ー【水銀海に浮かぶ工場島】LV1
アスラ戦でもオロチが使用したネクサスカード、水銀海に浮かぶ工場島が配置される。これでエールは自分のターンのみ、効果で手札を増やしても、その枚数分破棄しなければならなくなる。
「さらに新しいバーストを伏せ、エンドだ」
手札:4
場:【ミラーワールド】LV1
【水銀海に浮かぶ工場島】LV1
バースト:【有】
しかし攻め札がなかったか、ネクサスの配置だけで早々に己のターンを終えたオロチ。エールはこの気を逃すまいと自分のターンを再び始めていった………
[ターン06]エール
「メインステップ!!…第二のグレイモンをLV1で召喚!!」
ー【グレイモン[2]】LV1(1)BP4000
エールのターン早々、場に2体目となるグレイモンが姿を現した。その影響で八神太一にも2つ目のコアが追加される。
「召喚時効果で水銀海に浮かぶ工場島を破壊して1枚ドロー!!」
「!!」
登場するなり轟音のような咆哮を張り上げる第二のグレイモン。水銀海に浮かぶ工場島はその振動でヒビ割れるように砕け散り、消滅していった。
「私にネクサスを活かした戦いは期待しない方がいいわよ」
「ほぉ、中々面白いな。だがそれくらいできなきゃ奪う価値もない!!……さぁ、次はオレをどう楽しませる?」
「こうしてあげるわよ!!…勇気の紋章のLVを2に上げてアタックステップ!!…第二のアグモンでアタック!!」
王蛇を警戒して再びソウルコアしか置かれていない第二のアグモンでアタックするエール。オロチはこの攻撃から身を守るそぶりすら見せず………
「ライフだ!!……ッ」
〈ライフ5➡︎4〉オロチ
アグモンの鋭い爪が今一度オロチのライフを切り裂いて見せた。しかし、それは彼の伏せていたバーストカードの発動条件でもあって………
「ライフ減少により、バースト発動!!……来い、仮面ライダー王蛇!!」
「ッ………来た」
ー【仮面ライダー王蛇】LV2(3)BP8000
勢い良く反転したオロチのバーストカードは今度こそ仮面ライダー王蛇。様々な鏡像が重なり、現実にその邪悪な姿を見せる。
「召喚時効果!!…疲労している第二のアグモンを破壊!!」
「!!」
登場したばかりの王蛇が第二のアグモンを睨みつけると、第二のアグモンから紫炎が纏わり付き、それを焼き尽くした。
この際に、第二のアグモンのLVの数だけソウルコア以外のコアをボイドに送る事ができたのだが、ソウルコアしか置かれていなかったためにこちらの効果はほぼ不発に終わる。
「ふっ……痺れを切らしてようやく召喚してくれたわね。ターンエンドよ」
手札:4
場:【グレイモン】LV1(2)BP4000
【グレイモン[2]】LV1(1)BP4000
【勇気の紋章】LV2(1)
【八神太一】LV1(2)
バースト:【無】
王蛇の最も厄介な効果は去り、一先ず安堵したエールはそのまま2体のグレイモンをブロッカーとして残し、このターンをエンドとした。
次はオロチのターンだ。王蛇の召喚時効果を最大限に発揮できなかった事に対して、苛立ちを覚えているわけでもなく、今だ余裕な表情を浮かべながらそのターンシークエンスを進めていった………
[ターン07]オロチ
「メインステップ………オレのデッキは王蛇の召喚時に頼っているわけじゃねぇ……面白いもん見せてやるよ。ブレイヴカード、スカル・ガルダを王蛇に直接合体するように召喚!!…効果で1枚ドロー!!」
「!!」
ー【仮面ライダー王蛇+スカル・ガルダ】LV2(3)BP12000
まるで骨となった悪魔の使いのようなブレイヴが現れ、王蛇に纏わりついていく。その邪悪な鎧はより凶悪な姿へと変貌し、BPやシンボルも強烈に跳ね上がった強力な合体スピリットとなる。
「バーストをセット!!…さらにミラーワールドのLVを2に上げてアタックステップ!!……合体した王蛇で攻撃する!!」
王蛇が徐に首を回しながらエールに狙いを定める。そんな狙われた主人を護らんと、立ち塞がる2体のグレイモンだったが………
「王蛇のアタック時効果で第二のグレイモンのコア2個をリザーブへ!!…よって消滅!!」
「!!」
ー【グレイモン[2]】(1➡︎0)消滅
王蛇がグレイモンを睨むだけで強い衝撃波が放たれる。第二のグレイモンはそれに吹き飛ばされ、たちまち消滅してしまう。
「さらにミラーワールドの効果でカードをオープン、アドベントカードならノーコストで発揮!!………へっ、ファイナルベントだ」
「なッ……!?」
運が悪い事に、ミラーワールドの効果でファイナルベントがノーコストで発揮される。アスラを知っているエールだからこそ、そのカードがどれだけ強力なのかを理解しており………
「効果で最初のグレイモンを破壊し、アタック中の王蛇に赤のシンボル1つを加える!!」
「くっ……!!」
王蛇がベルトのカード束からカードを1枚引き抜き、それを杖の形をした武器に装填。
……ファイナルベント!!
と、音声が流れると共に巨大な紫色をした大蛇が現れ、毒のブレスを吐きつける。王蛇はそれに流されるように勢いをつけ、グレイモンに強烈なキックをお見舞いした。グレイモンはたまらず爆散してしまう。
「そしてアタックは継続中!!…3点分のシンボルを食らいな!!」
「ッ………ぐっ……ぁぁぁぁぁあ!!!」
〈ライフ4➡︎1〉エール
グレイモンのみならずエールのライフをもその蹴り1つで破壊してしまう王蛇。今までとは比較のしようがない程のダメージに、エールは思わず膝をついた………
「ターンエンド。どうしたスピリット空だぞ、もう終わりか?…もっと楽しませろ」
手札:4
場:【仮面ライダー王蛇+スカル・ガルダ】LV2
【ミラーワールド】LV1
バースト:【有】
「ッ………まだよ。まだ、諦めない………!!」
「へへっ、期待してるぜ」
ライフは残り1。スピリットは全滅。誰がどう見ても絶体絶命なこの状況。
だがここまで来て諦めるわけにはいかない。アイツなら、アスラならきっとまだ諦めたりしないと思いを馳せ、エールは再び立ち上がり、己のターンを開始していく。
[ターン08]エール
「メインステップ!!……太一のアグモンと第三のメタルグレイモンを召喚!!」
ー【太一のアグモン】LV2(2)BP4000
ー【メタルグレイモン[3]】LV3(4)BP11000
【進化】の効果で手札に戻っていたアグモンが再び場に現れると共に、地面から鋼鉄の体を持つグレイモン、メタルグレイモンが飛び出して来た。
「太一のアグモンの召喚時効果!!……よし、ウォーグレイモンを手札に!!」
「おぉ、来たか。赤のオメガ、その象徴」
召喚時効果も無事成功し、エールの手札に究極体、ウォーグレイモンが行き渡った。
「バーストを伏せてアタックステップ!!…第三のメタルグレイモンでアタック!!…効果で回復!!」
ー【メタルグレイモン[3]】(疲労➡︎回復)
咆哮を張り上げながら走り出すメタルグレイモン。その直後に回復状態となり、二度目の攻撃権利を得る。
そしてこの瞬間に手札にあるウォーグレイモンのカードを構えるエール。煌臨を狙っているのだ。今煌臨を決めることができればオロチの王蛇を破壊し、一気に勝負を決める事ができるからだ………
しかし、そんな事はお見通しか、エールがウォーグレイモンのカードを切る前にオロチが手札にあるカード効果を発揮させた………
「オマエの狙いは手に取るようにわかるぜ……フラッシュ煌臨発揮!!…対象は仮面ライダー王蛇!!」
「ッ……!?」
オロチが先に煌臨を発揮させる。そしてそのカードはエールにとっても因縁のあるカードであり………
「待ち侘びたぞ……来い、メタルガルルモン……!!」
「ッー!!」
ー【メタルガルルモン+スカル・ガルダ】LV2(3)BP18000
オロチの背後から飛び立った神獣の影が王蛇と重なり合う。その瞬間に眩い光を放ち、現れたのは鋼鉄の体を持つ究極体、メタルガルルモン。
煌臨元となった王蛇と合体していたスカル・ガルダの影響か、その身体には禍々しい邪骨が取り憑いていた。
「……メタルガルルモン………」
「紫のオメガ。その象徴だ……今となってはオレのデッキの双璧の1つ」
「それはアンタのカードじゃない!!…それは私たちオメガ家のモノよ!!」
「じゃあなんでこいつはオレを選んだ!!……オメガのカードはライダースピリットみたく使用者を選ぶんだろ?」
「ッ………!!」
確かに………
よく考えてみたら変な話だ。
なんでメタルガルルモンは………紫のオメガはオロチのデッキに入れられる。何故オロチはそれを使う事ができる。
いや、考えてもしょうがない。どちらにせよエックスの名にかけて取り返さなくてはならないのだ。エールはそう思いながら手札のウォーグレイモンを引き抜いた………
「フラッシュ!!…煌臨発揮!!……対象は第三のメタルグレイモンッ!!」
第三のメタルグレイモンが真っ赤な炎にその身を包まれていく。メタルグレイモンはその中でより強く、スマートな姿へと変貌していく………
「究極進化!!……ウォーグレイモンッッ!!」
エールが究極進化を、その究極体の名を叫んだ。炎に包まれたメタルグレイモンだったそれは腕に備え付けられた鉤爪のある籠手を振るい、その炎を吹き飛ばして姿を見せる。
そこにいたのは究極体スピリットにして、最強の竜戦士であるエールのエース、ウォーグレイモンだ。
ー【ウォーグレイモン】LV3(4)BP16000
「コイツがウォーグレイモン……唆るな」
「ウォーグレイモンは煌臨時、ブレイヴのBPを無視してBP15000まで好きなだけスピリットを破壊できる………けど」
「あぁ、メタルガルルモンは効果で破壊されない。その効果は実質無効だ」
不本意な再会を果たす2種のオメガデッキの象徴。オメガ家には長い歴史があるが、この2体の究極体が対峙して戦ったと言う記録は無い。
「破壊はできなくてもアタックは継続するわ!!…そして肝心のメタルガルルモンは疲労状態!!…このターンで倒す、頼むわよウォーグレイモンッ!!」
エールの指示でドラモンキラーと呼ばれる鉤爪の武器を構え、飛び出すウォーグレイモン。狙うは当然オロチのライフだ。
そしてエールの言う通り、オロチの場には疲労したメタルガルルモンのみであり、この攻撃を護ることができなくて………
「ライフだ!!……ぐっ」
〈ライフ4➡︎3〉オロチ
ウォーグレイモンの両腕のドラモンキラーがオロチのライフ1つを切り裂いて見せた。
さらにまだまだ攻撃は終わらず………
「ウォーグレイモンのLV2、3のアタック時効果!!…トラッシュのソウルコアをウォーグレイモンに置き、アンタのライフ1つをボイドに送るわ!!」
「!!」
「……ガイアフォースッ!!」
ウォーグレイモンは両手を合わせ、それの間隔を広げながら間にある火炎弾を形成、徐々に巨大化させていく。そして己よりも巨大になったその火球をオロチのライフへとぶん投げて見せた。
「ぐっ………ぐおぉぉぉぉぉおお!!」
〈ライフ3➡︎2〉オロチ
その豪快な火球はオロチのライフを直撃。それ1つは溶けるように消滅した。さらにエールの場にはまだアタックできるアグモンと、回復状態のウォーグレイモンが存在するため、フルアタックでオロチを倒す事ができるが………
流石にそれだけで勝てる程オロチは甘くなくて…………
「へへっ…効いたぜ、今のはな!!」
「!!」
「バースト、絶甲氷盾!!…ライフ1つを回復させ、コストを支払いアタックステップを終了させる!!……不足コストはミラーワールドから確保。よってLVが下がる」
〈ライフ2➡︎3〉オロチ
又しても絶甲氷盾。オロチのライフが瞬時に回復すると共に、氷壁がエール達の前に立ちはだかる。それは彼女がこのターンのエンドを宣言しない限りは消える事はない。
「くっ………ターンエンド……」
手札:2
場:【ウォーグレイモン】LV3
【太一のアグモン】LV2
【八神太一】LV2(5)
【勇気の紋章】LV2(1)
バースト:【有】
致し方なくそのターンを終えるエール。巨大な氷壁が崩れるものの、次はオロチのターン。残念ながら彼女にアタックする権限は無い。
[ターン09]オロチ
「メインステップ、メタルガルルモンのLVを3へ上げる」
ー【メタルガルルモン+スカル・ガルダ】(3➡︎4)LV2➡︎3
驚異的な攻撃性能を持つメタルガルルモンのLVが上昇し、ウォーグレイモンと大きく差をつける。
さらにオロチは手札のカードを切って………
「コイツの声を聞け………月光死龍ルナヘイズ・ストライクヴルム……!!」
「ッー!!」
ー【月光死龍ルナヘイズ・ストライクヴルム】LV2(2)BP10000
今度は紫のドラゴン。死神のような巨大な鎌を持つルナヘイズが咆哮と共にメタルガルルモンの横へと出現した。
「アタックステップ!!…やれメタルガルルモン!!」
「!!」
2体の強力なスピリットを眺める間もなく、オロチが突然アタックステップを宣言。メタルガルルモンがまるで操られているかのような眼光を放ってエールを睨む。
「効果でアグモンのコア2つをトラッシュに置き回復!!」
「!?」
ー【太一のアグモン】(2➡︎0)消滅
ー【メタルガルルモン+スカル・ガルダ】(疲労➡︎回復)
メタルガルルモンの強烈なアタック時効果が炸裂。アグモンが消滅すると同時に回復状態となった。エールはスピリットを消滅させられた挙句使えるコアを減らされてしまい………
「終わりだ!!……赤のオメガはオレがもらう!!」
「いやまだよ!!……この瞬間を待ってた!!」
「ッ……!?」
しかしエールにはまだ抵抗する術がなくなったわけではない。伏せていたバーストカードを全力で反転させる………
「アタック後のバースト、煌星銃ヴルムシューター!!」
「!!」
「効果でミラーワールドを破壊して1枚ドロー!!……その後ブレイヴカードとして召喚し、ウォーグレイモンと直接合体するわ!!」
エールのバーストが発動すると同時にミラーワールドの影響が消え、元の世界に変わる。
そして彼女の場には伝説のドラゴンの顔が元に造られた銃が天より降り注ぐ。ウォーグレイモンはドラモンキラーを消滅させ、それを強く握ると、黄色や橙色だったボディが真っ赤に染まり、強力な合体スピリットと変化した。
ー【ウォーグレイモン+煌星銃ヴルムシューター】LV3(5S)BP22000
「スカル・ガルダと合体しているメタルガルルモンのBPは20000!!…対するウォーグレイモンのBPはヴルムシューターとの合体で22000!!……ブロックよ!!」
遂に2体のオメガの象徴が正面衝突を繰り広げる。
ウォーグレイモンはヴルムシューターにガイアフォースの炎の力を込め、弾丸として連射するが、メタルガルルモンはそれを容易く噛み砕きながら突き進んで来る。
これでは通用しないとみたウォーグレイモンはメタルガルルモンの足元にガイアフォースの弾丸を発射。メタルガルルモンは態勢を崩し、前方に転がり込んでしまう。そしてその隙にウォーグレイモンは強烈な蹴りでメタルガルルモンを壁まで吹き飛ばして見せる。
トドメだと言わんばかりにヴルムシューターを向けるウォーグレイモンだったが、メタルガルルモンの起死回生のミサイルが被弾。今度はウォーグレイモンが吹き飛ばざれてしまう。
「メタルガルルモンには悪いけど、ここは一度破壊させてもらうわ!!」
「おい、何既に勝った気でいやがる………フラッシュマジック、ブレイヴサクリファイス!!」
「なっ!?」
「不足コストはメタルガルルモンとルナヘイズのコア1ずつから奪う。よってLVが下がるが、効果でウォーグレイモンのブレイヴを破壊し1枚ドロー!!」
ー【メタルガルルモン+スカル・ガルダ】(4➡︎3)LV3➡︎2
ー【月光死龍ルナヘイズ・ストライクヴルム】(2➡︎1)LV2➡︎1
ー【ウォーグレイモン】BP16000
刹那。
ウォーグレイモンの手に握られていたヴルムシューターが粒子と化して崩壊してしまう。そしてウォーグレイモンがそれに驚く間もなくメタルガルルモンが狂気の気迫で眼前へと迫り、襲いかかって来た。
ウォーグレイモンは咄嗟にドラモンキラーを復活させその攻撃をガードするも、メタルガルルモンは左手のドラモンキラーを噛み砕き、そのままウォーグレイモンを叩き伏せてしまう………
「ハッハッハッハッハァァァー!!!……今度こそ終わりだァァァー!!!」
「………!!」
メタルガルルモンがウォーグレイモンにトドメをさそうとした直後………
そのバトルを真正面から見ていたエールは見た。メタルガルルモンがウォーグレイモンへの攻撃を躊躇うその瞬間を………
これはバトルスピリッツ。単なるゲームだ。カードにそんな感情染みた事などあるわけないのに………
「メタルガルルモン………」
「どうしたメタルガルルモン………やれぇ!!」
躊躇ったメタルガルルモンに、オロチが強い口調で命令を下す。メタルガルルモンはそれには逆らえなかったか、口内から凍て付く冷気を溜め込み、それを放出してウォーグレイモンを破壊…………
するかと思われたが…………
「……なに?」
その直前、オロチが目にしたのはウォーグレイモンの右手のドラモンキラー。それがメタルガルルモンの腹部に貫通しているのが見えた。
これが意味しているのは、ウォーグレイモンの勝利であるという事、エールが咄嗟に手札からカードを引き抜いていたのだ………
「フラッシュマジック、ダイナパワー……ウォーグレイモンのBPを3000上げる……LVの下がったメタルガルルモンのBPは18000、ウォーグレイモンは19000」
「ッ……!?」
ー【ウォーグレイモン】BP16000➡︎19000
メタルガルルモンと合体していたスカル・ガルダはメタルガルルモンが破壊されると見て合体を強制解除してこの場から離脱する。メタルガルルモンは元の姿に戻るも、腹部の貫通が影響し、その機能が完全に停止、倒れ込んでしまうが、ウォーグレイモンがその身を担いでゆっくりと地面に下ろした。
その後、メタルガルルモンは粒子と化し、安らかに消滅していった………
「ごめんメタルガルルモン………でも必ず、必ずアナタを取り戻してみせるから……!!」
「イライラする。茶番も茶番だな………だがどちらにせよオマエはこのターンで終わる、やれルナヘイズ!!」
「!!」
メタルガルルモンを退けてもまだオロチの場にはルナヘイズが存在している。死神の鎌を手に持ち、エールのライフ目掛けて宙を舞う。
「フラッシュマジック!!……リミテッドバリア!!」
「……はぁ!?」
「不足コストはウォーグレイモンと勇気の紋章のLVを下げて確保!!……効果でこのターンはコスト4以上のスピリットのアタックでライフが減らない!!」
「ふざけんなァァァー!!!」
メタルガルルモンが破壊されたからというもの、余裕がなくなって来ているオロチ。エールが咄嗟に引き抜いて見せた防御マジックにまで怒りを露わにしている。
ルナヘイズが死神の鎌を振い、エールの最後のライフを斬り裂こうと試みるも、リミテッドバリアの影響でそれには傷一つつけられず………
「………チィッ……ターンエンドだ………」
手札:3
場:【月光死龍ルナヘイズ・ストライクヴルム】LV1
【スカル・ガルダ】LV1
バースト:【無】
怒り狂っていても致し方ないか、オロチは舌打ちしながらもそのターンをエンドとする。しかし彼の優先に変わりはない。場の状況、手札の枚数、ライフ差的にもエールは次のターンでどうにかしなければどちらにせよ敗北してしまうだろう………
「オマエは負けるんだよぉぉぉお!!…どう足掻いてもここで、この場で!!……10年前のオマエの母親みたいに腹に穴開けられて死ぬんだよぉぉぉお!!!」
「………哀れね」
「………は?」
感情が昂り、今まで以上の狂気を放つオロチだったが、予想以上に冷静な物言いで告げて来たエールに一瞬たじろいでしまう。
しかしその理由は直ぐにわかった。
エールの言葉はあの時……10年前にエレナが使った言葉と全く同じだった。エールの顔がエレナと瓜二つなのもあって、その記憶がより鮮明に蘇って来て……
「バトルが、戦うのが好きだったらなんで戦い終えた相手を殺すの?……それで勝ち続けてたら最終的には1人になっちゃうじゃない………可哀想」
「黙れぇぇぇぇえ!!……このオレを哀れんだ顔で見るんじゃねぇ!!……見下すんじゃねぇ!!…オマエはただオレと戦って殺されればいいんだよぉぉぉお!!!」
「でもアンタは私の大事なモノをいっぱい傷つけて壊した………だから許さない。私は…………アンタを倒す!!」
エールがそこまで言い切った、その瞬間だった………
何とも信じられない摩訶不思議な現象が発生したのは…………
「!!」
「………は?」
まるでエールの決意のある言葉に感化されたかの如く、突然オロチのトラッシュにあるメタルガルルモンや、彼の懐にしまっていた紫のオメガのカード達が淡い紫の光を放ちながら宙を舞い始めた。
そしてそのままそのカード達はエールの元まで飛んで行き………
「おい、おいふざけんな!!…どこ行きやがる!!…オマエらはオレの所有物だろおがァァァー!!」
「……紫のオメガ……!!」
前例の無い現象。激怒するオロチ。
しかしエールは不思議と戸惑いよりも早く嬉しさが先走った。この時点でオロチに従っていたわけではなく、無理矢理扱わされていた事が判明したからだ。
「ごめん………10年も辛い思いさせて………お母様は、エレナ・オメガはもういない………でも今度は私が、エール・オメガが絶対にアナタ達を守ってみせる……!!」
だから………
手を取り合って一緒に戦おう!!
「………!!」
エールがそう告げながら、指先で紫のオメガのカード達に触れる。
すると、それらはエールのデッキに流れ込んで行き、赤と紫のオメガは1つのデッキとなった。その影響なのか、赤と紫の光がそのデッキから満ち溢れて来ていて…………
おそらくはデッキの進化の光であろう。
「返せェェェー!!!……そいつはオレの、オレの力だァァァー!!」
「違う!!…これは私達オメガ家との絆で結ばれた大事なカード、アンタみたいに誰かを平気で殺す奴が使っていいモノじゃない!!」
エールはオロチにそう言いながら己のターンシークエンスを進めていった。赤と紫のオメガが混ざり合った奇跡のデッキ、奇跡の進化をその身で体感する。
[ターン10]エール
「メインステップ!!…ウォーグレイモンのLVを3にアップ!!」
ー【ウォーグレイモン】(1➡︎4)LV1➡︎3
ウォーグレイモンのLVが再び3に戻る。ウォーグレイモンはそれを示すかの如く爆音のような咆哮を上げる。
そしてエールは徐に「アタックステップ……ッ!!」と、宣言すると……
「ウォーグレイモンでアタック!!」
唯一のスピリットであるウォーグレイモンでアタックを仕掛ける。ウォーグレイモンは残った右手のドラモンキラーと左手を構える。
しかし……
「ルナヘイズの効果!!…回復して1枚ドロー!!」
ー【月光死龍ルナヘイズ・ストライクヴルム】(疲労➡︎回復)
そのウォーグレイモンの行為に反応するように、疲労していたルナヘイズが起き上がってみせる。これでオロチの場にはスカル・ガルダ含めブロッカーが2体となる。
おまけに残りライフは3。この状態で逆転勝利を収めるのは絶望的な状況となった…………
「ウォーグレイモン如きがこの壁を突破できるか!!……終わりだ、今度こそオマエはオレに殺される……次のターンでなァァァァァー!!」
「いや、アンタに次のターンはない!!」
「ッ!?」
エールはオロチに勝気な態度でそう言うと、圧倒的劣性の中、手札よりカードを1枚引き抜いた………
それはたった今デッキが進化した事により生まれた、最強のカード、最強の切札………
「煌臨発揮!!……対象はウォーグレイモンッ!!」
「何!?…ウォーグレイモンが煌臨対象だと!?」
エールが引き抜いたカードはなんとウォーグレイモンを対象にできる煌臨スピリット。
さらに驚きの連続は止まる事を知らない。今度はウォーグレイモンの右隣にメタルガルルモンが突如として復活を果たし、遂に2体のオメガの象徴がエールの場に並び立った。2体は雄叫びと咆哮をこれでもかと張り上げる。
「何だ………さっきから何が起こっている……なんだその力は……!?」
「アンタみたいな奴にカードバトラーとカードの絆なんて到底理解できないでしょうね……」
「ッ……エックス………オマエ達はいつもそうだ。身分が高い、バトスピが強い、進化の力が強い。ただそれだけの理由でいつも弱者を虐げる!!」
「それはこっちのセリフよ!!……そしてエックスなんて関係ない!!…お母様を、仲間を傷つけたアンタを絶対に私は許さない!!」
そこまで言い切ると、エールはそのスピリットの名を叫ぶ。
右に友情!!
左に勇気!!
2つの勇姿重ね合う時、すべての闇穿つ英雄となる!!
「………2体のオメガが混ざり合っていくだと……!?」
ウォーグレイモンとメタルガルルモンは自身を模した腕のようなパーツに変化し、宙を舞う。そして光と共にそれらは混ざり合い、今こそ究極を超えた姿となって地上へと舞い戻る…………
そのデジタルスピリットの名は…………
究極をも超えるデジタルスピリット、オメガモン!!
ー【オメガモン】LV3(4)BP21000
現れたのはウォーグレイモンを模した左腕、メタルガルルモンを模した右腕を持つ白き騎士型の超究極体デジタルスピリット、オメガモン。
元々センスのあったエールの感情が昂り、さらにそこに紫のオメガが加わり誕生した。正に絆を象徴するようなデジタルスピリットだ。
「オメガモン………はは、赤と紫のオメガが混ざり合うとこんなヤツが生まれるのか………ハッハ、欲しい、欲しいぞ!!……よこせエックスの女ァァァー!!」
「オメガモンの煌臨アタック時効果!!」
「!!」
「このスピリットのBP以下のスピリット1体を破壊!!……対象はスカル・ガルダ!!」
エールはオロチの言葉を無視してオメガモンの効果を発揮させる。オメガモンはメタルガルルモンを模した右腕から砲手を発現させ、それをオロチのスカル・ガルダに向けて構える………
神獣の咆哮……ガルルキャノンッ!!!
エールがそう技名を叫ぶと、オメガモンはそこから巨大な大砲を放つ。狙われたスカル・ガルダは避ける間もなく被弾し、跡形もなく消し飛んだ。
「さらに効果発揮後、ターンに一度回復!!」
ー【オメガモン】(疲労➡︎回復)
まだ効果が続くオメガモン。自力で回復状態となり、このターンは二度目のアタックを可能にしてみせる。
「煌臨スピリットは煌臨元となったスピリットの全ての情報を引き継ぐ!!…アタック中のウォーグレイモンから煌臨したオメガモンはアタック状態!!…さらにダブルシンボルでライフを2つ破壊できる!!」
「ハッハッハァァァー!!!……ブロックしろルナヘイズ!!」
今度はウォーグレイモンを模した左腕から巨大な剣を発現させるオメガモン。ルナヘイズの元までマントを翻し飛び行く。
ルナヘイズは咄嗟に死神のような鎌を構えようとするも、オメガモンの速さにはついて来れなかったか、構えた瞬間にその剣で鎌ごと八つ裂きにされて爆散してしまう………
「回復したオメガモンで追撃!!…このアタックで終わらせる!!」
「馬鹿かオマエは!!…ダブルシンボルじゃオレの3つのライフは破壊できなねぇ!!」
オメガモンは今一度左腕の剣を構えるが、彼の言う通り、ダブルシンボルでは一度のアタックで3つのライフを破壊する事はできない。それはバトスピを知る者なら誰でもわかる事だ…………
しかし………
「馬鹿はアンタよ。さっき言ったはずよね?……『次のターンは無い』って」
「ッ………!?」
エールはこのタイミングでオメガモンの第二の効果を発揮させる………
「オメガモンの更なる効果!!……煌臨元になったウォーグレイモンを破棄する事で、敵のライフ2つを破壊する!!」
「……何!?」
オメガモンの効果発揮宣言と共に、エールのBパッド上にあったオメガモンの煌臨元からウォーグレイモンのカードがコストとしてトラッシュへと破棄される。
これで通常のアタックに加えてさらに2点のダメージ、合計4点のダメージをオロチに与えられる………
オメガモンはウォーグレイモンを模した左腕にある剣に赤々と燃え滾る炎を纏わせ…………
「最後まで諦めないのが………私達のバトスピだァァァー!!!」
「ッ………!?」
天下の豪剣……グレイソードッ!!!
「ッ…………ぐッ………ぐぉぉぉぉぉぉぉおおお!?!!」
〈ライフ3➡︎1➡︎0〉オロチ
炎纏う天下の豪剣を横一線に振り払ったオメガモンの渾身の一撃がオロチのライフに炸裂。そのライフを1つ残らず消炭にした。
これまでに無かった凄まじいバトルダメージをオロチは諸に受け、叩き伏せられる。彼のBパッドからは「ピー…」と、彼の敗北を告げるような無機質な機械音が鳴り響いていた…………
これにより勝者はエール・オメガだ。土壇場で究極を超える力をその身に宿し、大逆転勝利を収めて見せた…………
「やっ…………やった…………ッ!!」
正直このオメガモンと言う存在が何なのかはわからない。
だが確かに勝った。勝って見せた。母親を殺害した後な紫のオメガを奪い、さらには仲間を傷つけたあの残虐なオロチを………
オメガ家の者としてその無念を晴らしたのだ…………
「ガッ………ハッ………!?」
そんな中、激しい痛みがオロチを襲っていた。まともに喋る事もできやしない。しかし、彼はこの状況下である事を思い出していた………
ー『なんであんな連中に虐げられないと行けない!?……この世界はバトスピが全てなんだろ!?…オレはマスターやエックスよりも強いんだぞ!?』
ー『ふふ、だったらこの私………ウィルの元へ来なさい。素晴らしい力の数々を貴方に与えましょう………存分にそれを振るうのです……強さだけでふんぞりかえる高身分者に見せつけてあげなさい』
それは弱者として身分の高い者達に虐げ続ける日々、虚しくて苦しかった日常。なんで王蛇に選ばれ、なんでメタルガルルモンが使えたのかまでのルーツを、原点を一気に、より鮮明に思い出して…………
「ッーーー!!!!」
「え?」
エールはその光景に鳥肌が止まらなくなった。
無理もない。突然オロチと、そのBパッド上のカード達が濃ゆい紫色の光を放ち始めたのだから…………
そしてこれは紛う事なき進化だ。負けた途端限界を超え、オロチはデッキと共に、カードと共に、感情や過去の記憶の何かがトリガーとなって進化したのだ。
「あぁ、最高の気分だ。理屈は知らねーが体中から力が溢れて来る…………よくオレの力をここまで引き出してくれたな、エックスの女ぁ……!!」
「ッ……!?」
「そのお礼だ………盛大に殺してやるよ………オマエの母親と全く同じ方法でな」
オロチは徐に立ち上がると、Bパッドに仮面ライダー王蛇のカードをセットし、召喚した。数々の鏡像が重なり合い、再び邪悪な紫のライダースピリット、王蛇が顕現する。
さらにその王蛇はソードベントのカードをベルトから引き抜き、杖の形をした武器に装填、「ソードベント!!」の音声と共に大蛇の尾の形をした剣をその手に握る。
そして首をゆっくりと回すと、それを固く握りしめ、エールの元まで走り出した。10年前エレナ・オメガを殺した時のように、その剣で腹に大穴を開けるつもりなのだ。
「……オメガモンッ!!………っ!?」
エールは咄嗟に場に残ったオメガモンで王蛇を退けようとするも、突如として謎の疲労感や倦怠感がのしかかってきた。
それはこれまでのバトルによるダメージやストレスによる疲労感が原因だろう。エールは既に限界を迎えていたのだ。これでは到底究極体をも超える力を有するオメガモンを動かす事は出来なくて…………
「死ねエックスゥゥゥー!!!!」
「ッ………まだよ。まだ私は諦めたりしない………!!」
最後まで生きる希望を捨てないエール。絶対に生き延びてアスラの所に帰りたい…………
そう強く願った。
そしてその想いは今運命と結びつき…………
更なる奇跡を促した…………
「………え?」
王蛇の剣がエールの腹部に突き刺さろうとしたその直後、その剣を誰かが脇で挟んで押さえ込んでいた………
その正体は紛れもない…………
チビでバカでアホで、身分もコモンな上にソウルコアが使えない最弱の設定の持ち主………だけどエールが心から信頼を寄せる最強の少年だ…………
「アスラ………ッ!?」
そう。
それは紛れもないスーミのアスラ。前のバトルで怪我を負いながらも、何故かこの場所を突き止め、こうして王蛇の攻撃を抑え込んだのだ…………
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!!」
「っ!?」
アスラは気合を入れ、雄叫びを上げると、そのまま右の拳で思いっきり王蛇を殴り飛ばした。余の威力に王蛇はオロチの背後にある壁まで吹き飛ばされてしまう……………
鋼鉄のような身を纏うライダースピリットを全力で殴った事により、アスラのその拳からは血が滴る。当然激痛が伴っているはずだが、彼はその拳をまた固く握り、息を大きく吸い込むと…………
ヘビヤロオォォォォォォー!!!!!
オレの仲間に手ェ出してんじゃねぇぇぇぇぇぇえ!!!!!!
「オマエはお呼びじゃねぇんだよクソチビィィィー!!!」
激怒しているアスラの怒号と言う名の咆哮が洞窟中に響き渡る。その様子にオロチはまた苛立ちを覚え始めていて…………
進化の力が体中を駆け巡っているのか、常に紫色のオーラを纏い、完全に常人を逸したオロチに対し、アスラは勝ち目があるのか…………
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最後までお読みくださり、ありがとうございました!!