「て、テンドウさん……そこの水取ってください……」
「あぁ?…命令すんじゃねぇ、自分で取れや!!」
「えぇ!?…見てわかるでしょ!!…オレこんなんですよ!?」
「関係ねぇだろ、そのくらいの限界、今すぐこの場で超えてみせろ!!」
「えぇぇぇぇ!?」
ライライ町の病院。その一室にて、アスラは全身を包帯でグルグル巻きにされた状態でベットに横たわっていた。見ての通り、そのままでは1人で水を飲む事すらままならない。そしてすぐ横には新聞を読んでいるテンドウがいるものの、彼は一切アスラを助けてはくれない。
いわゆる全身筋肉痛だ。あの洞窟での戦いの後、力を出し切ったアスラは結果的にこんな状態になった。無理もない、何せあの人外じみた力を得ていたオロチと2回もバトルを行なったのだから………
「むえ〜」
「おっ、ムエ!!…オマエまさかオレに水を飲ませて………」
「むむむむむえ〜」
「オマエが飲むんかい!!」
久し振りにオレンジの犬みたいな小動物ムエがアスラの目の前に現れ、ペットボトルの入った水をアスラに飲ませるのかと思えば、自分の短い前脚と後脚を器用に使い、ごくごくとそれを飲んで行った。
「ま、医者が言うには後1日休んでれば包帯外れるみたいだし、それまで飲まず食わずで行けば。オマエ貧乏人だったんだからそれくらい余裕だろ?」
「扱いがひでぇ!!」
おそらく今回の件では一番身体を張ったアスラだが、何故か扱われ方が芳しくない。もちろんテンドウとて彼の頑張りを無下に思っているわけではない………………多分。
「あ、そう言えばテンドウさん!!……聞きたい事あるんですけど!!」
「オマエ、手足動かせねぇくせにうるせぇな……元気君かよ………まぁいいや。何?」
「黒の世界とか、第7の属性ってわかります?……あのウィルとか言うちょび髭シルクハットヤロウがオレの龍騎にそんな事言ってたんっすよ!!」
アスラはウィルが自分を選んだライダースピリット、龍騎について話した事をテンドウに伝えた。黒の世界、第7の属性。聞いた事もないワードだったが、三王であるテンドウなら何か知っているのではないかと思ったのだ。
「あぁ?…んなもんオレが知るか。ぶっ飛ばすぞ」
「えぇぇぇぇ!?」
「黒だとか7だとか関係ねぇ。オマエはオマエを選んだライダーを信じればいいんじゃね?……まぁどうでもいいけど」
「!!」
テンドウの言葉を聞いたアスラは「確かに」と納得してしまう。
そうだ。何も悩む事じゃない。龍騎がウィルの物な訳ないし、あの時あの瞬間、諦めなかった自分だからこそ選んでくれた龍騎だ。黒の世界の力とか見るからに悪き力なわけがない。
「………そうっすよね!!……オレ、この龍騎と一緒に頂点王になってみせまァァァーす!!」
「あぁうるせぇ!!…ここ病院だぞ、殺されてぇのか!!」
「すんませんんんん!!!」
病院でタバコ吸ってる人に言われたくねぇ!!っとアスラは思ったが、口にしたら本当に殺されかねないので、敢えて凄まじい速度で誤った。
そんな時だ。病室の扉が勢いよく開いたのは…………
「邪魔するぞ」
「おっ、ツンデレお兄様〜…元気〜?…あの時は無駄足だったみたいだけど」
「貴様の憎まれ口を聞きにきたんじゃないぞテンドウ」
現れたのはエールの兄、エレン・オメガ。彼は単身でエールを救出しようと試みていたが、イバラが囮になったのもあり、結局はテンドウの言う通り無駄足となってしまった。
しかし、彼はテンドウの憎まれ口を軽く流すと、ベッドの上で転がっているアスラの元まで歩み寄り………
「あ、こんっちわ〜……え〜〜っと、ご機嫌どうっすかねお兄様?」
「貴様にお兄様と呼ばれる筋合いはない」
「えぇぇぇぇ!?」
気まずい雰囲気が流れる中、アスラは頑張って言葉を振り絞ってみるが、訳の分からないまさかの理由で一蹴されてしまう。
「おいおいツンデレお兄様よ〜…小僧に用件があって来たんだろ?……じゃあ早くすませろや」
「黙れ異国人」
テンドウが横から水を刺すが、それもまた厳しい言葉で一蹴。アスラには彼が何を考えているのかがさっぱりだった。
(………本当にこのコモンの者があのオロチを倒し命を賭けてエールを救けたのか?……にわかには信じがたいが………ここは一言礼とかを言うべきなのだろうか………しかしエックスで三王でもあるこの余がコモンに礼など………)
実際は悩んでいた。アスラにお礼をするかしないかで。
正直してやってもいい。しかし、そうすればこのコモンのドブネズミ………しかも何故か妹が好意を寄せる男を認める事になりかねない。
そう思うとどうしても言葉が出て来ない。しかし、それでもエレンはどうにか言葉を絞り出して見せ…………
「スーミ村のアスラ」
「は、ハイっす!!」
「オマエは頂点王になるんだったな。ならばこの余を超えてみろ」
「ッ!?」
「ただし、超えられるものならな」
エレンにそう言われて驚くアスラ。何となくだがエレンにも少しは認められた気がするからだ。
エレンのこの言葉はアスラをカードバトラーとしてある程度認めているが、妹の男としては全く認めていないという意味が込められている。もちろんアスラが彼の内心を知るわけもないのだが………
「おうっす!!…絶対アナタもテンドウさんもシイナも超えて頂点王になってみせまァァァーす!!」
「フッ……不細工な格好だな」
「えぇ!?…今そんなこと言う!?」
包帯でグルグル巻きになっているアスラを鼻で笑うエレン。この2人も少しは打ち解けて来たのが伺える。
しかし、ここまで話すとエレンはある事に気がついて………
「ところでエールはどこだ。見当たらないが…………いや別に会いたかったわけではない。ただちょっと気になっただけだ」
「会いたかったなら先にそう言えよ、このツンデレ兄貴」
「エールならさっき街に向かいましたよ!!」
「何!?」
テンドウはここでようやく理解した。エレンはエールの様子を見に来たのだと。
だが、アスラがエールは街に行ったと口にした途端顔が青ざめて………
「ふざけるなよ貴様ら!!……オマエ達の役目は妹を守る事だろう!?…エールに何かあったらどうする!?」
「えぇぇぇぇ!?…別に大丈夫でしょ子供じゃないんだからァァァー!?」
「テンドウ!!…貴様何故エールの護衛につかなかった!?」
「え。だって別に街に用なんてないし、それにアイツと一緒に街歩くと一々ガミガミガミガミうるせぇもん」
「理由になってないぞ!!」
その後エレンは「エールを探す!!」と力強く宣言すると病室を飛び出し、ライライ町の街へと向かった………
「……あの人結局何だったんすか………?」
「気にするな。ただの常軌を逸したシスコンなだけだ。寧ろ正常運転してるようで安心したぜ」
「ふーーーん。兄ちゃんって色々大変なんすね〜…………てか暇なんでシリトリしましょうよ!!」
「は?…んだオマエ。元気君かよ………まぁいいか、オレが買ったらタバコ買って来いや」
「えぇぇぇぇ!?……だからオレ今1人で歩けないんですけど!?」
アスラとテンドウはその後も男同士なんだかんだで楽しくやっていた。
******
ほぼ同時刻、エックスの身分を持つ少女、エール・オメガは黄色メインで彩るカラフルな街、ライライ町の中心である繁華街を歩いていた。
何も観光だけが目的で歩いているわけではない。今も激しいダメージが身体に残っているアスラのために何かプレゼントでも渡せないかと思い、こうして所狭しと店が並ぶ繁華街を歩いてるのだ。
身分が最高であるエックスの自分が底辺のコモンにやる事ではないのは百も承知だ。しかし、動けななくて不自由な時間が続くアイツが自分のプレゼントで喜ぶ顔が見れると思うと、不思議に足取りが軽くなるものだ…………
(いや、何考えてんのよ私っ!?)
妙な方向に向かっていた思考を止めるエール。どうやらこの夏の暑さで頭がおかしくなっているらしい。別にあんなバカでアホでチビでコモンで凄まじくポジティブなところだけが取り柄のアスラの喜ぶ顔が見たいわけではない。
(……まぁ、私のせいであんなになったわけだし、そのくらいはね……)
少なからずエールはアスラがあんな状態になったのは自分のせいだと感じていた。そのため、こうして街を1人で歩きながら良さげな物をプレゼントしてやろうと思っているのだ。
「見つけたぞエールッ!!」
「え?」
そんな時だ。ヤケに耳覚えのある声がエールの耳を通過した。彼女がその声の方へと振り返ると…………
「……え、エレンお兄様!?」
振り返った先には実の兄、三王のエレンだった。テンドウやアスラとの会話から近くに来ていたのは知っていたが、あろう事かまさか自分を探してこんな所まで来るとは思ってもいなかった。
「あ。えーーーっと、アスラから聞きました。私の事を探してくれてありがとうございます!!……お手数を煩わせました」
「むっ………何の話だ。余はただオマエの持つ母上の形見、赤のオメガを失いたくなかっただけだ」
「ッ……で、ですよね」
(いや違うゥゥゥー!!!…めちゃくちゃ心配してたんだよォォォー!!!…無事でよかったァァァー!!!…そして本当ごめん!!…こんな言い方しかできなくてごめん!!)
妹想いがすぎるエレン。彼女を前にするとどうしても辛辣な言葉を浴びせてしまう。しかもその言葉で妹が傷ついたと思えば罪悪感が募る。
本当はそんな事を言いたいわけではない。昔のように仲良くしたいが、何故かこの定着したキャラがやめられないのだ。
「……ところでエール。母上の事、ヤツ本人から聞いたみたいだな………」
「あ。はい……」
罪悪感を堪え、話を切り替えるエレン。
彼は今まで、いや、正確には彼だけではなく、テンドウやシイナ。エールに関わって来た大抵の人物が彼女らの母親であるエレナの死の秘密、本当は事故ではなく、オロチに殺害されていたと言う事実を隠蔽していた。
「………それに関しては………その……すまなかった」
「!?」
ここに来た時からそうする予定だったのか、意外にもここは素直に謝るエレン。というか素直に謝る事ができたエレン。
彼の意外な行動にエールは逆に戸惑う。
「テンドウから聞いた。オマエは1人で果敢にオロチに挑み、紫のオメガを取り返して見せたと…………本当に強くなったんだな………」
「ッ………!!」
この瞬間。エールは直感的に気づいた。自分がようやく憧れだった兄に認められている事。決して兄から粗野に扱われていたわけではないと言う事を………
そう思うと身体が固まってしまうほど嬉しくて…………
「だから………えーーー……その、なんだ………これからも頑張れ。オマエの好きなように生きろ」
「ッ………はい!!」
「………ではさらばだ………早く帰るんだぞ」
エレンは最後にそう告げるとエールの元を去っていく。そしてエールの顔が見えないくらいまで遠くに来ると…………
「……よっしゃぁぁぁぁぁあ!!!………久し振りにエールと喋れたぁぁぁぁぁあ!!!」
喜びの声が轟く。喋れたのか喋れてなかったかで言うと微妙なラインな気がしないでもないが、確かにどちらにせよ2人の距離が縮まって来ていたのは間違いない事ではあって……………
******
この日、エール・オメガはご機嫌だった。バカでアホでチビでコモンでポジティブなところが取り柄なアスラにプレゼントを上げてやっても良いと思える程に………
何せ今日、あのエレンお兄様が自分を褒めてくれたのだから。こんなに嬉しい事はない。
「さぁ〜〜てと!!…さっさとあのバカスラにあげるプレゼントでも買って帰りますか!!」
上機嫌なエールが鼻歌交じりにスキップをしながら繁華街を駆けていると………
またしても聞き慣れた声が聞こえて来た…………
「おっ!…だったら良い案があるよ!!」
「ッ!!………し、シイナ様!?……び、びっくりしたー」
「おっ久〜…マリーナ海街以来だね〜!!」
「……何て言うか……シイナ様って結構どこにでもいますよね」
その声の主は他でもない。この国の頂点王シイナだ。ラフな服装と、明らかに観光気分なサングラスが頂点王たる威厳を完璧に隠している。
「いや〜…テンドウから最近ライダーハンターズたるヤバイ連中がエールちゃんを拐ったって連絡あってさ〜…それで颯爽とここまで来てみればもう終わったって言うじゃない!?……それで、大丈夫だったの!?…もうお姉ちゃん心配でさ〜」
「は、はぁ……顔が近いです………」
凄まじい勢いでエールに近づくシイナ。彼女がエールの事をかなり心配していたのかが伺える。
しかしながら相変わらずマイペースと言うか掴みどころのない性格をしている頂点王シイナ。エールも長らく彼女と一緒にいるがその点は未だによく理解できていないでいる。
「えーーーっと……それでシイナ様。さっき言ってた良い案って何ですか?」
エールがシイナに聞いた。良い案とはおそらくアスラにあげるプレゼントの事で間違いないのだが…………
「それってエールちゃんがアスラにあげるんでしょ?……だったら簡単よ!!…自分の体にリボン巻きつけてー「私がプレゼントよ」ってやれば楽じゃん!!」
「は、はぁぁぁぁぁぁあ!?!……そ、そそそそんな事やるわけないじゃないですかぁ!!」
「いやそこをなんとか!!…私はエールちゃんとアスラの絡みが好きなんだ!!…結ばれて欲しいんだ!!」
「さっきから何言ってるんですか!?……わ、私はあんなバカスラなんてべ、別になんとも……!」
まさかすぎるシイナの提案。もとい要望。エールはそれを想像しただけで顔から耳までが真っ赤に染まる。
プレゼントにリボンを巻きつけた自分をプレゼントするなど絶対に好意があるのがバレてしまう。それだけは全力で阻止しなければならない。
「もーーー可愛いんだからエールちゃんはーーー……何年君を見て来てると思ってるんだよ〜…バレバレ!!」
「い、いや……だから違いますって……」
「よし!!じゃあ私とバトルしよう!!…私がバトルに勝ったら自分にリボン巻いてアスラにさっきの言葉言ってね!!」
「なんでそうなるんですか!?…嫌ですよ!!…なんで頂点王のシイナ様とバトルなんて……私が負けるに決まってるじゃないですか!!」
ギラギラと目を輝かせながらエールにバトルを申し込むシイナ。こう言った表情はどことなくアスラに似てないでもない。
エールは当然そのバトルを断る。無理もない、相手がこの国で最強な上に負けたら恥ずかしい行為をしなければならないのだから………
しかし………
「じゃあこうしよう!!…エールちゃんが勝ったらアスラの好きな女の子のタイプ。教えちゃう!!」
「なっ……!!」
さらにもう1つ条件を足してきたシイナ。その内容はアスラの親と言っても過言ではない彼女だからこそ提案できるもの。
しかし、アスラが好きな女の子の好みなど、普通の人ならはどうでもいい。と言うかそもそもな話あんな熱血ポジティブ男にそんなモノがあるのかと疑問がでるくらいだ。
だがエールは…………
「し、仕方ないわね……シイナ様がそこまで言うならエックスのこの私が相手してやらなくてもないわ!!……べ、別にあのバカスラの女の子の好みが気になってるわけじゃないんだからね!!」
「よし来た!!…そうこなくちゃね!!……じゃあ一目の少ない公園でやろうか!!」
もう正直アスラの好みが気になってしょうがない。本能的にこのバトルを引き受けてしまう。
シイナはそんなエールを「わかりやすくて可愛い〜」と内心でコメントを残しながらもバトルする場所を提案した。
その後2人は一目の少ないライライ町の公園まで赴くと、お互いのBパッドを展開し、デッキをセット。バトルの準備を行った。
「それにしてもエールちゃんとバトルなんて久しぶりだな〜……どのくらい強くなったのか、見せてもらおうか!!」
「フン……こう見えて最近すごい進化したんですよ!!…ひょっとしたらもうシイナ様なんて目じゃないかも!!」
「おお、言ってくれるね〜……私こう見えてこの国最強なんだけど」
エールの言う「すごい進化」とは、おそらくウォーグレイモンとメタルガルルモンが合体した奇跡のデジタルスピリット、オメガモンの事だ。
頂点王とは言え、普段はのほほんとしているシイナならばワンチャン勝てると思っている。長年彼女を見てきたエールだからこその考え方だろう。
「まぁいいや。どちらにしたって楽しみだ………じゃあ、やろうか」
「はい!!」
………ゲートオープン、界放!!
照りつける太陽の中、人目少ない公園にて、エックスの少女エール・オメガと、この国最強のカードバトラー、頂点王シイナのバトルスピリッツが幕を開ける。
先行はエールだ。彼女のBパッドの先端のランプが点滅し、ターンが進行されて行く。
[ターン01]エール
「メインステップ!!…先ずは勇気の紋章を配置!!…これでターンエンド!!」
ー【勇気の紋章】LV1
エールの背後に擬似太陽とも言える代物が配置される。彼女はそれでターンを終え、次は頂点王シイナのターンとなる。
[ターン02]シイナ
「メインステップ……じゃあ先ずはブイモンを召喚しようかな」
ー【ブイモン】LV1(1)BP2000
頂点王が颯爽と呼び出したのは小さな青き竜、ブイモン。彼女のデッキの筆頭とも言えるスピリットであり………
「召喚時効果……2枚見てその中の対象となるカードを1枚加えるよ……よし、ライドラモンを手札に!」
「!」
ブイモンの召喚時効果が発揮。頂点王シイナは新たなカードを手札へと加えた。そしてそのままそのカードを引き抜くと………
「でもって今加えたライドラモンの【アーマー進化】発揮!!…場の成長期スピリットを手札に戻して、コイツを召喚する!!」
「ッ……!!」
「現れろ、轟く友情ライドラモン!!」
ー【ライドラモン】LV1(1)BP5000
ブイモンの頭上に黒い瓢箪のような形をした何かが投下される。ブイモンは跳び上がり、それと衝突し、混ざり合って進化する。
そして、新たに現れたのは黒い鎧を纏う雷の獣、ライドラモンだ。
「出た。シイナ様のアーマー進化……」
「ライドラモンの召喚時効果!!…私のトラッシュにコアを2つ追加!!」
現れるなり気高い雄叫びを上げるライドラモン。その影響で頂点王シイナのBパッド上にコア2つが新たに追加された。
【アーマー進化】とは、いわゆるドーピングに近い。成長期スピリットをあらゆるタイミングで進化させる事ができるが、それ以上の進化はできない。頂点王シイナのデッキはこの進化方法も多用している。
「さ、ライドラモンでアタックしても勇気の紋章で返り討ちに会うだけだし、ここはターンエンドとしておこうかな〜」
手札:5
場:【ライドラモン】LV1
バースト:【無】
頂点王らしからぬ引き締まらない声でそのターンを締めくくったシイナ。次は再びエールのターンだ。
[ターン03]エール
「メインステップ………2枚目のネクサス、友情の紋章を配置!!」
「!!」
ー【友情の紋章】LV1
今度は紫属性の紋章ネクサスがエールの背後に配置される。太陽のような勇気の紋章と並び、その様は正に壮大であった。
「さらにバーストをセットして、太一のアグモンを召喚!!」
ー【太一のアグモン】LV1(1)BP3000
赤のオメガの成長期スピリット。黄色い肉食恐竜をこれでもかとデフォルメした見た目のアグモンがエールの場に現れる。その召喚時効果も発揮させ、彼女はその中の対象カード1枚を手札に加えた。
「勇気の紋章をLV2に上げて、アタックステップ!!…アグモンでアタック!!…友情の紋章の効果、完全体以下のデジタルスピリットのBPを3000アップ!!」
ー【太一のアグモン】BP3000➡︎6000
エールのアタックステップが幕を開ける。友情の紋章の力により、アグモンのBPがシイナの場のライドラモンの5000を超える。
シイナも折角のアーマー体スピリットを破壊するわけにもいかなくて………
「よし、ライフで受けようか!!」
〈ライフ〉5➡︎4
その攻撃をライフで受けた。アグモンの鋭い爪を振るう一撃が彼女のライフ1つを切り裂いた。
「ターンエンド!!」
手札:3
場:【太一のアグモン】LV1
【勇気の紋章】LV2
【友情の紋章】LV1
バースト:【有】
先制点を与え、勢いづくエールはそのターンをエンドとした。次は再び頂点王シイナのターンだ。まだまだ余裕のある表情を見せながらターンシークエンスを進めて行く。
[ターン04]シイナ
「メインステップ!!…手札に戻ったブイモンを再召喚!!」
ー【ブイモン】LV2(3)BP4000
シイナの場、ライドラモンのすぐ横に【アーマー進化】の効果で手札に戻っていたブイモンが再召喚される。その召喚時効果も成功し、シイナは新たなカードを1枚手札へと加えた。
「さらにもう一度、【アーマー進化】発揮、対象はブイモン!!」
「!!」
「今度はオマエだ。燃え上がる勇気フレイドラモンを召喚!!」
ー【フレイドラモン】LV2(3)BP9000
ブイモンの頭上にデジメンタルと呼ばれる赤くて丸い物体が投下される。ブイモンは跳び上がりそれと衝突し、混ざり合い進化を遂げる。
そして新たに現れたのは炎燃る竜人型のアーマー体スピリット、フレイドラモン。
「来た。シイナ様の相棒……」
「ふふ、結構久しぶりに使った気がするよ!!…召喚アタック時効果、BP7000以下のスピリット1体を破壊して1枚ドローする!!」
「!!」
「当然アグモンを破壊だ……くらえ、ナックルファイア!!」
炎の拳を弾丸として発射するフレイドラモン。エールのアグモンはそれに焼き尽くされ破壊されてしまう。
「バーストをセット。ライドラモンのLVを2に上げてアタックステップ!!…言って来いフレイドラモン!!」
ー【ライドラモン】(1S➡︎3S)LV1➡︎2
攻勢に回るシイナ。燃える竜人フレイドラモンは指示一つでエールのライフ目掛けて走り出す。ブロッカーどころかスピリットもいないエールはライフで受ける以外の選択肢が無くて………
「ライフで受けるわ!!……ッ」
〈ライフ5➡︎4〉エール
フレイドラモンの炎燃え盛る拳がエールのライフ1つを殴り砕く。さらにまだ攻撃は終わらない。今度はライドラモンの効果が発揮される………
「ここで!!…ライドラモンのLV2、3の効果!!…アーマー体か完全体以上のデジタルスピリットが相手のライフを破壊した時、追加でさらに1つのライフを破壊する!!」
「!!」
「プレイドラモンもアーマー体、よって効果適用!!……ブルーサンダー!!」
「ッ……ぐっ……!!」
〈ライフ4➡︎3〉エール
ライドラモンの気高い雄叫びと共に落雷する青き稲妻がエールのライフを直撃。そのライフが1つさらに砕け散った。
この瞬間。エールは理解した。このままカウンターを打たなければライドラモンの追撃によってまた2つのライフが失う事を………
それを防ぐべく、伏せていたバーストカードに目を向けると、勢いよく反転させた………
「バースト発動!!…アルティメットウォール!!」
「!!」
「バースト効果でアタックステップを終了させるわ!!」
バースト反転瞬間の刹那。場全体に猛吹雪が発生。エールは頂点王たるシイナのその後のアタックを凌いで見せた。
いくらシイナがこの国最強の頂点王と言えど、流石にこの状況はターンエンドと言わざるを得なくて………
「あちゃ〜……流石にこのくらいじゃビクともしないか〜…ターンエンドだよ」
手札:6
場:【ライドラモン】LV2
【フライドラモン】LV2
バースト:【有】
「いや、ビクともしてますよ!!……シイナ様強過ぎ、てか速過ぎ!!」
「ハッハッハ!!…そうかい、そりゃまぁ頂点王だからね!!」
シイナがそのターンをエンドとすると、絶甲氷盾によって吹き荒れていた猛吹雪は晴れ、エールのターンが幕を開ける。
まだエース級のスピリットがいないにもかかわらず異様な強さ、と言うよりかは速さを発揮する頂点王シイナ。いつもはのほほんとしているからすっかり忘れかけていたが、この人はこの国最強なんだとエールは改めて自覚する。
でもここまで来たからにはもう後には引けない。エールは自分の全力で頂点王シイナに挑んで行く。
[ターン05]エール
「メインステップ!!……よし、今度はコレで行くわ!!…ヤマトのガブモンを召喚!!」
「ッ……紫のオメガか!」
「召喚時効果!!…4枚見て対象となるカードを加える!!」
ー【ヤマトのガブモン】LV3(4)BP6000
現れたのは立派な一角と獣の毛皮を纏う紫属性の成長期スピリット、ガブモン。紫のオメガのカードの1種。赤のオメガで言うところのアグモンと同じ立場だ。
召喚時効果も成功し、エールは手札を1枚増やした。
「ガブモンか、随分と懐かしいね……」
「?」
エールの場に呼び出されたガブモンを見ながら感慨深くそう呟く頂点王シイナ。彼女は今、エールの母親、エレナ・オメガの事を思い出していて………
「ごめんねエールちゃん。1人でオロチと戦わせちゃって……怖かったろうに……本当なら私が1人でやるべきだった」
「え?……なんでシイナ様がオロチを……」
シイナの言葉に戸惑いを見せるエール。彼女はエールの母親、エレナ・オメガの死ぬ間際に居合わせていたのだ。エールはまだそれを知らなくて………
それ故にシイナはエールにオロチや紫のオメガの事を不本意ながら任せてしまった事に責任を感じていて………
だが…………
「なんかよくわかりませんけど、いいじゃないですか。こうして紫のオメガはここにあるわけですし」
「!!」
「関係ないですよ。終わったんです、因縁は。今を笑えたらそれでいいです」
そう言い切ったエール。
そうだ。もう何も誰かが気にする事はない。今こうして自分は無事でいて、紫のオメガも手元にある。それでいいではないか………
その言葉を聞くなり、若干暗がりだったシイナの表情はいつものように緩くなって行き………
「ふふ、なんかエールちゃん、アスラに似て来た?」
「え、えぇ!?」
「アイツも多分同じ事言うと思うよ!!…もっとデカい声で」
「あ、あんなアホスラと一緒にしないでください!!」
「もう〜…照れちゃって〜」
「照れてないッ!!」
このやり取りでシイナの心の中にあった曇りは少しだけ晴れた。少なくともエールが気にしていない事がわかったからである。言い方や考え方が前よりも凄まじくポジティブに感じるのはやはりあのアスラのお陰だろう。
そう言った意味ではアスラとエールを一緒に旅をさせたテンドウの判断はかなりの英断であると思えて…………
「よし!!…話が長くなったね、存分にかかって来なさい!!」
「はい!!…ぶっ飛ばしてあげますよ!!……勇気の紋章と友情の紋章のLVを2にアップ!!」
エールはそう言いながら立て続けに「アタックステップ……!!」と声を上げて宣言すると…………
「ガブモンの【進化:紫】発揮!!……第二のガルルモンに進化!!」
ー【ガルルモン[2]】LV2(4)BP5000
ガブモンが青白い光に包まれて行き、その中で進化を遂げる。やがてその光を弾き飛ばしながら現れたのは白銀の毛皮を纏う獣型の成熟期スピリット、ガルルモンだ。
「これが私の新しい力!!…アタックステップは続行!!…ガルルモンでアタック!!…効果でライドラモンのコア1つをトラッシュに!!」
「!!」
雄叫びを上げるガルルモン。それにより、シイナのライドラモンはコアを1つ外され、LVが2から1へとダウンしてしまう。
そしてさらに、成熟期スピリットの本領発揮はここからであり………
「さらに第二のガルルモンの【超進化:紫】発揮!!……完全体、第三のワーガルルモンに進化!!」
「おぉ……まだ来るか!」
ー【ワーガルルモン[3]】LV3(5S)BP12000
ガルルモンがさらに青白い進化の光を纏い、姿形を変えていく。そして光を拳で砕きながら現れたのは、二足歩行になったガルルモン。完全体のワーガルルモンだ。
「召喚時効果!!…2枚ドローして、その後私の手札2枚につき相手のコア1つをリザーブに置く!!」
「なに?」
「私の手札は6枚!!…よってライドラモンから2つ、プレイドラモンから1つのコアを除去。コアが0個になったライドラモンは消滅する!!」
ー【ライドラモン】(2➡︎0)消滅
ー【フレイドラモン】(3➡︎2)LV2➡︎1
鍛え上げられた拳を振い、そこから飛ぶ斬撃を発動するワーガルルモン。それらは真っ直ぐにシイナの場のアーマー体達に飛んでいき、命中。引き裂いて見せた。
フレイドラモンは辛うじて生き残るが、ライドラモンは堪らず消滅してしまった。
このターン、エールは強力な完全体スピリットを召喚しつつ、頂点王のスピリットを1体消し去り、ドローまで行った。この時点でかなりやり返したように見えるが…………
まだだ。まだエールはカードを1枚引き抜き、畳み掛ける………
「さらにフラッシュタイミング【煌臨】発揮!!……対象は第三のワーガルルモン!!」
「!!」
「ワーガルルモン、究極進化ァァァー!!!」
煌臨もとい究極進化を発揮させるエール。昔は何故かできなかったが、今となっては十八番となったこの戦術。ワーガルルモンが紫の光に包まれ、さらなる進化を遂げていく…………
「メタルガルルモンッ!!」
そしてその光の中で鋭い眼光を放つと共に気高い雄叫びを上げると、そこにいたのはワーガルルモンではなく、さらに進化した姿、鋼鉄のボディを持つ究極体のデジタルスピリットにして紫のオメガの象徴、メタルガルルモンだ……………
10年と言う長い年月の間、このカードはオロチの元にあったが、今となってはオメガ家の、いや、エールにとってとても大事なカードであって…………
ー【メタルガルルモン】LV3(4)BP16000
「メタルガルルモン………随分と久し振りだな……!!」
シイナは懐かしさの余りまたしても薄ら笑いを浮かべる。エールがエレナの顔と瓜二つなのもあって感動しているのだ。
この国のデジタルスピリットの三王の再来に…………
「行くわよメタルガルルモン………アタック!!」
「!!」
躊躇なくアタックを仕掛けるエールのメタルガルルモン。その強力なアタック時効果を遺憾なく発揮させる。
「アタック時効果!!……相手の場のスピリットかリザーブのコア2つをトラッシュに置き、回復!!」
「!」
「フレイドラモンのコア2つをトラッシュに置き回復!!……よってフレイドラモンは消滅よ!!」
ー【フレイドラモン】(2➡︎0)消滅
ー【メタルガルルモン】(疲労➡︎回復)
氷のブレスを放出するメタルガルルモン。フレイドラモンは炎の拳で迎撃しようと試みるも、炎ごとあっさり氷漬けにされ、堪らず爆散してしまった。
「メタルガルルモンはシイナ様にコアがある限りアタックし続ける!!……これで終わりです!!」
「ッ……ライフで受ける」
〈ライフ4➡︎3〉シイナ
メタルガルルモンは頂点王シイナのライフを1つ噛み砕く。スピリットを全滅させられた挙句、ライフやコアまでもを失ったシイナ。
しかし、流石にやられっぱなしなわけがないか、いつものような爽やかで余裕のある表情を見せながらバーストを反転させて………
「残念だけど、そう簡単にはイカせない。ライフ減少後のバースト、私も絶甲氷盾だ!!」
「!!」
「ライフ1つを回復。そしてアタックステップを強制終了」
〈ライフ3➡︎4〉シイナ
汎用性の高い白の防御マジックを発動させる頂点王。その効果でメタルガルルモンにやられた分のライフを取り戻し、ついでのように猛吹雪も発生させ、エールのその後の攻撃を食い止めて見せた…………
「くっ……やっぱりそう易々とは倒させてくれないか……ターンエンドです」
手札:5
場:【メタルガルルモン】LV3
【勇気の紋章】LV2
【友情の紋章】LV2
バースト:【無】
致し方なくそのターンを終えるエール。その瞬間に猛吹雪が止み、次は頂点王シイナのターンである………
[ターン06]シイナ
「メインステップ……それにしてもメタルガルルモン、やっぱめちゃくちゃ強いな〜……ここはちょっと逃げるか………ネクサス、ディーアークを配置!!…リザーブのコアを有りっ丈このカードの上に乗せる!!」
ー【ディーアーク】LV2(8S)
シイナが配置したのは掌サイズの小さな機械。デジタルスピリットを操るテクノロジーがそこには凝縮されている。
彼女がリザーブのコアを全てそのディーアークに乗せたのは訳があり…………
「メタルガルルモンはスピリットとリザーブのコア2つをトラッシュに送って回復するけど、ネクサスのコアは取り除けないんだな〜……さらにバーストも再セットして、ターンエンドだよ」
手札:5
場:【ディーアーク】LV2
バースト:【有】
様子見のつもりなのか、今回はネクサスの配置のみでそのターンを終える頂点王シイナ。それ程までにあのメタルガルルモンが強力なスピリットであるとも言えるが………
[ターン07]エール
「メインステップ……メタルガルルモンで連続アタックができないなら頭数を揃えるまでよ!!……第二のガルルモンとヤマトのガブモンを再召喚!!」
ー【ガルルモン[2]】LV2(2)BP5000
ー【ヤマトのガブモン】LV1(1)BP3000
前のターンの連続進化により手札へと戻っていた紫の獣達がエールの場に揃う。
「ガブモンの召喚時効果!!……カードを4枚オープンして対象のカードを加えるわ!!」
当然のように発揮され、当然のように追加される手札。しかし、この何気ない行動がシイナの伏せていたバーストカードのトリガーであり…………
「その召喚時もらった!!……バースト発動、キングスコマンド!!」
「!!」
「バースト効果でカードを3枚引き、その後1枚捨てる………そしてコストを払い追加効果!!…このターン、エールちゃんはコスト4以上のスピリットでアタックできない!!」
「くっ……」
反転されたバーストの効果を遺憾なく発揮させる頂点王シイナ。それによりメタルガルルモンと第二のガルルモンの身動きが取れなくなってしまう。唯一動けるガブモンでアタックしても良いが、それだけではシイナの4つのライフは削り切れなくて………
「………このターンはエンドです……」
手札:4
場:【メタルガルルモン】LV3
【ガルルモン[2]】LV2
【ヤマトのガブモン】LV1
【勇気の紋章】LV1
【友情の紋章】LV2
バースト:【無】
動きを封殺され、そのターンをエンドとしてしまうエール。しかし今のこの状況は彼女の圧倒的優勢であり、頂点王シイナはメタルガルルモンの効果に苦戦していると言っても過言ではなかった………
だが、それでもいつも余裕の表情を見せながらなんだかんだで勝利してしまうのが彼女と言う人間であり………
[ターン08]シイナ
「メインステップ……ふふ、そんじゃ少しだけ本気出しちゃおっかな〜」
「!!」
「ディーアークのLV2効果【カードスラッシュ】発揮!!…手札のデジタルスピリットを破棄する事で、そのカードのLV1BP以下のスピリットを破壊!!」
「なッ……!?」
25の歳の女性とは思えない子供らしい無垢な表情を見せながらネクサスカードの効果を発揮するシイナ。そしてそのコストとしてトラッシュへと破棄されたのは「パイルドラモン」と「ギルモン」のカードであり………
「パイルドラモンのLV1BPは7000。ギルモンは3000。よってそれ以下のBPを持つガブモンとガルルモンは破壊させてもらうよ!!」
頑丈な甲虫の甲殻を持つ竜戦士パイルドラモンと、真紅の魔竜、成長期の姿ギルモンがシイナの場に現れたかと思えば、パイルドラモンは腰に備え付けられた二丁の機関銃を連射し、ギルモンは口内から炎の玉を吐き付け、それぞれエールのガルルモンとガブモンを破壊した。
その後、一時的に呼び出されていたのか、2体はその姿をゆっくりと消滅させていった。
「そして、本日三度目。ブイモンを召喚!!…ディーアークの効果でドロー、でもって召喚時効果もちゃんと使わせてもらうよ!!」
ー【ブイモン】LV1(1)BP2000
三たび現れるブイモン。その召喚時効果は又しても成功し、シイナは新たなカードを手札に加える。
そして今度は加えるだけでは終わらなくて…………
「ブイモンの追加効果、召喚時効果発揮後に2コストを支払い緑の成熟期スピリット、即ちスティングモンを召喚する!!」
「!!」
ー【スティングモン】LV2(3)BP8000
ブイモンの横に颯爽と現れたのは緑のスマートな昆虫戦士、スティングモン。その召喚アタック時効果によりさり気なくコアが増える。
「さらに!!…デジタルブレイヴ、ズバモンを召喚してこのスティングモンに合体!!」
「デジタルブレイヴ!?」
ー【スティングモン+ズバモン】LV2(4)BP11000
黄金の鎧を纏う小さな成長期のデジタルブレイヴ、ズバモンが現れ、スティングモンと合体。スティングモンの身体に自慢の甲殻に加えてズバモンの黄金の鎧が追加された。
「アタックステップ……スティングモンでアタックしようか」
スティングモンでアタックするシイナ。効果で又してもさり気なくコアが増える。
エールの場にはBP16000を誇るメタルガルルモンが存在する。それに対しそれ以下のBPを持つスティングモンでアタックするのは一見愚の骨頂に見えるが………
「ソウルコアを払いフラッシュ【煌臨】を発揮、対象はスティングモン!!」
「!?」
「スティングモンは6色の色を持つズバモンと合体している。よってコイツの条件も満たしてる………来い、デュークモン!!」
赤き輝きを纏うスティングモン。その中で姿形を大きく変えていく。そしてスティングモンだったソレはその輝きを力強く解き放つと…………
ー【デュークモン+ズバモン】LV2(5)BP17000
白き鎧を装備し、赤いマントを靡かせる聖騎士型のデジタルスピリット、デュークモンに変わっていた。ズバモンとの合体の影響でその鎧はより刺々しくなっており、いつもの聖なる槍はビーム状のものへと切り替わっていた。
「で、出た……シイナ様のエース、デュークモン……!」
「ふふ、さぁエールちゃんは残り3つのライフをこの私から守る事ができるのかな??……デュークモンの効果。トラッシュにあるギルモンのカードを手札に戻して回復」
ー【デュークモン+ズバモン】(疲労➡︎回復)
エールをからかうような笑みを浮かべながらデュークモンのアタック時効果を発揮させるシイナ。これによりデュークモンはこのターンのみで2度のアタックを可能にした。
しかもメタルガルルモンのBPのそれを超えている。今度はエールが絶体絶命の状況に立たされてしまった………………
………かに見えた。
「フッ……守りますよ、それも完璧に!!メタルガルルモンでブロック!!」
「?」
最強のカードバトラー頂点王を前にしてもいつになく自身に満ち溢れているエール。メタルガルルモンがそんな彼女を守るべく迫り来るデュークモンに体当たりしていくが………
やはり駄目か、デュークモンは強固な盾でメタルガルルモンの体当たりを止めると、それを難なく弾き返した。この時点で力の差は歴然。メタルガルルモンは破壊され、エールは敗北を喫してしまうだろう………
だが、ここで負けじとエールは手札にあるあの最強のカードを引き抜いて…………
「見ててくださいよシイナ様!!……私の成長の証……!!」
「成長の証?」
「ソウルコアを支払い【煌臨】発揮、対象はメタルガルルモン!!」
「ッ……紫のオメガの究極体を煌臨対象に!?」
既に究極体であるメタルガルルモンを対象としたエールの煌臨宣言。それだけでも十分驚愕に値するが、まだ信じられない事が続く。
今度はメタルガルルモンの左側にウォーグレイモンが上空から飛来して来た。赤と紫のオメガ、その究極体達は揃ったことによりさらに強い咆哮をあげる。
「煌臨スピリットはウォーグレイモンなのか??……いや違う……これは」
何かとんでもない存在が出てくる事を察するシイナを他所に、エールはあのスピリットの召喚向上を高らかに述べていく…………
「右に友情、左に勇気!!……2つの勇姿重ね合う時、すべての闇穿つ英雄となる!!」
ウォーグレイモンとメタルガルルモンは自身を模した腕のようなパーツに変化し、宙を舞う。そして光と共にそれらは混ざり合い、今こそ究極を超えた姿となって地上へと舞い戻る…………
そのデジタルスピリットの名は…………
「究極をも超えるデジタルスピリット、オメガモン!!」
ー【オメガモン】LV3(4)BP21000
現れたのはウォーグレイモンを模した左腕、メタルガルルモンを模した右腕を持つ白き騎士型の超究極体デジタルスピリット、オメガモン。
元々センスのあったエールの感情が昂り、さらにそこに紫のオメガが加わり誕生した。正に絆を象徴する最強のデジタルスピリットだ。
「ッ………ウォーグレイモンとメタルガルルモンが合体した!?」
「はいそうです!!…これが、これこそが今の私の全力、最強スピリット、オメガモンッ!!」
シイナがその凄まじき存在に驚愕する間もなくエールは「煌臨アタック時効果発揮!!」と高らかと声を張りオメガモンの効果を発揮させて…………
「このスピリットのBP以下のスピリット1体を破壊してターンに一度回復する!!」
「ッ………オメガモンのBPは21000……て事は」
「当然、BP17000のデュークモンを破壊よ!!……神獣の咆哮…ガルルキャノンッ!!」
メタルガルルモンを模したオメガモンの右腕から巨大な砲手が出現。オメガモンはそれを構え、デュークモン目掛けて派手にぶっ放す。
デュークモンはそれに直撃し、破壊…………
されるかと思われたが…………
「デュークモンが効果の対象になったそのタイミング、手札にある赤のブレイヴカード、グラニの効果!!」
「!!」
「これを1コスト支払い召喚!!…そうした時このターンの間デュークモンは効果破壊されない!!」
「なっ!?……ガルルキャノンを防いだ!?」
ー【グラニ】LV1(1)BP6000
直撃の瞬間、デュークモンの前方に現れ、身代わりとなったのは真紅の身体を持つ飛行物体グラニ。弾幕には強いのか、ガルルキャノンの直撃でもその身体には傷一つ付かなくて…………
「だけど煌臨スピリットは煌臨元となったスピリットの全ての情報を引き継ぐ!!…デュークモンとバトルしていたメタルガルルモンに煌臨したオメガモンはデュークモンとBPバトルを行わなければならない!!」
「!」
「行けオメガモン!!」
マントを翻し、ウォーグレイモンを模した左腕から聖騎士たる聖剣を発現させると、そのままデュークモンへと襲いかかるオメガモン。
デュークモンは迎撃すべく聖なる盾の中心部から極太のレーザーをオメガモンに向けて発射。しかしオメガモンはその聖剣でそれを斬り裂きながら凄まじい速度で接近。遂にデュークモン自身もその聖剣の一太刀を浴びてしまう。
流石にその痛みからは逃れられなかったか、デュークモンは力付き、倒れ爆散してしまう。その際にデジタルブレイヴであるズバモンが逃げるように飛び出してきた。
「や……やった……シイナ様のデュークモンを倒した!!……この私が!!」
「あちゃ〜……この私のデュークモンがやられるなんてね〜……にしても赤のオメガと紫のオメガが合体した究極を超えた存在オメガモンか……全く、昔から潜在能力はあると思ってはいたけど、まさかここまで強いカードを進化させるなんて、凄いじゃないか〜……」
「えへへ……当然よッ!」
なんだかんだで憧れだった頂点王シイナに褒められ、頬を少し赤くしながらもそれを嬉しく思うエール。
実際凄まじかった。長年変わることのなかったオメガのカード達を進化させ、今の形を創り上げているのだから………
エールはどうやら無自覚のようだが、これがどれだけ凄いことなのかは計り知れない。
「アタックできるスピリットは3体いるけど……オメガモンがまだ動ける上に勇気の紋章が邪魔だ………仕方ない、ここもターンエンドとしようかな」
手札:4
場:【ブイモン】LV1
【ズバモン】LV1
【グラニ】LV1
【ディーアーク】LV2
バースト:【無】
自信満々で呼び出したエースたるデジタルスピリット、デュークモンはあっさり返り討ちにされ、本当にエールにライフを守り抜かれたシイナ。妹的な存在だったエールの成長を嬉しく思いながらもそのターンをエンドとした。
次はエールのターンだ。デュークモンをも破ったオメガモンが再び動き出す。
[ターン09]エール
「メインステップ!!…今度はアンタの出番よ……来なさい、ウォーグレイモンッ!!」
「!!」
ー【ウォーグレイモン】LV1(1S)BP8000
エールの場、オメガモンのすぐ左側に立ち上がる炎の柱。その中でそれを引き裂き現れたのは他でもない、エールのエースカード、鉤爪のような武器を持つ究極体のデジタルスピリット、ウォーグレイモンだ。オメガモンと並び高らかに咆哮を上げる。
「おぉウォーグレイモンッ!!…メタルガルルモンとかオメガモンとかで見落としガチだったけど、エールちゃん遂に究極進化できるようになったんだね!!」
「残念ですけど、私なんか褒めてる暇ないですよ!!」
「!!」
「召喚時効果、BP合計15000まで好きなだけ破壊!!……残った3体のスピリットを全て破壊する!!……大玉ガイアフォースッ!!」
昔から何故か究極進化が出来なくて苦労したエールを思い出すシイナ。そんな彼女が今では己の手足のようにそれを扱っていると思うとかなりの感動モノだが、
そんな干渉に浸る間もなくウォーグレイモンは両掌から巨大な火球を作り上げ、それを大きなモーションでシイナの場のスピリット達へと力強く投擲する。それは3体のスピリット全てに命中し、シイナの場を焼き尽くして見せた…………
「よし!!…行ける……アタックステップ!!…オメガモンでアタック!!」
エールの指示で再びオメガモンが動き出す。狙いは当然シイナの残り4つのライフだ。そしてそのオメガモンにはライフを一瞬にして破壊してしまう強力な技があって………
「オメガモンは効果で回復!!…さらにフラッシュ!!…オメガモンは煌臨元になったコスト9のスピリットカードを破棄する事で、ライフ2つをトラッシュに送る!!」
「!!」
「煌臨元になったメタルガルルモンのカードを破棄し、効果適用!!………行くわよオメガモン……天下の豪剣……グレイソードッッー!!」
〈ライフ4➡︎2〉シイナ
「おぉ……これはちょっと効いたな」
左手の豪剣に炎を灯し、シイナのライフへとそれを振るったオメガモン。そのライフを一気に2つ葬り去った。
「オメガモンはダブルシンボル!!…そしてシイナ様の場にブロッカーは0!!…これで終わり!!」
完全に勢いに乗ったエール。確かにここまで来れば勝利への疑問は確信に変わってもおかしくない。
だが、やはりあの頂点王は甘くはない。シイナは眼前に迫るオメガモンを目に映しながら「仕方ないか」と口にし、手札のカードを切って………
「フラッシュマジック…デルタバリア!!」
「!!」
「これによりこのターンの間、コスト4以上のスピリットのアタックでも効果でもライフが0にならない………オメガモンのアタックは当然ライフで受けてあげるよ」
〈ライフ2➡︎1〉シイナ
グレイソードでシイナのライフを斬り裂こうと試みるオメガモンであったが、結局その数を1より少なくできなかった。オメガモンは諦めてエールの場へと飛び戻った。
「くっ……!!」
「いや〜…今のは危なかったな〜…まさかデュークモンが破壊されるどころかデルタバリアまで切らされるなんてね。でももうこのターンは無理でしょ」
「………ターンエンドです」
手札:3
場:【オメガモン】LV3
【ウォーグレイモン】LV1
【勇気の紋章】LV1
【友情の紋章】LV2
バースト:【無】
デルタバリアの効力を無効にするためにはこのターンをエンドにするしか手はない。エールは致し方なくオメガモンとウォーグレイモンをブロッカーとして残し、そのターンをエンドとした。
次はいよいよ追い込まれた頂点王シイナのターンだ。しかし、彼女は全く焦らずそのターンを進めていった………
[ターン10]シイナ
「メインステップ……ふむ。それじゃあここまで頑張ったエールちゃんのためにもう1体だけ私のエースを見せてあげよう」
「!?」
一瞬聴き間違えたかと思った。
ただでさえ強いデュークモンをエースとしているシイナのデッキにさらにもう一体エースカードがあると言う。しかし、彼女がこの国最強の頂点王たる人物であるが故、その言葉にはとても信憑性と重みがあって…………
「来い皇帝竜インペリアルドラモン・ドラゴンモード!!」
「ッ!?」
ー【インペリアルドラモン ドラゴンモード】LV2(3)BP13000
シイナの場の上空から出現したのは背中に大砲、翼を持つ巨大なドラゴン。オメガモンをも超えるサイズを持つそれは出現するなりエールのスピリット達を威嚇するように睨みつける……
「ディーアークの効果でドロー……」
「これがシイナ様のもう一体のエース!?……た、確かに強そうだけどオメガモンよりBPは下……ならまだ勝機はある」
「フフン!!…別にオメガモンを倒してエールちゃんに勝とうとは思ってないよ!!」
「え?」
シイナはそこまで言うと「アタックステップ……!」と、徐に宣言してみせ…………
「行けドラゴンモード!!……さらにこのフラッシュタイミング…ソウルコアを支払い再び【煌臨】を発揮。対象は言わずもがな、このドラゴンモード!!」
「ッ……シイナ様も究極体にさらなる煌臨を!?」
突然のシイナの煌臨宣言。上空に激しい雷鳴を鳴り響かせる異次元の渦が現れたかと思うと、ドラゴンモードはそこに吸い込まれるように中へと向かい、姿形を大きく変形させていく。
「インペリアルドラモン、モードチェンジ!!……現れよ、ファイターモードッッ!!」
ー【インペリアルドラモン ファイターモード】LV2(3)BP15000
その異次元の渦から再び姿を見せたのはドラゴンモードではなく、竜型から人型へと形を変えたインペリアルドラモン。名をファイターモード。
「ファイターモード……これは進化じゃなくて姿の入れ替え??…まるでライダースピリットみたいな」
「さぁシメるよ!!…ファイターモードの煌臨時効果、スピリットを10体疲労させる」
「なッ!?」
「ウォーグレイモンとオメガモンを疲労!!……ポジトロンレーザー!!」
ー【ウォーグレイモン】(回復➡︎疲労)
ー【オメガモン】(回復➡︎疲労)
右腕に備え付けられた砲手から極太のレーザーを放つインペリアルドラモン・ファイターモード。ウォーグレイモンとオメガモンは咄嗟にそれをガードするも、膝をつくほどのダメージを受けてしまい、疲労状態となった。
「これでもうブロックはできない。攻撃は受けてもらうよ」
「ッ……ライフで受ける!!」
〈ライフ3➡︎2〉エール
攻撃を防ぐ手段が無い。エールはそのアタックをライフで受けた。飛び立ったインペリアルドラモン・ファイターモードの拳の一撃が彼女のライフ1つを砕いた。
そしてこの瞬間、さらなる効果が起動してしまい………
「インペリアルドラモン・ファイターモードのもう1つの効果。相手のライフを減らした時、さらに2つのライフを破壊する……!!」
「なッ……2つ!?」
翼を広げ、上空に飛び立つファイターモード。そして腕にある砲手を胸部にあるドラゴンモードの頭部へと合体させると、そこから徐々にと膨大なエネルギーを溜めていき…………
「行け、ファイターモード………超然の一撃……ギガデスッッ!!」
シイナの叫ぶ技名と共にエールのライフに向け、その膨大なエネルギーが溜まった巨大な弾丸を放つ。それは一直線に彼女の元へと飛び行き………
「ッッーー!!!」
〈ライフ2➡︎0〉エール
そのライフを木っ端微塵に破壊してみせる。エールのBパッドから敗北を告げるように「ピー……」と無機質な音が流れる。
ウォーグレイモンとオメガモンと言う強力なデジタルスピリットをエールの場に残しながらも、頂点王シイナが勝利して見せた。
ー……
「はぁ……負けた………シイナ様強すぎ」
「ハッハッハ!!……そりゃまぁ頂点王だからね!!…因みに私はまだ実力の半分も出してないんだな〜」
「それはウソですね。多分8割くらい本気だったと思います」
「て、手厳しい………ま、まぁ信じるか否かはエールちゃん次第なんだけどさ〜」
バトルが終わり、楽しそうに談笑するエールとシイナ。
シイナは勝利こそしたが、妹に等しい存在であるエールの成長を誰よりも……いや、エレンの次くらいに喜んでいた。
「まぁそれはさておき、リボンでも買いに行こうか」
「え?…なんでリボン?」
「だって私が勝ったからね!!…アスラの前で自分の身体にリボンを巻いて「私がプレゼントよ!」って言ってよね!」
「なっ!?!」
すっかり忘れてた。
そう言えばやったねそんな約束。
今思えばバカみたいな事したなって思うわ。あのバカスラの好みの女の子を知りたいがために頂点王に挑むなんて………
「し、シイナ様!!……ここはなんとか無効とかにできませんか!?…もうめっちゃくちゃ嫌なんですけど!!」
「えぇ………そうだな………よしじゃあ裸じゃなくて服の上からリボン巻いて良いよ」
「は、裸でやらせるつもりだったんですか!?」
ー…
その後もなんだかんだあり、シイナとエールは買い物を済ませ、アスラとテンドウのいるライライ町の病院へと帰宅中だった。
もちろんリボン以外のモノもちゃんと買った。りんごとかそれっぽい果物とか色々。
「あっそうそう、アスラの好きな女の子のタイプだけど………私アイツが5歳になる年までしか一緒に暮らしてないからそこら辺はわからないんだよね〜」
「えぇ!?……じゃあ騙したんですか!?」
帰り際、大量の買い物袋を手に脇に背負いながらシイナがエールにそう言って来た。シイナはエールにやる気を出させるためだけにウソをついていた。まぁ結果としてはエールの成長した実力が見れて御の字だったのだが………
「いや〜…ごめんごめん!!…でもアイツはエールちゃんみたいな素直な子、好きだと思うな〜!!」
「なぁッ……アナタって人はまた……か、からわないでください!!」
「ハッハッハ!!……まぁまぁそう赤くなるなって!!」
顔から耳まで赤くするエール。
この自分よりも偉そうな女性には幼い頃からいつもいつも振り回されているが、それでもやはり一緒にいるのは楽しくて…………
******
そして夕暮れの時間帯。オレンジの光が病室に差し込む中、エールがアスラの病室に帰ってきた。もちろん頂点王シイナも一緒だ。
「今帰ったわよ」
「おぉエール!!…お帰りィィィー!!……てかなんでシイナまでェェェー!?」
「頭しか動かせないくせに相変わらずうるっさいわねアンタは」
「あっはは!!…久しぶりだねアスラ〜…随分とボロボロだ。また強くなったか?」
「おう!!…またシイナに、頂点王に一歩近づいたぜ!!」
突然自分の親にも等しいシイナが現れて驚くアスラ。だが、育ての親にまたこうして会える事はやはり嬉しいか、笑顔を見せる。
「いや〜…テンドウさん途中でどっかいっちまってよ〜…話し相手がムエしかいなかったからなんか嬉しぜ〜………てかエール。お兄様が探してたぞ」
「あぁ、それなら会ったわよ。別に大した問題じゃなかったわ」
「むえ〜」
「なんか凄い既視感を感じるなこの犬」
テンドウは何やら仕事が入ってしまったらしく、アスラの病室を留守にしていた。それ故、アスラはそれなりの時間を「むえ」としか喋れないオレンジの謎の犬、ムエと一緒に過ごしていた。
「あのむさ苦しいテンドウのヤツがいないのは割と好都合な気がするな………よし、エールちゃん!!……今だ!!頑張れ!!」
「え……い、今ですか!?」
「もち!!」
「ん?……何、何すんの?」
親指を上に立てるシイナが言いたい事はとどのつまりプレゼントと言う名の自分を渡せと言う事だ。何をするのかわかっているエールは又しても顔を赤く染めてしまうが、何が何だかわからないアスラは頭の上にある疑問符が取れない。
「そりゃもう当然!!…今回頑張ったアスラにエールちゃんからの最高な贈り物だよ!!」
「えぇ!?…何、オレなんかもらえちゃうのかァァァー!?…なんか無駄にお金使わせてごめん!!」
わからないアスラに軽く説明を入れるシイナ。アスラは申し訳ないと思って謝罪する。別に見返りは求めてないし、何なら自分のためと思ってやった事だ。ここまでされるとは思ってなかった。
が、当然嬉しくないわけではない。
「べ、別にいいわよ……お金なんて有りすぎて重たいだけだし」
「………え、なにそれ………リボン?」
エールはそう言いながら買い物より買ってきたプレゼント用リボンを取り出す。アスラはここで又しても疑問符が頭に立ち上がる。
そしてエールは恥ずかしそうにしながらも、それを適当に自分の身体に巻きつけた。シイナはさらに「言って言って!」と、言葉を催促する。アスラの頭の上にはますます多くの疑問符が立ち上がった。
「えぇっと……その、何て言うか……アンタが今回そんなになったのは私のせいだと思ってるから………」
「ん?……オレ別にオマエのせいとか思ってないけど」
「あ、アンタは良くても私はダメなの!!……それで、そ、その……わ、私がプレ、プレゼゼゼゼ………」
「私がプレゼントよ」と言いたいところだが、肝心なところでめちゃくちゃ舌を噛むエール。恥ずかしさのあまり滑舌が回らないのだ。その後ろでシイナは既にご満悦のような表情を浮かべている。本当にこの頂点王は人が悪い。
するとそんな時だ。アスラが何かを思い出したように「あ、そうだ」と呟いたのは………
「そう言えばよ、オレもオマエにプレゼントあったんだ」
「へ?」
「えーーーっと、どこに閉まってたかな…………お、あったあった!!」
そう言いながら、アスラは包帯の隙間から小さなプローチをエールの前に出した。星の形をしていて、色が赤い。
突然の事にエールは驚きが隠せず、開いた口が塞がらなかった。
「なぁッ……こ、これどうしたのよ……?」
「ん?…ほら、テンドウさんと冬服買いにオウドウ都のデッカイ店行った時にさ、オレ、オマエからお金借りたじゃん?…そのお返し」
「いつ!?…いつ買ったの!?」
「ライライ町のテーマパークたる所でオマエが機嫌を損ねた時」
アスラと言う人間はなんとも義理人情に熱い男だ。あの時のエールはお金を貸したのではなく、あげたのだ。別に返してもらおうと思っていなかった。
コモン故に貧乏な生活を続けていたアスラの事だ。きっと頑張って余らせたお金で買ったな違いない。そう思うとエールは凄く嬉しくて………
「いや〜……渡しそびれてたけど、なんとか思い出せて良かったぜ〜…ワッハッハ!!」
「あ、ありがとう……大事にするわ……!!」
(………おぉ、アンタもプレゼント用意しようとしてたとはやるじゃんアスラ!!…ぶっちゃけ今まで鈍感天然たらしだと思ってたけど、流石は私の自慢の息子!!)
「……で、オマエからのプレゼントってなんだ?」
「へ?」
ギクッと、心の中でそんな音が響いてきたような気がしたエール。
こんな素晴らしいプレゼントを好きな男の子から貰えたのだ。今更リボンを巻いた私がプレゼントとは口が裂けても言えない。馬鹿馬鹿しいにも程がある。
「え、えーーー……っと……それは…………ハッ!?」
咄嗟に閃いたエール。身体中に巻いていたリボンを脱ぎ捨てると、買い物袋から真っ赤に染まったリンゴを取り出すと………
「これよ!!」
「おぉ!!リンゴか!!…流石エール、気が利くな〜」
「フン…当然、私はエックスよ」
(まぁこれはしょうがないよね〜……今日は私が悪かったよ、ごめんねエールちゃん)
食べ物で誤魔化す作戦に出た。普通ならばさっきまで存在していたリボンの意味が分からず混乱するであろう。しかしアスラはバカすぎてリボンのことなんてすっかり忘れてしまっている。
エールの気持ちを汲んだとは言え、2人を無理矢理くっつけようとしたシイナはその様子を見て内心でとても反省した。
「って言うかオレ今こんなんだし、どうやってリンゴ食おう?」
「ッ……しょ、しょうがないわね!!…私が皮を切って食べさせてあげるわよ!!」
「おぉマジ!!…サンキューな!!」
(な、成る程!!…その手があったかーーー!!…これはナイスだエールちゃん!!…切ったリンゴをアスラに「あ〜ん」して食べさせてあげればきっと2人の距離はもっと縮まってくれる!!)
包帯で身体中をグルグル巻きにされ、芋虫状態のアスラはリンゴを食べられない。エールがリンゴを購入した時に一緒についていた小包丁を取り出し、皮を剥き始める…………
シイナは感動していた。めちゃくちゃナイスな考えだと思っていた。
しかし…………
「……って言うかオマエリンゴの皮剥けたんだな!!」
「は?」
「いや〜……オマエって何て言うか、ガサツそうって言うか不器用そうって言うかさ〜……なんか女の子っぽい事できないイメージだったんだよな!!」
「ちょ、ちょっとアスラ……そ、その辺にした方が……」
デリカシーの欠落したアスラの発言。エールは当然腹を立てる。何とかしてこの急激に悪くなった流れをとめたいシイナは制止を促す声を施すが、聞き取れないのか、アスラはさらに口を動かして…………
「だってオマエめっちゃ力強いじゃん!?…何回もオレをぶっ飛ばすしさ〜…ゴリラでも中々そんな事できねぇぜ!!」
「………」
アスラ的には褒めているつもりなのだろう。エールの良いところを全面的に言ったつもりだった。しかし例え方があまりにも悪すぎる。
シイナは「あ〜あ」と、全てを水の泡にされたような声を漏らす。そして当の本人であるエールからは鬼神のような強烈なオーラを輩出しており…………
「ちょっと…………」
「ん?」
「誰がゴリラ以上よ!!…アンタに言われたくないわこのバカスラァァァァァァー!!!」
「えぇぇぇぇ!?……なんでだァァァー!?」
その後は言うまでもない。エールにぶん殴られたアスラの入院期日は2日程伸びた。
2人の距離は縮まったようなそうでもないような………結局は微妙な感じになって一旦幕を閉じた。
因みにエールはアスラから貰った星型のプローチは服の胸部につける事にした。なんやかんやあったが、やっぱり彼から貰えたプレゼントは嬉しかったようだ。
〈オマケストーリーズ!!〉
【リンゴ】
「リンゴの皮くらい剥けるわよ!!」
「おぉ!!頼もしいぜ!!」
そう言いながらエールは自信満々にリンゴの皮を小包丁で赤々としたリンゴの皮を剥き始める………
しかし………
「どうよ!!」
「……どうってオマエ……実も一緒に剥いてんじゃねぇか!?…どこ食えばいいの!?」
皮だけでなくリンゴの中身までもを切り刻んだエール。満足げな表情でアスラにそれを見せつけるが食べる場所がどこにもない。
やはりエールはアスラが思ってた通りめちゃくちゃ不器用だった………
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最後までお読みくださりありがとうございました!!
次回はコラボ回をやって行きますよ〜