ここはオウドウ都。この国の中心都市であり、エックスの身分を持つ者達や三王、頂点王など、とにかく有力者達が一堂に集っている。
そんな中心都市、オウドウ都のさらに中心にある三王塔にて、三王の1人、テンドウ・ヒロミはある来客に対応していた。
正直なところその人物は面倒が臭いのか、ふてぶてしい表情をしながらタバコを吸っている事から、それが流暢に現れている。
「と、言うわけでテンドウ。儂ちゃんが開発したこの『異世界転送装置(仮)』を使わーんかーい!」
「何がと言うわけでだ。誰が使うかこのマッドサイエンスジジイ」
テンドウの来客は白くてくたびれた髭や髪、そして白衣が特徴的な年老いた男性。テンドウの言う通り、見た目は如何にもマッドサイエンティスト。裏で怪しい発明をしていると言われたら信じられてもおかしくないような見た目をしている…………いや、実際しているのだが………
そんな彼がBパッドよりも小さいスイッチのようなものを手にしながら、それをテンドウに使えと気が抜けるような呑気な声で催促していた。
「まぁまぁ、そう言わずにさ〜…この間オウドウ都にやって来た可愛いらしい2人の異世界人。その娘らが持ってた七罪竜とか言う妙なカードをお借りして、儂ちゃんがちょちょいのちょいで作り上げたんじゃよ〜…信用せぇ」
「だからできねぇんだよ。ぶっ殺されてーのか白髭くたびれジジイ」
この来客は『ネコガイヌ博士』と呼ばれるオウドウ都専任の開発者。街の構造やバトラーにとっては欠かせないBパッドの開発までを担当している意外と凄い人物。
テンドウとはどうやら古い付き合いらしく、新しい発明をした際は先ず真っ先に彼の元へ行くのが彼の生活の一貫だった。そしてテンドウは毎度毎度その発明とやらのせいで酷い目に遭って来ている。
しかも今回は『異世界転送装置』と言う名前からしてすごい物騒な代物であるのは間違いない。テンドウは意地でも関わりたくなかった。
「よく考えて見ろよテンドウ〜……今回の件で世界には様々な種類がある事を知った。つまり」
「つまり、なんだよ?」
「つーまーりー……この世にはまだ良い乳の娘がたくさんおるっちゅう〜事じゃろーなっはっはっは!!」
「完全に色欲に飲まれてんじゃねぇか!!」
完全に頭がどっかいっちゃってるネコガイヌ博士。これでこの国の重要人物なのが少し腹が立つし、何よりの疑問だ。
「てか、そんなに乳のデカい女に会いたいなら自分で使えやこのエロジジイ。勝手に人を巻き込むんじゃねぇ」
「バカ者〜…異世界じゃよ異世界!!…何が起こるかわからんから三王のオマエをモルモットにしようと思ったんじゃろが〜い!」
「呑気な声でサラッと腹立つ事言うよなテメェ」
いい年こいて美女をはべらかしたいネコガイヌ博士。実はこの間不本意ながらオウドウ都にやって来た金髪の少女と胸が大きめな紫髪の少女の写真をこっそり隠し持っていたりする。
「ぶっちゃけどこの世界に着くかわからないけど取り敢えずBパッドの外装に使う鉄とか取ってこい。この装置もまだ完全じゃないからの〜」
「おい。行く前提かよ。つか、やっぱまだ完成してねぇんじゃねぇか。信用できるかっての」
「ほんじゃ行くぞテンドウ〜」
「ッ……お、おい無視すんな。ちょっとま」
「ポチッとな」
「ッ!?」
勝手に話を進めた挙句、異世界転送装置たるスイッチをテンドウに向けて押したネコガイヌ博士。テンドウの身体はたちまち粒子と化してこの世界から消滅して行った。
「ほえぇぇぇぇえ!!!…やっぞい!!…実験は大成功じゃ!!…そんじゃ頑張れよテンドウ〜」
実験は大成功したと諸手を挙げて大喜びするネコガイヌ博士。スイッチ1つで人間一人を異世界に飛ばしてしまう装置を開発した彼はまさに天才博士と言えよう。
ただやはりそのテンドウ以上にマイペースすぎる性格にはどうしても難があるが………
******
ここはアスラ達の住う世界とは全く違う世界。
文化も町並みも、人の在り方も、そして何よりバトスピもこの世界とアスラ達の世界とでは全く異なるのだ。
これはそんな世界にある統一国家『
ー………
ここは統一国家『真』にある職人街と呼ばれる場所。様々な職人達が今日も各々得意とする物を作り上げている。
そんな中、包丁を打っては研ぎ、打っては研ぎを繰り返す青年がいた。その名も
「ふぅーー……まぁこんなもんかな」
数十回と繰り返して来た作業にようやく片が付いたか、鉄生はその出来栄えを確認し終えると、一息入れるように肩の力を緩めた。
さすれば何やら手が錆や鉄粉で汚れていることに気がついた。当然だ。何せ休まずに包丁を打っていたのだから。休みがてらそれを落とすために洗面所に向かった。
「………暇だね〜……実に暇だ。包丁を打っては研ぐ毎日。バトルの相手もアイツしかいない………はぁ〜…なんかこうもっと馬鹿げた事件とか起きねぇかな〜」
鉄生はこの生活に退屈していた。
この世界にもバトスピはある。しかし、この世界においてバトスピカードとどれも希少価値のあるたいへん高価な物なのだ。自分は持っていても他の人達はそんな高価な物に手を出すわけもなく食料や生活費に当てている。
自分と対戦できるのは精々知り合いのあの脳筋貴族女だけだ。
しかし、この彼の言葉をどこかで神が耳にしていたのか、その馬鹿げた事件が発生する…………
鉄生の目の前に何の前触れもなく瞬間移動のようにあのテンドウ・ヒロミが現れて…………
「…………」
「………え?」
一瞬のうちに目が合う2人だったが、鉄生はこの訳のわからない状況に目眩を覚え、テンドウはネコガイヌ博士の強引なやり方に腹を立てているのか怪訝な表情を浮かべていて…………
「誰だオマエ………取り敢えず殺していい?」
「えぇぇぇぇ!?」
オマエこそ誰だと言い返したい鉄生だったが、そのテンドウの如何にもと言った悪人ヅラを見たら怖くて何も言い返せなかった。
これがこの2人の最初の出会い。それはとても最悪な出会いだった。
ー……
「……で、あんたはそのくたびれた博士とやらに無理矢理この世界に飛ばされたと………」
「あぁ、たくっ、あのクソジジイ。今度あったら覚悟してろよ」
くたびれたのはオマエもだろと思った鉄生だったが、殺されそうだからその言葉も頭の中に保存しておく。
大方の事情を聞く限り、どうやらこの男はこことは違う別の世界から来たらしいが、そんな話はにわかには信じ難かった。しかしあの急に出現したのはどう考えてもただ事ではないため、今はその話を信じざるを得なかった。
「……って言うかここはどこだ」
「どこって、そりゃ統一国家『真』の職人街だけど」
「ふ〜ん。聞いた事ねぇ……やっぱ異世界なんだな………まぁ興味ないけど」
「興味ないなら聞くなよ」
「あぁ!?……何オレに歯向かってんの鍛冶屋小僧。オレこう見えて向こうの世界じゃ一級品のカードバトラーよ?」
「ご、ごめんなさい………」
どこかのマフィアのボスのような顔つきのテンドウに物怖じする鉄生。未だかつてこんな理不尽な人間がいただろうかと脳裏を探る。
正直迷惑なのはこっちの方なのだ。自分で退屈だと思っていてなんだが、早くこんな面倒事は終わらせたいのだ。
「………て、あんたもカードバトラーなのか!?」
「あ?…それがなんだよ」
そんな時、彼の言葉から鉄生はテンドウもカードバトラーである事に気がついた。老若男女問わずカードバトラーで溢れかえっている世界で過ごしているテンドウからしたら先ず聞かれることはない意外な質問であった。
どこの世界のどこの変人かは知らないが、カードバトラーと言うのであればやってもらうのはたった1つだ。
「だったら俺とバトスピしないか!?…俺周囲にバトスピやってる奴ほとんどいなくてさ〜」
「あぁそう。可哀想だな」
鉄生の事情はどうでもいいのか、顔の表情をピクリとも動かさずにそう言ったテンドウ。どう考えても可哀想と思ってはいないだろう。
しかし、彼とて異世界人のバトスピに興味がないわけではなくて………
「別にやってやっても良いけどよ。ただってのは面白くねぇな………」
「ッ!?」
何やらバトスピで賭け事をしようとして来るのがわかる。理不尽極まりない彼の事だ。きっととんでもないモノを賭けさせるに違いないと思う鉄生だったが………
「………ここは鍛冶屋だ。何か失敗作でもあったらくれ。ウチのくたびれジジイが鉄を欲しがっててな〜」
「……え」
そんなモノでいいのかと思った鉄生。もっと大事なモノ……例えばカードとか命とかを賭ける物だと思っていた。しかも売り物ではなくリサイクルする事しかできない失敗作を要求して来る辺り微妙に優しい。
「因みにオレが負けたらこのデッキあげる」
「ッ!?」
「因みにオマエにこのバトルを拒否する権利は無い」
「えぇぇぇぇ!?」
堂々と己のデッキを鉄生に差し向けるテンドウ。鉄生は内心で思わず「価値が合わないだろ!!」と勘ぐってしまう。
それもそのはず、自分の失敗作とバトスピカード………それもその束を賭け事に出されたのだから。この世界においてのバトスピカードの価値観を知らない事もあるだろうがいくらなんでもこれはやり過ぎだ。
「い、いやいくらなんでもそれは………」
「オレが良いと言ったら良いんだよ。いいからついて来やがれ鍛冶屋小僧。バトルするにはここは狭すぎる」
「え?」
バトルするなら別にここでも良いのにと思う鉄生だったが、逆らえば命は無いため、渋々彼の後ろを歩いて行った。
そしてテンドウは近場の広場にて足を止めると…………
「ほれ」
「!?」
テンドウは鉄生にバトスピ用端末Bパッドを鉄生に軽く投げつける。突然の事に鉄生は慌てふためきながらもそれをキャッチした。異世界の人間である彼が当然その端末の存在を知っているわけがなくて…………
「え?……これなんですか?」
「Bパッドに決まってんだろ。殺すぞ」
「えぇぇぇぇ!?」
「……オレらの世界にある端末だ。横にあるボタン押しな」
「………ここか?……うわっ!?」
鉄生がBパッドのボタンを押すと、その端末は展開し、バトル台を形成した。鉄生はこの小さな端末に注ぎ込まれている凄まじい技術力を肌で感じていて………
「と、言うわけでこれ使ってバトルするぞ……デッキをセットしな」
「ッ……は、はい」
テンドウも自身のBパッドを展開すると、鉄生にそう催促した。
お互いのデッキがBパッドにセットされ、準備は万端。いよいよバトルスピリッツが始まる。
「よし。そんじゃ始めるか」
………ゲートオープン、界放!!
三王テンドウ・ヒロミと、統一国家真の職人街に住む鍛冶屋の青年鉄生のバトルスピリッツが幕を開けた。
先行はテンドウだ。タバコに火をつけ、それを口に加えた後にそのターンシークエンスを行った。
[ターン01]テンドウ
「メインステップ………ほんじゃ先ずは手始めに……カブトエクステンダーを配置してエンドだ」
ー【カブトエクステンダー】LV1
「ッ……バトルフィールドじゃないのにカードが出た!?」
「やっぱそっちとこっちじゃバトスピの文化は結構違うみたいだな。まぁ、気にすんな、今ので大体分かっただろ。こう言うことする機械なんだよ」
テンドウの横に現れる赤いバイク。その様子に驚く鉄生。自分たちの世界にも確かにこう言った事ができる場所はあるが、どこの場所でも実体化させる機械があるのは聞いた事がなかった。
「つーわけでさっさと自分のターン進めろや鍛冶屋小僧」
「鍛冶屋小僧じゃない。俺の名は鉄生だ!!」
「そ」
凄くどうでもよさそうに鉄生の自己紹介を受け流すテンドウ。彼は基本的に認めた人物以外は名前では呼ばない。現にアスラも未だに「小僧」と呼ばれている。
[ターン02]鉄生
「メインステップ、俺は創界神ヘファイトスを配置……!!」
「!!」
ー【創界神ヘファイトス】LV1
鉄生の背後に黒い巨人が現れたかと思えば、それは所謂造り物だったのか、半分に割れ、中から褐色肌で青髪の少年が姿を見せる。
その名は創界神ヘファイトス。世にも珍しい神のカードだ。テンドウはタバコを手にとり、口から煙を出しながらその感想を流暢に述べる。
「知らねーカード……つーかさっきのデケェオッサン誰?」
「神託の効果!!…デッキからカードを3枚落とし、その中の対象カード1枚につきコアを1つ追加!!」
テンドウの感想を無視しながら効果を進める鉄生。彼のデッキが3枚トラッシュへと落とされるが、その中のカードは全て対象圏内、しかも全て同じカードであり………
「へっ……運が良いんだか悪いんだか……対象カードは3枚。よってヘファイトスにコアを3つ追加!!…そして今トラッシュに落ちた3枚のタイガーアイ・ゴレムの効果!!…ヘファイトスの効果でトラッシュへ落とされた時、そこからノーコスト召喚できる!!」
「!!」
ー【タイガーアイ・ゴレム】LV1(1)BP4000
ー【タイガーアイ・ゴレム】LV1(1)BP4000
ー【タイガーアイ・ゴレム】LV1(1)BP4000
「さらにこの召喚でヘファイトスにさらにコアを3つ追加する」
鉄生の場に虎のような鋭い眼光を持つ黄金のゴレムが一気に3体出現する。ヘファイトスの上に置かれているコアもこれに伴い一気に6つとなった。
タバコを咥え直し、余裕ぶっこいているテンドウ。しかし、この時点である程度異世界のバトルの実力がそれなりに高い事を理解していて………
「アタックは無し。このターンはエンドだ」
手札:4
場:【タイガーアイ・ゴレム】LV1
【タイガーアイ・ゴレム】LV1
【タイガーアイ・ゴレム】LV1
【創界神ヘファイトス】LV1
バースト:【無】
(……3体のスピリットを並べたにもかかわらず攻めないか…………つー事はこいつもオレと同じワンキル型か)
折角3体ものスピリットを並べたにもかかわらず、攻勢に回らない鉄生を見て何となく彼がワンキル型のデッキを使用している事に勘付いたテンドウ。
そしてその勘は的中しており、鉄生はテンドウに無駄にコアを与えないために3体のタイガーアイ・ゴレムを防御に回したのだ。
「成る程。面倒だがオマエとは少し本気で相手してやるよ」
「ふっ…あぁ、来やがれよおっさん!!」
「誰がおっさんだこらぁ……オレは29だ。殺すぞ」
「えぇぇぇぇ!?……」
老け顔な見た目のせいで鉄生におっさん呼ばわりされて腹を立てるテンドウ。
そしてそんな彼のターンが再び幕を開けて…………
[ターン03]テンドウ
「メインステップ、オレは仮面ライダーカブト マスクドフォームを召喚……………ん?」
テンドウはいつものスピリット。カブトのマスクドフォームのカードをBパッドに叩きつけるが、何故だかそのカードは弾かれてしまい、彼の手札に戻っていく。
その現象を鉄生は説明して………
「何のカードかわからないけどそいつ、召喚時効果を持ってるな。タイガーアイ・ゴレムの効果であんたは召喚時効果を持つスピリットを召喚する時に1コスト余分に払わないと召喚できない。そしてそれが3体。つまりコアが足らないんだよ!!」
「ふーん」
マスクドフォームのコストは3。ネクサスで軽減で2。だけれどもそこでタイガーアイ・ゴレム3体分のコストがのしかかり、結果的に召喚コストは5。リザーブの数も5。上に乗せれるコアがないため召喚ができない。そう言う仕組みだ。テンドウはドヤ顔で説明して来た鉄生にどうでもよさそうに受け流した。
「なら仕方ねぇ。バーストをセット………さらにオレはこいつに変身する」
「!?」
「………変身……!!」
ー【変身!!仮面ライダーカブト】LV1
テンドウの腰にベルトが巻かれ、そこに赤いカブトムシ型のメカが装着される。そしてテンドウは掛け声と共に赤きライダースピリット、仮面ライダーカブトに変身した。
「………変身……見たことねぇ………それも創界神なのか?」
「まぁ、カテゴリはそうだな……神託の効果でカードを落とす」
対象カードは2枚。よって仮面ライダーカブトとなったテンドウ自身にコアが2つ追加される。
「さらに2枚目のカブトエクステンダーをLV2で配置……これでエンドだ」
手札:2
場:【カブトエクステンダー】LV2
【カブトエクステンダー】LV1
【変身!!仮面ライダーカブト】LV1
バースト:【有】
テンドウもここは攻めずにそのターンを終えた。本気を出した彼も終盤になったら一気に攻めるタイプなためだろう。言わば攻めに行くための準備期間と言える。
[ターン04]鉄生
「メインステップ、凄いモノ見たな……でも俺のカードはもっと凄いぜ!!……神話ブレイヴ、人造神剣ヘファイトスを創界神ヘファイトスに直接合体!!」
「ッ………創界神ネクサスにブレイヴを合体」
ー【創界神ヘファイトス+人造神剣ヘファイトス】LV1(7)
人によって造作された神の剣が天より鉄生の背後に突き刺さる。ヘファイトスが再び黒い巨人の中に籠り、それを動かすと、その黒い巨人の拳でそれを握った。
神話ブレイヴ………それはテンドウにはあまり聴き慣れないカードであって………
「んで、それでどうすんの?」
「ちょっと気づいた事がある。あんたと俺のデッキはちょいと似てる………溜めて溜めてドーンなタイプだろ?」
「説明下手かよ……けどまぁ、そうだな」
「へっ……だったら誰かが殴らないと試合が動かない!!…バーストをセットしてアタックステップ、行けタイガーアイ・ゴレム!!」
試合を動かしに来た鉄生がテンドウにアタックを仕掛ける。タイガーアイ・ゴレムは彼のライフを狙って走り行く。
だが、テンドウにはこれを防ぐ手段が無くて………
「ライフだ」
〈ライフ5➡︎4〉テンドウ
タイガーアイ・ゴレムの黄金の拳がテンドウのライフ1つを破壊した。これで先制点は鉄生となるが、それでも有利に立ったとは言えない。テンドウは伏せていたバーストカードに目をやると、すぐさまそれを反転させた…………
「ライフ減少によりバースト発動……第二の仮面ライダーカブト ライダーフォーム」
「!?」
「効果によりBP10000以下のスピリットを3体破壊しつつ召喚………消え失せな、金ピカ鉄人形!!」
ー【仮面ライダーカブト ライダーフォーム[2]】LV1(1)BP5000
テンドウのバーストが反転した直後、赤い何かが目で追えないほどの凄まじい速さで3体のタイガーアイ・ゴレムを蹴散らした。
その正体は赤きライダースピリット、仮面ライダーカブトのライダーフォーム。そして走り終えたそれは人差し指を天に掲げ、かっこつけていた。
「残念、安直だったな」
「3体のタイガーアイ・ゴレムを一瞬で………でも良いや。折角のマナ以外の相手だ。相手のデッキを回さなきゃつまらない」
「マナ?…誰それオマエの女?」
兎に角スピリットを全て失った鉄生はそのターンを終える。次はテンドウのターン、そのターンシークエンスを進めて行った。
[ターン05]テンドウ
「メインステップ……ようやく召喚できるぜ。来い、仮面ライダーカブトマスクドフォーム」
ー【仮面ライダーカブト マスクドフォーム】LV1(1)BP3000
前のターンでは召喚出来なかったが、重厚な鎧を見に纏ったライダースピリット、カブトのマスクドフォームが姿を見せる。そして本来であればその召喚時効果が発揮されるのだが………
「そいつがさっきの奴か!!……でも創界神ヘファイトスの効果でその効果は無効!!」
「!!」
そう。創界神ヘファイトスを中心とした造兵デッキはとことん召喚時効果を持つスピリットを潰す事ができる。
そんなヘファイトスの前では召喚時効果は無意味なのだ。
「たくっ……一々感に触るヤツだ。嫌がらせしかしない男は女に嫌われるぜ?」
「これは俺のデッキの特徴だ、しょうがねぇだろ!!」
「マジック、ジュライドロー。赤のシンボルが4つあるから3枚引くぜ」
「聞けよ!!」
鉄生のカードにより思い通り動く事ができないテンドウ。軽くイライラを溜めながらも、増えた手札を見て作戦を立て直す。
「オレも合体と行くか。カブトクナイガンを第二のカブトライダーフォームに合体」
ー【仮面ライダーカブト ライダーフォーム[2]+カブトクナイガン】LV1(1)BP8000
銃やクナイなど、多機能を誇る高性能武器、カブトクナイガンをカブトは片手で強く握り締める。
「そんじゃアタックステップ。その開始時にネクサス、カブトエクステンダーの効果。トラッシュにあるコア2つをカブトに置く。それが2つ分、つまり4つを呼び戻す!!」
ー【仮面ライダーカブト ライダーフォーム[2]+カブトクナイガン】(1➡︎5)LV1➡︎3
トラッシュにある4つのコアがカブトのライダーフォームに舞い戻り、そのLVが急上昇した。
「アタックステップ継続。言って来いやライダーフォーム……!!」
カブトクナイガンを手に鉄生のライフ目掛けて走り出すライダーフォーム。カブトクナイガンの効果で又してもコアがトラッシュより蘇る。
「カブトクナイガンの合体時効果でさらにトラッシュからコアを戻し、ライダーフォームに赤のシンボル1つを追加する」
「ッ……ダブルシンボルって事かよ!?」
専用武器であるカブトクナイガン。カブトであればどのスピリットでも強力なアタッカーに仕立て上げる代物だ。
鉄生はこの強力なアタックをかわす術はなく………
「ライフだ!!……ッ」
〈ライフ5➡︎3〉鉄生
カブトクナイガンのクナイモードで振るったカブトの一撃が鉄生のライフを一気に2つ斬り裂く。
ライフの差を逆転されてしまうものの、鉄生も怯みはしない。負けじと伏せていたバーストカードへと目を向けると………
「こっちもライフ減少時のバースト!!……選ばれし探索者アレックス!!」
「!!」
「コイツを召喚。その後ドローし、アタックステップを強制終了させる!!」
ー【選ばれし探索者アレックス】LV2(2)BP8000
鉄生の伏せられていたバーストカードが勢い良く反転すると共に現れたのは紫色のフードを深く被った人型のスピリット、選ばれし探索者アレックス。
その効果でテンドウのアタックステップは強制終了となった。
「どうした!!…あんたも溜めて溜めて一気に仕掛けるタイプなんだろ!!…こんなやり方は性に合わないはずだ!!」
「いや、それなかったらこのターンで決める気だったんだけどな……まぁ良いや、エンド」
手札:4
場:【仮面ライダーカブライダーフォーム[2]+カブトクナイガン】LV3
【仮面ライダーカブト マスクドフォーム】LV1
【カブトエクステンダー】LV1
【カブトエクステンダー】LV1
【変身!!仮面ライダーカブト】LV2
バースト:【無】
鉄生はまだ知らないが、アレックスが無ければ変身のカブトの効果を駆使され、このターンで実はライフ5つを破壊されていた。
テンドウは「まぁ上手くいかん事もあるか」と口にし、致し方なくそのターンをエンドとした。
[ターン06]鉄生
「メインステップ……よし、行くぞ」
「……ん?…なんか出すの?」
テンドウは三王としてのこれまでの経験から鉄生が今から自身のデッキの最強カードを呼び出す事を何となく見抜く。
そしてそれは見事に的中。鉄生は準備は万端だと言わんばかりに手札のそれをBパッドに叩きつけた。
「蒼き鉄の巨人は全てを破壊する!『蒼造炉神ヴァルカン・ゴレム』を召喚だ!」
ー【蒼造炉神ヴァルカン・ゴレム】LV2(3)BP11000
地響き共もに地中から鉄生の場に現れたのは青きゴーレム。ヘファイトスの化神とも呼ばる存在、ヴァルカン・ゴレム。鉄生のデッキのエースカードでもある。
その迫力から発せられる強力なプレッシャーは周辺の空間を歪ませる程であり………
「おぉ、やっぱデカいなヴァルカン・ゴレムは………」
「ふーん。つーかオマエ、さっきの蒼き巨人は全てを破壊するって何?……自分で考えたの?……ププー」
「笑うな!!……そこツッコムとこじゃないし!!」
まさかの召喚口上を笑い出すテンドウ。鉄生は少しだけ顔を赤くしながらもメインステップを続行して………
「ヘファイトスに合体している神話ブレイヴ、人造神剣ヘファイトスをヴァルカン・ゴレムに付け替える!!」
ー【蒼造炉神ヴァルカン・ゴレム+人造神剣ヘファイトス】LV2(3)BP16000
ヘファイトスが神剣を空に向かって投げると、ヴァルカン・ゴレムはゴーレムらしい太い手でそれを強く握り締め、強力な合体スピリットと化した。
「もう一度バーストを伏せてアタックステップ!!……合体したヴァルカン・ゴレムでアタック!!……そしてその効果、【界放】を発揮!!」
「!!」
ヴァルカン・ゴレムで攻撃を仕掛ける鉄生。そしてその効果を遺憾なく発揮させる。
「ヴァルカン・ゴレムはヘファイトスのコア2つを自身に置く事で神話ブレイヴの数プラス1枚、敵のデッキをオープンする」
「!?」
ヘファイトスのコアの一部がヴァルカン・ゴレムに移動。その際にLVが上昇すると同時に行われたのはテンドウのデッキのオープン。今回は人造神剣ヘファイトスが場にあるため、2枚のカードが2人の目に映った。
「さぁ、そのカードの種類はなんだ!!」
「………2枚ともスピリットだ」
「へっ……だったら今回はそいつらはデッキの下に戻し、ヴァルカン・ゴレムに青のシンボルを2つ追加する!!」
「ッ………4点のクアドラプルシンボルか…!!」
ヘファイトスの化神にして鉄生のエースカード、ヴァルカン・ゴレムは自身の効果でオープンされたスピリットの枚数1枚につき1つのシンボルを増やす。そして今回のアタックでは合体しているのもあって、一度に4つものライフを破壊するクアドラプルシンボルとなったのだ。
「まだだ、まだヴァルカン・ゴレムの効果は終わらない!!……アタック時、コスト10まで好きなだけスピリットを破壊する!!」
「!!」
「オマエの合体スピリットを破壊!!」
ヴァルカン・ゴレムの神剣を振るう一撃がテンドウの場のライダーフォームを襲う。ライダーフォームは呆気なく破壊され、合体していたカブトクナイガンは爆風と共に上空へと飛ばされてしまう。
「そして!!…人造神剣ヘファイトスの効果!!…コスト6以下のスピリット1体を破壊してコアブースト!!……残ったブレイヴを破壊」
「!」
神剣の二連撃を振るうヴァルカン・ゴレム。今度は上空に飛ばされたカブトクナイガンが木っ端微塵に砕け散った。これで一気に優位性は鉄生が強引にもぎ取ったが…………
「オレにはまだブロックできるマスクドフォームがある、そっち破壊した方が良かったんじゃない?」
そう。テンドウの場にはまだブロックできるスピリットがいる。いくら4点のクアドラプルシンボルのアタックとは言え、ブロックされて仕舞えば意味はない。
しかし、彼が何の計画も無しにブロッカーを残すわけがなかった。鼻で笑うと創界神ヘファイトスの効果を発揮させる。
「それは計算済みだ!!…創界神ヘファイトスの【
「!!」
ー【創界神ヘファイトス】(6➡︎3)
ー【蒼造炉神ヴァルカン・ゴレム+人造神剣ヘファイトス】(疲労➡︎回復)
ヘファイトスの効果を得、疲労状態から回復状態となるヴァルカン・ゴレム。このターンは少なくとも二度の攻撃が可能となった。これでテンドウのマスクドフォームなどいようがいまいがどちらにせよライフを破壊する事が可能となった。
優勢な状況から一気に逆転され不利な状況に陥ったテンドウ。しかし、彼の表情からは何故か笑みが溢れており………
「成る程、やるじゃねぇか鍛冶屋小僧!!……前のターンで鎌掛けた甲斐があったぜ!!……フラッシュマジック、リミテッドバリア!!」
「!?」
鉄生の実力を認めたのか、初めて彼の前で笑ったテンドウは手札の防御マジックを引き抜く。それは弱小スピリットよりも強力なスピリットの方がライフを破壊できなくなる不思議なカードだ。
「この効果によりこのターン、オレのライフはコスト4以上のスピリットのアタックじゃ減らん」
〈ライフ4➡︎4〉テンドウ
何度も何度もテンドウのライフに神剣を振るうヴァルカン・ゴレム。だが、そんな彼のライフには傷一つ入らない。
「くっ……まぁ、1枚くらいは防御マジックを持っててもおかしくはないか……ターンエンドだ」
手札:2
場:【蒼造炉神ヴァルカン・ゴレム+人造神剣ヘファイトス】LV3
【選ばれし探索者アレックス】LV2
【創界神ヘファイトス】LV1
バースト:【有】
結果的に2体のブロッカーを残し、そのターンをエンドとする事になった鉄生。次はテンドウのターンだ。そのターンシークエンスを進めて行く。
[ターン07]テンドウ
「メインステップ……ほんじゃおっぱじめるか……こっからが本気だ……精々足掻けよ鍛冶屋小僧……ッ!!」
「ッ……!?」
テンドウから放たれるのはヴァルカン・ゴレム以上のプレッシャー。鉄生はその重圧に思わず膝を曲げたくなるが、「負けたくないという想い」でそれを堪え、真っ直ぐで真剣な表情をテンドウに向ける。そしてテンドウはその表情を見るとまた小さく笑みを溢すと、己のターンを再び進行して………
「オレは第三の仮面ライダーカブト ライダーフォームを召喚……!!」
ー【仮面ライダーカブト ライダーフォーム[3]】LV2(6)BP5000
現れたのは三番目のライダーフォーム。ヘファイトスの効果で強力な召喚時効果が封じられているものの、効果はそれだけではなく………
「でもってコイツを対象に【煌臨】を発揮させる。その際、第三のライダーフォームはコストを6として扱う」
「!!」
「来い……第二の仮面ライダーカブト ハイパーフォーム……ッ!!」
第三のライダーフォームの腰にカブトムシ型のマシーンが新たに装着される。ライダーフォームはそのレバーのような角を下へと倒すと、虹色の電流が流れ、さらなる進化を遂げて行く………
………ハイパーキャストオフ!!
ー【仮面ライダーカブト ハイパーフォーム[2]】LV3(6)BP14000
その音声と共に現れたのは三王であるテンドウ・ヒロミ最強のスピリット、仮面ライダーカブト ハイパーフォーム。それが放つ強烈なプレッシャーが一瞬にして周囲に飛び交う。
「煌臨時効果。BP20000以下のヴァルカン・ゴレムを破壊する」
「!!」
「ハイパーキック!!」
ハイパーフォームは腰にあるカブトムシ型のマシーンの角を再度下に倒し、必殺技を発動する。虹色の電流がハイパーフォームの翼となり、それを宙へと飛ぶ力を与えると、強烈な跳び蹴りをヴァルカン・ゴレムに浴びせる。
ヴァルカン・ゴレムは堪らず爆散。合体していた人造神剣ヘファイトスは爆風で舞い上がり、落下。地面に突き刺さってしまう。
「マジか、ヴァルカン・ゴレムが……一瞬で……!」
「これだけじゃ終わらないぜ……アタックステップ、その開始時にカブトエクステンダーの効果でトラッシュのコアを戻す……そして第二のハイパーフォームでアタック」
エースであるヴァルカン・ゴレムの破壊に少なからずショックを受ける鉄生だったが、その暇はない。テンドウがすかさずアタックを仕掛ける。
「くっ……アレックスでブロッ……」
「ブロックはさせん」
「!?」
「フラッシュチェンジを発揮、対象は第二のハイパーフォーム!!」
鉄生の2体のブロッカーにブロックさせる前に、テンドウは残った最後の手札を切り、フラッシュを宣言。それはライダースピリットなら殆どが使う事が可能なチェンジの効果だ。
「この効果で残ったブレイヴを破壊……そしてアタック中の第二のハイパーフォームと入れ替える……来い、第一のハイパーフォームッ!!」
ー【仮面ライダーカブト ハイパーフォーム】LV2(4)BP12000
ハイパーフォームの手にエネルギー剣が握られると、そこにサソリ、ハチ、トンボ型のメカが飛び交い、それに装着されていった。
これこそハイパーフォームの必殺剣。三王たるテンドウ・ヒロミの切札だ。
「第一のハイパーフォームの効果【ハイパークロックアップ】……コイツはブロックされない。そしてフラッシュ効果を使いたければオマエは3コストを余分に支払わねーと行けなくなる」
「!?」
ハイパーフォームの効果【ハイパークロックアップ】………これにより残ったアレックスはブロックができず、ただただ鉄生のライフが破壊されるのを眺めるだけの木偶の坊と化してしまう。
「仕上げは変身したオレの【神技】……3つをボイドに送り、第一のハイパーフォームをダブルシンボルとする!!」
「……!!」
ー【変身!!仮面ライダーカブト】(6➡︎3)
ここに来てテンドウの【神技】が炸裂。ハイパーフォームは一度の攻撃で2つのライフを破壊できる上にブロックされない強力なスピリットとなった。
「そのアタックはライフで受ける………ッ!!」
〈ライフ3➡︎1〉鉄生
ハイパーフォームはエネルギー剣を振い、鉄生のライフ2つを一気に一刀両断してみせる。
だが、まだ終わらないか。鉄生は今一度バーストゾーンのバーストカードへと目をやって…………
「ライフ減少後のバースト、選ばれし探索者アレックス!!」
「!!」
「効果でコイツを召喚してドロー!!…そしてこのアタックステップは強制終了となる!!」
ー【選ばれし探索者アレックス】LV2(2)BP8000
バーストカードが反転すると共に現れたのは又してもアレックス。その効果でテンドウのアタックステップが強制的に終了。エンドステップとなった。
「へっ……どこの異世界かは知らんが、確かにあんたは実力者みたいだ………けど、勝つのはこの俺だ!!……次のターンで決める!!」
「フッ……だったらさっさとその次のターンとやらを始めてみやがれ」
絶体絶命の大ピンチであると言うのに余裕のある声を発するテンドウ。鉄生は「言われなくとも!!」と言葉を続け、己のターンを開始しようとするが…………
「ッ……あ、あれ。動かない!?……おいどうしたんだよ、故障か!?」
肝心のBパッドが全く作動しなかった。Bパッドの耐久性を知らない鉄生はそれが故障したのだと勝手に思い込んでしまったが、実はそうではなくて………
「フッ……ハッハッハ!!」
「!?」
「オマエのターンは来ない!!……何たって、オレの終わった次のターンもオレのターンだからな!!」
「は、はぁ!?」
テンドウの高笑いからの雑な説明に驚愕する鉄生。つまり彼がもう一度ターンを行うから自分のが作動しなかったのだと咄嗟に推理したが、いったいどの効果でそれをやってのけたのかが疑問だった。
そしてその答えをテンドウはようやく説明して………
「最初にアタックした第二のハイパーフォーム。その効果だ。アタックしたその瞬間、もう一度オレはオレのターンを行う事ができる」
「なッ……あの時で既に……!?」
「てなわけでオレのターン!!」
今一度始まる驚異のテンドウのターン。前のターンよりもさらに強い威圧感を前面に飛ばしながらそれを行った。
[ターン08]テンドウ
「エクストラターン時はコアステップとメインステップがねぇ……このままアタックステップだ。言って来い第一のハイパーフォーム!!」
「!!」
「効果でブロックはされねぇ!!」
青い眼光を輝かせ、必殺のエネルギー剣を構えると、今一度鉄生のライフまで走り出したハイパーフォーム。
鉄生としてはこの攻撃を防ぎたいのは山々だが、場に残った2体のアレックスは【ハイパークロックアップ】によって防御に間に合わない。
終わりだ。もはやその攻撃を受け入れる以外の選択肢が鉄生には無い。
「……なんだよこのおっさん……バカみてぇに強い………」
〈ライフ1➡︎0〉鉄生
ハイパーフォームのエネルギー剣が鉄生の最後のライフを粉々に斬り刻んだ。鉄生のライフは遂に0となってしまい、彼の使用したBパッドからは敗北を告げるように「ピー…」と、無機質な音声がこだました。
「オレはおっさんじゃねぇ……ノヴァ王国の三王、テンドウ・ヒロミだ」
これにより、勝者はテンドウだ。異世界でのバトルスピリッツでも見事に三王らしく華々しい勝利を収めて見せた。
ー…
「つー事で、こいつはもらってくぜ〜」
「あぁ、約束だからな。そんなモノで良かったらやるよ」
バトルも終わり、2人は鉄生の鍛冶屋へと戻っていた。テンドウは鉄生の失敗作、もとい鉄の塊を風呂敷に包み込み、それを背負っていた。ネコガイヌ博士の見上げにするつもりなのだ。
この行為はなんだかんだでテンドウがネコガイヌ博士に優しいようにも思えるが、彼はこの鉄の塊でネコガイヌ博士と取引するつもりなだけである。
「テンドウとか言ってたな……あんた、もうこの世界から出て行くのか?」
「あぁ、帰り方わからんがな……まぁ適当に見つけるわ」
「はは……でも今日はなんだかんだ本当に楽しかった!!…ありがとうな、また楽しくバトルしよう!!」
「おぉ、なんだよ急に素直じゃねぇか」
いつもはマナと言う貴族の少女としかバトルをしない鉄生にとって、テンドウとのバトルスピリッツはたいへん貴重な体験だったのだ。
「そんじゃオレはここいらでおさらばさせてもらうわ〜………じゃあな。オレもそれなりに楽しかったぜ、鉄生」
「!!」
テンドウは初めて鉄生を名前で呼ぶと、彼に背を向け、この場から立ち去ろうとした。
しかしその直後、テンドウは何かまだ聞きたい事があったのか、再び鉄生の方へと振り向くと………
「そう言えばもう一個聞きてぇんだが……」
「お?…なんだよ、何でも聞いてくれ」
「ここら辺に………ッ!?」
「………え?」
テンドウが鉄生に質問をしようとした直後。何故かテンドウの身体は粒子となって一瞬のうちに消え去ってしまった。この信じられない現象は今に始まった事では無いが、鉄生はめちゃくちゃテンドウが言いかけた質問を気にしており…………
「お、おいテンドウ………なんだよ、結局何……『ここら辺に』の次は何!?……何て訊こうとしてたんだァァァー!!!」
職人街で鉄生の叫びがこだまする。結局は終始テンドウ・ヒロミと言う良い意味でも悪い意味でも豪快な漢に振り回されっぱなしな1日であった…………
******
「おぉ!!……お帰りテンドウ!!」
「…………」
場所は戻って元の世界。三王塔に戻って来たテンドウが呑気な声を上げるネコガイヌ博士に迎え入れられる。
「どうしゃった!?…どうじゃった異世界は!?……おぉ、それは鉄か!!……よくやった、最近は使える部品がなくなってきとったから困っとったんじゃよ〜」
「せっかくあの鍛冶屋小僧に『ここら辺に美味いタバコ』があるか訊こうと思ってたのに……何やってくれてんだこのジジイ……つーかオマエは後で殺す」
「まぁまぁそんな固い事言わずに〜……無事じゃったんじゃし、アレまだ試作品だし。オマエが戻ってきたのは単なる時間切れじゃよ〜……これから調整しちゃうからさ〜」
「だから試作品をオレで試すなっての。良い加減治せその癖」
既に70を超えたご老体であるのに子供のようにはしゃぐネコガイヌ博士。余程今回の実験が上手くいったのが嬉しいのだろう。
テンドウはもうこの老人に構うのが面倒になり、取引の材料に使おうと思っていた風呂敷で包んだ鉄生の失敗作達を彼の方に放り捨てると、この場から立ち去って行く。
「おいおいどこ行くんじゃテンドウ〜……実験成功祝いに久しぶりに一杯どうじゃ?」
「行かねータバコ吸ってくるだけだし……つーかあんたは頼むから世界だけは滅ぼすなよ」
テンドウは歩きながら、こことは違う異世界に住む鉄生との熱きバトルスピリッツを思い出し、胸に刻んでいた。
実際苦戦した。このライダースピリットの三王たるテンドウ・ヒロミが。これはかなり久し振りの経験であり、正直ヴァルカン・ゴレムのアタック時には冷や汗が止まらなかった程だ。
そう思うと、テンドウは何故かニヤケ顔が取れなくなっていて…………
「フッ……異世界かーー………今度はあの小僧共でも放り込んでやるか……」
この国の三王、テンドウはその言葉を最後に、また懐からタバコとライターを取り出して一服入れるのであった…………
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最後までお読みくださり、ありがとうございます!!
神代戦争の作者、ぞーにさんとのコラボ回はいかがだったでしょうか。少し日は空くことになりそうですが、もう1人コラボさせていただく方がおりますので、そちらも是非楽しみにしていただけましたら幸いです!
今回使用した《人造神剣ヘファイトス》と言う神話ブレイヴはぞーにさんがご自身で考えられたオリジナルカードでした。下記はその詳細です!!
ー…
《人造神剣ヘファイストス》
属性 青
コスト 6
軽減 青青青神
ブレイヴ
系統 神話・霊装
Lv1(1)BP5000
合体+5000
合体条件:造兵&コスト5以上/創界神ネクサス
【スピリット合体中】「このスピリットのアタック時」
コスト6以下の相手のスピリット1体を破壊する。この効果で相手のスピリットを破壊したとき、ボイドからコア1個をこのスピリットか自分の青1色の創界神ネクサスの上に置く。
【ネクサス合体中】【神域】「自分のアタックステップ」
[このネクサスにコア3個以上]自分の「コスト破壊効果」発揮後、同じ効果をもう1度だけ発揮できる。この効果は重複しない。
ー…
ありがちな「ぼくがかんがえたさいきょーかーど」ではなく、どれも無理がない丁寧な効果バランスで、小説でもとても使いやすかったです!!
今回はかなり時間が空いてしまったので、次回のサブタイトル(仮)だけご紹介しようと思います!!
31コア「ナイトサバイブVSキングギドラ」
以前、コラストとのコラボ回を執筆してくださったブラストさん作の『バトルスピリッツ7Guilt』も一緒に読んでくれている方はもう誰が出るのかおわかりですかね?
読者の皆様、次回もよろしくお願い致します!!