バトルスピリッツ コラボストーリーズ   作:バナナ 

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34コア「鏡の中の世界、アルケーガンダム追憶」

「………ぐっ………ん?」

 

 

15年前に行方不明となっていたはずのシスイ・メイキョウの口からロンの出生の秘密が語られた直後。謎の光に包まれたアスラ達。

 

アスラは目覚めると、自分がさっきまでいた森の中ではなく、ライライ町の繁華街にいる事に気がついた。しかし、人気が無く、無人であり、どうにも違和感が拭えなくて…………

 

 

「あ……みんなは………エール!!」

「……ッ……ん?」

 

 

共に光に包まれたであろう仲間を探すべく四方八方に首を回すアスラ。そこにはエールとムエ。白いドレスを着た謎多き少女イユがいた。各々はそれぞれのタイミングで目覚めていくが、

何故かシスイとフリソデ、ロンはこの場にはいなくて…………

 

 

「アスラ………ここは?」

「ライライ町の繁華街っぽいけど………なんだろう、なんか変な違和感あるんだよな………人が1人もいないからか??…でも見た事がある気もするし………」

「むえ〜」

 

 

ライライ町の街並みの風景はアスラとて当然覚えている。娯楽を極めた町と言う肩書きもあるため、毎日のように街の人達は賑わっていた。

だがそれ以上に何かが変だった………

 

そしてアスラの疑問に全ての事情を知っているイユが答えて………

 

 

「………ここはミラーワールド……あなた達がいつもバトル中に配置している世界そのモノよ」

 

 

ー!!

 

 

アスラやロン。ライダーハンターズのオロチも使用するネクサスカード、ミラーワールド。イユはここがその世界そのモノであると言う。

 

彼女にそう言われ、戸惑いながらも、アスラは懐にある自分のBパッドやデッキのカード達を確認する。

 

 

「ミラーワールドって……え、えぇぇぇぇ!?……オレ別にBパッド展開してないし、ミラーワールドのカードも配置してないぞ!?」

「………でも、間違いなさそうね……」

 

 

エールがそう言いながら所狭しと並ぶ店々へと指を刺した。アスラはそこへと首を向けると、看板などの文字や目印となるマークなどが鏡巻きになっている光景だった。

 

アスラがこの景色に違和感を感じつつも、どこか見覚えがあると思ったのはそれが原因だ。

 

 

「えぇ!?……ちょっと待って、何がどうなってんの!?…てゆーかロンとかあのメイキョウ家のおっちゃんはどこ行ったんだァァァー!!!……チクショォォォー!!…何が何だか全然わからん、頭が追いつかねぇぇ!!!…だってオレバカだからァァァー!!」

「うっさいわねあんたは!!…一々騒ぐな!!」

 

 

原理が理解できず、叫び倒す事しかできないアスラ。エールはそんな彼にツッコミを入れるが、彼女自身もアスラ同様内心では意味がわからないと思っているし、戸惑ってはいる。

 

しかし、この訳の分からない現象を唯一説明できるであろう人間を、エールは知っていて…………

 

 

「………ロンも言ってたけど、あなた達本当に何者?…なんで私達はこんな世界に連れて来られたの?」

「おいエール!!…オマエまでこの子疑ってんのかよ!!」

「あんたが疑わなさすぎなのよ。この子が善であれ悪であれ、どちらにせよ説明できるならしてもらわないと、この先どうにもできないわ」

 

 

エールの言っている事は正論だった。状況からして、イユは確かにどう見ても被害者。しかし、今回の謎めいた事件の理論や理屈を誰よりも理解しているのは他でもない彼女だ。

 

 

「………わかりました。全てを話します」

 

 

漂う緊迫感と緊張感の中、イユは口を開き、遂にアスラとエールに今回の事件、ミラーワールドやミラーライダー、何故自分が追われていたのか、そしてロンの出生について話し始めた。

 

 

******

 

 

 

「………ッ……ここは……オウドウ都!?」

 

 

一方、ロンは満ち溢れた光が過ぎ去った途端に目を見開くと、そこには見慣れたオウドウ都の繁華街の景色が広がっていた。目の前には三王達に挑む場である三王塔も伺える。

 

 

「ふむ。他の者達は違う場所に移動させてしまったか、やはり大人数での移動は難しいね」

「ッ………オマエ」

 

 

ロンが声のする方へと振り向くと、そこには行方不明になったはずのマスター、メイキョウ家の人間で、おそらく自分達を今回の事件に巻き込んだであろう諸悪の根源、シスイ・メイキョウの姿があった。

 

 

「龍騎を持つあの欠陥品やイユを違う場所に置いて来てしまったのは失態だが、まぁいいでしょう。これでゆっくり2人でお話ができるね、ロン。ここには我ら以外誰もいないのだから」

「アスラ達をどこにやった……そしてここはどこだ。ただのオウドウ都じゃないのはわかる」

 

 

まるで最初からロンと2人で会話をするのが目的だったかのように、シスイはそう言葉を落とす。

 

そしてロンの質問に対して返答して………

 

 

「ここはオウドウ都さ、鏡の中のね………いつも君が配置してるだろ?…ミラーワールドさ」

「なにっ!?」

 

 

ここが自分のデッキにもあるカード、ミラーワールドの中だと聞いて驚きを隠せないロン。信じられなかったが、よく見たら周囲の景色が鏡巻きになっている事から、彼が嘘を言っていないのは理解できて………

 

 

「ふふ……我に対する疑問は尽きないだろうからね。答えはバトルスピリッツの中で教えてあげましょう。君の持っているそのナイトのカードは回収しないといけないしね」

「ッ………!!」

「どちらにせよ君はここで戦わなければ生き残れない。さぁ、デッキとBパッドを抜きなさい」

 

 

そう言いながら懐よりBパッドを取り出し、それを展開してデッキをセットしたシスイ。やはり狙いはさっきの金髪の男、フリソデと同様に龍騎やナイトであるようだ。

 

しかしそれは百も承知していた所。ロンはまだ自分が実はエックスの身分を持つ者だったと言う衝撃が強く心と身体に刻み込まれているものの、それををもものともしない様子でシスイに対抗するように己のBパッドとデッキをセットした。

 

 

「ふむ。やる気は十分と言った感じですかね〜……そうこなくては面白くない。では、参りますか」

「……あぁ」

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

鏡の中の世界、ミラーワールドにて、ロンとシスイ・メイキョウのバトルスピリッツがコールと共に幕を開けた。

 

先行はシスイだ。不気味に笑いながら己のターンを進行して行く。

 

 

[ターン01]シスイ

 

 

「メインステップ、先ずはネクサスカード、海底に眠りし古代都市を配置しようか」

 

 

ー【海底に眠りし古代都市】LV1

 

 

バトル開始直後の刹那。シスイの背後に壮大且つ静寂な大都市が配置される。

 

 

「ターンエンド。さぁロン。我に見せてくれたまえ、エックスの身分を持つゾンの息子たる力をね」

手札:4

場:【海底に眠りし古代都市】LV1

バースト:【無】

 

 

「……オレがエックスだとかゾンの息子とかは知らない。オレはオレだ……依然としてスーミ村のロンだ」

「見栄を張るのはやめたまえよ。君はゾンに愛されていた。彼は最愛の妻を亡くし、家族は君だけだったからね」

「………」

「優しい男だったよ……最終的に我はそんな彼に心底呆れたがね」

 

 

ロンの血の繋がった本当の父親、ゾン・アーサーの事を懐かしみながらそうロンに囁いたシスイ。その内容からして、どうやらロンの本当の母親は既に他界しているようだ。

 

シスイが自分に揺さぶりを掛け、動揺を誘っているのは明白。だがロンはそれに呑まれる事なく、全力で己のターンを開始して行った。

 

 

[ターン02]ロン

 

 

「メインステップ……ミラーワールドを配置!!……ターンエンドだ」

 

 

ー【ミラーワールド】LV1

 

 

ロンはお得意のネクサス、ミラーワールドを配置する。本来であればこの瞬間よりフィールドが鏡像を具現化させた形へと変貌するはずだが、今回に限っては元々ミラーワールドと言う事があるからか、これと言った変化は起きなかった。

 

 

「懐かしいねミラーワールドのカード。我とゾンは研究者の一面もあってね、よく一緒に研究やそれに対する論争をしたものだよ。ミラーワールドもその研究対象のうちの1つで………」

「黙れ。オマエの話は聞かない……早くターンを進めろ」

「おやおや、せっかちだね。言われなくとも、進めるのに」

 

 

滑らかな口調、どこか掴み所の無い言い回し。しかし彼の言っている事は不思議と嘘だとは思えないロン。おそらくこれまで無意識化で見て来た記憶の影響であろう。赤ん坊の頃に見ていた記憶と彼の証言はあまりにもマッチしている。

 

 

「それでは再び我のターンだ」

 

 

[ターン03]シスイ

 

 

「メインステップ…それではダーク・スクアーロXをLV2で召喚しよう」

 

 

ー【ダーク・スクアーロX】LV2(2S)BP5000

 

 

このバトルでシスイが初めて呼び出したスピリットは剣と盾を構えるサメ型の青属性のスピリット、ダーク・スクアーロX。

シスイはどうやら青属性のスピリットを主軸としたデッキを使用しているようだ。

 

 

「配置していた海底に眠りし古代都市の効果でコアを1つリザーブに、そのコアをダーク・スクアーロXへと移動」

 

 

ここでシスイが前のターンに配置していたネクサス、海底に眠りし古代都市の効果が起動。系統に異合を持つダーク・スクアーロXが召喚された事でコアが追加される。

 

 

「アタックステップ。行きなさいダーク・スクアーロX。効果でさらにコアブースト、LV3にアップさせつつ、相手のデッキを2枚破棄し、シンボルを0にする」

「!!」

 

 

アタックステップに突入し、シスイのダーク・スクアーロXが飛び出していった刹那。ロンのデッキが青く点滅し、上から2枚がトラッシュへと落とされてしまう。

 

しかし、この効果を発揮させたダーク・スクアーロXのシンボルは0。ロンがライフで受けても破壊する事はできなくて…………

 

 

「アタックは継続中。さて、どうする?」

「………ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎5〉ロン

 

 

ダーク・スクアーロXが手に持つ剣でロンのライフを斬り裂こうと試みるが、当然斬り裂く事は叶わない。そのまま諦めてシスイの場へと帰って行った。

 

 

「オマエ。オレのライフを破壊する気が無いのか?」

「いえいえ〜…ありますとも。しかしながらまだ破壊する時ではないと判断しただけ、ダーク・スクアーロXはそのためのスピリットですからね。取り敢えずこのターンはエンドです。さぁ、ロン、昔話に花を咲かせましょう」

手札:4

場:【ダーク・スクアーロX】LV3

【海底に眠りし古代都市】LV1

バースト:【無】

 

 

まだ動くべきではないと言い放ちながら、そのターンをエンドとするシスイ。次はロンのターン。少なからずシスイの言動やプレイングに腹を立てているのが伺えるが…………

 

 

[ターン04]ロン

 

 

「メインステップ……ライフが減らされないなら自分から減らせば良いだけだ。魔界竜鬼ダークヴルムを召喚!!」

「!」

 

 

ー【魔界竜鬼ダークヴルム】LV1(1S)BP3000

 

 

ロンの場に現れたのは大勢の死霊をその身に宿す紫のドラゴン。その鋭い眼光は対戦相手であるシスイではなく、主人であるロンに向けられて………

 

 

「召喚時効果。オレのライフ1つをトラッシュに置き、2枚のカードをドローする」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉ロン

 

 

ロンのライフバリアに噛みつくダークヴルム。それを1つ噛み砕くとともに、ロンは自分のデッキから新たに2枚のカードをドローした。

 

 

「ほお。肉を切らせて骨を断つ戦法ですか。懐かしいですね、よくゾンも似たような戦法を取っていましたよ。やはり親子とはどうしても似てしまうもののようだ」

「ッ………アタックステップ、ダークヴルムで攻撃する!!」

 

 

まるでシスイの追憶の言葉が火種になったかのように、静かに怒りの灯火を燃やしながら攻撃を開始するロン。ダークヴルムが今度はシスイに牙を剥く。

 

 

「ふふ、意外と分かり易い子だ。ライフで受けるよ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉シスイ

 

 

ダークヴルムがシスイのライフを1つ噛み砕いた。しかし、シスイはそれに伴うであろうバトルダメージは一切感じていないのか、依然として涼しい表情を披露しており…………

 

 

「………ターンエンドだ」

手札:6

場:【魔界竜鬼ダークヴルム】LV1

【ミラーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

そのターンをエンドとするロン。

次はシスイのターン、余裕のある笑みを常々浮かべながら己のターンを進行していく。

 

 

[ターン05]シスイ

 

 

「メインステップ……ふむ。それでは少しだけ赴いてみるとしよう……先ずは海底に眠りし古代都市のLVを2にアップ。これによりダーク・スクアーロXのシンボルは青の2つとなり、軽減を確保」

「!!」

 

 

ネクサスカード、海底に眠りし古代都市の更なる効果が発揮。これにより、今現在シスイの場には青のシンボルが3つとなった。

彼はそれを利用し、手札にある強大なスピリットのコストを軽減、召喚して見せる…………

 

 

「参ります、バーストをセット。そして完全体スピリット、トノサマゲコモンをLV2で召喚!!」

「ッ……デジタルスピリット!?」

 

 

ー【トノサマゲコモン】LV2(3)BP12000

 

 

折角LVを上げたネクサスやスピリットのLVが大幅にダウンしてしまうものの、彼の場には巨大なカエルのようなスピリット、トノサマゲコモンが姿を見せる。体中に備え付けられた楽器のホルンのような物の音色がかなり喧しい。

 

 

「海底に眠りし古代都市の効果でコアブースト。そのコアを使いトノサマゲコモンのLVを3にアップさせ、ターンエンド……さぁ、どこからでも来るといい」

手札:3

場:【ダーク・スクアーロX】LV1

【トノサマゲコモン】LV3

【海底に眠りし古代都市】LV1

バースト:【有】

 

 

「………これだけのスピリットを呼び出しておきながら何もしないだと?」

 

 

完全にロンを舐めてかかっているのか、このターンもスピリットの召喚のみで余裕のターンエンドを宣言するシスイ。

 

しかし、何がどうあれ、ロンのターンが再び幕を開けるのに変わりはない。彼はシスイの余裕を崩すべく、己のターンを進行して行った…………

 

 

[ターン06]ロン

 

 

「メインステップ……バーストを伏せ、仮面ライダーナイトを召喚!!」

「ッ……来たか、ミラーライダー」

 

 

ー【仮面ライダーナイト】LV2(2)BP4000

 

 

様々な鏡像が重なり合いながら、ロンの場に現れたのは、紫属性のライダースピリット、仮面ライダーナイト。そしてシスイはそんなナイトの登場を心待ちにしていたかのように目を見開いていて………

 

 

「召喚時効果、カードを1枚…………」

「ドローは無理だね。このトノサマゲコモンがいる間、相手は召喚時効果を発揮できない」

「なに!?」

 

 

ナイトの十八番とも呼べる召喚時のドロー。しかしそれは今回に限りシスイのトノサマゲコモンに封じられる。

 

 

「ナイトとは15年ぶりの再会だよ………あの日、ゾンが勝手に持ち出して以来じゃないかな?」

「………?」

「愚かな男だったよ。あのまま我についていればいいものを………勝手な倫理観に囚われて君にナイトを託し、スーミ村とか言うこの国の底辺の集落に置き去りにした………そしてその後、のこのこと我に殺されに来た……!!」

「ッーーー!!!」

 

 

実の父親であるゾンは既にシスイに殺されている事が明らかとなり、ロンの体中に衝撃が迸る。

 

徐々に口調が勢いに乗ってきたシスイは、直後にその己の抱いている野望を口にする。

 

 

「我はただ、このミラーワールドに眠る神を顕現させ、ミラーワールドだけでなく、表の世界も支配したいだけだったのにね!!」

 

 

ロンの心が憎しみと怒りで満たされていく中、シスイが語った己の野望。その内容はミラーワールドに眠る神たる存在を獲得し、このミラーワールドだけでなく、表の世界も支配したいと言うモノ。

 

 

「…………そんなクソみたいな野望、どうでもいい…………オレはオマエをぶっ倒す!!」

「おっ…やっぱり本当は父親の事をちゃんと想っているんじゃないか。健気な子だこと、最初から素直になれば良いのに」

「黙れッ!!…ミラーワールドのLVを2に上げ、アタックステップ!!…攻撃しろナイト!!」

 

 

怒りに満ちたロンの指示を聞くなり、ナイトが剣を構え、地を駆ける。狙うは当然シスイのライフだ。そしてこの瞬間、ミラーワールドLV2の効果が発揮されて………

 

 

「ミラーワールドのLV2効果!!…カードを1枚オープンし、それがアドベントカードならばノーコストで発揮できる!!」

 

 

怒りのままに己のデッキをオープンするロン。だがそのカードはアドベントカードではなく、何の変哲もないスピリットカード。ミラーワールドの効果でそのカードは手札に加えられるが…………

 

その瞬間をシスイは見逃さなくて…………

 

 

「手札の増加によりバースト発動、グリードサンダー……相手の手札が5枚以上の時、それら全てを破棄させ、その後2枚のカードをドローさせる」

「………!?」

 

 

シスイのバーストカードが反転。その刹那に青き稲妻が迸り、ロンの手札をトラッシュへと弾き落とした。その中には最強のアドベントカードである「ファイナルベント」のカードが確認できる。おそらくロンはこのカードで一気にシスイを追い詰める予定だったのだろう。

 

 

「フッ……ナイトのアタックはトノサマゲコモンでブロック……そして返り討ち」

「……いや、まだだ!!…フラッシュマジック、ソードベント!!」

「!」

 

 

ロンがたった2枚の手札から引き抜いたカードはアドベントカードの一種である「ソードベント」…………

これによりナイトのBPを上昇させつつ、敵スピリットのコアを除去できる………………

 

はずだった…………

 

 

「効果で先ずはナイトのBPを………」

「それは不可能………!!」

「!!」

「トノサマゲコモンのLV3効果、アタックステップ中にマジックカードは発揮できない!!……アドベントカードも飽くまでマジックカードの一種、よって無効!!…大人しく手札に戻しなさい!!」

「なにっ!?」

 

 

トノサマゲコモンから青白い光が発光。その放たれた光の影響か、ロンのBパッドに叩きつけられたソードベントのカードが彼の手札へと弾き返される。

 

 

「残念だったね、ナイトは何もできずに破壊さ」

「くっ………!!」

 

 

トノサマゲコモンの身体に備え付けられた数多くの楽器から奏でられる不協和音。その凄まじい快音がナイトの身体を爆発させる。

 

 

「………ターン………エンドだ」

手札:2

場:【魔界竜鬼ダークヴルム】LV1

【ミラーワールド】LV2

バースト:【有】

 

 

怒りに身を置き、力任せに攻撃した結果返り討ちに遭ってしまったロン。ナイトを早々に失ってしまっただけでなく、手札までもが大きく削がれてしまった。

 

今回の件を機に、ロンが心のどこかで思っていた自分の父の生存。しかし、その可能性がシスイによって亡きモノにされていた事を知った事により、彼は徐々に冷静な判断ができなくなってきていた。

 

 

「脆い………」

「!?」

「脆いね。まるで石ころを投げられただけで崩壊してしまう水面の月面のようだ」

「………意味のわからん事を……!!」

「まだまだ青二才だなと言う意味さ……さぁ、次は今一度我のターンだ……ここから先のターンは手加減しないよ?」

 

 

さっきまで根暗だった目つきが鋭い眼光へと変貌するシスイ。ここからが本気のバトルスピリッツだと瞬時に悟ったロンは本能的に身構える。

 

 

[ターン07]シスイ

 

 

「メインステップ……もう一度バーストをセット。そしてもう1体トノサマゲコモンを召喚!!」

 

 

ー【トノサマゲコモン】LV1(1)BP10000

 

 

フィールドに現れたのは2体目となるトノサマゲコモン。巨大な体躯から放たれる視線の圧がロンを襲う。

 

 

「ネクサス、海底に眠りし古代都市の効果でコアを追加。そのコアでダーク・スクアーロXのLVを2に上げ、アタックステップ。行きなさいトノサマゲコモン」

「ッ……ライフだ……がっ!!」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉ロン

 

 

召喚されたばかりのトノサマゲコモンがロンのライフ1つを叩き壊す。彼が本気を出して来た事もあってか、多大なバトルダメージがロンを襲う。

 

しかし、やられっぱなしでいるわけにもいかない。ロンは痛みを堪えながらも事前に伏せていたバーストカードを反転させる………

 

 

「ッ……バースト発動、ドラグーンシュート!!…トラッシュからナイトを蘇生!!」

 

 

ー【仮面ライダーナイト】LV2(2)BP4000

 

 

前のターンで破壊されたナイトがロンの場に復活を果たす。しかし、その効果はトノサマゲコモンの効果で封じ込められたままであり………

 

 

「無駄だよ。トノサマゲコモンの効果でナイトの効果は無効だ」

「コイツが……オレの相棒が復活しただけで十分だ!!」

 

 

いつになく、そしてガラにもなく鬼気迫る様子で熱意を叫んで見せるロン。余裕がなくなって来ているのが伺える。

 

 

「ナイトが相棒ね………君はそいつの価値をわかっているのかい?」

「!?」

「ふふ、その様子じゃ分かっていなかったようだね」

 

 

そんなロンの熱意を冷ますかのようにシスイが口を開く。そしてその口から遂にナイトの秘密が明らかになって…………

 

 

「君の持つナイト。そしてスーミ村のアスラが持つ龍騎はこのミラーワールドに生きていたライダースピリット、ミラーライダーズの12体の内の2体だ」

「!?」

「その内の11体が集う時、最強の12体目にして先程申した神たる存在、仮面ライダーオーディンが誕生すると言われている。我はそのカードを娘であるイユに宿らせたいと願っているのだよ」

「だからナイトと龍騎がいる………!?」

「あぁ、その通りだ。神にも等しいオーディンのカード……それを我が娘であるイユに宿らせ、ミラーワールドだけでなく、表の世界までもをこの我が支配して見せる!!…まぁ宿らせたイユの魂はただでは済まないだろうがね!!」

 

 

龍騎とナイトのカードは元々このミラーワールド特有のライダースピリット、ミラーライダーズの1種だった。しかし、何らかの理由でバラバラになったそのカード達をシスイは収集していた。

 

全ては12枚目の最強のミラーライダーズ、オーディンを手に入れるため。

 

 

「自分が最強になるために、娘を無理矢理宿主にするつもりか!!」

「必要不可欠な犠牲だ。それに娘は我の所有物、大した痛手にもならない。それよりゾンを殺すことになった事の方が我としては大きな痛手だったよ」

「娘が所有物だと………オマエは……オマエはどれだけ人々をコケにすれば気が済むんだァァァー!!!」

 

 

ロンの見せる激しすぎる激昂。自分の本当の父だけでなく、己の娘までもを野望の糧とするシスイが許せない………

 

その高なる感情が普段は他人に激怒したりしないロンをここまで激情にさせた。

 

 

「……オレのターンーー!!!」

 

 

そして、その感情を胸に、ロンの怒りのターンが幕を開ける…………

 

 

[ターン08]ロン

 

 

「メインステップ!!…バーストを伏せ、スピリット達のLVを最大まで引き上げる!!」

 

 

ー【魔界竜鬼ダークヴルム】LV1➡︎3

 

ー【仮面ライダーナイト】LV2➡︎3

 

 

バーストのカードがセットされると共にダークヴルムとナイトのLVが最大になる。

そしてロンは残り少ない手札を固く握り、アタックステップを宣言して…………

 

 

「アタックステップ!!…ダークヴルムでアタック!!…その効果でLV1のトノサマゲコモンのコア1つをリザーブへ、よって消滅!!」

 

 

ー【トノサマゲコモン】(1➡︎0)消滅

 

 

ダークヴルムの吐き出した紫のブレスがトノサマゲコモンを包み込む。それにより1つしかないコアが逃げ出すように飛び出てしまい、トノサマゲコモン1体はたちまち消滅してしまった。

 

 

「フッ……しかしまだこちらにはLV3のトノサマゲコモンがいますよ?…ダークヴルムをブロックしなさい」

 

 

トノサマゲコモン1体を倒したのも束の間、最初に召喚されたLV3のトノサマゲコモンがダークヴルムに襲いかかる。

そしてトノサマゲコモンの強力なグーパンチがダークヴルムの腹部に直撃、堪らず爆散してしまう。その光景を目に映していたシスイは余裕の笑みを浮かべながら「他愛もない」と呟くが…………

 

ここまでがロンの作戦であって…………

 

 

「まだだッー!!……まだオレは諦めない!!……破壊によりバースト発動、天冥銃アーミラリー・スフィア!!」

「!?」

「バースト効果でダーク・スクアーロXを消滅させ1枚ドロー、その後召喚!!」

 

 

ー【ダーク・スクアーロX】(2➡︎0)消滅

 

ー【天冥銃アーミラリー・スフィア】LV1(3)BP3000

 

 

ダークヴルムの破壊をトリガーに、ロンのバーストカードが勢い良く反転。ダーク・スクアーロXの中に眠るコアがリザーブへと弾き飛ばされる。ダーク・スクアーロXは身体を維持できなくなり、消滅してしまう………

そして対象的にロンの場には強力な紫の銃ブレイヴ、天冥銃アーミラリー・スフィアが出現した。

 

 

「ほお。銃ブレイヴ……面白い、つまり狙いは……」

「煌臨だ!!……アタックステップは続行、アーミラリー・スフィアでアタック!!…フラッシュ【煌臨】を発揮、対象はアーミラリー・スフィア!!」

 

 

ロンのソウルコアがトラッシュに置かれ、発揮される【煌臨】………

彼のデッキにおいて煌臨を持つスピリットは1体…………

 

 

「来い、仮面ライダーナイトサバイブーー!!!」

 

 

紫の魔法陣と共に仮面ライダーナイトの最強の姿、ナイトサバイブが黒いマントを靡かせながら顕現。天冥銃アーミラリー・スフィアを握り締め、合体スピリットとしての登場だ。

 

 

ー【仮面ライダーナイトサバイブ+天冥銃アーミラリー・スフィア】LV2(3)BP14000

 

 

「ふふ……黄金の翼のカード、サバイブ………オーディンの力を最大限に引き出すためにはミラーライダーズと共に必要不可欠な存在」

「オレはこいつでオマエに勝つ!!…………ッ」

 

 

ナイトサバイブの煌臨により威勢が増していくロン。しかし、その瞬間に又してもあの光景がフラッシュバックするように蘇ってくる…………

 

 

ー………

 

ー『ナイトを託してすまない………オマエなら……オマエならきっと………』

 

ー………

 

 

年齢は精々30前後か、傷だらけで今にも朽ちていきそうな男性がまだ赤子の自分にナイトのカードを託しながらそう言葉を振り絞っていた。

この時の自分はまだ1歳にも満たない赤ん坊。当然その言葉に返答する事はできなくて…………

 

 

今思い返せばこれはゾン・アーサー………自分の血の繋がった実の父親だ。シスイに12枚のミラーライダーズを揃えさせないために自分にナイトを託し、スーミ村まで逃げたのだ。

そしてその後彼はシスイの野望を止めるべく奔走し、最終的に殺害されたのだろう…………

 

 

シスイが憎い…………

 

倒したい…………

 

負けたくない………

 

 

ロンは頭の中に蘇って来た赤ん坊の頃の記憶を思い出しながら、その中に眠る負の感情をさらに肥大化させていった。

 

そして心の中で憎しみと怒りの炎が交差し、ロンを激しく突き動かす。

 

 

「オマエは必ずオレが倒す!!……ナイトサバイブの煌臨時効果でトノサマゲコモンのコア2つをトラッシュに!!」

「!!」

 

 

ー【トノサマゲコモン】(4➡︎2)LV3➡︎1

 

 

ナイトサバイブの手に持つ天冥銃から放たれる疾風の銃撃がトノサマゲコモンの身体を貫く。そのコアが弾け飛び、LVが下がる。

 

 

「トノサマゲコモンのLVが下がった事により、マジックが有効!!…オレはソードベントを発揮!!…ナイトサバイブのBPを5000アップさせ、トノサマゲコモンのコア2つをリザーブへ置き、消滅させる!!」

「!!」

 

 

ー【仮面ライダーナイトサバイブ+天冥銃アーミラリー・スフィア】BP14000➡︎19000

 

 

ー【トノサマゲコモン】(2➡︎0)消滅

 

 

天冥銃を腰に装着し、余った右手で青き盾から騎士たる聖剣を引き抜くナイトサバイブ。そしてそれを振い疾風の斬撃を発生、トノサマゲコモンを腹部から斬り裂き、消滅させた。

 

これでシスイの場のスピリットは全滅。ここに来てようやくロンの圧倒的な優勢となった…………

 

 

「さらにナイトサバイブのもう一つのアタック時効果、ターンに一度、デッキの上からカードを3枚トラッシュへ置き、回復するッー!!」

 

 

ー【仮面ライダーナイトサバイブ+天冥銃アーミラリー・スフィア】(疲労➡︎回復)

 

 

ナイトサバイブが自身の効果で回復。これでこのターンは二度目の攻撃が可能となる。さらにそれに加え、今現在ナイトサバイブは合体によりダブルシンボルとなっている。

 

シスイの残り4つのライフを消すには十分すぎる打点だ。

 

 

「うおぉぉお!!……行け、ナイトサバイブ!!」

「いいね、その必死さ。君のそう言う顔を見たかったんだよロン………そのアタックはライフで受けてあげようか!!」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉シスイ

 

 

ナイトサバイブの一撃目。疾風を纏った聖剣の剣技が繰り出され、シスイのライフを一気に2つ斬り落とした…………

 

だが、敗北直前まで追い詰められたと言うのにもかかわらず、シスイは未だに余裕の表情を浮かべていた…………

 

無理もない。本当にまだ余裕があるのだから…………

 

 

「罠とは常に二重三重に仕掛けていくモノさ………バースト発動、選ばれし探索者アレックス」

「!?」

「効果で召喚。カードを1枚ドロー………そしてこのターンのアタックステップを強制的に終了させる」

 

 

ー【選ばれし探索者アレックス】LV2(2)BP8000

 

 

バーストカードが反転すると共に現れたのは紫色のフードを深く被った人間型のスピリット、アレックス。

その効果で先ずは強制的にロンの攻撃が終了する事になるが…………

 

シスイはまだだと言わんばかりに手札にあるカードを徐に引き抜いて見せ……………

 

 

「さらに我のライフが減った事により、我が最強の僕……モビルスピリット、アルケーガンダムをLV3で召喚!!」

「ッ………!?」

 

 

ー【アルケーガンダム】LV3(5S)BP15000

 

 

上空から空気を切り裂くように飛来して来たのはモビルスピリットの一種、アルケーガンダム。

それは登場するなりロンとナイトサバイブを睨みつけ、大剣を荒々しく構えた。その動きの滑らかさはとてもではないが機械とは思えない程。

 

そしてトノサマゲコモンとは比較にもならないアルケーガンダムの圧迫感、緊張感にロンは襲われる。

 

 

「………今度はモビルスピリットだと!?………いやまだだ……まだオレは負けない………オマエみたいなヤツには絶対に負けない!!……負けられないんだ!!」

手札:1

場:【仮面ライダーナイト】LV3

【仮面ライダーナイトサバイブ+天冥銃アーミラリー・スフィア】LV2(3)BP14000

【ミラーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

しかし、どんなに敵が想像よりも遥かに強大であろうとも、ロンは負けるわけにはいかない。このバトルの中、自分は父に代わり、このシスイを倒さなければならないと悟ったからだ。

 

………この時ばかりは頂点王になると言う夢を忘れ、ただ目の前のシスイを倒すためにそのターンをエンドとしたロン。

 

そして次は強大なアルケーガンダムを呼び出して見せたシスイのターンだ。「オーディンを目覚めさせ、表の世界をも支配する」と言う己の野望を叶えるべく、絶対的強者の余裕を見せながらそのターンを進行させて行った………

 

 

[ターン09]シスイ

 

 

「メインステップ………やはりモビルスピリットにはパイロットブレイヴがいないとね……パイロットブレイヴカード、アリー・アル・サーシェスをアルケーガンダムに直接合体!!」

「!!」

 

 

ー【アルケーガンダム+アリー・アル・サーシェス】LV3(5S)BP22000

 

 

パワーアップを果たし、真の力が発現したのか、アルケーガンダムの4つの眼光から不気味な光が解き放たれる。

 

 

「さらにアリー・アル・サーシェスの召喚時効果、ブレイヴ1つを破壊……対象は合体した銃ブレイヴ」

「くっ………」

 

 

ー【仮面ライダーナイトサバイブ】LV2(3)BP11000

 

 

アルケーガンダムが肩部から取り出した短剣をナイトサバイブへと投げつけ、腰に装着された天冥銃を正確に貫いて見せた。

 

 

「さぁ最後のアタックステップと行こうか………アルケーガンダムでアタック」

 

 

アタックステップに移行。アルケーガンダムに攻撃の指示を送った。そしてさらにアルケーガンダムの能力が解放されて…………

 

 

「フラッシュ……アルケーガンダムの効果。3コストまで支払い、3つの効果を適用。我は当然3コストを支払い、すべての効果を解放」

「!?」

「1つ目。コスト7以下のスピリットを破壊……仮面ライダーナイトを潰しておこうかね」

 

 

猛々しい動き、凄まじい速度でロンの場に現れるアルケーガンダム。その手に持つ大剣で仮面ライダーナイトを一刀両断した。

 

 

「続けて2つ目……アルケーガンダムを回復」

 

 

ー【アルケーガンダム+アリー・アル・サーシェス】(疲労➡︎回復)

 

 

又してもアルケーガンダムの4つの眼光が輝く。これは己が疲労状態から回復状態となった証拠。少なくともこのターンは二度目のアタックが可能となった。

 

 

「そして最後の3つ目!!……相手の手札1枚を破棄、ライフ1つを破壊、デッキの上から6枚破棄!!」

「ッ……一度にこれだけの効果を………ぐぁっ!!」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉ロン

 

 

アルケーガンダムがロンのライフ1つを豪快に斬り裂く。その衝撃でロンの最後の手札とデッキのカードがトラッシュへと叩き落とされた。

 

 

「さぁロン・アーサー!!…このアルケーガンダムのアタックをナイトサバイブでブロックしたまえよ!!…一騎討ちと行こうではないか!!」

「くっ……サバイブッー!」

 

 

シスイの言いなりになるのは嫌だが、今はそうするしか手がない彼は致し方なくナイトサバイブにブロックの指示を送る。

 

対面するモビルスピリットとライダースピリット。アルケーガンダムが大剣を豪快に振り回し、ナイトサバイブに襲いかかる。ナイトサバイブは己の剣でその攻撃を防ぐので手がいっぱいであり、徐々に徐々にと追い詰められていく…………

 

 

「無駄だよ。サバイブ化したとは言え、ミラーライダーズの一端如きでは我のアルケーガンダムには勝てない!!……決してねえぇ!!」

 

 

シスイの叫びと共にアルケーガンダムがさらに強く大剣を振るう。それを受け止めたナイトサバイブの剣は遂に崩れ去る。そしてナイトサバイブが反動で怯んだ刹那の一瞬、アルケーガンダムのさらなる一撃がナイトサバイブの身体を斬り裂いた。

 

このダメージを受けて限界を迎えたナイトサバイブは力付き、倒れながら爆散してしまった…………

 

 

「やはり君は水面に映る月面だ………美しく、それでいて脆い!!」

「ッ……!!」

「砕け散るがいい!!……アルケーガンダムでラストアタック!!」

 

 

………「次はオマエだ」と言わんばかりにスピリットと言う名の盾を全て失ったロンを睨みつけるアルケーガンダム。

 

手に持つ大剣を振りかざし…………

 

ロンのライフへと向けて振り下ろした…………

 

 

「ぐっ…………ぐぁぁぁぁあ!?!」

 

 

 

〈ライフ2➡︎0〉ロン

 

 

 

砕け散るロンのライフ。ガラスが砕け散るような音がこだました…………

 

余りにも強大なバトルダメージにより、力尽きたように倒れるロン。そのBパッドから敗北を告げるように「ピー……」と言う無機質な音が流れ始める………

 

彼は負けたのだ………敗北したのだ………

 

この世で最も負けてはいけない………仇に。

 

 

倒れているロンを目に映すなり、シスイはBパッドを閉じ、彼の元までゆっくりと歩みを進めた。全ては長年の望みであるナイトを手にするためだ………

 

 

「他愛もなさ過ぎる………さて、約束通りナイトのカードをいただいて行くとしよう……せめてもの情けだ。奪うのはサバイブのカードだけにしてあげるよ」

 

 

そう言いながら、シスイはロンのBパッドからナイトサバイブのカードを強引に剥ぎ取った。長年の願いに近づいた事により、その表情からは不適な笑みがこぼれ落ちる。

 

しかし、そんな時、足の裾を握られる感触が伝わって来て…………

 

 

「……オマエ如きが……オレの………オレに託されたナイトに……触れるな!!」

「呆れたよ。まだ動けたか……エックスの身分らしからぬ薄汚さだ」

 

 

地面に這いつくばるロンは残った力を振り絞り、シスイの足を掴んで見せた。シスイはそんな彼の諦めの悪さ、執念深さに呆れ、足元にいるそれが自分の足を離すまで顔面や背中を逆足で蹴り続けた。

 

そしてロンは今度こそ完全に力尽き、気を失ってしまう…………

 

シスイはその後、ナイトサバイブのカードを太陽に照らしながらゆっくりと眺めた…………

 

 

「美しい……遂に手に入れたぞ……ナイトとサバイブのカード!!……これで後は龍騎とその中に宿ったサバイブのカードだけ………フフフ………フハハハハハハハハハーー!!!!」

 

 

力尽き、気を失ったロンを他所に、シスイは高揚からか高らかに叫ぶ。その声がミラーワールド内のオウドウ都中に響き渡った。

 

 

 

******

 

 

 

「だから私はミラーワールドから逃げた。オーディンの依代にされないために…………」

「………あなたのお父様はあなた以外の誰かにする気はなかったの!?」

「それは無理。昔すぎて覚えてないけど、私が4歳の時、初めてミラーワールド来たその瞬間、オーディンに選ばれた。だから私以外の誰かがオーディンの依代になる事は不可能」

 

 

一方、ミラーワールド内のライライ町繁華街では、イユがエールとアスラに説明を終える。

 

エールは余りにもスケールの違う話に唾を飲み込んだ。

 

信じられなかった。今までアスラとロンを勝利に導いてきた龍騎とナイトがそんなヤツを蘇らせるための存在だった事に…………

 

しかし、これを聞いていたアスラは…………

 

 

「え………つまりどう言う事だったんだ?……龍騎とナイトみたいなのが11枚集まったら………あれ、12枚だったっけ?」

「…………」

「ちょっとバカスラ!!…あんたなんで今ので理解できないのよ!?…あんたの話だったでしょうが!!」

 

 

イユの話を全然理解していなかった………彼女からは白い目で見られ、エールからは叱れるようにツッコミを入れられる。

 

 

「……んーーー…あんまパッと理解できないんだけどよ……オマエが神になるんだったらオマエが良い神様になれば良いじゃねぇか?」

「それも無理。オーディンには意思がある。身体を乗っ取られたら絶対に逆らう事はできない………」

 

 

アスラの質問にイユが答える。

 

シスイはイユをオーディンの依代としてミラーワールドも表の世界も支配しようとしている。

発想を変えてみればイユがオーディンの力を制御してシスイを倒して仕舞えば確かに問題ないのかもしれない。

しかし、イユはそれが不可能な事、身体を乗っ取られた時に自分の心は死んでしまう事を理解していた。

 

だからこそ、ミラーワールドから逃げるの一択しかなかった。

 

この15年もの間、何度も逃げ出した。しかしダメだった。最早シスイを………自分の父を誰も止められる者はいない………彼女はそう確信していた…………

 

 

「なんで無理だって決めつけるんだ?…実際に乗っ取られた事があるわけじゃないんだろ?」

「………」

「ちょっとバカスラ!!…何あんた「いっぺん乗っ取られたら?」みたいな感じな事言うのよ!?」

「んな事まで思ってねぇよ!?……でも、諦めるのはダメだろ?」

「………」

 

 

まるで確信を突いたようなアスラの発言に、イユは苦い表情ながら頭に血を昇らせ………

 

 

「あなたに何がわかるの?……諦めてないから逃げたんじゃない!!…諦めてないからあなた達を逃そうとしたんじゃない!!」

 

 

彼の無神経な発言に腹わたを煮えくり返しすイユ。物静かだった彼女は一変、激昂の言葉をアスラに浴びせる。

 

 

「オマエもオレの事何も知らないだろ……オレだったら逃げずに真っ向から立ち向かう。例え相手が父ちゃんだろうが迷わず自分の気持ちを全力でぶつける。こそこそなやり方は絶対しねぇ!!」

「ッ………!!」

 

 

言い返す言葉を失うイユ。

 

そうだ。彼の言う通り、自分は15年間も父親から逃げて来た。決して立ち向かう事はせず、ただただ恐れ、恐怖し、目の前から目線を逸らしながら逃げ続けていた。

 

それが事実だからこそ、言い返す言葉が何も無かったのだ。

 

 

アスラの最後の発言を機に続く沈黙。しかし、その時間はすぐさまある者達によって崩壊してしまう……………

 

 

「ッー!?」

「な、何よこいつら!?」

 

 

アスラとエールがその光景に目を丸くした。無理もない、その前方には3体もの異端な怪物がいたのだから…………

 

金色の蟹のような姿をした者に、青白い虎のような者、終いには白いサイのような者までが、アスラ達を威嚇するように雄叫び上げていた。

 

最初は誰かがBパッドを展開してスピリットを召喚しているものと思って辺り一面を見渡してみるが、それらしき人物は1人もいない。そんな中、戸惑うアスラとエールを見て、イユが物静かな口調で三体の怪物達について説明した。

 

 

「……アレはミラーモンスター……ミラーライダーズに宿る怪物達……あなたの龍騎にもいるでしょう?……きっとオーディンの器である私を捕らえに来たんだわ」

「あ、あぁ……あの赤い龍ね………いや、そんな事より先ずは逃げるぞ!!」

 

 

迫り来る3体の怪物達。アスラ達は正反対の方向へと走り出した。

 

 

「あなた、さっき言った事と矛盾してる……結局逃げるんじゃない」

「いやごめん!!…めっちゃごめん!!…逃げるのスっごく大事でしたー!!」

「カッコつかないわね!!…どうすんのよバカスラァァァー!!」

 

 

アスラとてこの状況をどうにかしないといけない事はわかっている。しかしながら今は逃げる以外の選択肢がなかった。

 

 

「ってアレ……エール、ムエは?」

「え?」

 

 

走りながら、アスラがオレンジの小動物、ムエの存在がいなくなっている事に気がつく。エールとアスラは辺り一面を見渡し、ムエを探す。

 

そして見つけ出した…………

 

繁華街のドーナツ屋のドーナツを貪り食っているムエを…………

 

 

「むんえ〜〜〜」⬅︎ドーナツうんめぇ〜〜〜

「何やってんだクソ犬コノヤローー!!!」

(……か、かわいい)

 

 

こんな時でも呑気にドーナツを食べるムエに激怒するアスラ。そんな中、エールはムエの可愛らしい仕草に萌える。

 

 

「おい!!…いいから早く逃げるぞ!!……てゆーかオマエちゃんとお金払ったのかァァァー!!」

「むえ、むえ〜!!」⬅︎あぁ、まだドーナツが〜!!

「あぁ、まだドーナツが〜見たいな事言ってんじゃねぇ!!」

 

 

ドーナツから無理やりムエを引き離そうとするアスラ。しかしムエはそれを全力で拒む。無我夢中でドーナツを貪りながら必死にドーナツの山にしがみつく。

 

 

「お金ならいっぱいあるわよ。別にいいじゃない」

 

 

エールがそう言いながら金貨が大量に詰まった小袋をドーナツ屋のレジにごっそり置いた。

 

 

「いや多すぎ!!…オーバーキルすんな!!…だぁ!!!なんだこの状況ォォォー!!」

 

 

烏合無象の怪物達が迫り来る中、呑気にボケ合いツッコミ合う2人と1匹。余りにもカオスすぎる状況にアスラは混乱する。

 

だが、怪物達がそんな彼らの様子を見て、逃すわけもなく、ボケもツッコミもしていないイユの方へと狙いを定めた。

 

 

「ッー!!」

 

 

三体の怪物達がイユに飛び掛かった直後、危機を感じたイユはその瞳を閉じる。

 

しかし、体は怪物達の生々しい感触どころか何も感じなかった。イユはその目をゆっくりと開眼させると、そこには龍騎のソードベントで得られる柳葉型の剣を握り、自分を守らんとする様子で怪物達の攻撃を抑え込んでいたアスラがいた。

 

 

「……あなた……何で……」

「オレの目指す頂点王ってのはな………みんなを守るためにあんだよ、だからオレは、オマエの事も諦めねぇ……1人じゃ逃げちまうって言うなら、一緒にどうにかしようぜ!!」

「!!」

 

 

アスラはそう叫びながら三体の怪物達を剣で斬り裂いた。大きすぎるダメージを受けたからか、三体の怪物達はこの場からゆっくりと消滅してしまう…………

 

 

「あれ……消えた?」

「ミラーワールドにおいて、ミラーモンスターは死なない……時間が経てばまた蘇るわ……」

 

 

イユがアスラにミラーワールドのミラーモンスターについて説明を入れる。しかし、アスラは「そんな事より……」と言葉を続け………

 

 

「おい、大丈夫か!?…怪我とかない!?」

「ッ……べ、別に何ともないけど……」

「そっか〜…よかったな!!」

 

 

嘘偽りなく心配してくれたアスラ。その真っ直ぐな笑顔に、イユは思わず顔を赤く染めた。

そして直後、ようやくドーナツ屋から足を離したムエと、それを胸元に抱き抱えてるエールが帰って来た。

 

 

「取り敢えず、今はここを離れるわよ、Bパッドの通話も繋がらないから応援を呼べないし、何より先ずは敵から隠れた方がいい」

「おう、そうだな」

「むえ………」⬅︎ドーナツ……

 

 

エールがそう言った。アスラもこの意見に賛同する。

 

だがそんな時だった。又しても眩い光が出現し、この事件の元凶たる男、イユの父親でもあるシスイが現れたのは………

突然の事に、アスラ達は思わず身を構える。

 

 

「ッ……オマエ、何でここに!?」

「……お父様……!!」

「やぁイユ。そんなに怯えないでくれ、今回はこれを運びに来ただけさ……」

 

 

シスイはそう言いながら片手に担いでいたロンをアスラ達の方へと投げた。気を失い、ボロボロなロンを見るなり、アスラ達は彼に駆け寄った。

 

 

「……ロン?……おいロン!!……どうしたしっかりしろ!!……テメェー!!…オレのライバルに何しやがったァァァー!!」

「そう怒るな欠陥品。我はナイトサバイブのカードを回収しただけ、死んではいない………フフ、後1枚だ。貴様のミラーライダーズもいただくぞ………そのうちな!!」

 

 

ロンに手を加えたであろうシスイに怒り、睨みつけながら歯を噛み締めるアスラ。

 

 

「我が娘イユ!!…そいつらに付くのは勝手だが………それを続けたらどうなるか、分かっているよね……!!」

「………!!」

 

 

イユに脅しをかけるようにそう言葉を言い放つシスイ。15年味わって来た恐怖を前に、イユは体中が震え上がる………

 

 

「まぁ良い。今は引いてあげますよ……残り1枚になって、今はとても機嫌が良いんだ………さらばだ、表の世界のゴミども!!」

「!!」

 

 

シスイはそこまで言うと、アスラの龍騎を奪おうとする事はなく、再び光と共に姿を消した。

 

このミラーワールドでの戦いはまだ始まったばかり……………

 

 

 

 

 

 

 

 




《キャラクタープロフィール》
【イユ・メイキョウ】
性別:女
年齢:19歳
身長:154cm
身分:マスター
概要:白いドレスを着た少女。大人しく、物静かな口調で話す普通の女の子だったが、ミラーワールドにて神たる存在、オーディンに選ばれる。そのため、実の父親であるシスイからオーディン復活の依代にされようとしている。



******



最後までお読みくださり、ありがとうございました!!

以下、ミラーワールド編への経緯をまとめてみました。

【1】15年前、マスターのシスイ・メイキョウ。エックスのゾン・アーサーが未知の世界ミラーワールドを研究。

【2】ミラーワールドに行く事には成功したものの、シスイの支配欲が暴走。娘であるイユを依代としてミラーワールドの神たる存在、オーディンを蘇らせようとする。

【3】彼についていけなくなったゾンは一度ミラーワールドを出て行き、当時生後間もないロンにナイトを託し、スーミ村に置いていった。その後はシスイと戦ったが敗北。

的な感じです。私の文章力が無いばかりに申し訳ございません。
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