バトルスピリッツ コラボストーリーズ   作:バナナ 

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35コア「集結のミラーライダーズ、そして変貌」

鏡の中の世界、ミラーワールド。

 

それはカードだけでなく、本物が実在していた。

 

15年前にそれを発見したパイオニア、マスターの身分を持つシスイ・メイキョウは、ミラーワールドに封印されし神、仮面ライダーオーディンを目覚めさせるべく、その世界に元々あったと言われる他の11枚のミラーライダーズを集め始めた。

 

そして残すところは後1枚。生まれながらにソウルコアが使えない少年、スーミのアスラが持つ龍騎を残すところとなった。

 

 

******

 

 

ミラーワールドのライライ町、繁華街の中、アスラはシスイに完全敗北を喫し、ボロボロの状態となったロンを背負い、無人の道を歩きながら仲間達と共に一先ず身体を休ませる宿を探していた。

 

そんな中、仲間の1人であるエール・オメガは、オレンジ色の犬みたいな小動物、ムエを胸元に抱き抱えながらある一抹の不安を感じ取っていた。シスイやミラーライダーズ、さらには神のカードであるオーディンの事も当然ながら不安に感じるが…………

 

ただそれ以上に…………

 

 

(………な、なんか………近くない?)

 

 

あのミラーモンスターと言う怪物達に襲われて以降、イユが妙にアスラに近い。現に今彼女は彼の側を歩き、その袖を掴んでいる。15年間父親に怯えながら過ごして来たイユのこの行動から、相当アスラに安心感を覚えているのが伺える…………

 

そんな光景を見ていたエールは何故だか不安と言う感情が湧き出ていたのだ。

 

 

「………ねぇイユ……その……さっきから近くない……バカスラに」

「バカスラじゃない……アスラよ」

「……そうね……」

「うぉぉお!!…イユ!!…オマエオレの変なあだ名を否定してくれるのか!!…なんか初めてだそう言うの!!」

「………」

 

 

イユを褒めるアスラに少しばかり腹を立てるエール。アスラは全く気が付いていないが、やはりさっきからイユはアスラに優しいと言うか心を開いたと言うか、妙に好意的になっている。

 

 

「……ねぇ、アスラはエールの事どう思ってるの?」

「ん?」

 

 

アスラとエールの関係が気になったイユが物静かな口調でアスラに質問した。どうやらエールだけでなく、イユもエールに同じような感情を抱いていたようだ。エールはこの時点でイユがアスラに恋愛的興味がある事を完璧に悟った。

 

 

「仲間だ!!」

 

 

アスラが誇らしげに目をギラギラと輝かせながら返答した。どうやら鈍感すぎてイユに恋愛的感情を向けられているのに全く気がついていない様子。

 

そんな彼の返答に、イユは「そう……」と、納得したような言葉を漏らし、今度はエールの方へと顔を向けると………

 

 

「エールはどうなの?」

「え?」

「……アスラの事、好きなの?」

「なッ……!?」

 

 

確信を突くようなイユの発言に、エールは顔を真っ赤に染める。

 

実際は好きか好きじゃないかで問われると、本人も信じられないくらい好きだが、素直になれない彼女はそれを全力で否定し、見栄を張って…………

 

 

「ふ、ふんっ!……なわけないでしょ!!…誰がこんなチビスラなんか……私はこの国で一番上の存在、エックスよ!!」

「だから身分は関係ないだろォォォー!!」

「関係大有りよ!!…バッカじゃないの!?」

「因みにオレはオマエの事好きだぞ!!…つぇぇし、かっこいいし!!」

「ッ!?!……ま、真顔で何言ってんのよ!!!」

「ぐはぁぁぁぁー!!!」

 

 

口論の結果、恥ずかしさのピークに達したエールがロンを背負っているアスラごとぶっ飛ばした。

 

その光景を目の当たりにしたイユは「……そっか」と、全てを悟ったように言葉を落とした。その言葉はどこか物寂しそうなものがあって………

 

 

******

 

 

ここはミラーワールドの三王塔。本来の世界であればここは最強のカードバトラー集団、三王が挑戦者達を待ち構える場所であるが、

ミラーワールドにおいてのこの場所はシスイ・メイキョウとその助手であるフリソデが住う場所となっている。

 

 

「フフ……いよいよ残るは龍騎のみ。15年と言うかなり長い年月を費やしましたが、これで遂に最強のミラーライダーズであるオーディンを手にする事ができる!!」

「……しかしシスイ様。何故あの時一緒にあのコモンの龍騎を奪わなかったのですか?…イユ様もまだあの連中の中にいるのでしょう?」

 

 

ロンから奪ったナイトサバイブのカードを上機嫌に眺めているシスイに、フリソデが意見を申した。

 

確かにロンをも倒す実力を所持するシスイがアスラから龍騎を奪わなかったのはいささか疑問が残る。

 

 

「別にいいのですよフリソデ。ここまで来たら放って置いても勝手に私の手に龍騎サバイブは流れて来ます……あの娘は昔から、優しい娘だからね」

「?」

 

 

まるで未来を見据えているかのようなシスイの発言。意味のわかっていないフリソデは疑問符を浮かべている。しかし、長年シスイの助手として付き添って来た彼はこの予測は当たると確信していて………

 

 

「フフ、それにしてもフリソデ。まさか君があの欠陥品如きにトドメを刺されるなんてね、意外だったよ」

「ッ……すみません……油断しました………ですが次こそは必ずボクがあの欠陥品から龍騎サバイブを奪って見せます。そう言う運命……定めです」

「頑張ってください。でなければあの日、ゴミ溜めから君を拾った我の行為の意味がなくなる」

 

 

実はフリソデ、アスラ、ロンのレイドバトルを監視していたシスイ。下だと見下していた者に敗れたフリソデはこれを恥とし、5年前、シスイに拾われた時の事を思い出しながら気持ちを改める。

 

そんな彼の熱意が伝わって来たのか、シスイは口角を柔らかく上げながら「期待しているよ」と微笑んだ。

 

だが、そんな彼らの一幕を遮るかのように別の誰かの声が一室にこだました。

 

 

「お話の途中失礼しますよ、メイキョウ家……相変わらず部下にはお優しいのですね〜…とても実の娘を神の器にしようとしている者の言動とは思えませんでしたよ〜」

「む……おやおや、これはこれはライダーハンターズの主任様ではありませんか〜……あの間は仮面ライダー王蛇を我にプレゼントしてくれてありがとう。お陰様で残りは龍騎だけだ」

 

 

そこに現れたのはまさかのライダーハンターズをまとめる主任、ウィル。

 

シスイの言葉から察するに、どうやらオロチの王蛇を持ち去ったのは彼のようだ。どう言うわけか、ウィルは他のライダーハンターズには内緒でシスイ達に協力しているようである。

 

 

「やれやれ、それにしても龍騎を目の前にしてそれを奪わないとは随分と余裕ですねメイキョウ家」

「ッ……貴様、シスイ様を愚弄する気か!!…このコソ泥め!!」

 

 

余裕の様子を見せるシスイに対して嫌味のような言葉を口にしたウィルに対して怒るフリソデ。シスイの事を余程尊敬しているのが真摯に伺える。

 

そんな彼の肩に手を置き、「落ち着きなさい」と言わんばかりに制止させるシスイ。ウィルの方へと目を向けると…………

 

 

「王蛇の代わりにミラーワールドの食料やカードは好きなだけ持っていっても良いと言う約束ですが、我々のプライバシーを覗く行為は御法度ですよ主任さん。相変わらず得体の知れないお方だね」

「それはお互い様ですね〜……この私にここまで言い返せるとは、やはり神を目指す者は違う……しかし気をつけてくださいね、油断していると噛まれますよ?」

 

 

お互いを食えない奴だと認識し合うウィルとシスイ。ウィルはその後、「まぁ私は今回の件は全く興味がないので」と、不気味な笑みを浮かべながらそう言い残し、Bパッドのワームホール機能を使い、どこからともなく姿を消した。

 

 

******

 

 

「よし、ロンはここで寝かせておくか」

 

 

一方、時刻は夜。ライライ町にあるホテルに到着したアスラ達は、その部屋の一室を借り、ロンをその部屋のベッドへと寝かせた。余程痛みつけられたのか、悪夢でも見ているかのように苦しんでいるロンの表情、心配ではあるものの、今はそっとしておくしかない。

 

 

「っしゃぁ!!…ロンが回復次第、戦いに行くぞ!!…取り敢えず今は寝ようぜ!!」

 

 

アスラが拳を固め、掲げながらそう告げた。

 

 

「じゃああんたはロンの部屋で寝てなさい。私達は隣の部屋で寝るわ」

「おう!…明日な!!」

 

 

エールがそう言った。男女の寝床を分けるのは至極当たり前の事。エールはムエとイユを連れて隣の部屋へと移動しようとするが…………

 

 

「……いや、アスラと寝る」

 

 

ー!!

 

 

イユはアスラの袖を掴んで離さなかった。余程アスラの隣を離れたくないらしい。彼女のこの行為に対してもアスラはこれといって照れている様子はないが、エールは大きく取り乱している。

 

 

「は、はぁ!?…何考えてんのよあんた!!」

「何って、アスラと寝たいって考えてるだけ」

「バカスラはどうなのよ!?」

「おういいぞイユ!!…一緒に寝ようぜ!!」

「なッ……!?」

 

 

イユのリクエストに応えるアスラ。いつもと変わらない堂々とした振る舞いから、やはりまだイユが自分に抱いている好意を理解していないらしいが、それをわかっていてもエールは腹立たしく思って………

 

 

「か、勝手にしろ!!」

「何で怒ってんだよ?」

 

 

結局エールは2人とは別の部屋で寝る事になり、アスラとイユは2人っきりで夜を過ごす事になった。

 

 

ー……

 

 

静かな夜。ホテルの一室にて、イユは布団の上で、アスラは床の上で布団に包みながら、就寝につこうとしていた。

 

 

「ねぇ、アスラはなんで頂点王になりたいの?」

「証明するためだ!!…コモンでもソウルコアが使えなくても最強になれるってな!!」

 

 

仰向けで月明かりに照らされた天井を眺めながらイユがアスラに訊いた。アスラは目をギラギラと輝かせながら堂々と己の野望を語った。

 

 

「……そ、なんかかっこいいねそう言うの」

「そうか?…夢なんか持ってて当たり前だろ?」

「私、4歳の頃から15年間ミラーワールドでの生活を虐げられて来たから、夢とかあんまり無くて………て言うか、なかった」

「え?…4歳から15年間って事は……イユは今19歳なのか!?」

「そうだよー……アスラよりも4つも歳上」

 

 

意外と衝撃的な事実を聞かされたアスラ。イユが自分よりも身長が低い事や、顔が童顔なのもあって、彼は彼女が歳上だと考えてもいなかった。

 

 

「ま、マジか……わりぃ、今までめっちゃタメ口だった……イユさんって呼べばいいか?」

「タメ口で良い、寧ろタメ口じゃないと嫌。イユって呼んで」

「そう?……んーーー………まぁいっか!!」

 

 

会話が盛り上がるアスラとイユ。そんな彼らの一室の向こう側にはエールが布団に身を包み、ソワソワしながらドア越しで会話を聞こうとしていた。その頭の上にはオレンジ色の小動物、ムエも確認できる。

 

盗み聞きなど高貴なエックスらしからぬ行いだが、イユとアスラの関係が気になってしょうがないのだ。いてもたってもいられない。だが、ドアの壁が厚すぎて中々会話が聞き取れなくて…………

 

 

「うぅーー……全然聞こえないじゃない……あーーーヤダヤダ、何でまだ敵か味方かもわからない女と一緒に寝れるわけ?……どんな神経してるのよ、これだから低俗な愚か者は………でもまぁあいつの事だから別に発展したりはしないんだろうけど………いや別にあんなチビの事なんてどうとも思ってないんだから……あいつが誰とどうなろうがどうでもいいんだから………」

「むえ〜」⬅︎かわいい奴め

 

 

アスラの愚痴をこぼしながらも、結局はドアの壁に耳を必死に傾けるエール。心は素直に成れなくても、本能は己に正直なようだ。

彼女の頭の上に乗っかっているムエはそれを察しているかのような鳴き声を上げた。

 

 

ー……

 

 

時刻はあれから少し経った頃、アスラは喋り疲れて眠ってしまっていた。その部屋のドアの向かい側ではエールも寝落ちしてしまっている。

 

そんな中、イユはただ1人眠っていなかった………いや、眠りたくなかったと言えばいいか。アスラの横に入れる時間を少しでも長く感じていたいのだ。今日起こった様々な出来事はイユの中に根強く残っている。

 

 

「不思議。君といるだけで信じられないくらい勇気が湧いてくる」

 

 

イユがいびきを掻きながら眠っているアスラに顔を向けながらそう言葉を落とした。自分の中でアスラと言う男の子の存在がどれだけ大きくなっていたのかを再認識する。

 

そしてそれと同時に「巻き込んではダメだ」と言う気持ちを強く現れてしまう……自分もいたらアスラは夢を追えなくなるかも知れない。それだけは嫌だった。

 

イユは立ち上がると、アスラの懐を探り、あるカードを1枚抜き取った………

 

それは紛う事なき彼のエースカード、黄金の翼のカードと龍騎のカードが混ざり合った龍騎サバイブのカードであって………

 

イユはそのカードを固く握り締め、紙と鉛筆で彼らにメッセージを残し、窓から逃げるように飛び降りた。そして向かった先はシスイのいるオウドウ都の三王塔。彼女はアスラ達に勇気をもらい、オーディンを復活させる覚悟を決めたのだった…………

 

 

******

 

 

翌日、鳩さえも鳴かない早朝にて、アスラは軽く寝ぼけながら起き上がった。横にいるであろうイユに「おはよう」と声をかけようとするも、そこに彼女はおらず、布団の上には手紙だけが目に入った。

 

何かを察したアスラは眠気が覚め、その手紙を手に取った。そしてその手紙の内容から、イユが覚悟を決めた事、自分の龍騎サバイブのカードを彼女が持っていった事を把握した…………

 

 

「ま、マジか………」

 

 

予想していなかった緊急事態に混乱するアスラ。「取り敢えずエールに相談しよう」と考え、勢い良く部屋を出ると、直ぐそこに起きたばっかりのエールがいて…………

 

 

「あれ?…エール、オマエなんでこんなとこにいんだよ?」

「ッ……べ、別に……あんたには関係ないわ」

 

 

エールが何故部屋の前で眠っていたのかはさて置き、アスラはイユの手紙をエールに見せた。

 

 

ー……

 

 

ここは別の部屋。ベッドの上で寝かされたロンはまるで悪夢でも見ているかのように苦しんでいた。

 

昨日のシスイとのバトルで敗北を喫した事や、実の父であるゾン・アーサーが既に殺されていた事が原因だろう。

 

 

その悪夢の中で実の父がこう言った………

 

『何故シスイに負けたのだ』と………

 

『せっかくナイトを託してやったのに何故負けたのだ』と………

 

何度も何度も繰り返しロンにそう言い聞かせていた。彼らの因縁に、ロンは血筋以外の繋がりはないと言うのに………

 

そしてロンは、悪夢から解放され、遂に目を覚ました。この時はもう既に朝だった。カーテン越しから射し込んでくる光がそれを証明している。

 

 

「……どこだ……どこにいるシスイ!!……オレと戦え!!」

 

 

ここがどこなのか定かではなかったが、ロンのやる事はただ一つ、亡き父のためにシスイを討つ事だけ………

 

頂点王になると言う己の野望を忘れ、責任感のみに囚われた彼は、覚束ない足取りのまま、ホテルの一室を抜け出した。

 

そしてその直ぐ横にはちょうどイユの手紙を読み終えたエール、アスラがいて……………

 

 

「ロン!!……あんた、もう大丈夫なわけ!?」

「シスイはどこだ!!……あいつだけは、あいつだけはこのオレが倒さないといけないんだ!!」

「落ち着けよロン!!…今はテメェのわがままに付き合うわけにはいかないんだ!!…オレの龍騎サバイブも盗られちまった!!…ここはオレ達3人で協力して………」

「協力はいらない!!……オレ1人で奴を倒す!!」

「バカヤロウー!!…あのフリソデってヤツだって復活してるかもしれねぇんだぞ!!」

 

 

出会うなり口論が絶えないアスラとロン。ロンは拉致があかないと考え、アスラとエールを突き放しながらホテルから出て行った。

 

そしてそれをアスラが追う。昨日のダメージがまだ残っているからか、覚束ない足取りだったロンに追いつくのは容易だった。

 

 

「おい待てって!!…オレ達もイユから事情は全部聞いたんだ、オマエがどこで生まれて、赤ん坊の時に何があったのかも全部!!」

「ッ……オマエに、オマエに何が分かる!!」

 

 

ー!!

 

 

ロンの肩に手を置き、制止させるアスラ。しかし、自分の事を知ったように言われ腹わたを煮えくり返した彼は、そんなアスラを突き飛ばした。

 

だが、ロンはこの行為の後、咄嗟に我に帰った。アスラの事を悪く言ってしまった事に罪悪感を覚え、その場で膠着してしまう。

 

そしてアスラはロンとの距離を詰め直し、その胸ぐらを全力で掴み、叫んだ。

 

 

 

あぁ、そうだよ……わかんねぇよ!!

 

オレはオマエと違って血の繋がった人達を知らないし、オマエの込み上げてくる怒りも全部は理解してやれない!!

 

 

でも………

 

 

でもこれだけは言える!!

 

 

オマエにとっての親はシイナで、兄弟はオレだけだろうがァァァー!!!

 

 

 

 

「ッーーーー!!!」

 

 

下から見上げて来る驚異的な視線、迫力に鳥肌が立った。

 

そうだった。思い出した………

 

そして理解し直した…………自分は1人ではなかったという事、例え最悪の過去だったとしても、それに伴って出来上がった最高の未来を迎えられたという事を…………

 

心に安らぎと余裕を得られたロンは、口角を上げ、笑みを浮かべる。

 

 

「フッ………あぁ、すまない………だが、頂点王になるのはオレだぞ、アスラ………!」

「へっ……やっといつもの調子に戻りやがったな、イケメン天才コノヤロー!」

 

 

ようやくいつもの雰囲気を取り戻せたライバル2人。そんな光景をエールは微笑ましく見つめていた。

 

 

ー……

 

 

場所は変わり、オウドウ都の三王塔。そこにはシスイ・メイキョウとその娘、イユがいた。彼女は父親であるシスイの念願、龍騎と黄金の翼のカードが混ざり合った龍騎サバイブのカードを手渡して………

 

 

「……よくやったイユ。君は昔からそうだ。他人より、自分が傷ついた方が楽だものね……さぁ、オーディン復活の準備に取り掛かろう!!」

「はい。お父様………ですが私はお父様が望んでいるような兵器にはなりません!!……絶対にオーディンを従わせて見せる……!!」

「フフ……反抗期はまだ抜けないか」

 

 

イユが実の父親に見ている目は反抗の眼差し。

 

アスラ達に勇気をもらい、覚悟と決意を固めた彼女は、自分の力でオーディンを制御するつもりでいた。そしてオーディンが使い物にならないと考えたシスイが元の優しい父親に戻ってくれると信じていて…………

 

 

「では早速始めよう!!…神を呼ぶ儀式を!!」

「!!」

 

 

シスイがそう叫ぶと、彼の懐から、集められた神を除く11枚全てのミラーライダーズのカードが宙へと飛び交う。やがてそれらはイユを囲むように光線を放ち、球体を形成。

 

イユはその中で静かに眠りについた。

 

遂に、シスイの念願であったミラーワールドの神、仮面ライダーオーディンの復活の儀式が幕を開けたのだった。

 

 

ー……

 

 

そこからさらに少しだけ時が経ち、アスラ、ロン、エール、さらにその頭の上に乗っかっているムエの3人と1匹はイユ達がいるであろう三王塔に来ていた。

 

 

「本当にここにイユがいるの?」

「あぁ、何となく龍騎サバイブを感じる………オロチに奪われた時と同じだ」

「オレもナイトサバイブの存在を感じる………理屈はわからないが、あそこに全てが詰まってるんだろうな…………」

 

 

いざ決戦の時。アスラ達は龍騎サバイブとナイトサバイブを感じ取り、ようやくこのオウドウ都の三王塔前まで辿り着いた。

 

正直確信していたわけではなかったが、それはすぐさま確信へと変わる。ロンが「その証拠に」と呟き、三王塔の扉の方へと指先を刺すと、他の2人も同じ方向に目を向ける………

 

そしてその先にはシスイ・メイキョウの助手であるフリソデが仁王立ちで構えていて……………

 

 

「君たちのその執念には呆れたよ。サバイブを奪われてもまだ立ち向かって来るなんてね」

「フッ……オマエもオレ達にこっ酷くやられておきながらよく堂々と顔を見せられたものだな」

「ッ……何……この落ちぶれエックスが……!!」

 

 

ロンの言葉に腹を立てるフリソデ。懐から取り出したBパッドを取り出し、デッキをセットした。バトルスピリッツで迎え撃つつもりなのだろう。

 

ロンも負けじとBパッドを取り出すが、その前にそれを制止させるかの如く、アスラの短い腕が伸びて…………

 

 

「待てよロン………ここはオレに任せて、オマエとエールはさっさと上に行け」

「!!」

「リベンジすんだろ?……仮にもこのオレのライバルが二度も負ける事は許さねぇ……!!」

 

 

アスラの熱き言葉に、ロンは口角を上げると…………

 

 

「オマエ、腕短いな」

「今それ関係ないだろコノヤローー!!!…いいから早く行けよ!!」

「アスラ!!…負けたら承知しないわよ!!…絶対に勝って上に来なさい!!」

「おう、任せろエール!!」

 

 

アスラを軽く罵り、激励すると、ロンとエールは走り出し、フリソデを通り抜け、三王塔の中へと侵入した。この扉の前に残されたのはフリソデとアスラのみとなった。

 

 

「君さ、本当に身の程知らずだよね。コモンのクセに、ソウルコアが使えないクセにこのボクに立ちはだかるなんて、そしてもうサバイブも無いのにどうやって勝とうって言うのさ」

「オマエこそ勝手な偏見聞かせんじゃねぇよコノヤロー……オレはコモンだろうが、ソウルコアが無かろうが、サバイブが無かろうが頂点王になる。オマエとのバトルは単なる通過点だ」

「フフ……君が頂点王?……笑わせないでくれるかな〜?……君は今ここでボクに負け、ボロ雑巾になる運命、定めだよ!!」

「その運命や定めをぶち壊すのがオレだァァァー!!!」

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

互いに互いを鋭い眼光で睨むつけながら、バトルスピリッツを開始したアスラとフリソデ。

 

先行はフリソデだ。その敬愛するシスイ・メイキョウのため、己のターンシークエンスを進行していく。

 

 

[ターン01]フリソデ

 

 

「ボクのメインステップ!!…母艦ネクサス、レウルーラとガランシェールを配置!!」

 

 

ー【レウルーラ[UC]】LV1

 

ー【ガランシェール】LV1

 

 

「ッ……2枚の母艦ネクサス……!?」

 

 

昨日の赤い母艦だけではない。シャープなディティールに黒いボディを持つ母艦までフリソデの背後へと出現した。

 

この一手だけで今回のフリソデがどれほど気合いを入れているのか見て取れる。

 

 

「これでターンエンド!!…さぁ、君はサバイブ抜きでどこまで戦えるのかな〜!!……せめてソウルコアが使えたらまともなバトルができたかもねー!!」

手札:3

場:【レウルーラ[UC]】LV1

【ガランシェール】LV1

バースト:【無】

 

 

アスラに嫌味染みた発言をしながらそのターンをエンドとするフリソデ。そんな罵詈雑言聞き慣れている事もあってか、アスラはそんな彼の発言に怒りを覚えることはなく、冷静な表情で己のターンを進行していく。

 

 

[ターン02]アスラ

 

 

「メインステップ!!…レウルーラの効果は4000以下のスピリットを破壊するだったよな!!…だったらコイツだ……来い、ゴラドン!!」

 

 

ー【ゴラドン〈RV〉】LV2(3)BP5000

 

 

アスラが呼び出したのは小さき怪獣ゴラドン。そのLV2のBPは5000。前のバトルで苦しめられた母艦ネクサス、レウルーラの効果もこれで事実上の無効にできる。

 

 

「へぇ、小さな脳味噌なりに頭を捻ったみたいだね。まぁボクが勝つ運命からは逃れられないけど」

「アタックステップだ!!…言って来いゴラドン!!」

 

 

ゴラドンがフリソデのライフ目掛けて走り出した。レウルーラで破壊できない以上、フリソデはこの攻撃をライフで受ける他なくて…………

 

 

「ライフで受ける!!………ッ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉フリソデ

 

 

ゴラドンが体当たりでフリソデのライフ1つを粉砕。前のバトルではアスラにライフを破壊されてムキになっていたフリソデだが、今回はそのような様子は見られない。

寧ろ余裕の表情を浮かべており、ゴミを見るような目でアスラを見つめていた。

 

 

「っしゃぁ……先ずは1点、ターンエンドだ」

手札:4

場:【ゴラドン〈RV〉】LV2

バースト:【無】

 

 

先制点を与え、そのターンを終えるアスラ。フリソデはそんな彼を叩き潰すべくターンを進めていった。

 

 

[ターン03]フリソデ

 

 

「君のデッキは知ってるよ。サバイブさえいなければBPの弱いザコしかいない、その程度のザコを幾ら並べたところでボクの前では無意味である事を教えてあげるよ!!」

「ッ……!!」

「メインステップ、レウルーラのLVを上げ、ギラ・ズール・ギルボア機、そしてギラ・ズール・アンジェロ・ザウパー専用機を連続召喚!!」

 

 

ー【ギラ・ズール[ギルボア機]】LV1(1)BP3000

 

ー【ギラ・ズール[アンジェロ・ザウパー専用機]】LV2(2)BP5000

 

 

1つ目のモビルスピリット、ギラ・ズール。その中の2種がフリソデの場に舞い降りる。一機目は緑色の装甲を持つギルボア機、二機目は紫色の装甲を持つアンジェロ・ザウパー専用機だ。

 

 

「母艦ネクサス、レウルーラの効果でドロー……さらにギルボア機の召喚時効果でデッキからカードを4枚オープンし、その中の対象カードを1枚手札に加え、残りは下に戻す」

 

 

母艦ネクサスや召喚時の効果で減った手札を取り戻すフリソデ。そのままアタックステップへと移行する。

 

 

「アタックステップだ。ギルボア機でアタック!!…さらにここでアンジェロ・ザウパー専用機の効果、自身を疲労させる事でBP7000以下のスピリット、即ちBP5000のゴラドンを破壊!!」

「!!」

 

 

【ギラ・ズール[アンジェロ・ザウパー専用機]】(回復➡︎疲労)

 

 

効果発揮の宣言と共にスナイパーライフルを取り出し、それを低姿勢で構え、アスラのゴラドン向けて発砲。ゴラドンは胴体を撃ち抜かれて爆散してしまう。

 

 

「ギルボア機のアタックは継続だ!!」

「ッ……ライフで受ける!!……ぐっ……」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉アスラ

 

 

緑色の装甲を持つギルボア機がアスラのライフを殴り壊す。

 

 

「ターンエンド!!…フフ、僅か3ターン目で力の差がハッキリと出て来たね」

手札:4

場:【ギラ・ズール[ギルボア機]】LV1

【ギラ・ズール[アンジェロ・ザウパー専用機]】LV2

【レウルーラ[UC]】LV2

【ガランシェール】LV1

バースト:【無】

 

 

「うるせぇコノヤロー……オレのバトルスピリッツはまだまだこれからだ!!」

 

 

拳を固め、気合いを入れ直すアスラ。己のターンシークエンスを進めていく…………

 

 

[ターン04]アスラ

 

 

「メインステップ、ミラーワールドを配置!!」

 

 

ー【ミラーワールド】LV1

 

 

龍騎やナイトをはじめとするミラーライダーズを支えるネクサス、ミラーワールドが配置される。いつもであれば周囲の光景が全て鏡向きに変貌するが、今回は元々の場所がミラーワールドであるためか、そのような変化は一切見られなかった。

 

 

「さらにシールダー・ドラゴンをLV2で召喚!!」

 

 

ー【シールダー・ドラゴン】LV2(2)BP4000

 

 

アスラの場に重厚な鎧、大きな盾、槍を携える竜騎士が出現。シールダー・ドラゴンはまるで主人であるアスラを守らんとするように大きな盾を前方に掲げている。

 

 

「フッ……BP4000のザコ。レウルーラの射程圏内だね」

「オレはこれでターンエンドだ!!」

手札:3

場:【シールダー・ドラゴン】LV2

【ミラーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

このターンのアタックは行わず、ネクサスの配置とスピリットの召喚のみでそのターンを終えるアスラ。今一度フリソデのターンが幕を開ける。

 

 

[ターン05]フリソデ

 

 

「メインステップ…… 遊びは終わりだ、全てのカードのLVを1まで下げ、不足コストを確保。赤き彗星の再来……シナンジュをLV2で召喚!!」

「!!」

 

 

ー【シナンジュ】LV2(3)BP13000

 

 

上空より飛来して来たのは正しく赤き彗星。

 

透き通るように澄んだ深紅のボディ。長いレーザービーム砲とボディと同じ色をした盾を所持する強力なモビルスピリット、シナンジュが再びアスラの前に顕現した。緑色をした一つ目の眼光が又しても彼を睨みつける。

 

 

「召喚時効果はわかってるよね?…袖付きスピリットはこのターンのみ相手の効果を受けなくなる!」

 

 

シナンジュから放たれる赤いオーラが他のモビルスピリットに伝播していく。これによりこのターンはアスラが使用するカードの如何なる効果を遮断できて…………

 

 

「アタックステップ……シナンジュでアタック!!…さらにフラッシュ、レウルーラの効果、自身を疲労させる事でBP4000以下のスピリット1体を破壊する!!」

「!」

「対象はもちろんシールダー・ドラゴンだ!!」

 

 

ー【レウルーラ[UC]】(回復➡︎疲労)

 

 

母艦ネクサス、レウルーラに備え付けられた無数の砲手から有りっ丈のビームやミサイルが発射される。シールダー・ドラゴンはそれに被弾、呆気なく爆散………

 

するかと思われたが…………

 

 

「シールダー・ドラゴンの効果!!…効果で破壊された時、同じ状態で場に残る!!」

「なにっ!?」

 

 

爆発による爆煙の中、前方に大きな盾を構えたシールダー・ドラゴンがその姿を覗かせる。

 

 

「シナンジュのアタックはシールダー・ドラゴンでブロック!!…さらにブロック事効果で自身をゲームから除外!!」

「!?」

「これによりこのターンの間、オレのライフは1つしか減らされない!!」

 

 

全身が塵屑となって消滅してしまうシールダー・ドラゴン。しかしその消滅は無駄ではない、ブロックした事によりシナンジュのアタックを止めただけでなく、アスラのライフにこのターンのみ1つしか減らない力を与えた。

 

 

「くっ……だったらその1つはいただくよ。アンジェロ・ザウパー専用機でアタック!!…効果で1枚ドロー」

「ライフだ!!……ッ」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉アスラ

 

 

ギラ・ズール・アンジェロ・ザウパー専用機の持つスナイパーライフルの銃撃がアスラのライフを襲う。そのライフが1つ砕け散るものの、シールダー・ドラゴンの活躍でこのターンはそれ以上の数は削られなくて………

 

 

「チッ……相変わらず小細工の仕込み方が上手いね……だけど延命しただけでボクに負ける定めは変わらないよ?……ターンエンドだ」

手札:5

場:【シナンジュ】LV2

【ギラ・ズール[ギルボア機]】LV1

【ギラ・ズール[アンジェロ・ザウパー専用機]】LV1

【レウルーラ[UC]】LV1

【ガランシェール】LV1

バースト:【無】

 

 

「偉そうに決めつけてんじゃねぇ!!…オレのターンだ!!」

 

 

シールダー・ドラゴンのお陰で厄介な母艦ネクサス、レウルーラが疲労している今が好機だとみたアスラはより一層気合いを入れ、ターンシークエンスを進行していく。

 

 

[ターン06]アスラ

 

 

「メインステップ、ミラーワールドのLVを2に上げて、シャムシーザー、ドラゴンヘッド、龍騎を召喚!!」

 

 

ー【シャムシーザー】LV1(1)BP2000

 

ー【ドラゴンヘッド】LV2(2)BP2000

 

ー【仮面ライダー龍騎】LV2(2)BP4000

 

 

幾数もの白いトゲを背中に生やしている赤いトカゲのようなスピリット、シャムシーザー、竜の頭部に翼が生えたスピリット、ドラゴンヘッド、そして赤きライダースピリット、龍騎がアスラの場に現れる。

 

龍騎の召喚時効果も発揮される。今回は「ストライクベント」のカードが手札へと加えられた。そしてアスラはすぐさまそれを発揮させて………

 

 

「マジック、ストライクベント!!…BP8000以下のスピリット、ギラ・ズール・アンジェロ・ザウパー専用機を破壊して1枚ドロー!!」

「!!」

 

 

龍騎がベルトよりカードを1枚引き抜き、それを左腕のバイザーに装填、「ストライクベント!」の音声と共に赤き龍の頭部を模したガントレットが龍騎の右手に装備される。

龍騎はそれを前方に突き出し、火炎弾を発射。それに被弾したアンジェロ・ザウパー専用機は堪らず爆散してしまった。

 

 

「バーストをセットしてアタックステップ!!…龍騎でアタック、そしてこの瞬間ミラーワールドの効果!!…デッキから1枚をオープンし、それがアドベントカードならノーコストで発揮できる!!」

 

 

止まらぬアスラの猛攻。ミラーワールドの効果でオープンされた1枚は「ソードベント」のカード。これは紛う事なきアドベントカードの一種であり………

 

 

「ソードベント発揮!!…龍騎のBPを5000上げ、敵スピリット1体のコア2つをリザーブに置く!!…今度はギルボア機を破壊だ!!」

「ッ……!!」

 

 

再びベルトからカードを1枚引き抜き、左腕のバイザーに装填する龍騎。「ソードベント!」の音声と共に柳葉型の剣がその手に握られる。

そして龍騎はそれを振い、炎の飛ぶ斬撃を発生させ、ギラ・ズール・ギルボア機の緑色の装甲を焼き切った。

 

 

「コモン如きにギルボアが全滅させられただと!?」

「龍騎のアタックは継続中だ!!」

 

 

ギルボアを全滅させられ、焦った様子をみせるフリソデ。しかし、まるでアスラを嘲笑うかのように、その表情はすぐさま笑みへと切り替わり…………

 

 

「まぁ、それも想定内だけどね!!…フラッシュマジック、白晶防壁!!」

「!!」

「不足コストはシナンジュより確保!!…効果でシャムシーザーを手札に戻す」

 

 

放たれるフリソデのマジックカード。シャムシーザーの身体が粒子と化してアスラの手札へと強制的に帰還してしまう。

 

さらにこれだけでは終わらなくて………

 

 

「ソウルコアを支払った事により追加効果!!…このターン、ボクのライフも1つしか減らない!!……龍騎のアタックはライフで受けるよ!!」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉フリソデ

 

 

龍騎は剣を振い、フリソデのライフ1つを一刀両断にしてみせるが、白晶防壁の効果はシールダー・ドラゴンの効果とほぼ同等……このターンアスラが残ったドラゴンヘッドで攻撃しても彼のライフはこれ以上減らせなくて…………

 

 

「……クソ……ターンエンドだ」

手札:1

場:【ドラゴンヘッド】LV2

【仮面ライダー龍騎】LV2

【ミラーワールド】LV2

バースト:【有】

 

 

マジックカード1枚で動きを止められたアスラ。苦い表情を見せながらそのターンのエンドとなってしまった。

 

そして次はフリソデのターンだ。生き残ったシナンジュの一つ目の眼光がアスラを睨みつける。

 

 

[ターン07]フリソデ

 

 

「諦めな……君とボクとじゃ目指しているものが違う」

「?」

 

 

メインステップ開始前、フリソデがアスラに語りかけて来た。

 

 

「君はさっき頂点王になるとか言ってたけど、ボクの夢はそんなものよりも遥か先、全世界の支配者になる事だ」

「ッ…全世界の支配者?」

「そう。シスイ様と共に絶対的な強さを持つオーディンを手に入れ、何もかもを支配する!!…頂点王なんてちっぽけなモノに囚われている君如きがはじめからこのボクに勝てるわけなかったのさ!!」

 

 

フリソデの野望はシスイと同じ……………

 

確かに「一国の頂点王」と「全世界の支配者」……どちらの立場が上かと言われれば誰もが口を揃えて「全世界の支配者」と答えるかもしれない…………

 

アスラの目指しているモノは、フリソデのそれよりも小さいモノなのかもしれない……………

 

だが…………

 

 

「………オマエそれってシスイとか言うヤツの『ついでに』強くなって、『ついでに』支配者になろうとしてるのか?」

「?」

「仮にそんなんで強くなれたとしても、オマエは多分、いや確実に弱いままだぞ」

「………要点が見えないな〜〜…コモンの薄汚いゴミ小僧………もっとわかりやすく説明しておくれよ」

 

 

アスラの言葉に苛立ちを覚えるフリソデ。敢えてもう一度聞き直した。

 

 

「他人から便乗してもらったモノで強くなっても意味はねぇっつってんだ………シスイがそのオーディンとか言うのを手に入れただけで自分も強くなった気でいるんじゃねぇよ、この自惚れヤロー……!!」

「ッ………あの落ちぶれエックスは本当に口が悪いと思ってたけど……君も大概だよね!!……そんなにボクにぶっ殺されたいのかい!?」

 

 

アスラの言葉に真っ当な反論ができないフリソデ。それ程までにアスラの言葉を的を射ていた。

 

シスイが強くなったついでに自分も強くなった気でいるなど、自惚れ以外何者でもない。言い返す言葉がないからこそ頂点まで腹わたを煮えくり返したフリソデは、メインステップを開始し、手札のカードを1枚引き抜いた…………

 

 

「メインステップ!!……パイロットブレイヴ、フル・フロンタルをシナンジュに直接合体する様に召喚!!…シナンジュもLV2にアップだ!!」

「!!」

 

 

ー【シナンジュ+フル・フロンタル】LV2(3)BP19000

 

 

前のバトルでも使用されたパイロットブレイヴ、フル・フロンタルがシナンジュに合体される。シナンジュの姿は特に変わらないが、その性能は少なくとも3倍に膨れ上がっていて……………

 

 

「フル・フロンタル召喚時効果、相手はスピリット1体を破壊しなければボクは2枚のカードをドロー!!」

「………ドローはさせねぇ、悪いドラゴンヘッド!!」

 

 

フル・フロンタルの効果でスピリットの破壊を要求されるアスラ。ドラゴンヘッドが対象に選ばれ、その肉体が消滅してしまう…………

 

 

「アハハハハッハッハッハ!!!……君のライフは残り3つ!!…シナンジュはフル・フロンタルとの合体中は赤のシンボル3つとなる!!……このターンで終わりだ!!」

 

 

このターンでの勝利を確信したフリソデ。

 

しかし、その刹那の一瞬…………

 

炎の飛ぶ斬撃がシナンジュの体を横一線に引き裂き、焼き切った…………

シナンジュは耐えられず、堪らずフリソデの目の前で爆散してしまった…………

 

 

「…………は?」

 

 

突然の出来事に声が詰まるフリソデ。何が起きたのか全く理解できなかったが、アスラがその説明を入れる…………

 

 

「スピリット破壊後のバースト、第二の龍騎……最もBPの低いスピリット1体を破壊、その後召喚。オマエの場はシナンジュしかいないからそれを破壊させてもらったぜ、自惚れ金髪ヤロー」

「ッ……しまっ……」

 

 

ー【仮面ライダー龍騎[2]】LV1(1)BP5000

 

 

アスラの場には第二の龍騎が現れており、どうやらそれから放たれた炎の斬撃がシナンジュを斬り裂いたようだ。

 

このバーストは前のバトルでも使用した……つまりフリソデはこのバースト効果を認知していたはずである。

痛恨のミスだった。怒り任せに強引なプレイングをしてしまった結果、対処できたはずのバーストを踏んでしまった…………

 

 

「誰かに便乗して達成される夢は、夢とは言わねぇ!!………夢は死ぬものぐるいで、必死になって自分の力で追いかけるモノだ!!……ンな事も知らねぇテメェが頂点王を語るなッーー!!」

「貴様如きがこのボクに知ったような口を聞くな、この欠陥品………底辺のゴミ虫め………!!」

 

 

拳を固め、咆哮を上げるアスラ。悔しさに歯を噛み締めるフリソデ。プライドの高い彼は、下に見ていた者に逆に下に見られるのが余程恥なのだろう。

 

 

 

******

 

 

 

一方でここはミラーワールドの三王塔内部、ロンとエールは上の階にいるであろうシスイとイユの元へと辿り着くため全力で階段を駆け上がっていた。

 

そして丁度ライダースピリットの間へと辿り着いた時、次なる間への道筋を遮るかのようにある者たちが彼らを待ち構えていた………

 

それはミラーワールドに存在する生物、ミラーライダーズに宿るミラーモンスターだった。その数実に8体、その中にはアスラに倒された者も確認できる…………

 

 

「こいつらは………」

「ミラーモンスターね……あんたのとこのあの蝙蝠みたいなヤツと同じよ」

「成る程」

 

 

この上にシスイやイユがいる事は明白。ロンは前方にいるミラーモンスター達を薙ぎ倒そうと、己のBパッドを構え、スピリットを召喚しようとするが…………

 

彼がBパッドを構える前に、エールが彼の目の前に出ると…………

 

 

「先に行きなさい。ここは私が引き受けるわ」

「むえ」⬅︎任せろ

「!」

 

 

エールが自分のBパッドを展開、デッキをセットしながらロンに先に行くように催促した。彼女の頭の上に乗っかっているムエも誇らしげに鳴き声を上げる。

 

 

「勘違いしないでよね。2人であいつらの相手する方が効率悪いと思っただけよ……わかったらさっさと行きなさい」

「あぁ、すまない……ここは頼むぞ、エックスの女」

「………あんた、良い加減そのエックスの女って呼び方やめてくれる?……私の名前はエール・オメガ………エールと呼びなさい」

「フッ……なんで偉そうなんだか……わかった、任せたぞ、エール……!!」

「えぇ!!…任せなさい!!」

 

 

初めてエールの事を名前で呼ぶと同時に走り出すロン。黄金の蟹のようなモンスターの頭をジャンプ一つで飛び越え、先の階段へと登り始める。ミラーモンスター達はそんな彼の背中を追いかけんとするが………

 

その行方を阻んだのはエールが召喚したウォーグレイモンだった。その鋭い鉤爪の武器を振い、近寄って来たミラーモンスター達を片っ端から吹き飛ばした。

 

 

「ここから先は、このオメガ家、エール・オメガが行かせないわ!!」

「むえーー!!!」⬅︎そうだそうだーー!!!

 

 

三王塔の中にて、エールのスピリット達とミラーモンスター達のバトルが幕を開けたのだった……………

 

 

 

******

 

 

「母艦ネクサスのLVをアップさせる………ボクはこれでターンエンド……」

手札:4

場:【フル・フロンタル】LV1

【レウルーラ[UC]】LV2

【ガランシェール】LV2

バースト:【無】

 

 

アスラとフリソデのバトルスピリッツは続く。アスラの第二の龍騎によってエースカードであるシナンジュを破壊されたフリソデは、一度体勢を整えるべく、アタックもブロックも行えないパイロットブレイヴを残し、そのターンをエンドとした。

 

 

[ターン08]アスラ

 

 

「メインステップー!!……シャムシーザー2体を連続召喚!!」

 

 

ー【シャムシーザー】LV1(1)BP2000

 

ー【シャムシーザー】LV1(1)BP2000

 

 

アスラの場に2体のシャムシーザーが召喚される。これで彼の場には第一、第二の龍騎と合わせて4体のスピリットが揃った。

 

 

「第二の龍騎をLV2へ上げてアタックステップ!!…第二の龍騎、いけぇ!!…効果で残ったフル・フロンタルを破壊!」

「くっ……!!」

 

 

剣を構える第二の龍騎。効果により、フリソデのBパッドからフル・フロンタルのカードがトラッシュへと送られた。

さらにこの瞬間、ミラーワールドの効果が適用されるが、今回はアドベントカードではなく、通常のカード。よってそれはアスラの手札へと加わった。

 

 

「レウルーラの効果、疲労させてBP4000の第一の龍騎を破壊!」

 

 

ー【レウルーラ[UC]】(回復➡︎疲労)

 

 

母艦、レウルーラに備え付けられた数多くの砲手からレーザーが照射。それは第一の龍騎を貫き、爆散させた。

 

これでアスラの攻め手は減少するも、フリソデのライフは残り3つ。第二の龍騎と2体のシャムシーザーのアタックだけで十分であって………

 

 

「第二の龍騎は止まらねぇー!!」

「ッ……ライフだ………ぐぁっ!?」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉フリソデ

 

 

第二の龍騎から振り下ろされた斬撃がフリソデのライフ1つを斬り裂く。

 

 

「シャムシーザーでアタックー!!」

 

 

すかさず一体目のシャムシーザーで攻撃を仕掛けるアスラ。この攻撃に加えて2体目のシャムシーザーの攻撃も通ればアスラの勝利で終わるが…………

 

 

「フラッシュ、ガランシェールのLV2効果!!」

「!?」

「自身を破壊する事で、このバトル中、ボクのライフは減らない!!」

「なに!?」

 

 

〈ライフ2➡︎2〉フリソデ

 

 

フリソデの母艦ネクサスの1つ、ガランシェールが塵となって消滅する。しかし、その影響なのか、フリソデの前方にライフバリアとは別のバリアが出現。シャムシーザーが体当たりをしてそれを砕くが、フリソデのライフを減少させるには至らなかった。

 

 

「………ターンエンドだ」

手札:1

場:【シャムシーザー】LV1

【シャムシーザー】LV1

【仮面ライダー龍騎[2]】LV2

【ミラーワールド】LV2

バースト:【無】

 

 

残ったシャムシーザーだけではフリソデのライフを全て破壊する事は不可能。アスラはそのターンをエンドとするが、彼の攻撃を咄嗟に凌ぐためにガランシェールと言う奥の手まで使わされたフリソデの表情は苦しそうで…………

 

 

(……こいつ、強い………ガランシェールまで切らされた………不味い、このままじゃ負ける……よりにもよってエースカードもソウルコアもないクソザコのコモン野郎に……たった一度のミスしただけでこんな………!!)

 

 

あの第二の龍騎のバーストを誤って踏んでしまったのが大きかったか、このバトルはアスラの流れにあるのは間違いなかった。

 

確実に自分が追い詰められている事を悟るフリソデ。このままでは自分がジリ貧になってアスラに敗北を喫する事は明白だった。

 

 

(……嫌だ。負けたくない………あんな欠陥品に、嫌だ。ボクは支配者になる男だぞ、そのためにシスイ様に従ってここまで来たのに………)

 

 

仮に自分がアスラに負けたとしても、シスイの計画に支障がでるわけではない。しかし、彼は心のどこかでシスイに使い捨ての雑巾にされる事を予想していた。

 

それ故に、このバトルで勝ち、自分は役に立つと、証明しなければならないと、本能的に自覚していた。

 

 

[ターン09]フリソデ

 

 

ターン開始の刹那。フリソデはカードをドローするが、この状況を一変させられるものではなく、また苦い表情を見せる。

 

敗北する……………

 

そう思ったフリソデはアスラに向かって口を開けると…………

 

 

「………なぁ、スーミ村のアスラ……だったよな?」

「ん?」

「さっきまではボクが悪かったよ……どうだ、このボクと手を組まないか?」

「!?」

「一緒にシスイを倒そう」

 

 

敗北が確定したフリソデが取った行動は、アスラとの取り引き。態度の急な変貌ぶりに流石のアスラも戸惑いを見せる。

 

 

「いや、本当……さっきまでは悪かったって……ボクさ、昔コモンのヤツに両親を殺されてね。だからコモンのヤツに偏見持ってた。でもわかったよ、君みたいに心優しいコモンもいるんだって」

「…………」

 

 

フリソデはシスイ側からアスラ側につき、自分の居場所を新たに作ろうとしている。ついさっきまで敵だったのだ、普通の人間ならば先ず話は聞いてくれないだろう。

 

しかし、言動や行動からして情に熱いであろうアスラならばきっと優しい手を差し伸べてくれると考え、フリソデはこの手を使ったのだ。なんとも汚い生き残り方だ。

 

 

「あっ……なんならこの袖付きのデッキを君に渡しても良い。ソウルコアが無い君でも使えるし、高額なカードばかりで非常に強いデッキだ………悪い話じゃないだろう!?…ボクも君の仲間に入れてくれよ!」

 

 

カードバトラーの魂とも呼べるデッキまでもアスラに委ねようとするフリソデ。その分生き残るために必死なのが見て取れるが…………

 

アスラの判断は……………

 

 

「オレと同じコモンのヤツがオマエの父ちゃんや母ちゃんを殺したって言うならゴメン………ホントにゴメン………でもオレは、仲間を平気で裏切るようなヤツは信用できねえ……!!」

「なっ!?」

 

 

当然答えはNoだ。アスラは自分の損得で動くような男ではない。

 

確かにフリソデには同情しているが、いくらそれを盾に訴えかけられても、シスイと言う仲間を平気な表情を浮かべながらあっさり裏切ろうとするフリソデが信じられなかった。

 

 

(……んだよ。何なんだよ……この手のバカは情に訴えかければどうにかなると思ったのに……!!)

 

「ターンはエンドか?……オマエには悪いけど、このバトルはさっさと決着をつけさせてもらうぜ。早く仲間のとこに行かないといけないからな」

 

 

不味い。このままでは負ける………

 

そして居場所も失う。いく宛もなくなる。

 

 

(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!………ここで負けたらまたあの野良犬みたいな生活に逆戻りだ……そんなのダメだ。ダメだダメだ……ダメだァァァァァァー!!!)

 

 

フリソデは元々はマスターの身分だった。しかし、5年前、ある人物に両親を殺害されてから一変。富も金も全てを失った彼はまるで野良犬のような惨めな生活を虐げられていた。

 

そしてそんな彼を救ったのが当時のシスイ・メイキョウだった。それ以降、彼の居場所はこのミラーワールドだ。

 

だが、ここで負けて仕舞えば全ては水の泡。台無し。シスイに捨てられてまたあの惨めな生活に逆戻りになるのが目に見えていた。

 

フリソデは内心で何度もそれを拒み続けた。そんな事をしても意味はないと言うのに………どちらにせよ次のアスラのターンで敗北をすると言うのに…………

 

 

しかし………

 

 

今回に限って言えば…………

 

 

その惨めで情けない行為は無駄ではなかった…………

 

 

 

「ッーーーーーー!!!!!」

 

 

 

突如としてフリソデのデッキが眩い深紅の光に包まれたのだ。まるで彼の悲惨な嘆きに応答するかの如く………

そしてこの光が表す意味は、この世界では常識である、デッキの進化に間違いなくて………

 

 

「な、なんだ!?」

「は……アハ、アハハハハハハハハー!!!……凄い、凄いや!!…デッキが進化してるよ!!…なんで、何でだろう!?…ボクの想いに応えてくれたのかな!?……なんだか凄く嬉しいや!!」

 

 

突然の進化に戸惑うアスラ。

狂ったように叫び、笑い出すフリソデ。自分の想いに応えてくれたデッキにご満悦な表情を見せている。

 

 

「……さっきの言葉無しね!!……やっぱり君はこのボクに負ける運命、定めにあるみたいだ!!」

「……!!」

 

 

調子のいい事をほざくフリソデ。とてもではないが、敵である自分の悲しき過去に同情してくれた心優しいアスラに対する発言とは思えない。

 

そしてそんな歪んだ性格を持つ彼は、アスラを倒すべく、止まっていた自分のターンを再び進行させた。

 

 

「メインステップ!!…先ずはドラッツェ2体を連続召喚!!…レウルーラの効果でドロー!」

 

 

ー【ドラッツェ[袖付き]】LV1(1)BP1000

 

ー【ドラッツェ[袖付き]】LV1(1)BP1000

 

 

赤き装甲を持つ最軽量の袖付きスピリット、ドラッツェがフリソデの場に2体出現する。

 

さらにその召喚の際に発揮されるレウルーラによるドローカードを見るなり、フリソデの口角はより上へと上がる。その行動はデッキが進化した事によって生まれた新たなカードをドローした何よりの証拠であって…………

 

 

「次は大人の特権!!…手札にあるパイロットブレイヴ、2枚目のフル・フロンタルを召喚し、君のシャムシーザーを破壊!!…さらに召喚時効果で、君がスピリットを破壊しなければボクは2枚のカードをドローする」

「くっ……残ったシャムシーザーを破壊だ」

 

 

ー【フル・フロンタル】LV1(0)BP6000

 

 

アスラの場に居座る2体のシャムシーザーが塵となって消滅すると共に、フリソデはパイロットブレイヴであるフル・フロンタルを召喚。パイロット・ブレイヴは場には反映されないものの、これで強力なモビルスピリットをいつ召喚しても合体できる準備が整って…………

 

 

「さらに見せてあげるよ!!…ボクの進化した袖付きデッキ……進化したシナンジュを!!」

「!!」

「召喚!!……シナンジュ、ロケット・バズーカ装備!!……そしてフル・フロンタルと合体!!」

 

 

ー【シナンジュ[ロケット・バズーカ装備]+フル・フロンタル】LV3(4S)BP19000

 

 

フリソデの場に飛来してきたのは、アスラが倒したはずの赤き彗星。

 

まるで彼に復讐を果たさんと言わんばかりに、重厚で巨大なバズーカ砲を手に持ち、パワーアップして再度現れた。そしてこれがデッキの進化で得た、フリソデの新たな力であって…………

 

 

「さぁ、お待ちかねのアタックステップだ!!……言って来いシナンジュ!!…効果で1枚ドローして、フル・フロンタルの効果で第二の龍騎に指定アタック!!」

 

 

第二の龍騎がシナンジュの一つ目の眼光の眼差しに捕らえる。第二の龍騎もそれに気がつき、戦闘態勢に入る。

 

 

「忘れてないだろうね〜!!…フル・フロンタルは袖付きスピリット全てのBPを5000アップさせる。今のシナンジュのBPは24000だ!!…第二の龍騎は敵じゃない!!」

 

 

第二の龍騎がシナンジュに向かって炎の飛ぶ斬撃を放つが、シナンジュの深い赤の装甲はそれをものともしない。

このままでは圧倒的なBP差で敗北を喫するであろう第二の龍騎。しかし、アスラはそれを回避すべく、手札にある最後のカードを引き抜いた………

 

 

「フラッシュマジック、ファイヤーウォール!!」

「!!」

「第二の龍騎を破壊する事で、この攻撃でアタックステップを終了させる……!!」

 

 

火柱が第二の龍騎の足元からほとばしる。第二の龍騎はその業火に焼却されてしまうものの、シナンジュとのバトルを回避しただけでなく、このターンの攻撃を全て止める事に成功した

 

はずだった………

 

 

「詰めが甘いねー!!…これだからコモンのゴミは!!…ロケット・バズーカを装備した、新たなシナンジュの効果!!…アタックしたバトルの終了時、ブロックしたスピリットが破壊、消滅していれば、このスピリットのシンボル1つにつき1つのライフを破壊する!!」

「なッーー!?」

「このテキストにはファイヤーウォールによる破壊も当然含まれる!!…そしてシナンジュは今、フル・フロンタルとの合体により赤のダブルシンボル!!…よって2つのライフを破壊する!!」

 

 

重厚で巨大なバズーカ砲を構え、アスラのライフへと照準を合わせるシナンジュ。そしてその重たい引き金を引き、それを発射した。

 

 

「ぐっ……ぐぁぁぁぁあ!?!」

 

 

〈ライフ3➡︎1〉アスラ

 

 

バズーカ砲から放たれた黒い弾丸はアスラのライフへと被弾。今までからは想像もつかないようなバトルダメージが彼を襲う。

 

立場も戦況も一気にフリソデの逆転。アスラはその凄まじいバトルダメージにより、気を失い、前のめりに倒れ込んでしまう…………

 

 

「クククク……アハ、アハハハハハハハーー!!…せっかくファイヤーウォールでアタックステップは終わったのにもうダウン?…もっと痛みつけさせてくれよ!!…頂点王になるんだろこのゴミ虫〜〜!!……まぁ、立ち上がれたとしても手札は0。場のスピリットも0。ライフも風前の灯、勝てる見込みなんて最早これっぽっちもないんだけどねーーー!!!」

 

 

勝ち誇ったかのようにペラペラと話し出すフリソデ。

 

 

「最っ高の力だぁぁ!!…これがあればひょっとしてシスイ様より強い?…もしかしてシスイ様に代わってボクが支配者になれる感じ?……アハ、アハハハハハハハハハハーーー!!!……君さっき言ってたよね〜!?…『誰かに便乗して達成される夢は、夢とは言わねぇ!!………夢は死ぬものぐるいで、必死になって自分の力で追いかけるモノだ!!』って!!……どうしよう必死にやってみたら叶っちゃった、叶っちゃったよー!!」

 

 

己の力、及びバトルスピリッツのセンスを自慢するかのように、気を失ったアスラに叫ぶ、気の狂ったフリソデ。

もう彼は自分の居場所を必要とはしていない。それ以上に大事だと思える力を手にしたからだ。世界を支配して仕舞えば、そんなちっぽけな悩み、どうとでもできる。

 

 

「何が自惚れヤローだ。君の方がよっぽど自惚れじゃないか!!……コモンで、ソウルコアが使えなくて、今ではエースカードも使えない!!……手札も場のスピリットも全滅させられた、哀れで情けない底辺の極み!!……君みたいなゴミがこのボクに勝てると思っていただけでも罪だ。所詮君は、この世界では上に行かないし、何者にもなれない……生まれながらの負け犬なんだよォォォォォォー!!!」

 

 

余りにも滑稽で、笑いが止まらないフリソデ。

 

彼にとって、底辺ながらも努力や鍛錬を積み重ねて来たアスラは滑稽にしか映っていない。しかし皮肉な事に、この世界では才能の差と言うものが流暢に現れる。その証拠に、アスラはフリソデのたった一度の進化にここまで追い詰められている………

 

確かに、フリソデに限らず、側から見ればアスラの努力など、滑稽にしか見えないのかもしれない…………

 

 

だが…………

 

 

「さぁ、君はターンを進められないみたいだし、強制的にもう一度ボクのターンだね……さぁて、どんな攻撃で終わらせてあげようかな?」

 

 

その瞬間だった。

 

 

「………!?」

 

 

アスラのデッキがまるで倒れている彼の心臓の鼓動に呼応するかの如く、黒く点滅し始めたのは……………

 

それから感じ取れる得体の知れない殺気に、フリソデは思わず半歩足を後退させてしまう。

 

そしてその得体の知れない黒い光は徐々に徐々にと強さを増していき、空気や空間を震撼させていく。今までとは比べ物にならない程のプレッシャーがフリソデを襲った…………

 

 

 

 

……………黒

 

 

それは強力過ぎるが故に、別の世界に追放された、バトルスピリッツ第7の属性……………

 

 

そしてアスラの龍騎に宿っているのは…………

 

 

神をも焼き殺す、黒き龍……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




《キャクタープロフィール》
【フリソデ】
性別:男
年齢:21歳
身長:172cm
身分:マスター
使用デッキ:【袖付き】
概要:シスイに従う金髪の青年。元々はマスターの身分だったが、コモンの人間に両親を殺害され、落ちぶれた過去を持つ。その際にシスイから手を差し伸ばされたが、追い詰められたらシスイであっても平気で裏切ろうとする歪んだ性格の持ち主。
口癖は「運命」と「定め」



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