バトルスピリッツ コラボストーリーズ   作:バナナ 

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39コア「未来へのドラゴンライダーキック」

「メインステップ………行くぜイユ………見ててくれよ、オレの………変身!!」

「!!」

「オレは!!…オレ自身を仮面ライダー龍騎に変身させる!!」

 

 

刹那。その気合の入った宣言と共に、アスラの腰にベルトが巻かれる。さらに彼はBパッドの上に置かれたデッキのカードを全てベルトに差し込む。

 

そして、まるでその行いが合図になったかのように、様々な鏡像がアスラの身体へと重なり合った……………

 

 

ー【変身!!仮面ライダー龍騎】LV1

 

 

それらが完全に重なり合うと、アスラは赤きライダースピリット、仮面ライダー龍騎へと姿を変えていた。その姿に周囲の誰もが驚愕していて…………

 

 

「な、何!?……貴様が龍騎になっただと!?」

「フッ……やはり、オレのライバルはオマエしかいないな、アスラ……!!」

「勝負はこれからだぜオーディン………諦めないのがオレのバトスピだァァァー!!」

 

 

龍騎に変身したアスラが龍の如く咆哮を上げる。それにより三王塔の最上階が軋んで行く。

 

遂に限界を超えたバトルスピリッツが終わりを迎えようとしていて………

 

 

「配置時の神託を発揮!!……カードを3枚トラッシュに送り、その中にある対象カードの数だけオレにコアを追加!!……今回は2枚、よってコアを2つ追加!!」

「オレ達はこれでターンエンドだ」

アスラ手札:4

ロン手札:3

場:【変身!!仮面ライダー龍騎】LV1

【ミラーワールド】LV1

【ミラーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

龍騎に変身したアスラにコアが追加されるのを見るなり、そのターンをエンドとするロン。タイムベントによって減ってしまったコアを鑑見ての判断なのだろう。迂闊に動けばコア不足で即死だ。

 

 

「ってかオレ変身したらちょっと身長高くなってね!?……ロンと目線同じだもんな!!」

「黙れ。腹が立つ」

「なんでだよ!?」

 

 

ここでようやく変身した自分を客観的に見るアスラ。身長はおよそ180センチに近づいており、170後半はあるロンと全く変わらない目線になっていた。

 

ソウルコアが出せない事よりも身長が低い事を気にしていた彼にとって、これほど嬉しい事はない。そんな事を考える時ではないとわかってはいるが、どうしても口がでしゃばってしまう。

 

 

「変身………まぁ良い。ミラーライダーズの一端に変身した所でミラーライダーズを統べる神たる我には敵わぬ」

 

 

既に仮面ライダーオーディンを召喚しているオーディンは、勝ちを確信しているのか、確かな余裕があった。

 

 

[ターン11]オーディン

 

 

「メインステップ……は、もう要らぬ……このアタックステップで終いだ。神たる我自身で攻撃する!!」

 

ー!!

 

 

オーディンの掌から放たれる光弾。それは残り1つしかないアスラとロンのライフへと真っ直ぐに飛び行く。

 

しかし、イユを救けると覚悟を決めたアスラに、それは通じなくて……

 

 

「まだだ!!……フラッシュマジック、リミテッドバリア!!」

「なに!?」

「そのアタックはライフで受ける。リミテッドバリアの効果でこのターン、オレ達のライフは1つも減らねぇ!!」

 

 

〈ライフ1➡︎1〉アスラ&ロン

 

 

アスラが放ったマジックにより、オーディンの放った光弾は弾かれてしまう。リミテッドバリアはこのターンの間、コスト4以上のスピリットの攻撃から身を守る事ができる。

 

コスト13という高コストなオーディンでは、少なくともこのターンはアスラ達を倒せなくて…………

 

 

「小癪、極まり無し!!……まだ足掻くか……良い加減諦めろ、もうオマエ達にこれ以上の奇跡は起きぬ!!」

「それでもイユは起こした!!」

「!!」

「体を引き裂きたいくらい辛かったのに、それでも生きるために、必死に足掻いて、もがいてもがいてもがきまくって、オレに変身の力を……希望を与えてくれた!!……奇跡ってーのは、勝手に起きるモノじゃねぇ!!……自分自身が限界を超えて、手繰り寄せ、引き起こすモノだ!!」

「それを今、オマエに証明してやる!!」

「戯言を………この下等種族が……やれるモノならやってみるが良い!!

 

 

アスラとロンのターンが再び幕を開ける。手札的にもおそらくこれがラストターン。この機を逃すと、勝てない上にイユも救けられないという悲しきバッドエンドを迎えてしまう事だろう…………

 

 

「ロン、頼みがある」

「………なんだ」

「アイツの、オーディンのBPを超えるスピリットを用意してくれ……少ないコアしかねぇけど何でもいい……頼む!!」

 

 

ロンにそう懇願するアスラ。オーディンに勝てる方法と、イユを救い出す方法。その2つを引き起こすためには、それ以外の方法が考えつかないのだ。

 

だが、ライバルの必死の頼みを、ロンが応えないわけがなくて…………

 

 

「フッ……オマエの小ちゃい脳味噌で考え抜いた作戦か……面白い、乗ってやる」

「へっ……オマエはいつも一言多いし、余計なんだよな!!」

 

 

………行くぜ、あの神黙らせるぞ!!

 

…………オレ達のターン!!

 

 

限界を超えた2人の最後のターンが力強く宣言される。全てはオーディンを倒すため、イユを救けるため………

 

このターンで全身全霊の攻撃を叩き込む…………

 

 

[ターン12]アスラ&ロン

 

 

ターンシークエンスの過程の中でカードをドローするロン。そしてようやくあのカードが引けたか、その口角を小さく上げ、笑みを浮かべる。

 

 

「メインステップ……ようやくおでましか、来い……ダークウィング、転醒ナイト!!」

「!!」

 

 

ー【ダークウィング】LV1(1)BP4000

 

ー【仮面ライダーナイト】LV1(1S)BP4000

 

 

ロンの場に現れたのは黒き翼を持つダークウィングと、仮面ライダーナイト。この終盤にて、遂にシスイをも倒した布陣を整えて見せる。

 

 

「召喚時効果で2枚ドロー!」

「さらに対象のスピリットが召喚された事により、オレにコアを追加!!……LVアップだ!!」

 

 

ー【変身!!仮面ライダー龍騎】(2➡︎4)LV1➡︎2

 

 

「無駄だ……何度も言わせるな、何をしようとも、この神たるオーディンは倒せぬ……その少ないコアでは最早それ以上の動きはできまい!!」

「一々うるせぇぇぇーー!!」

 

 

………バトスピってーのは、強力なスピリットでも、

 

………ましてやコアでやるモノでもない!!

 

………諦めない心でやるモノだ!!

 

 

「転醒ナイトにダークウィングを合体してアタックステップ、合体スピリットとなった転醒ナイトで攻撃する!」

 

 

2人で頂点王シイナの教えを叫びながら、最後のアタックステップを開始するアスラとロン。先陣を切るようにロンが転醒ナイトで攻撃を仕掛ける………

 

そしてこの時、この瞬間、数々の効果が発揮されて………

 

 

「転醒ナイトのアタック時効果、オーディンのコアを2つリザーブに置き、回復!!」

「!!」

 

 

ー【仮面ライダーオーディン】(5➡︎3)LV3➡︎2

 

ー【仮面ライダーナイト+ダークウィング】(疲労➡︎回復)

 

 

転醒ナイトとオーディンの身体が紫色の光に包まれる。その間に、転醒ナイトは回復状態となるが、オーディンはコアを外され、そのLVを降格させられてしまう。

 

 

「まだあるぞ!!…アドベントカードをコストに【零転醒】を発揮……転醒ナイトを、転醒ナイトサバイブへと昇華させる!!」

「なに!?…神たる我の力を貸さずともサバイブ化するだと!?」

 

 

ロンは手札よりアドベントカードである「ソードベント」のカードを破棄。その行いにより、ナイトの効果が適用。

 

ナイトはベルトからカードを1枚引き抜く。その瞬間に疾風の風が吹き荒れ、ナイトの武器も黒い剣から青い盾へと変更される。そしてその青い盾のバイザー部にそれを装填………

 

………サバイブ!!

 

と、音声が鳴り響くと共に、仮面ライダーナイトは更なる強化形態、仮面ライダーナイトサバイブへと進化して見せた。疾風の風で黒いマントが靡く中、青い盾の中に内蔵された聖剣を引き抜く。

 

 

「ナイトがナイトサバイブへと進化した事により、黒き翼ダークウィングも、疾風の翼ダークレイダーへと進化を遂げる!!」

 

 

ナイトがサバイブへと進化した事により、ダークウィングが甲高い雄叫びを上げながら一瞬にして鋼鉄の翼を持つダークレイダーへと進化して見せた。

 

 

「来い、ダークレイダー!!……今こそナイトサバイブと1つとなりて、研ぎ澄まされた怒涛の疾風へと生まれ変われ!!……ミラージュ!!」

「!?」

「現れろ……ナイトサバイブ・レイダー!!」

 

 

ー【仮面ライダーナイトサバイブ+ダークウィング】LV2(2S)BP12000

 

 

ダークレイダーが分離。それがナイトサバイブの身体に各所装備されていき、仮面ライダーナイトサバイブはサバイブをも超えた「ミラージュ」と呼ばれる究極の形態へと強化された。

 

その瞬間に、疾風をも超えた怒涛の突風が追い風になるように吹き荒れ…………

 

 

「サバイブレイダー……ロン、オマエいつの間にこんなスゲェカードを……流石オレのライバルだぜこの天才イケメンヤロー!!」

「フッ……オマエにオレは超えさせないぜ、アスラ!!……ダークレイダーの合体時効果、トラッシュのアドベントカードを回収し、オーディンのコア2つをトラッシュに送る!!」

「くっ……!!」

 

 

ー【仮面ライダーオーディン】(3➡︎1)LV2➡︎1

 

 

サバイブレイダーから放たれる紫色のオーラがオーディンを包み込み、そのコアをさらに除去する。オーディンは遂に最低レベルの1までダウン。

 

そのBPは12000。そして、ナイトサバイブレイダーのBPも同じく12000だ。

 

 

「約束は果たしたぞアスラ……行け!!」

「おう!!」

 

 

アスラは叫ぶと、己のベルトにあるデッキからカードを1枚ドロー。それを左腕のバイザーに装填する………

 

………ファイナルベント!!

 

と、音声が鳴り響く。

 

 

「オレは、変身したオレの効果を発動!!…ミラーライダーがアタックした時、そのスピリットのBP以下のスピリット1体を破壊する!!」

「なに!?」

「神たるオマエだったらもうわかるだろ?……オレは!!…ナイトサバイブレイダーと同じBPを持つ仮面ライダーオーディンを破壊……来い、赤き龍!!」

 

 

アスラがフィールドへと赴くと、龍騎に宿る赤き龍が鳥栖を巻き、アスラの背後へと現れる。

 

 

「行くぜ……オレの……ドラゴンライダーキック!!」

 

 

アスラは赤き龍と共に跳び上がり、華麗に舞うと、キックの構えを取る。そしてそのまま赤き龍の火炎弾に背中を押され、ミラーライダーの神たるオーディンへと飛び込んでいく………

 

しかし、オーディンはこの程度では破壊されない。黄金の羽を操って束にし、火炎弾と化した龍騎のライダーキックをガードして見せる。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉお!!!」

「負けない……敗北を喫するわけがない!!……この神たる我が!!……貴様みたいなただの人間に!!」

「ただの人間なめんなッ!!」

 

 

 

 

オレは!!

 

頂点王になる男だ!!

 

ただの人間だろうがなんだろうが、今持てる全ての力を使って、先ずはオマエを超える!!

 

 

 

 

「ッ!!……コイツ……また黒く……!?」

 

 

オーディンの黄金の羽と激突する中、龍の如く咆哮をあげるアスラ。それに応えるかのように、その身体の色が赤から黒に塗り替えられていき、龍騎の姿からリュウガとなる。

 

身体に燃え上がる赤い炎も、次第に黒い炎に変貌を遂げる。その威力も増していき、黄金の羽が徐々に焼き焦がしていく。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉお!!!……諦めないのが、オレのバトルスピリッツだぁぁぁあ!!!」

 

 

そして、黄金の羽全てが焼き尽くされ、遂にアスラのキックがオーディンに炸裂。神たるオーディンは流石に力尽き、前のめりに倒れ、爆散した。アスラは着地と共に色が黒から赤に戻る。

 

 

「こ、この神たるオーディンが……貴様ら如きに…………ぐっ……ぐぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

ー!!

 

 

フィールドにいたオーディンがアスラのキックで爆散した直後。変身龍騎の力なのか、イユの身体を乗っ取っていたオーディンに異変が発生、イユの身体から霊体のような金色の塊が抜き出した。そしてイユの身体はぐったりと倒れて………

 

 

「馬鹿な……小娘との憑依が強制的に切り離されただと!?……何故だ、何故だ……ここまで来て、こんな……!!」

「オマエの本当の姿が、そんな惨めな金の塊ヤロウだったとはな……!!」

「!!」

 

 

飛び出した金色の霊体は、オーディンの意思の正体。そして目の前にはアタック中のナイトサバイブレイダーが存在していて………

 

 

「やめろ……やめるんだナイト!!……我は神、オマエ達を統べる存在だぞ!?」

「………神は他を統べる存在じゃない。他を見守る存在だろ…………行けナイト!!」

 

 

命乞いも虚しく、ナイトサバイブレイダーは、ロンの宣言で剣を構え、霊体のみとなったオーディンのライフバリアを無慈悲にも斬り裂いた。

 

 

「ぐっ……ぐぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

〈ライフ2➡︎0〉オーディン

 

 

ライフがゼロにされ、凄まじいバトルダメージがオーディンを襲う。布切れが解けていくかのように身体が少しずつ消えようとしていた。聞こえてくる息使いで、もがき苦しんでいるのがよくわかる。

 

 

「な、何故だ……龍騎、ナイト!!……何故この神たる我を、オマエ達を総べる存在であるこのオーディンを差し置いて、何故そんな下等種族の人間達に手を貸す!!…何故だぁぁーー!!」

 

 

神たる自分の敗北の現状を受け入れたくないオーディン。消えゆく中、龍騎となったアスラが眼前に現れる。

 

 

「……なぁ、知ってるかオーディン。バトスピって楽しむモノなんだぜ?」

「!?」

「ライダースピリットは主人を自分で選ぶ。龍騎とナイト……他のライダースピリットは……面白いヤツを選んで、バトスピを楽しみたいだけなんだと思うんだ。そりゃ、人間を支配したいだけのオマエの世界なんて、行きたくないよな」

「………」

「オマエには一緒にバトスピしたいって思えるヤツ、いないのかよ」

 

 

アスラは今まで色んなライダースピリットを見てきて、そう考えていた。

 

ロンのナイトを始め、テンドウのカブト、トゥエンティのジオウでさえ、彼から見たらバトルを楽しんでいるように見えていた。

 

 

「今更こんな事言ったらアレだけどよ。オレ、オマエとのバトル、スッゲェ楽しかったぜ!!……今度は世界なんか賭けないで、楽しくバトルやろう!!」

「………そうか。良き主人に恵まれたのだな……龍騎とナイトは………ならば、神たる我が最後にやる事は1つだ……」

 

 

ー!!

 

 

アスラの言葉に、何かを気づかされ、悟ったような発言をするオーディン。ミラーライダーのカード達を遥か彼方へと解き放った…………

 

ミラーライダーのカード達はしばらく周囲を飛び交うと、再び主人を求め、どこかへ飛んで行った………

 

その中でもサバイブのカード達は、再びアスラとロンのデッキへと収納される。やはりそこが一番落ち着くのだろう。

 

 

「そうだ……それで良いのだ。良いのだろう?……そうか、バトルスピリッツとは、楽しむモノか……神たる我の部下達が、良き人間との出会いに、幸あらん事を………ッ」

 

 

オーディンはそのまま消滅した。人間に何か恨みでもあるような発言をしていたバトル中とは正反対に、最後はアスラとロンを認めたような発言をしていたあたり、最後の最後で救われたのだろう。

 

アスラの想いは届いたのだ…………

 

 

「アイツ……死んじまったのか?」

「いや、スーミのアスラ……ライダースピリットに命の概念は無い。時が来れば、またいつか蘇る事だろう……」

「そっか……またいつかバトスピやろうな、オーディン!!…今度は楽しく!!」

 

 

オーディンの消滅に、少なからず罪悪感を覚えるアスラ。イユの明日を救うために、別の命を犠牲にしたと思ったからだ。

 

しかし、シスイが言うように、ライダースピリットは死なない。いつかきっと復活を果たす事だろう……

 

今度は良きスピリットとなって………

 

 

「勝ったんだな、アスラ」

「おうロン、やったな!!」

「フッ……当然だ」

 

 

アスラの龍騎の変身が解けていく中、ロンがアスラにそう告げてきた。2人は勝利をその身に噛みしめながら、拳を合わせた。

 

その後、アスラとシスイは直ぐに倒れているイユの方へと向かう。

 

 

「………ん、ッ」

「よっ!……終わったぜ、イユ」

「……アスラ……!!……勝ったんだね」

「あぁ!!…これで明日も生きれるな!」

 

 

微笑ましく笑い合うアスラとイユ。その間に、改心し、イユを心の底から心配していたシスイが現れ………

 

 

「イユ………すまなかった……今は兎に角この言葉以外が出てこないよ」

「いいんです、お父様……また一緒に暮らしましょう……もちろん、このミラーワールドじゃなくて、表の世界で……!」

「あぁ……あぁ……!!」

 

 

直後にロンがアスラの横にひょっこり姿を見せ、絆を取り戻した親子のやり取りを微笑ましく眺める。

 

だが、その時だった。アスラとロンが知っている声が聞こえてきたのは…………

 

 

「そう言うわけにもいかねーんだよな。シスイ・メイキョウ」

 

 

ー!!

 

 

聴き慣れたワイルドな声。アスラ達はその声のする方へと振り向くと、そこには無事ミラーモンスター達との戦闘を終えたテンドウと、エール、その頭の上に乗っかっているムエがいて………

 

おそやくオーディンが最後にミラーライダーを解き放った事により、ミラーモンスターもこの場から消滅したのだろう。自由になった事で、ミラーライダーと共に主人を求めて旅立ったのだ…………

 

 

「エールに……テンドウさん!?……なんでここに……」

「その話は後だ小僧。今はそこの鏡マンの話が先だ」

 

 

テンドウは基本的に人を渾名で呼称する。鏡マンとは、おそらくシスイの事だろう。

 

 

「大体の話はエールから聞いたぜ。なんだ、殺人やらライダースピリットの強奪やら色々悪事を働いたそうじゃないの、表の世界も壊そうとしたんだって?……おっかねぇな」

「………」

「ぶっちゃけ。死刑は免れないんじゃね?」

 

 

ー!!

 

 

「えぇ!?……死刑って…そんな……いくらなんでも」

「まぁ、オレは裁判官じゃねぇから、どうなるか知らんけど。飽くまで推測………いくら猛省してるとは言え、三王としてオマエをみすみす見逃すわけにもいかねーんだな。やって来た事のけじめくらいつけろ。男ならな」

 

 

タバコを片手に吸いながらそう言葉を落とすテンドウ。言い訳はできない。言い返す言葉もない。自分が今まで多くの人々を傷つけ、悪事を働いて来た事は事実なのだから………

 

寧ろ死刑でも足りないとも思える………

 

だが、そんなシスイを庇うように前に現れたのは他でもない、イユだった。

 

 

「……違います……お父様は確かにミラーライダーを奪って来た……けど、殺してない!!……誰も、親友だったゾン・アーサーも!!」

 

 

ー!!

 

 

「なに!?」

 

 

必至な様子で語られるイユの証言。衝撃の事実。それによれば、彼は親友だったロンの実の父親、ゾン・アーサーを殺してないと言う………

 

そしてその証言に真っ先に反応を示したのは、当然ロンであり………

 

 

「どう言う事だ……!?」

「……ただ、生きていると言う保証もない……あの時はロン、君を追い詰めるために嘘をついた。我はゾンを倒したが、殺してはいない……まぁ、今更信じてはもらえないだろうが」

「だからお願い……お父様を連れて行かないで!!」

 

 

イユの懇願。テンドウは無表情のまま吸っているタバコを取り出すと、再び口を動かした。

 

 

「だからと言って手を引く程三王は務まらねぇ……そこの鏡マンはオレが連行する……そんなにお父様大好きだったら待ってろ……娘のオマエに出来る事なんて、精々その程度だろうよ」

「ッ……待ちます!!……何年だろうが、私はお父様と一緒に暮らすまで、生き続けます!!」

「……イユ……!!」

 

 

さっきまで死のうとしていたとは思えない程の、健気なイユの決意に、涙ぐむシスイ。その涙は、彼自身が今回の件を15年の時を経て猛省していると言う、確かな証拠になって…………

 

 

「あーあー……ヤダヤダ、なんかオレが敵みたいじゃん。親子の愛情を確かめ合うのはこのくらいにして、さっさとこの世界から出してくんね?…この世界全部鏡向きで気持ち悪いんだけど」

「あぁ……それだったら我のBパッドで………」

「取り敢えず一見落着か?」

「落着じゃないわよ!?…あんたまた無駄に怪我して!!」

「いや〜…頑張りました〜」

 

 

テンドウが無表情のままそう言うと、シスイが自分のBパッドを取り出し、このミラーワールドから出ようとする。アスラとエールがたわいもない会話をし始める。

 

しかし………

 

ここでアクシデントは起こった………

 

 

「……変だ。表の世界への扉が開かない……何故?」

「あぁ?…さてはオマエ、まだ何か企んでるな?…オレを騙そうったってそうはいかねぇよ?」

「ち、違う本当だ!!……本当に機能しないんだ!!……ッ」

 

 

シスイが何かの異変に気づき、声を荒げたその直後だった。周囲の空間や建物がまるで鏡のようにひび割れ、砕けていったのは………

 

 

ー!!

 

 

それが示す事はただ一つ……この世界、ミラーワールドの崩壊だった。

 

 

「えぇ!?……何々!?…あっちこっちで割れてますよぉぉ〜〜!?」

「ッ……まさかオーディンが消えた事でミラーワールドはその存在を維持できなくなっているのか!?」

 

 

慌てふためくアスラ達。咄嗟に脳裏で浮かんだシスイの推測は、おそらくほぼ的中している。

 

ミラーワールドの中核だったオーディンが失われた事により、ミラーワールドは今にも崩壊しようとしていた。

 

 

「えぇぇぇぇぇーー!!……どうすんですかぁぁぁー!!…せっかく良い感じに終わろうとしてたのに!?」

「うっさいわねバカスラ!!…ちょっと黙ってなさい!!」

「エール、だからバカスラじゃない。アスラよ。ちゃんと呼んで」

「なんでアンタは逆に冷静なわけ!?」

 

 

アスラとエール、イユが漫才を繰り広げる中、ミラーワールドの崩壊は進んでいく。もうダメかと思ったその時、テンドウが「あ」と、言葉を漏らすと、ポケットの中から小さなスイッチのある機械を取り出す。

 

 

「そうだ。そう言えばあのクソジジイがこれをオレに渡してたんだ……強制異世界転移装置……これでワンチャン戻れる」

「ワンチャン!?…テンドウ、それ本当に大丈夫なわけ!?」

「あぁ多分。どちらにせよ押してみねぇと始まらねぇ……ポチっとな」

 

 

ー!!

 

 

テンドウは落ち着いた様子でネコガイヌ博士から手渡された胡散臭いスイッチを入れる。すると、テンドウを起点にし、近場にいたエールとイユがこの場から消えて………

 

成功だ。少なくとも3人はミラーワールドを脱出したに違いない。残ったのはアスラとロン、シスイだけだ。

 

 

「おぉ消えたスゲェ!!…っしゃぁ、オレ達も脱出するぞ!!」

 

 

実験の成功に盛り上がるアスラ。しかし、ここでロンに重要な事を気付かされる………

 

 

「あのスイッチごと表の世界に戻ったが、この先どうやって帰るんだ?」

「…………あ」

 

 

………そうだったぁぁぁー!!

 

 

「ダメじゃん!!…どうしよう!!」

「取り敢えず5秒後の自分に任せてみるか」

「何言ってんのオマエ!?…なんでこんな時にスマートな顔してボケれんの!?」

 

 

アスラとロンが漫才を繰り広げるが、実際はそんな事をしている場合ではない。

 

そして束の間の一瞬、シスイの足場が消え去ってしまい………

 

 

「う、うぁぁぉぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

ー!!

 

 

時空の狭間に落下しようとするシスイの身体。悲鳴しかあげられないこの状況に絶望を感じるシスイだったが、その手を誰かが掴み、落下を阻止した。

 

その手は他でもないロンの手だった。そして彼の体をアスラが一人で支えている。

 

 

「ロン……ッ!」

「シスイ、アンタに勝手に消えてもらっては困る。しっかり生きてもらわないと、状況的に胸糞悪い」

 

 

普段はクールなロンも、イユにあれ程言われたシスイがここで死んでしまっては感じが悪いようだ。もちろん、助けたのは本能的であり、それだけが理由ではないだろう………

 

 

「ロン。何故だ……何故助ける……我はオマエの父を、ゾンを苦しめた事に変わりはないのだぞ?」

「フッ……そんな事か、オレは赤ん坊の頃の記憶があるらしくてな。その中のゾンの性格だと多分、「娘のためならしょうがない」とか言って笑い飛ばすさ」

「!!」

「それに最初に言っただろう。オレはメイキョウ家を、オマエも救けると」

 

 

ロンはとうにシスイに対する怒りなど超越している。寧ろ今ここで助けてやらないといけないとまで考えている程だ。

 

だが、そんな中、シスイはまるで諦めたかのように腕の力を弱めて………

 

 

「……いいんだロン。もういいんだ………ゾンだけじゃない。多くの人々を傷つけた、我の罪は重い……いっそ、いっそここで死んだ方がまだ我は救われる」

 

 

自分の罪の重さを誰よりも理解しているシスイ。いっそここで死んでしまう事を心のどこかで望んでいて………

 

しかし、それに対して反論して来たのが、上で二人分の身体を持ち上げ続けているアスラで………

 

 

「バカヤロウ!!……だったらイユはどうなる!?…アンタのためにアイツは一生懸命生きたんだぞ!!」

「!?」

「娘があそこまで気張ったんだ。父ちゃんのアンタが頑張らないでどうする!?……罪が重いから死ぬって言うのは償いじゃねぇ、ただ逃げてるだけだ!!…仮にも誰かの父ちゃんだって言うなら、そんな罪くらい、背負ってでも生き続けろよ!!」

「スーミのアスラ……」

 

 

アスラの叫びを心で受け止めるシスイ………

 

その心が前向きに立ち直ろうとした直後、悲劇は起こる………

 

 

ー!!

 

 

重要だったアスラの足場も崩れ去ってしまったのだ。3人は声を荒げながら表の世界とミラーワールドの間に生まれた時空の狭間へと落下していった……………

 

 

******

 

 

ここは表の世界の三王塔。ミラーワールドとは違い、何事もなかったこの世界にて、テンドウとエール、イユは帰還していて………

 

 

「ちょっとテンドウ!?…アスラ達が帰って来てないじゃない!?」

「んーーー失敗だったみてーだな」

「呑気な事言ってる場合!?」

「お父様、ロン、アスラ……!!」

 

 

イユが3人の身を案じ、両手を合わせ、神に念じたその瞬間だった………

 

まるで鏡が割れるような甲高い音がこの空間に響いて来たのは………

 

 

ー!!

 

 

空間をガラスのように割って現れたのは、龍騎に宿る赤い龍と、ナイトに宿る黒き翼ダークウィング。赤い龍の口にはアスラが咥えられ、ダークウィングの背中にはロンとシスイが乗っていた。

 

どうやら、狭間に落下する寸前で、アスラとロンのデッキに宿る2体が3人を救出して見せたようだ。

 

 

「アスラ、ロン!!」

「アイツは確か龍騎とナイトの………」

 

 

テンドウがそのモンスターの正体を見破る中、アスラ達の安否を確認し、エールはたちまち笑顔になる。ロンとシスイはダークウィングの背中から飛び降り、アスラは赤い龍の口から離され、落っこちる。

 

 

「ぐへっ!!」

「……ダサ」

「おいロンコノヤロー!!…今なんて言いやがった!!」

 

 

華麗に着地する二人と違い、アスラは頭から落ちった。非常ににかっこ悪いが、逆に非常に彼らしいとも言える。そしてその間、アスラとロンの懐に入れたデッキが光る。2人は光るデッキを取り出し、光源を突き止める………

 

………それは他でもないミラーワールドのカードであって………

 

………それらのカードはたちまち消滅してしまった………

 

 

「ミラーワールドのカードが消えていく………」

「ミラーワールドが閉じたからか」

 

 

2人はその姿を最後に、ミラーワールドのカードを見る事はなかった…………

 

 

「ミラーモンスター……オマエ達までこの我を許すと言うのか……?」

 

 

自分たちを救出した赤い龍とダークウィングを目に映しながら、シスイがそう呟いた。

 

無理もない、シスイは最初、ミラーモンスターを道具としてしかみていなかった。それはアスラの龍騎に宿る赤い龍も、ロンのナイトに宿るダークウィングも知っていた筈だ。

 

しかしその間、赤い龍とダークウィングは何かをシスイに告げるかの如く、咆哮と雄叫びを上げて…………

 

 

「……気にしてないって言ってるぜ、多分だけど」

「!!」

「確かによ、自分で許せない事ってあるかもしんねー…それで心がバラバラになりかける事も……でも抗ってみようぜ、アンタをこうやって許してくれる人達もいるんだからさ」

「……アスラ……君は本当に凄い男だな……」

「おう!!……何てったって、オレは頂点王になる男だからな!!」

 

 

シスイは決して報われたいと思ってはいない。罪を償いたいとは思っているが、この先どう足掻いても償いきれないのかもしれない。

 

だが、生きてみようとは思った。諦めずに何度でも挑んで行こうと…………その考え方を、この目の前にいる16もいかない歳の少年に教えてもらった。

 

 

「イユ……我は罪を償ってくる。それまで少しだけ待っててくれ……」

「はいお父様。先程も申し上げましたが………私はいつまでも、いつまでもお待ちしてます!!」

 

 

シスイは最後、イユにそう告げると、テンドウの所へと赴いた。彼に逮捕されるため、そして自分の罪を裁いてもらうためだ…………

 

テンドウは彼の手に手錠を掛ける。

 

 

「……やっぱこの鏡マン弁護するの面倒なんだけど、誰か変わってくんね?」

「あんたは空気を読みなさいよ!!」

 

 

テンドウがエールにツッコまれる。

 

そしてその間に、赤い龍とダークウィングがカードとなり、主人の元へと帰還する。帰還すると言っても、アスラは赤い龍のカードを初めてその手で握って…………

 

 

「……そうか、それがオマエの名前だったんだな……」

 

 

アスラはそのカードを視認するなり、そう呟いた。

 

ライダースピリットはその中に何か別のモノを宿す。そして、それをカード化できるカードバトラーはさらに希少である。

 

アスラも晴れてそんな希少なカードバトラー達の仲間入りを果たしたと言える…………

 

 

「これからもよろしくな……ドラグレッダー!!」

 

 

赤い龍のカード、ドラグレッダーを天に掲げ、そう告げるアスラ。

 

鏡の中の世界、ミラーワールドでの戦いはこれにて幕引きとなるが、彼が頂点王になる物語は、まだまだ続く………

 

 

******

 

 

 

 

あぁ………腹立たしい………

 

本当にムカつく。あのゴミコモン……

 

ソウルコアも使えないくせに………何が諦めるなだ。努力するなだ………

 

ふざけるな………

 

ボクの方が強いに決まってるんだ………

 

 

 

ー………

 

 

 

「…………」

「やぁ、お目覚めかい?……フリソデ君」

「ッ……オマエはライダーハンターズのシルクハット……何故オマエが!?……どこだよここは!?」

「ここは私のお気に入りの場所さ。他のライダーハンターズも知らない……綺麗だろ?……ここに誰かを連れて来たのは君が初めてさ」

 

 

アスラとのバトルに負け、不本意ながらその姿を眩ましていた金髪の青年、フリソデは、小さな孤島で目を覚ました。そのすぐ横にはライダーハンターズの主任ウィルが存在している。

 

周囲には様々な色のコスモスの花が咲いており、目の前には断崖絶壁の崖に広大な海が広がっていた。

 

 

「メイキョウ家は負けたよ」

「ッ!?」

「結局のところヤツは見栄を張るだけの単なるつまらない男だった。あわよくばあのソウルコアも使えないゴミを始末して欲しかったんですけどね……まぁ良い、欲しいモノは全て手に入れた……このアルケーガンダムと、君さ、フリソデ君」

 

 

ウィルがシスイから奪ったアルケーガンダムのカードを見せつけながらフリソデにそう告げる。

 

 

「ぼ、ボクを……何故だ」

「貴方も苛立つんでしょ?…腹立たしいんでしょ?……あの憎たらしいコモンのゴミが……ラッキーだけでこの世界で勝利を重ねていくあの自惚れが」

「!!」

 

 

ウィルが誰の事を言っているのか、フリソデにはすぐにわかった。

 

間違いなくアスラとか言うゴミだ。コモンの癖に、ソウルコアも使えない癖に元マスターである自分に、モビルスピリット使いの自分に偉そうな事ばかり言うアイツに違いない………

 

思い出しただけで腹立たしい、ぶん殴ってやりたい………

 

 

「あぁ……ムカつく……殺してやりたい……運だけで全てを手に入れたあのゴミを……ボクも……ボクもアイツみたいな黒い力さえあれば負けるわけがない……!!」

「フフ……良い憎しみだ。君に目をつけていた甲斐があったよ………ならプレゼントしてあげよう……その黒い力」

「なに!?」

 

 

ウィルからの提案。アスラの事を思い出すだけで憎しみを燃やし続けるフリソデは目の色を変える。

 

 

「ただし条件がある。君は時が来るまでここに待機していて欲しい……なぁに、そんなに時間はかからない……そして、目的を達成するため、私に協力してくれないかね?」

「………ハッ、なんだそんなそんな事か。その程度、お安い御用だ………フフフ……アハハハハハ!!!……そっか、やっぱりボクはあのゴミには負けない運命なんだ!!……待っていろよ、いつか必ずオマエに復讐してやる………その時が来るまで、精々呑気に頂点王になるだのとほざいているんだな……スーミ村のアスラ!!」

「フフ、期待しているよ」

 

 

孤島に響き渡ったのは、復讐心が剥き出しのフリソデの雄叫び。

 

そしてウィルは他のライダーハンターズには秘密でいったい何を企んでいると言うのか…………

 

それが明かされるのは、まだまだ先の話…………

 

 

 




《キャラクタープロフィール》
【仮面ライダーオーディン】
概要:ライダースピリットだが意思を持つ特異な存在。ミラーライダーズの頂点に位置する。何年も前はミラーライダーズを全て持ち、タイムベントで全てを操る力を手にしていたが、ミラーライダーが各々で人間の主人に取り憑くようになってから人間を憎むようになる。
自分を神だと言い張るが、ただのライダースピリットのカードであるため、実際の神ではない。


******


最後までお読みくださり、ありがとうございました!!

ミラーワールド篇は次回で最終回です。あ、ちなみにガイ、タイガ、ベルテはしっかりとタイムベントのコストに使用されました笑
ナイトサバイブやアドベントカードの効果でトラッシュに送られていたんですね〜
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