アスラの目の前に現れたのは……
まるで世界全てを照らしていく、赤々と燃え滾る太陽そのものだった………
ー…
「なんなんだァァァー!?!…太陽!?」
エールがメタルグレイモンを究極体へと進化させようとした途端。その進化の際の炎がメタルグレイモンを溶解し、エールまでもを取り込んで今の擬似太陽を形成してしまった………
これは力の無い者が扱いきれない力を使った際に起こる進化の力の暴走。もはやエールのライフをゼロにするしか元に戻す方法は無い。
「………あいつ、苦しんでんのか!?」
アスラは擬似太陽の中に閉じ込められているエールの気絶している状態を見ながらそう言った。
さっきの状況からなんとなくわかる。これはエールも意図せず起こってしまったもの。
だったら………
「くっ……待ってろ!!今そこから助けてやるからなァァァー!!」
もうバトルの勝ち負けとかはどうでもいい。今はエールを助ける事だけを考えてアスラは気合を入れ直すが………
その直後、その太陽からプロミネンスの如く螺旋状の炎がアスラの龍騎に向けて放たれて………
「えぇ!?……うぉっ!?」
直撃し、爆風と爆煙に包まれる。
ただ、龍騎はガードベントの効果を受けているため、赤き龍の胴体を模した盾を前方に構え、破壊から免れていた。
「こ、これ究極体のデジタルスピリットの効果か何かか?」
これまでの状況から推理して、何となくそう考えていたアスラ。だが、これ以上の思考を妨げようとするかのように太陽は再び追い討ちの火炎弾を発射して………
「………ぐっ!?」
〈ライフ4➡︎3〉アスラ
それは龍騎ではなく、アスラを直接狙って来た。アスラのライフが1つ砕け散る。
「……っ!?」
〈ライフ3➡︎2〉アスラ
これだけではない。その炎の影響だったのか、アスラのライフはさらに1つ溶解し、無くなってしまう。リザーブにもコアが送られていない事から、おそらくボイドに送られたのがわかる。あの太陽の効果だろうか………
アスラはこれで攻撃は終わりだと思った。そのため、一度は安堵の表情を浮かべるが、擬似太陽はもう一度攻撃すると言わんばかりに火炎弾を形成していて………
「………そうか、メタルグレイモンは煌臨する前に回復していたから……2度目のアタックが可能!?」
これはまずい。さっきみたいなライフを一気に2点分破壊するようなアタックが飛んで来たら今度こそ終わりだ。アスラは冷や汗を掻くが………
「…来るなら来い…………諦めねぇ………諦めないのがオレのバトルだ……!!」
未だにこのバトルを投げ出してはいない。最後まで希望を持ち続けていた。
ただ、手札にはもう反撃する術はない………
アスラの最後のライフを砕くべく、その太陽は溜めに溜めた火炎弾を発射……………
する時だった………
……クロックアップ!!
「ッ…………!!」
〈ライフ3➡︎0〉エール
「………え!?」
その謎の音声が聞こえたかと思えば、突然太陽の炎が飛び散って行った。アスラを含め、会場中にいたどの新人達も驚愕した。
「あ〜〜あ。最後の最後で面倒な事なっちまったよ………だる」
「て、テンドウさん!?」
不思議な事はまだまだ続く。消え去っていく炎の中から気を失ったエールを抱き抱えたテンドウが現れたのだ。状況からしてどうやら彼がエールを救い出したようだが、アスラにはもう何が何だか………
「よし!!お疲れ新人共、これで今年の新人交流戦を終わる!!じゃあな、さっさと散りやがれ!!……じゃなきゃ殺す!!」
………えぇぇぇえ!?
そう理不尽な言葉を漏らすテンドウに対して誰もがそう思った。
まぁ、あの国を代表するカードバトラーである三王の1人がそう言うのだ。ロンを含め、他の新人達はゾロゾロとこのコロシアム内の外へと向かっていく………
そしてエールが無事だとわかって安堵したアスラも少し遅れて外に出ようとした途端…………
「オマエはまだ帰んじゃねぇ小僧……じゃなきゃ殺す」
「えぇぇぇえ!?」
耳から殺意を感じる声が通過して来た………
…………アスラはテンドウに捕まった………
******
あれから数分後、
ここはオウドウ都のスタジアム近くにある病院。その一室………
……その一室にあるベットではエールが仰向けで眠っていた。さっきの暴走で相当な体力を使ってしまっていたのが見て取れる………
「………で、なんでオレがあんたと一緒にこいつの看病をしないといけないんですか?」
「うるせぇ、殺すぞ」
「えぇぇぇえ!?…オレ何回殺されるんすかァァァー!!」
アスラはテンドウに半ば無理矢理連れて行かれ、彼と共にエールの看病を任されてしまっていた。
「ロンは多分もうカラーリーダーにバトルを挑む旅に出たんだ!!…あいつに先を越されるわけにはいかねぇ!!……早く行かせてくれ!!」
そう、ロンはもうアスラを置いて先に旅に出た。カラーリーダーに勝利した証、カラーカードを得るため、そしてその先にある三王と頂点王とのバトルのために………
ライバルである彼に前を行かれるわけには行かない。アスラは一刻も早く先を急ぎたかったが………
「うるせぇ!!オマエチビのくせに声デケェんだよ!!!ここ病院だぞ!!」
(えぇぇぇえ!?……あんたが一番声デカイ!?!)
テンドウがそれを許さなかった。仕方ないからアスラはテンドウと共に暫くここに身を置くことにした。
ここらで一旦落ち着いてみる。そうしたら、アスラは一度テンドウに聞いてみようと思っていた事を咄嗟に思い出して………
「……そう言えば、あんた三王なんだよな?」
「あぁ」
「じゃあ、頂点王………シイナもわかるんだよな!?」
「……あぁ」
「じゃ、じゃあさじゃあさ!!今シイナはどうしてる!?……オレとロンは昔あの人に育てられた事があるんだよ!!!」
正直、テンドウが三王の1人だと知った時からその事を聞きたかった。
今、頂点王となったシイナ・メザはどんな様子なのか、どんな感じなのか、自分達の事をなんか言っていなかったか……など、なんでもいい、なんでもいいから姉のような存在だったシイナの今を知りたかった………
「………まぁそれなりに元気にやってる」
「おぉ、そうか、そうなんだ!!……っしゃぁ!!待ってろシイナ!!いつかオレはあんたに挑みに行きまァァァす!!…でもって勝って新しい頂点王になる!!」
テンドウはどこか上の空を見るように言った。そんな様子を気にする様子もなく、アスラはシイナが元気にしている事に喜び、己の野望を口にした………
…………だが、
その野望に対して野次を入れるようにテンドウがまた口を開いて………
「オマエそれ、交流戦の時も口にしてたよな?」
「ん?…はい」
「………本気でなれると思ってんのか!?」
「っ!!」
アスラの背筋が恐怖で凍りつく。
今までとは違って、凄みのある威圧をテンドウはアスラに掛けてきた。おそらくそれが本気である。その凄まじい重圧は、まさしく三王の1人であるに相応しいと言えて…………
「なんやかんやで………結局、オレらカードバトラーに求められるのは………………『ソウルコア』だ!!」
「………!!」
「見ただろう?……エールの使った究極体の力、そしてそれを意図も容易く叩きのめしたオレのスピリットの力………アレは『ソウルコア』の力を使って発揮できる力だ」
………『ソウルコア』
子供だろうが女性だろうが誰であろうとバトルをする際は必ず排出できるモノであり、バトルスピリッツにおいて重要な役割を担う。強力な効果を使う際や、スピリットを進化させる【煌臨】を使用する際も必要となる。
誰もがそのバトル中は1つしか使えないソウルコアを巧みに使い、駆け引きをする。だが、何故かこのアスラだけはどれだけ血の滲むような努力をしてもソウルコアを出すことは叶わない………それがこの世界においてどれだけ大きなハンデを背負っているのかは計り知れず…………
「ソウルコアの無いオマエなんざこの世界ではどう足掻いても上にいけねー……それが現実だ……!」
さらに畳み掛けるように重圧をかけてくるテンドウ。その三王の1人たるプレッシャーを前に、アスラは腰が引けそうになるが、歯を食いしばり、気合いと根性で立ち続けていた…………
「オマエ……頂点王になるって事は……
「!!」
「今オレの前でもまだ…………ソウルコアが無い分際で頂点王になるとほざけるか……?」
「……………」
アスラの前に立ち塞がっているのは間違いなく頂点王までの道のりの中で最強の障害たりうる人物の1人………
本気の恐怖と畏れがアスラの本能を襲う。今すぐここから逃げたい…………
だが、それ以上に…………
「………例え、今は弱くても……」
何度負けても………
誰に何を言われようと…………
「オレはいつか頂点王になってみせます……!!」
夢は諦めたくなかった。アスラは恐怖を乗り越え、今一度堂々と三王の1人であるテンドウに向かって宣言した。嘘偽りない一直線な自分の夢、野望を………
そんなアスラを前にテンドウは…………
「ふ、ワハハハハハハハハ!!!」
「!!」
何がおかしいのか、威圧するのをやめ、急に大きな声で高らかに笑いだした。余りに急だったため、思わずアスラはビクッと体が動く。さらにテンドウはアスラに向けて指を指しながら………
「オマエ、面白い!!……気に入った」
「?」
「エールと一緒に旅をしろ」
「………え?」
急に話を変えてきた。しかもとんでもない内容のものに………
「ちょ、ちょっと待って!!オレがこいつと旅!?なんで!?」
「ツベコベ言うな、オマエに拒否権は無い………逆らったら殺す」
「えぇぇぇえ!?」
アスラは仰向けの姿勢でベッドで眠っているエールを指差しながら言った。
もう何が何だかよくわからなくなってきた。ただわかる事はこれを拒否したら殺されると言う事と、なんか殺し屋のボスみたいな男に気に入られたという事………
「………そしていつか………」
「?」
「頂点王になってみせろ」
「………!!」
テンドウはアスラに対してそう言った。その声色と表情から、それが嘘ではなく本気で言っているのが伺える。アスラは思わず感動してしまった………
それもそのはずだ。今まで、自分が頂点王になると言っても誰も応援も称賛もせず、否定と皮肉な言葉を送るだけ………決して逆の意味のある言葉を望んでいたわけでもなかったが、アスラがかけて欲しかった言葉をかけてくれたのだ………あの大物、三王の1人であるテンドウ・ヒロミが………
「ーーー………はいッッ!!!」
そんなの嬉しすぎる………
アスラはテンドウに大きな声で返答した。その真っ直ぐな姿勢に、テンドウも口角を上げながら微笑していた…………
******
『なんでオマエみたいな才能無き者が誇り高きオメガ家に生まれなければならなかったのだ………』
『ごめんなさいお兄様………でも私、頑張って進化できるようにするから!!』
10年以上前、エックスであるオメガ家が住う城の中、幼きエールとその兄である15の歳程の少年が会話していた………
いや、もはや会話と言える者では無い。エールの兄はこの時から既にエールを妹としては見ていないのだ。もっと言えば人間としても見ていない気さえする。
『努力とは弱い者がする事だ……エックスの人間には相応しく無い』
『……!!』
『去れエール……この出来損ないめ……!』
『待ってお兄様!!……待って!!』
エールがいくら呼び止めても彼女の兄は止まる事なくエールから遠ざかっていく…………
『何故だ………何故オマエなんだエール………何故オマエが無き母からオメガのカードを引き継いだのだ………!!』
エールの兄はエールが許せなかった………
あの究極体にもロクに進化できないエールがオメガ家のカードを引き継いだのが。あのカード達はエールには相応しく無い………が、そう思っていてもエールが選ばれた時点でもう彼女が死ぬまでそれはエールの元を離れない。
それがどうしてももどかしく、歯痒かった。
******
「んん………ん?」
コロシアムで力付き、病室で眠りについていたエールが目を覚ました。エールは周りを見渡すが、そこには誰もいない。
本当はついさっきまではテンドウとアスラがいたのだが、テンドウは男の勝負、もといギャンブルをしに行き、アスラは単純にトイレに行っていた。
「………」
その後エールは机の上に置かれていた自分のBパッドとデッキが視野に入り、デッキからあるカードを手に取る………
「……また、究極進化できなかった………」
それはデッキにある究極体のカード。才能が無い自分には過ぎたカードであると理解はしていても、エックスの身分であるオメガ家である事を誇りに今まで何度も特訓して進化できるよう目指していた………
が、10年経った今でもそれは叶わない。兄に止められたため、テンドウに頼んでコロシアムで行われる新人交流戦に参加したが、結果的にコモンという最底辺の人間を始めとして多くの人間が自分のコンプレックスを知ってしまうきっかけとなっただけだった………
だが………
「諦めないわよ私は………意地でもアンタを呼び出してやるんだから!!」
そう強く意気込んで、エールはデッキとBパッドを手に病室を飛び出して行った…………
ー…
「いや〜スッキリした〜……実はコロシアムにいた時からずっと我慢してたんだよな〜」
一方、アスラはお手洗いを済まし、病室までの道のりを歩いていた。その様子はたいへんご満悦であった………
無理もない。今まで幾らバトルの腕を磨いても、鍛錬を積み重ねても、ロンや一部の人間を除き、誰もアスラを認めなかった。いや、認めようとはしなかったと言えばよいか。
だが、アスラはあの国を代表するカードバトラー『三王』の1人であるテンドウ・ヒロミに認められた。蔑んでくる人間たちよりかも遥かに凄い人に認められたのだ…………
機嫌が良くなるのも合点がいく。
「………っしゃぁ、エールが起きたらさっさと出発すっか!!……ロンに置いていかれるのも
新人交流戦は終わった。アスラとエールを除くほとんどの他の新人達は既にカラーリーダーからカラーカードを得るために四方へと散って行った。完全に出遅れてる事を理解しているため、一刻も早く旅を続行したいのだ。
「早く起きねぇかな〜〜」
と、アスラは口ずさみながらエールの眠っている病室の扉を開け、入室する。
が………
「………あれ?……あいつ起きたのか??」
そのベッドには当然ながらエールの姿は消えていた。アスラは自分が御手洗いに行っている間に起きてどっかに行ってしまった事を咄嗟に理解する。
「やば……あいつと一緒に旅しないとオレ…………」
ー『ツベコベ言うな、オマエに拒否権は無い………逆らったら殺す』
ー『えぇぇぇえ!?』
「テンドウさんに殺される………!?」
テンドウの言われた事を思い出すアスラ。エールと旅をすると言う約束を守らなかったら今度こそ頭を握り潰される………
そう考えると頭の血の気が下がって行くのと冷や汗が滝のように流れ出てくるのを感じた。
「さ、探さねぇと……!!」
命の危険を感じたアスラはすぐさまエールを探すために病室を抜け出した。
******
「ハァッ……ハァッ……メタルグレイモンッッ!!……究極進化!!」
病院の外、人目の着かない場所にて、
エールはただ1人、Bパッドを展開し、究極体へと進化させる特訓を行なっていた。息を切らしながらも何度も完全体を呼び出しては究極体の持つ『煌臨』を発揮させていた………
だが………
「っ!!」
カードは完全体のカードに重ね合わされる事はなく、エールの指示を断るかの如く颯爽と手札へと戻って行ってしまう………
いつもこうだ。
いつもこのカード達はエールの言う事を聞かない。普通に進化させようとすれば弾かれるし、無理矢理進化させようとすると暴走させてしまう。
「くっ………もう一度……」
しかし、それでもエールは全く諦めている様子はなく、同じエックスながら自分を出来損ないだと蔑んでいた兄や他のエックス達を見返したい一心で特訓を続けていた。
いつかそれが実ると信じて………
と、そんな時だ。エールの耳に見知った喧しい声が聞こえて来たのは…………
「あ、いたいた!!……お〜〜い!!エールゥゥゥ!!」
「っ!?」
背後からアスラの呼ぶ声が聞こえてきて、思わず身体がビクッとなるエール。エックスの彼女にとって、この特訓は恥ずべき行為。見られたくなかったのだ。
「な、なんであんたがここにいんのよ!?」
「え?……そりゃテンドウさんに無理矢理連れてこられたからな」
「テンドウが!?……なんで!?」
「ん〜なんかオレとオマエで一緒に旅をしろって強要された」
「はぁ!?」
「って事だし次の街行こうぜエール!!……オレは誰よりも早くカラーリーダーを倒してカラーカードを6種類貰わないといけないからな!!」
テンドウに言われた事をざっくりと説明したアスラ。元気になったエールを連れ、早速旅を続行しようとするが………
「嫌よ!!……なんであんたみたいなコモンの小ネズミと……って言うか私を名前で呼ぶな!!」
「えぇぇぇえ!?」
エールはそれを全力で拒否した。
何せ旅の同行人が最底辺の身分であるコモンのアスラなのだ。その事を知ったエックスの者達からは必ずまたそれをネタに蔑まれるに違いない。いくら三王の1人であるテンドウの言い分とは言え、エールはそれが嫌な理由であった………
「いや、待て待て……オレ、オマエと旅しないとテンドウさんに殺される………今度こそ頭を握り潰されるんだよォォォオ!!!」
「ふんっ!!…知らないわよそんな事!!私はエックスよ!!」
「だから関係ねぇぇぇえ!!」
「関係あるわよ!!バッカじゃないの!!」
アスラを拒むエール。アスラはアスラでテンドウによって命が天秤にかけられているため、必死にエールにすがっている。
「………って、オマエなんでメタルグレイモン召喚してんだよ?」
「え!?」
言い合いの中、アスラがエールのメタルグレイモンとBパッドに広げられているカード達に気づいた。というか、見えてはいたが今更ながらに疑問に思ったのだ。
アスラはエールのBパッドとメタルグレイモンに近づく。エールが「ちょっと止まりなさいよ!!」と制止させるべく強気に言い放つが、遅かったか、アスラは止まった途端にエールの究極体のカードが目に入った………
「あ……そう言えばオマエの究極体スピリット………」
「!!」
アスラが何か言いたかった事を思い出した。おそらくコロシアムで行ったエールとのバトルだ。
エールは咄嗟に予想した。今からこの愚かなコモンに言われる事を……
多分、『エックスのくせに究極体も召喚できないのか!?』などと他のエックスの人達同様自分を馬鹿にするに違いない。そう思うととても恥ずかしくて…………
………恐くて………
だが………
「オマエが気を失っちまった後、しばらくその究極体とバトルしたんだけどさ!!………スッゲェ強かったぜ!!……オレソウルコア使えないから羨ましーぞマジで!!」
「!?」
「オマエ、あの力を自分のものにしたら最強だな!!」
「………!!」
目の前にいた小ネズミだと思っていた奴はエールを褒めちぎってきた。声の大きさや真剣さからそれが嘘ではない事を即座に理解して………
今まで自分が言われたかった言葉をこんな見下していたチビに言われるとは思ってもいなかった…………
「へへ、オレさ、何となくだけどオマエと旅をしたらもっと強くなれると思うんだ!!オマエもきっと強くなれるさ!!……改めて言うぜ、一緒に旅をしよう!!」
「………」
テンドウに強要されてから思った事ではあるが、アスラはエールに2回目の握手を求めて来た。エールはアスラの真っ直ぐで暖かい言葉に顔を赤くし、涙目になりながら………
「……よろしく…………お願いします」
「おう!!」
今度は「ぺしーーん」と手を弾く事なく、しっかりとアスラの手を握り返した…………
……その手はどこまでも暖かくて、温もりがあった………自分が今まで求めていた全てがその手の中には詰まっていて………
ー…
「っしゃぁ!!……んじゃ早速支度して旅に出かけますかァァァー!!!」
「うっさ!!あんた声のデカさが身長と反比例してるわね!!」
約数秒の間硬く握手をしていた2人。アスラはそれを解除すると勢いよくそう言った。遅れてしまった時間を取り戻したいため、急いで次の街、『緑のカラーリーダー』のいる街へと向かいたいのだ。
………と、そんな時だ。
「むえぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」⬅︎ツッテケテー!!
今まで何故か姿を消していたオレンジのアホ毛犬??のムエがアスラ目掛け、短い脚を高速で回転させながら走ってきた。
「おぉぉぉ!!!ムエ!!…………忘れてた……」
アスラはムエとの再会に感激するも、その存在をすっかりと忘れてしまっていたようだ。そのまま旅をする気でいたのだ………
「むえぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」⬅︎髪の毛あむあむ
「ギャァァァ!!……髪の毛あむあむするなぁぁ!!!はげるぅぅぅ!?」
ただムエはそれに対しても特にアスラに対して怒っている様子はなく、アスラの頭の上に飛び乗って、いつものように彼の灰色でツンツンな髪の毛を甘噛みし始める。その様子はたいへんご満悦である…………
(な、なにこの子………)
エールはそんなアスラとムエの様子を見届けていた…………
そして、それを見るなり、瞬時に思った事がある…………
それは………
(………か、カワイイ!!)
ムエの可愛い仕草や声に心打たれていた。それはそれはもうどうしようもなく強く釘打たれていて………
「わ、私の頭の上に乗ってもいいんだからね!!」
「え?」
「むえ?」
素直にならないエールは恥ずかしそうに顔を赤くしながら、アスラの頭の上に乗っかっているムエにそう遠回しに言った。アスラもムエも頭の上に疑問符を浮かべる。
こうして、
生まれつきソウルコアが使えないと言う謎体質のコモンの少年『アスラ』
エックスでありながら究極進化ができないツンツン少女『エール』
謎の小動物『ムエ』
の2人と1匹の奇妙なパーティでの冒険の旅が幕を開けた。
******
ここはオウドウ都のすぐ横にある街『オオカブ町』………そのコロシアムにて、ある人物がこの街の『カラーリーダー』とバトルスピリッツを行っていた。
「……う、嘘だろ!?……こんなに強いのかよ!?」
そこにいたチャレンジャーはアスラに全力で叩きのめされた『トミオ・ブスジマ』………彼はそのカラーリーダーの強さに慄き、恐怖していた。
正直舐めていた。1人くらいなら勝てると思っていた。
「おいおい、オマエ……カラーリーダー舐めすぎやろ?」
緑色の髪、褐色肌の青年がブスジマに言った。彼こそがこの国のカラーリーダーの1人である。
「終わりや……やれ、アトラーカブテリモン!!」
「ぐっ……ぐぁぁぁぁぁあ!!!」
〈ライフ1➡︎0〉ブスジマ
巨大な体格、赤い甲殻、長い一角を持つ甲虫型のスピリットがブスジマのライフへと突進して行き、その最後のライフを粉々に粉砕した。
これにより、勝者は緑のカラーリーダー。愚かな挑戦者に容赦なく自分の圧倒的な強さを見せつけた………
「ハッ……話にならへんな。この緑のカラーリーダー『トーマ・ヘラクレス』を倒したいんやったら、生半可な覚悟で挑んで来んなやアホ」
「ひ、ひぃぃぃ!!?」
緑のカラーリーダー『ヘラクレス』がブスジマに辛辣な言葉を浴びせた。ブスジマは腰が引け、情けない表情のまま、その場から逃げ出してしまう。
「あ〜あ。もっと手応えのある挑戦者はおらんのかいな?………はぁ、退屈やなぁ……カワイイ女の子でも探しに行きますか〜」
と、ヘラクレスは呑気な声を上げた。
『カラーリーダー』…………『三王』や『頂点王』など、この国には別次元の強さを持つカードバトラーが存在するため、彼らはどうしても影が薄くなりがちで、挑戦者達の中には彼らを舐めてかかる者も多い。
しかし、選りすぐりのカードバトラー達から抜擢されているのだ。弱いわけがない。生半可な実力では先ず歯が立たない。
アスラとロンは頂点王になるべく、この屈指の実力を持つ6人のカラーリーダー達にバトルスピリッツを挑んでいくことになる………
《キャラクタープロフィール》
【エール・オメガ】
性別:女
年齢:15歳
身長:162cm
身分:エックス
使用デッキ:【オメガ】
好きなモノ:スイーツ、カワイイモノ
概要:最高位身分、エックスの中のオメガ家の末っ子。美少女だが、育った環境もあって態度が尊大。しかし、エックスの中でもぶっちぎりの落ちこぼれであり、それがコンプレックスでもある。それ故に本来は寂しがり屋で優しい少女である。
肩までかかった綺麗なブロンドヘアを持つ。見た目のイメージはとあるシリーズより御坂美琴。
《用語設定》
【デジタルスピリット】
この世界ではライダースピリットに次ぐレアカード。市販で買えるものや、一族間で受け継がれていくものなど、その種類の幅はライダースピリット並みに広い。
******
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
今回はほぼバトル無し回でした。
え?なんでクロックアップで一気に3点持って行ったんだって?……まぁ、演出の都合ですよね。そこら辺は想像にお任せしたいところです。ここでこう言っておかないとツッコまれそうですので言われないように今のうちに言っておきます笑
今回からやっとスタート地点に立った感じです。基本的にアスラとエール、ムエの2人と1匹による旅が続く予定です!!
それでは次回は遂にカラーリーダー戦です!!またお会いしましょう!!