「……おぉ!!…これが烈我の言ってたカードショップってヤツか!!」
「おうよ、凄いだろ!」
アスラと烈我のバトルから約数十分。他の七罪竜の使い手と出会うべく、彼らが連れて来られた場所は、何の変哲もない少し広めのカードショップ。しかし、それはアスラの世界には無い代物。
ショーケースに所狭しと並ぶカード、テーブルを囲んで向かい合うカードバトラー達、そしてバトルフィールド転送装置がアスラの目に真っ先に飛び込んで来る。
「なんか窮屈な場所ね」
「なにいってんだエール!!…スッゲェ広いじゃねぇか!!」
「オメガ家の城の方が広いわよ」
自宅が城なエール。多くの人々で賑わっているカードショップは窮屈に感じるそうだ。
そんな中、アスラはある事に疑問を抱いて………
「………なぁ烈我。みんなテーブルで何やってんだ?」
「え?……バトスピだけど?」
「バトスピ??………バトスピって立ってやるモンじゃないのか?」
「うーーん。そっちがどうだかはわからないけど、俺達の世界は基本的に座ってやるかな」
ここで異世界出身故に起こる文化の相違が発覚する。
アスラ達の世界はBパッドを使用し、立ちながらバトルするのが当たり前だ。しかし、烈我達の世界はバトルフィールドを使わなければ、このショップにいる人々のように座ってバトルを行うのが一般的。
「座りながらのバトルねーー………タバコ吸いながらバトルできるのはデカイな」
「あんたは別に座ってようが立っていようがいつもタバコ吸ってるじゃない」
「しかもここ禁煙だし」
「細けー事はいいんだよツンツン女×2」
タバコを吸いながら発言するテンドウに、エールと光黄がそれぞれツッコム。
「座ってのバトル………この世界は随分と怠けてるな」
「こらこらロン。口が悪いぞ、いいじゃないか別に〜お菓子食べながらバトルしても許される優しい世界じゃん!!」
「シイナ様、別にお菓子を食べながらバトルするために座ってるわけじゃないと思いますけど」
アスラ最大のライバルであるロンは、この光景を見て、何やら不満気味に呟いた。それを聞いたシイナが宥めるが、それを聞いたエールが彼女の独特な考え方にまた一つツッコム。
そして皆が和気藹々とし始めた頃だ。このショップへと新たに来店して来た客が、アスラとエールを発見するなり声を荒げて………
「あッ〜〜!!……アスラにエール!?」
「ッ……絵瑠さん!!」
そこにいたのは「絵瑠」と呼ばれる烈我達と同年代くらいの歳の紫髪の少女。その横には黒髪のチャラい印象を受ける少年と、年齢はアスラ達と同じ程度か、中世的な顔立ちをした緑色の髪の小柄な少年もいる。
「うおぉお久しぶりです絵瑠さん、ご無沙汰してまァァァァーす!!」
「烈我に呼ばれて来て見たら、まさかアスラ達に会えるなんて〜…どうアスラ?…頂点王とやらにはなれた?」
「いや、まだまだ遠いっスけど、いつか絶対になってみせますよッ!!」
「うん!!…その意気その意気!!…それでこそ私の知ってるアスラだ!!…絶対になれるよ頂点王!!」
光黄に加えてこの絵瑠は、以前アスラ達の世界に迷い込んだ事があり、絵瑠は特にアスラとは仲良くなっている。
そんな彼らの姉弟のような掛け合いに、エールは少なからず嫉妬していて…………
「なんか……仲良さそうね」
「え?…そりゃアスラとはオウドウ都の城でずっとバトルしてたからね〜…なんか弟ができたみたいで嬉しかったな〜」
「いや〜絵瑠さん強過ぎて結局一回しか勝てませんでした〜」
「でもその一回の勝利はすっごく劇的だったと思うよ」
エールの嫉妬心など全く気がつかず、2人だけで会話を繰り返していくアスラと絵瑠。その様子を見て頬を膨らませるエール。そしてさらにその様子を見て笑顔を浮かべているのが、他人の恋愛が大好物な頂点王、シイナだった。
「わ〜…これひょっとしてエールちゃんにまたまたライバル出現!?…これはまた美味しい展開だわ。名前もエルとエールで近いし」
「何のライバルだよ」
頂点王シイナの発言に、今度はテンドウが無表情な面構えでツッコミを入れる。
因みに、絵瑠は決してアスラに恋愛的行為を抱いているわけでは無い。精々「年下の可愛い子分」程度の認識だろう。アスラに関してももほぼ同様である。
「そう言えばシュオンは?…見当たらないっすね」
「あぁ、シュオンは今カードになってるよ、七罪竜を人目のある場所で晒すわけにはいかないからね」
アスラが気にかけたのは、絵瑠の相棒シュオン。「暴食」を司る七罪竜の一体であり、絵瑠とは一悶着あって、今では最高のパートナーとなっている。
七罪竜は基本的に一般の人の目に止めてはならない。それ故に、このように人が集まる場所ではカード化する事も少なくない。
現にバジュラとライトも今はカードとなっている。まぁ、伸び伸びしたいという理由で小さな姿でどうにかやり過ごす時もあるのだが………
「なぁなぁ烈我。あの人達は?」
「あぁ、光黄と絵瑠が行った異世界で仲良くなった人達らしい。それで今度は向こうからこっちに来たんだと」
「ふ〜ん。成る程」
チャラい印象を受ける黒髪の少年が、友人である烈我に聞いた。すると彼はアスラ、ロンを視界から外し、真っ先にエールの方へと向かっていくと………
「やぁ、異世界の素敵なお嬢さん。これから俺とお茶でも飲みに行かないかい?…君に似合うであろううってつけの店があるんだけど………」
「失せなさいネズミ」
「…………」
エールをナンパしようと試みていたようだが、エールは基本、自分に言い寄る男には全て白々しい目を向けながら辛辣な発言で対処する。今回もそれがいつものように炸裂した。
「おいエール!!…なんて事言うんだァァァァー!!……すんません髪の黒い人!!」
「いや、良いんだ。別に気にしてないし……そうか、俺はネズミだったのか」
「気にしてるーー!!……絶対気にしてるよこの人ーー!!」
「構わなくていいよアスラ。多分本当に気にしてないから……コイツの名前は
「おいおい烈我。もうちょっとかっこいい紹介の仕方ないわけ?」
烈我の紹介で、彼の名前ががミナトであると判明する。アスラは彼を見て、緑のカラーリーダーであるヘラクレスを思い出していた。彼もミナトに負けず劣らずのナンパ大好きチャラ男である。
そんなチャラ男に怒り、エールを庇うように全力で前に出たのは、他でもない絵瑠だった。
「おいミナト!!…お前はまた……エールは素直な上にめちゃくちゃ可愛いんだぞ!!…お前みたいな尻軽男とじゃ釣り合うわけないだろ!!」
「へぇ〜…なら絵瑠となら俺と釣り合う感じ?」
「ッ……ち、違う!!…そういう意味じゃない!!…てゆーか釣り合わないし!!…お前の事は何があっても絶対に許さないからな!!」
エールを庇うように現れる絵瑠だったが、唐突な彼の発言に顔を赤く染めてしまう。やり取りからして、どうやらこの2人は過去に何かあったようだ。しかし、それはアスラ達が知る由もない話。
そしてその光景を見て、何かを察したシイナはまたしてもニヤついていて………
「ハッ……これってひょっとして三角、いや四角関係なのでは!?」
「多分違います」
アスラ、エール、絵瑠、ミナトの関係を絶対に勘違いしている頂点王シイナに、今度はロンが無表情でツッコミを入れた。
「……僕と同じ歳くらいの男の子………」
「?」
そんな中、アスラは小柄で緑色の髪の少年の視線を感じ取っていた。
折角この世界に来たアスラ達と仲良くしたいようだが、彼はどうやら引っ込み思案なとこがあるようで、中々話しかけられないでいた。
しかし、アスラはそんな彼であっても容赦はしない。いつもの調子で堂々と挨拶をして………
「オレアスラ!!…オマエは!?」
「え!?…あ、僕は星七……緑仙
「おう星七!!……よろしくな!!」
アスラが目をギラギラと輝かせながら星七と握手を交わす。大人しくて引っ込み思案な彼と早くも打ち解けあったようだ。
「なんかアスラ君って……」
「アスラでいいぞ!!」
「え?…じゃあ、アスラってちょっと烈我に似てる気がするな」
「ん?…烈我と?」
この世界の熱血少年、天上烈我に似ていると星七に言われ、首を傾げるアスラ。自分では自覚していないのが窺える。
「そんなに似てるか?…どの辺だ……??」
「俺もわかんねー……顔や身体つき、髪型も全然似てないと思うけど……」
星七の発言に頭を悩ませる主人公2人だったが、他の面々は「わかるわー」と内心で心を揃えていた。
そんな中、口を開き、話題を変えたのは他でもない三王であるテンドウ・ヒロミだ。
「まっ……つーことでオマエ達七罪竜とか言う犯罪トカゲ共の使い手を呼び出したのは他でもねー。この小僧の修行相手をつけてもらうためだ」
「!!」
「いや〜お願いします〜」
テンドウがそう言うと、アスラが頭の後ろに片手を置き、照れ隠ししながら修行相手を懇願する。
だが、そんなテンドウの申し出に違和感を覚えた式音絵瑠は………
「修行相手だったら私達なんかよりあの世界にもっと相応しい人がいたんじゃないですか?……例えば……そうだな……エールのお兄さんだったり!」
「あぁ!?…あいつはいつも忙しいんだよこのハツラツ女。つーかオレもあいつと同じ三王なんだけど?…候補に入れてくれないとオレのガラスのハートが傷ついちゃうよ?…意外と脆いのよオレ」
「え?…ハツラツ女??……あ、はい、す、すみませんでした??」
「何困らせてんのよテンドウ。あんたはいつも仕事放ったらかしてギャンブルしかしてないじゃない」
どう見ても傷ついていない事がわかる無表情のままそう言い返すテンドウ。エールの言う通り、彼は基本的にエールの兄であるエレンに三王の殆どの仕事を任せっきりである。
因みに、この世界に修行をしに来た本当の理由として、アスラ達挑戦者達は全てのカラーリーダーを倒さなければ三王とのバトルに臨めないため、致し方なく新鮮なバトルスピリッツができるであろう異世界に足を運んだのだ。
「ふーーん……よし、それじゃ手始めにこの俺が相手してあげようかなぁ?」
ー!!
そんな中、挙手をしたのは烈我の友人で、同じく七罪竜を使うチャラい少年、ミナト。
「そこの……えーっと、チビスラ君だっけ?…君の相手をやればいいわけだ」
「誰がチビスラだァァァァー!!」
アスラの名前がうろ覚えなミナト。全力で否定する言葉が飛んでくる。そしてミナトはデッキを懐から取り出すと………
「光黄ちゃん程じゃないけど、俺はそこそこ強いぜ?……行くかキラー」
『おうよ!!…バトルの時間か!!…誰かは知らんが、この俺様こそがナンバーワンであると思い知らせてやるぜ!』
「!!」
物静かな言動ながらも静かに湧き出て来る溢れんばかりのオーラ。デッキから聞こえて来る七罪竜であろうドラゴンの声。第一印象はチャラい印象だったが、アスラはこの時点で彼がそれなりの実力者である事を悟る。これからそんな彼とバトルができると思うと背筋がゾクゾクして来る。
だが、そんな2人の間に割って入って来る人物が1人………
「そのバトル、ちょっと待ってもらおうか」
「ッ……ロン!?」
その正体はロン。彼は冷め切ったクールな表情をライバルであるアスラではなく、ミナトの方へ向けると………
「このバトル、アスラではなくオレが受ける」
「はぁ!?…なに言ってんだオマエ!!…これはオレの修行だぞ!!」
「この際だから正直に言おうアスラ。オマエだけ三王の修行場所に行けるとかズルい」
「なんじゃそりゃ!!」
テンドウの修行場所に行けるのを羨ましく思っていたロン。それ程までにこのアスラに負けたくないのが窺える。
「それに確かめたい事もある」
「あ?…確かめたい事?……いや、どうでも良いわァァァー!!…テンドウさんそこら辺どうなんすか!!…コイツにバトルやらせてもいいんですか!?」
「まっ…いいんじゃね?」
「テンドウさァァァァーん!?」
どうでもよさそうに二つ返事でロンのバトルを承諾するテンドウ。その後「見るのも修行の内だと思え」とアスラに催促し、納得させる。
「……くっそぉぉロン!!…やるからにはゼッテー負けんなよ!!…オマエに勝てるのはこのオレだけだからな!!」
「あぁ当然だ。オマエにオレの実力を改めて見せつけてやるよ」
「とりあえずこの俺、ミナトのお相手はそこのイケメン君でいいって事かい?……モテるであろうイケメンに負けるわけにはいかなくなったな〜」
「そのふざけた言動ごと、あんたをぶっ倒す」
「へへ、中々良い意気込みだ。やれるといいね。ただし、やれるものならな」
バトルの相手は確定した。対戦相手である2人はバトル前から目線の間に火花を散らし合う。その後、ショップ内にセットされたバトルフィールドシステムまで赴くと、いつものコールで試合を始める………
……ゲートオープン、界放!!
コールと共にミナトとロン、2人はバトルフィールドへと転送され、残った面々はその様子をショップ内のモニターで見守る。
ー……
「ここがバトルフィールド……オレ達のBパッドとは違う、異世界の戦場」
「一々大袈裟だな。まぁ、物の見方って言うか、価値観が違うんだろうけどさ……取り敢えず先攻は譲るからさっさとかかって来な」
「あぁ、わかった。七罪竜とか言うカードの力、見せてもらう……オレのターン……」
無駄な会話はしないロン。そんな彼の先攻でバトルは幕を開ける。
[ターン01]ロン
「メインステップ、マジック、ヴァイオレットフィールド。紫のスピリットカードを手札から捨てる事により、オレはデッキから3枚のカードをドロー……その後ヴァイオレットフィールドは場に残る。さらにバーストを伏せ、ターンエンド」
手札:5
場:【ヴァイオレットフィールド】
バースト:【有】
デッキを掘り進めつつ、防御用のバーストを伏せ、初ターンにしては盤石の状況を作り上げたロン。次はアスラ達としては注目が集まるミナトのターンだ。
[ターン02]ミナト
「メインステップ……先ずは異海人シャークマンをLV2で召喚!」
「ッ……また青か」
ー【異海人シャークマン】LV2(2)BP4000
サメを擬人化したような荒々しい青のスピリット、シャークマンがミナトの場に水飛沫と共に現れる。この時点でミナトが青属性の使い手であると発覚、ロンは脳裏に性格が悪かった頃のシスイ・メイキョウの姿が浮かぶ。
「召喚時効果、手札にある青のコスト4以下のネクサスカード1枚をノーコストで配置、その後コア1つを青のネクサス1枚に追加する。No.36バーチャスアイランドを配置してそれにコア1つを追加だ」
ー【No.36バーチャスアイランド】LV1
「まだまだ終わらないぜ〜…マジック、ストロングドロー……効果で3枚引き、2枚捨てる。ここで配置したバーチャスアイランドの効果、ターンに一度手札が破棄された時コア1つを追加。さらにバーストをセットだ!」
まだ後攻の最初のターンであると言うのに、目まぐるしい程にデッキを回転させ、コアを増やすミナト。そしていよいよアタックステップへと移行して………
「さぁ、異世界の可愛い子、エールちゃんに良い所を見せたいし、そろそろアタックステップだ!…シャークマン、アタックを頼むよ」
エールの名前を出したミナトの指示で拳を構えて走り出すシャークマン。前のターン、マジックの使用のみでターンを終えたロンはこれをライフで受ける他なくて………
「ライフで受ける………ッ」
〈ライフ5➡︎4〉ロン
シャークマンの拳がロンのライフバリアを砕く。しかし、それはロンの伏せられたバーストが火を吹く条件でもあって………
「……緩い痛みだ………ライフ減少によりバースト発動!!…騎士の覇王ソーディアス・アーサー!!」
「!!」
「効果により、シャークマンのコア全てをトラッシュに送る!!」
【異海人シャークマン】(2➡︎0)消滅
バーストカードが反転されると共に、シャークマンの体内に宿るコアが全て弾け飛ぶ。コアの無いスピリットは生きる事ができない、よってシャークマンはたちまち消滅した。
「そしてこの効果発揮後、このカードを召喚する………今こそ目覚めの時だ、現れろ、騎士の覇王ソーディアス・アーサー!!」
ー【騎士の覇王ソーディアス・アーサー】LV1(1)BP10000
瞬時に現れた巨大な紫のシンボル。それに亀裂が生じ、やがて散っていくと、その中より威風堂々たる立ち振舞いで騎士の覇王であるソーディアス・アーサーが出陣した。
「……こっちのスピリットを除去しつつ、強力なスピリットを召喚か……こりゃしてやられたな……ターンエンド」
手札:2
場:【No.36バーチャスアイランド】LV1
バースト:【有】
早速ロンの強烈なカウンターを貰ってしまったミナト。致し方なくそのターンをエンドとする。しかしその直後、ロンは何かを悟ったかのように、それでいて呆れたように口を開いて………
「やはりな……」
「?」
「不注意且つ緩い攻撃だった。思っていた通り、オマエ達のバトルスピリッツはレベルが低く過ぎる」
「………あまり要点が見えて来ないな。つまり君は何を言いたいわけ?」
「ここはオレの修行する場所に相応しくない……そう言いたいんだ」
アスラが三王であるテンドウ・ヒロミと修行すると聞いてついて来てみれば、自分にとってレベルの低いカードバトラーばかり。ロンは失望していた。
それでもそのまま思った事を口にするのは良くない。
「ロンのヤツ、勝手について来たくせに何言ってやがんだ!!」
「なぁエール、アスラのライバルとか言うあいつは、いつもあんな感じなのか?」
アスラがモニター越しでロンに怒りを露わにする中、光黄がエールにロンの事を聞いた。
「まぁそうね。基本煽って来るかも。対戦相手がアスラの時とかは特に……よくよく思い返してみたら今までで一番何を考えてるか分からない奴かも」
「どうでもいいけどさっさとミナトの奴負けちゃえばいいのに」
エールが光黄に返答する中、モニター越しのミナトを睨みつけながら絵瑠がそう告げた。余程彼の事が嫌いらしい…………
そして再びバトルフィールドへと舞台は戻って…………
「まだバトルは始まったばっかりだぜ?…そんなに煽り散らしたら敵を作るだけだぞ」
「敵ができたら倒す。それだけの話だ」
この世界のカードバトラーは皆弱いと言わんばかりのロンの発言。普段は懐が広いミナトも流石に芳しく無い表情を浮かべる。
「オレ達の世界のバトルは、いつも命懸けだ。勝てば上へ行き、負ければ下に落ちる事を誰もが理解しているからな。だけどオマエ達のバトルは違う。オレからしたら単なるお遊びにしか見えない。オレはこのカードショップとやらに来た時にそれを強く感じた」
「お遊びね〜……そりゃこっちではバトスピは娯楽の一種。けど、そっちでは随分と重みが違うんだな」
「こんな場所が三王テンドウの修行場所なのは聞いて呆れる。この印象を覆したければ、オレに一泡でも吹かせてみるんだな」
ロンはまるでまだミナトを試すような発言をしながら、己のターンを進行させていく。
[ターン03]ロン
「メインステップ。再びバーストを伏せ、アーマーバット2体とキャメロット・ナイトXを召喚。キャメロット・ナイトX2体の効果でカードを2枚ドロー………」
ー【アーマーバット】LV1
ー【キャメロット・ナイトX】LV1
ー【キャメロット・ナイトX】LV1
鎧を来たコウモリ、アーマーバットと、ロンのデッキの新たなスピリット、ナイトの名を冠する小さな騎士型のスピリット、キャメロット・ナイトXが2体現れる。
しかし、その効果はミナトのバーストを誘発させて………
「お前も結構不注意なんじゃないか?…召喚時のバースト、キングスコマンド!」
「!!」
「効果により3枚引き、1枚捨てる。さらにバーチャスアイランドの効果でコアブースト!」
手札とコア。バトルスピリッツにおいて最も重要なその両方の要素を次々と増やしていくミナト。だがロンは彼のキングスコマンドなど予想の範疇だったのか、特に気にする事なくアタックステップへと移行して…………
「アタックステップ。2体のキャメロット・ナイトXとソーディアス・アーサーでアタック!」
ロンの指示を受け走り出す3体の騎士達。この攻撃をそのまま受けてしまうと大ダメージだが、ブロッカーのスピリットがいないミナトはこれをライフで受けるしかなくて………
「ライフで受ける!!……ッ」
〈ライフ5➡︎4➡︎3➡︎2〉ミナト
キャメロット・ナイトX達による小さな槍の刺突、ソーディアス・アーサーによる聖剣の一太刀がミナトのライフを粉砕。そのライフは一気に半数以下まで減少する。
「ターンエンド」
手札:4
場:【アーマーバット】LV1
【キャメロット・ナイトX】LV1
【キャメロット・ナイトX】LV1
【騎士の覇王ソーディアス・アーサー】LV1
【ヴァイオレットフィールド】
バースト:【有】
これ以上の攻撃は禁物だと考えたか、ロンはアーマーバットをブロッカーとして残してそのターンをエンドとした。
「『この印象を覆したければオレに一泡でも吹かせてみろ』……か。正直別に異世界の人の価値観なんてどうでもいいんだけど、歳下であろうイケメン君にそこまで煽られたら俺もそれなりにやってやらないとな」
『おう!!…そうだぜミナト!!…そのために早く俺を呼べ!!』
「はいはい。わかったよ……いつも苦労するんだぜ〜お前コスト高めだからさ」
ミナトの頭に直接話しかけて来たのは、おそらく七罪竜と呼ばれるスピリット。彼の扱う属性からして、その色は青だと推察できる。
そしてミナトはロンのこの世界のカードバトラーは弱いと言う印象を覆すべく、己のターンを進行させていった。
[ターン04]ミナト
「メインステップ、2体目のシャークマンを召喚。その効果で今度は海帝国の秘宝を配置し、コアブースト!」
ー【異海人シャークマン】LV2(2S)BP4000
ー【海帝国の秘宝】LV1
止まらない展開。2体目のシャークマンと2枚目となるネクサスカードがミナトの場に姿を見せる。
そして彼は「待たせたな」と呟くと、手札にある1枚のスピリットカードを引き抜いて………
「神をも恐れぬ大胆不敵の傲慢な王よ!…牙を研いでその傲慢な野望を実現させろッ!…海牙龍王キラーバイザーク、LV3で召喚!」
「来たか……」
【海牙龍王キラーバイザーク】LV3(4)BP16000
深海に蠢く巨大な影、眼光を輝かせながら海面へ一気に飛び出し、空中に飛び上がると同時に強大な咆哮を響かせる。その正体はサメのような鱗を持ちつつ、龍のような風貌をした傲慢を司る七罪竜、キラーバイザーク。
『待ち侘びたぞミナト!!…さぁ俺を使え!!…上手にな!!』
「あぁわかってる。2人で勝つぞ」
「傲慢の七罪竜。成る程、それっぽい性格だ」
彼のエースカードであろう七罪竜、キラーバイザーク。ロンはそのカードを活かして怒涛の攻撃が来る事を予想していたが………
「キラーの効果【
『おうよ!!』
「!?」
地面を水中のように変化させ、その中へと潜り込むキラーバイザーク。何かの攻撃かと思ったが、キラーバイザークが場から消えただけでそれらしい行動は全く行わず…………
「何が狙いだ??」
「……さぁな……アタックステップ。2体目のシャークマンでアタックだ」
「ライフで受ける………ッ」
〈ライフ4➡︎3〉ロン
シャークマンの拳がロンのライフ1つを砕く。そしてロンは何をしでかすかわからないキラーバイザークを颯爽と仕留めるべく、手札にあるマジックカードをこのタイミングで引き抜いて…………
「オレのライフが減った事により、手札にあるこのマジック、デスタメントを発揮させる」
「!!」
「このカードはオレのライフが減った時、トラッシュに紫一色のカードがあればノーコストで使用できる。その効果はコアが3個以上置かれたスピリットの破壊………対象は当然コアが4つ置かれたキラーバイザーク、どこに消えたかは知らないが、まだ場にいるならこの効果で破壊させてもらう!!」
発揮される強力なマジック。コアが4つ置かれたキラーバイザークでは先ず呆気なく爆散してしまう事だろう、ロン含め、バトルフィールド外のアスラ達は七罪竜が破壊されたと思ったが………
それは飽くまで対象に取れた場合の話であって………
「ッ………なんだこの感じ、破壊した手応えが全く感じられない!?」
全く感じられない手応え。その時ロンは咄嗟に悟った。これこそがキラーバイザークの効果なのであると…………
「キラーの効果【潜水】は、キラーを上に置かれたコアごとフィールドから消す効果。この状態の時はアタックもブロックもできないが、フィールドにいないため、一切の効果を受けない。いや、そもそも対象に取る事さえできないんだよ」
「……!!」
これこそキラーバイザークの真骨頂。フィールドにいなければデスタメントの対象に取る事はできない。よってロンのこのマジックの効果は不発となる。
「一旦これでターンエンドだ。どうだいイケメン君、少しは見直してくれたかな?」
手札:1
場:【異海人シャークマン】LV2
【N o.36バーチャスアイランド】LV1
【海帝国の秘宝】LV1
バースト:【有】
「破壊から逃げるためだけの効果じゃどちらにせよオレには勝てないぞ」
「手厳しいね〜……だけど、いつ『逃げるためだけの効果』って言った?」
「!?」
ミナトの言葉に、キラーバイザークにはまだ隠された能力がある事を悟るロン。しかし、立ち止まってはいられない、彼はミナトを倒すべく己のターンを進行させて行った………
[ターン05]ロン
「メインステップ……仮面ライダーナイトをLV1で召喚!」
ー【仮面ライダーナイト】LV1(1)BP4000
「召喚時効果で2枚ドロー……」
「ふ〜ん。それがお前のキースピリットってわけか」
様々な鏡像が重なり合い、ロンの場に新たに現れたのは転醒の力を得た黒騎士、仮面ライダーナイト。小さいながらも、ソーディアス・アーサー以上に際立つその圧倒的な存在感に、ミナトはそれこそが彼のデッキで一番強いカードなのだと自覚する。
「でやがったなナイト。相変わらずクソカッコいいぜ」
「黒い騎士……確かにかっこいいね!!」
「実はオレも持ってんだぜ。あんな感じの騎士。黒じゃなくて赤だけど」
「えぇ凄い!!…今度バトルフィールドで僕にも見せてよ!」
バトルフィールド外でアスラと星七の会話が盛り上がる。その最中でアスラの騎士のカードに興味を持つ星七だったが………
「あぁ悪りぃ星七。今は訳あって使えねーんだ……てゆーかオレの自業自得なんだけどよ」
「??」
「でもそうだな。いつか絶対星七にも見せてやるよ!!…めちゃくちゃカッケェからさ!」
今は黒い力の代償とやらで龍騎が使えないアスラ。そもそも龍騎が再び使えるようになるくらい強いカードバトラーになるための修行でもある。
星七はアスラの言っている意味が分からずキョトンとした表情を浮かべていたものの、彼の激しく熱い情熱が伝わったのか、「うんわかった!…楽しみにしているよ!!」と、力強く言葉を返す。
そして舞台は戻ってバトルフィールド内。仮面ライダーナイトの召喚により、事前に伏せていたミナトのバーストカードが疼いていて…………
「確かに強そうなスピリットだ。だけど、また召喚時のバーストはもらったぜ!!…2枚目のキングスコマンドだ!!」
「!!」
「効果により3枚引いて1枚捨てる。バーチャスアイランドの効果でコアを増やし、さらに今度はフラッシュ効果も発揮。このターンの間、お前はコスト4以上のスピリットでアタックが行えない」
再び発揮される青のバーストマジック、キングスコマンド。これにより、ロンはこのターンのみ、転醒ナイトやソーディアス・アーサーと言った強力無比なスピリットでのアタックを行えなくなる。
しかし、彼の場にはまだコスト4を下回っている2体のキャメロット・ナイトXや、アーマーバットが健在で…………
「だったらコスト3以下のスピリットで勝負を決めるまでだ。キャメロット・ナイトXで攻撃」
このターンでの決着を望むロン。ミナトのライフは2であるため、3体の内2体のアタックが通れば望んだ通りの結果となるが…………
ミナトも、そんな彼を選んだ傲慢を司る七罪竜キラーも甘くはなくて………
「その考えは甘いぜイケメン君。浮上しろキラー!!」
「!!」
キャメロット・ナイトXの突撃に反応するようにミナトがキラーに指示すると、水面から眼光を輝かせ、キラーバイザークが再び姿を見せる。
「コイツ……このタイミングで復活できるのか!?」
「どうやらちょっとした思い違いをしてたみたいだな!!…【潜水】しているキラーはフラッシュの好きなタイミングで復活できる。キャメロット・ナイトXを、獲物を狩り尽くせ!!」
『待ってたぜミナト、その言葉をなぁぁ!!』
狙った獲物は逃さない。キラーバイザークが雄叫びを上げながらキャメロット・ナイトXを噛み砕く。
そして、まだもう一つだけ、このキラーバイザークには効果が存在していて………
「ここでキラーの最後の効果。アタック、ブロックしたバトルの終了時、回復して【潜水】を発揮させる!」
「!!」
「キラー、再び潜れ!!」
ミナトの指示を聞くなり二つ返事で再び水中と化した地中へと姿を消すキラー。これにより再び効果の対象に選ばれなくなる。
強力なキラーバイザークの効果【潜水】そしてそれを活かす他の効果、カードバトラー。だが、その全貌を目の当たりにしても、ロンの余裕は一切崩れなくて………
「…成る程、キングスコマンドはBPの弱いスピリットでのアタックを誘導させるためのカードでもあったのか」
「御名答……これでオレの実力、少しは認めてくれたかな?」
「そうだな……少なくとも牙威ミナト、オマエの実力だけは認めてやる。ほんの少しだけだけど」
「おぉ意外。腹立つ言い方だけどそこは認めてくれるのな」
キラーバイザークの【潜水】……
フィールドから消えるという扱い辛そうな効果。それを巧みに使いこなすミナトを見て、ロンは少なからず彼が七罪竜と言う伝説のカードに選ばれただけはあると言わんばかりの上からな物言いで認める。
しかし………
「だが宣言しよう、このバトル、このオレ、スーミ村のロンの圧倒的実力差で幕を閉じる!」
「なに?」
最早どっちが傲慢か、わかったものじゃない。
ロンの内心では、ライバルであるあいつの前では負けられないと言う思いが常に渦巻いている。そして彼は涼しい表情を見せながらアタックステップを続行して………
「2体目のキャメロット・ナイトXで攻撃」
「ッ……キラーの効果を知っても尚仕掛けてくるのか!?」
「あんたのライフは残り2。どちらにせよ浮上せざるを得ないだろう?」
「くっ……戻って来いキラー……そしてキャメロット・ナイトXをブロック!」
浮上したキラーバイザークがロンのキャメロット・ナイトXを再び噛み砕く。ここで再び【潜水】の効果が発揮されるかと思いきや、この効果は1ターンに一度しか使用できないため、キラーバイザークはその場に留まる事となった。
その隙を突くかのようにロンはアタック可能なアーマーバットに攻撃の指示を送って………
「アーマーバットでアタック!」
「ッ……ライフで受ける!」
〈ライフ2➡︎1〉ミナト
上空から繰り出されるアーマーバットの体当たりが炸裂。ミナトのライフは遂に残り1つまで追い込まれた。
「ターンエンド」
手札:5
場:【アーマーバット】LV1
【騎士の覇王ソーディアス・アーサー】LV1
【仮面ライダーナイト】LV1
【ヴァイオレットフィールド】
バースト:【有】
圧倒的な自身に満ち溢れた表情を浮かべながら、そのターンを切るロン。ミナトのターンが始まるその前に、バトルフィールド外で頂点王シイナが言葉を落とした。
「アスラは全然変わらないけど、ロンはだいぶ変わったよね」
「え?……いやいやシイナ。あいつも変わんねーよ。口は悪いし、髪は黒いし腹立つくらいイケメンだし」
アスラと違い、ロンは変わったと言う頂点王シイナ。それは10年振りに彼らを見たからこそ考え至った感想であり………
「いや変わったよ、間違いなく。昔からそこそこ口は悪かったけど、私の知っているロンは自分に自信が無かったのか、いつもあんたの後ろにいた。けど、今はたった1人の力で、誰の力にも頼らず、頂点王になると言う夢を叶えようとしている」
「??」
「あんまり分かってないって顔だな。まぁ要するに、ロンを変えたのはあんたのその諦めない気持ちだって言いたいんだよ」
シイナが頂点王になったあの日、アスラとロンは2人でその存在を目指す事を誓った。しかし、ロンは生まれた時からライダースピリットに選ばれた天才と言うプレッシャーもあり、何度も何度もその夢を諦めそうになった。
だが、ソウルコアが無くても、前向きにそれでいて直向きに努力を重ねるアスラを見て、ロンは諦めない気持ちを学んだ。
だからこそ、ロンはアスラを超えたいのだ。そんな彼に勝って、自分が一番強いのだと証明したいのだ。もちろん、アスラにロンの気持ちはわからない。彼はいつも無自覚で周囲の仲間やライバル達を熱く滾らせる。
そしてバトルフィールド内ではいよいよ佳境となるミナトの第6ターンが幕を開けて…………
[ターン06]ミナト
「メインステップ。さぁ、仕上げの時間だ!!」
「!!」
メインステップ開始直後、ミナトはそう言いながら手札の1枚に手を掛け、それをバトル台へと叩きつける。その様子や言動からして、七罪竜意外な大物が場へとやってくる事をロンは瞬時に悟って………
「三つ首の獣、本能のままに叫び!…敵を威圧する咆哮を!…勝利への雄叫びを上げろッ!!…戌の十二神皇グリードッグ、LV3で召喚ッ!」
フィールドに出現する煉獄の門、青き炎を灯しながら煉獄の門を開くと中には鎖に繋がれた獣の姿。鎖に繋がれた三つ首の獣は吠え立てながら鎖を力一杯引っ張り、鎖を強引に引き千切ると、煉獄の門を飛び出す獣、グリードッグは一気にフィールドへと駆け抜けて行く。
ー【戌の十二神皇グリードック】LV3(5S)BP21000
「BP21000の大型スピリットか……」
「驚くのはそのBPの高さだけじゃない!!…アタックステップこそ、俺のグリードックの真骨頂さ!」
そう言いながらミナトはこのターンのアタックステップを宣言する。
「アタックだグリードック!!…その効果【封印】で、グリードックのソウルコアを俺のライフに!!」
「ッ……ソウルコアをライフに置くだと!?」
〈ライフ1➡︎2S〉ミナト
攻撃の指示と共に吠えるグリードック。その瞬間に赤きコア、ソウルコアが主人であるミナトのライフへと移動。ライフが回復しただけでなく、封印状態と言う特別な状態となった。
さらに、このグリードックには、封印状態の時のみ発揮できる特別な効果が存在していて………
「さらに封印時、グリードックのさらなる効果【強奪】を発揮!!…それにより、お前の手札を全て見させてもらうぜ!」
「!!」
グリードックの効果で青い輝きと共に宙を舞うロンの手札。ミナトはその彼の手札の中にあった1枚のマジックカードを見逃さなかった………
「へー…良いカード持ってんじゃん。俺はその中にあるマジックカード、シュタイン・ボルグ・ユニヴァースを破壊し、俺が発揮させたマジックとして使用できる!」
「!!」
「本来はお前のカードだし、効果はぶっちゃけ説明要らずだよな。相手スピリット全てのコアを1個ずつリザーブに送る!…偶然にも、お前のスピリットのコアは全て1つのみ!!…よって全滅する!!」
ー【騎士の覇王ソーディアス・アーサー】(1➡︎0)消滅
ー【仮面ライダーナイト】(1➡︎0)消滅
ー【アーマーバット】(1➡︎0)消滅
ロンの場に放たれる紫の波動。場のスピリット達はそれによりコアを抜き取られ、立ち所に消滅してしまう。
「グリードックの効果、相手の手札が減った時、三回まで回復する!!…起き上がれグリードック!」
ー【戌の十二神皇グリードック】(疲労➡︎回復)
ロンの手札を奪った挙句、さらには回復まで行う三つ首の獣グリードック。
そしてミナトは追い討ちを掛けるように、このタイミングで再びあの効果の発揮を宣言して………
「そしてフラッシュ、キラーの【潜水】!!…潜れキラー!」
『あぁ!!』
「……また不意打ちを仕掛けるつもりか」
「いや、これは保険だ。まだ確認できていない、お前のバーストカードが開くまで、キラーには待機してもらう!」
再び水中に潜るキラーバイザーク。
グリードックでロンの手札を全て確認し、バーストカードが何もなければこのターンでの勝利を自覚。仮にバーストが発動して、痛い反撃を貰ったとしても、今度はキラーバイザークが飛び出してくる。これはミナトの鮮やかなプレイングだった。
どちらにせよ、スピリットを全て失い、絶体絶命のロン。三つ首の獣、グリードックのアタックはライフで受ける他なくて………
「アタックはライフで受ける!!………ッ」
〈ライフ3➡︎2〉ロン
三つ首の獣がロンのライフを1つ噛み砕く。しかし、それはロンの伏せたバーストの発動条件に違いない。
このターンの攻撃を止めるべく、それを展開する。
「ライフ減少のバースト、絶甲氷盾!」
「!!」
「ライフを1つ回復。その後コストを支払い、このターンのアタックステップを終わらせる」
〈ライフ2➡︎3〉ロン
砕けたロンのライフが1つ蘇ると、ミナトの場がたちまち氷壁に覆われ、スピリット達の行手を阻む。これは少なくともこの氷壁は、ミナトのエンド宣言がなければ溶ける事はなくて………
「成る程、絶甲氷盾だったか……これはキラーの【潜水】を先に使っておいて正解だったな。ターンエンドだ!」
手札:3
場:【戌の十二神皇グリードック】LV3
【異海人シャークマン】LV2
【No.36バーチャスアイランド】LV1
【海帝国の秘宝】LV1
バースト:【無】
そのターンをエンドとするミナト。その表情には少しばかり余裕が窺える。おそらく、ロンのスピリットを全滅させた挙句、2体のブロッカーを残し、【潜水】で効果を受けず、オマケに浮上して不意打ちも可能なキラーまで備えているのだ。
これを盤石と言わずして、なんと呼ぶか………
だが、彼はロンと言うアスラの最大のライバルである、天才的なカードバトラーの事をまだ知らない………
[ターン07]ロン
「メインステップ。アーマーバット2体を連続召喚」
ー【アーマーバット】LV1(1)BP1000
ー【アーマーバット】LV1(1)BP1000
下準備だと言わんばかりに、ロンは己の場に2体のアーマーバットを召喚する。そして手札にあるカードを1枚引き抜き………
「さらにマジック、リターンスモーク!…ソウルコアを支払い、発揮させる」
「!」
「効果により、トラッシュからコスト4以下のスピリットを蘇生。この時、コストにソウルコアを支払っていた場合、その上限コストを6に上げる……よって、コスト6の仮面ライダーナイトを復活させる!!」
ー【仮面ライダーナイト】LV3(4)BP8000
紫色の煙がロンの場を覆う。それが微かな微風に流されると共に姿を現したのは、前のターンで破壊された仮面ライダーナイト。堂々たる復活を果たした。
これだけでは終わらない。ロンはまだ手札より展開する。
「効果により2枚ドロー。ミラーモンスター、ダークウィングを召喚し、仮面ライダーナイトと合体!!」
「ッ……ここに来てスピリットを強化する存在、ブレイヴの御登場かよ」
ー【仮面ライダーナイト+ダークウィング】LV3(4)BP11000
上空より、甲高い鳴き声を発しながら現れたのは、黒き翼ダークウィング。仮面ライダーナイトの頭上を旋回し、攻撃まで待機する。
「アタックステップ!!…仮面ライダーナイトで攻撃!!」
遂にアタックステップが幕を開ける。この瞬間、ダークウィングと合体した仮面ライダーナイトにはいくつかの効果があって………
「合体したナイトのアタック時効果、相手スピリット1体のコアを2つリザーブに置き、回復する!」
「!」
「グリードックのコア2つをリザーブに置き、回復しろナイト!!」
ー【戌の十二神皇グリードック】(4➡︎2)LV3➡︎2
ー【仮面ライダーナイト+ダークウィング】(疲労➡︎回復)
ナイトより放たれる紫の斬撃と、ダークウィングから放たれる超音波がミナトのグリードックを襲い、その体内に眠るコアを2つ消しとばした。グリードックは耐えなくも、そのLVは降格し、弱体化してしまった。
「くっ……だがまだBPはグリードックの方が上だ……」
「それはどうかな?……ここで仮面ライダーナイトもう一つの効果【零転醒】を発揮。手札にあるアドベントカード、ソードベントを破棄する事で、新たな姿へと昇華させる!!」
「ッ……転醒だと!?」
仮面ライダーナイトは一瞬にして武器を一新させる。それは腕に装備された青い盾。ナイトはさらに、ベルトよりカードを引き抜き、それをその青い盾のバイザー部に装填………
………サバイブ!!
と言う音声が鳴り響き、仮面ライダーナイトは自身を強化した姿、仮面ライダーナイトサバイブへと昇華して見せる。
「サバイブの転醒時効果、相手はスピリット1体を指定。その後、サバイブと指定されたスピリット以外は全て破壊される!!」
「なに!?……くっ……俺はグリードックを指定……」
「これにより、2体のアーマーバットと指定されなかったシャークマンは破壊される!!」
転醒直後。青い盾から騎士たる証の聖剣を引き抜くナイトサバイブ。それを天に掲げると、スーパーセルとも呼べる竜巻が発生。ロンの2体のアーマーバットと、ミナトの場の指定されなかったシャークマンはそれに吸い込まれていき、呆気なく爆散してしまう。
「まだだ。まだ終わらない………ナイトのサバイブ化により、ミラーモンスター、ダークウィングはダークレイダーへと進化を果たし、ミラーライダーと一体化する!!」
「!」
竜巻が収まった刹那。ダークウィングはナイトサバイブと共鳴するように甲高い鳴き声を上げ、鋼鉄の翼を纏うダークレイダーへと進化を果たす。
そして………
「来い、ダークレイダー!!……今こそナイトサバイブと1つとなりて、研ぎ澄まされた怒涛の疾風へと生まれ変われ!!……ミラージュ!!」
「こ、これは……」
「現れろ……ナイトサバイブ・レイダー!!」
ー【仮面ライダーナイトサバイブ+ダークウィング】LV3(4S)BP15000
ダークレイダーが分離。それがナイトサバイブの身体に各所装備されていき、仮面ライダーナイトサバイブはサバイブをも超えた「ミラージュ」と呼ばれる究極の形態へと強化された。
その瞬間に、疾風をも超えた怒涛の突風が追い風になるように吹き荒れる。
「こいつは単なる合体じゃないのか……!?」
「これこそ、仮面ライダーナイト最強の姿、仮面ライダーナイトサバイブレイダー。効果により、オレの場に他のスピリットがいなければ、このスピリットは相手の効果を一切受け付けない」
仮面ライダーナイトの究極の姿、サバイブレイダーに驚愕の声を漏らすミナト。大袈裟にしているだけで、実のところは単なる合体である。しかし、どちらにせよこのスピリットが強い事に変わりはなくて………
「合体したダークレイダーの効果発揮、トラッシュにあるアドベントカードを1枚手札に戻し、相手スピリット1体のコアを2つトラッシュに送る!」
「なッ……ここに来てまたコアシュート!?」
「トラッシュにあるソードベントを回収し、グリードックのコア2つをトラッシュに送る。よってグリードックは消滅!!」
ー【戌の十二神皇グリードック】(2➡︎0)消滅
サバイブレイダーの聖剣から放たれる疾風の斬撃。それが遂に強敵、グリードックを斬り裂いた。グリードックは堪らず爆散する。
「これでオマエのスピリットは全て消えた。このアタックで終わりだ!」
これで今現在存在するスピリットはロンのサバイブレイダーのみ。ダブルシンボルであるため、一撃の元でミナトの残りライフを粉砕できる………
だが………
「甘いぜ!…俺にはまだキラーがいる事を忘れたか!!……浮上しろキラー、そしてサバイブレイダーをブロックだ!!」
『まちに待たせやがって!!…あの黒騎士野郎が今日の獲物か!!』
「!!」
水面より飛び上がり、ナイトサバイブレイダー目掛けて急降下するキラーバイザーク。強靭な顎、牙とその聖剣がぶつかり合う。
「キラーのBPは16000!!…対するサバイブレイダーのBPは15000!!……勝負あったな!!」
キラーバイザークが徐々にサバイブレイダーを押していく。あのシスイ・メイキョウのアルケーガンダムをも圧倒したサバイブレイダーを押し勝っているあたり、さすがは伝説の七罪竜の一体であると言える。
しかし………
天才的な実力を持つロンが、この程度の事を想定に入れていないわけがなくて…………
「……キラーバイザークを倒すなら、この一瞬しかない。最初に効果が判明した時点でそう確信していた」
「!?」
「フラッシュマジック、アドベントカード、ソードベントを発揮!!……これによりサバイブレイダーのBPを5000上げ、対するキラーバイザークのコア2つをリザーブに送る!!」
「な、なんだと!?……ここまで来てまたコアシュート効果!?……こいつ、まさかここまでの展開を最初から全て読んで………!?」
「御名答だ」
一振りで突風を巻き起こす剣撃がキラーバイザークの鮫肌に炸裂する。その体内のコアはいくつか弾け飛び、キラーバイザークは喘ぎ声を上げると共にLVダウンに陥った。
『ガァッーー!?……この仮面野郎!!』
ー【仮面ライダーナイトサバイブ+ダークウィング】BP15000➡︎20000
ー【海牙龍皇キラーバイザーク】(4➡︎2)LV3➡︎1
負けじと再びサバイブレイダーを噛み砕かんと迫り来るキラーバイザーク。しかし、そのBP差は最早圧倒的。サバイブレイダーの気迫とオーラだけで跳ね返されてしまう。
「行けサバイブレイダー、キラーバイザークを、七罪竜をぶった斬れ!!」
背中の黒いマントを伸ばし、聖剣に宿すサバイブレイダー。黒き大剣と化したそれを全力でキラーバイザークに振り下ろす。
伝説の七罪竜、傲慢を司るキラーバイザークも流石にそれには耐えられなかったか、堪らず爆散してしまう…………
長いターンを重ね、ロンとナイトは遂に強敵だったキラーバイザークを倒して見せた。
「くっ……キラー……ッ!!」
相棒の破壊を目の当たりにし、流石にショックが隠せないミナト。しかし、その破壊による爆煙、爆風の中、ロンのサバイブレイダーが彼にトドメを刺すべく、ゆっくりと姿を現して………
「牙威ミナト。ラストアタックの前に一つだけ教えてやる」
「??」
「オレは天才なんかじゃない………ただオレは負ける事が死ぬ程嫌いなだけだ。アンタにも、あの一点突破バカにも負けないと言う想いがオレをさらなる高みへと誘う!!」
「ぐっ…………!」
「ラストアタックだ………ナイトサバイブレイダー!!」
ロンがそこまで言い切ると、サバイブレイダーがその聖剣を全力でミナトへと振り下ろす。
キラーバイザークを失った今、最早彼にこの攻撃を止める術は無くて………
「成る程……単なるイケメンの坊ちゃんかと思ってたら、どうやら、思ってる以上に逞しい奴みたいだ………ライフで受けてやるよ………ッ」
〈ライフ2S➡︎0〉ミナト
ミナトの最後のライフが砕け散っていき、バトルが終了した。勝者はロンだ。激しい読み合いの末、天才的な実力を発揮しての大勝利であると言えよう。
「この先…如何なる強敵が現れても……それが例え三王だろうが頂点王だろうが……あの一点突破バカだろうが……オレはもう二度と負けない」
敗者であるミナトの消えたバトルフィールドにて、ロンは静かにそう口ずさんだ。そんな彼の気持ちに応えるかのように、唯一場に残ったサバイブレイダーは、勝鬨の声を表現するかのように、聖剣を天に掲げた。
ー……
バトルの終了に伴い、元の場所であるカードショップに帰還する2人。彼らをアスラや烈我達が出迎える。
「おいロン!!…ちゃんと勝てたな!!」
「当然だチンチクリン。この程度、オレの敵じゃない………まぁ、修行するくらいなら、少しはいてもいいかもな。退屈しのぎにはなるし」
「……てゆーかオマエ、ソーディアス・アーサーなんてスゲェカードいつの間に手に入れたたんだよ?」
「拾った」
「ウソつけぇぇ!!」
少しはミナトを、と言うかこの世界のカードバトラーの事を認めたのか、それらしい発言をするロン。
それと因みに、騎士の覇王ソーディアス・アーサーのカードはメイキョウ旧領で偶然発見したため、ロンの「拾った」と言う発言はあながち間違ってはいない。
「いや〜完敗だったよ。ロンだったか?…お前やるな〜モテるだろ?」
「はい。モテます」
「うわ〜そこしっかり言うタイプか〜…ちょっと悔しい」
『オイこの黒髪!!…次にやる時は俺が勝つ、必ず俺の方が上だと証明してやる!!…覚えてろよ!』
「そう言う事言うヤツは大体次も負けるぞ」
『なんだとぉぉ!!…噛まれてぇのか!?』
「おいおいキラー…やめとけって!」
煽りまくるロン。ミナトのデッキから語りかけてきた七罪竜キラーが怒りを露わにし、カードの姿から、デフォルメされた姿に変身してロンに飛びつこうとするが、ミナトに止められる。
「にしても凄いバトルだったぜロン。本当に天才だったんだな!!…今度俺ともやろうぜ!」
「熱苦しいから嫌です」
「なんだとテメェ!!…折角こっちがナチュラルに接してやってるのに!」
「そう言うの要らないです」
涼しい表情で烈我からのバトルへの誘いを断るロン。どうやらライバルであるアスラに似通っている烈我の事をあまりよく思っていないようだ。
「うぉぉ!!…やっぱオレもバトルやりてぇ!!…ミナトさァァァァーん!!…次はオレと手合わせお願いしまァァァァーす!!」
「あっはは。悪りぃなチビスラ君。今のバトルで疲れたから今日は無理かな〜」
「えぇぇ!?!…じゃあオレのこのやる気はどこに向ければいいんだ!?…てゆーかチビスラじゃねぇし!」
ロンとのバトルで疲れ果てたミナト。アスラとのバトルを断る。だが、ミナトとは別の人物がアスラの元に歩み寄り………
「じゃ、じゃあ僕とバトルしようよアスラ……!」
「ッ……星七!!…そっかオマエも持ってるんだったな七罪竜!!…っしゃぁやろうぜ!!」
「うん!!」
その正体はアスラと同じ歳くらいの少年、緑仙星七。彼もまた七罪竜に選ばれた者の1人。修行の相手に値する人物であるのは間違いない。
完全にやる気になったアスラ。星七とバトルせんとデッキを取り出そうとするが、その間に光黄が割って入って来て………
「ちょっと待て、今日はもう日が暮れるし、バトルは……と言うか修行は明日にしたらどうだ?」
「えぇ!?…ちょっと光黄さん、オレ今日一回しかバトルしてませんよ!?」
「はは……じゃあ明日いっぱいバトルしようよ」
烈我達はアスラ達と違って、自分達の世界を旅しているわけではないし、カラーリーダーのいる街を目指したりしない。実家、及び帰る場所があり、七罪竜に関する事を除けば、基本的に何の変哲もない普通の生活を送っている。
「そう言えばさ。アスラ達はこの世界にいる間どこで寝泊りするの?」
「あ。そう言えばそうね………」
紫髪の少女、絵瑠がそう告げ、エールは頷いた。確かに野宿をするわけにはいかない。寝床の確保は何よりも優先すべき、大事なことだ。
そんな中、呆れたようにテンドウ・ヒロミが口を開いて…………
「あぁ?…んなもん、オマエらの家に決まってるだろうが」
ー!!!
テンドウの放った言葉に誰もが驚愕する。しかし、言動からしてどうやら本気のようだ。
「ちょっと待てよ、いくらなんでもそんな急な話……」
「なんだ小僧異世界バージョン。オレに逆らう気か?」
「い、いやそんな事滅相もありません!!」
「烈我に恐怖が刷り込まれてる………」
流石にそれはないだろうと言わんばかりの烈我の発言だったが、テンドウに逆らえば命が無い事を知っているため、直ぐに諦める。似たような経験をしたアスラにはわかる。
こうして、アスラ達は散り散りになり、この世界のカードバトラー、天上烈我や黄空光黄の自宅に泊まる事となった………
明日からまた修行と言う名のバトルスピリッツが幕を開ける。
《キャラクタープロフィール》
【牙威ミナト】
性別:男
年齢:18歳
身長:175cm
身分:一般市民
使用デッキ:【異合】
好きなモノ:可愛い女の子
概要:チャラけた性格で、可愛い娘には目がない少年。叶えたい願いは世界中の女の子と仲良くしたいとのことだが、どこまで本気かは定かではない。烈我とはそれなり付き合いも長いが、彼曰く光黄が絡むと油断ならない。
異合デッキの使いで、青色をメインに戦う。キラーに選ばれ、キラーとはそれなりに上手くやっている。
※バトルスピリッツ7-Guilt-より引用
《裏話》
オレンジの小動物ムエはペットゆえにカードショップに入れませんでした。42コアは扉前で待機中だったのです。
「むえ」⬅︎解せぬ
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最後までお読みくださり、ありがとうございました!
コラボ編2話目が終了致しました。ブラストさんとコラボできて、私は幸せ者です〜!
それでは今回お借りした七罪竜、キラーことキラーバイザークの全貌をご覧ください!
※バトルスピリッツ7-Guilt-より引用
ー……
海牙龍王キラーバイザーク、コスト8(4)、青
系統:海首、罪竜
Lv.1(1)BP9000、Lv.2(3)BP12000、Lv.3(4)BP16000。
Lv.1、Lv.2、Lv.3 フラッシュ:【潜水(ダイビング)】
このスピリットと、このスピリット上のコアを全てデッキの横に置く。この効果でデッキの横に置かれたコアは一切の効果で使用できず、この効果はターンに1度しか使用できない。
Lv.1、Lv.2、Lv.3 フラッシュ
デッキの横に置かれたこのカードを元の状態でフィールドに戻す。
Lv.2、Lv.3 『このスピリットのバトル終了時』
このスピリットを回復状態にする事ができ、そうした場合、このスピリットの【潜水】の効果を発揮する。
ー……
手札でもトラッシュでもなく、フィールドからデッキ横に置く効果は面白いですよね!