バトルスピリッツ コラボストーリーズ   作:バナナ 

57 / 74
57コア「ダブルドラゴン」

アスラ………

 

オマエはオレと同じ場所に捨てられていた。そしてシイナの元で、コモンの民が集う、王国の隅っこ、スーミ村で兄弟同然に育てられた………

 

シイナが頂点王になったあの日、オレ達2人も後を追うように必ず頂点王になると誓った。ソウルコアの無いオマエが直向きに努力を重ねるその姿はいつしかオレの中で励みになっていた………

 

オマエは言う。身分やカードの力は関係ない。諦めないのが強さだと、諦めずに努力を重ねればいつかどんなヤツでも最強になれると………

 

オレはそんなオマエを誇りに思っている。そして思った、絶対にオマエが追いつけないくらいの強さを持ったライバルになると………

 

だが旅の途中、オレの正体は『アーサー家』

つまりエックスの身分を持つ者である事が発覚した。正直ショックだった。オレはオマエと同じではなかったのだから………

 

だが、それはもう吹っ切れた。オマエの言う通り、身分など関係ないんだ。オレの兄弟はオマエで、母親がシイナ・メザ。それだけで十分だ。そんなオマエだからこそ、エックスの身分を持つエールはオマエに寄り添うんだろうな。

 

 

しかし…………

 

未だに解せない事もある………

 

それはオマエの正体………

 

あの日、何故オマエはエックスの身分だったオレと一緒に捨てられた?

 

何故………

 

オマエはたびたび悍ましい黒い力を操る………!?

 

オマエがオレの兄弟には変わりはない。掛け替えの無い大事な存在だ……

 

だからこそ尚更、オマエは一体何者なんだアスラ!?

 

 

ー………

 

 

 

 

終盤を迎えたアスラ、ロン、エールとウィルの3対1のバトルスピリッツ。命をも賭けた激闘の中、対面するアスラが召喚した黒いウォーグレイモン、ブラックウォーグレイモンとウィルのライダースピリット、エターナル。

 

突如人智を超え、新たなライダースピリットを召喚したウィル。それに対抗すべく同じようにオニキスから力を借り、悍ましい程の黒き力を右手に宿したアスラ。

 

幼い頃からずっとアスラを見て来たロン。およそ半分程バケモノと化したアスラに、大きく内心を揺さぶられる………

 

 

「悍ましい黒い姿……これが私の、お母様の形見のウォーグレイモンなの……!?」

 

 

それはエールも同様、これまで幾度となく黒の力と関わりを持って来たが、今回の件は余りにも異常過ぎる。緊張感が蔓延るせいで口にする事さえできないが、本当にアスラは大丈夫なのかとどうしても勘繰ってしまう………

 

しかし、現状、己の最強カードを倒された2人は今のアスラに頼る事しかできないのがどうしても歯痒くて………

 

 

「その力……貴様まさかオニキスと交渉して力を?……フフ、だがブラックフォースにも力の序列がある。知っているか?…オニキスは4人いるブラックフォースの中でも最下位、つまり一番弱いと言う事。他の御三方から力を受け継いだこの私がその程度の存在に負けるわけがない」

「………言いたい事はそれだけかよ」

「!!」

「ブラックフォースの序列?…知らねーよそんなモン、今戦ってるのは、オマエとオレ達だ。オニキスでも、他のブラックフォースでもねぇ!!……ブラックウォーグレイモンの召喚時効果発揮、BP12000以下のスピリット、エターナルを破壊!」

「なに!?」

 

 

ベラベラと口を動かすウィルを静かに黙らせると、アスラが召喚したばかりのブラックウォーグレイモンの効果を発揮させる。

 

ウォーグレイモンとは違い、赤い炎ではなく黒い炎を両掌で形成するブラックウォーグレイモンはそれをそのまま仮面ライダーエターナルへと投擲。それに直撃したエターナルは堪らず爆散した。

 

黒の力を操るブラックフォースの力の差。本来であれば、ウィルの言う通り、アスラの中にあるオニキスはその中の最も下に値する。だが、今度はアスラの言う通り、今戦ってるのはブラックフォースではなくアスラ達自身。ブラックウォーグレイモンのこの一撃はまるでそれを証明するかのような攻撃であって…………

 

 

「オニキスの力如きでエターナルを破壊しただと………ターンエンド」

手札:6

バースト:【有】

 

 

結果として場のカードを全て破壊され、バーストをただ1枚残してのターンエンドとなったウィル。しかし追い詰められているものの、その授かった黒き力は健在なのか、未だに白眼が黒く禍々しく染まっている。

 

そして次はオニキスの力を借りたアスラのターン。ブラックウォーグレイモンを起点に攻めて行く………

 

 

[ターン12]アスラ&ロン&エール

 

 

「メインステップ!!……ネクサス、燃えさかる戦場を配置!」

 

 

ー【燃えさかる戦場〈R〉】LV1

 

 

アスラ達の背後に轟々と燃えさかる炎。その力はアタックするスピリット達の力を上昇させる。

 

さらにターンを進めるアスラ。手札を引き抜き、新たな力を呼び出す。

 

 

「ブレイヴ、牙皇ケルベロードを召喚!!……ブラックウォーグレイモンと合体!…さらにLV3にアップ!」

「ッ……青のブレイヴ!?」

 

 

ー【ブラックウォーグレイモン+牙皇ケルベロード】LV3(4)BP20000

 

 

現れたのは鉄のヘルムに黒き体を持つ獣、ケルベロード。現れるなり巨大な黒き翼の姿となりてブラックウォーグレイモンの背部に装着される。

 

より強力な合体スピリットとなったブラックウォーグレイモンはこれでもかと言わんばかりに強い咆哮を張り上げる………

 

 

「アタックステップ!……行け、ブラックウォーグレイモン!!…ケルベロードの合体時効果でオレのデッキを5枚破棄する事でターンに一回回復!」

「な……ダブルシンボルのスピリットを回復させるだと!?」

 

 

ー【ブラックウォーグレイモン+牙皇ケルベロード】(疲労➡︎回復)

 

 

アスラのデッキが破棄されるものの、それはケルベロードの糧。ブラックウォーグレイモンは回復状態となり、このターン2回のアタックを可能にする。

 

ウィルの4つのライフを全て破壊するにはダブルシンボルの2回攻撃で余りにも十分である。

 

 

「打ち込め、ブラックウォーグレイモン!!」

「ライフで受ける!!………ぐっ」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉ウィル

 

 

空を滑空し、鋭い鉤爪でウィルのライフを一気に2つ斬り裂くブラックウォーグレイモン。その強烈なダメージにウィルは初めて仰反る。

 

だが、この攻撃は彼のバーストの逆鱗に触れて………

 

 

「ライフ減少によりバースト発動、選ばれし探索者アレックス!」

「!」

「効果で召喚し、アタックステップを強制終了。さらにコア1つを増やす!」

「なに……アタックステップを!?」

 

 

ー【選ばれし探索者アレックス】LV2(2)BP8000

 

 

バーストが反転すると共に姿を現したのは紫色のフードを深く被った人型のスピリットアレックス。その効果でコアを増やしつつ、アスラのアタックステップ、及びブラックウォーグレイモンの追撃を不可能とした。

 

 

「クソ……ここまでやってまだ届かねぇのかよ。ターンエンドだ」

アスラ手札:0

ロン手札:3

エール手札:4

場:【ブラックウォーグレイモン+牙皇ケルベロード】LV3

【八神太一】LV1

【石田ヤマト】LV1

【燃えさかる戦場〈R〉】LV1

バースト:【無】

 

 

オニキスから借りた力を全開で使用して猛攻を仕掛けたアスラであったが、このターンは惜しくもトドメを刺せず………

 

 

「……アスラ……今のアンタは本当にアンタなの………!?」

 

 

バケモノじみた力でウィルに対抗するアスラに対し、震えた声で小さくそう呟いたエール。

 

今まで幾度となく見て来たアスラ。しかし、今はその内に宿っている黒の力とやらで彼が彼自身ではなくなってしまったのではないかと勘繰ってしまっていて…………

 

それ故にエールは怯えている。大好きなアスラを失う事に抵抗を覚えているのだ…………

 

 

「……ブラックフォースの中で一番力が弱いオニキス………そんな雑魚の力で私のライフを傷つけるなど………許さない、許さないぞ……このゴミが!!」

 

 

すっかりロンとエールが置き去りになってしまったレイドバトル。実質アスラ対ウィルのバトルは再びウィルのターンで開始される………

 

アスラに対し、より強い怒りや憎しみを持ったウィルは己のターンを進めていく。

 

勝つために、

 

そして第五のブラックフォースとなるために…………

 

 

[ターン13]ウィル

 

 

「メインステップ!!…タマムッシュをLV2で召喚、効果でコアを2つ増やす」

 

 

ー【タマムッシュ】LV2(6)BP5000

 

 

現れたのは玉虫型の緑のスピリットタマムッシュ。その効果でコアが2つ増える。

 

そしてウィルは新たに手札へと手を掛ける………

 

 

「な、なんだコレは……」

「黒の力が集まってる!?」

 

 

その行動だけで黒い瘴気が場を漂い始め、1つの巨大な核を形成していく。

 

ウィルは召喚する気なのだ。自分が召喚できる、最強にして最高、最悪のスピリットを………

 

驚愕するアスラ達だが、それを止める術はない。大人しくそれが現れるのを待つ事しかできなくて…………

 

 

「時は満ちた……照覧あれ、紛いモノの世界を消し去れ………時の監視者ロンバルディア……LV2で召喚!」

「!」

 

 

ー【時の監視者ロンバルディア】LV2(6)BP14000

 

 

黒き核が弾け飛び、中より黒き屈強な身体、黄金の鎧も持ち合わせ、さらには背中に生えた二頭の龍を従える強大なスピリットロンバルディアが姿を見せる………

 

これまでのスピリット達とは訳が違う圧倒的な存在感と圧迫感を放つ。

 

これこそ、ウィルの最終兵器。この激闘の中黒の力で生まれた究極のエースカード。又はウィルそのモノの信念、執念の塊とも呼べる。

 

 

「ゾゾゾ………これだこの力こそ、世界を破壊、創造する真の力……この力がずっと欲しかったんだ私は!!」

「ゾゾゾってオマエ……」

 

 

その身体からさらに強い黒の力が飛び出していくウィル。さらには笑い方までブラックフォース特有のモノに変化。

 

これら彼のブラックフォース化は確かに近づいていると言う事。もう彼は後戻りできない状態にまで黒の力をその身に侵食させている何よりの証拠。

 

 

「アタックステップ……ロンバルディアでアタック。効果で最もコストの高い相手スピリット1体を破壊」

「な……」

「じゃあ消えなさいブラックウォーグレイモン!!…さらに破壊に成功したロンバルディアはバトル中ブロックされない!」

 

 

ロンバルディアが支持をするように手を翳すと、背後の二頭の龍の首が伸びる。それはブラックウォーグレイモンの身体を食いちぎっていき、破壊、爆発に追い込んだ。

 

その際に合体していたケルベロードが逃げるように合体を分離させ生き残るが、ロンバルディアの効果でブロックもできなくて………

 

 

「そしてこれがロンバルディア本命のアタック!…さっさと受けろムシケラがァァァー!!」

「……ライフで、受ける!………ぐっ、ぐぁ!!」

「アスラァァァー!!」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉アスラ&ロン&エール

 

 

アスラにだけ向けられたその攻撃。ロンバルディアの拳、背中の龍達が1つのライフバリアを破壊し尽くす。

 

これまでとは比べモノにならないダメージに、アスラは思わず膝を突いてしまう。

 

だが…………

 

ウィルの猛攻はまだまだ終わらなくて…………

 

 

「まだだ。まだオマエには苦痛を受けてもらうぞ!!……ロンバルディアの【転醒】の効果を発揮、進化を果たせロンバルディア!!」

「なに……龍騎やナイトみたいに転醒まで使えるのか……!?」

 

 

スピリットをさらなる高みへと誘う効果【転醒】をも持ち合わせていたロンバルディア。ウィルがその効果の宣言をすると、再び黒き核にその身を包んでいき、進化の準備を加速させていく………

 

 

「あんなチンケなスピリットの転醒と一緒にするな………全てを破壊する時の破壊者……その名もロンバルディア・Ω!!……今こそ世界を破壊し、創造を!!」

「!!」

 

 

ー【時の破壊者ロンバルディア・Ω】LV3(6)BP30000

 

 

黒き核から再び姿を現したロンバルディア。その姿は最早単なるバケモノ。より巨大化した肉体、黄金の翼、4本になった足。

 

ただでさえ敵わなかったロンバルディアが転醒によりさらに強くなったのだ。それが与える絶望感は半端なモノではない………

 

しかし、そのロンバルディア「Ω」と言う名前に反応したのは他でもないエールだ。

 

 

「ッ………Ω!?……ウソ、ひょっとしてそのカード、オメガのカードの力が入ってる……!?」

 

 

ー!!

 

 

「よく気がつきましたね……そう。これは黒の力と我が師であり、アナタの母親でもあるエレナ・オメガの紫のオメガの力が融合して生まれた力……今までゆっくりとこの力を育てて来たんですよ」

「ッ……お母様とアンタが師弟!?」

「!!」

 

 

サラッと衝撃の事実を告白するウィル。エールだけでなく、アスラとロンも驚愕に顔を歪ませる。

 

そう。ウィルとエールとエレンの母親であり元三王、エレナ・オメガは師弟の関係にあった。

 

 

「ゾゾゾ………あの人には何度も何度も私の思想を語った。この狂った世界を救うには一度リセットするしかないと………共感して欲しかったが、いつも答えはNO。『破壊して何になる』といつも返答されたよ」

「そりゃそうだろコノヤロー……テメェの方がよっぽど狂ってんだろ」

「ゾゾゾ……だから殺した。私が殺人鬼オロチを差し向けるように動かしたんだ」

「!!」

「死に掛けたらあの女、きっと必死に命乞いでもするのかと思って楽しみにしてましたが……いやはや、本当に最後まで意味がわからない事ばかりほざいて笑いながら死んだ。あぁ……思い出しただけでも腹立たしいよ」

 

 

手口までは定かではないものの、10年前、殺人鬼であるオロチをエレナに差し向けたのは他でもないウィル。

 

エレナ殺害後にオロチをライダーハンターズに勧誘した事から、全ては彼が仕組んでいた事なのが窺える………

 

 

「オマエが……オマエがお母様を!!」

「ゾゾゾ……おっと、誤解しないでください。私は一切の手を加えてませんよ。殺ったのは他でもないあのドブ汚いコモン、オロチだ」

 

 

当然の如く、怒り心頭に発するエール。無理もない。理不尽な理由で殺人鬼を差し向けられ、母親を殺害されてしまったのだと知ってしまったのだから………

 

エールだけでなく、その気持ちを痛いほど理解しているアスラとロンもさらなる怒りで表情を歪ませている。

 

しかしウィルは…………

 

 

「私にとって、母親に似た君の可憐な顔はずっと目障りだった………ゾゾゾ、だから今日ここで殺してあげますね?…お仲間と一緒に、全部まとめて」

 

 

確かな殺意をエール、アスラ、ロンに向ける。その顔は最早人間ができるモノじゃない。ブラックフォースと言うバケモノになったからこそ言える言葉、できる表情である。

 

そして己のターンを終わらせる事なく、また進めていき………

 

 

「ロンバルディア・Ωは転醒する際に効果で回復している。よって2度目の攻撃が可能だ。やりなさい!!」

「!」

「その効果で今度はケルベロードを粉砕!」

 

 

より強力になった双頭の龍がケルベロードを喰いちぎり喰らい尽くす。これでアスラ達3人のブロッカーは0。

 

 

「さらにロンバルディア・Ωは青と紫のダブルシンボル!!…オマエ達のライフも残り2つ!!……ゾゾゾ……さぁ、塵と化せ!!」

「クッソ………!!」

 

 

オニキスの黒き力を得ているアスラだが、最早その手札には打つ手立てが残っていない………

 

万事休すか。

 

しかしそう思われた直後………

 

声を荒げて手札のカードをBパッドに叩きつけたのは、今までずっと一緒に旅をして来たエールだった。

 

 

「フラッシュマジック、シーズグローリー!!…効果でタマムッシュのBPをマイナス7000して破壊!」

「!」

 

 

ー【タマムッシュ】BP5000➡︎0(破壊)

 

 

正義の名の下に、眩い光がタマムッシュを包み込み、爆散させる。

 

そしてシーズグローリーの効果はまだ続き………

 

 

「この効果で破壊した時、シーズグローリーはブレイヴカード、ロンゴ・ミニアスに転醒する!……現れなさい!」

 

 

ー【天醒槍ロンゴ・ミニアス】LV1(1)BP5000

 

 

天空より場へと突き刺さったのは全てを穿つ槍、ロンゴ・ミニアス。ブレイヴカードではあるものの、転醒した時の効果を備えていて………

 

 

「転醒時効果、このターン中、私達のライフはアタックによって1しか減らされない!」

「なに……」

「その攻撃はライフで受けるわ!!……ッ」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉アスラ&ロン&エール

 

 

転醒したロンゴミニアスが放つ聖なる光。それがアスラ達3人のライフバリアを包み込む。

 

ロンバルディア・Ωが背中の双頭の龍と拳で連続攻撃を叩き込むも、それは1つしか破壊されない。

 

 

「何弱気な顔してんのよアスラ……アンタはこの程度で諦めるヤツじゃないでしょ?」

「!」

「いくらオニキスの黒い力…そんな意味のわからない力が溢れ出ていようと、アンタはアンタ……私の知っているアスラはこんな所で諦めたりしないわ」

「エール………」

「わかったらさっさとターン進めて、勝つわよ。復讐なんてお母様は望まない。けど私はどうしてもアイツの顔を引っ叩いてやりたい」

 

 

アスラを鼓舞するようにそう言葉を口にするエール。その言葉が再びアスラを奮い立たせる。

 

いつもはアスラの後ろにいたエール。その後ろ姿にいつも勇気をもらっていた。そのお返しであると言わんばかりに今度は、一瞬だけではあるものの、彼女がアスラの前で勇気を分ける。

 

 

「おぉ……勝とうぜエール。オマエの母ちゃんのためにも一発アイツをぶん殴ってやろう!」

 

 

再び活力を取り戻すアスラ。その右手にオニキスの黒い力がより強く光を放つ。そんな中、唯一無二のライバルであるロンは変わらないアスラの様子に「フ……」と鼻で笑う。

 

 

「ゾゾゾ……何勝手に盛り上がっている。もうオマエ達に勝ち目などないのですよ。絶望の淵に沈む事しかオマエ達に選択肢はない」

「ゾゾゾゾゾゾってうるっせぇぞコノヤロー!!……オレは、オレ達は勝つ!!…世界もぶっ壊させやしねぇ!!」

 

 

ほぼブラックフォースと化したウィル。それに対抗するように叫ぶアスラ。

 

そして、3人にとってこれがラストターン。残り2つのライフを穿つべく、ウィルのロンバルディア・Ωとアレックスに立ち向かっていく…………

 

 

[ターン14]アスラ&ロン&エール

 

 

「アスラ……」

「ん?……何だよロン」

 

 

大事なメインステップに入ろうとした直後。ロンがアスラに話しかける。

 

 

「オマエが何者であろうとも、オマエはこれからもオレのライバルでいてくれるか?」

 

 

そう問いかけて来た。

 

これまでも幾度となく繰り返されたアスラの謎めいた黒き力。ライバルであるからこそ「オマエはこれからも変わらないのか?」とも聞くように………

 

ロンにとって、アスラは大事な存在。エールと同様に失いたくないのだ。

 

 

「へっ……何意味のわからねぇ事言ってんだ天才イケメンヤロー、急に気持ち悪い………変わる訳ねぇだろ。オマエはオレの幼馴染で親友で、いつか超えたいオレのライバル。でもって相棒だ」

「フ……だよな。それでこそオマエだ。悪い、野暮だったな………このバトル、勝つぞ」

「おぉ。上等だぜ」

 

 

互いの友情を再確認する2人。そしてメインステップへと移行し、先ずはロンが動き出す。

 

 

「メインステップ!!…仮面ライダーナイトを召喚!」

 

 

ー【仮面ライダーナイト】LV3(4)BP8000

 

 

様々な鏡像が重なり合い、闇夜に輝く騎士型のライダースピリット、ナイトが出現。転醒する強力な個体だが、エールのシーズグローリーにより転醒カウントが増えたため、もうそれを行う事ができなくなっている。

 

しかし、強力な効果は転醒だけに非ず………

 

 

「ナイトは召喚時カードを2枚ドローする……この効果でドローするのはオマエだアスラ!!」

「!!」

「引けよその黒くなった手で……掴めよ勝利を!!」

「あぁ……行くぜ、ドローッッ!!」

 

 

何の躊躇いもなくアスラにカードをドローさせるロン。その意思を感じ取り、全力でカードを引くアスラ。

 

そしてこの2枚のカードがこのバトル、逆転劇へと導いていく………

 

 

「オレはマジック、コールオブロストを使う!…それによりトラッシュからリュウガを手札に戻し、それをLV3で召喚だ!!」

「ッ……黒きライダースピリットを復活させたか」

 

 

ー【仮面ライダーリュウガ】LV3(4)BP12000

 

 

様々な鏡像が重なり合い、今度は黒い龍騎、リュウガが再び姿を見せる。

 

並び立った仮面ライダーリュウガと仮面ライダーナイト、アスラとロンの2人の最強カード。その2体はロンバルディア・Ωに敵意を向けるように気迫と視線を送る。

 

 

「リュウガの召喚時効果、相手スピリット全てのコアを2つずつリザーブに送る!…これにより、アレックスは消滅、ロンバルディア・ΩはLVダウンだ!」

「ゾゾゾ……馬鹿め、ロンバルディア・Ωは敵の効果を受けない!!…その程度、弾き飛ばせい!!」

 

 

ー【選ばれし探索者アレックス】(2➡︎0)消滅

 

 

その鎧から垣間見える黒く鋭い眼光から黒い瘴気を放ち、アレックスの体内に眠るコアを叩き出すリュウガ。

 

しかしアレックスは倒せたものの、ロンバルディア・Ωはそれを己が気迫だけで弾き返し、無傷でその場を凌ぐ。

 

だがそれで彼らのターンが終わったわけではない。今度は再びロンが行く……

 

 

「エール、オマエが残したブレイヴを貰うぞ」

「えぇ!…さっさとあんなヤツぶっ倒しちゃいなさい!!」

「ナイトにロンゴ・ミニアスを合体!!」

 

 

ー【仮面ライダーナイト+天醒槍ロンゴ・ミニアス】LV3(4S)BP13000

 

 

地に刺さったロンゴ・ミニアスを手に取る仮面ライダーナイト。強力な合体スピリットとなる。

 

そして3人は疲労状態となっているロンバルディア・Ωしか場にスピリットを置いていないウィルのライフを狙い、アタックステップへと移行していく………

 

 

「合体したナイトでアタック!…ダブルシンボルにより一撃で2つのライフを破壊する!」

 

 

ロンゴ・ミニアスを構え、走り出すナイト。この攻撃が通れば3人の勝利で幕を閉じる事となるが………

 

そんな簡単にウィルが幕を閉じさせるわけがなくて………

 

 

「甘い。フラッシュマジック、ホワイトポーション!!…ロンバルディア・Ωを回復!…そしてナイトをブロック!」

「!!」

 

 

ー【時の破壊者ロンバルディア・Ω】(疲労➡︎回復)

 

 

使用したのは白のマジック。ロンバルディア・Ωは再び活動を開始し、向かって来るナイトを迎撃する準備に入る。

 

ロンゴ・ミニアスと元々所有している剣を振い、果敢に攻めるナイトだが、そのBP差は圧倒的。双頭の龍が軽くあしらい、ロンゴ・ミニアスを弾き飛ばすと、最後はロンバルディア・Ω自身の拳がナイトを殴り潰し、爆散させた。

 

 

「言っただろう。もうオマエ達は勝てない。絶望の淵に沈むだけだと!!」

「誰が絶望するかァァァー!!……行くぞリュウガ!!」

 

 

ナイトの爆発による爆煙の中姿を見せる仮面ライダーリュウガ。アスラの指示により動き出すが………

 

 

「ソイツのシンボルはたったの1つ!!……ゾゾゾ、それでは私の2つのライフは破壊できませんね〜!!」

 

 

そう。

 

さっきのナイトとは違い、リュウガのシンボルは1つしかない。

 

だが、当然アスラ達も何の考えもなく攻撃するわけもない。

 

 

「今だロン!!!」

「!!」

 

 

アスラが叫んだ。そうすると、ロンが息を合わせるように手札にあるカードをBパッドに叩きつける。

 

 

「フラッシュマジック、ブレイヴフラッシュ!!」

「緑のマジック……?」

「この効果でアタック中のリュウガに場のロンゴ・ミニアスを合体させる!」

「何だと!?」

 

 

ー【仮面ライダーリュウガ+天醒槍ロンゴ・ミニアス】LV3(5)BP20000

 

 

主人であるナイトを失ってしまった事により、再度地に刺さっていたロンゴ・ミニアスを引き抜くリュウガ。

 

これでナイト同様にダブルシンボル。一撃で2点のライフを破壊する事ができる。

 

 

「行くぞ仮面ライダーリュウガ……黒き力で全てを塗り替えろ……」

 

 

ブラックドラゴンスピア!!

 

 

技名を叫ぶアスラ。リュウガはロンゴ・ミニアスに黒い炎の力を纏わせると、ウィルのライフへ向けて投擲。

 

肝心のロンバルディア・Ωは疲労状態につきブロック不可能。

 

これでアスラ達の勝利に終わる………

 

 

かに見えた。

 

 

「フラッシュマジック、ブレイヴデストラクション!」

「!」

「効果でブレイヴのロンゴ・ミニアスを破壊!」

 

 

黒い炎を纏ったロンゴ・ミニアスが直撃する直前。ウィルはマジックカードでそれを破壊。

 

リュウガは又してもシンボル1つへと戻ってしまう。これでは結局ウィルのライフは1つまでしか破壊できない………

 

 

「ゾゾゾ………良かったか?…希望と言う味は?…甘味であったか?……ゾゾゾ、だがそれを味わえるのもここまで。次のターンでこの私の勝ちだ!!……世界を、この世の何もかもがこの手の中に!!」

 

 

勝利を確信するウィル。

 

だが絶望的なこの状況でまだロンとエールは諦めていない。無論理由は絶対に諦めようとしないアスラがそこにいるからだ………

 

これが最後のフラッシュマジック。そう告げるかのようにアスラはBパッドにカードを叩きつける………

 

 

「フラッシュマジック、ファイナルベント」

「ッ……!!」

「この効果でアタック中のリュウガに赤のシンボルを1つ追加する」

「……シンボルを1つ追加……だと!?」

 

 

ここに来てようやく本気で余裕の表情が消え失せるウィル。

 

アスラが使用したマジックカードはこれまで幾度となく彼のバトルを支えて来たアドベントカードの一種『ファイナルベント』………

 

そしてそれが今回も炸裂する。様々な鏡像が重なり合うと、そこにリュウガと相反する赤の力を持つライダースピリットにしてアスラの相棒、龍騎が呼び出される。

 

 

「……龍騎とリュウガ……アスラの2体のライダースピリットが揃った!!」

「フ……行け、アスラ!」

「おぉ!!」

 

 

エールとロンがそう声を上げる中、龍騎とリュウガはベルトにあるカードデッキの中よりカードを1枚ドロー。そしてそれを左腕にある龍の頭を模したバイザー部に装填………

 

 

………ファイナルベント!!

 

 

と、無機質な音声が流れる。すると龍騎には赤い龍ドラグレッダーが、リュウガにはその黒バージョンが背後に出現。

 

そして2人のライダースピリットはそのまま上空を跳び上がり、赤と黒、それぞれの龍の炎に背中を押され、キックを放っていく………

 

 

「決めろ、龍騎!!…リュウガ!!」

「馬鹿な……私は黒の力を得た無敵のッ……そんな馬鹿な、馬鹿な、馬鹿なァァァァァァー!!!!」

「髭ヤロォォォー!!!……オマエの、負けだァァァーー!!!!」

 

 

 

 

 

………ダブルドラゴンキック!!!

 

 

 

 

〈ライフ2➡︎0〉ウィル

 

 

 

クロスの文字を描くようにドラゴンライダーキックを放つ龍騎とリュウガ。「ダブルドラゴンキック」と名付けられたそれは、ブラックフォースとなったウィルの残り2つのライフを掻っ攫っていった…………

 

 

 

……ピー……

 

 

ウィルのライフが0になった直後、彼のBパッドからそんな甲高い音が鳴り響く。これこそアスラ達にとって勝利の音色。

 

勝ったのだ。遂にライダーハンターズの主任ウィルとの決着をつけて見せたのだ。集大成とも呼べる必殺技「ダブルドラゴンキック」で………

 

 

「ゾ……ゾ、ガ……」

 

 

余のダメージにその場で倒れ込んでしまうウィル。アスラがオニキスの黒い力を借りていたからこその大ダメージなのは間違いない。彼の場で唯一生き残ったロンバルディア・Ωも苦しみながら消滅して行く。

 

これでバトルは終わり、龍騎とリュウガ2体のライダースピリットが顔を見合わせながらゆっくりと消滅していくその間に、アスラ達は自分達が勝利したのだと実感していき…………

 

 

「勝った……」

「勝ったの……?」

「あぁ、アスラエール、オレ達の勝ちだ」

「やった……アスラ、私たち勝ったのよ!!」

「あぁ……へへ、もう身体が動かないや」

 

 

勝利したアスラ達。見事必ず勝つと言う三王2人との約束を果たしてみせた。

 

 

「全くアンタはいつも無茶ばかりして………す、少しは人の気持ちも考えなさいよね

「ん?…なんか言ったかエール?」

「べ、別になんでもないわよ!!」

 

 

エールがアスラに対してツンケンして、それにアスラが天然の鈍感ぶりを発揮するいつもの光景。

 

ようやく長かった緊張感も終わり、少し平和が戻って来たのだ。

 

 

 

しかしそれは単なる錯覚であり………

 

 

 

 

ー………

 

 

 

 

「アナタの成そうとしている事は間違っている」

「………それは偏見ですエレナ師匠。歴史を動かす人物と言うのは時には道徳観念を捨てる事も厭わないべきだ」

「何故わからないのですウィル。アナタはその歴史ごとなかった事にしようとしているのですよ?」

 

 

今から20年も前の話だ。ウィルは気絶しながらそんな昔の話を思い出していた。

 

師であるエックスにして三王、エレナ・オメガとの記憶。

 

何故理解してくれない。何度訴えかけても貴女は協力さえしてくれない。

 

いや、理由なら知っている。貴女はエックスだ。一番上だ。だからこそリセットされるのを、築き上げて来た地位が崩れ去るのを恐れている。

 

なんと浅はかで愚かな師だ。

 

いや、愚かなのはこの世界、人間たちだ。7つの欲望で満ち溢れた世界など、この私が消し去ってくれる…………

 

 

だからこそ、こんな所で負けてなどいられないのですよ………

 

 

私は!!!

 

 

ー………

 

 

 

 

「ゾ……ゾ、ぐ、うぉぉお!!」

 

 

ー!!

 

 

場所は戻り現在。はち切れるほどの想いを胸にウィルは立ち上がってみせる。その目に映るのはアスラ達3人。

 

 

「オマエまだ動けるのかよ……!」

「戦え、私ともう一度戦うのだ!!」

「もう一度って……そんなボロボロのヤツともう戦えるか!」

「綺麗事を!!」

 

 

完全に余裕の無くなっているウィル。アスラはさっきまで敵対していたとは言え、流石にここまでボロボロになったウィルとバトルをする事はできない。

 

だがそれでも諦めたくないウィルは己のBパッドにカードを1枚叩きつけて………

 

 

「オマエが来ないのなら、こっちから行く!……召喚、アルケーガンダム!!」

 

 

ー!!

 

 

「ヤツを……ヤツを殺せ!!」

 

 

現れたのはモビルスピリットの1体、アルケーガンダム。ウィルはそんなアルケーガンダムに指示を送る………

 

アスラを殺すのだと………

 

 

「いや、アスラァァァー!!」

「逃げろアスラァァァー!!」

「!!」

 

 

迫り来るアルケーガンダム。アスラは逃げようにも黒の力の反動が大き過ぎてもう一歩だって動く事はできなかった…………

 

そしてアルケーガンダムの剣による一突きがアスラの腹部を貫く…………

 

 

はずだった。本当なら…………

 

 

「………え」

 

 

アスラが閉じた目を開けると、そこにいたのは他でもない頂点王のシイナであった。

 

本来であれば誰よりも心強い助っ人。

 

だが…………

 

アルケーガンダムのその一撃にシイナはアスラを庇って代わりに腹部を貫かれていて…………

 

 

「ぐふっ………」

「し、シイナ様……!?」

「シイナ………」

「ゾゾゾ……よく来たな、頂点王〜〜!!」

 

 

シイナがやられ、吐血する様子に唖然とするアスラ達3人。それに対して余裕を取り戻したように笑みを浮かべるウィル。まるでその顔は最初からこうなる事を想像していたかのよう………

 

 

「お、おいシイナなんで………」

「……ん?…なんか雨降りそうだったから傘持って来た。まぁ間に合って良かった良かった。この城内部構造がぐちゃぐちゃでさ〜」

 

 

腹を貫かれ、吐血し、血の流血が絶えない状態であるにもかかわらず平然と喋るシイナ。

 

アスラ達にいつもの優しい顔を見せると、すぐさまアルケーガンダムを睨みつけ………

 

 

「……失せろよ」

 

 

頂点王だからこそできる圧倒的な威圧感に、機械兵であるアルケーガンダムでさえも思わず剣を引き抜き、怯えるように後退。そのまま逃げるように消滅していく。

 

 

「………ぐっ」

「シイナ様!!」

 

 

しかし流石の頂点王もその致命傷になり得る攻撃に耐えられるわけがない。大量出血によりその後すぐに膝を突き、エールとロンが思わず駆け寄っていく。

 

 

「ゾゾゾ……わかっていたよ頂点王シイナ。貴女なら必ず現れる。息子を庇うためにね」

「?」

「この世界に貴女をバトルスピリッツで倒す方法はない。だからこそ私は貴女の息子、妹のような存在であるその3人を狙った………ゾゾゾ、そう。これが貴女の攻略法。貴女の唯一の弱点は母、姉である事だ」

「ベラベラと……いいから消えろよ」

 

 

シイナ・メザとはおそらく全人類最強のカードバトラー。ことバトルスピリッツにおいては誰も彼女に敵う者はいない。

 

そう思ったウィルはバトルスピリッツ以外の方法で彼女を取り消そうとした。その結果がこれだ。おそらくバトルに敗北した事以外は全てウィルの想定通りの未来だったのだろう。

 

そして緊張感乱れるこの時間の中、あの男も姿を見せる。

 

 

「ザザザ……やぁウィル。どうやら目的は完全に達成してはいないものの、それなりの戦果を挙げたようだね」

「ッ………この声」

「て、テンドウ……!?」

 

 

現れたのはトゥエンティの代わりにテンドウに乗り移り、それを己が肉体とした最強のブラックフォース、オブシディアン。

 

ウィルを含め、一同は戸惑いを見せる。

 

 

「お初だな。私はオブシディアン……トゥエンティの代わりにこのテンドウと言う人間の身体を貰った」

「そうか。やはりオブシディアン様」

「そんな、テンドウ!!」

「テメェ、テンドウさんを返しやがれ!!…つーかトゥエンティはどうしやがった!!」

「ザザザ……この身体は実に素晴らしいよ。そこの死にかけている女と言い、この時代の人間はなんと逞しい」

 

 

シイナやテンドウの状態から、余りにも最悪過ぎる事態が起こりつつある事をその身に実感させられるアスラ達3人。

 

なんとかテンドウを助けてやりたいが、さっきのバトルで身体はボロボロ。奮い立たせようにもどうにもできない上にそもそも敵うかもわからない………

 

いや、仮に立ち向かえたとしてもきっとオブシディアンには勝てないだろう。彼は他のブラックフォース達と比較しても強過ぎるのだから。

 

 

(トゥエンティやこの男の記憶で何度も見たこの少年………やはりヤツらの……ザッザ、だがその程度の力しかないのなら、恐るるに足りないな)

 

 

最早立ち上がる事もできないアスラを見ながらそう内心で呟くオブシディアン。どうやらオブシディアン達ブラックフォースはアスラについての何かを知っているようであり…………

 

 

「おいテンドウ……天下の三王がなんつーザマだ。いいからさっさと起きろよ」

「!!」

 

 

テンドウに直接訴えかけるように静かな怒声を言い放つ頂点王シイナ。

 

その声に反応し、オブシディアンの中に眠るテンドウが少しだけ意識を取り戻したのか、体の指先がピクリとだけオブシディアンの予想だにしない方向へと動いて………

 

 

「ザザザ……ここは一時引こうかウィル。オマエの力はきっといつか我々を超える。何より私もこの身体に慣れるのに時間がかかるようだ」

「………はい」

「待ってテンドウ!!」

 

 

オブシディアンが黒いワームゲートを瞬時に作り出すと、そこからウィルと共に逃亡を果たす。エールが後を追うように追いかけようとするも、ロンが彼女の左肩に手を置き、それを制止させる。

 

そんな事よりも今はシイナだ。いくら肉体的に強い彼女と言えど、腹に穴を開けられてしまってはもう限界だ。

 

シイナはこれで最後だと言わんばかりに疲労困憊で座り込んでしまっているアスラの前に座り込む。そうすると必然的にすぐ横にエール、ロンも集まって来る。

 

 

「シイナ様……先ずは血を止めないと……」

「いや、いいよ。どうせもう私は長くない………」

「ッ……な、なんでそんな事言うんですか!!…まだ……まだ……ッ!」

「シイナ……!」

 

 

もうシイナは手遅れだ。ダメージが酷過ぎる。いくら応急的に止血を試みようとしても止まる事はないだろう。

 

目に涙を浮かべるエール。悔しがるロン。アスラは現状を余り理解できずに、いや、どちらかと言えばそれを理解したくないと言うのが的確か。呆然と何の言葉も出せない。

 

 

「明日。ロンとアスラの誕生日なんだよな……おめでとう。ごたついてて誕プレ用意出来なかったんだけど、良かったらこれを受け取ってくれ」

「!」

 

 

アスラとロンに1枚ずつカードを手渡していくシイナ。それらには血が染み付いており、もう彼女が生き残る事ができない事をより鮮烈に印象付けさせた。

 

 

「エールちゃんも1週間後には誕生日なんだけどね。ごめん、何もあげるモノがないや」

「イヤですください!!……いつも見たいにください!!……私はエックスよ。この国で一番身分が上なのよ!?…だから生きてよ!!…生きて何か寄こしなさいよぉ……シイナ様ァァァー!!」

 

 

どんどん生力を失い、弱々しくなっていくシイナの声色。エールはただ1人涙しながら必死でシイナを引き止めようとする。

 

しかし、そんなモノが上手くいくわけがない。

 

 

「エールちゃんは優しいな。昔からそうだ。ツンケンとしている割に、本当はどこか寂しがり屋で、努力家で、どこの誰よりも女の子してる。昔からバケモノ呼ばわりされていた私なんかの妹でいてくれてありがとう……!」

 

 

シイナはエールを左腕で軽く抱きしめながらそう告げる。エールの涙が悲しさと思い出で溢れ返っていく中、彼女は次にロンの方へと首を向けて………

 

 

「ロン。オマエが一番変わったな。小さい頃から「ライダースピリットを使うバトルの天才」だって言われてて、でもそれがプレッシャーになっててさ。でもよくそれを跳ね除けて頑張ったよ……アスラと同じ、アンタも自慢の私の息子さ。いつか絶対頂点王になりな」

「……シイナ……オレは、オレはッ!」

 

 

オレはアンタのいない世界なんて考えられない。そう告げようとしたロンだが込み上げて来る何かがそれを詰まらせる。

 

満身創痍のシイナは最後の力を振り絞り、両腕に力を入れ、真ん中にいたアスラをエールとロン事抱く。

 

 

「そしてアスラ。オマエに言う事はただ1つ………諦めるな。ソウルコアがなかろうがコモンだろうが、オマエは強くなれたじゃないか、きっといつか頂点王にだってなれる……頑張れ。頑張れ」

「…………」

「あぁ、暖かいな。本当はもっとずっと一緒に居たかったんだけど」

 

 

唖然としているアスラはシイナに、母に対して何も言い返せず、ただそれを聞くだけ。

 

そしてシイナはその後、まるで天に登ろうとするように身体が光の粒、粒子に変わっていき…………

 

 

 

 

 

………こんな私を、母と、姉と思ってくれてありがとう………

 

………あぁ、生きてて良かったな…………

 

 

 

 

 

最後にそう言葉を残し、事切れると、身体は完全に光の粒に変換。やがて消え去って行く。

 

普通。人間は死ぬ時にこんな現象は起きない。常識から考えれば光の粒になって消えるなど余りにも異常過ぎる光景である。

 

だが、残された3人にとって、そんな事はどうでも良かった。

 

 

 

エールはただ1人涙し、地に伏せ、これでもかと悲痛な泣き声を上げていた。

 

ロンは悔しさに歯を噛み締めている。

 

アスラはこの現実が未だ受け入れられないのか、呆然と口を開けていた。

 

 

そして、この瞬間。少しだけ思考を動かしたアスラは………

 

オニキスに言われ続けていた、ある言葉を思い出した。

 

 

 

ー『オマエ自身は単なる人間だ。アレを連続で使うと、代償が付き纏うぜ……!!』

 

ー『だが、黒の力を持つモノには常に代償が付き纏う。これだけの黒の力を使えばオマエは一番大事なモノを失うだろう。肝に銘じておけ………』

 

 

 

 

………一番大事なモノ……!?

 

オレの一番大事なモノ………

 

 

 

 

 

今度はシイナの顔、そして記憶を思い出すアスラ。ロンと3人で過ごした子供の頃の話や、大きくなって再会した時の事、それからの事。

 

自分の道の前には常にシイナが、母がいた。だが、それはもういない。何せ、自分が「代償」として支払ってしまったのだから…………

 

そうだ。アスラにとって一番大事なモノはシイナ。それであるが故、彼女は代償として支払われた。

 

 

 

 

 

いったいいつ失うモノが「龍騎」だと言われた!?

 

いったいいつからそう錯覚していた!?

 

 

あぁ………

 

そうだ。

 

そうじゃねぇか………

 

 

 

 

 

 

 

オレがシイナを殺したんだ……………

 

 

 

 

そこまで思い至ると、アスラはオニキスの力を酷使した影響で力尽き、泣きながら気絶していた。

 

受け入れられない現実。支払った代償はもう戻す事はできない…………

 

 

この日、生まれて初めてアスラの心は折れた。その手には最後にシイナに手渡された「デュークモン」のカードが握られており、それはまるで共に涙を流しているかの如く彼の涙で濡れていた。

 

 

 

 

 

******

 

 

 

一方、ほぼ同時刻。ライダーハンターズのアジト場外にて。

 

内部では熾烈極めた戦いが行われていた中で、ここでは三王のエレンと金髪の青年フリソデのバトルが行われている。

 

元々はシスイ・メイキョウの助手を務めていたフリソデであったが、今ではブラックフォースの力に魅了され、最早ウィルの犬と化していた。

 

そんな2人のバトルはフリソデがブラックフォースの「シャーマン」を宿した事もあってか意外にも拮抗していた。だがそれでもモビルスピリットの戦い方を極め、洗練されたエレンのバトルには敵わないか、徐々に徐々にとフリソデは追い詰められていて………

 

 

「ハァッ……ハァッ……流石はモビルスピリットの三王。同じモビルスピリット使いとして敬意を表するよ」

「全く敬意を表しているようには見えんな。いいから早くターンを進めろ。余は早くこの中に入らなければいけないのだ」

 

 

力の差は圧倒的。モビルスピリット同士の戦いとなればエレンの右に出る者はいない。

 

ただ、それは人の力だけの話。

 

ここに黒属性の力が加わるとなればまた違う話であり…………

 

 

「へ〜……じゃあ早いところ終わらせようか。もちろん、僕の勝ちでね!」

「ッ……!」

 

 

フリソデの身体とデッキから吹き荒れる黒いオーラ。

 

それは紛う事なき黒属性の力。フリソデは遂にその内に宿らせたブラックフォース「シャーマン」の力を解き放ったのだ。

 

 

「そんじゃ行くよシャーマン。寄こしてよ、ドブネズミだろうがどんなモノでも強者に変える黒の力を……!」

 

 

……ズズズ、その言葉を待ってたぜフリソデ〜!

 

 

フリソデの黒いオーラから聞こえて来る不気味な笑い、不敵な男の声。

 

エレンはこれまでの情報と経験、状況から、それがブラックフォースの声であると判断する。ブラックフォースの力が常軌を逸している事は重々承知している。そのため、より手札を強く握り、それを警戒する。

 

そしてフリソデはターンを進め、メインステップまで行くと、黒で強化したそのカードを己のBパッドに叩きつけて…………

 

 

「メインステップ………来い、転醒シナンジュ!!」

「!」

 

 

上空から飛来してきたのは真っ赤なモビルスピリット、シナンジュ。その見た目は彼がいつも使用しているそれと何ら変わりはないが「転醒」と言う言葉にエレンは警戒心をより強め………

 

 

「ハッハッハッハッハッハーー!!!……いいね黒の力!!…こんなに良いモノだったなんて知らなかったよ!!……それじゃあ行くね三王のエレン!!…アタックステ……ん?」

 

 

しかし、フリソデがアタックステップに入ろうとしたその直後だ。彼の脳から直接伝言のような言葉が流れて来て………

 

おそらくはオブシディアンのモノだろう。彼からは「目的達成、帰還せよ」とだけ伝えられた。

 

 

「え〜〜マジかよ。今からが面白いとこだったんだけどな〜……折角身分の強さだけでふんぞり返ってるエックス様をこの手で痛ぶるチャンスだったのに」

 

 

それを聞いたフリソデは少しだけつまらなさそうに不敵されるも「まぁ仕方ないか」と言葉を付け足し、Bパッドとデッキを片付け、懐に仕舞う。その際バトルが強制終了された事により、転醒シナンジュはゆっくりと消滅して行く。

 

 

「何の真似だ?…まさか逃げ出すわけじゃあるまいな?」

「ハッハッハ……エックス様ちょっと勘違いしてない?…あのまま続けてたら死んでたのは君だよ?……まぁ今は精々この城の中で絶望する事だね」

「……なに!?」

「じゃ、そう言う事で」

 

 

それだけ言葉を残すと、フリソデはBパッドの端末を弄り、ワームホールを出現させると、そのままそれを使用し、その場から離れて行く。

 

その言葉から、エレンは不安と焦りに気持ちを支配され………

 

 

「くっ……中でいったい何があったと言うのだ………だが今はしのごのと言っていられぬ。無事でいろよ、エール……後ついでに他の面々」

 

 

走り出し、城内に入って行くエレン。

 

そして当然ながらそこで得た情報はテンドウがオブシディアンに身体を奪われた事と頂点王の死。デジタルスピリットの三王がいない事もあり、結果として彼は三王頂点王の中で唯一の生還者となってしまうのだった。

 

さらにそのおよそ1時間後、王国は前代未聞の大豪雨に苛まれる事となる。それはまるで頂点王シイナの死を世界が悲しみ、涙しているかの如く………

 

 












最後までお読みくださり、ありがとうございました。

本日で「ライダーハンターズ篇」は最終回です。
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