王国の頂点王シイナ・メザの死を悲しむように豪雨を降らし続ける世界。そんな中、遂に疲労困憊から目覚めたアスラは無我夢中で母である彼女を探しに向かったのだが…………
その道中、都立の図書館で知り合った仮面ライダーウィザードを使用する不気味な狐の面を被った男性『仮面Z』と再会して………
「Zのおっちゃん……なんでこんなとこに」
「質問の答えになっていないよアスラ。僕は君がどこで何をしようとしていたのかを知りたいんだ」
「ッ……そんなの決まってる!…会いにいくんだ!」
「誰に?」
「シイナ、頂点王に決まってるだろ!!…あの三王塔でオレを待ってるんだ!」
「…………」
アスラがそう言うと、仮面Zは哀れみの表情を彼に向ける。
無理もない。アスラが言っている事は狂言なのだから………
「アスラ。君は一番近くで見ていたのだろう?…三王の1人、テンドウ・ヒロミはオブシディアンの器にされ、頂点王シイナは死んだ……!」
「ッ……死んでねぇ!!…死ぬわけねぇんだシイナは!!……そうだテンドウさん。テンドウさんを助けねぇと。つーかZのおっちゃん、なんで色々詳しいんだよ!!」
「それは秘密。と言うよりアスラ、なぜ君は頂点王シイナが死んだ事を頑なに否定する。君はあの場にいた誰よりも彼女がいなくなった喪失感を味わっていたはずだ」
「……だから、シイナは死ぬわけねぇって………」
「また答えになってないね。そういう時はもうちょっと具体的に根拠のある事を言わないと」
いったい何故このZがこれまでの騒動の一連をある程度把握しているのかはアスラにはわからない。
しかし、この間の穏やかな雰囲気とは違う様子から、このZと言う男はただ者ではない事を密かに悟っていて…………
「そ、そうだ。シイナもきっとテンドウさんみたいにブラックフォースに身体を乗っ取られたんだ!!…だからいないんだ、助けねぇと……オレが……オレが!!」
「落ち着きたまえ、そんなはずないだろ。ブラックフォースは4体、『オニキス』は君が、『オブシディアン』は「テンドウ・ヒロミ」に、『シャーマン』は「フリソデ」に、そして君が異世界で戦った『ヘタマイト』は今「テンドウ・カナ」に取り憑いている」
「な……ウソだろカナさんに!?」
自分達さえも知らない情報を次々と口にする仮面Z。アスラはここでようやくテンドウ・ヒロミの妹カナがブラックフォース、ヘタマイトに取り憑かれている事を耳にする。
「だったら尚更助けにいかねぇと!!…見てろよ、地の果てまで探し出してやる!!」
誰よりも仲間想いであるアスラがこの場で動かないわけがない。すぐさまブラックフォース達を探そうと病み上がりの身体でまた走ろうとするが………
それを仮面Zは許さない。
「君1人で何ができる?……相手は3体のブラックフォース、そして既に半分は黒の力に汚染され、ブラックフォースと同列の存在と化しはじめたウィル。到底君1人で敵う相手ではない事くらい、理解しているはずだ」
「ッ………でもだからって放って置けるわけねぇだろ!!…それにオレの中には同じブラックフォースのオニキスがいるんだ!!…またアイツの力を借りて」
「借りたらまた大事なモノを失うよ?」
「ッ………!」
「黒の力とはそう言うモノだ。人間がその力を借りれば、それ相応の代償が付き纏う……だから頂点王シイナも死んでしまったんじゃないのかい?……彼女は君にとって大事な目標である前に、母親だったのだから」
この男はいったいどこまで知っているのか…………
ブラックフォース達との契約の最中必ず言われる代償の言葉をまたアスラは思い出す。そしてシイナが死んだあの瞬間も…………
違う。違うんだ…………
「違うんだ!!…シイナはまだ生きてる!!…オレは何も失っちゃいねぇ!!」
「強がるね。そんな現実逃避をしても彼女が帰ってくる事はないのに」
「うるせぇッ!!…だから失ってねぇんだ!!……オレは、オレは何も失ってねぇ!!」
「はぁ……どちらにせよそんな不安定な精神状態で戦場に行かせるわけにはいかないな。大の大人としてはね。どうだ、あの時みたいにここは一つバトルで決めないか?」
「!」
「君が勝てばその後は好きにするがいい」
「………あぁ、わかったよ」
手に持つ傘を投げ捨てながらそう告げる仮面Z。今すぐにでも助けに行きたいアスラとて、ここで止まるわけにも行かない。あっさりそのバトルを承諾してみせる。
「ただし、僕が勝ったら僕の言う事を聞くんだね」
「それもわかってる」
「よし、じゃあ始めようか」
お互いにBパッドとデッキを取り出し、バトルの準備を進める。
そして…………
………ゲートオープン、界放!!
3日も続く大豪雨が降り続ける中、意味深な発言をするようになった仮面Zと、頂点王シイナの死であやふやな精神状態となっているアスラの自由を賭けたバトルスピリッツが幕を開ける………
先行は仮面Zだ。アスラに己の愚かさを伝えるべくそのターンを進めていく。
[ターン01]仮面Z
「メインステップ。僕は仮面ライダーウィザードフレイムスタイルを召喚」
ー【仮面ライダーウィザードフレイムスタイル】LV1(1)BP3000
『ヒーヒーヒー!!』の音楽と共に流れ行く赤い魔法陣。その中より魔法を高みに使うライダースピリット、仮面ライダーウィザードフレイムスタイルが出現。
「ウィザードフレイムスタイル召喚時効果。カードを3枚オープンし、その中にある仮面と導魔を持つスピリットカードを手元に置く。じゃあ僕はこの中にある仮面ライダーウィザードハリケーンスタイルを手元に置き、残りは破棄しよう……これでエンドだ」
手札:4
場:【仮面ライダーウィザードフレイムスタイル】LV1
手元:【仮面ライダーウィザードハリケーンスタイル】
バースト:【無】
手慣れた手付きで第1ターンを締める仮面Z。次は唐突にシイナが死に、心に余裕がなくなったアスラ。
目の前に立ちはだかる彼にその晴らせない怒りをぶつけるかの如くターンを進めていく。
[ターン02]アスラ
「メインステップ!!……ドラグノ突撃兵を召喚!」
ー【ドラグノ突撃〈R〉】LV1(1)BP4000
場に現れたのは、強靭な肉体を持つ一体の竜人。巨大な剣を構え、大雨の中今日も攻撃していく…………
「アタックステップ……行けドラグノ突撃兵!!」
「ライフだよ………ッ」
〈ライフ5➡︎4〉仮面Z
名の通り突撃していく突撃兵。手に持つ大剣を振い、仮面Zのライフバリアを1つ砕いてみせる。
そして、まだもう一撃………
「ドラグノ突撃兵【追撃】の効果!…重疲労させてもう一度攻撃!!」
「それもライフだよ……ッ」
〈ライフ4➡︎3〉仮面Z
二度の回復でようやく回復状態になる危険な状態、重疲労状態にする事でもう一度攻撃を可能にする【追撃】………
アスラはドラグノ突撃兵のその効果を使い、もう一点彼のライフを粉砕してみせる。
「どうだZのおっちゃん!…後3つだ!!……ターンエンド!!」
手札:4
場:【ドラグノ突撃兵〈R〉】LV1
バースト:【無】
「………」
相変わらず切羽詰まった様子ではあるが、ライフに差をつけた事で優勢には立った。
アスラはこれでターンを終える。次はアスラの速攻を受けても微動だにとしない仮面Zのターン………それを進めていく。
[ターン03]仮面Z
「メインステップ……僕は前のターンに手元に送ったこのカード、仮面ライダーウィザードハリケーンスタイルを召喚。効果でボイドからコア1つをトラッシュに置くよ」
ー【仮面ライダーウィザードハリケーンスタイル】LV2(3)BP3000
地面に現れた魔法陣を起点に巻き上がる竜巻。その中により緑色の仮面ライダー、ウィザードハリケーンスタイルが出現、効果で仮面Zが使える総合コア数を1つだけ増加させた。
「フレイムスタイルのレベルをアップ………」
「来るか……!!」
ー【仮面ライダーウィザードフレイムスタイル】(1➡︎2)LV1➡︎2
上昇するレベル。如何にも戦闘態勢を整えましたと言わんばかりのその行いにアスラは強烈な反撃が来ると考え身構えるが………
「ターンエンドだ」
「!!」
「何を驚いている、ターンエンドだよ。君のターンだ」
手札:5
場:【仮面ライダーウィザードフレイムスタイル】LV2
【仮面ライダーウィザードハリケーンスタイル】LV2
バースト:【無】
「何でアタックステップでアタックしねぇんだ……まだ様子を伺ってんのか?……まぁいいぜ。そっちがやる気ないのならこっちから行くまでだ!」
「………」
意味深にターンを終える仮面Z。それ以外の宣言に寡黙を貫き通す中、アスラのターンが幕を開ける。
[ターン04]アスラ
「メインステップ!!……行くぜ、仮面ライダー龍騎を召喚!……不足コストはドラグノ突撃兵から確保!!」
「!」
ー【仮面ライダー龍騎】LV1(1)BP5000
様々な鏡像が重なり合い、龍の影を纏う赤きライダースピリット、龍騎が姿をみせる。ただしその召喚の不足コストとしてドラグノ突撃が消滅した。
「強力なドラグノ突撃兵を消してまで無理矢理エースを呼び出したか」
……『やはり、冷静さを欠いているな』と内心で思い至る仮面Z。
実際それは的を射ている。このターン、無理矢理龍騎を召喚する必要はない。ドラグノ突撃兵を消してまで召喚するならまだ他のカードを使った方が遥かにマシ。
無論こんな初歩的なミス、いつものアスラならやるわけがない。
「アタックステップ!!…ぶちかませ龍騎!!」
「ライフで受けよう………ッ」
〈ライフ3➡︎2〉仮面Z
やはりこのターンも攻撃するアスラ。龍騎の炎を纏った熱き拳の一撃が仮面Zのライフをさらに砕いた。
「よし後2点!!…これでターンエンドだ!」
手札:4
場:【仮面ライダー龍騎】LV1
バースト:【無】
勝手に勢いづいているアスラ。そのターンをエンドとする。
[ターン05]仮面Z
「メインステップ………バーストをセット」
「ッ……今度こそ来るか!?」
所謂罠のカードであるバーストを裏向きで伏せる仮面Z。その様子にいよいよ来るかと勘づいたアスラがまた身構える。
しかし………
「アタックステップは何もしない、ターンエンドだ」
「なに!?」
又しても一度もアタックをせずにターンを終えた。アスラのスピリットは全て疲労状態、絶好のチャンスであったはずなのにだ………
ライダースピリットとは言え、低コストのスピリット2体のブロッカーとバースト1枚を残してターンを終えた………
一見やる気のないように見えるこのプレイングに、アスラはとうとうはらわたを煮えくり返す。
「おいアンタ、やる気あんのかよ!!…戦う気がはじめからねぇんだったらそこどけよ!!…早くオレをブラックフォースのとこに……シイナのとこに行かせてくれ!!」
「君は本当に愚かだね」
「なに!?」
「この世に冷静さを欠いたカードバトラー程脆いモノはない。頂点王シイナを目の前で失い、狂ってしまった君など、私の敵じゃない………いつでも倒せるから僕は様子を見ているに過ぎない……!」
「ッ……んだとぉ!!!」
カラーカードを5枚所持するアスラ。いくらソウルコアが使えないとは言え、かなりの実力を有している事は間違いのない事。それは今までの冒険の中でも証明されて来ている………
ただ、焦り、怒り、憎しみ………そして悲しみが今のアスラの判断力、総合的な力を低下させている事に違いはなくて…………
しかし認めない。認めたくない。ここで認めてしまったら『シイナの死を受け入れるのと同義』…………
アスラは仮面Zに向かって怒り狂いながらターンを進めていく。
[ターン06]アスラ
「メインステップ!!…ドラグレッダーを召喚!!…龍騎と合体し、そのままレベル3にアップだ!!」
「!」
ー【仮面ライダー龍騎+ドラグレッダー】LV3(4)BP13000
空間から亀裂が生じ、砕けたかと思えば、その裂け目から赤き龍ドラグレッダーが出現。龍騎の背後で鳥栖を巻き待機する。
龍騎とドラグレッダー。この2体が並んだという事はそれ即ちアスラの本気。
「アタックステップ!!…合体した龍騎でアタック!…その効果でシンボル1つの相手スピリット1体を破壊して2枚ドローする!」
「!」
「オレはウィザードハリケーンスタイルを破壊!!」
ストライクベントのカードをベントインし、龍の頭部を模したガントレットを右腕に装備する龍騎。ドラグレッダーと共にそこから火炎放射を放ち、仮面Zのライダースピリット、ウィザードハリケーンスタイルを焼き尽くしてみせる。
さらにこれだけでは終わらない…………
ミラージュだ。
「スピリットを破壊した事により、龍騎は龍騎サバイブへと転醒!!…さらにドラグレッダーとのミラージュで赫焉纏し最強の姿、龍騎サバイブランザーになる!!」
「来るか……!」
ー【仮面ライダー龍騎サバイブ+ドラグレッダー】LV3(4)BP17000
サバイブのカードをベントインして強化形態サバイブとなる龍騎。さらにそれに共鳴するかの如く、ドラグレッダーは赤き機械龍ドラグランザーに進化。サバイブの上から見に纏う装備として形を変化させていく………
そして現れたのは龍騎サバイブとドラグランザーが一体となった姿、龍騎サバイブランザー。今現在アスラが使うことのできる最強のスピリットである。
「行くぞ転醒アタック時効果で最もBPの低いスピリット、ウィザードフレイムスタイルを破壊!…でもってライフに1点のダメージを与える!」
「!」
「メテオバレットミラージュ!!」
〈ライフ2➡︎1〉仮面Z
両腕が強力な火炎放射器となっている龍騎サバイブランザー。それの最大火力をウィザードフレイムスタイルへと放ち、溢れかえった炎が仮面Zのライフを襲った。
これで彼のライフは残り1つ。アタック中である龍騎サバイブランザーの一撃を受けて仕舞えば終わりである。
だが…………
「不思議なものだ。カードバトラーの精神状況によって、あれだけ強力無比だと感じていた龍騎サバイブランザーもこの程度かと思ってしまうのだから」
「なに……!?」
「ライフ減少によりバースト発動!!……ウィザードオールドラゴン!」
「!」
仮面Zのバトルはそう甘くはない。事前に伏せていたバーストカードが勢いよく反転していく。
「効果でライフ1つを回復し、このターンの間敵スピリット1体のBPをマイナス12000!…龍騎サバイブランザーから力を奪うよ!」
「ッ……龍騎サバイブランザー!?」
〈ライフ1➡︎2〉仮面Z
ー【仮面ライダー龍騎サバイブ+ドラグレッダー】BP17000➡︎5000
バーストの発動と共に瞬時に回復する仮面Zのライフ。そして赤、青、緑、黄の四つのエレメントが場へと解き放たれると、それは龍騎サバイブランザーへと直撃、そのBPを大幅にダウンさせた。
「そしてこの効果発揮後、自身をノーコストで呼ぶ………現れろオールドラゴン!!」
ー【仮面ライダーウィザードオールドラゴン】LV3(3)BP12000
上空から降り立ったのはドラゴンの意匠を持った仮面ライダーウィザードオールドラゴン。その眼光が、翼が、爪が、尾がそれぞれアスラにプレッシャーを与えていく…………
「さぁて、早速で悪いけど、龍騎サバイブランザーはアタック状態……返り討ちにしちゃおうか、オールドラゴン」
「!」
それ即ちブロック宣言。ウィザードオールドラゴンが龍騎サバイブランザーへと向かって飛び立つ。
龍騎サバイブランザーもそれに対抗すべく、背中から炎の翼を出現させ、ウィザードオールドラゴンと衝突していく。
凄まじい速度で何度も上空で激突していく両者。しかし次第に龍騎サバイブランザーが押され始め、オールドラゴンの鋭く大きな鉤爪がその装甲に傷を入れた………
そしてその傷で怯んだ隙を見て、オールドラゴンは龍騎サバイブランザーのさらに上空から、胸部にあるドラゴンの頭部より強力な炎を叩き込む。龍騎サバイブランザーは地面に叩きつけられ、アスラの目の前で爆散してしまう………
その際、合体していたドラグレッダーが逃げ出すように爆炎から飛び出して来た。
「龍騎サバイブランザー!!?」
「他愛もないとは正にこの状況……まさかバーストを無警戒で突っ込んで来るとはね、さぁどうするアスラ?…まだ向かって来るか?」
「ッ………ターンエンドだ……」
手札:6
場:【ドラグレッダー】LV1
バースト:【無】
こんな早いタイミングで龍騎サバイブランザーを失ったのはアスラにとって大きな痛手。歯痒い思いをしながらもこのターンは切る。
次は呆気なく龍騎サバイブランザーを返り討ちにしてしまった仮面Zのターン。アスラをさらに追い詰めるべくそのターンを進めていく。
[ターン07]仮面Z
「メインステップ……ライダーマジック、ウィザードウォータードラゴンの効果を発揮!…その効果でコスト6以下のドラグレッダーを破壊!」
「!」
仮面Zの場より放たれた青き水流の弾丸がドラグレッダーを撃ち落とす。ドラグレッダーは堪らず爆散してしまう。
「さらにオールドラゴンの効果、使用したライダーマジックがスピリットカードの時、コストを支払わずに召喚できる……来るがいい、ウォータードラゴン!」
「ッ……マジックの効果を使った後に召喚!?」
ー【仮面ライダーウィザードウォータードラゴン】LV2(3)BP6000
青き魔法陣の中より出現したのは龍の尾を持つ青いライダースピリット、ウィザードウォータードラゴン。
まるでさっきまで何もしなかったのが嘘のよう………
仮面Zはアスラの攻撃をカウンターしたのちにオールドラゴンとウォータードラゴン。この強力無比な2体を軽々と並べてしまった。
「再びバーストを伏せ、アタックステップ!!……オールドラゴン、ウォータードラゴン……出陣だ!」
「ッ……ライフだ!!……ぐっ!」
〈ライフ5➡︎4➡︎3〉アスラ
重たい腰を上げ、ようやくアスラにまともな攻撃を仕掛けて来る仮面Z。オールドラゴンの巨大な爪の一撃が、ウォータードラゴンの尾がそれぞれ1つずつ彼のライフを砕いてみせた。
「ターンエンド。どうだい?……僕がいつでも倒せると言った意味、理解できたかな?」
手札:5
場:【仮面ライダーウィザードオールドラゴン】LV3
【仮面ライダーウィザードウォータードラゴン】LV2
バースト:【有】
「まだだ……まだオレは負けてねぇ!!」
「いいや。もう君は負けてる……このバトルで僕に勝つ事はできない」
「そんなの、やってみねぇとわかんねぇんだろ!!」
「最後まで諦めない心、執念だけでバトルに勝てると思っているのかい?……確かに君は今までそうやって乗り越えて来たんだろうけど……まぁいい、気が済むまで挑んで来るといいさ」
いつだってアスラは己の夢のために戦って来た。それが例え格上の敵だとしても………
敗北を繰り返しても何度だって這い上がり、最後には勝利を齎した。しかし、それが仮に運が良かっただけだとしたら…………
[ターン08]アスラ
「メインステップ!!……ドラゴンヘッド3体を連続召喚!」
ー【ドラゴンヘッド】LV1(1)BP1000
ー【ドラゴンヘッド】LV1(1)BP1000
ー【ドラゴンヘッド】LV1(1)BP1000
飛び立つのは3体のドラゴンヘッド。コストが必要のない0コストであるこのスピリット達は強力なスピリットを召喚する際の軽減コスト確保には打って付けだ。
アスラはその後手札にあるカードをさらにBパッドに叩きつけ、そのスピリットの名を叫ぶ………
「続けてオマエだ……来い、仮面ライダーリュウガ!!」
「来たか、オニキスの創り上げたスピリット……」
ー【仮面ライダーリュウガ】LV2(3)10000
様々な鏡像が重なり合い出現したのは黒きライダースピリット仮面ライダーリュウガ。
「召喚時効果!!……相手スピリット全てのコアを2つずつリザーブに送る!」
「!」
「これでアンタのスピリット全てはレベル1まで下がる!」
ー【仮面ライダーウィザードオールドラゴン】(3➡︎1)LV3➡︎1
ー【仮面ライダーウィザードウォータードラゴン】(3➡︎1)LV2➡︎1
リュウガは己の背後に黒いドラグレッダーを呼び出す。そしてその黒いドラグレッダーは口内から黒炎の炎を放出。仮面Zの2体のスピリット達はそれに炙られ、体内のコアが2つほど弾け飛び、レベルを下げられてしまう………
「どうだ!!…アタック時効果も使ってこのまま………」
「やはり君は愚かだ」
「!」
「ライダースピリットとは本来、1人につき1枚しか使えないモノだ。君は何故そのリュウガを使えるようになったのかをちゃんと理解しているのかい?」
「そんなの、オレがイセカイで鍛えて貰ったからに決まってるだろ!!…一々オレの全部を否定しようとすんな!!」
リュウガを見たのはおそらくこれが初めてであろう仮面Z。しかし彼の知識は膨大、何故か知らぬ間にリュウガが使えるようになっていたカラクリも知っているようで…………
「否定も何も、僕は事実を話しているに過ぎない……相手スピリットの召喚時発揮後によりバースト発動!!…フェアヴァイレ!!」
「!?」
「この効果で僕が今受けた召喚時効果をそっくりそのまま君の場にお返しするよ……つまり、君のスピリット全てのコアは2つずつリザーブに置かれる!!」
「なんだと!?」
ー【ドラゴンヘッド】(1➡︎0)消滅
ー【ドラゴンヘッド】(1➡︎0)消滅
ー【ドラゴンヘッド】(1➡︎0)消滅
ー【仮面ライダーリュウガ】(3➡︎1)LV2➡︎1
無警戒だったがために又してもバースト効果を受けるアスラ。仮面Zの場にも黒いドラグレッダーが呼び出され、同じように黒炎を放たれる。
しかしその肥大は明らかに仮面Zを上回っている。リュウガは辛うじて生き残るも、3体のドラゴンヘッドは呆気なく消滅してしまった。
「さらにコストを支払い、フラッシュ効果を適用……このターンの間、リュウガのアタックを封じる!」
「ッ……今度はリュウガを!?」
光輪がリュウガを縛る。これではアタック時効果でスピリットを破壊しつつライフを奪う事が物理的にできない。
またしてもたった1枚のバーストカードのせいで攻め手を塞がれてしまった事になる。これは仮面Zが強すぎるからではない。アスラが余りにも無警戒が過ぎる故に起こった、言うなれば事故。
「一度、オニキスが無理矢理君の体から出ようとした時とかなかったかい?」
「オレの体から??………ッ」
「あるんだね」
唐突な質問をする仮面Z。
確かに一度だけある、異世界で………
ブラックフォースのヘタマイトが現れた途端暴走したあの日の事をアスラは忘れない。
「おそらくその時に溢れ出たオニキスの黒い力の欠片が君の身体の表面に残ったんだ。だから今の君は1人でも黒の力を多少なり扱える」
「また意味のわかんねぇ事を……」
「最もその力を使っても僕程度に勝てないんじゃブラックフォースに勝とうなんて無理な話だよね。無策で立ち向かった所で死ぬだけだ。あの頂点王のように……!!」
「ッ……リュウガのレベルを上げてターンエンドだ」
手札:3
場:【仮面ライダーリュウガ】LV3
バースト:【無】
あの時溢れ出ていた黒い力の欠片でリュウガを召喚できるようになったアスラ。しかしそんなモノ理解したところでどうしようもない。シイナを馬鹿にされた怒りを噛み締めながらそのままターンをエンドとした。
[ターン09]仮面Z
「メインステップ……2体のウィザードにコアを追加」
ー【仮面ライダーウィザードオールドラゴン】(1➡︎5)LV1➡︎3
ー【仮面ライダーウィザードウォータードラゴン】(1➡︎4)LV1➡︎2
「アタックステップ……オールドラゴン、ウォータードラゴンで攻撃!!」
透かさず攻撃を仕掛けていく仮面Z。さらにこのタイミングでアスラを追い詰めるべく、手札にあるカードを引き抜いて………
「フラッシュマジック、ストライクウィザード!!…スピリット1体のBPをマイナス12000!…0になったら破壊、対象は当然リュウガだ」
「!!」
ー【仮面ライダーリュウガ】BP12000➡︎0(破壊)
オールドラゴンが上空に飛び立ち、そこから急降下してライダーキックを放つ。それに身体を撃ち抜かれたリュウガは吹き飛ばされ、龍騎同様堪らず爆散してしまう。
「ブロッカーは消えた……2体の攻撃はどうする?」
「ライフで受ける………ぐっ、がぁ!?」
〈ライフ3➡︎2➡︎1〉アスラ
オールドラゴンの巨大な鉤爪、ウォータードラゴンの大きな尾が又してもアスラのライフを1つずつ砕いていく。
その凄まじい猛攻に彼は思わず片膝をついて………
「ぐっ……クソ……ッ!!」
「ターンエンド。…僕は君を甘やかしに来たわけではない。いい加減、頂点王の……いや君の母の死を受け入れたらどうだ?」
「!」
「既にわかっているはずだ。彼女はもうこの世のどこにもいない事を、君の手を離れてしまっていると……現実から目を背けるな」
頂点王シイナは死んだ。この世で最も強いと謳われていたカードバトラーはこの世のどこを探してももう見つかることはない………
それは最早覆しようもない事実。
アスラだってそんな事わかっている………
わかっているのだ………
ー『オマエが弱いからあの女は死んだんだ』
ー『オマエが最初から強ければこんな事にはなってねぇんだよ!!』
そんな時、オニキスに言われた言葉がアスラの頭を過ぎる。雑な説明だが、一番わかりやすい………
あぁ………そうだよ
最初からわかってたんだよ、そんな事………
豪雨の中、アスラは仮面Zにそう言われ、あの戦いでシイナがウィルのスピリットに串刺しにされた事を思い出した。
何故そうなってしまったのか初めから知っているし、考えるまでもない………
オレが………
オレが弱いから、シイナは死んじまったんだろ!?
もう二度と帰って来ないんだろ!?
初めから黒の力に頼らずとも強ければこんな事にはならなかった。ソウルコアよりも遥かに大事なモノを失わずに済んだ…………
世界の終わりの予兆のような大雨が降り注いでいく中、後悔と悔しさ、悲しみが混ざり合った涙が溢れ出て来るアスラ。それはまだ16になったばかりの少年が背負うには余りにも大き過ぎるモノ…………
「………わかっているじゃないか………だったら最後、彼女は君になんて言った?……死の間際、冥土に向かう直前、何を君に残そうとした…!!」
「ッ……最後にシイナが残したモノ……!?」
喝を入れんと叫ぶ仮面Z………
余りにもショックが大き過ぎて忘れかけていたシイナの最後の言葉をアスラは思い出していく…………
ー『そしてアスラ。オマエに言う事はただ1つ………諦めるな。ソウルコアがなかろうがコモンだろうが、オマエは強くなれたじゃないか、きっといつか頂点王にだってなれる……頑張れ。頑張れ』
きっとこのメッセージに深い意味はない。
ただ感じるのはシイナの母親としての愛情。
いつもシイナは彼らの前に立っていた目標だった。いつかシイナみたいな頂点王になるのが夢だった………
そうだ。約束したんだ………
いつか絶対、頂点王になるって………
そうだ!!
オレは昔からそうだ!!
諦めない事しかできねぇ!!
たとえコモンでも、ソウルコアが使えなくても、目指す憧れがいなくなっても…………
オレはいつか頂点王になるんだ!!
それがオレの夢だから!!……シイナに与えられた目標だから!!
アスラは誓う。
結局の所、やる事は変わらない。悲しみを乗り越え、また努力を重ねる事しかアスラにはできない。
そしてその雄叫びは世界の涙を拭うかの如く、3日続いた大雨を晴れ上がらせる。
「行くぜZのおっちゃん!!……オレのターンだ!!」
母親の死と言う大きな悲しみを乗り越え、完全に吹っ切れたアスラ。いつもの様子で意気揚々とターンを進めて行こうとするが………
「フフ……いや、もうその必要はない。その言葉が聞けただけで十分だ」
「!!」
復活したアスラの様子に、仮面Zは口角を小さく上げ、笑顔を浮かべながら徐にBパッドの電源を落とし、バトルを強制的に終了させる。
「世界が変わる瞬間を見た気がした。やはり君はそう言う宿命にある男のようだアスラ」
「??……どゆこと!?……つーかおっちゃんなんで色んな事知ってたんだよ!?……シイナが死んだ事とか、ブラックフォースがどうのこうのとか!!」
「フフ……丁度雨も上がった。少しどこかで休憩しようか……話はそこでやろう」
アスラと言う男の器を再認識し、認め直した様子の仮面Z。図書館の時に見せていた穏やかな表情に戻る。
その後、アスラは仮面Zに連れられるようにオウドウ都のドーナツショップに足を運んだ………
******
「……君、よく食べるね」
「びまんぶぢにがべるだけがべどがないど!!……ばじょるにだっだらがじゃだがもじゃねぇ!!」
「『今のうちに食べるだけ食べておかないと、バトルになったら身体がもたねぇ』と言いたいのかな?」
場所を移しドーナツショップ。ドーナツが大好きなムエとかシイナが来たら喜びそうなこの場所でありったけのドーナツをたいらげていくアスラ。
およそ3日間も寝ていたため、相当腹が減っている事が見て取れる。
そして口に含んだドーナツを全て胃の中に収めると、仮面Zに向かって全力で頭を下げる。
「で……なんか色々あったっすけど、Zのおっちゃん、変な感じになってたオレを無理矢理止めてくれてありがとうな!!」
「あぁ、どうと言う事はないさ。結構荒療治だったけどね、でも元に戻れたようでよかったよ」
「正直、シイナが死んじまった事は悲しい……けど、シイナの言葉はまだオレの中に残ってる……だからオレがいつか頂点王になる!…シイナの代わりに!!……結局、オレがやる事は変わらない、ただガムシャラに強くなるだけだ」
「フフ……そう言う君の人格を作り上げたのが頂点王か。良い母親だね」
お礼と謝罪をするアスラ。さっきまでの自分がどれだけ愚かだったのかを理解し、大いに反省していた。
そしてアスラが笑顔で顔を上げたその直後。
仮面Zは言葉を続けて………
「やはり16年前、まだ赤ん坊だった君とロンを彼女に託して正解だった」
「だろ?……やっぱシイナは良い母ちゃんなんだよ〜〜……って、え?」
彼の意味深な発言にアスラは大いに冷や汗を流し、戸惑いを見せる。
「ちょ、ちょっと待って……え、なに!?……オレとロンをシイナに託した!?……おっちゃんが!?……え、ドユコト!?……そりゃオレとロンは赤ん坊の頃シイナに拾われたけど……え?……え!?」
「ごめんごめん。戸惑うのも無理はないよね。厳密には頂点王シイナ自身も知らない事なんだけど………そうだね、これからの話に説得力を持たせるためにも、僕の正体は知っておいてもらおうか……」
「!?」
そこまで言い出すと、仮面Zはいつもつけていた不気味な形をした狐の面を取り外した。
アスラはこの時、もしかしたら自分の知っている人物が現れるのではないかと冷や冷やしていたが、そんな事はなく、特になんの変哲もない少しイケメンな普通のおじさんだった。
正直ちょっとホッとした。
だが、驚愕するのはこの後であり………
「このお面を人前で外したのは久し振りだな………改めて名乗ろうアスラ。僕の名前はゾン……『ゾン・アーサー』……君の幼馴染みにして最大の好敵手、ロンの実の父親だ」
「…………」
あぁ〜〜なんかミラーワールドに行った時に聞いた事あったな。
成る程、ロンの父ちゃんのゾン・アーサーか〜……ゾンの頭文字がZだから仮面Zって名乗ってたんだな………
ふ〜ん、あのロンの父ちゃんね………
ロンの父ちゃん………
ロンの父ちゃん………
「って……えぇぇぇぇ!?……ロンの父ちゃァァァーん〜〜!?!」
今世紀最大に驚いたアスラ。思わず目玉が飛び出てしまいそうになる程それは衝撃的な内容であった。
無理もない、今目の前にいる仮面Zの正体はあのロンと血の繋がった実の父親『ゾン・アーサー』だったのだから………
「フフ……息子が世話になってるね。君達には色々とお礼も言いたいよ……だが事態は急を要する。君の力が必要なんだアスラ、そのために、君は己の中にいるオニキスと向き合え」
「!?」
「オニキスと真に分かり合えた時、君は代償さえも力に変え、世界をも救える救世主になれる!」
ロンの実の父親であるゾン・アーサー。彼は一体アスラやオニキス達ブラックフォースの何を知っているのか…………
その全貌が明かされる時は近い………
最後までお読みくださり、誠にありがとうございました!!
コラボストーリーズだけでなく、王者の鉄華の方もよろしくお願いします!!
最近では遂にバルバトスとあのデスティニーガンダムが激突!!
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