バトルスピリッツ コラボストーリーズ   作:バナナ 

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60コア「ソウルコアが使えない、その理由」

頂点王であり、母であったシイナの死という現実を受け入れられないアスラ。そんな彼を正気に叩き戻したのは以前都立の図書館で知り合った仮面Zと言う男性。

 

何か多くの事を知っている彼は遂に自分の正体がロンの実の父、ゾン・アーサーである事を明かしたのだった………

 

 

ー………

 

 

「オレが、救世主!?」

「あぁ。私は君とオニキス、2人の力が合わされば他のブラックフォースをも超える力を発揮できると推測している」

 

 

とあるドーナツ屋の人気の少ないベンチにて会話を繰り広げるアスラと仮面Z、もといゾン。どういうわけか、彼はアスラこそがブラックフォースを倒す救世主たる存在であると信じて疑わなくて………

 

 

「ちょ、ちょっと待てよ!!…いきなり救世主だの超える力だのなんだのって言われたってわかんねぇよ!!……オレバカだし!!…もっとこう、わかりやすく説明できない?」

「うん。もちろんそうするよ………先ず、そうだな。あの時君達が借りて行った図書館の本、あるだろ?……大昔のブラックフォースの事が記載されたヤツ」

「あぁ……うん。特に欲しい情報とか書いてなかったってエールが言ってたけど」

 

 

図書館で借りたのは伝記と言うよりかは昔話に近かった。大昔に悪い事をしたブラックフォースが神様に懲らしめられ、別の世界、即ち黒の世界に放り込まれると言うモノ………

 

 

「僕は色んな場所でブラックフォース、黒の世界の事を研究して来た。その結果、本とは微妙に違う本当の歴史、そして新しい情報を得る事ができた」

「!!」

「大まかな話の流れは変わらないが、先ず、ブラックフォースを黒の世界に封印したのは神ではなく、大昔に実在したとある一族」

「一族??……エールのオメガ家みたいな感じか?」

「そうだね。その考え方が非常に近い………因みにその一族の名前は『ギアの一族』……覚えておいてくれ」

「ギア……歯車って意味か?」

「そのギアの一族がブラックフォースを黒の世界に封印、後に黒の世界に赴き、それらを監視していたと言われている」

 

 

何千年も前、ブラックフォース達を黒の世界に追いやったのは神ではなく『ギアの一族』と呼ばれるとある一族。

 

確かによくよく考えれば本当に神など存在するわけがないため、そっちの方がまだ信憑性はある。

 

 

「次に、この世界と黒の世界の関係についてだ。この世界と黒の世界はどうやらどこかに繋ぎ目があるらしく、そこから行き来ができるらしい……まぁ僕も見つけた事はないんだけど」

「ッ……じゃあブラックフォース達はその繋ぎ目を探してこの世界にまた来たって事か!?」

「あぁ、多分ね。ただその繋ぎ目とやらを見つけたとしても、直ぐに世界を渡る事はできない」

「??……な、なんで!?」

「そこでも代償の力が働くからだよ。しかもブラックフォースのそれを遥かに凌ぐね。いくらブラックフォースと言えども片道だけで黒の力の殆どを交通費のように失ってしまう。普通の人間なら持っての他、多分命を落とすだろうね」

 

 

この世界と黒の世界の繋ぎ目。

 

確かに存在するそれであるが、それにもまた代償が付き纏う。その道を通るだけでブラックフォースは大半の力を失い、普通の人間だと命を落とすはめになる。

 

しかし、この時アスラにはある一つの疑問が浮かび上がった………

 

 

「代償………ん?……じゃあさっき言ったそのギアの一族って人達は何を失ったんだ?……黒の世界に行ってブラックフォースを監視してたんだよな?」

 

 

そう。

 

ギアの一族が何を失ったかだ。

 

ブラックフォース達は黒の力の大半を、普通の人間なら命を………

 

いくらブラックフォースを倒せるくらい強かったとは言え、何も失わずに黒の世界に行けるとは考え辛い…………

 

 

「………よくその点に気がついたね………そうだ。失ったんだ、黒の世界に向かう時に、ギアの一族も………」

「お、やっぱそうなんだ……何失ったんすか?…ブラックフォースを倒せる必殺技!!……とかっすかね?」

 

 

呑気な事を言うアスラだが、ゾンは一度呼吸を整え、覚悟を決めたようにアスラに告げていく…………

 

その真実を…………

 

 

「ギアの一族が黒の世界に向かう際に失ったモノ………それは………」

 

 

 

 

 

ソウルコア

 

 

 

 

 

ー!!

 

 

 

ゾンがそれを静かに告げると、アスラは突然背中が震え上がったかつてない程に寒気がした。とてもではないが急に他人事とは思えなくなった………

 

 

「そ、ソウル……コア……だってッ!?」

「ギアの一族はソウルコアを出すと言う人間としての機能を失ってしまったんだ。おそらく、その後の子孫にも遺伝し、大きな影響を及ぼしている。そしてギアの一族は何千年と黒の世界で暮らして来た………無理もないよね、また戻れば次は死ぬかもしれないんだから」

「……………」

 

 

汗が止まらない。心臓の鼓動が加速して鳴り止まない。一言も言葉を話せない………

 

そしてゾンはその真実を口にする…………

 

 

「もう、言うまでもないんだろうけどね………君の本当の名前は『アスラ・ギア』………僕の推測が正しいのなら、君はギアの一族の末裔で、しかもその最後の生き残りだ」

「……オレが……そのギアの一族、大昔にブラックフォースを倒した一族の子孫!?」

 

 

今までアスラは自分だけがソウルコアを使えないと言う現実に疑問に思う事が殆どなかった。それが当たり前、例えそれがなくても強くなってやると必死だった。

 

しかし、無くて当たり前だったのだ。何せアスラはブラックフォースの封印に命を賭け、結果的にソウルコアを無くしてしまったギアの一族だったのだから………

 

 

「ギアの一族には特別な力がある。それは絆を深めた者に進化の力を与えると言うモノだ」

「進化の力!?」

「うん。この旅をして来た1年間、君の周りでカードやデッキの進化は何度起こった?」

「え?……あー……7回?…8回?…9回?……まぁそんなもん」

「本来デッキの進化とは生きている間で一度見れるか見れないかと言った頻度でしか起きない。一年程度でその数は余りにも異常……やはり間違いなく君はギアの一族、他の者達に大きな影響を及ぼしていたんだ」

「!」

 

 

ゾンが言うには、ギアの一族は進化の力を分け与えると言う。

 

エールを始め、ロンやトゥエンティ………アスラと強い関係がある者達は皆進化をして来た。それこそがソウルコアを除き、アスラがギアの一族である何よりの証拠………

 

 

「オブシディアンの手先、ウィルが執拗に君を狙って来たのもオブシディアンが君の力を恐れたからだ。本来、相反する黒の力とギアの一族の力、それが合わさって仕舞えば、どんな強大な力になるかわかったものじゃないからね」

「?……あー、なるほど……だいたいわかったかもしんねぇ……」

「ハッハッハ……3割程度は理解したって感じの顔だね。まぁ君が黒の世界で生まれた存在で、特別な力を持っていたとだけ考えてくれればいいよ」

 

 

色々と凄まじい情報量にアスラは完璧に理解はしていない様子。しかし、しっかりと最重要な情報だけは頭にインプットしてある。

 

それは自分がギアの一族であることと、何で生まれ持ってソウルコアがなかったのか、と言う事。

 

 

「驚いたかい?……急な話でショックだったろ」

「ん?…いや、まぁそりゃビックリはしたけど、何でオレがソウルコア使えないのかをわかっただけでも全然いいし………それに、何にせよ、オレにとっての家族はシイナとロンだから!……そこが変わらなければオレは平気でへっちゃらだ!」

「………フフ、君のような兄弟がいて、息子は幸せだろうな」

「いや〜〜…それ程でも〜〜…つーかオレにとってはおっちゃんがロンの父ちゃんだったって事がよっぽど衝撃的だったっすよ〜〜」

 

 

確かに、衝撃的な内容ではあった。

 

だが、アスラは別に気にしてはおらず、寧ろソウルコアが使えない理由を知れたのを嬉しくさえ思っている。

 

 

「あ、でもまだまだ色々謎があんぞ!?……オニキスの事とか、あとオレがここにいるって事は一度、黒の世界からこの世界に来たって事だよな!?……なんで出入りするだけで何かを失う裂け目をオレはほぼ無傷でたどり着けたんだ!?……え、オレひょっとしてソウルコア以外にもまだ何か失ってる…………ハッ、まさか身長!?!」

「いや、身長がないのは生まれつきだと思うよ」

 

 

アスラの言う通り、この情報だけではこれまで疑問視されて来ていた全ての謎は解決できない。ブラックフォースのオニキスが何故アスラの中にいたのかも謎だし、アスラが無傷で、しかも赤ん坊の姿でこの世界に来れたと言う新しい疑問まで生まれてしまった。

 

 

「僕も全ての過去を知っているわけではない。推測の域を出ないモノもあるしね。詳しくは彼本人から直接聞くとしよう………」

「彼?」

「無論、オニキスだ」

「!!」

「言っただろう。君はオニキスと分かり合えなければならないと」

「で、でもどうやって聞くんだよ!?…オレの中にいるのは知ってるけどアイツ殆ど喋らないっすよ!?」

「そこでこのアンダーワールドを使う」

「!?」

 

 

オニキスと話すと言うゾン。デッキからウィザード専用のネクサスカード「アンダーワールド」を徐に提示する。

 

 

「以前、このネクサスを配置して、君の最も思い出深い所を再現しただろう?」

「おう」

「それは君の心の中、即ちオニキスが棲みついている場所でもある。このカードはかなり特殊でね、その思い出深い場所、つまり君の心の中に向かう事ができる」

「ッ……オレがオレの心の中でオニキスと対面するって事か!?」

「そう。彼が君の肉体を狙っているのは先刻承知ではあるが、しのごのとは言ってられない」

 

 

ウィザード専用のネクサスカード「アンダーワールド」………

 

かつてアスラの生まれ故郷であるスーミ村をバトル中に再現したのは記憶に新しい。使用者の精神の中に向かう事ができる奇怪なアイテムである事が、今ここで判明した。

 

 

「街外れに行こうか。ここから精神世界に向かうにはいささか人が多過ぎる」

「お、おうっす」

 

 

ただでさえ人影はないが、やはり少しでも見られたらダメなのか、立ち上がりながらそう告げるゾン。アスラもそれに釣られて立ち上がり、ドーナツ屋を後にオウドウ都の街外れへと歩みを進めて行った…………

 

そして歩きながら、アスラはもう一つ別途の疑問をゾンに告げて………

 

 

「なぁZのおっちゃん、アンタがロンの父ちゃんだって事、ロンは知ってるのか?」

「いや、知らないだろうね、僕も君以外の人物に正体を明かそうとは思わない。これからも仮面Zを名乗るつもりさ………それにあの子の家族はもう君と頂点王だ。今更あの子を捨てた僕に父親の資格なんてないよ」

「………そんな事ねぇよ。おっちゃんがその気にさえなれば、きっといつか、絶対、家族として話せる時が来るって」

「フフ……君はやはり優しいな」

 

 

そう告げながら再び狐の面を徐に被る仮面Z。如何に理由がどうあれ、その心の奥底ではロンを捨てた事を後悔しているように見える。

 

そして2人はオウドウ都の門を潜り抜け、街の外れ、森の中まで足を踏み入れる。

 

 

「よし誰もいねぇぞ!!…行きましょうオレの心の中!!」

「いや、実はもう1人君の精神世界に連れていきたい人物がいる」

「ん?……もう1人?」

 

 

仮面Zの計画にはもう1人アスラのアンダーワールドに連れていく人物がいると言う。

 

最もあり得そうなのはアスラの幼馴染みで仮面Zの息子であるロンだが、仮面Zの精神衛生的に彼は有り得ない。アスラが誰なのかと考えていると、仮面Zはその人物を呼んだ。

 

 

「出て来たまえ」

「………」

「ん?」

 

 

茂みから姿を現したのは赤い髪に鋭い目付きの青年。歳は精々20半ばと言ったところか。

 

無言で仏頂面で現れた彼の事を、アスラは覚えていて…………

 

 

「あ!!……アンタ確かシエン町の水道公園にいた……罰金の人!!」

「誰が罰金の人だ、金取られたいのか?」

「やっぱ罰金の人じゃねぇですかァァァー!!」

「なんだ君たち知り合いだったのかい?」

「知り合いってもんじゃねぇ、ただの金蔓だ」

 

 

紫のカラーリーダーが住む街シエン町。そこでアスラが一度迷子になった際に出会っていた青年で間違いなかった。

 

 

「彼の名前は『イッカク・アカバネ』……僕の良き協力者さ、性格は結構尖っているが、こう見えてとても頼りになるんだよ」

「アンタから金をたんまりもらいたいだけだ」

「やっぱサイテーだこの人ォォォー!!」

 

 

彼はどう言う立場なのかは定かではないが、この男イッカクは仮面Zの協力者。喋るたびに性格の悪さが露呈していく。

 

 

「……メザシは死んだんだってな」

「??……メザシ?……誰?」

「シイナ・メザ。だからメザシだ……テメェはアイツの息子なんだろ?」

「え、あ、はい!!」

「ヤツはオレの最高のライバルだった。卓越された精神力、カードの腕前、ドローセンス、全てにおいて他のカードバトラーを超越していた。そんなヤツをいつか必ず超えてやろうと思っていた………だがまさかこんなチンチクリンを庇って最後を迎えたとはな、ヤツも結局は弱者か」

「ッ……なんだと!?」

 

 

イッカクの放った言葉がアスラに怒りを募らせ、険悪なムードに包まれる。

 

どうやらイッカクはシイナを昔から知っているようであり、軽くアスラに対して当たっている様子………

 

余程自分の手で彼女をバトルで負かしたかったに違いない………

 

 

「まぁまぁ、そう怒らないよイッカク………」

「オレの怒りを止めるなZ。止めたら3万円の罰金だ………」

「あぁ、後で払っておくよ。君の仕事はこれからだろ?……だったらその怒りはそれまでに取って置くといい」

「仕事?」

 

 

仮面Zがイッカクに任せてある仕事。その意味がわからず首を傾げるアスラだが、そんな折遂に精神世界へと使う時がやって来た………

 

 

「少々ごたついたが、これで役者は揃った。行こうかオニキスの元に」

「おぉ!!……で、どうやって行くんすか?」

「なぁに、簡単さ……こうすればいい」

「!!」

 

 

唐突にアンダーワールドのカードをアスラの額に軽く当てる仮面Z。

 

すると、眩い光が3人を包み込んでいき、やがて3人はこの世界から姿を消した……………

 

 

ー………

 

 

 

******

 

 

 

一方その頃、アスラの幼馴染にして生涯のライバルである少年ロンはとある人物とバトルをしていた。

 

互いに激しい攻防を繰り広げる中、ロンのBパッドから着信音が鳴り始めたため、一度バトルは中断される。

 

 

「すまない」

「いいさ。しばし休憩だ、出なよ」

 

 

対戦相手の金髪の女性から許しをもらい、ロンはその着信に応じる。

 

その相手は…………

 

 

《ロン!!……アンタのとこにアスラはいる!?》

「……なんだエールか。アスラは知らん、と言うか目が覚めたのか?」

 

 

エックスの身分を持つオメガ家の少女エールからであった。妙に切羽詰まった様子である事から、ただ事ではないと認知するロンであるが…………

 

 

《お医者様からアスラが病院から抜け出したって言われたのよ!!…何故か電話にも出ないし………兎に角アンタも探しなさい!!》

 

 

この時、既にアスラは病院を飛び出し、仮面Zと再会、自身の正体を聞かされ、アンダーワールドへと向かったのだ。

 

当然エールの応答に応えられるわけもない。大事な存在であるシイナを失って、アスラまで失うわけにはいかない。そう心配したエールは焦ってロンに着信を入れたのだ………

 

しかしロンは………

 

 

「探す必要はない」

《はぁ!?……何でそうなるわけ!?……きっとアスラはシイナ様を探してるわよ……だってシイナ様はアイツにとって………》

「そんな事、オレの知るアスラならやらない。いなくなったのなら、オレと同じく修行をしているに違いない……アイツはさらに強くなる。だったらオレもそれに合わせて、いや超えれるくらい強くならないといけない。オマエは何をしているエール……そのまま探しているだけじゃ前に進めないぞ」

《!!?!》

 

 

そう告げると、ロンはエールからの着信を切った。アスラの行動を予測した2人だが、正確にはどちらも正解と言える。

 

ただ、結果的にアスラはさらに強くなる道を選んだ。彼の言う通り、前に進み続ける事が最も重要な一手なのだ。ロンにそう言われたエールもきっとそれに気が付けたに違いない…………

 

 

「お、もういいのかい?」

「あぁ、悪かったな。アンタとソイツを待たせて……」

 

 

再び対戦相手に顔を向けるロン。そこには金髪の女性の対戦相手だけではなく、黄金色に輝く三つの首を持つ龍の姿も見受けられた…………

 

 

「別にいいさ。その分、アタイとこのギドラを楽しませてくれればな!!」

「……シイナから貰ったこのカード、オレは必ず使いこなしてみせる……オマエには負けないぞ、アスラ!!」

 

 

その女性の名はイカヅチ。これまで何度かアスラ達と出会って来た強敵である。そんな彼女とそのエースカード、ギドラを相手に、ロンは修行をしていた。

 

全ては己をさらに強くするために…………

 

亡き母であるシイナを超えるために………

 

ロンはシイナの形見とも呼べるそのカードを握りしめ、咆哮を張り上げるギドラに挑み続ける…………

 

 

 

******

 

 

 

 

「ここは………」

「これが君のアンダーワールドだ……と言っても前のバトルで映した情景と何ら変わらないがね」

「………田舎臭いな」

 

 

野原が広がり、そよ風が通り過ぎて行く小さな村。

 

その名はスーミ村。王国の隅っこに存在する事からそう名付けられた最低身分コモンの人間達が住む村。

 

そしてそこにはアスラとロン、シイナが住んでいた小さな木の家も見受けられた。アスラがそれを懐かしそうに眺めていると………

 

 

突然そのドアが開いて…………

 

 

「おいロン!!…オニごっこやろうぜ!」

「2人で鬼ごっことかつまらなさ過ぎるだろ、バカなのかアスラ?」

「誰がバカだァァァーー!!」

 

 

ー!!

 

 

「アレは……オレとロン?」

 

 

その小さな家から飛び出して来た小さな男児は紛う事なきおよそ10年以上前のアスラとロン。昔はよくそうやって2人で遊んでいた事をアスラは思い出す。

 

そして、今アスラが最も会いたいであろう人物もそこにはいて………

 

 

「まぁいいじゃんロン。私を入れて3人でやろう」

「ッ………シイナ……!!」

 

 

アスラのアンダーワールドの中にいたのは他でもない10年以上前のシイナ。今の自分と対して年齢は変わらない年頃である。

 

若いとは言え、死の悲しみを乗り越え、断ち切ったとは言え、生きて、動いているシイナの姿に、アスラは思わずその方向に足が向いてしまうが………

 

 

「いや………ダメだ。止まれよオレの足……アレはシイナだけどシイナじゃねぇだろ……」

 

 

今すぐ母に向かって行きたい気持ちを制御し、その足を止めるアスラ。

 

そうだ。

 

会いに来たのは母ではない…………

 

 

 

ー!!

 

 

突如としてアンダーワールドの時が止まる。

 

さっきまで動いていたシイナや昔の自分達の動きもピタリと止まり、動けるのは現実世界からやって来たアスラ達3人だけとなる。

 

そして、こんな所業ができるのはあの人物しかいない…………

 

 

 

………ゼゼゼ

 

こいつは好都合だ。

 

まさかテメェの方からオレの所に来るなんてな〜〜!!

 

 

ー!!

 

 

乾いた笑い声と共に黒い瘴気がアスラ達の元に集まって行く。そしてその黒い瘴気は一体の人型の生命体へと姿を変える…………

 

背丈はアスラより少し高い程度、赤い瞳、黒い眼球。龍のような尾を持つ驚異的な生命体、ブラックフォースの1人、オニキスが遂に本当の姿でアスラの前に姿を現したのだった…………

 

 

「オニキス………ッ!」

「どんなカラクリでここに来たか知らねぇが、ようやくオレに身体を明け渡す気になったかアリンコ」

「アレがブラックフォース……なんか汚いな。想像以上に」

 

 

初対面のイッカクがそう言葉を漏らす中、今度はアスラが口を開き………

 

 

「……オニキス、オマエに身体を渡すために来たわけじゃねぇぞ。でも、オマエに直接会えたら言っておきたい事はあった………今まで、オレの力になってくれて、ありがとう!!」

「………は?」

 

 

アスラから突然感謝の言葉を告げられ、苛立ったように、戸惑ったように言葉を漏らすオニキス。

 

そのままアスラは言葉を続けて………

 

 

「どんな理由があってオマエがオレの中にいたのかは知らないけど、オレはずっとオマエに助けられて来た!!……だからオレ、本当はオマエにスッゲェありがとうって伝えたかったんだ!!」

「………」

「成る程、君らしいねアスラ」

「メザシの息子って感じがしてオレは気に食わんな」

 

 

おそらく最初は殺人鬼オロチとの対決が最初だったか、その後もミラーワールドで二度、異世界で一度、カラーリーダー戦で一度、と言った具合にアスラは何度も黒の力で死戦を潜り抜けて来た…………

 

オニキスの力なくして、今のアスラは存在しないのだ………

 

 

「馬鹿か。それがテメェの身体を乗っ取ろうとしているヤツに向かって言うセリフかよ」

「おう!!……つーか、オマエの本当の姿ってなんかちんまりとしてんだな。オレの事散々アリンコ呼ばわりしてたくせに」

「そんな事はどうでもいい。身体を渡す気がないなら今すぐオレと戦え……力づくで奪い取ってやる……ッ!!」

「ッ……おい待てよ、オレはオマエとバトルしに来たんじゃない!!」

「そんな事はどうでもいいと言った!!」

 

 

やはり何かしらの復讐のため、オニキスはどうしてもアスラの身体が欲しい様子。己の黒き力を固め、Bパッド上のモノを形成し、それを腕に取り付けた。

 

 

「オニキス……!!」

「やはりそうなってしまったか。仕方ない、戦うんだアスラ……君がやるしかない」

「……おう、わかってる」

 

 

仮面Zにそう言われ、アスラもまた己のBパッドを構える。その後、仮面Zはオニキスに対しても口を開き………

 

 

「バトルをやる前にオニキス、私の事、覚えているかな?」

「あぁ?……あーー成る程、仮面被っててわからなかったが……オマエあの時いた人間か。通りでコイツの頭の中に『ギアの一族』が記憶されていたわけだ」

「えぇ!?…頭の中とか記憶とかって何!?……オマエオレの頭の中覗けるのォォォー!?……怖過ぎだろその設定!?」

 

 

過去に面識があったかのような発言をするオニキスと仮面Zの2人。アスラが別の理由で驚く中、仮面Zは言葉を続けて………

 

 

「オニキス、君は『あの方』の復讐のためにアスラを器とし、龍騎を従え、16年も力を蓄えていたのだろうが、それだけで他のブラックフォースを倒す事はできないよ。何せ、元々彼らの力は君以上な上に、彼らもまた16年力を蓄え続けて来たのだからね」

「……あの方?」

「その程度の力しかない君では犬死するだけ、普通の人間の中でブラックフォースを唯一倒せるかも知れなかった頂点王シイナ・メザももういない。ヤツらを倒すために君は、ギアの一族最後の生き残りである、このアスラと手を取り合うしかないんだ」

「黙れ………オマエ如きにオレが理解されてたまるか、それにオレはもう十分力を蓄えた。他のブラックフォースなど、優に超えている!!」

 

 

とは言っているオニキスではあるものの、実際はまだまだオニキスの力は他のブラックフォースよりも下。

 

一度異世界での戦いで暴走した際に、まだ不完全だったヘタマイトが創り出したヤクーツォークにリュウガが敗北した事が何よりの証拠。実際はただの強がりなのである………

 

だが、彼にも意地がある。もう一歩も引く事はできない………

 

自分の手で他のブラックフォースに殺されたアイツの復讐を果たすまでは、止まる事はできない…………

 

 

「そうだ。オレは、そのためにコイツらを育てて来たんだ………来い!!」

「ッ!?!……龍騎!?……みんな!?」

 

 

オニキスがその手をアスラに向けて翳すと、アスラのデッキの中からカードが4枚程飛び出して行く。

 

それは「仮面ライダー龍騎」「仮面ライダーリュウガ」「ドラグレッダー」「ブラックウォーグレイモン」………どれも黒き力の息がかかったカードばかりがオニキスの手に渡って行く………

 

 

「オマエは龍騎に選ばれていたわけじゃねぇ、コイツに選ばれていたのは、このオレだ!!」

「!!」

「あの日、あの時、あの瞬間………オレが龍騎を呼び寄せた。何せ、オレのカードだったからな!!」

 

 

思い出すあの日、あの時、あの瞬間。

 

スーミ村を旅立つ半年ほど前にモスラ使いの盗賊、クサリと戦った事をアスラは決して忘れてはいない。あの時、龍騎が自分の所に現れた原因は他でもないこのオニキスだと言う………

 

普通であれば、龍騎が自分のカードではない事を受け、ショックを受けた表情を見せてしまうだろうが………

 

アスラはそんな事はなかった。寧ろ笑ってみせ………

 

 

「へへ……そっか、あの時もオマエが助けてくれてたんだな」

「ッ………オマエの顔は、本当に腹立たしい………オレの前で、笑うな……!!」

「笑うさ!!……だってオレは、オマエと死ぬ程仲良くなりてぇからな!!」

「だったら死なせてやるよ!!……そして必ず、オマエの身体を奪い取る!!」

 

 

譲れない想いがあり、叫び合う両者。

 

アスラは龍騎もリュウガもブラックウォーグレイモンも欠けてしまったデッキをBパッドにセットし、バトルの準備を終える。

 

そして遂に…………

 

 

………ゲートオープン、界放!!

 

 

アスラのアンダーワールドの中にて、アスラ自身とオニキス。2人のバトルスピリッツがコールと共に幕を開けた。

 

先行はオニキスだ。アスラの身体を奪い取るべく、そのターンを進めて行く…………

 

 

[ターン01]オニキス

 

 

「メインステップ!!…犀ボーグを召喚、召喚時効果でボイドからコア1つを自身に追加」

 

 

ー【犀ボーグ〈R〉】LV2(2)BP5000

 

 

その姿、明らかに機械化されたサイ。犀ボーグを召喚してコアを増やして行く中、アスラはオニキスにあるモノが欠けている事に気がついた。

 

……それは自分にもないモノであり………

 

 

「オマエもソウルコア、使えないんだな………」

 

 

そう。

 

赤く、大きなコア、ソウルコアがないのだ。アスラは生まれて初めて自分以外にソウルコアが使えない者と対面した事になる。

 

 

「ここはオマエの中だからな。必然的にオレもソウルコアは使えなくなるんだよ」

「………なんでオレだったんだ?」

「あぁ?」

「なんでソウルコアが使えないオレの中に入ったんだ?……探せば強いヤツなんていくらでもいたのに……なんでオレなんかの中に入ったんだ?」

 

 

確かにそうだ。

 

幾らアスラがギアの一族の末裔とは言っても、当時はまだ赤ん坊だった上にソウルコアが使えないのも確定。普通に考えたらオニキスにとって、アスラの中に入るメリットはない。

 

ただ、それはオニキスの過去に由来するモノであって…………

 

 

「ターンエンドだ。早くしろ」

手札:4

場:【犀ボーグ〈R〉】LV2

バースト:【無】

 

 

質問には答えず、そのままターンをエンドとするブラックフォース、オニキス。

 

次はアスラのターンが始まる。

 

 

[ターン02]アスラ

 

 

「メインステップ……マジック、フェイタルドロー!…その効果でオレはデッキから2枚ドロー!……さらにバーストを伏せてターンエンドだ」

手札:5

バースト:【有】

 

 

バーストは伏せたものの、スピリットは召喚せず、マジックの手札増加のみでそのターンを終えたアスラ。

 

すぐさまオニキスにターンが渡る。

 

 

[ターン03]オニキス

 

 

「メインステップ……2体目の犀ボーグを召喚。再びコアを追加し、そのままレベル2にアップ」

 

 

ー【犀ボーグ〈R〉】LV2(2)BP5000

 

 

2体目の犀ボーグが姿を見せると、またもやコアブースト。着実に決着までの準備を進めて行く………

 

 

「ターンエンド」

手札:4

場:【犀ボーグ〈R〉】LV2

【犀ボーグ〈R〉】LV2

バースト:【無】

 

 

このターンも攻撃は無し、オニキスはそのターンを終える。

 

そんな彼の行動を疑問視したのは、他でもないイッカク………

 

 

「エンド?……アタックはしないのか?」

「アスラのコアが溜まるのを警戒してるんじゃないか?」

「アレだけ張り切っていた割には大人しいと思っただけだ」

「……確かにね、やはりアスラを攻撃するのに若干躊躇いがあるのかもしれない」

「??…どう言う事だ」

 

 

気性が荒い割にはプレイングが大人しいオニキスに疑問を抱くイッカク。しかし、その理由を仮面Zは知っているようで………

 

何はともあれ、次はアスラのターンだ。負けじとターンシークエンスを進めて行く。

 

 

[ターン04]アスラ

 

 

「メインステップ!!……ドラゴンヘッド、シャムシーザー、ドラグノ突撃兵を召喚!!」

 

 

ー【ドラゴンヘッド】LV1(1)BP1000

 

ー【シャムシーザー】LV1(1)BP2000

 

ー【ドラグノ突撃兵〈R〉】LV2(3)BP6000

 

 

アスラのバトルにおいて、いつものメンバーが大集結していく。

 

「龍騎がいなくても、コイツらがいる」……そう言わんばかりにアスラはメインステップを終え、アタックステップへと突き進む………

 

 

「アタックステップ!!……ドラグノ突撃兵でアタック!!…効果で1枚ドロー!」

「ライフで受ける!!」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉オニキス

 

 

このバトル、先に先制点を与えたのはアスラ。ドラグノ突撃兵が大剣を振り下ろし、そのライフバリアを1つ砕いた。

 

さらにまだ、ドラグノ突撃兵は動けて………

 

 

「ドラグノ突撃兵【追撃】の効果、重疲労状態にして、もう一度攻撃だ!…カードをドロー!」

「それも受ける!!……ッ」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉オニキス

 

 

ドラグノ突撃兵二撃目の攻撃がオニキスを襲う。そのライフを半数近くまで削られた。

 

 

「よし!!…これでターンエンド!!…どうだオニキス、龍騎がいなくてもオレは強いぜ!」

手札:5

場:【ドラゴンヘッド】LV1

【シャムシーザー】LV1

【ドラグノ突撃兵〈R〉】LV2

バースト:【有】

 

 

速攻により勢いついて来たアスラ。龍騎がデッキからなくなっても、異世界での経験により、ある程度は戦えるのだ。

 

それ程までにアスラはカードバトラーとして強くなっていると言える。

 

 

「テメェ単体の強さなんてたかが知れてる……その程度だからオマエは大事なモノを失ったんだ……」

「知ってる!…だから、そうならないためにオマエと力を合わせたいんだ!!」

 

 

言い合いになる中、オニキスは巡って来た己のターンを進行させていく。

 

全ては復讐のためだ。

 

 

[ターン05]オニキス

 

 

「メインステップ……来い、仮面ライダー龍騎!!」

「!!」

 

 

ー【仮面ライダー龍騎】LV2(3)BP8000

 

 

様々な鏡像が重なり合い、龍の影を纏う赤きライダースピリット、仮面ライダー龍騎が場へと、アスラの目の前に出現した………

 

 

「不足コストは犀ボーグ1体のレベルを1に下げて確保……このターンだ、このターンからオレはオマエを攻撃する……!!」

「あぁ、どんと来い!!……とことん楽しもうぜ!!」

 

 

自分のエースを前にすると言う確実に不利な状況の中、アスラはまたしても笑ってみせる。

 

その笑顔がオニキスの過去に突き刺さり、より怒りに火を付けさせる…………

 

 

「………だから笑うなっつってんだろうが……!!」

 

 

 

 

オレに………

 

オレにあの日の事を思い出させるな………!!

 

 

 

 

内心でそう叫ぶと、オニキスは一瞬にして思い出してしまった。あの時の思い出を…………

 

悲しみ、怒り、憎悪を………

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

オレはいつ、どうやって、誰から生まれたのか分からなかった…………

 

ただ目の前にはいつも他のブラックフォース共がいて、ソイツらと一緒に破壊の限りを尽くして来た。

 

その日々は正直楽しかった。泣き叫んで逃げて行く人間の姿を見るのが、何より至福だった。

 

 

ギアの一族に黒の世界へと幽閉されるまでは…………

 

 

その後はとある遺跡の奥で手足を縛られ、生き地獄を見続ける日々、暇だから数を数えていた。それはそれはもう、呆れるくれぇ長い数字になっていったよ。

 

他のブラックフォースは別の場所に幽閉されたみたいで、喋る相手もいなかった。この時のオレは、兎に角退屈だったんだ…………

 

そんなオレが数えるのをやめようと思ったある日の事………

 

ソイツはノコノコとやって来た…………

 

 

「おぉ〜〜!!…これが伝説のブラックフォース!!……物騒な見た目なのは噂通りだけど意外と小さいのね」

「………誰だテメェ」

「喋ったァァァー!!!」

 

 

やけにテンションの高い女だった。汚ねぇ灰色の髪色で、今の時代で言うところの、ショートヘアっつー髪型…………

 

だがソイツがこのオレの運命を大きく変えちまうなんて、この時はまだ思ってもいなかった…………

 

 

「あ。先ずは自己紹介しないと……オレ、キョーラ!!……『キョーラ・ギア』!!……こう見えて絶賛妊娠1ヶ月です!!」

「…………」

 

 

その女の第一印象は兎に角『バカそう』『アホそう』………それに限った。

 

 

 





******


最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

いつも通り、鉄華団のカードが主役の「王者の鉄華」の方もよろしくお願いします!!
https://syosetu.org/novel/250009/
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