人間の精神世界「アンダーワールド」………
身分がエックスであろうとも、コモンであろうともどんな人間の中にでも存在する世界の事で、奇跡のライダースピリットウィザードの力でのみ出入りする事ができる。
そして、今、この瞬間………
そのアンダーワールドにて、互いの命を賭けたバトルスピリッツが幕を閉じる。
1人の少年が召喚した白い騎士型のデジタルスピリットが槍を用いてブラックフォースの1人、オニキスの最後のライフバリアを貫いてみせたのだ………
ー………
「ハァッ……ハァッ………オレの勝ちだ、オニキス!!」
「………」
最後に場に残ったデュークモンと龍騎サバイブがバトルの終了に伴い消滅して行く。息も吐く間もなく激しいバトルを制したのはスーミ村のアスラだ。
ソウルコアが使えない身でブラックフォース、オニキスをバトルスピリッツで負かして見せたのだ………
「何故だ………」
「?」
「何故オマエはオレより強い?……いや強くなった!?……あのソウルコアが使えず、あんなに弱かったオマエが何故、オレを倒せるくらいにまで成長できた!?」
バトルダメージにより疲弊し、片膝をつきながらアスラに向かってそう叫ぶオニキス。
彼が幼い頃からその中にひっそりと棲んでいたオニキス。ソウルコアを失っているギアの一族であるアスラが何故ここまで強くなれたのかに疑問を抱く………
しかし、その謎、本当はオニキス自身も理解していて………
「ずっとオレの中にいたオマエならわかるだろ……!」
「!」
「確かにオレは弱かった。コモンだから強いカードもなかったし、生まれた時からソウルコアが使えなかったし、兎に角何もなかった!……でも龍騎がオレのデッキに宿って、頂点王を目指す旅をしてから色んな人達から色んな大事なモンを貰った!…巡り、回って来た出会いは、オレをどんどん強くさせてくれた!」
アスラの頭の中に浮かんで来るのはずっと一緒に旅をして来たエールやムエを始め、カラーリーダーや三王、イユ、トゥエンティに加えて仮面Z頂点王シイナ、そして最大のライバルにして最高の幼馴染ロン………
ソウルコアがない自分を受け入れてくれた彼らとの出会いが、紡がれて行く絆の力が自分を強くしたのだとアスラは自覚していた。
「強さってーのは自分1人で作るモンじゃねぇ。みんなと一緒に作るモンだ………んでもって、そのみんなの中にオマエも入ってるんだぜオニキス!」
「!」
「オマエの過去に何があったのかをオレは知らねぇ……けどオレの中ではもうとっくにオマエも仲間なんだ!!」
大昔に殺戮を繰り返した怪物ブラックフォースの1人「オニキス」を「仲間」と呼称するアスラ。
その姿がアスラの実の母、オニキスの親友だったキョーラと重なるが、オニキスはそれを否定するように歯を噛み締め…………
「ッ……ざけんな……仲間だと!?…オレは……黒き力の代償でオマエの母親を殺した……こんなヤツが仲間?……とんだお人好しだな!!」
「あぁお人好しさ!!…でもオレはオマエがシイナを殺しただなんてこれっぽっちも思っちゃいねぇ!!…んな不確定要素、オレは絶対信じねぇからな!!」
「な!?」
「オマエがオレの事をどう思おうがかまわねぇ、でもオレは何度でも言うぞオニキス………オマエはオレの仲間だし、オマエの仲間はこのオレだ!!…絶対に裏切ったり見捨てたりしねぇ……オマエがオレに、そうしたように!!」
「ッ………!」
………あぁキョーラ………
………やっぱりコイツはオマエの息子だよ。信じられねぇくらいバカだ……
真っ直ぐな眼差しでオニキスに告げるアスラ。彼の事を誰よりも知り尽くしているオニキスはそれがウソではない事を理解する。そして彼がキョーラの息子である事を再度認識すると…………
ニヤリと口角が上がって………
「ゼゼゼ………呆れたよ、とんだ大バカヤロウがいたモンだ……このオレを、ブラックフォースのこのオレを仲間だの信じるだの戯言を口にするとはな」
「へっ……おうそうだぜオニキス!…何度だって言ってやる、オレとオマエは一心同体の仲間で、友達だ!」
「……仕方ねぇ。乗ってやるよ、賭けてやるよオマエに………ただし負けたら承知しないからな」
「あぁ!……オレはもう絶対に負けない!!……だって頂点王になるからな!!」
喋りながら距離を詰め合う2人。そして近づくと、遂に2人は握手を交わした………
人間とブラックフォース、決して相容れない存在である2つの種族に絆が生まれた決定的な瞬間であった…………
その瞬間に立ち会った仮面Zとイッカク・アカバネ。仮面Zは狐の面越しでもわかるように嬉しそうに口角を上げ、逆にイッカクはどこか不服そうに、それでいてつまらなそうに口を歪ませていた。
「アスラは凄いねイッカク。たとえ大昔の怪物、ブラックフォースでも、自分の仲間や友達にしてしまう……きっとあの子こそ、王の器を持つ者なんだろうね」
「………いや、あんなヤツは王じゃない………王は………ヤツだけだ」
イッカクはそこまで言い切ると、アスラとオニキスの元まで歩みを進めた。
そして…………
「オマエに休む暇はないぞチビ助、今度はこのオレ、イッカク・アカバネと戦え」
「!?」
「無論、その黒いヤツを身体に入れてな……全力でかかって来い」
アスラにバトルを申し入れた。突然の宣言にアスラとオニキスは目を見開く…………
「ちょ、ちょっと待てよ罰金の人!!…なんでいきなりアンタとバトルしないといけねーんだ!…オレはこうしてオニキスと友達になれたんだ!…このアンダーワールドでやる事はそれだけだろ!?」
「戦う理由ならある………オマエ、5番目のカラーリーダー、カゲミツ・ブゲイに勝ったんだろ?」
「え?……あぁ、うんそうだけど」
「フ……言ってなかったが、オレは6番目、最後となる赤属性のカラーリーダーだ」
「え………えぇぇぇえ!!!?!…アンタが6人目ぇぇえ!?」
「だから今すぐこの場でオレと戦えチンチクリン。6枚目のこのレッドカードが欲しかったらな」
仮面Zの協力者イッカク・アカバネ。その正体はこの国の赤属性のカラーリーダー。アスラが越えるべき壁…………
「その通り。イッカクは赤のカラーリーダー……カラーリーダーは三王や頂点王などが機密にしている情報を唯一耳にできる役職。だからこそ僕は彼を自分の協力者に選んだんだ」
「!!」
「ここからが本番、イッカクと戦うんだアスラ。そのために僕は彼も君のアンダーワールドに連れて来た」
正体を明かしたイッカクに間髪入れずに仮面Zがそう説明した。
そう。彼はカラーリーダーであるイッカクを利用し、三王や頂点王が秘密にしていた情報をその耳に入れていたのだ。
「さぁ。デッキからカードの剣を抜けよチビ助。メザシだったらこのバトルは100%逃げない………それに、そんな怪物と仲良しこよしするだけで強くなった気でいるんじゃねぇ!」
「なに!?……それってどう言う事だよ!!」
「言葉の通りだ……いいからオマエはオレと戦え」
止まらないバトルへの欲求。しかしアスラもバトルを挑まれては逃げるわけにはいかないか、一度デッキとBパッドをセットし直して………
「なんかよくわからんけども……いずれは通らなきゃいけない相手だ……バトルは当然、受ける!!……力を貸してくれるよなオニキス!!」
『あぁ、試されてる感じがしてあまり気乗りはしないがな………』
オニキスがそう告げると、その姿を黒い霊体に変化させ、アスラの中に移動する。その間にオニキスの力である「龍騎」「リュウガ」「ブラックウォーグレイモン」「ドラグレッダー」と言ったカード達がアスラのデッキへと投入されていった。
「おお龍騎にリュウガ!!……ありがとうございまァァァーす!!」
『オマエのデッキはコイツらがいないとクソザコだからな……ゼゼゼ、このバトル、勝つぞアスラ』
「ッ……おう!……これは最後のカラー戦、オマエと一緒ならオレは絶対負けねぇ!!……行くぞオニキス!」
「御託はもういいか?……なら潰してやる、全力でな!」
………ゲートオープン、界放!!
初めて自分を名前で呼んだオニキスと力を合わせ、最後のカラーリーダーであるイッカクに挑むアスラ。コールと共に再び彼のアンダーワールドの中でバトルスピリッツが幕を開けた。
「………見せてもらおうかアスラ、オニキス。ギアの一族とブラックフォース。その決して交わる事がない者達から生まれるであろう救世の力を………」
仮面Zはそのバトルを期待の眼差しで見守る。余程アスラとオニキスが力を合わせた時に発揮できる力が気になるらしい…………
******
一方その頃現実世界。オウドウ都に聳え立つ三王塔の中にて…………
三王の1人、モビルスピリットを操るエレン・オメガはその実の妹であるエール・オメガを相手にバトルスピリッツを行おうとしていた………
「本当にいいのかエールよ。余はバトルにおいて手は抜かんぞ」
「えぇ、お願いしますお兄様………私をうんと叩きのめしてください!!……私もその数だけ這い上がって強くなって見せます!」
ただならぬ気迫でバトルに臨もうとするエール。今の彼女は姉同然だったシイナの損失やアスラへの心配が重なり、とてもではないが精神的にバトルどころではなかった。
しかしそれでも前を向いて強くならなければと思った。
ここで少しでも自分が強くなっておかねばまた誰かを失うかもしれないからだ………
………エール。
強くなったな。まさかたった一年でここまで大きく成長するとは、思ってもいなかったぞ………
内心でそう呟くエレン。実は重度のシスコンである彼、エールの成長を他の誰よりも喜んでいた。だがこれもあのソウルコアが使えない少年のお陰かと思えば少しやるせないが…………
「行くぞエール!!…強くなり、テンドウをブラックフォースから救い出すぞ!!」
「はい!!」
………ゲートオープン、界放!!
今や2人しかいない三王塔の中で、兄妹である2人のエックスが特訓と言う名のバトルスピリッツを初めて行った…………
******
そして舞台は戻り、ここはアスラの精神世界アンダーワールド。
オニキスと和解し、彼と真の友となったアスラと頂点王シイナのライバルであったと自称する赤のカードバトラーイッカク・アカバネのカラー戦を兼ねたバトルスピリッツが幕を開けた。
先行はアスラだ。オニキス宿るその体でターンシークエンスを進めて行く…………
[ターン01]アスラ
「メインステップ!…ネクサス、燃えさかる戦場を配置!…これでターンエンドだ!」
ー【燃えさかる戦場〈R〉】LV1
自分のアタックステップ中にスピリットのBPをアップできるネクサスカード、燃えさかる戦場の配置のみでこのターンを終え、赤のカラーリーダー、イッカクの様子を伺う。
[ターン02]イッカク
「メインステップ……オマエのアンダーワールドでバトルするのはいささか気分が悪い、一度このカードでオレ色に変えてやるよ………マジック、宇宙世紀憲章!」
「!」
「効果でデッキから2枚のカードをドローし、その後このカードを自分のフィールドに置く」
イッカクが発揮したのは赤のマジックカード宇宙世紀憲章。効果でイッカクにカードをドローさせた後にこの場を星々が輝く暗がりの宇宙へと塗り替えて行く………
「うぉぉぉお!!…宇宙だァァァー!!…生まれて初めて来たァァァー!!……あ、つーか空気がァァァー!!」
『バカかテメェ。そこまで再現できるわけねぇだろ」
「あ、本当だ。息できる」
一瞬焦るアスラだったが、体の中にいるオニキスにそう言われ冷静さを取り戻す。
「宇宙世紀憲章が場に存在する限り、お互いターンに一回、創界神ネクサスの上に1個ずつしかコアを置けない………ターンエンドだ」
手札:6
場:【宇宙世紀憲章】
バースト:【無】
バトルの舞台を緑豊かな場所から宇宙へと切り替えたイッカク。一度このターンはエンドとし、アスラにターンを渡した。
[ターン03]アスラ
「メインステップ!!…っしゃぁ、ガンガン行くぜ!!…シャムシーザー、ドラグノ突撃兵!!」
ー【シャムシーザー】LV1(1)BP2000
ー【ドラグノ突撃兵〈R〉】LV2(3)BP6000
背中に幾千ものトゲを生やした赤いトカゲのようなスピリットシャムシーザーと大剣を握る竜戦士ドラグノ突撃兵がアスラの場に出現。
これらのスピリットがアスラのやる事は速攻のみ………
「アタックステップ!!…シャムシーザーとドラグノ突撃兵2体で攻撃!!…ドラグノ突撃兵は【追撃】で二度攻撃でき、さらにアタックするたびににカードをドロー!!」
走りゆくシャムシーザーとドラグノ突撃兵。重疲労する事で2回アタックできるドラグノ突撃兵、そのアタック時効果でアスラに2枚のカードを齎す。
そして前のターンにスピリットを召喚しなかった赤のカラーリーダーイッカクはこれをライフで受ける以外の選択肢はなくて…………
「全てライフで受けてやる……ぐっ」
〈ライフ5➡︎4➡︎3➡︎2〉イッカク
シャムシーザーの体当たりで1つ、ドラグノ突撃兵の振るった大剣で2つ、イッカクのライフバリアは砕け散り、残り2つとなる。
いくら最後にして最強のカラーリーダーと言えども、いきなり3点のダメージは応えたか、少しだけ仰反る。
「よし、大ダメージ!!……ターンエンド!」
手札:5
場:【シャムシーザー】LV1
【ドラグノ突撃兵〈R〉】LV2
【燃えさかる戦場〈R〉】LV1
バースト:【無】
ライフを大幅に減らし、一気に優勢に立つアスラ。仰反ったイッカクを目にするなり、確かな手応えを感じ、一度そのターンをエンドとする。
だがイッカクはその後、何事もなかったかのように淡々と巡って来たターンを進めて行って………
[ターン04]イッカク
「メインステップ……龍が支配する地、転醒ネクサス赤の世界を配置」
「ッ……赤の世界!?」
ー【赤の世界】LV1
メインステップの開始直後、イッカクが背後に配置したのは龍の頭部の形をした山々が聳え立つ赤の世界。
その圧倒的な威圧感はアスラにこれまでのネクサスとは違う事を察知させる。
「赤の世界は転醒エックスレア。他の転醒カードとは訳が違うぞ………配置時効果で相手の場に存在する最もBPの低いスピリット1体を破壊する、シャムシーザーを焼く」
「!!」
登場するなり大噴火を起こす赤の世界の山々。それによって押し出された岩石がアスラの場に存在するシャムシーザーの上に落下。潰されて堪らず爆散してしまう。
「さらにジンライドラゴンを2体、LV1で連続召喚し、バーストをセット。ターンエンド」
手札:3
場:【ジンライドラゴン】LV1
【ジンライドラゴン】LV1
【赤の世界】LV1
バースト:【有】
甲冑を見に纏う一角の頭角を備えたジンライドラゴン。
本来であれば攻撃的な効果を持つスピリットではあるが、今回もアタックはせず、呼び出した2体をブロッカーとして残してそのターンをイッカクは終える。
ここまで攻撃をしても全く反撃しない彼に、アスラとオニキスは少々の疑問を抱く。
「殴って来ない……!?」
『妙だな………気をつけろよ』
「おう!!」
心の中でオニキスと軽くコミュニケーションを交わしつつ、アスラはターンを進めていく。
[ターン05]アスラ
「ドローステップ……ドロー!!………ッ」
『引いたか!!』
「あぁオニキス!!…オマエがオレに託してくれた力だ!!…このバトル、コイツで一気に決めるぜ!!」
ドローステップでドローしたカードに共鳴する2人。そしてアスラはそのドローしたカードを颯爽とBパッドに叩きつける。
そのカードは最早2人を象徴するカードと言っても過言ではないモノであって………
「メインステップ!!……2体目のシャムシーザーを召喚!!……さらにソイツから不足コストを借り、消滅させ………来い、黒きを纏いし仮面ライダーリュウガ!!」
ー【仮面ライダーリュウガ】LV1(1)BP6000
2体目のシャムシーザーは直ぐに呼び出され、消滅されてしまうが、それと引き換えに様々な胸像が重なり合い、黒きライダースピリット、リュウガがその姿を見せる。
「黒いライダースピリットか」
「召喚時効果、相手スピリット全てのコアを2つずつリザーブに送り、消滅したカードの数だけデッキからドローする!!」
ー【ジンライドラゴン】LV1(消滅)
ー【ジンライドラゴン】LV1(消滅)
登場するなり仮面の奥に潜める黒い眼差しを2体のジンライドラゴンに向けるリュウガ。そうすると、ジンライドラゴン達はたちまち体内のコアが弾き出され、消滅に陥ってしまう。
「これで邪魔なブロッカーは消えた!!……バーストをセットして、アタックステップ!!……リュウガ!!」
勝利への道筋を邪魔立てするスピリットは最早イッカクの場にはいない。リュウガにアタックの指示を送るアスラ………
しかし………
「攻撃はライフで受ける……チィッ……だがライフ減少によりバースト、絶甲氷盾!!…ライフ1つを回復し、その後コストを支払う事でアタックステップを強制終了」
「!!」
〈ライフ2➡︎1➡︎2〉イッカク
あのカラーリーダーが何も手を打っていない訳がなかった。リュウガが黒い炎を纏わせた拳による一撃で彼のライフを砕くと、すぐさまそれを再生、さらにその後の効果でアスラのターンを強制的に終了させて見せた…………
「クソ……やっぱそう簡単にはいかねぇか、ターンエンド」
手札:4
場:【仮面ライダーリュウガ】LV1
【ドラグノ突撃兵〈R〉】LV1
【燃えさかる戦場〈R〉】LV1
バースト:【有】
「……オマエ達の力はこの程度か?……これならまだもう1人の息子の方がマシだったぞ」
「なに!?」
自分のターンが巡ってくる直後、アスラとオニキスを鋭い目つきで睨み、煽り始めるイッカク。おそらく、ここで言うもう1人の息子と言うのはアスラと同じく育ての母にシイナを持つロンの事だろう。
ロンは現時点で全てのカラーカードを獲得しているため、このイッカクを既に倒しているのだ。
「あの黒くて気持ち悪いヤツと仲良くなっていったい何が変わった?……今までのオマエのどこが強くなった?」
「!!」
「使うカードはほぼ変わらず戦略は一辺倒の速攻のみ。これでバケモノじみた強さを持つ相手と戦う?…頂点王になる?……片腹が痛すぎる」
「ぐぬぬ……さっきから言わせておけば……こんなんウォーミングアップだ!!……オレ達の本気はこれからなんだよ!!……なぁオニキス?」
とことんアスラとオニキスを否定するイッカク。ムキになるアスラはそんな事はないと体の内に存在する相棒、オニキスに問いかけるが………
『………いや、コイツの言っている事は正しい……事実、オレはさっきから自分の黒の力をオマエの身体に流し込んでいるが、全くデッキが進化をしない』
「なッ……どう言う事だよそれ!?」
リュウガと言いブラックウォーグレイモンと言い、今までアスラのデッキで起こった進化の殆どはオニキスの力によるモノだ。
だが、このバトルが始まって以降、オニキスはアスラに今まで通り力を流し込んでもアスラやそのデッキは全く反応を示さなかった………
これ即ち、アスラのデッキはこれ以上強くならないと言うサインでもあり…………
「………おそらく、オニキスの黒の力で強くなる限界値まで達したんだろうね」
「えぇ!?……なんすかそれ!?…そんなのあるの!?」
「無限に進化を繰り返すデッキなんて存在しない。オニキスの黒の力もブラックフォースとて限界があるだろう」
この状況を鑑みて、仮面Zが憶測で予想した解釈をアスラ達に聞かせる。事実その通りで有り、アスラの今のデッキこそが、オニキスの力の限界である事も同時に示唆している………
しかし………
仮面Zはその後続けて「ただ……」と言葉を付け足し………
「進化ができなくなるわけではないと思う。オニキスは兎も角として、他者との絆の力でデッキを進化させられるギアの一族である君の力はまた別だしね。大丈夫、僕が見込んだ君たちなら、ここから更なる飛躍ができると信じているよ………このバトルはそのためでもある」
「……Zのおっちゃん……」
『フン……上から目線な人間だ。嫌いなタイプだな』
「バカヤロウオニキス!!……オレ達期待されてんだぞ!!……そんな事言ったらダメだろォォォー!!」
『喧しい』
「何をぉ!?…オマエだって人の身体の中でぶつくさ言ってんじゃねぇ!!」
『うるせぇ脳筋バカ』
「誰が脳筋バカだァァァー!!」
まるで漫才のように流れる喧嘩をするアスラとオニキス。これは2人の心の距離がかなり縮まっている何よりの証拠。仮面Z、ゾン・アーサーはそんな2人を見て、必ず何遂げられるだろうと確信するように笑みをこぼした………
ただ、逆に対戦相手であるイッカクには腹立たしいようで………
「喧しくてうるせぇのはテメェら両方だろが………イラッと来るぜ、こんなつまらねぇバトル、さっさと終わらせてやるよ……オレと、オレのスピリットでな……!」
『「!!」』
これまでのカラーリーダー達とはまるで比にならない溢れんばかりの強者のオーラがアスラとオニキスに意識を向けさせる。そしてイッカクはこのバトルを本当に颯爽と終わらせるべく己のターンを進めていって………
[ターン06]イッカク
「メインステップ………可能性の獣、ユニコーンガンダム・ユニコーンモードをLV2で召喚する!!」
「ッ……!」
ー【ユニコーンガンダム[ユニコーンモード]】LV2(5)BP10000
遥か彼方の宇宙より飛来して来たのは一角の頭角を持つ白いモビルスピリット………
その名はユニコーンガンダム。ガンダムの名を関するモビルスピリットの中でも最高位の位置に立つ存在。緑色の眼が捉えた者を全て焼き払わんと輝き出す。
「モビルスピリット!?」
『しかもガンダムの名を持つ最高級のモビルスピリットか……』
「オマエ達2人はコイツを見た。もう生き残れると思うなよ?……召喚時効果、デッキから5枚をオープンし、その中の対象カードを1枚手札に加える……フ」
「!!」
効果によりオープンされたカードを見るなり鼻で笑うイッカク。その中の1枚を手札に加え、残りはデッキの下に戻した。
そして………
6属性の中で最も高い攻撃力を誇る赤属性、そのカラーリーダーであるイッカク・アカバネによる最高火力のアタックステップが幕を開ける事になる…………
「見せてやろう、オマエのデッキがオレのデッキの下位互換だって事をな………アタックステップ!!……出陣せよユニコーンモード!!…さらにこの瞬間、転醒ネクサス、赤の世界の【転醒】を発揮!!」
「ッ……このタイミングで転醒!?」
「コスト5以上の赤スピリットのアタック、それが赤の世界の転醒条件、そしてコイツは裏返れば竜の中の竜となる!!……来い、赤き神龍皇!!」
ー【赤き神龍皇】LV1(1S)BP6000
龍の形をした山が大噴火を起こすと、その中より翼を丸めながらゆっくりと飛び出して行く存在が1体………
それは翼を広げると、世界をも震撼させる程の咆哮を放ちながらこの宇宙のバトルゾーンへと降り立った。その名は赤き神龍皇。正しく竜の中の竜。
「赤い、ドラゴン……か、カッケェ!!…なんつーかっこよさだよ、反則だろ!!」
「……ウザ」
誰がどう見てもバトルの流れが代わり、劣勢に立たされたこの状況。ピンチである事を自覚しながらも、赤属性の使い手であるアスラは赤き神龍皇の姿を見るなり、見惚れ、目をギラギラと輝かせながら感動の声を上げる。その様子に腹を立てたイッカクは舌打ち。
『おい、喜んでる場合じゃねぇぞバカチビ……コイツは多分やべー……』
「あぁ、そいつの言う通りだ。オマエ達は思い知る……力の差をな!!……赤き神龍皇の転醒時効果、BP10000以下のスピリット1体を破壊する。ドラグノ突撃兵を焼却!!」
「!!」
赤き神龍皇が登場するなり口内から渦巻く炎を放出。それに呑み込まれたドラグノ突撃兵はたちまち爆散してしまった。
これだけでも赤き神龍皇は十分強い。
だが、この転醒スピリットの本領を発揮するタイミングはここではなくて………
「さらに赤き神龍皇のもう一つの効果、永続的にコスト5以上の赤スピリット全てに赤のシンボルを1つずつ追加する!!」
「なに!?……じゃあそのメチャクチャイケてるドラゴンだけじゃなくて、今アタック中のモビルスピリットにも赤のシンボルが1個追加されてるって事か!?」
「あぁ。オマエにしては察しがいいな……そしてこの状況でオレの愛機、ユニコーンは真価を発揮できる!!……ユニコーンモード効果発揮!!…【NTD】!!!」
「ッーー!?」
赤き神龍皇の効果で赤のシンボルが1つ追加され、ダブルシンボルになった途端、装甲の隙間から赤い光が飛び出して行くユニコーンガンダム。これこそ正にNTD。
ユニコーンガンダムが覚醒する直前の様子である………
「【NTD】はフィールドにダブルシンボル以上のスピリットがいる時、このユニコーンモードを手札にあるデストロイモードと回復状態で入れ替える!!……解き放て真の姿!!…ユニコーンガンダム・デストロイモード!!」
ー【ユニコーンガンダム[デストロイモード]】LV3(5)BP16000
覚醒を始めるユニコーンガンダム。装甲が開いていき、赤い光が剥き出しになって行く。そして最後に角が開き、ガンダムスピリットの特徴である二本の角を展開。
赤き神龍皇の力を借り、モビルスピリットユニコーンガンダムはユニコーンモードより、真の姿デストロイモードへと覚醒を果たした。
「な、なんかめっちゃゴツくなった……」
「最後にNTD成功時、スピリット1体を問答無用で破壊……くたばれリュウガ!!」
「!!」
デストロイモードは手に持つビーム銃でリユウガを狙い撃ち。リュウガはそれに胸部を貫かれ、凄まじい威力にたちまち爆散してしまった。
これでアスラのスピリットは0。ライフを守ってくれる存在は何一つとして消え去った。
「デストロイモードは元より赤のダブルシンボルのスピリット、赤き神龍皇の効果が加えられ、計3点のアタック!!」
「ッ……ライフだ!!……ぐうっ……うぁぁ!!」
『ぐぉぉぉお!!』
〈ライフ5➡︎2〉アスラ
今度はアスラに向けてビーム銃を放つユニコーンガンダム・デストロイモード。その威力は絶大であり、彼を守るライフバリアは一気に3つ消し飛んだ。
ダメージにより苦しむアスラとオニキスだが、負けじとライフ減少時のバーストカードを勢いよく反転させて行く………
「ライフ減少時のバースト、エクスティンクションウォール!!……バースト効果で減ったライフ分を回復し、その後コストを支払い、このターンのアタックステップを終了させる!!」
「!!」
〈ライフ2➡︎5〉アスラ
「あ、危ねぇ……!」
瞬時にライフを回復させるアスラ。半分以下に陥っていたライフが一気に全快まで戻った。さらにこのターンのアタックステップを終了させる。
だがしかし………
ユニコーンガンダム・デストロイモードの真骨頂はここからであった。
「何勝手にデストロイモードの攻撃を防いだ気になってやがる!!……本当の攻撃はここからだろが!!」
「!!」
「デストロイモードの効果!!…このスピリットのアタック中、相手は効果によりアタックステップを終了できない!!」
「な……!?」
「これによりオマエの使ったエクスティンクションウォールのフラッシュ効果は実質無効……さらにバトル終了時、追加で1点のライフを破壊!」
「ぐっ……!!」
〈ライフ5➡︎4〉アスラ
喜びも束の間。炸裂するユニコーンガンダム・デストロイモードの力。その機体から放たれる赤い光の障壁はアスラの使ったエクスティンクションウォールのフラッシュ効果を無効にし、破棄させた。
さらにアスラの戻ったライフも1つ砕け散る。
そして何を隠そうこのデストロイモード。【NTD】の効果によりアタックを終えても尚、回復状態であって………
「追撃せよデストロイモード!!……3点シンボルのアタック、バトル終了時のバーン効果……これで終わりだ!!」
「!!」
赤きカラーリーダーイッカクの命令を受け、再びビーム銃をアスラに向けるユニコーンガンダム・デストロイモード。防御札と呼べる白マジックのカード効果を飛び越え、アスラのライフを一気に蹴散らす………
『おいバカチビ!!』
「わかってる!!…オレはライフが一度に3つ以上減らされる時、手札にある白マジック、フェイタルダメージコントロールの効果発揮!!」
「!!」
かに見えたが、アスラとオニキスもまだまだ食い下がる。2枚目の防御札のカードを、今度はバーストではなく、手札より切って見せた。
「このカードは自分のライフが一度に3つ以上減らされる時、手札からノーコストで使用できる。その効果はこのターンの間、ライフが減る時、そのダメージ数を1に抑える!!………ぐぅっ!!」
〈ライフ4➡︎3〉アスラ
ビームが直撃する直前。アスラの使ったマジックカードにより、前方に巨大なバリアが出現。それがクッションとなり、ビームの威力が柔和。ダメージが抑えられる。
「チ……だがバトル終了時のバーン効果はしっかり受けてもらう」
「ぐっ!!」
〈ライフ3➡︎2〉アスラ
ユニコーンガンダム・デストロイモードが緑色の眼光を輝かせると同時に又しても砕け散るアスラのライフバリア。これで残りライフは2つ、イッカクと同じラインにされてしまう。
しかし、バトルフィールドに存在するカードの差は歴然。どっちが優勢にあるかは一目瞭然であった。
「………まぁいい。オレはこれでターンエンドだ」
手札:2
場:【赤き神龍皇】LV1
【ユニコーンガンダム[デストロイモード]】LV3
【宇宙世紀憲章】
バースト:【有】
前のターンまで無傷だったアスラを一気に追い詰めたイッカク。赤き神龍皇をブロッカーとして場に残し、そのターンをエンド。
「つ、つえぇ……防御マジックを2枚も使わされた……」
「この程度で驚くな。誰よりも強い力で他者を捻じ伏せる……それが赤属性の本来の資質だ。オマエがオレのユニコーンと赤の世界に驚いていると言う事は、オマエが弱者であると言う証拠だ」
『無茶苦茶言ってくれるぜ……見せつけてやれアスラ。オマエのデッキの底力を!!』
「おうオニキス!!…言われなくともやってやるぜ!!」
オニキスの言葉に背中を押され、目の前の強力なスピリット達を倒さんと、アスラがターンを進めて行く。
[ターン07]アスラ
「メインステップ!!…来い、仮面ライダー龍騎、ドラグレッダー!!」
ー【仮面ライダー龍騎】LV2(5)BP8000
ー【ドラグレッダー】LV1(1)BP6000
様々な鏡像が重なり合い、姿を現したのは赤き龍の影を纏う騎士、仮面ライダー龍騎。さらに左腕にあるバイザーにアドベントのカードをベントインさせ、ミラーモンスター、ドラグレッダーをこの場に呼び寄せた。
「……この布陣は」
ライダースピリット龍騎にその相棒ドラグレッダー。この布陣でイッカクは彼の行動パターンを察する。
「龍騎にドラグレッダーを合体してアタックステップ!!…行け、龍騎!!」
赤き龍、ドラグレッダーが龍騎の背後で鳥栖を巻き、戦闘態勢を取る。そしてこのフラッシュタイミング、アスラはさらにカードを引き抜いて………
「フラッシュマジック、ストライクベント!…効果によりBP6000の赤き神龍皇を破壊して1枚ドロー!!」
「!」
龍騎はストライクベントのカードをベントイン。右手にドラグレッダーの頭部を模したガントレットを装備。そこに炎の力を溜め込む。ドラグレッダー本体もまたその口内に赤々と輝く炎を溜め込んでいく。
準備を終えた龍騎とドラグレッダーは赤き神龍皇目掛け、その火炎放射を放出。赤き神龍皇はたちまち吹き飛ばされてしまう………
「よし!!…スピリットを破壊した事により龍騎の【零転醒】も使える!!…これで一気に……」
……一気に決める。
そう告げようとした直後、それを遮るように効果の発揮を宣言したのは他でもないイッカク。
「赤き神龍皇の【根幻回帰】!!」
「ッー!?!」
「相手の効果でフィールドを離れる時、赤き神龍皇は転醒前の姿に戻る……赤の世界へ帰還せよ神龍皇」
「なに!?」
ー【赤の世界】LV1
龍騎とドラグレッダーによって吹き飛ばされた赤き神龍皇だが、すぐさま体制を整え、背後に存在する赤の世界、その中にある龍の頭部を模した火山口に傷ついた身体を癒すべく帰還して行く。
「さらに赤の世界配置時の効果で最もBPの低いスピリット、龍騎を破壊!!」
「ッ……配置時も使えるのかよ……龍騎!?!」
赤の世界より降り注ぐ火山弾。それが龍騎を押し潰し、爆散させる。アスラの場はアタック中のドラグレッダーのみとなってしまう。
「くっ……だけどドラグレッダーのアタックは続いてる!!」
「たかが一点、ライフで受ける!……ッ……さらにその減少によりバースト、絶甲氷盾!!…ライフ1つを回復!」
「!!」
〈ライフ2➡︎1➡︎2〉イッカク
ドラグレッダーがイッカクの懐まで飛び行き、そのライフを頭突きで砕くが、又しても絶甲氷盾のカードでライフが戻ってしまう。
「………ターンエンドだ。クソ、まさか赤の世界にまだそんな効果があったなんて……」
手札:2
場:【ドラグレッダー】LV1
【燃えさかる戦場〈R〉】LV1
バースト:【無】
赤の世界と絶甲氷盾に翻弄され、アスラは結局劣勢は覆せないまま、そのターンを切る。
「このターン、メザシ……シイナ・メザだったらオレのライフを0にしていただろうな」
「!」
「ヤツはイカれた程強かった。だからこそオレはヤツを好敵手とし、この腕を磨き上げて来た。しかしヤツは死んだ。もうヤツとのバトルは叶わない。だがまだ息子のオマエがいる……このオレに好敵手だと思わせてくれるヤツがまだこの世にいる。そう思って期待してみたが所詮はこの程度………結局はどいつもこいつもオレを楽しませてはくれない………」
「………アンタ」
………ひょっとして寂しいのか?
アスラは内心でそう思った。ライバルだったシイナを失ってしまい、本当に一番寂しがっているのはこのイッカクなのではないかと………
そうだとしたらすごく謝りたい………
何せあの時、シイナは自分を庇って命を落としたのだから………
「完全に興が醒めた。何が黒属性だ。何が古の力だ。何がギアの一族だ。そんなもん、全部このオレの手で粉々にしてやる!!」
「!!」
イッカクの湧き上がる闘志が謝ろうとしていたアスラを黙らせる。そしてそんな彼に謝っては逆に失礼であると悟ると、そのターンを待ち構える………
[ターン08]イッカク
「メインステップ!!…パイロットブレイヴ、バナージ・リンクスをユニコーンガンダム・デストロイモードに合体!!」
「ッ……ここでパイロット合体!?」
ー【ユニコーンガンダム[デストロイモード]+バナージ・リンクス】LV3(5)BP21000
姿見た目は全く変わらないが、乗り手を得た事で明らかに雰囲気を変えるユニコーンガンダム・デストロイモード。その強者たる風格にさらに磨きをかける。
「アタックステップ!!…再度出陣せよデストロイモード!!…アタック時効果、先ずはバナージの効果で1枚ドロー。さらにデストロイモードの更なる効果で相手の最もBPの高いスピリット1体を破壊する事で回復!」
「!!」
「ドラグレッダーを破壊、回復せよ!!」
ー【ユニコーンガンダム[デストロイモード]+バナージ・リンクス】(疲労➡︎回復)
機械仕掛けのその手でドラグレッダーを鷲掴みにし、叩きつけるユニコーンガンダム。さらに回復状態となり全く隙を見せない。
「これでまたテメェの場はガラ空き。赤の世界を転醒させるまでもなく、これで終わりだ!!」
「くっ……!」
合体によりユニコーンガンダムは素でトリプルシンボル。アスラのライフは2つ。これで今度こそ決まるかと思われたその直後………
……「まだだ」
アスラはいつものようにそう告げると、手札からカードを切った………
「フラッシュマジック、デルタバリア!!…このターン、オレのライフはコスト4以上のスピリットのアタックでも効果でも0にされない!!」
「なに!?」
「そのアタックはライフで受ける!!……ぐぁっ!!」
〈ライフ2➡︎1〉アスラ
咄嗟に現れた三角のバリアが緩衝材となり、アスラのダメージを抑え込む。これはこのターンの間常に有効。アスラはイッカクの攻撃を完璧に防いだ事になる。
「チィッ……しぶとい。そこだけはメザシに似たようだな。だがまぁ良い。次のターンで仕留める……ターンエンドだ!」
手札:3
場:【ユニコーンガンダム[デストロイモード]+バナージ・リンクス】LV3
【赤の世界】LV1
【宇宙世紀憲章】
バースト:【無】
致し方ないか。悔しさに表情を少しだけ歪ませ、そのターンをエンドとする赤のカラーリーダーイッカク。
次はアスラのターンだが………
[ターン09]アスラ
「ドローステップ……ドロー!………だ、だめだ、進化できない……」
「これがオマエの限界だ。諦めろ」
ドローしたカードはシイナから託されたデジタルスピリット、デュークモン。決して悪い引きではない。だがアスラは未だにオニキスと連携してデッキやカードの進化ができないでいた。
「何でだ!?…こんなに追い詰められて、こんなに窮地に陥って、こんなにも負けたくねぇって叫んでるのに、何でオレは進化できないんだよ!?」
『オレもだ……何でこれ以上強くなれない!?……オレとアスラの気持ちは既に1つのはずなのに!?』
何故だ!?
兎に角それだけが尽きない疑問で、解けない謎だった。強くられる素材は揃っている。しかし何故かこれ以上の飛躍ができない………
「いや、待て………落ち着け……ゆっくり考えろ……」
両手で顔を叩きながらアスラがそう呟く。今までもそうやって一度一歩引き、強くなれないかと考えてきたのだ。
今回も絶対上手くいくと信じ、焦らずに一度冷静になって考える。そうしたら、解決策ではないが、オニキスに聞きたい事が見つかって……
アスラは一度力んだ力を抜き、自身の身体の中にあるオニキスに問いかける。
「………なぁオニキス」
『なんだ?』
「……オマエ、殺された誰かのために復讐したいんだよな。今更なんだけど、その殺された人ってどんな人だったんだ?」
『………』
不本意ながら自分の血の繋がった本当の母親の事を質問するアスラ。オニキスは一度口を閉じるが、すぐに開く。
『バカなヤツだったよ。髪は汚い灰色だったし、リアクションはデカイし、オマケに寝言が喧しい………最悪だ』
「マジか。やばいなソイツ」
『あぁ。だがオレはソイツのお陰で知ったんだ。人の温もりと暖かさ……ソイツがブラックフォースのオレにもそれがある事を気づかせてくれたんだ』
「………そっか」
良い人だったんだな………
その人の事が本当に大事だったんだな………
アスラがそう思うと、今度はオニキスがアスラに問いかける。
『オマエは何故頂点王を目指す?……何故そこまでして強くなりたい。しかもソウルコアも使えないその身体で』
「ずっとオレの中にいたオマエならわかるだろ………約束なんだ、シイナ……母ちゃんとの……いや、もう母ちゃんだけじゃない。今まで出会って来たみんなとの約束なんだ」
『そうか……なら負けられないな、このバトル』
「あぁ……オマエこそ……」
そこまで話し合うと、2人は内心で互いの事を思い合い、心で叫ぶ。
………オニキス、オマエは他の誰かのためだけに16年もオレの中で力を蓄えて来た。そんなコイツを、本当は心の優しいコイツを、オレは放っておけねぇ。
………アスラ、オマエは幾度となく諦めなかった。夢のためだけに命を賭けて走って行くコイツを、アイツによく似たコイツを、オレは放っておけねぇ。
そうだ!!!
だからこそもう二度と、負けるわけにはいかねぇ!!
コイツを救えるのはオレだけだから!!
もう二度と、負けさせるわけにはいかねぇんだよォォォー!!!!
「ッ……こ、これは……!?」
「……遂に来たか……相反する2人、それが混ざり合う時、真の救世主が爆誕する……!!」
アスラとオニキス。2人の心が真に繋がるその時、彼ら自身だけでなく、デッキのカード達が赤と黒に光輝く。その溢れんばかりの光量にイッカクはたじろぎ、仮面Zは仮面越しでも伝わる程に興奮していた………
この現象は誰がどう見ても紛う事なき進化。ただ、ギアの一族とブラックフォースの進化であるため、その力は誰にも予測できない。
重なり合った2人の絆は誰にも打ち破れる事のない真の力を発揮させる…………
そしてその進化の過程の中で、アスラの手に握られていたデュークモンのカードがみるみる内に全く別のカードへと書き換えられていき…………
「うぉぉお!!…メインステップ!!……行くぞオニキス!!」
『あぁ、いつでも来いアスラ!!!』
叫ぶアスラ。新たに握られたそのスピリットをオニキスと共に口上を述べ、召喚して行く………
龍を纏いしその衣!!
聖剣と共に世界を救え!!
仮面ライダーセイバーブレイブドラゴン!!
LV2で召喚!!!!
ー【仮面ライダーセイバーブレイブドラゴン[2]】LV2(5)BP5000
アスラの前方に出現する炎の球。その中よりそれを抜刀した赤の剣で斬り裂きながら姿を見せたのは2人の絆の力で爆誕した新たなライダースピリット………
その名は仮面ライダーセイバー………
「これが世界を救世する力……アスラが得た新たなライダースピリット……!」
「……わかる、オレにはわかるぞ。アイツはメザシのデュークモン……アイツら、デジタルスピリットをライダースピリットに変えやがった……!!」
アスラのこのセイバーにはシイナの想いの詰まったデュークモンを始め、これまでのみんなとの思い出、記録が全て刻まれている。
これを新たに召喚したアスラとオニキスが負けるわけなくて………
『「召喚時効果!!…デッキから3枚オープンし、対象のカード1枚を手札に加える!!……オレは!!…剣刃ブレイヴ、火炎剣烈火を手札に!!」』
アスラとオニキスは声と息を合わせ、セイバーブレイブドラゴンの効果を発揮。これまた新しいカードを手札に加えた。どうやら変化したのはセイバーブレイブドラゴンだけではないらしい。
『「アタックステップ!!……行け、セイバーブレイブドラゴン!!」』
2人から攻撃の指示が通るなり、手に持つ聖剣、火炎剣烈火をベルトと言う名の鞘に収めるセイバーブレイブドラゴン。
そしてこの瞬間に発揮できる効果がある。
『「フラッシュ!!……セイバーブレイブドラゴンのアタック時効果発揮!!…手札にある剣刃ブレイヴカード1枚をノーコストで召喚、このスピリットに合体させる事で、もう一度このスピリットの召喚時効果を発揮させる!!」』
「ッ……ブレイヴをノーコスト召喚だと!?」
『「オレはさっき手札に加えた火炎剣烈火をセイバーブレイブドラゴンに合体!!…召喚時効果でセイバーエレメンタルプリミティブドラゴンを手札に!!」』
ー【仮面ライダーセイバーブレイブドラゴン[2]+火炎剣烈火】LV2(5)BP9000
再び鞘から火炎剣烈火を抜刀する仮面ライダーセイバーブレイブドラゴン。その摩擦で火炎剣烈火は赤々と光輝く。
『「この瞬間!!…火炎剣烈火の召喚時効果を発揮!!…相手ネクサス1つを破壊!!…オレは転醒ネクサス、赤の世界を破壊する」』
「!!」
火炎剣烈火を振い、その刃から放たれる赤い斬撃は赤の世界を斬り裂いていく………
しかし………
「馬鹿が。赤の世界の更なる効果、相手の効果で場を離れる時にも赤き神龍皇に転醒できる!!」
そう。赤の世界はこのタイミングでも転醒を可能とする特異且つ強力な転醒ネクサスカード。
今一度赤き神龍皇になってしまえば、その転醒時効果でセイバーブレイブドラゴンは破壊されてしまうだろう………
だが………
この程度の事、アスラとオニキスが予測していないわけがなくて………
『「火炎剣烈火が効果で召喚されていた時、相手はこの効果で破壊したネクサス効果を発揮できない!!」』
「なんだと!?」
火炎剣烈火の更なる効果が発揮され、赤の世界の火山口から再び赤き神龍皇がやってくる事はなく、赤き神龍皇事赤の世界はこの場から消滅した。
そして、アスラとオニキスは『「さらに!!」』と声を重ね合わせ、また新たなるカードの効果を発揮させる………
『「フラッシュ!!…仮面ライダーセイバーエレメンタルプリミティブドラゴンの【チェンジ】効果を発揮!!…対象はセイバーブレイブドラゴン!!」
「……今度はチェンジ……!!」
『「この効果でシンボル1つの相手スピリットと合体スピリットを1体ずつ破壊する!!……合体中のデストロイモードを破壊!!」』
「なに!?」
赤い炎と青白い炎が激しく燃え上がり、宙を飛び交う。その炎はやがてユニコーンガンダム・デストロイモードへと直撃。爆散させたかに見えたが………
「チィッ……オレは合体中のパイロットブレイヴ、バナージ・リンクスの効果発揮!!…手札からモビルスピリット1枚を破棄する事で疲労状態で場に残す!!…オレはユニコーンモードを破棄する事でデストロイモードを場に残す!」
爆発による爆煙の中姿を見せたのは他でもない破壊されたはずのユニコーンガンダム・デストロイモード。だがこれだけでアスラとオニキスの攻撃をかわせたわけではない………
【チェンジ】と言えばこの効果の発揮後、対象スピリットとのチェンジだ………
『「この効果発揮後、このカードを剣刃ブレイヴと合体しているライダースピリットと回復状態で入れ替える!!」』
相反する2つの炎が1つになる時、語り継がれし伝説が咆哮を上げる!!
来い、仮面ライダーセイバーエレメンタルプリミティブドラゴン!!
ー【仮面ライダーセイバーエレメンタルプリミティブドラゴン+火炎剣烈火】LV3(5)BP20000
赤い炎と青白い炎が龍へと姿を変え、セイバーブレイブドラゴンに向かって飛び行き、結合して行く………
そして新たに爆誕したのはセイバー最強の姿であるエレメンタルプリミティブドラゴン。これこそがアスラの真のエースカードと呼ぶに相応しい最強のライダースピリット…………
「凄い……凄すぎる。アスラ、君はソウルコアが使えない………だがここまで己のデッキを、バトルを進化させた。それはきっとオニキスやギアの一族の力だけではない……君が諦めずに努力したからこそセイバーは生まれた………君がして来た事は決して無駄ではなかったんだ……!」
爆誕したセイバーエレメンタルプリミティブドラゴンと共にアスラを視界に入れ、感動の言葉を漏らす仮面Z。
そう。
決してアスラがギアの一族だからとか、オニキスがその身体に宿っていたからであるというだけでこの力を手に入れたのではない。アスラが諦めずに努力を重ね続けて来たからこそ、このスピリットは生まれた………
アスラがやって来た努力は何一つとして無駄ではなかった………
『「火炎剣烈火はコスト6以上のスピリットとの合体中、赤のシンボルを1つ追加する!…これでエレメンタルプリミティブドラゴンはダブルシンボル!!…ライフを2つ破壊できる!!」』
「!!」
【チェンジ】によって回復しているため、二撃でも十分だが、追い討ちをかけるようにシンボル追加効果を宣言。これで残りライフが2つのイッカクは是が非でもこの攻撃を受け止めなければいけなくなった。
「フラッシュマジック、スクランブルブースター!!」
『「!!」』
「対象はデストロイモード。このバトル中、デストロイモードは疲労状態でブロックができる……迎え撃て!!」
流石はカラーリーダー最後の砦である赤のカラーリーダーと言ったところか。白の防御マジックで応戦。それに応えたユニコーンガンダム・デストロイモードはゆっくりと迫り来るセイバーエレメンタルプリミティブドラゴンと対峙する。
デストロイモードはモビルスピリット故の体格差を活かし、強力な威力を誇るビーム銃をセイバーエレメンタルプリミティブドラゴンのほぼ真上から放つが、火炎剣烈火を振るっただけで弾かれ、分散されてしまう。
セイバーエレメンタルプリミティブドラゴンは火炎剣烈火を今一度振い、炎の斬撃を放ち、デストロイモードのビーム銃を斬り裂き、焼き尽くし、爆散させる。デストロイモードは銃撃戦では敵わないと見て、肩からビームサーベルを引き抜き、空中へと飛び立った。それを見たセイバーエレメンタルプリミティブドラゴンも宙へと飛び立つ。
フィールドマジック【宇宙世紀憲章】が齎した真っ暗な宇宙を舞台に何度もぶつかり合って行く両者。その戦いは互角である………
「デストロイモードのBPは21000!!…対するライダースピリットは20000!!……勝負あったな!!」
『「いや!!…ネクサス、燃えさかる戦場の効果でそのBPはプラス3000……合計BP23000で、オレのセイバーはデストロイモードを上回っている!!」』
「!!」
ー【仮面ライダーセイバーエレメンタルプリミティブドラゴン+火炎剣烈火】BP20000➡︎23000
最後にアスラ達を救ったのは一見地味にように思える些細なBPバフ効果。これにより形成がセイバーエレメンタルプリミティブドラゴンへと傾き始める。
何度もぶつかり合って来た両者。しかしここに来てセイバーエレメンタルプリミティブドラゴンの火炎剣烈火を大きく振るった渾身の一撃が遂にその均衡を破る。ビームサーベルごと、デストロイモードのその巨大な鉄の腕を斬り裂いたのだ。
大きな損傷を受け、怯むデストロイモード。しかしセイバーエレメンタルプリミティブドラゴンはその隙を逃さず、トドメの一閃………
デストロイモードはとうとう力尽き爆散。セイバーエレメンタルプリミティブドラゴンの勝利に終わる………
そして、アスラ達の勝利でもある………
「セイバーエレメンタルプリミティブドラゴンでラストアタック!…火炎剣烈火の効果でBP7000以下のバナージ・リンクスを破壊して1枚ドロー」
トドメの宣言。場に姿を見せる事はないパイロットブレイヴのカードはイッカクBパッド上から静かにトラッシュへと置かれた………
そしてもう彼にその攻撃を止める手立ては残っていなくて………
「……フ、やればできるじゃねぇか。流石はアイツの息子だな……ライフで受けてやるよ………」
〈ライフ2➡︎0〉イッカク
最後の最後でアスラの事を認めたような思わせぶりな発言をするイッカク。
その直後に火炎剣烈火を振り下ろし、セイバーエレメンタルプリミティブドラゴンがイッカクの最後のライフバリアを破壊する。そしてそれに反応するように彼のBパッドから「ピー……」と無機質な音が流れ出した………
それはいつも通り、勝者を祝う音色でもある。アスラは遂に最後のカラーリーダーに勝利を収めたのだ。バトルの終了に伴い、宇宙だった場は元に戻り、仮面ライダーセイバーエレメンタルプリミティブドラゴンはその姿をゆっくりと消していった。
「ゼェ……ハァッ……ハァッ………勝った……のか!?」
『あぁ。オマエの勝ちだアスラ……』
病み上がり直後からの連続バトル故に流石のアスラと言えども疲労が溜まったか、息を切らし、その場に腰を突いてしまう。
「勝った……勝てたんだなオレ……遂にカラーリーダー全員に……!!」
アスラの頭の中に浮かんで来たのは「オマエでは決して勝てない」と周囲から言われ続けて来た毎日。今日は誰に何と言われようが諦めずに努力を重ねて来たアスラが己の夢へと大きな一歩を踏み出した記念日になる事だろう………
「よくやったねアスラ。君とオニキスならやれると信じていたよ……君は間違いなくこの世界の救世主だよ」
「へへ、サンキューなZのおっちゃん」
腰を突いたアスラに仮面Zが手を差し伸べる。アスラはそれを掴み取って立ち上がった。
「ほらよクソチビ」
「!!」
直後にイッカクがアスラに対してあるま2枚のカードを投げつける。1枚目のカードは表も裏も真っ赤なカードであるレッドカード。赤のカラーリーダーに勝利した証であり、最後のカラーカードでもある。
これを手にしたという事はそれ即ち『三王への挑戦資格を得た』に等しい………
そして2枚目はなんと先程のバトルでイッカクが使用した『赤の世界』のカード。
「お、おぉぉお!!…これが最後のカラーカード!!!……えぇぇ!?!…こっちはさっき使ったメッチャイカす転醒ネクサス!?……あ、ありがとうございまァァァーす!!…実は良い人なのか!?」
「オレに勝ったんだから当たり前だろ。それとも何だ、有料がいいか?」
「いえオレ貧乏なんで結構です!!!…ありがたくタダで受け取らせていただきます!!」
「だったら他のカラーカードを売ればいいじゃねぇか。良い額になるぞ」
「それじゃあ今まで頑張って集めた意味がないじゃないですかァァァー!?!」
何の変哲もない会話を繰り広げる中で、イッカクは少しだけ口角を上げて笑顔を作ると…………
「フ……スーミ村のアスラ。オマエはホントにメザシのヤツにクリソツだな………」
「ッ……へへ、あざす!」
イッカクの言葉を聞くなり、今までの彼の敵意がなくなっているのを感じたのか、鼻の下を擦りながら自慢気にそう言い返すアスラ。
頂点王シイナ関係でいざこざあった2人の関係もどうやら修繕されつつあるようだ。
こうして、アスラのアンダーワールドでの修行は終わりを告げる。壮絶なバトルを繰り返していき、遂にアスラは最強のライダースピリット、セイバーを手にしたのだった。そして、ブラックフォース達との決戦の日は近い………
《キャラクタープロフィール》
【イッカク・アカバネ】
性別:男
年齢:25
身長:174cm
身分:マスター
使用デッキ:【ユニコーンガンダム】
概要:6番目の最後のカラーリーダー。赤属性の使い手。その実力はカラーリーダー達の中で最も高く、頂点王シイナ・メザのライバルを自称している。お金を集める(巻き上げる)のが趣味。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
おそらく歴代で一番初期デッキが弱かったアスラでしたが、ようやく最終エース、セイバーを手にする所まで強くなる事ができました〜
後懸念すべき点は最終フォームであるクロスセイバーが煌臨持ちかどうか………
私の予想では煌臨持ってます。ビルド、ジオウ、ゼロワン。放送中にパックが発売されたライダーの最終フォームは皆煌臨持ちのスピリットなんです。(ジーニアス、グランドジオウ、ゼロツー)
と言うか大体の最終フォーム、もしくは最強フォームが煌臨持ちです。まだ一回しか強化もらってないですけど、響鬼くらいですかね?
そう考えたら龍騎は本当に稀有な存在でしたね。仮に煌臨持ちでしたら、効果にもよりますが、このままエレメンタルプリミティブドラゴンでやって行くつもりです。
何はともあれ、龍騎セイバーデッキとなったアスラの今後の活躍をお楽しみください。そしてできれば全てのカラーカードを集めた彼に祝いの言葉を掛けてやってください!