息が詰まるほどの黒い空間。とてもではないがこの世界に存在するようには思えないようなこの場所。そこには大昔にギアの一族に封印された黒属性を操る怪物達であるブラックフォース、又はそれらを体の中に住まわせる者達が居座っている。
金髪でワカメ頭の青年、フリソデもその1人。その中にはブラックフォースの「シャーマン」が息を潜めている。そんな彼は退屈そうな表情で他のメンバーに告げた。
「ねぇさぁ。いったいいつになったら愚かな下民共をなぶり殺しに行くわけ?……僕ちょっと我慢の限界なんだけど」
「ジジジ……それね!…ボクも思った思った、早く戦いに行きたいよね!!…そして早く血をみたいよね!!」
フリソデの言葉に賛同するのは同じように己の力を奮いたいブラックフォースの1人「ヘタマイト」……彼女は今「テンドウ・カナ」と言う女性の身体、意識を奪い、依代とし、行動している。
それはその兄である「テンドウ・ヒロミ」の身体を奪った最強のブラックフォース「オブシディアン」も同じだ。
「まぁ待てフリソデ、ヘタマイト。まだ気は熟していない……ザザザ、そうだろう我が王ウィルよ」
「……はい。オブシディアン様の言う通りです……まだ動くべき時ではない。我々は先の戦いで黒の力を消費し過ぎた。今はこうして少しでも多くの力を回復せねばならない」
オブシディアンが目を向ける先にはすっかり黒属性の力に侵されたシルクハットの男ウィルがいた。白眼は黒く染まり、最早完全に新たなブラックフォースとしての存在感を醸し出している。
ブラックフォース最強と言われるオブシディアンだが、ウィルの願い、やりたい事を叶えさせるためか「我が王」と呼び、敬意を払っているのが窺える。
「なんでだよウィルさん。せっかく念願の力をもらえたのに、僕は早くあのアスラとか言うゴミを始末したいだけなんだ」
「ヤツの始末ならもう終わっている。母親である頂点王を失い、完全に戦意を失っている筈だ。今更立ち上がれまいよ。仮に立ち上がれたとして、怒りに身を任せるあまりカードバトラーとして冷静な判断ができずに犬死にするだけだろうがね」
鏡の中の異世界、ミラーワールドでの一件でアスラに一方的な因縁を抱いているフリソデ。どうしても彼とバトルがしたいらしい。
「いいじゃんいいじゃん。犬死にさせようよ!!…まぁ正直この力で痛ぶる事ができるだけでいいんだけどさ!!…誰か他に倒しておきたい敵とかいる?」
「……何故もう行く事が前提になっているのです………はぁ、まぁいいでしょう。幸い君は余り力を酷使してないですし。そうか敵……頂点王はこの手で消去しましたし、残った三王もエレン・オメガ1人、スーミ村のロン如きでは我々に敵いませんし、トゥエンティも死んだ………ゾゾゾ、これだともう私たちの勝ちは確定ですね」
自分で思い返しながら笑みを浮かべて行くウィル。その表情は勝利という優越感に浸っている。
だが、彼をその道まで導いたと言える存在、ブラックフォースのオブシディアンはその優越感に水を刺す。
「いや待てウィル。まだ喜ぶのは早い。まだ懸念すべき点はある」
「!」
「確かに我らの勝利はほぼ確定だ。だが、私はまだ1人要注意と見ている人物が1人いる」
「ッ………なんと、貴方のようなお方がそこまで警戒しているとは………だがそれはいったい………」
「あのエールとか言う小娘だ」
「ッ……エール・オメガ!?」
オブシディアンの口から出てきた名は「エール・オメガ」………
この世界においてもっとも身分が高い「エックス」であり、その中でもさらに最高級である「オメガ」の名を持つ一族の1人………
これだけ聞けば確かに要注意人物ではあるが………
「何故です!…ヤツは黒属性の力、即ちブラックフォースを宿してはいません。バトルの才能こそあれどまだ若過ぎる……私たちの敵ではない筈!」
そう。エールはアスラのようにブラックフォースの力を持たないし、ロンや三王エレンなどと比べてもやや見劣りすると判断していた。
「いや。何故だろうな。ヤツに近づくと疼くのだよ……ブラックフォースとしての血がね……」
「??」
「兎に角ヤツは潰しておいて欲しい。受けてくれるかなフリソデ」
「フフ、その言葉を待ってました!!……可愛い女の子だから残念だけど、これも運命だね!!」
オブシディアンからフリソデにエール・オメガの討伐を依頼する。フリソデはその直後にBパッドに内蔵したワームホール機能でこの場を離脱。任務遂行へと向かった。
フリソデだけが出陣した事により、誰よりも闘いを求める無垢なブラックフォースであるヘタマイトは膨れっ面で………
「むぅ〜〜!!……オブシディアン、なんであのお坊ちゃんだけ向かわせるのさ!!」
「ザザザ……こりゃまたすまんね」
「ボクも行きたかったよ〜〜!!」
無邪気に駄々をこねるヘタマイト。そんな彼女を納得させるためにオブシディアンはさらに一言を添える………
「ザッザ……どうしても、シャーマンと会いたくてね」
シャーマンとはフリソデがその中に宿したブラックフォースの名前であるが、この言葉の意味は同じブラックフォースのモノしかわからない。
そのため、ヘタマイトもブラックフォースと化したウィルも理解した。
******
ここは国の中心都市であるオウドウ都。その繁華街。大勢の人達が自由に歩き回り、自由に商売、やり取りをするどこまでも人間味溢れるこの場所のど真ん中をエックスの身分を持つ少女エール・オメガは歩いていた。
「……だいぶ、強くなれた気がする………これもお兄様が修行を引き受けてくださったお陰ね……」
よく見ればいつも綺麗なその身体は少し汚れている。兄であるエレン・オメガに相当な稽古をつけられたに違いないと察する事ができる。アスラとは違い、元々バトルの才能に満ち溢れている彼女、しかも努力は一切怠らない性格であるため、これは相当なレベルアップが見込める。
「………あれから1週間か。アスラ………今頃どうしてるかな……」
アスラが病院を黙って抜け出し、仮面Zと共にアンダーワールドへと向かってからおよそ1週間が経過していた。彼と連絡の取りようのなかったエールはアスラの行き先を知らない。
彼の事を密かに想う彼女にとって、この出来事はかなり辛い。姉に近い存在だった頂点王シイナを失った直後なら尚更だ。それでも自分にできる事は何かと考え、兄であるエレンに修行を申し出たのは彼女が誰よりも強い証拠。
「いや、ダメね………ちょっと油断したら直ぐにアイツの事を考えちゃう。どうせロンの言う通り無事よ!…また強くなって戻ってくる前に、私も少しでも強くならなくちゃ!」
いつもアスラの後ろ姿を励みにして来たエール。今度は自分が頑張る番であると息を巻くが………
その直後だ。聞き覚えがある声で、尚且つどうにも耳障りな気色の悪い声が聞こえて来たのは…………
「やぁ……エックスのお嬢さん……!!」
「ッ………アンタ、確かフリソデ!?」
そう。フリソデだ。オブシディアンの命を受け、エールを探しにこのオウドウ都までやって来たのだ。その片手にはこの繁華街で購入したであろう真っ赤なリンゴが握られていた、何口か齧った後もある。
「おぉ、君みたいな可愛い子に名前を覚えてもらえて光栄だよ」
「アンタ、いったい何しにここに………!!」
「何しにって、まぁ不安要素を取り除きに来たと言えばわかってもらえるかな?」
「!」
Bパッドを構えながらそう告げるフリソデに、エールもまた反射的に己のBパッドを構える。
だが、直ぐにバトルを始めようとはせず、フリソデはまだその口を開き続け…………
「君のカード、オメガモンだったっけ?……良いよね。強そうだ」
「はぁ?……何よ急に」
「ウィルさんの言っていた通りだ。この世は不公平。君みたいな身分が高いだけの女の子にそんな強いカードが行き渡るんだから……シナンジュを召喚」
「!?」
フリソデはそこまで言い切ると、己のBパッドに1枚のカードを叩きつけ、赤き一つ目のモビルスピリット、シナンジュをこの場に呼び寄せる。
人が多く集まるオウドウ都の繁華街に呼び出された事で、そのシナンジュは一躍脚光を浴びる。その美しい姿に誰もが「おぉ」や「美しい!」などと感想を述べる………
だが、美しいのは外見だけだ。
「さぁ、ウィルさんの祈願の願いを果たせ………シナンジュ。あの愚かな人間共にアタックだ……!!」
「な!?」
フリソデが出した指令を受け、シナンジュはその手に持つビーム銃を繁華街の建物に向け、連射。当然倒壊して行く建物に、人々はシナンジュの見る目を変え、悲鳴を上げながら逃げ惑う。
「や、やめなさい!!……狙いは私だけのはずでしょ!?…なら私だけを狙って来なさいよこの臆病者!!」
「わかってないな〜……ウィルさんの願いはこの世界の破壊、及びリセット。今を生きるゴミ人間はここで消えるべきなんだよ」
「ッ……アンタにもウィルにも、今を生きる人たちから生きる権利を奪う資格はないわ!!」
「ほらほら〜……無駄口叩いてると死ぬよ?…助けなくて良いの、エックスのお嬢さん〜!!」
「!!」
最早救いようがない程までに下衆まで落ちたフリソデ。しかし今は人命救助に専念か、人々を倒壊する瓦礫から守るべく、エールもまた己のBパッドにカードを叩きつける………
「オメガモン!!」
白騎士の究極体のデジタルスピリット、オメガモンを召喚。右腕の大砲と左腕の大剣で瓦礫から人々を守る。だがフリソデのシナンジュもまた同様に破壊行動を続け………
「ほらほらほら!!!……いつまでそれが持つかな〜!!!」
「くっ………」
一目散に逃げ続ける人々。だが、その中でも1人だけ全く微動だにせず、破壊するシナンジュとそれを見守るオメガモンを見つめる小さな男の子がいた。綺麗に仕立て上げられた身なりや服装からして、マスター程の身分が妥当か。
その子は幼なすぎるが故に危機感がないのか、寡黙を続けながらそのスピリット達を見守っていた。
そしてそこにフリソデは目をつけ………
「ヒャハハッッ!!……アレだ!!……あのガキをやれ、シナンジュ!!」
「!!」
幼い男の子に対して直接向けられるシナンジュのビーム銃。そして自分に向かって轟音を鳴らしながら飛んで来るビームに、その子はまだ危機感を覚えずに逃げようともしない………
直撃なんてしたらひとたまりもない。エールは透かさずもう1体のスピリットを呼び出そうとするが………
………「間に合わない……!?」
そう思った。自分1人ではどうやってもこの子を守り抜く事はできない。思考ではなく、本能でそれを悟った…………
だが…………
ー!!
直前でそのビームは四方へと弾き返される。それをしたのは突如として飛んで来た赤い光球。誰もが唖然としてそれを見つめる中で、その中よりある少年が姿を見せる………
それはエールもフリソデもよく知るあの人物………
「よ。なんか久しぶりだな………エール」
「あ、アスラ……!?」
「……ドブネズミ……!!」
そう、アスラだ。登場の仕方もあり、異様な力を身につけたアスラに戸惑うエール。それに対しフリソデは彼に対する復讐心で頭をいっぱいにしてしまう。
身を呈して小さな男の子を守ったアスラはその子に目線を合わせるようにしゃがみ込み「危ないから逃げな」と優しく諭す。その子は余程目の前に突然現れたアスラに対してもノーリアクションだったが、流石に聞く耳はあったか、寡黙ながらもこの場からようやく立ち去ってくれた。
これでこの半壊した繁華街にいる人間はアスラ、エール、フリソデの3人のみとなった。アスラは男の子を見届けると、再び立ち上がってフリソデと対峙する。
「ヒャハハ……なんだまだ居たのか。頂点王を失った哀れなドブネズミ〜!!……わざわざこの僕にやられに来てくれたのかい??」
哀れみの目を向けるフリソデ。彼にとってコモンのアスラは人ではない。それは怪物と言う意味ではなく、惨めで哀れな下級生物だからと言う理由だ。
もちろんそんな事はない………
「フリソデ……もうやめよう。オレ達、本当はもう争う理由なんてないんだ」
「はぁ?…何それ、なめてんの??………あ、わかった!…僕が怖いんだな!!…黒属性の力を手に入れた、この僕に負けるのが!!」
「違う。オマエは利用されてるだけなんだ、ちょび髭シルクハットと、ブラックフォースに」
「利用??……僕は既に彼らの一員として認められている。そんなわけないだろ〜?…これだからコモンのドブネズミは見る目がない」
アスラの言う通り、フリソデは明らかにウィルやブラックフォースに利用されている。その身にブラックフォースの1人である「シャーマン」を宿されたのもその一貫である。
連中はフリソデの事をシャーマンを宿らせるための駒としか見ていない。その内彼がさらに危険な目にあってしまうのは目に見えていた。
しかし、アスラからその真実を告げられても尚、聞く耳は持たない。
『ズズズ!!……そうだフリソデ、耳を傾けるな。ヤツはオマエを惑わそうとしている。オレ様はオマエの味方だぜ〜』
「ヒャハハ!!……そう言うわけだコモンのドブネズミ!!……いいからさっさと僕と戦え!!」
ブラックフォースの1人、シャーマン。そんな彼の野太い声がフリソデの中から声が聞こえて来る。明らかに上っ面だけの信頼関係がアスラとエールには見える。
そんなフリソデは当初の目的であるエールの事を忘れ、アスラを新たな標的とし、バトルを要求する。
「フリソデ………」
『やるしかないぞアスラ。正直オレにはあの金髪ワカメ野郎を助けてやる価値が見出せないが……どちらにせよ、やらないと先には進めねぇ。それはオマエもわかってるはずだ』
アスラの中に宿るオニキスが彼に語り掛ける。
「あぁそうだなオニキス………わかったぜフリソデ。オレはオマエとのバトルを受ける。でもって勝って、必ずオマエを救け出す!!」
「ようやくその気になったか!!」
『ズズズ!……やっとオマエをこの手で葬れるな、オニキス。ブラックフォースの唯一の汚点』
『ゼゼゼ!……元々オレらは真っ黒で汚ねぇんだよシャーマン。そしてオレも今、この瞬間を待っていたぜ……!』
アスラ、フリソデ、オニキス、シャーマンが言い合う中、遂に2人のBパッドは互いの方向を向き合う。
フリソデのBパッドがアスラに向けられた事でこの場にいたモビルスピリット、シナンジュは消滅。エールも一度Bパッドの電源を切り、オメガモンを消滅させる。
そしてアスラに心配そうな眼差しを向けると………
「アスラ……!」
「大丈夫だエール、心配すんな………オレは、オレだ……ッ!」
「!!」
アスラのいつもと違う雰囲気、信じられないくらい落ち着いた様子を見て、今までの彼とは何かが一線を画しているのをエールは感じる。
だが、アスラが大丈夫だと言っているのだ。エールはそれを信じる事しかできない。
「行くぞオニキス、力を貸してくれ」
『ゼゼゼ……ハナっからそのつもりだ。アイツをぶっ倒すぞ、アスラ!』
「ヒャハハ!!……行くぞドブネズミ!!…オマエは僕に負ける、そう言う運命だ!!」
………ゲートオープン、界放!!
半壊した繁華街にて、ブラックフォースの力をその身に宿した者同士のバトルスピリッツがコールと共に幕を開ける。
先行はフリソデだ。アスラに逆恨みしている彼は復讐を遂げるべくそのターンを進めていく。
[ターン01]フリソデ
「メインステップ……先ずは母艦ネクサス、ガランシェールとレウルーラを配置……!」
ー【ガランシェール】LV1
ー【レウルーラ[UC]】LV1
背後に颯爽と配置したのは世界三大スピリットの1つであるモビルスピリットをサポートする2種の母艦ネクサス。宙に浮かぶ巨大な戦艦が2隻姿を見せる。
「ターンエンド。幸先の良いスタートだ」
手札:3
場:【ガランシェール】LV1
【レウルーラ[UC]】LV1
バースト:【無】
デッキが回る事を確信し、余裕の笑みを浮かべながらそのターンを終えるフリソデ。次はアンダーワールドでの修行を終えたアスラのターン。オニキスが宿るその右手でドローして行く…………
[ターン02]アスラ
「メインステップ………行くぞフリソデ、オレはオレ自身を仮面ライダーセイバーに変身させる!!」
「!?」
ー【変身!!仮面ライダーセイバー】LV1
………烈火抜刀!!
その音声が流れると、アスラは炎をその身に纏い、変身する。その姿は右肩に赤き龍が刻まれた新たなるライダースピリット、仮面ライダーセイバー。
「神託によりボイドからコア1個をオレに追加……」
「セイバー……!?………龍騎じゃないの?」
アスラの新しいライダースピリットを初めて視認したエールにフリソデ。彼の今までにない雰囲気もあり、よりその存在を際立たせていた。
そんな中、アスラは「さらに!」と続け、手札にあるカード1枚をBパッドに叩きつける。
「転醒ネクサスカード、赤の世界を配置!」
ー【赤の世界】LV1
アスラの背後に龍の頭部を模した燃えさかる山々が配置される。その吹き上がる火山の噴火はまるで龍の咆哮そのモノ………
「バーストをセットしてターンエンド」
手札:2
場:【赤の世界】LV1
【変身!!仮面ライダーセイバー】LV1(1)
バースト:【有】
全てのコアを使い切った上にバーストカードもセット。盤石とも取れる動きを行い、アスラはそのターンをエンドとする。
「……アレは、本当に私の知ってるアスラなの……??」
使うカードと言い、大人しい雰囲気と言い、これまでのアスラとは一線を画したその様子にやはり戸惑いを隠せないエール。
そんな彼女の前に、優しい声を放つある人物が現れて………
「心配する事はないよ、オメガ家のお嬢さん」
「!」
「アスラは己の中にいるブラックフォース、オニキスと向き合い、修行しただけだ。いつもと違うように見えるのも、彼の成長故だろうね」
「仮面Z!?……なんでアンタがここに……!?」
エールの前に現れたのはここ1週間、アスラを誰よりも近くで見て来た狐の面を被っている男性、仮面Z。
「その話は今は後。先ずは見守って欲しい、生まれながらにソウルコアが使えないアスラのバトルスピリッツを……!」
エールにそう告げると、仮面Zも同様に2人のバトルへと目線を向けた。
「仮面ライダーセイバーに赤の世界………ヒャハハ。また仮初だけの力を手にしたのか!!……だけどその程度の力でこの僕を倒せると思うなよ!…黒の力を持つのはもう君だけじゃない!……同じ力があれば勝つのは当然この僕なんだ!!」
フリソデはアスラの新たなライダースピリット、セイバー、転醒ネクサスの赤の世界を前にしても尚、怯む事なく、絶対的な自信を持ちながら己のターンを進めて行く…………
[ターン03]フリソデ
「メインステップ……母艦ネクサス2枚のレベルをアップ。ギラ・ズール・ギルボア機を召喚」
ー【ギラ・ズール[ギルボア機]】LV1(1)BP3000
一つ目で緑色のモビルスピリット、ギラ・ズールのギルボア機が出現。
「召喚時効果でデッキから袖付きスピリットを手札に、さらにレウルーラの効果でドロー」
フリソデは効果で順当に手札を増やし、アスラとの差をつける。そして今度はそのライフへと狙いを定め………
「アタックステップ……行け、ギルボア機!」
フリソデの命を受け、発進するギルボア機。前のターン、ネクサスの配置のみに全力を注いだアスラはこの攻撃をライフで受ける他ない。
「ライフで受ける……!」
〈ライフ5➡︎4〉アスラ
ギルボア機の放った実弾がアスラのライフバリアを1つ砕く。だが、これが彼の伏せていたバーストカードのトリガーとなる。
「ライフ減少によりバースト発動、ドラグーンシュート!」
「!」
「効果によりトラッシュからコスト6以下の赤スピリット、龍騎をノーコストで召喚!」
ー【仮面ライダー龍騎】LV1(1)BP5000
様々な鏡像が重なり合い、龍の影を纏うライダースピリット、龍騎が召喚される。
「ターンエンド。相変わらず貧相なライダースピリットだ、ホント君にお似合いだと思うよ」
手札:5
場:【ギラ・ズール[ギルボア機]】LV1
【ガランシェール】LV2
【レウルーラ[UC]】LV2
バースト:【無】
アスラの龍騎を小馬鹿にしながらそのターンを終える。アスラはそれに構う事なく巡って来た己のターンを進めていった。
[ターン04]アスラ
「メインステップ……龍を纏いしその衣、仮面ライダーセイバーブレイブドラゴンを召喚!」
ー【仮面ライダーセイバー仮面ライダーセイバーブレイブドラゴン[2]】LV2(3)BP5000
変身したアスラと全く同じ姿をしたライダースピリット、セイバーブレイブドラゴンが龍騎の横に呼び出され、場にはアスラが絆を繋いでいで来たスピリットが揃う。
「召喚時効果で剣刃ブレイヴ、火炎剣烈火を手札に!!……アタックステップ、セイバーブレイブドラゴン……アタックだ!」
セイバーブレイブドラゴンに攻撃の指示を送るアスラ。そしてこの瞬間、使用できる効果があって………
「フラッシュ、セイバーブレイブドラゴンの効果。手札にある火炎剣烈火をこのスピリットに直接合体させる事で、もう一度召喚時効果を発揮させる」
「!」
ー【仮面ライダーセイバーブレイブドラゴン[2]+火炎剣烈火】LV2(3)BP9000
アスラはこの効果を使い、手札に新たなるカードを引き込んだ。さらに神託を行いつつ、火炎剣烈火の真の力が起動する………
「今度は火炎剣烈火の召喚時効果発揮、母艦ネクサス、ガランシェールを破壊!!」
「!!」
炎纏う聖剣、火炎剣烈火を振るうセイバーブレイブドラゴン。そこから飛び行く熱き斬撃がフリソデの背後に位置するガランシェールを斬り捨てた。
「アタックは継続中!!」
「ライフで受ける………ぐっ」
〈ライフ5➡︎4〉フリソデ
セイバーブレイブドラゴンは火炎剣烈火を振い、フリソデのライフ1つを斬り刻んだ。
「まだまだ行くぞ………龍騎!…アタック時効果でネクサス、レウルーラを破壊して回復!」
「ッ……小癪な、また僕のネクサスを……!」
ー【仮面ライダー龍騎】(疲労➡︎回復)
龍の闘気をその拳に纏い、フリソデの背後にあるレウルーラ向けて放つ龍騎。2つ目の母艦であるレウルーラも敢えなく爆散してしまった。
「クソ……この攻撃もライフだ」
〈ライフ4➡︎3〉フリソデ
龍騎の拳がフリソデのライフを砕く。そしてこの瞬間、赤のカラーリーダーであるイッカクから貰い受けた赤の世界の効果が起動する。
「赤の世界の効果!…本来のコストが5以上、赤一色のスピリットがアタックしたバトルの終了時、相手ライフを1つ破壊する!」
「なに!?……ぐうっ!?」
〈ライフ3➡︎2〉フリソデ
赤の世界の火山が唸りを上げ、大噴火を起こす。その火山岩が流星の如く降り注ぎ、追加でフリソデのライフ1つを破壊した。
「よし。これでもう一撃ぶち込めば勝てる………」
赤の世界の効果により、今の龍騎のシンボルは実質2。もう一度アタックをすれば残りライフ2のフリソデに勝てる。
だが、流石にそれをフリソデが察していないわけがない、手札から発揮できる1枚のマジックカードをBパッドへと叩きつけた。
「そんなわけないだろ??……ライフが減った時、手札の絶甲氷盾の効果!…このターンのアタックステップは強制終了!」
「!」
発揮されたのは白の防御マジック絶甲氷盾〈R〉のカード。それによりアスラのこのターンでのアタックステップは終わり。否応言わずにターン終了の宣言をしなくてはいけなくなってしまう。
「………やるな、ターンエンドだ」
手札:3
場:【仮面ライダー龍騎】LV1
【仮面ライダーセイバーブレイブドラゴン[2]+火炎剣烈火】LV2
バースト:【無】
ネクサス2つを破壊しつつ、ライフも多く破壊したアスラだったが、惜しくもこのターンはエンド。フリソデにターンが巡って来る。
「僕のターン……ネクサスを2つも失ったのは計算外だったけど、関係ないね。既に勝利へのパーツは揃っている……!」
「!」
フリソデにはどうやら既に勝利のビジョンが見えているようで、不気味な笑みを浮かべ続ける。その様子に対してアスラは受け身を取るように身を構える………
[ターン05]フリソデ
「メインステップ……先ずはドラッチェ2体を召喚」
ー【ドラッチェ】LV1(1)BP1000
ー【ドラッチェ】LV1(1)BP1000
一つ目の赤い小さなモビルスピリット、ドラッチェが2体出現。これで軽減シンボルを確保し、大型のスピリットを召喚するつもりなのだろう………
そして案の定、手札にある1枚のカードへと手を掛けて………
「我が魂は赤き彗星と共に……来い、転醒シナンジュ!!」
ー【シナンジュ】LV1(1S)BP6000
轟音と共に降り注ぐ赤き彗星。そこから現れたのは深紅のモビルスピリット、シナンジュ。それそのものとはアスラとて戦った事がある………
『気をつけろアスラ。あのモビルスピリット、シャーマンの力が注ぎ込まれている』
「あぁ、わかってる」
しかし、このシナンジュは転醒体。これまでとは何から何までが別格であるとアスラ、オニキスの2人は感じ取った。
「さらにマジック、大人の特権。それによりパイロットブレイヴ、フル・フロンタルを召喚して転醒シナンジュに合体!」
ー【シナンジュ+フル・フロンタル】LV1(1)BP12000
モビルスピリット専用のブレイヴ、パイロットブレイヴでその性能を3倍以上に引き上げるシナンジュ。
「フル・フロンタルの召喚時効果、相手はスピリットを破壊しなければ僕は2枚のカードをドロー」
「………龍騎を破壊する」
フリソデにカードをドローはさせまいと龍騎の破壊を選択するアスラ。赤い光に包まれ消滅して行く。
「ヒャハハ!!…相棒とか呼んでるライダースピリットを消しちゃうんだ!!……惨めな選択だね、所詮はその程度なんだよ!」
「へっ……でもこれでオマエはドローできない。本当は手札がなくなって内心焦ってんじゃねぇのか?」
「なんだと……ッ!!」
アスラは決して龍騎に愛着がないと言うわけではない。ここで敢えて破壊する事で逆にフリソデを追い詰めたのだ。
コアも手札も使い切り、準備を整えたフリソデ。アスラに挑発され、ここからが本番だと言わんばかりの勢いでアタックステップを宣言して………
「あぁもうなんでオマエは一々喧しいんだ!!……さっさと消えろよな!!…アタックステップ!!……転醒シナンジュで合体アタック!」
強力なスピリットとなっているシナンジュのアタック。その効果もまたかなり強力なモノであり………
「その効果でトラッシュのコア3つをこのスピリットに!!……LV上昇!」
ー【シナンジュ+フル・フロンタル】(1S➡︎4S)LV1➡︎2
「コアを戻した!?」
「まだまだこんなモンじゃない!!……フル・フロンタルの効果でセイバーブレイブドラゴンに指定アタック!!……そしてフラッシュ【零転醒】!…2コストを支払い、シナンジュを新たな姿に転醒させる!」
「ッ……!」
「不足コストはドラッチェ1体を消滅させて確保だ………来たれ、深紅の巨兵、ネオ・ジオング!!」
シナンジュの体格よりも遥かに巨大な機体が空に圧を掛けながらこの場に出現。シナンジュはその機体の中心部へとドッキング。
巨大なモビルスピリット、ネオ・ジオングへと転醒を果たしてみせた。
ー【ネオ・ジオング+フル・フロンタル】LV2(3)BP24000
「な、なんて大きさなの……!?」
「……これがブラックフォースの黒き力を注ぎ込まれたモビルスピリットか」
これまでにはない強大なサイズのスピリットに驚愕するエール。逆にすぐ横にいる仮面Zはそれがブラックフォースの力によるモノだと看破。そして今のアスラの敵ではない事をはっきりと理解する。
「ヒャハハ!!……転醒アタック時効果、相手トラッシュにあるスピリットカードのアタック時効果をこのスピリットの効果として発揮させる……!」
「ッ……オレのトラッシュから?」
「そうだ。僕はこの効果でオマエの仮面ライダー龍騎を指定。その効果でネクサスを破壊して回復!…赤の世界は破壊だ!」
ー【ネオ・ジオング+フル・フロンタル】(疲労➡︎回復)
指先と肩から有りっ丈のレーザー光線を発射するネオ・ジオング。八方から撃ち出されたそれはアスラの背後に聳え立つ赤の世界を蹂躙、爆散させてしまった。
この時、赤の世界はソウルコアを置き、転醒して場に残る事ができるが、アスラはソウルコアは使えない。よってこの効果は実質無効。コアがないので転醒もできずにそのままトラッシュへと破棄された。
「さらにネオ・ジオングはフル・フロンタルの効果でセイバーブレイブドラゴンにバトルを挑んでいる………!!」
「!」
「合計BPは24000!!……踏み潰してしまえ!!」
指先と肩からのレーザー光線が今度はセイバーブレイブドラゴンを襲う。火炎剣烈火である程度弾き返してはいるが、状況は明らかに劣勢。このままだと破壊されてしまうのは時間の問題である。
「ヒャハハ!!…これでわかっただろう!?…君と僕とじゃ力のレベルが違う!!……やっぱり君は僕に負ける運命から逃げる事はできない。このまま枯れて朽ち果てろォォォー!!!」
圧倒的に劣勢を強いられている仮面ライダーセイバー。己の勝利を確信するフリソデ。
それを見ているエールは「アスラ……」と心配の声が溢れる。そんな彼女を落ち着かせるべく、肩に手を置いたのはここまでアスラを導いた存在である仮面Z。
「大丈夫だよ」
「ッ……Z…」
「あのモビルスピリットからは全く覇気を感じない。それは黒の力に驕り、己を鍛え上げなかった証拠だ………そんなヤツに16年も夢のために己の力、才能を信じて努力を重ねて来たアスラは負けない……!」
仮面Zの言った事は正しくその通りであった。
アスラが手札にある1枚のカードを静かに抜き取り、発揮させると、それは直ぐに証明される…………
「フラッシュ【チェンジ】……仮面ライダーセイバーエレメンタルプリミティブドラゴン!!」
「なに、このタイミングでチェンジだと!?」
「不足コストはセイバーブレイブドラゴンのLVを1に下げて確保」
アスラがその効果の発揮を宣言すると、彼の背後から烈火の炎に燃える龍と青白い冷たい炎を見に纏う龍の2体が出現。
そしてそれらがフリソデにもたらすモノは敗北の道のみ………
「チェンジ効果でシンボル1つのスピリットと合体スピリットを1体ずつ破壊………ギルボア機と合体しているネオ・ジオングを破壊だ……!」
「……………は!?」
一瞬聞き間違いかと思ったフリソデは思わず驚嘆の声を上げてしまう。そして次の瞬間、赤い炎はギルボア機を、青白い炎はネオ・ジオングをそれぞれ貫き焼き尽くして行く。
「そしてその後ブレイブドラゴンと入れ変わる……相反する2つの龍が交わりし時、語り継がれし伝説が咆哮を上げる。来い、エレメンタルプリミティブドラゴン……ッ!」
ー【仮面ライダーセイバーエレメンタルプリミティブドラゴン+火炎剣烈火】LV1
見る影も残らない程にネオ・ジオングとギルボア機を焼き払った2つの龍の姿をした炎はその後セイバーブレイブドラゴンと結合。手を取り合い無敵の姿であるセイバーエレメンタルプリミティブドラゴンに進化。
結果的にフリソデの場には小型モビルスピリットのドラッチェと単騎ではアタックとブロックができないパイロットブレイヴ、フル・フロンタルだけとなる。
「……な、何をしたんだ………いったい何でネオ・ジオングは消えた!?……何で何で何で何で何で!?!!」
「オレはあんなのよりもっとヤバい赤のモビルスピリットを使う人に修行つけてもらってたんだ………このくらいへでもねぇ」
「ッ………ターンエンドだ」
手札:0
場:【ドラッチェ】LV1
【フル・フロンタル】LV1
バースト:【無】
己の最強カードが一瞬にして敗北した事で焦りが見え始めるフリソデ。この時点で力の差を本能的に自覚してしまう。
アスラの言う人物とは赤のカラーリーダーであるイッカク・アカバネ。そんな彼とついさっきまで修行していたアスラにとってはフリソデのモビルスピリットなど大した事なかった。
現に今、息を吸って呼吸をするかの如く軽くあしらった。
「アスラ………そっか、もうアンタはそのくらい強くなったのね」
知らぬ間にそれ程までの実力をつけていたアスラにエールは微笑ましく見守る。だが少しだけ遠い存在になった気がしていて寂しい気持ちもある。
『ゼゼゼ……アスラ、オマエは強くなった……行け…ッ!』
「……おう!!」
何はともあれ、次はアスラのターンだ。オニキスの言葉に背中を押され、残り手札0枚且つバーストが無いと言う状況に陥ったフリソデに最後の一撃を入れるべくそのターンを進めて行く…………
[ターン06]アスラ
「メインステップ!…【チェンジ】の効果で手札に戻っていたセイバーブレイブドラゴンをもう一度召喚!…神託でオレにコアを追加、LV2にアップ!……でもってエレメンタルプリミティブドラゴンもLV2にするぜ!」
ー【仮面ライダーセイバーブレイブドラゴン[2]】LV2(3)BP5000
ー【仮面ライダーセイバーエレメンタルプリミティブドラゴン+火炎剣烈火】(1➡︎3)LV1➡︎2
2体のセイバーが揃い、そんなセイバーに変身したアスラもまたコアが4つ置かれ、LVアップを果たす。
「アタックステップ!!……セイバーエレメンタルプリミティブドラゴンで合体アタック!……火炎剣烈火のアタック時効果でBP7000以下のパイロットブレイヴ、フル・フロンタルを破壊して1枚ドロー…さらに赤のシンボルを1つ追加!」
「!!」
パイロットブレイヴは基本的に場に召喚されていてもその姿は出現しない。フリソデのBパッド上に置かれたフル・フロンタルのカードは終始無言でトラッシュへと送られた。
「フラッシュ!…エレメンタルプリミティブドラゴンの効果!…このスピリットのコアを別のスピリットに移動させる事でそのスピリットのBP以下のスピリット1体を破壊!……オレはエレメンタルプリミティブドラゴンのコア1つをブレイヴドラゴンに移動させる事でBP1000のドラッチェを破壊!!……さらに変身したオレの【神域】の効果で破壊されたスピリットのコアは全てトラッシュだ!」
「くっ……!?」
LVに変動はないが、コアを移動させた事により力を得たエレメンタルプリミティブドラゴン。火炎剣烈火を振い炎の斬撃を発生させ、フリソデの最後のスピリットであるドラッチェを焼き尽くし斬り裂いた。
「そしてこれが本命のアタック!!……オレは言ったはずだぜフリソデ、オマエの言う運命や定めなんてこのオレが捻じ曲げてでも変えてやるってな!!」
「ぁぁぁ……ぁぁぁ、チクショウ。チクショウ……チクショォォォォォォー!!!!!」
〈ライフ2➡︎0〉フリソデ
「ぐ、ぐぁぁぁぁあ!?!」
雄叫びの抵抗虚しく、エレメンタルプリミティブドラゴンは火炎剣烈火を振ってフリソデの残り2つだったライフバリアを破壊。
アスラに勝利を齎して見せた………
その際に黒属性の力がフリソデを襲い、通常よりも多大なバトルダメージが彼に向けられた。しかしこのダメージは彼をブラックフォースのシャーマンから救い出す唯一無二の手段でもあって………
「あ……あぁぁぁ!?!!……抜けていく、黒属性の力が抜けていくよォォォー!?!……何で、何でいつもいつもいつもいつもいつも恥をかくのがこの僕なんだ!?……なんでこんなコモンのドブネズミに負けないと行けないんだよォォォー!!!」
悲痛な思いを叫びまくるフリソデ。彼を倒すためにブラックフォースの力を手に入れた彼にとって、この敗北は恥を晒しているのに近かった。
「どうしてくれんだよシャーマン!!!……オマエの黒の力が弱いからこんな事になったんじゃないのか!?!……まさか本当はオニキスじゃなくてオマエが1番弱いんじゃないだろうな!?!」
『…………』
その矛先は己の内に存在するブラックフォース、シャーマンへと向けられる。ブラックフォース同士の衝突、及びその敗北によって間もなく消え去ろうとするシャーマンであったが…………
何故か彼は不気味過ぎる笑い声を上げていて………
『ズズズ………オレ様はこの時を待っていた……オマエがバトルに負けて衰弱するこの瞬間を!!』
「………は!?」
シャーマンはそこまで言うと、フリソデの身体の内側から黒の力を解き放ち、その力をフリソデの口や耳、鼻へと直接入っていく。
彼の身体を完全に自分のモノとするためだ………
「ゔぁ!?……な、何を……!?」
『ズズズ……今までご苦労だったな。オマエは本当に愚かでどうしようもないクズだったよ……なぁに苦しいのは今だけだ。その内慣れる』
「ま、待って……待ってくれ!!!」
「フリソデ!!」
苦しむフリソデに手を差し伸べるアスラだが時既に遅し。シャーマンは彼の身体を完全に奪うべくラストスパートをかける。
「ゔぁ……ゔぁぁぁぁああ!!!……い、嫌だァァァァァァー!!!?!!……助けて、助けて、助けてくれぇ!!!!!」
「!!」
アスラを阻むように黒の衝撃がフリソデの痛々しい叫びと共に放たれる。そしてその衝撃はブラックフォースであるシャーマンがフリソデの身体を完全に乗っ取った証拠でもあったようで…………
「ズズズ……手間を掛けさせる。だがこれでようやくオレも他の2人みたいに自由を手に入れたぜ」
『シャーマン………』
「オマエ達には感謝してるぜオニキス。こうやって、オレ様は何千年ぶりに新しい身体を手に入れたんだからな。今日の所は見逃してやるが、どちらにせよもうすぐこの世界は黒に染まる……首を洗って待ってるんだな」
フリソデの身体を奪ったシャーマンはそう告げると、黒の力でゲートを作り出し、何処かへと去ってしまう。
アスラはフリソデを救い出せなかった事に自責の念を感じていて………
「……また救けられなかった、あんだけ修行したのに」
『ゼゼゼ………でも諦めないんだろ?……オマエはそう言うヤツだ』
「あぁ、必ずオレはみんなを救ってみせる……例えコモンでも、ソウルコアが使えなかろうとな」
静かに誓いを口にするアスラ。そしてそんな彼の元に仮面Zとエールが集まって来て………
「十分通じたじゃないか。やっぱり君たちの力は本物だ。シャーマンは余裕のある表情こそ浮かべていたが、おそらく身体を奪い取るのに相当な力を費やしていたに違いない。次バトルに負けたら間違いなくこの世から消え去るだろう」
シャーマンの目的はフリソデの身体を手に入れる事だった。これでオニキスを除いた全てのブラックフォース達がこの世界での自分の肉体を手に入れた事になる。
それ即ち、一度ブラックフォース同士のバトルに敗れれば消え去ると言う事に他ならない。
アスラはそこら辺の事情を深く理解していないが、これまでの経験から納得。今度はエールの方へと身体を向けて………
「エール………」
「アスラ………」
「あ、なんかごめんな、ここんとこずっと違う場所で修行してて。ここに帰って来たらオマエからの着信数エグくてビックリした」
久し振りであるが故か、どことなく気まずさを感じるアスラ。アンダーワールドにいすぎたせいでエールの着信に全く気が付かなかったのもその要因の一つ。
だがエールはもうそんな事どうでもいいのか、耐えられなくなってアスラに思わず抱きついた。
「!」
「別にいいわよそんな事………でももう勝手にどっか行かないで……アンタまで失いたくない……失いたくないわよ」
より強く抱きしめる。
姉同然のシイナや親しかったテンドウがいなくなった事で、エールの心中には兄であるエレンとアスラまで失いたくないと言う強い想いがあるようだ。
そんなアスラは照れ臭そうに少しだけ顔を赤らめながら「おう」と小声で返答する。
「あ、そうだ。オマエにコレ返さないと」
「?」
「ウォーグレイモンのカードだよ。悪い、真っ黒になっちまった」
エールにウォーグレイモンのカードを返却するアスラ。しかしそのカードはウィルと戦った時にただのウォーグレイモンではなく、黒い姿のブラックウォーグレイモンとなっている。
「別にいいわよ。色はどうあれ、コレは私のウォーグレイモン。お母様の形見なんだから………」
そうアスラに告げながらそれを受け取るエールだったが、受け取った途端にブラックウォーグレイモンのカードはみるみる内に普通のウォーグレイモンの姿に戻って行って…………
「あれ、戻った?」
「なんで??」
「さ、さぁ……私に言われても」
この事象に不思議がるアスラとエール。しかし、オニキスと仮面Zはコレに少々驚愕していて…………
(……今まさかオニキスの黒属性の力が消えた!?……いや、浄化されたと言うべきか!?……しかし何故彼女にその力が………)
『この女………』
無自覚ながら黒の力が消し去る事ができると言うエールの不思議な力。どうやらオニキスだけは彼女の正体を確信したようで…………
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「!!」
ここはオウドウ都近辺にある洞穴。そこでトゥエンティは目覚め、跳ね起きる。恋人であるカナの身体を乗っ取ったブラックフォース、ヘタマイトから病院の7階より放り出されながらも彼は生きていたのだ。
もちろん、己の生命力だけが生き残れた原因ではない。
「オ、オレは今まで………ッ……そうだカナは…!!」
瞬時に気を失っていた経緯を思い出すトゥエンティ。何よりも大事な恋人であるカナの事を思い出し、無我夢中な様子で飛び出そうとするが………
それを制止させるように声を発する人物が1人………
「ようやくお目覚めか?」
「!!」
自分とは違う声のする方へと首を向けるトゥエンティ。そこにはとある人物がいた。
それは彼がよく知る人物であるが、余りにも意外過ぎる人物………
「オマエ……オロチ……!?」
「おぉ、久し振りだな」
それは元ライダーハンターズの一員であったコモンの大男、オロチ。殺人鬼でおった彼、しかし不思議と今はそれを証明するような殺気は感じられなかった…………
唐突な再会。彼がトゥエンティを助けた理由とはいったい………