テンドウ・カナの身体を乗っ取ったブラックフォース、ヘタマイトに敗れ、意識を失っていたトゥエンティ。
そんな彼が目を覚ますと、そこは見慣れない洞窟。薄暗いそこにはかつての同僚、殺人鬼オロチであった………
「オロチ、何故オマエがオレといる……まさかオマエがオレを助けたのか!?」
「おいおい、そりゃ助けられたヤツのセリフじゃねぇぜ」
オロチに昔のような覇気は感じられない。が、言動から察するに、どうやら本当に彼がトゥエンティの命を救ったらしい。
仮にも殺人鬼であった彼が自分の命を救うなど、トゥエンティにとっては俄かに信じ難い。
「因みにオマエの窮地はコイツが教えてくれた」
「ッ……王蛇のカード!?……見つけたのか!?」
「あぁ、見つけたと言うか、帰って来やがった」
オロチがトゥエンティに見せつけたカードはライダースピリットである王蛇。一度はミラーライダーとしてオーディンの手に渡ったが、彼がアスラとロンに敗れた後、こうして再び彼の元へと戻って来たのだ………
だが、そのカードはすぐさま紫色に発光すると、謎の浮力で宙を飛び、トゥエンティの眼前へと移動して…………
「ッ……なんだ!?」
「……コイツはオマエの所に行きたいんだとよ。貰っとけ……敵は強敵なんだろ?」
「……だが、オレはもう他のライダースピリットの力を使えない」
「知るかそんな事情。つべこべ言わずにデッキに入れろ」
無言で王蛇のカードを手に取る。トゥエンティはそれをデッキケースの中へと差し込んだ。
「……オマエは変わったなオロチ。本当に同じ殺人鬼とは思えん」
「ガハハハ!!……そう言うオマエは何も変わってねぇな。テメェの女、まだ救えてねぇんだろ?」
「あぁ、オレはまだカナどころか誰も救えていない……オレ自身でさえも」
「だったら立て。戦えよ……オレと違ってオマエにはいるんだろ?……仲間ってヤツが」
「!!」
まさかあのオロチに激励の言葉を受けるとは思ってもいなかった。トゥエンティがそう言われて真っ先に思い浮かべるのはアスラの顔………
「来いよトゥエンティ。先ずはこのオレが相手してやる……その強敵とやらに勝てるよう、テメェを鍛え直す」
「………フ……オレに一度も勝てた事がないヤツがよく言う……」
そう告げながらお互いにデッキとBパッドを握る。
「すまない。感謝するぞオロチ……オレは、まだ諦めるわけにはいかない」
「ガハハハ!!……テメェがオレに礼を言う日が来るなんてな」
直後に「ゲートオープン、界放!」のコールをし、2人は特訓を始める。オロチはトゥエンティの怪我などお構いなしに全力で叩き伏せるべく、全力で戦い、トゥエンティもまたそれに応えるべく、そして恋人であるカナの身体を器としたヘタマイト超えるべく、彼と戦いを繰り広げていった。
******
舞台は移り変わり王国の中心都市オウドウ都。その中央に聳え立つ巨大な塔、三王塔にて………
「よく来たな、スーミ村のアスラ」
「おうっす!…お久しぶりですエールの兄ちゃん!!」
アスラ、エール、仮面Zの3人はモビルスピリットを使う三王の1人、エレン・オメガに会いに来ていた。アスラは手を直角に曲げ、ビシッと敬礼する。エレンは三王らしく相変わらず玉座から上からの目線を送っている。
だがしかし、ブラックフォース達との激闘で今や三王は彼1人。一抹の悲しさを感じずにはいられない。
「そして貴様だな。余に話があると言う男は」
「お初にお目にかかります、三王エレン殿……僕の名前は仮面Z。この15年間、いや、16年間、黒の世界やそこに住む怪人、ブラックフォース達を調査して来た者です」
「ッ……あの化け物共を調べただと?」
不気味な狐の面で顔を隠している長身の男性、仮面Z。会話の内容からして、どうやら彼がエレンとの会談を望んだようである。
今までほとんどが未知数であったブラックフォースの情報を持つ人物と言う事で、エレンも彼に興味を示す。
だが、その口から次に放たれた言葉は………
「単刀直入に申し上げます三王エレン。貴方には必ず来るであろうブラックフォースの襲撃に備え、王国中の人々に避難誘導を扇いで欲しい」
「………なに!?」
「はっきり言いましょう、ブラックフォースを討伐するのはこのアスラとその中にいるオニキス、そして僕だけで十分。普通の人間である貴方達には不可能です」
それはブラックフォースと言う仇の相手を他の誰かに任せ、他の役回りをやらされると言う三王の彼にとっては余りにも屈辱が過ぎる内容だった。
しかし、エレンはそれに対して驚きこそしているが苛立ちはなさそうだ。そしてアスラとエールもまたその言葉を初めて聞いていたようで………
「えぇ!?……なんでだよおっちゃん!?…エールの兄ちゃんにも強力してもらおうぜ、相手はいっぱいいるんだしよ」
「そうよ。そのために私も………」
エールが「私もさらに特訓を重ねたんだから」と告げる前に、それを遮るように仮面Zは言葉を呈す。
「無理だ。ブラックフォースは同じ黒の力を持つ者でないと勝つ事は決してできない……ましてや一朝一夕の努力で敵う相手ではない。アスラはこちら側の人間の中で唯一ブラックフォースをその身に収め、尚且つ手を取り合う事ができた人材。彼らを倒せるとしたらこのアスラしかいない」
「……コモンの小僧にできて、余にできぬと言うか」
そんな事を言われて黙っていられるエレンではない。三王らしい圧倒的な威圧感を放ちながら彼に問う………
「……貴様は余の実力を知らぬのか。この三王エレンの………」
「よく知っていますよ。若くして三王の座についた逸材。エックス、オメガ家の当主エレン・オメガ。勘違いしないで欲しい。僕は貴方を弱いと思っているから避難誘導なんて頼んでいるんじゃない。信用できる人間だと思っているからこそだ」
「第一どこに逃げろと言うのだ?……さっきからイマイチ話の先が見えん。ブラックフォースは、あの化け物共はいったい何を企んでいると言うのだ?」
「………それに関しては僕よりも彼に聞いた方が早いでしょう」
「え、オレ??」
仮面Zはそう言いながらアスラの方へと目を向ける。ブラックフォースの狙いや考え方などを知らないアスラはキョトンとするが、彼が聞いたのはその中に存在するブラックフォース、オニキスであり…………
『ゼゼゼ………お呼びか?』
「あ、オニキス」
ー!!
「これがアスラの中にいるブラックフォース、オニキス……!?」
「4体いるブラックフォースの1人か」
アスラの身体の内側から影が伸び、ブラックフォースのオニキスが乾いた笑い声を上げながら霊体となって出現。エール、エレンの2人は初めて彼と対面した。
「オニキス。ブラックフォースの目的を説明してやってくれ。人間の僕が言うよりもブラックフォースである君が言った方が説得力がある」
『…………オレを上から目線で指示するとは、良い度胸してるじゃねぇか人間』
「いいから早く説明してくれよオニキス!!……オレも早く知りてぇぞ!」
『オマエは下から目線で喧しいんだよ!!』
「下から目線ってなんだァァァー!!……オマエもあんまり身長変わんねぇだろ!!」
アスラとオニキスの仲良くなった様子に驚くエールとエレン。この光景だけでアスラと言う人間がこの短期間の間にどれだけ強くなったのかが強く伝わって来る。
その後、オニキスは軽く咳き込むと、説明を開始する。
『オブシディアンや他のブラックフォースがやりたいのは間違いなく『ブラックゲイン』だろうな』
「ブラックゲイン??……なんだそれは?」
見知らぬ単語に疑問を抱いたエレンがオニキスに聞いた。オニキスは『今から説明するっつーの』と付け足すと、さらに説明を続ける。
『ブラックゲイン。端的に言うと『世界のリセット』だな』
「!」
『オレ達ブラックフォースの持つ黒属性の力は4人揃えば世界を丸ごと黒に染め上げる事ができる。アスラみたいに黒の力に耐性のある人間はごく一部。基本的に黒の力に耐性を持たない人間共はゆっくりと滅びていく。そんでもって、オレが欠けた事でそのブラックゲインはできなくなっていたはずだったんだが………』
「ウィルがブラックフォースに覚醒した事で、再びブラックゲインが可能になった………と言う事か」
ブラックフォースの目的は世界を全て黒に染め上げ、世界をリセットする事。そしてウィルもまたそれを望んでいる。だからこそ彼はブラックフォースに忠誠を誓い、自らそこへと足を突っ込んだのだ。
結果、再びブラックゲインが可能となった。いつ彼らがそれをするのかは時間の問題なのだ。そしてそれを食い止めるためにはやはりブラックフォースを倒すしかない。
『ヤツらを葬るのはオレの使命だ。オマエら普通の人間はすっこんでろ』
「そうか。だが、余も国民を置いていく程腐ってはないぞ……必ずブラックフォースを倒す。今は亡き頂点王のためにもな」
「お兄様………」
いくらブラックフォースが相手だとは言え、エレンとて引き下がれない。亡くなった事で友であったと認識した頂点王シイナの顔を頭に浮かべながらオニキスの前で堂々と啖呵を切る。
そしてバトル用端末、Bパッドを構えると………
「オニキスと言ったな。余とバトルしろ……貴様らがブラックフォースを倒せると言うのなら、先ずはこの余を倒してみろ」
「!」
バトルを要求して来た。まるで自分の実力を今から示そうとせんばかりに………
その矛先はアスラとオニキスの2人。彼らは三王たる強者のオーラを全力を肌で感じ取る。
「待ってくれエールの兄ちゃん!!……今はオレ達で争ってる場合じゃねぇ!」
「そもそも、ソイツは諸悪の根源、ブラックフォースの1体なのだろう?……信用しろと言う方がどうかしている。いいから貴様もBパッドを構えよ」
『ゼゼゼ………面白い。相手になってやるぜ、身の程を教えてやる』
「オイィィィイ!!…なんでやる気満々なんだァァァー!!」
アスラが2人をどうにか止めようとするが、聞く耳は持たれない。
三王エレンは自分が頂点王を目指し続ける限り、いつか必ず相手にしなければならない相手だ。全てのカラーカードを揃えた事でその挑戦資格もある………
だが今ではない。やるなら全てに決着をつけてからだ。
「やるんだアスラ」
「Zのおっちゃん!?」
「今ここで君の実力を見せつけてやった方が手っ取り早い。彼も馬鹿ではないはずだ、実力の差を感じれば自ずと手を引くだろう」
仮面Zもバトルを催促し出した。エールもただこの状況を傍観する事しかできないため、アスラは致し方なく懐からBパッドを取り出し、構える………
ただその時、三王塔の扉が開き、とある人物が顔を出した………
「三王エレン。実力を示したいのなら、先ずはこのオレと戦ってもらおうか?」
ー!!!
「………ロン……!」
現れたのはスーミ村のロン。汚れてボロボロになった服装からはかなりの修練を積んだ事が伺える。
この事実はアスラ以外には伝えられていないが、仮面Zの正体は彼の実の父親であるゾン・アーサー。面を被って顔を隠しているため、バレる事は先ずないが、この瞬間は2人の親子の再会の時でもあった。
「ロン……オマエ」
「フ……アスラ、やっぱりもっと強くなって帰って来やがったな………だが、オレはオマエよりももっと強くなったぞ。後、勝手に抜け駆けしようとするな。三王エレンはオレが先に倒す。オマエよりも先にな」
「………へ、負けず嫌いは相変わらずかよ。なんだ、全然変わってなくて安心したぜ」
母であるシイナが亡くなってから初めて会話する息子2人。ロンはアスラの雰囲気の変化、背後にいるオニキスの存在から彼がさらなる力を手にして強くなった事を悟り、アスラもまたロンから底知れない才能をさらに磨き上げた匂いを感じる。
シイナの事に対してはお互いに一切触れようとしない。意味がないからだ。自分が頂点王になる事に変わりはないから………
夢がある限り、お互い前を向いて走っていく事を知っているから……
「さぁ、始めよう三王エレン。カラーカードを8枚集めたオレの挑戦を受けないとは言わせないぞ」
「余程自身があるようだな………いいだろう。相手になってやる。ただし、今は機嫌が悪い。少々手荒にいかせてもらうぞ」
「構わない。寧ろ手荒に来てもらわないと困るのはこっちだ。オレはアスラの後ろにいるバケモノに力を示すのが目的じゃない。今、オレが欲しいのは全力のアンタを倒したと言う称号だけだ」
ロンが静かにBパッドを取り出し構える。その向けた先はエレンだ。アスラに先を越されまいと言う気概も感じる。
その後、すぐさま互いにデッキをセット。バトルの準備を行い………
それは始まった………
………ゲートオープン、界放!!
三王塔にて、人間の力を示すため、三王エレンと挑戦者ロンのバトルが幕を開ける………
先行は挑戦者のロンだ。無言でターンを進めていく。
[ターン01]ロン
「マジック、ヴァイオレットフィールド。手札にある紫のスピリットカードを破棄する事で、3枚ドロー………バーストをセットしてエンドだ」
手札:6
場:【ヴァイオレットフィールド】
バースト:【有】
早々にデッキを回転させる。だが、バーストのみでスピリットの召喚は無し。
[ターン02]エレン
「メインステップ………バーストで防御を行おうとしても無駄だ。白きモビルスピリット、ストライクガンダムを召喚!」
「!」
ー【ストライクガンダム】LV1(1)BP4000
上空から飛来して来たのは三王エレンを象徴するモビルスピリットの1体、ストライクガンダム。
「召喚時効果でバーストカードを破棄!」
「……成る程」
ストライクガンダムの登場に伴い、ロンの伏せたバーストがオープン。
そのカードはライフ減少時にトラッシュのスピリットを復活させるマジックカード「ドラグーンシュート」………
特に耐性もないそのカードはすぐさま砕け散り、トラッシュへと破棄された。
「ドラグーンシュート……これでトラッシュに送ったスピリットを召喚するつもりだったか。温いな、その程度の戦法では余に勝てぬぞ……!」
「知ってます」
相手は仮にもこの王国の中でトップの実力を誇る三王。挑戦者であるロンの戦法など手に取る様に理解できる。
しかし、今のロンにはそれでも負けないと言う自信があるのか、強気で、それでいて平然と言葉を言い返す。
「アタックステップ!……出撃せよ、ストライクガンダム!…効果でコアブースト!」
コアを増やし、レベルアップしながらロンの方へと突き進むストライクガンダム。バーストを破棄され、丸腰となったロンはこの攻撃をライフで受ける他なくて…………
「ライフで受ける………ッ」
〈ライフ5➡︎4〉ロン
ストライクガンダムの拳の一撃がロンのライフバリアを砕き、エレンに先制点を齎した。
「ターンエンド」
手札:4
場:【ストライクガンダム】LV2
バースト:【無】
ストライクガンダム1枚でロンの作戦を封じ込めた挙句ライフまで破壊した三王エレン。これぞ三王のバトルスピリッツであると見せつけるようにこのターンをエンドとした。
[ターン03]ロン
「メインステップ………アーマーバット2体、第一のナイトを召喚!……効果で1枚ドロー」
ー【アーマーバット】LV1(1)BP1000
ー【アーマーバット】LV1(1)BP1000
ー【仮面ライダーナイト】LV2(2)BP4000
鎧をつけたコウモリ、アーマーバットが2体と、ロンが物心ついた時から所持していたライダースピリット、第一のナイトが出現。
「そして、再びバーストをセット」
「性懲りも無くバーストか。また破棄されるぞ」
「なら破棄されなくなるまで伏せるだけです………アタックステップ、オレは召喚した3体のスピリットでアタック!」
「!」
連続攻撃の指示。前のターンに唯一のスピリットでアタックを行なってしまったエレンはこれらの攻撃をライフで受ける事しかできない。
「余は全てライフで受ける………ッ」
〈ライフ5➡︎4➡︎3➡︎2〉エレン
アーマーバット2体による体当たり、ナイトの剣による刺突がエレンの3つのライフを撃破。ロンはライフの差で一気に優勢に立つ。
「ターンエンド」
手札:4
場:【アーマーバット】LV1
【アーマーバット】LV1
【仮面ライダーナイト】LV2
【ヴァイオレットフィールド】
バースト:【有】
「……立派になったな、ロン」
「ッ……おっちゃん」
アスラの横にいる仮面Zことゾン・アーサーがそう小さく呟いた。今目の前にいるのはわけあってスーミ村に置いて来た自分の息子。
親友を止めなければならないと言う自分の責任を全て押し付けた息子なのだ………
自責の念を含めた様な言い方に、アスラは思わずロンに仮面Zの正体を明かしたくなるが、正体はバラさないと言う約束がそれを阻む。
そんな仮面Zの気も知れず、三王エレンは巡って来たターンを進めていく。
[ターン04]エレン
「メインステップ。このターンでバトルを動かす………!」
「そうですか」
その言葉一つで一瞬にして空気が変わる。そして、エレンは手札にある1枚のカードを引き抜き、Bパッドへと叩きつけた。
「挑戦者よ、その心に身体に刻み込め……白夜の宝剣ミッドナイト・サンX………召喚」
「……剣のブレイヴ」
ー【白夜の宝剣ミッドナイト・サンX】LV1(2)BP5000
地面に突き刺さるように現れたのは、まるで夜をも照らせそうな輝きを放つ宝剣。
エレンが所持する強力なブレイヴカードである………
「合体せよ、ストライクガンダム!」
ー【ストライクガンダム+白夜の宝剣ミッドナイト・サンX】LV2(4)BP11000
合体先は当然ストライクガンダム。その鉄の拳で宝剣を握り、構える。
本来であればコスト4のこのスピリットはミッドナイト・サンと合体はできないが、効果でコストを上げることでその条件を満たし、可能とした。
「アタックステップ……ストライクガンダムで合体アタック………効果でコアを増やし、さらに手札のソードストライクガンダムの【換装:ストライカーパック】により回復状態で入れ替える!!」
ー【ソードストライクガンダム+白夜の宝剣ミッドナイト・サンX】LV3(5)BP13000
ストライクガンダムの背部にストライカーパックと呼ばれる飛行物体がドッキング。ストライクガンダムはそこからビームサーバルを引き抜き、通常形態からソードストライクガンダムへとフォームチェンジ。
白夜の宝剣ミッドナイト・サンXと合わせて二刀流の姿となる。
「回復状態になってもアタックは継続している!……受けてもらうぞ、ダブルシンボルの一撃を!」
「ライフで受ける……ッ」
〈ライフ4➡︎2〉ロン
ソードストライクガンダムの二刀流の一撃二撃がロンのライフ2つを破壊。一気に窮地に立たされるロンだが、このタイミングで伏せていたバーストカードが光る。
「ライフ減少のバースト、ドラグーンシュート。トラッシュからコスト6以下の転醒ナイトをLV3で召喚!…不足コストはアーマーバット2体から確保、よって消滅する」
ー【アーマーバット】(1➡︎0)消滅
ー【アーマーバット】(1➡︎0)消滅
ー【仮面ライダーナイト】LV3(4)BP8000
「効果で2枚ドロー」
「……同じバーストだったか。まぁいい、それでも余の勝利は揺るがん」
ドラグーンシュートの効果で転醒の力を持つナイト、転醒ナイトが召喚される。アーマーバット2体が消滅するものの、効果によりロンにカードを多くドローさせた。
「アタックステップは続行だ……再び行け、ソードストライクガンダム!」
「ブロックだ、転醒ナイト」
ロンの残りライフは残り2つ。エレンにとってはここで行かない手はない。しかしその行手を転醒ナイトが阻む。
「BPはソードストライクガンダムの方が上だぞ」
「知ってます」
剣を扱う者同士、このBPバトルは剣術勝負となる。モビルスピリット故の巨大な体格を活かし、ソードストライクガンダムがナイトを圧倒する。
だが、ロンもここでただ黙って見届けるわけにはいかない。
マジックカードを投入していく。
「フラッシュマジック、ソードベント」
「!」
「転醒ナイトのBPを5000上げ、ソードストライクガンダムのコア2つをリザーブに」
ー【仮面ライダーナイト】BP8000➡︎13000
投入されたのはソードベント。ナイトはソードベントのカードをベントインし、巨大な黒槍を装備する。
そしてそれを振い、紫の斬撃を放ち、ソードストライクガンダムの一刀両断を狙うが………
「ソードストライクガンダムは【PS装甲:コスト4以下】によりソードベントの効果を受けない!」
難なく弾き返す。コスト3のソードベントではストライクガンダムは倒せない。
「BPが上がってもまだ互角だぞ!!」
「それも知ってる。だから2枚目だ……ソードベント!」
「!」
「効果で転醒ナイトのBPを5000アップ……合計18000でソードストライクガンダムを超える……!」
ー【仮面ライダーナイト】BP13000➡︎18000
2枚目のソードベントのカードをベントイン。2本目の黒槍を装備し、ナイトもソードストライクガンダム同様に二刀流となる。
その後、目にも止まらない速さでソードストライクガンダムの周囲を縦横無尽に駆け抜け、翻弄。黒槍による斬撃をこれでもかと入れていき、爆散させた。
「ッ……ロンのナイトがお兄様のストライクガンダムを倒した……!?」
「うん。でも………」
ナイトの勝利に愕然とするエールに対してそう呟いたのは彼の実の父である仮面Z。この後に何が起こるのかを知っているからこその発言である。
「!」
「な、何ですかコイツはァァァー!?」
アスラが叫ぶ。ソードストライクガンダムの爆発による爆煙が晴れた頃、その中より姿を見せたのは九つの尾を持つ見たこともない白いスピリット……
「合体したミッドナイト・サンXの効果。場を離れる時、分離して転醒できる……そして現れたのがこの転醒化身!」
ー【白夜の宝剣ミッドナイト・サンX-転醒化身-】LV2(5)BP12000
転醒の力を持つミッドナイト・サンXはそう易々とは倒れてはくれないみたいだ。合体先のストライクガンダムが消えてもなお、強力なスピリットとなって挑戦者であるロンの前へと立ちはだかる…………
「転醒時効果、転醒ナイトをデッキの下へと戻す!」
「なに?」
ミッドナイト・サンXの転醒化身は九つの尾を伸ばし、転醒ナイトに突き刺す。転醒ナイトは堪らず粒子となり、ロンのデッキの一番下へと消え去った。
「ソイツの転醒後が貴様のエースだと言う事は知っている。余はこれでターンエンド」
手札:4
場:【白夜の宝剣ミッドナイト・サンX-転醒化身-】LV2
バースト:【無】
ロンのスピリットを第一のナイトのみにするも、スピリット全ては疲労状態。エレンはこのままターンを終了。ロンのターンへと移り変わる。
「フ……いいな。やはりこれくらいの手応えがないとバトルのやり甲斐がない」
「………余裕だな。とてもではないが、少し前に母親に近しい人を失った者ができる表情ではない」
余裕の表情を浮かべるロンに対し、エレンが亡くなったシイナに対して触れる。
「確かにシイナは死んだ。もうこの世のどこにもいない………だが、それでも進むしかない。ガキの頃、オレは決めたんだ……頂点王になると……!」
「ロン……!」
アスラも気持ちは同じだ。
例え目標だったシイナがいなくなっても、この夢を、約束を諦めるわけにはいかない。
しかし、そこは類似していても、アスラとはまた異なる点もあって………
「そして、シイナが死んで、わかった事もある………」
「?……わかった事だと、なんだそれは?」
「アンタに話す必要はない。オレに勝った後にでも教えてやるよ………まぁ、無理だろうがな」
アスラとはまた違い、また何か別の考え方を見出しているロン。
それを教える事はなく、巡って来たターンを進めていく………
[ターン05]ロン
「メインステップ……第一のナイトのLVを最大にして、アタックステップだ………行け、ナイト!」
ー【仮面ライダーナイト】(1➡︎6)LV1➡︎3
ターン開始の早々。唯一残ったスピリット、第一のナイトで攻撃を仕掛けるロン。そしてその直後に、新たなカードを切る…………
「フラッシュ【煌臨】を発揮!……対象はナイト」
「!」
ソウルコアをトラッシュに置いてスピリットを強化する効果【煌臨】………
ロンがそれを行ったと言う事は、呼び出されると予想できるスピリットは1体…………
「疾風纏いて現れよ……仮面ライダーナイトサバイブッッ!!」
ー【仮面ライダーナイトサバイブ】LV3(6)BP16000
サバイブのカードをベントインし、ナイトが強化変身。疾風を巻き起こすライダースピリット、ナイトサバイブがこの場に煌臨した。
「煌臨アタック時効果、色を無色にし、スピリットのコアを2つトラッシュに送る」
「!」
「転醒化身からコアを外す」
ー【白夜の宝剣ミッドナイト・サンX-転醒化身-】(5➡︎3)
聖剣を振るうナイトサバイブ。その刃先からは疾風の斬撃が放たれ、それがエレンの転醒化身に直撃。消滅には至らないものの、一部のコアをトラッシュ送りにした。
「さらにナイトサバイブLV2、3の効果でターンに一度、デッキの上からカードを3枚トラッシュ。その後回復!」
ー【仮面ライダーナイトサバイブ】(疲労➡︎回復)
回復し、このターンだけで二度目のアタックを可能にした。
そして、今現在のエレンの残りライフは2。ブロッカーも転醒化身が疲労状態となっているため皆無。誰がどう見ても、ナイトサバイブの連撃が決まれば勝利の場面となった………
しかし………
「どうせ、まだまだ足掻けるんだろ?」
「………わかっているじゃないか、フラッシュマジック、リミテッドバリア!………このターンの間、コスト4以上のスピリットのアタックでは余のライフは減らぬ。その攻撃はライフだ」
〈ライフ2➡︎2〉エレン
防御マジック、リミテッドバリア。その効果で張り巡らされた透明のバリアがナイトサバイブの猛攻を耐え抜く。
流石は三王だ。一回の王手程度では落ちない。
「ターンエンド」
手札:4
場:【仮面ライダーナイトサバイブ】LV3
【ヴァイオレットフィールド】
バースト:【無】
口ぶりからして、どうやらロンもこのターンでは決めきれない事を予期していたようだ。
………やはり、決着をつけるならあのカードか………
頭の片隅でそう感じながら、彼はこのターンを終える。そして、ナイトサバイブの猛攻を凌いだエレンの反撃のターンが始まっていく…………
[ターン06]エレン
「メインステップ……再び出撃せよ、ストライクガンダム!」
ー【ストライクガンダム】LV2(3)BP6000
前のターンに【換装:ストライカーパック】の効果で手札に戻っていたストライクガンダムが再召喚される。
エレンはその後、息つく間もなくアタックステップを宣言して………
「アタックステップ………ストライクガンダムでアタック!……その効果でボイドからコア1つを自身に追加」
ストライクガンダムに攻撃指令。だが、この瞬間もまた、エレンは手札にあるカードを引き抜いた………
無論、新たなスピリットを…………
己が最も信頼するモビルスピリットをこの場に顕現させるためである。
「フラッシュ【煌臨】発揮!……対象はストライクガンダム」
「!」
「来る……お兄様のエース……!!」
エールだけではなく、この場にいる全ての人物がそれを察する。
ストライクガンダムから純白の光が溢れ出ていき、その姿形を大きく変化させていく…………
「顕現せよ、フリーダムガンダム!!」
ー【フリーダムガンダム】LV3(4)BP13000
溢れ出した光を弾き飛ばしながら姿を見せたのは、三王エレンの切札フリーダムガンダム。雄々しく翻された青い機翼、美しく輝く装甲は正しく舞い降りた
剣。
「煌臨時効果でナイトサバイブをデッキの下に戻す」
「!」
フリーダムガンダムが登場するだけでロンの強力無比なライダースピリット、ナイトサバイブが粒子に変換され、彼のデッキの底へと沈む。
「言われるまでもないだろうが、煌臨スピリットはその煌臨元となったスピリットから全ての情報を引き継ぐ。そしてこのフリーダムガンダムはバトルの終了時に敵のライフを1つ砕く………」
「!」
ロンの残りライフは2。
フリーダムガンダム、ミッドナイト・サンXの転醒化身、いずれかの攻撃をまともに受けて仕舞えば即敗北と言った状況に陥っている。
だが、ここまでいくつもの試練を乗り越えて来たロンに、その程度の逆境は最早苦でもなんでもなくて………
「貴様の残りライフは2。これで終いだ………!」
「な訳ないだろ。フラッシュマジック、デルタバリア」
「なに!?」
「これによりこのターンの間、コスト4以上のスピリットからは如何なる攻撃でも、オレのライフは0にならない……その攻撃はライフで受ける」
〈ライフ2➡︎1〉ロン
フリーダムガンダムが手持ちのビームサーベルでロンのライフを斬り裂こうとした直後、ロンの放ったマジックカードは絶対防御のマジック。
その効果でライフをギリギリ1つだけ保つ事に成功する。
「くっ………よりにもよってデルタバリアで凌がれたか。ターンエンド」
手札:2
場:【フリーダムガンダム】LV3
【白夜の宝剣ミッドナイト・サンX-転醒化身-】LV2
バースト:【無】
10年以上前、シイナと頂点王を賭けたバトルを行った時のことを思い出したエレン。あの時もデルタバリアで凌がれたのだ。
今は亡き頂点王シイナ。目の前にいる息子であるロンと重なって見える。常に余裕のある表情を浮かべているところが特にそっくりだ。
「オレのターンだ………このターンでアンタのライフを全て破壊し、オレは頂点王に近づく」
「!?」
ロンの一言で空気が一変する。元々、久し振りに顔を見せた彼からは何かしらの変化があるように見えたが………
今、この瞬間、それがより露骨に現れたような気がした。
このターンはロンの修行の成果、その集大成。如何に彼がこの短期間で強くなったのかが証明されるターンだ。
「ターン07]ロン
「メインステップ。第一のナイトを召喚。効果でドロー」
ー【仮面ライダーナイト】LV3(4)BP6000
本日2体目となる第一のナイト。その効果でロンはデッキから1枚のカードをドローした。
「アタックステップ………行け、ナイト」
余りにも短すぎるメインステップを終え、アタックステップへと直行。ナイトが剣を手にライフ目掛けて走り出した…………
「小童如きが……余のライフを全て砕くなど片腹痛い。阻め、転醒化身!」
対峙するナイトとミッドナイト・サンXの転醒化身。果敢に剣を振るい、猛攻を仕掛けるナイトだが、その硬い装甲を前にその剣は砕け散る。転醒化身は自身の強固な装甲を見せつけた所で宝剣をナイトに向けて振り下ろし、斬りつける。ナイトは堪らず爆散し、敗北を喫する。
「他愛もないとは正にこの事。貴様はここから逆転する手があるとでも言うのか?」
「………あぁ、言う。今ここが、シイナがオレにくれたカードを使う時だ」
「なに?」
そう言い放ちながら、ロンは手札にある1枚のカードをBパッドに叩きつける。
そして、それこそがシイナの最後のカード。アスラに託したデュークモンと対を成す存在…………
「孤高の魔王よ、今こそ己が力を世に知らしめよ!!……究極体のデジタルスピリット、ベルゼブモンをLV3で召喚ッ!!」
「ッ……デジタルスピリットだと!?」
ー【ベルゼブモン】LV3(7)BP16000
「ロンが、デジタルスピリットを……!」
光をも塗り潰してしまうような闇の中より出現したのは悪魔とも呼べる姿をした邪悪なデジタルスピリット…………
その名はベルゼブモン。シイナ・メザが所持していたと思われるデジタルスピリットのカード。それを今、息子であるロンが召喚した…………
「ベルゼブモンはコスト3以下の紫のスピリットが破壊された時、1コストで召喚できる」
ロンがベルゼブモンの効果説明を挟むと、アスラの後ろにいるオニキスが口を開ける。
『ゼゼ……アイツ、バケモノだな』
「………オマエの方がバケモノじゃね?」
『そう言う意味じゃねぇよ………あの人間、オマエのずっと横にいたな』
「あぁ、そうだぞ。オレの幼馴染で、ライバルだ」
『………アイツは、使えるかもな。ブラックフォースとの戦いにも、その才能とセンスだけで勝てるかもしれねぇ』
これまでのバトルと、ベルゼブモンでロンに対する評価を改まるオニキス。ブラックフォース戦においての重要な戦力であるとカウントした様子。
そして直後にロンはベルゼブモンの効果を発揮させて………
「ベルゼブモンの召喚アタック時効果、スピリットのコア2つをリザーブに送る」
「コア除去効果か!!……だがフリーダムガンダムの【PS装甲】と転醒化身の【超装甲】の前では無意味!!」
その体内にあるであろうコアを弾き出さんと拳銃から弾丸を連射するベルゼブモンだが、フリーダムガンダムと転醒化身は磨き上げられた装甲でそれを難なく弾き返してしまう。
「何を出そうが同じ事だ………オマエでは余に勝てん!!」
「いや、勝てる………アンタは確かに強い。だが、今のオレはそのさらに上を行く………ベルゼブモン、アタックだ」
三王である誇りを胸に、尊大な態度で接するエレン。如何なるバトルでも負けられないと言うプレッシャーを背負った彼だからこそ言える事だ。
だが、最早負けられないと言う理由に関してはロンも同じ………
ベルゼブモンに攻撃の指示を仰ぐと、直後に手札からカードを引き抜いた。
「フラッシュ【チェンジ】発揮……対象はベルゼブモン」
「ッ………デジタルスピリットを対象にチェンジだと!?」
「その効果で、オレはアンタのリザーブからコアを支払って使用、フリーダムガンダムのコア全てをリザーブに置く」
「!!」
相手のリザーブからコストを支払うと言う、その特異な効果で、ロンはエレンリザーブからチェンジのコストを確保する。そしてフリーダムガンダムから全てのコアが弾け飛び、消滅。
エレンのスピリットはミッドナイト・サンXの転醒化身のみとなる。
さらにチェンジの醍醐味はその効果発揮後に対象スピリットと自身を入れ替える事にある………
「その後、回復状態で入れ替える………今ここで進化を超えろ………モードチェンジ、ブラストモードッッ!!」
ベルゼブモンの背中に漆黒の4枚の翼が新たに生える。そして天よりの贈り物なのか、天空より巨大な機関銃が降り注ぎ、ベルゼブモンは右手を差し上げるかのように上に挙げ、それと合体。その機関銃は差し出されたベルゼブモンの右手と一体化した。
………その威厳のある姿はまさしくオメガモンと同様、究極体を超えた究極体………
ー【ベルゼブモンブラストモード】LV3(6)BP20000
「で、デジタルスピリットがチェンジを使うなんて………」
「ロンのヤツ、また強くなりやがって………羨ましいぞコノヤロー」
その姿を見て、アスラはただただ目をギラギラと輝かせ、口元を大きく開け、他の誰よりも永遠のライバルの進化を喜んでいた……………
「チェンジの効果によりアタックはこのまま続行……ブラストモードは自身の効果で紫のダブルシンボルとなる」
「ッ……ライフを2つ削ると言うのか……!」
回復状態でのアタック。さらにダブルシンボルになる力を発揮するベルゼブモンブラストモード。
残りライフ的に一撃でもそれを貰えば敗北してしまうエレンは咄嗟に1枚のカードを手札から切って…………
「フラッシュマジック、光翼之太刀!!」
「!」
「これによりこのターン、転醒化身のBPを3000上げ、疲労状態でのブロックを可能にする………再び阻め、転醒化身!!」
ー【白夜の宝剣ミッドナイト・サンX-転醒化身-】BP12000➡︎15000
マジックの効果を受け、再びブロックする転醒化身。九つの尾を伸ばし、上空に佇むブラストモードを迎え撃つ。
が、ブラストモードにその攻撃は通じないか、黒き4枚の翼を中心に身体を高速で回転させ、それを弾き返す。
「無駄だ。最早アンタ如きに負けない………オレは、頂点王になる男だからな………!!」
「くっ……」
「やれ、ブラストモードッッ!!」
ロンの木霊に合わせて左手で魔法陣を形成、そこに向かって右腕の機関銃からエネルギー砲を放つブラストモード。
それに直撃してしまった転醒化身は遂に力尽き、爆散。
これはロンが、アスラと同様に劇的な成長を遂げたのだと証明した一瞬でもあって………
「ブラストモードで二度目のアタック………これが、最後だ」
「ッ………ライフで受ける」
ラストのアタック宣言を行うロンからエレンが不覚ながらに感じ取ったのは「恐怖と言う名の悪寒」…………
それは昔、エレンが初めてシイナと対面した時に抱いた感情でもある。
そう。
今のロンは頂点王シイナに限りなく近い存在になりつつあって…………
「………見事だ」
〈ライフ2➡︎0〉エレン
最早自分では届かない存在になってしまった事を悟るエレン。実力を認め、瞳を閉じながらブラストモードが放った弾丸を受け入れる………
やがてライフは砕け散り、エレンのBパッドからは滅多に聞こえない「ピー……」と言う無機質な機械音が鳴り響く。
それはロンが王国の最強カードバトラーの一角、三王エレンに勝利を収めた何よりの証拠の音色。ロンは遂に頂点王になるための大きな一歩を踏み出したのだ…………
「お、お兄様が……負けた!?」
彼の敗北が一番信じられなかったのは妹のエールだった。ダメージにより片膝を突くエレンの様子がウソなのではないかと目を疑う。
しかし、これは嘘ではない。全て現実だ。
およそ10年ぶりに三王を負かしてしまう程のカードバトラーがこの地に誕生したのだ。紛う事なきこの瞬間は歴史的なモノである。
「黒の連中と戦うのはオレとアスラだけで十分だ。アンタは大人しく裏方でもやってるんだな」
「くっ……」
辛辣なロンに対して、言い返す言葉もない。
敗者に口無し。三王と言う強者の立場にいる彼だからこそ、その言葉を噛み締めながら素直に受け取った。
「………なぁ、Zのおっちゃん」
「なんだい?」
「エールの兄ちゃんは……三王エレンは強ぇよ。本当に足手纏いになっちまうのか?」
「………如何に強いカードバトラーと言えども、ブラックフォースの前では黒の力を持たない者は無力だ………ただ、頂点王シイナのように、誰にも超えられないような力を持つ者は………別だけどね」
アスラにそう言われ、仮面Zは実の息子であるロンの方を見た。
ロンの実力は最早頂点王シイナのそれに限りなく近くなってしまった。おそらく、もう一人の三王であるテンドウ・ヒロミもこの時点で変えてしまったいるのだろう……………
それならば、オニキスが言っていた通り、確実に戦力になる………
だが…………
「僕はいったい、何を考えていたんだろうね」
「え?」
仮面Zの気持ちを察する事のできなかったアスラ。この瞬間から、彼は自分の考え方に揺らぎが生じる事となる…………
アスラを含め、こんな幼く、若い子に、世界の存亡を賭けた戦いに巻き込んでもいいものかと…………
「アスラ、ところでその人は誰だ?」
「え………いや、誰って……その、だな」
「?」
ロンがアスラに仮面Zの事を聞いた…………
無自覚ながら自分の父の事を尋ねた彼に対し、嘘をつけないアスラは誤魔化し方がわからずに戸惑う。そんな2人の様子に、仮面Zは笑みを浮かべ…………
「僕の名は仮面Z。アスラを鍛え直した者さ……こんな物騒な仮面をつけてるけど、こう見えておじさん、結構温厚だから。よろしくね、ロン」
「…………こちらこそ」
彼の挨拶に、少しだけ考えるような表情を見せるが、そんなモノは一瞬で終わり、すぐさまロンはアスラの方へと首を向けると………
「アスラ、オマエに話がある……ちょっと来い」
「お?……んだよ、ここじゃダメなのか?」
「あぁ、どうしてもオマエに聞きたい事がある」
「………わかった」
アスラとロンはそう話し合うと、三王塔を後にする。直後にエールは片膝を突くエレンに寄り添う。
「だ、大丈夫ですかお兄様………」
「余の心配をするなエール………三王であるとは言え、兄であるとは言え、敗者に情けをかけるものではない」
「ッ………はい」
彼女を突き放すような言葉を使うエレン。本当は凄まじく嬉しいのだが、未だに素直になれないため、やや棘のある言い方になってしまった………
しかし、この一大事に私情を優先するべきではない…………
「余の力では不足と言うのか………だが、まだやるべき事はある」
「……ようやく国民に避難誘導を行う気になってくれたかな?」
仮面Zがエレンに訊いた。
「……オマエは国と言うモノをわかっていない。ブラックフォース、黒の力だのと言っても、国民は誰一人として信用せぬ。況してや国の危機と言えば混乱し、逆に争いを招く結果になるだろう」
「………じゃあどうするのです。まさか、三王ともあろうお方が国民を見捨てるわけじゃありませんよね?」
「見捨てるものか。余なりの考え方で必ず、国民には指一本と触れさせん」
エレンの覚悟を聞けて安堵したか、「よかった」と口にすると、仮面Zもまた外へ向かわんと扉の方へと足を運んでいく。
「ちょ、ちょっとZ!……アンタまでどこ行くのよ!?」
「少しだけ僕も考え方が変わった。これからその埋め合わせに………ね」
狐が描かれた仮面の奥には、何かしらの決意を感じる。あの一戦には、どうやら見ていた者達の心に大きな変化を齎した様子…………
こうして、ロンの三王戦、その最初の試合は、勝利こそしたものの、今までとは何かが違う変化を見せながら、静かにその幕を閉じるのであった…………
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ザザザ…………
ジジジ…………
ズズズ…………
ゾゾゾ…………
暗闇の中、4つの不敵な笑い声が共鳴し合い、反響した。
その正体は言わずもがな、黒属性の力を操る古の怪物ブラックフォースの3人、オブシディアン、ヘタマイト、シャーマン…………
そして、彼ら3人から力を授かり、より強力なモノとしてその体内に宿したバケモノ…………ウィル。
「やっとこの時が来た。これまで様々な苦難が私を遮って来たが、今日ようやく、私はこの世界を一からリセットさせる事ができる………さぁ行きましょうブラックフォースの皆さん!!」
今宵からは二度と明けない永遠の夜…………
ブラックゲインの時間です………!!
ウィルが目前まで来た願いを叫ぶ。ブラックフォース3人の力さえも、己が力に変えた彼は遂に世界へと宣戦布告を行ったのだった……………
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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