バトルスピリッツ コラボストーリーズ   作:バナナ 

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7コア「ライダースピリットを狩る者」

「いや〜誰かと釣りなんて久し振りだな〜都会の河ってどんな魚釣れんだろう?」

「むえ〜」⬅︎コロコロ転がって日向ぼっこ

「………こ、これが噂で聞いた魚釣り………思ってたより暇ね」

「そりゃオマエ、そこそこ待たないと釣れないしな」

 

 

6人のカラーリーダーからカラーカードを得るべく、オウドウ都周囲にある6つの町を巡るアスラ達御一行は、次なる目的地、ナミラ町へと既に到着していた。

 

本当なら今すぐにでもこの街のカラーリーダーとバトルしたいところだが、テンドウから

『青のカラーリーダーと共にコラボダンジョンの捜索をしろ』

と言われていたため、取り敢えずその時が訪れるまではこうやって近辺の河でのんびりと魚釣りをしていた。

 

アスラは物心付く前からやっていたため、この程度は手慣れたものだが、逆にエールはエックスと言う生い立ちもあって生まれてこの方、一度もそんな事はやった事がなかった。そんな事もあり、竿を握りながらどこか新鮮さを感じていて…………

 

 

「って言うかアスラ、なんでエックスのこの私が魚なんか釣らなきゃいけないのよ?」

 

 

今更疑問を抱いたエールがアスラに聞いた。

 

 

「晩飯取るために決まってるだろ??……お金だって無限にあるわけじゃねーんだし……多分だけどこれから魚釣っとかねーと食い物無くなるぞ」

「魚が無ければステーキを食べれば良いじゃない」

「おのれエックスゥゥゥー!!!」

「むっむえ〜」⬅︎あっ蝶々だ〜

 

 

エールはお金に困った事が無いからこんなデタラメな事を口にできるが、逆にコモンのアスラはお金に困った事しかないため、どれだけお金が大切かを理解している。身分の格差は金銭感覚の違いにここまでの影響を与えるのだ。

 

そしてムエは蝶々を追いかけ回す。

 

 

「エール、オマエそんな事言うと直ぐにお金無くなるぞ………」

「お金なんかあっても邪魔なだけよ」

「おのれエックスゥゥゥー!!!」

 

 

因みにエールは今この場でもアスラには到底得られない程のお金を所持している。エールとしては寧ろ捨てたい気持ちさえあるのだ。

 

今思うと何故性質が真逆な貧乏小僧と箱入りお嬢様が一緒に旅をしているのか不思議でならない。※テンドウ・ヒロミのせい

 

 

「にしてもさ〜どんなとこだろうな??コラボダンジョン」

 

 

(たかぶ)った感情の(ほとぼ)りがようやく冷めたところで、アスラはエールに聞いた。

 

 

「さぁ??…私も行った事ないし想像つかないわ」

「もしもさ!!もしも!!そこにライダースピリットがあったら、オレがまた選ばれたりしねーかな!!」

 

 

竹で作られた竿を全力で河に投げ込みながらアスラはエールに聞いた。その内容は自分とて完全に(おこ)がましいとは思ってはいるが、微かに寄せる願望であった。

 

ただ………

 

 

「あんたね………既に龍騎に選ばれてる癖に何言ってるのよ、ライダースピリットのカードは協調性が無いから他のライダースピリットとは共存できないのよ」

「…………どう言う事??」

「あぁ〜〜もう!!このバカスラ!!…ライダースピリットは1人につき1種類だけって事よ!!」

「えぇぇぇえ!?…そうだったのかァァァー!?」

 

 

この世の常識。

 

その1つ………

 

『ライダースピリットは1人につき1種類しか所持する事ができない』

 

選ばれた人物に絶対的な力を与えると言われているライダースピリットだが、どのカード達も個性が強すぎる上に協調性のカケラもないため、同じデッキに共存ができないのだ。

 

仮に今から向かうコラボダンジョンに新たなライダースピリットが発見されたとしても、既に龍騎と言うライダースピリットに選ばれてるアスラはそれに選ばれる事は無いだろう。

 

 

「ん?待てよ、じゃあオオカブ町で会ったあのミズノとか言う女の人は何なんだよ、いっぱい持ってたぞ」

「知らないわよそんな事。今思うと気味が悪かったわあいつ。急に消えるし」

「まぁまぁ、そうカリカリなさんなって、結構良い人だったぞ」

 

 

そして、そんな何気ない会話の中、エールの握っていた釣竿が全力でしなった。魚が餌に食いかかった証拠だ。

 

 

「え!?…うそ、重っ!?…何よこれ!?」

「おっ!!釣れたな〜頑張れエール!!」

「頑張れって、どうしろって言うのよ!?」

 

 

握っていた釣竿が途端に重たくなってしまった事で困惑するエール。

 

アスラは「仕方ねーなー」と言いながら自身の釣竿を放置し、エールの元まで歩み寄ると………

 

 

「ひゃっ!?」

「いいかエール、良い感じのタイミングがあるからそん時一緒に引くぞ!!」

 

 

アスラはエールの後ろから思いっきり抱きついて来た。いや、性格には手を握って来た。

 

アスラ的にはエールに魚釣りのコツを教えるためだったので当然無自覚だし、善意ある行動のつもりだった。

 

しかし、彼を意識しているエールは違う。アスラの筋肉質でゴツゴツした両手が自分の手に強く握られた途端に顔が真っ赤になって………………

 

 

「な、何すんのよこの………バカスラァァァー!!!!」

「え?……あ、あれぇぇぇぇえー!?!」

 

 

……ザッブゥゥゥーン!!

 

エールが全力でアスラを振り(ほど)く。アスラはその勢いのままに河へと投げ出され、逆にエールの足元には釣り上げられた20センチばかりの魚がビチビチと跳ね上がっていた…………

 

 

******

 

 

アスラが河に落ちてから約2時間が経過した。

 

アスラとエール、そしてアスラの頭の上に乗っかっている謎の小動物ムエは青のカラーリーダーが来るであろうコロシアム前へと足を運んでいた。

 

そこが指定された集合場所であった。

 

 

「青のカラーリーダーってどんなヤツだろうな〜楽しみだぜ!!」

「…………」

 

 

今か今かと楽しみに青のカラーリーダーのご登場を待っているアスラに対し、既に青のカラーリーダーが誰なのかを知っているエールは少しそわそわしている。

 

できれば再開したくはなかったが、状況も状況であるため、会わざるを得ない。仕方無くアスラの隣りで一緒に待っていた。

 

と、そんな時だ。

 

 

「た、たたた大変ですわァァァー!?!」

「「え??」」

 

 

薄い青色のロングヘアの少女が慌ただしい様子でアスラとエールの元へと現れた。2人は彼女の言葉のニュアンスから鬼気迫るモノを感じた。

 

 

「た、大変ですわぁ!?」

「ちょ、ちょっと落ち着けぇぇぇ!!……何があったんですかァァァー!!!」

「た、大変ですわァァァ!?」

「だから落ち着けぇ!!…天然!?………先ずは自己紹介!!…オレはアスラ!!オマエは??」

「はっ!!……(わたくし)とした事が………申し遅れました〜〜このナミラ町の青のカラーリーダーを務めております、エックスの『ローザ・アルファ』と申します!!」

「えぇぇぇえ!?切替早ぇぇ!?…ってか、オマエがカラーリーダァァァー!?!」

「あんた達一々リアクションがデカいわね」

 

 

アスラの必死の呼び掛けにようやく我に帰ったナミラ町のカラーリーダーローザ。彼らの一回一回のリアクションの大きさにエールは思わず冷静にツッコミを入れる。

 

その声に反応するようにローザはエールの方を振り向いた。そしてそのエールの顔を見るなりさっきまでとは打って変わって嬉しそうな表情になって…………

 

 

「あっ!!エールさんじゃありませんか!!ご機嫌よう!!…昨年のエックス一同のお食事会以来でしょうか??…まさかテンドウさんがお選ばれになられた御二人方の1人がエールさんだったなんて!!」

「知り合い??」

「えぇ……ちょっとね」

 

 

エールとローザは同じエックスで、尚且つ同い年であるため、前々から面識がある。嬉しそうな表情を見せるローザとは正反対に、エールは嫌そうな表情を見せている。

 

 

「エールさん、外のカードバトラーは野蛮だとお聞きします。旅の方は大丈夫ですか??」

「フン…そっちこそ大丈夫なのローザ?………あんたみたいなノロマが青のカラーリーダーなんてやっていけてるのかしら?」

 

 

エールはローザにちょっとだけ嫌味を言ってみた。その様子はアスラと最初にあった時同様、妙に偉そうだ。

 

 

「はい!!お陰様でカラーカードの死守率7割をキープできましたわ!!…………あっエールさんは『究極体の進化』が全くできてませんでしたけど、その後どうなんです??」

「ぐっ!?」

 

 

ニコニコと笑いながらエールが気にしてる事を口にするローザ。別にローザ自身に悪意があるわけではないが、エールは昔からローザのこう言うところが苦手だった。

 

 

「あっ……でさ、ローザだったっけ?」

「はい!!そうです!!」

「何が大変なんだ??」

「あっ……………わ、忘れてましたわァァァー!!!」

 

 

アスラがローザに聞く。ローザは大変だった事をすっかり忘れてしまっていた。ただ、今度こそアスラ達に説明して………

 

 

「今回の捜索に(わたくし)も1人護衛役として実力のあるバトラーを選んだのですが、その方が先行して捜索に向かってしまったんです!!」

「えぇぇぇえ!?」

「ちょ、それってヤバイじゃない!?」

 

 

今回のコラボダンジョンの捜索。アスラとエール、ローザを含め、さらにもう1人の4人で行われる予定だった。

 

しかし、そのローザに選ばれたもう1人は「早く旅を進めたい」と言う理由で、ローザに黙って勝手に1人でコラボダンジョンに向かってしまったのだった。その報告を聞いたローザは戸惑い、焦りに焦ってしまって今のこの状況がある。

 

 

「コラボダンジョンは基本的に罠がいっぱい貼ってあって危険なんです!!……あぁ!!もし『ロンさん』に何かあったらどうしましょう〜!?!」

「…………ん??…ロン!?」

 

 

さり気なくそのもう1人の名前を漏らしたローザ。アスラはそれを聞き逃さなかった。その名前は他でもない。自分が生まれた時から共に同じ時間を共有して来た片割れ、そして永遠のライバル、ロン…………

 

 

「あれ、アスラさんお知り合い何ですか??」

「……あぁ!!オレの幼馴染みでライバルだ!!…あの天才イケメンヤロー…抜け駆けするつもりだなぁ………っしゃぁ!!追いつくぞ!!色んな意味で!!」

 

 

ロンの存在を確認したアスラは気合を入れる。

 

その後、アスラ達3人はナミラ町外れに発見された新しいコラボダンジョンまで歩みを進めて行った…………

 

 

******

 

 

 

「……ここです、新しく発見されたコラボダンジョン………!!」

「おぉ、な、なんかイカにもって感じだな………」

「むえ………」⬅︎せやな

「どうでも良いから早く入るわよ」

 

 

ナミラ町外れにある、レイデル森とはまた違う方角にある森。基本は誰も近寄らないこの森にそのコラボダンジョンの石でできた扉があった。

 

アスラ達は早速その扉を押してそのコラボダンジョンへと足を踏み入れる。

 

 

「お、おぉ!?!……広ぇぇえ!!」

「むえぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」⬅︎便乗

「こ、これがコラボダンジョン!?」

(わたくし)も初めて来ましたわ〜!!」

 

 

各コラボダンジョンによってその形などは異なってくるが、今回のコラボダンジョンの中はコンクリートで造られたとてつもなく広大なドーム状の空間。

 

その神秘的な景色にアスラ達は思わず感激の声を漏らした。その声がまた反響して山彦のように聞こえてくるのがまた新鮮でテンションを上げてくれる。

 

 

「聞いた事がありますわ!!こう言う形をしたコラボダンジョンには奥の方に巨大な宝物庫の部屋があるそうです!!それを探しましょう!!ロンさんもそこへ向かってるはずです!!」

「宝物庫!!名前の響きカッケェェェェ!!!」

「むえぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」⬅︎便乗

「さぁ!!レッツゴー!!ですわ!!」

「っしゃぁ!!行くぜェェェー!!」

(………なんかさっきから仲良いわねこの2人…………)

 

 

小学生が知らない場所を探検するようなノリで会話するアスラとローザ。完全に意気投合しているようであり、初対面とは思えない仲の良さだ。2人はどこか気が合うのかもしれない。

 

そんな様子にエールはただならぬ危機感を覚えていて………

 

 

(………あ、アスラはローザみたいな明るい子がタイプなのかしら……………って、何考えてんのよ私はァァァー!!!………べ、別にあのチビスラが誰とくっつこうがか、かか構わないし………!!)

 

 

1人で勝手に自分の意思と闘いを繰り広げるエール。やはり妙にアスラには素直になれない。

 

 

「お〜い!!行くぞエール!!」

「っ……わ、わかってるわよ!!」

 

 

アスラに呼ばれ、エールは駆け足でそこへと向かった。

 

 

ー…

 

 

「そう言えばコラボダンジョンの罠ってどんな感じなんだ??」

 

 

アスラがローザに聞いた。初めてのコラボダンジョンの捜索だったのもあって興味津々だ。

 

 

「はい。地面に仕掛けられてる事が多いらしく、足でそこを踏んでしまうと……………」

 

 

ローザが歩きながら説明していると、その足元から魔法陣のような紋様が浮かび上がる…………

 

その紋様は誰がどう見ても、どこからどう見ても………

 

怪しい………

 

 

「こ、こんな感じのものが出てくるんです…………」

「「……………」」

 

 

踏んだ。

 

今、絶対罠踏んだ…………

 

アスラとエールは内心でほぼ同時にローザのドジをツッコンだ。

 

 

そしてその魔法陣の中から黒い煙で身体を形成させた化け物が出現して来て……………

 

 

「な、なんか出たァァァー!!!」

「あ、アレは『ケモノ』です……む、昔生きてたバトスピ生命体ですね」

「ななな、なんでそんなのが罠の中にあるわけ!?」

 

 

奇声を張り上げる「ケモノ」と呼ばれる存在。すると、黒い煙でBパッドみたいなモノを形成し、バトルのスタンバイを行う。どうやらバトスピで勝たなければここはとうしてくれないようだ。

 

 

「おっ!!流石バトスピ生命体!!バトルしようってか!!っしゃぁ!!オレが相手してやるぜ!!」

 

 

アスラが自身のBパッドを取り出し、バトルの準備を行おうとするが…………

 

 

「待ってくださいアスラさん。ここは(わたくし)がやります!!…アスラさんとエールさんは先に捜索を進めていてください」

「!?」

「ま、まぁ、一応(わたくし)のミスですので…………」

 

 

ローザがアスラの前に出た。どうやら自分の失態を取り戻したいようである。何というか、少しは良いところを見せたいのだろう…………

 

 

「行くわよアスラ」

「えぇ!?いいのかよエール!?」

「問題ないわ。あいつはムカツクけど、実力は本物よ」

「はい!!エールさんよりかは強いのでお任せください!!」

「一言多い!!」

「えぇ……なんかごめんな」

 

 

アスラはローザに謝りながらエールと共に先を急ぐ事にした。

 

 

「さぁ、(わたくし)も探検したいですし、早いとこ終わらせますわよ………」

 

 

古びたコラボダンジョン。その中でエックスの少女ローザ・アルファが昔の人間達の罠から出てきたバトスピ生命体ケモノとバトルスピリッツを行った……………

 

 

 

 

 

 

ー…

 

 

 

「………ここが宝物庫」

 

 

一方1人で先行してコラボダンジョンの捜索に出向いていたロンはようやく最奥部にある宝物庫の部屋へと辿り着いていた。

 

彼が今回先行してコラボダンジョンを捜索しに来たのは当然理由がある。アスラもここに来ることを悟ったからだ。ローザが「テンドウさんに選ばれた方々も来る」と言われた瞬間。絶対にアスラが来ることを確信した。せっかく突き放した差を縮められるわけにもいかないため、こうやって身の危険も顧みず1人でやって来た。

 

 

「それにしてもすごいな……」

 

 

宝物庫らしき場所に広がっていた金銀財宝で溢れ返るお宝の山。それらが放つ神々しい輝きに冷静沈着なロンも流石にたじろいでいた。

 

 

「…………ん?」

 

 

そんな中、一際目立つ一本の杖を見つけた…………

 

嫌、一際目立つのはそれではなく、その杖に埋められていた1枚のカード。気になったロンは何故か無意識のうちに…………

 

いや、引き寄せられるかのように、それを手に取ってしまう…………

 

 

「………金色の………翼……!?」

 

 

それはバトスピカードではあるようだが、効果もテキストも全く書かれてはおらず、ただロンの言うように金色の翼が描かれているだけだった。

 

 

その時だ………

 

 

「………オマエ、ライダースピリットを持ってるな?」

「っ!?」

 

 

背筋が凍りつくような鋭い声が聞こえて来た。ロンは思わずその方向を振り向くと、そこには白銀の髪をした青年が仁王立ちで構えていて………

 

 

「何者だオマエ………どこから……」

「ライダースピリットを持ってるなと聞いている」

 

 

藪から棒にその事だけを質問してくる青年。その様子からして、ロンはどうしても彼が友好的であるとは思えなくて…………

 

 

「あぁ、待っているさ、紫のライダースピリットをな」

 

 

ロンはデッキから取り出した「仮面ライダーナイト」のカードを青年に見せつける。青年はそれを見るなり表情一つ変えず、デッキとBパッドを取り出し、セットした。

 

 

「ならば狩らせてもらおう。その紫のライダースピリットを……!!」

「っ!!………オマエ、盗賊か!!」

「フッ……盗賊か、あんな姑息な連中と一緒にされたくは無いが…………まぁ、やってる事は変わらんか………」

 

 

やはり青年の目的はロンのライダースピリット。ロンは前に盗賊にライダースピリットを強奪されかけた経験から、その青年への警戒をさらに強める。

 

 

「オマエが何者かは知らないが、オレのライダースピリットはオレの言う事しか聞かん。そんなに金が欲しいか??……目の前にこれ程の財宝を目にしてもまだ……!!」

 

 

ロンは気になっていた。

 

あの青年の目的について…………

 

ライダースピリットはカード自身が所有者を選ぶため、その人物にしか扱う事ができない。要するに、それを強奪したところで、売ってお金にする事しかできないのだ。

 

しかし、今現在、彼らの周囲には視界を覆い尽くす程の金銀財宝が存在する。青年がそれに病みつきにならない様子を見る限り、どうしても彼の目的が金だとは思えなかったのだ。

 

 

「…………本当にそれはオマエだけが扱える代物だと思うか??」

「っ!?」

「………まぁいい。バトルの中で実際に見せてやった方が合理的だ………カードバトラーなら「逃げる」の選択肢はないだろう?」

「………あぁ、良いだろう。正直、ここでオレの旅の足止めを食らうのは面倒だが、それよりオマエみたいな顔色の悪い奴に付き纏われる方がよっぽどめんどくさそうだ……!!」

 

 

 

青年の意味深な言葉がロンの心の中に妙に差し込んで来た。

 

だが、カードバトラーならバトルを挑まれて逃げると言う選択肢は無い。ロンもやる気になり、デッキとBパッドを取り出し、セット。バトルの準備を瞬時に行った………

 

そして………

 

………ゲートオープン、界放!!

 

ロンのライダースピリットであるナイトを賭けたバトルスピリッツが2人のコールと共に幕を開ける。

 

先行はロンだ。

 

 

 

[ターン01]ロン

 

 

 

「メインステップ、オレは仮面ライダーナイトを召喚!!」

 

 

 

ー【仮面ライダーナイト】LV1(1)BP2000

 

 

 

ロンは颯爽と自身の相棒である仮面ライダーナイトを召喚。その効果でさり気なくカードをドローした。

 

 

「成る程、それがオマエのライダースピリットか」

「あぁ、まぁな。ターンエンド……」

手札:5

場:【仮面ライダーナイト】LV1

バースト:【無】

 

 

そのターンをエンドとしたロン。次は突然現れた謎の青年のターン。ゆっくりとそのターンを進行していく…………

 

 

「さぁ、ライダー狩りの時間だ……!!」

 

 

 

[ターン02]謎の青年

 

 

 

「メインステップ、ネクサスカード……パンドラボックスを2枚連続配置し、エンドだ」

手札:3

場:【パンドラボックス】LV1

【パンドラボックス】LV1

バースト:【無】

 

 

「っ!?」

 

 

謎の青年の両脇に置かれたのは黒々とした不気味な小箱。そのどう見ても異質で禍々しいその存在はロンに少なくないプレッシャーを与えていて………

 

 

「どうした??ターンエンドだ。オマエのターンを進めろ………それとも臆したか?」

「くっ……なわけないだろう。オレのターン!!」

 

 

だが、この程度であのような男に背を向けはしない。

 

ロンはこのバトルに勝つため、自分のターンを進める。

 

 

 

[ターン03]ロン

 

 

 

「メインステップ!!…鎧魂、ソードールを新たに召喚し、ネクサスカード、ミラーワールドをLV2で配置!!」

 

 

 

ー【鎧魂】LV1(1S)BP1000

ー【ソードール】LV1(1)BP1000

ー【ミラーワールド】LV2(2)

 

 

 

「………空間が反転した?」

 

 

ロンの場に勢い良く放たれたのは鎧を着た浮遊霊、鎧魂と、小型だが、全身が刃物の塊のスピリット、ソードール。そして、ネクサスカードミラーワールドの影響でこの場が鏡向きに変化した。

 

 

「ガラ空きのオマエの場に仕掛けさせてもらう!!…アタックステップ!!オレは場の3体のスピリットでアタック!!」

「!!」

 

 

男には身を守るカードは無いと見てロンが一気に攻勢に回る。ナイト、鎧魂、ソードールの3体が一斉に駆け出した。さらにこの時、配置されたミラーワールドのLV2効果で「ソードール」がオープンされ、ロンはそれを手札に加えた。

 

 

「……全てライフで受ける」

 

 

 

〈ライフ5➡︎4➡︎3➡︎2〉謎の青年

 

 

ナイトと鎧魂、ソードールの剣撃が、男のライフを次々と切り刻んで行った。彼は一気に半数以上のライフを失う。

 

ただ、この際に発生したであろうライフダメージに彼は眉一つ動かさず、何事も無かったかのように澄ました表情をしていた………

 

 

「………ターンエンドだ」

手札:4

場:【仮面ライダーナイト】LV1

【鎧魂】LV1

【ソードール】LV1

【ミラーワールド】LV2

バースト:【無】

 

 

あれ程のダメージに微動だにとしないその男の様子を見て、彼が圧倒的な強者である事を悟ったロン。おそらくあの男はカラーリーダーとほぼ同格の実力者…………

 

 

[ターン04]謎の青年

 

 

 

「メインステップ………仮面ライダービルド ラビットタンクフォームをLV2で召喚……!!」

 

 

 

ー【仮面ライダービルド ラビットタンクフォーム】LV2(6S)BP6000

 

 

 

……鋼のムーンサルト!!

 

……ラビットタンク!!

 

 

 

「オマエもライダースピリットを!?」

 

 

謎の音声と共に赤と青のカラーリングが螺旋状で構成されたライダースピリット、ビルドが現れた。どうやら彼はあのライダースピリットに選ばれているようである。

 

 

「召喚時効果、カードを3枚オープンし、その中の対象カードを1枚手札に…………オレは仮面ライダービルド 『ラビットタンクスパークリングフォーム[2]』を手札に加え、残りを破棄する」

 

 

そんな仮面ライダービルド ラビットタンクフォームの効果はサーチ。青年は新たなるカードを加えた。

 

 

「バーストを伏せ、アタックステップ………行け、ラビットタンク!!」

 

 

青年も場にバーストを伏せると共に遂に動き出す。ラビットタンクが構え、戦闘態勢に入る。さらにこの瞬間のフラッシュタイミングで手札を1枚引き抜いて…………

 

 

「フラッシュチェンジ!!……仮面ライダービルド ラビットタンクスパークリングフォームの効果を発揮!!」

「!!」

「この効果により、BP4000以下のスピリットを全滅させる!!」

「なにっ!?」

 

 

炎の竜巻がロンの場を通り過ぎて行く。それにナイト、鎧魂、ソードールが次々と巻き込まれ、焼き尽くされてしまった。

 

 

「そして、アタック中のラビットタンクと回復状態で入れ替える!!」

 

 

 

ー【仮面ライダービルド ラビットタンクスパークリングフォーム[2]】LV3(6S)BP13000

 

 

……ラビットタンクスパークリング!!

 

ラビットタンクがベルトにボトルのような物を差し込むと、陽気な音声と共に姿形を変え、赤と青のカラーリングにさらに白色が混ざった強化形態、スパークリングフォームへと進化を遂げた。

 

 

「鎧魂の効果!!破壊時にソウルコアが置かれていた時、敵スピリットのコア1つをトラッシュへ送る!!対象は当然オマエのライダースピリットだ!!」

「だがアタックは止まらん!!」

「くっ……ライフで受ける………ぐぅぁっ!!」

 

 

 

〈ライフ5➡︎4〉ロン

 

 

スパークリングのコア1つが鎧魂の効果でトラッシュへと送られるが、そんな事はまるで意に介さず、手に持つドリルのような形をした剣による一撃でロンのライフを1つ斬り裂く。その際に通常よりも大きなバトルダメージが彼を襲った。

 

 

「チェンジの効果で回復状態で入れ替わったスパークリングは2度目のアタックが可能!!……行け!!」

「っ……それもライフだ……ぐあっ!?」

 

 

 

〈ライフ4➡︎3〉ロン

 

 

ドリルのような剣を再びロンのライフへと叩きつけるスパークリング。ロンは余りのダメージに思わず膝を付いてしまう。

 

 

「………ターンエンド………どうする?まだ足掻くか??」

手札:3

場:【仮面ライダービルド スパークリングフォーム[2]】LV2

【パンドラボックス】LV1

【パンドラボックス】LV1

バースト:【有】

 

 

このターンではっきりわかった事は………

 

ロンの予想してた以上にこの男は強いと言うことと、自分などよりも遥かに格上であるという事…………

 

カラーリーダーと同格なんてものじゃない。感じた事も無いこの圧倒的な強さは「三王」に匹敵するかもしれない………

 

 

「足掻く!!……オレはここで立ち止まるわけにはいかない!!」

 

 

ただ、諦めはしない。

 

こんな奴とのバトルで根を上げるようなら頂点王には決してなれないし、ライバルにも顔向けができない。

 

ロンは青年にそれを主張するかのように、いつになく力強い声を張り上げた。

 

 

「愚かだな………」

「ここからが本気だ。行くぞ、オレのタァァァン!!」

 

 

ロンが歯を食いしばりながら力を込め、地面に付けていた膝を立ち上げる。そしてそのまま自分のターンを進行して見せた。

 

 

[ターン05]ロン

 

 

「メインステップ!!鎧魂とソードールを再度召喚!!」

 

 

ー【鎧魂】LV1(1S)BP1000

ー【ソードール】LV1(1)BP1000

 

 

ロンの場に2体目となる鎧魂とソードールが現れた。

 

そしてロンはさらなるカードを手札より引き抜いて………

 

 

「第二の仮面ライダーナイトをLV2で召喚!!」

 

 

 

ー【仮面ライダーナイト[2]】LV2(2)BP6000

 

 

 

「っ……2番目のカードか」

 

 

ロンの場に[2]の識別番号を持つ仮面ライダーナイトが姿を見せる。さらにロンはその力を遺憾無く発揮させ………

 

 

「召喚時効果!!スパークリングのコア2つをリザーブへ!!」

「っ!!」

 

 

2番目のナイトがベルトにあるカード束から1枚抜き取り、剣に付随しているバイザーに装填………

 

………『ソードベント!!』

 

と、また無機質な音声が流れ、ナイトに黒くて太い槍が装備された。ナイトはその槍を手に、青年の場へと駆け出し、場にいたスパークリングに強烈な刺突をお見舞いする。スパークリングはそのコアをリザーブへと散らしてしまうものの、消滅には至らなかった。

 

 

「成る程、それが第二の力か…………だが、それまでだな」

「!!」

「相手のスピリットの召喚時効果発揮後により………バースト発動!!」

 

 

反撃を仕掛けて来たロンに対して青年がそう呟くと、事前に伏せていたバーストカードを発動させる。

 

そのカードとは…………

 

 

「………仮面ライダークウガ ライジングマイティ!!」

「っ!?」

「効果によりシンボル1つ以下のスピリットを破壊!!……散れ、ナイト!!」

「ぐぅっ!!」

 

 

2番目のナイトを襲ったのは激しく燃え盛る火柱。ナイトは跡形も無く消し済みにされてしまう………

 

 

「そしてその後、召喚だ………来い、クウガ ライジングマイティ!!」

 

 

 

ー【仮面ライダークウガ ライジングマイティ[2]】LV1(2)BP6000

 

 

 

青年の場が赤く発光したかと思えば、新たな赤いライダースピリット、『クウガ』がそこにはいた。

 

 

「………ど、どういう事だ!?」

 

 

驚愕するロン。

 

別に2番目のナイトがあっさり破壊された事に対して言っているのでは無い……………

 

 

「何故オマエは『2種のライダースピリットを従えている』!?」

 

 

……そう

 

この世界の常識。

 

その1つ………

 

『ライダースピリットは同じ人物に2種以上は宿らない』………

 

ライダースピリットはそれぞれの個性が独特過ぎるあまり協調性が皆無。それ故に、何人たりとも2種以上のライダースピリットを所有できない。現に今までそう言う事例が1つも無い。

 

だが、今ロンの目の前にいる青年はなんだ…………

 

顔色1つ変えず、何事も問題では無いと言い張るかの如く………当たり前のように全く別のライダースピリットを操っているではないか………

 

 

「どうでもいい事だ。オマエの短い物差しで計れるほどこの世界は小さく無いぞ………!!」

「っ!!」

「それともなんだ……2種のライダースピリットを見て恐れを成したか??……逃げるのはオマエの勝手だが、ナイトはここに置いていけ………」

 

 

この青年はまるで殺戮マシーンだ。あの天才だと言わしめたロンをまるで寄せ付けず、赤子の手を捻るかのように圧倒しているのだから…………

 

しかしそれでもまだ………

 

 

「……いつオレが逃げると言った!!」

「!!」

「マジック、ネクロブライト!!……トラッシュより紫の3コスト以下スピリット1体を召喚する!!蘇れ、ナイト!!……不足コストはソードールを消滅させ確保!!……さらにナイトの召喚時効果、1枚ドロー!!」

 

 

 

ー【仮面ライダーナイト】LV1(1)BP2000

 

 

 

ロンはまだ諦めはしない。目の前の敵がどれだけ強大で、この世の定義の枠からはみ出ていようが関係無い。

 

 

あのバカで真っ直ぐなアスラならば逃げずに立ち向かうだろう…………

 

そう思うと自然とロンは力が入り、戦えるのだ…………

 

 

彼の場に紫色に発光する魔法陣が現れたかと思えば、そこから最初の仮面ライダーナイトが復活を果たした。その代償としてソードールは消滅。ロンはナイトの効果でカードをドローした。

 

 

「アタックステップ!!……ナイトでアタック!!」

 

 

ロンが力強くナイトにアタックの指示を送ると、ナイトは手に持つバイザー付きの剣を構え、戦闘態勢に入った。

 

 

「ネクサス、ミラーワールドの効果!!…ナイトがアタックした時、デッキの上から1枚をオープンし、それがアドベントカードならノーコストで発揮させる!!」

 

 

ナイトのアタックに反応するようにロンのデッキから1枚のカードがオープンされた。

 

そのカードは『ファイナルベント』……最強のアドベントカードである。

 

 

「よってこの『ファイナルベント』を発揮!!……BP15000以下のクウガ ライジングマイティを破壊し、ナイトに赤のシンボルを1つ追加する!!」

「!!」

 

 

 

ナイトがベルトからカードを1枚引き抜き、剣に付随するバイザーにそれを装填…………

 

…………『ファイナルベント!!』

 

と、また無機質な音声が流れる。すると、どこからともなく飛翔して来た黒い翼を持つコウモリ型のモンスターが黒いマントへと変形し、ナイトと合体。空を飛翔して見せる。さらにナイトはマントを体全体に巻き付け、黒槍を形成すると、クウガ ライジングマイティへ向けて急降下した。

 

 

「飛翔斬!!」

 

 

黒槍と化したナイトはライジングマイティを貫いた。ライジングマイティは堪らず爆散してしまう。さらにそれだけに終わらない。一撃で2つのライフを破壊できるナイトのアタック自体は継続中な上に、青年の場にブロッカーはおらず、残りライフも2つ…………

 

 

「トドメだッッ!!!」

 

 

終わりだ。

 

ナイトがバイザー付きで刀身の細い剣を構え、そのライフを斬り裂く………………

 

はずだった…………

 

 

 

「言っただろう………オマエではオレには勝てん」

「!!」

 

 

神経を逆撫でするような鋭く冷たい青年の声がロンを襲った………

 

そして男は手札からカードを1枚抜き取って反撃に出る………

 

 

「フラッシュチェンジ……仮面ライダービルド ゴリラモンドフォーム!!………シンボル2つ以上のスピリットを手札に戻す!!」

「!!」

「ダイヤの雨に散れ……ナイト!!」

 

 

ライフを斬り裂くその直前、突如フィールドにダイヤの雨が降り注ぐ。ナイトはそれに装甲を砕かれ、デジタル粒子となってしまい手札へと戻ってしまった…………

 

 

「……ターン……エンドだ………」

手札:2

場:【鎧魂】LV1

【ミラーワールド】LV2

バースト:【無】

 

 

残った鎧魂だけでは青年のライフは全て破壊する事はできないためか、ロンはそのままそのターンを終えてしまう。

 

次はロンの猛攻を難無く凌ぎ切った青年のターン。鉄仮面のように表情を一つも変えずにターンを進行して行く………

 

 

[ターン06]謎の青年

 

 

 

「メインステップ……ラビットタンクを再召喚……さらに召喚時効果を使用し、その中のライダースピリットを1枚手札に加える」

 

 

 

ー【仮面ライダービルド ラビットタンクフォーム】LV1(1)BP3000

 

 

……鋼のムーンサルト!!

 

……ラビットタンク!!

 

 

チェンジの効果で手札に戻っていたラビットタンクフォームが再び青年の場に姿を見せる。さらに召喚時効果も成功し、彼は新たなライダースピリットのカード「仮面ライダーW ヒートメタル」を手札へと加えた…………

 

 

「さらに手札に加えたこの仮面ライダーW ヒートメタルを召喚!!」

 

 

 

ー【仮面ライダーW ヒートメタル】LV2(3)BP6000

 

 

………ヒート、メタル!!

 

 

ハイテンションな音声と共に、右半身が赤、左半身が銀色をしたライダースピリットが現れる。このライダースピリットもどうやらビルドやクウガとは全く性質が異なるライダースピリットであるようで………

 

 

「……また別種のライダースピリット……!?」

 

 

この曲面でロンはようやく気がついた。

 

あの青年は何も自分のライダースピリットであるナイトを市場に売り捌きたいわけではない。『デッキに組み込みたい』のだ。推測だが、これまでに多くのライダースピリットを奪って来たに違いない。

 

 

「アタックステップ………W ヒートメタルでアタック!!……その効果でコアを1つ追加し、オマエの鎧魂を疲労させる」

「!!」

 

 

ヒートメタルは背に備え付けられている金属棒に炎を宿らせ振り回す。その勢いで弾き出された炎がロンの場に飛び火してしまい、最後の砦だった鎧魂に直撃……疲労状態となってしまう。

 

 

「アタックは継続中…………」

「っ!!……ライフで受ける!!………ぐっ!?」

 

 

 

〈ライフ3➡︎2〉ロン

 

 

 

ヒートメタルはロンの場に直接殴り込みに行き、その炎を纏わせた金属棒で彼のライフを殴打した。ロンのライフは残り2つとなってしまう。

 

 

「オマエのバトスピではオレには敵わない…!」

「…………!!」

「スパークリングでアタック!!」

「ライフで受ける!!………ぐっ…!?」

 

 

 

〈ライフ2➡︎1〉ロン

 

 

 

今度はスパークリングフォームがドリルのような武器でロンのライフをさらに1つ斬り裂いた。いよいよ後が無くなった。未だアタックはしていないラビットタンクのアタックが宣言されて仕舞えばロンは敗北となる…………

 

だが、絶体絶命の崖っ淵の状態に立たされても尚………

 

ロンの目は死んではいない。青年に未だ勝つ気さえある。諦めてなるものか………あいつだったら、アスラだったらまだ諦めない。

 

だったらあいつよりも強くなる自分がここで諦めるわけがない…………

 

 

「いい加減諦めろ……!」

「諦めない!!」

「無駄だと言っている…!」

「無駄じゃない!!」

「ライダースピリットを渡せ…!」

「渡さない!!」

 

 

オレは負けない………

 

アスラがオレのライバルでいる限り………

 

この世から『ソウルコア』を与えられなかったアスラがオレの友でいる限り………

 

そんなアスラがオレと同じ『頂点王』になると言う夢を諦めない限り………

 

 

「オレは諦めない!!」

「じゃあ死ね………!!」

 

 

圧倒的な強者の前に臆す事なく前を向き続けるロン。しかしそれは感情論に過ぎない。口では諦めないとは言っても、実際はもう敗北なのだ……反撃する術も無い………

 

ラビットタンクが地を蹴りロンのライフ目掛けて走り出す。そして、眼前まで接近すると、青い拳がロンの最後のライフを砕く……………

 

 

その直前だった…………

 

 

「仮面ライダー龍騎を召喚!!」

 

……!!

 

 

どこからともなく現れた赤いライダースピリットがその拳を寸前で押さえ込んだ。ロンはそのライダースピリットと、召喚した喧しい奴の声をよく知っていた……………

 

 

「何だ…このライダースピリットは……」

 

 

 

 

オイそこの顔色悪いの………勝手にオレのライバルに手ェ出すんじゃねェェェー!!!!

 

 

 

 

「アスラ………っ!!」

 

 

青年とロンが声のする方へと顔を向けると、そこにはBパッドを展開して龍騎を召喚したであろうアスラがいた。エールとムエも確認できる。

 

 

「やっと追いついたと思ったら何やってんだロンテメェ!!勝手にやられてんじゃねェェェー!!!」

「余計な事を……あと少しで倒せたのに」

「ウソつけぇ!!…鏡見てみろ!!ボッロボロだぞオマエ!!」

「今からデッキが進化して怒涛の反撃が始まるとこだったんだ……」

「強がんじゃねぇ!!オマエそーゆーとこだぞ!!」

 

 

久し振りの再会だったアスラとロン。にもかかわらず、いつもの言い合いが早速始まる。だが、毎度の事ながらこの言い合いはお互いがお互いを信用しているからこそできるものであって…………

 

 

「今日は素晴らしい1日だな………何せ、オレの元にライダースピリットが勝手に集まって来るのだから……!」

「うるせぇ!!ライダースピリットいっぱい持ってるからって偉そうにすんじゃねぇ!!!……今からオレがロンの代わりにオマエをぶっ飛ばしてやるっ!!」

 

 

アスラと銀髪の青年によるバトルスピリッツがここに幕を開けようとしていた……………

 

 

 




《オマケストーリーズ!!》

『自己紹介』

「オレ、スーミ村のアスラ!!よろしくなローザ!!」
「はい!!こちらこそよろしくお願いしますわアスラさん!!」
「でもってオレの頭の上にいるオレンジ色がムエだ!!」
「むえぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」⬅︎よろしくお嬢さん!!!
「まぁ!!なんて可愛いらしい子犬さんですの!!」
「むえ〜!」⬅︎どや〜!
「えぇ!?…なんで直ぐに犬ってわかんだ……やっぱオレの感性がおかしいのか!?」
「何言ってんのよバカスラ……ムエはどう見ても可愛い犬じゃない!!」
「むえ〜」⬅︎アスラの髪あむあむ
「だからオマエはオレの髪を食うなァァァー!?!」
「ふふ、可愛いですわ〜」



******



《キャラクタープロフィール》
【トーマ・ヘラクレス】
性別:男
年齢:27歳
身長:179cm
身分:レア
使用デッキ:『カブテリモン』
好きなモノ:死闘、可愛い女の子
概要:この国の緑のカラーリーダー。イケメンでナルシスト。兎に角可愛い女の子が大好き。本編でもエールが何度もナンパされた。男の名前は気に入った奴でも覚えない。


《用語設定》
【コラボダンジョン】
昔の人々が死ぬ前に造る所謂古墳のような場所。金銀財宝をはじめ、ライダースピリットやレアなデジタルスピリットなどのお宝が眠っている可能性がある。ただ、悪用されないために様々な罠が施されているケースが多い。そのため、カラーリーダーや三王が率先して捜索に向かう。

******


最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

ハッキリ言いましょう!!謎のオレンジ小動物ムエはイヌヌワンモチーフ!!

ビルドの変身音は余りにも長過ぎるためカットしました。今回みたいに描写力の関係上で変身音をカットする回は出てくるかと思います。まぁ、目立って長いライダーは少ない印象ですし、結果あまりやらないかもですが………

この作品においてのライダーは「仮面ライダー」ではなく、「ライダースピリット」である事を頭の片隅に置いていてください笑

次回は久し振りに2対1の変則マッチになります。ポケモン剣盾の影響もあって『レイドバトル』と呼称させていただきます。前作の複雑なものとは違って、基本的には通常のバトルに近い感じで展開していくつもりです。


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