バトルスピリッツ コラボストーリーズ   作:バナナ 

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8コア「バースト発動!!第二の龍騎!!」

エックスの身分を持つアルファ家の少女、ローザ・アルファは自分で引っかかってしまった罠から出てきたバトスピ生命体、ケモノとバトルスピリッツを行っていた。

 

だが、それも丁度終止符が打たれようとしていた………

 

当然、ローザの勝利でだ。

 

 

「行ってください、ズドモン!!」

 

 

ローザの使役するデジタルスピリット、ズドモンが金槌のような武器を地面に叩きつけ、そこから青い稲妻を走らせる。ケモノはそれに直撃し、激しい断末魔を張り上げながら消滅してしまう…………

 

 

「ふぅ〜殲滅完了!!ですわ!!……さぁて!!私もエールさん達と合流しなきゃ!!ですわ!!」

 

 

 

このコラボダンジョンの捜索が始まってからというもの、全く触れられてはいなかったが、

 

このエックスの少女、ローザ・アルファは天才だ。何せ、アスラやエール、ロンと同じ15歳にして既に国を代表するカードバトラーの1人、カラーリーダーに抜擢されているのだから………

 

彼女の実力はそこが知れない。ロンはなんとか勝つ事ができたようだが、果たしてアスラは彼女から青のカラーカードを受け取る事ができるのか…………

 

 

 

******

 

 

 

一方、コラボダンジョンの最奥部の宝物庫ではロンをあと一歩まで追い詰めた白銀の髪の青年の前に新たにアスラとエール、ムエが立ち塞がっていて………

 

 

「オレとバトル??身の程知らずも良いとこだな。そこの奴見たくボロ雑巾にされたいか?」

「へっ!!気にすんな!!こちとら生まれた時からボロ雑巾なんでなッッ!!」

「………良いだろう……少々合理性に欠けるが、先ずはオマエのライダースピリットを狩ってやろう」

 

 

青年が展開していたBパッドをロンではなく、今度はアスラの方へと向ける。バトルを行う対象を変えたのだ。アスラも当然それに合わせるようにBパッドを展開し、その際にお互い召喚していた全てのスピリットが消滅した。

 

 

「待てアスラ、オレも………ぐぅっ!?」

「バカヤロウ!!今は起き上がんな!!……安心しろ!!オレが必ずあいつをぶっ飛ばすッッ!!」

「そいつは癪だ」

「癪ってなに!?」

 

 

ロンもそのバトルに混ざろうとするが、さっきのバトルで青年につけられた傷が疼き、立ち上がれるのがやっとな状態。アスラの加勢など到底不可能だった……………

 

ロンでも全く相手にならない程の相手だ。実際アスラ1人でどうこうできるとは考えづらい………

 

 

「待ちなさいよバカスラ!!」

「エール!?」

 

 

いざバトルと言う時にエールがBパッドを展開しながら割って入って来た。

 

 

「なんか知らないけど、あいつはあんただけでは勝てないわ…………私も一緒にバトルしてやるわよ……!!」

「おぉ………エール、ありがとなッッ!!」

「べ、別にあんたのためじゃないわよ!!」

「えぇ!?…じゃあ誰のため!?」

 

 

いや、本当は敵の力量も見ようともせず無鉄砲にバトルを挑んだアスラのためだ。どちらにせよアスラにとってこれ程心強い助っ人はいない。彼は大いに喜んだ。

 

 

「……『レイドバトル』か……女の方はライダースピリットを所持していないようだが良いだろう、2人まとめてかかって来い」

 

 

『レイドバトル』………

 

この世界におけるバトスピのルールの1つ………

 

所謂1対複数のバトルの事を指す。

 

ルールは普通のバトルとは大して変わらない。

 

1人側のプレイヤーは通常通り、いつものバトスピを行う。

 

複数人側のプレイヤー達は1つのフィールドやリザーブを共有しながらバトルを行う事になる。そして初期手札は合計が4枚になるよう振り分けられる。今回はアスラとエールの2人であるため、初期手札は2枚ずつのスタートだ。

 

 

「っしゃぁ!!行くぞエール!!」

「私はエックスよ、指図しないでくれる?」

「えぇぇぇえ!?こんな時でもォォォー!?」

「……ライダースピリットを狩らせてもらうッッ!!」

 

 

……ゲートオープン、界放!!!

 

 

少々もたつきながらも、謎の青年とアスラ、エールペアのレイドバトルがコールと共に幕を開けた。レイドバトルのルール上、先行は1人側のプレイヤーであるため、青年のターンから始まる………

 

 

 

[ターン01]謎の青年

 

 

 

「メインステップ……仮面ライダーW サイクロンジョーカーを召喚」

 

 

 

ー【仮面ライダーW サイクロンジョーカー】LV1(1S)BP2000

 

 

 

……サイクロン、ジョーカー!!

 

 

緑の疾風に加え、紫電が場に迸る。そこにいたのは仮面ライダーW サイクロンジョーカー。青年が所有するライダースピリットの1種だ。

 

 

「早速出たわね、ライダースピリット」

 

「召喚時効果でコアを増やす………ターンエンドだ」

手札:4

場:【仮面ライダーW サイクロンジョーカー】LV1

バースト:【無】

 

 

そのターンをエンドとする青年。次はアスラとエールペアのターンが始まるのだが、その前にアスラはある事に気付いた。

 

それは彼にとってはとんでもない事であって………

 

 

「お、おいエール………スゲー事に気がついた………」

「ん?なによアスラ?」

「お、オレのリザーブにソウルコアがあるゥゥゥー!!!」

 

 

レイドバトルにおいての複数人側のプレイヤー達は場やリザーブを共有する。つまり、今回のアスラはエールと同じリザーブになるという事。その影響もあってか、アスラの念願でもあったソウルコアが遂に彼のリザーブに配置されていた。

 

 

「おぉ!!なんか知らねーけどオレのリザーブにソウルコアがァァァー!!!!……よっしゃァァァー!!!神様ありがとうございまァァァーす!!!」

「うっさいわねアンタ!!!ソウルコアくらいではしゃがないでよッッ!!」

「これがソウルコアか〜〜!!」

「…………」

 

 

強敵を目の前にしているにもかかわらず、目の前のソウルコアによっていつもより落ち着きが無くなるアスラ。ロンはその緊張感の無い様子を見て、少々呆れ気味だった。

 

 

[ターン02]アスラ&エール

 

 

「っしゃぁ!!メインステップだ!!……オレは早速ソウルコアを使って贅沢に仮面ライダー龍騎をLV2でしょ………」

「ネクサスカード、勇気の紋章をLV2で配置するわ!!」

 

 

 

ー【勇気の紋章】LV2(1)

 

 

 

アスラが念願のソウルコアを使って龍騎を召喚しようとするも、エールがそれを遮るようにネクサスカードである勇気の紋章を配置。彼らの背後に太陽を模した紋章が浮かび上がった。

 

今回はレイドバトルであるため、アスラのBパッド上にもエールの勇気の紋章のカードが現れた。

 

 

「オイィィィー!!!何やってんだエールゥゥゥー!!オレにソウルコアを使わせてくれェェェー!!!」

「フン!!…うっさいわね、先ずはネクサスを置いてシンボルを稼ぐのは定石でしょ!!」

「ぐっ!!……返す言葉がねぇ……」

 

 

エールがアスラに上から目線で偉そうに告げた。ただ今回ばかりは正論。アスラは初めてのソウルコアを前にして少々舞い上がっている。

 

 

「でも、次のターンには使わせてやるわよ……は、初めてのソウルコア……なんでしょ?」

「お、おぉ!!マジか、エール!!…ありがとなッッ!!」

「べ、別にアンタのためじゃ無いわよ!!……勝つため!!そ、そうこれは勝つための算段よ!!」

 

 

エールは若干顔を赤くしながらアスラに約束した。アスラはエールの中にある優しさが五臓六腑に染み渡るのを感じた。

 

 

「取り敢えずこのターンはエンドよ……!!」

「おうっ!!」

アスラ手札:3

エール手札:2

場:【勇気の紋章】LV2

バースト:【無】

 

 

「ネクサスカード、勇気の紋章……成る程、ライフ減少時にBP5000以下を破壊する効果か………」

 

 

アスラとエールがエンドを宣言する中、青年は確実に勝利するために現状を分析していた。その様子から、彼らに馴染もうとする気が一切ないのが伺える。

 

 

「オレのターン………」

 

 

[ターン03]謎の青年

 

 

 

「メインステップ……オレはネクサスカード、パンドラボックスを3枚連続配置する!!」

 

 

 

ー【パンドラボックス】LV1

ー【パンドラボックス】LV1

ー【パンドラボックス】LV1

 

 

 

「な、何アレ……不気味ね」

「ロンとバトルしてた時もあったなアレ」

 

 

青年はロンとのバトルでも使用した黒き小箱を今度は3枚配置した。その異様な不気味さと存在感はアスラ達にも伝わって来た。

 

 

「ターンエンド」

手札:2

場:【仮面ライダーW サイクロンジョーカー】LV1

【パンドラボックス】LV1

【パンドラボックス】LV1

【パンドラボックス】LV1

バースト:【無】

 

 

だが青年もエールの勇気の紋章がある限り、この序盤でのアタックは不可か、そのターンをエンドとしてしまう。

 

 

 

[ターン04]アスラ&エール

 

 

 

ドローステップ時にエールが配置していた勇気の紋章、LV2効果が起動され、アスラ達はドロー枚数を1枚増やし、その後増えた分をトラッシュへと破棄した。

 

 

「メインステップ………エール、ホントにこのターンはオレの好きにやって良いんだな?」

「そこまでは言って無い気がするけど………まぁ良いわ、アンタの力、存分に見せ付けなさい!!」

「おう!!オレはネクサスカード、ミラーワールドを配置!!」

 

 

ー【ミラーワールド】LV1

 

 

 

「……さっきの奴と同じネクサスカードか………」

 

 

このターンはエールと交わした約束通り、アスラが全力で動く。いつものネクサスカード、ミラーワールドが配置され、空間が鏡向きに変化した。

 

 

 

「でもって!!仮面ライダー龍騎をLV1で召喚!!」

 

 

 

ー【仮面ライダー龍騎】LV1(1)BP2000

 

 

 

アスラの持つ赤きライダースピリット、龍騎が姿を現した。その召喚時効果が発揮されるが、今回は失敗してしまい、どれもトラッシュへと破棄された。

 

そして、アスラの念願の時が訪れる………

 

 

「さらに、お、オレは………リザーブのソウルコアを使い………龍騎のLVを1から2へ!」

 

 

どれだけこの瞬間を待ちわびた事だろうか。生まれた時からまるでこの世界から忌み嫌われているかの如くソウルコアがBパッドから生成されなかったアスラが今………

 

15年の歳月を経て………

 

ようやくソウルコアが…………

 

 

 

シーン…………

【仮面ライダー龍騎】LV1

 

 

 

「アレ………??」

「何やってんのよ、アンタ………」

 

 

おかしいな。

 

ソウルコア…………

 

動かないんですけど…………

 

龍騎のLVが上がってんだけど…………

 

Bパッド、ちゃんとバトルモードにして叫んだのに………あれ??なんで??

 

いや、まさかソウルコアを目の前にしてこれが使えないなんて……………多分認識されなかったんだろ。では気を取り直してもう一度………

 

 

「オレはリザーブのソウルコアを使い、仮面ライダー龍騎のLVを1から2へアップ!!」

 

 

 

………シーン……

【仮面ライダー龍騎】LV1

 

 

「ウソだろ!!……ま、全く動かねェェェー!?!!」

 

 

本来ならば言葉を発するだけでコアは動かせるはずなのだが、何故かアスラに限ってはソウルコアが動かなかった………それはそれはもう接着剤で引っ付いているかの如くピクリともせず………

 

 

「コノヤロォォォー!!!動きやがれコンチクショー!!!」

「アンタ………惨めね………」

「うっせェェェー!!!」

 

 

アスラがBパッド上のソウルコアを手で無理矢理動かそうとするが、そもそも手動には対応してもいないため、当然ながら動かない。

 

そんな様子に、エールは「しょうがないわね」とアスラに告げながら………

 

 

「私が置いてあげるわよ、ソウルコア………」

「っ!!……ま、マジかエールゥゥゥー!!オマエってやっぱめちゃくちゃ優しいヤツなんだなッッ!!」

「っ!!……べ、別にアンタのためじゃ無いわよ……こ、これも勝つためなんだからね…!!」

 

 

そう。

 

アスラがソウルコアを動かさないならエールが動かせば良い話だ。それならば龍騎の上にソウルコアが置かれるはずである。

 

そんなアスラに褒められて、エールはまんざらでもない表情を浮かべながら宣言する………

 

 

「私はリザーブのソウルコアを仮面ライダー龍騎に追加し、LVを1から2へ上げるわ!!」

 

 

宣言したエール。当然のようにソウルコアもリザーブから離れ、龍騎のカードの方へと移動する。

 

そして、カードの上にソウルコアが置かれ、宣言通り龍騎はLV2へとアップする…………

 

はずだった…………

 

 

 

ーバチィッ!!

 

 

「「え??」」

【仮面ライダー龍騎】(1➡︎2S➡︎1)LV1➡︎2➡︎1

 

 

 

カード上にソウルコアが乗せられ、龍騎のLVが上がった瞬間。微弱な電流が龍騎のカードから流れ、その置かれたソウルコアをリザーブへと叩き返してしまった………

 

 

「な、なんでソウルコアを弾くのよコイツゥゥゥー!!」

「オレが知るかァァァー!!!」

 

 

エールは余りにもキテレツな現象に驚愕を通り越して怒りが先走ってしまう。

 

 

(………ま、まさか龍騎はソウルコアを必要としないんじゃなくてソウルコアを受け付けないの!?……だからソウルコアが生み出せないアスラに宿った??)

 

 

内心でそう推理するエール。現状ではよく分からなさすぎてそう考えるしか他にはなかった。

 

 

「まぁいいや元からねぇソウルコアだ。エール、ソウルコアを動かすのはオマエに任せるぜ」

「……切替早いわね、アンタ………リザーブのソウルコアは勇気の紋章に移動させ、勇気の紋章のコアは龍騎へ!!よってLV2へアップ!!」

 

 

 

アスラの期待は完全にぶち壊された。

 

ただ、バトルは続いている。気持ちを切り替え、アスラは自分のバトルスピリッツを続行させて行く………

 

 

「オレはさらにバーストをセットしてアタックステップッッ!!…行け龍騎!!」

「ライフで受ける」

 

 

 

〈ライフ5➡︎4〉謎の青年

 

 

 

龍騎がアスラの指示で青年のライフ1つを拳で玉砕する。その際に青年に多大なバトルダメージが発生しているはずなのだが、彼は冷徹な表情を一切崩さず、仁王立ちで構えていた。

 

 

「………ターンエンドだ……」

アスラ手札:1

エール手札:3

場:【仮面ライダー龍騎】LV2

【勇気の紋章】LV2

【ミラーワールド】LV1

バースト:【有】

 

 

アスラもここに来て緊張感を覚え始めてきた。ロン同様、あの青年からとてつもない強さを感じたのだ。生物的本能が彼を危険であると瞬時に悟らせた…………

 

アスラとエールのターンはエンドとなり、青年のターンが始まる。

 

 

[ターン05]謎の青年

 

 

 

「メインステップ………仮面ライダービルド ラビットタンクフォームを召喚!!……召喚時効果で新たなライダースピリットを手札へ」

 

 

 

ー【仮面ライダービルド ラビットタンクフォーム】LV1(1)BP3000

 

 

 

……鋼のムーンサルト!!

 

……ラビットタンク!!

 

 

「あっさっきの奴!!………なんか見覚えあるんだよな〜」

 

 

赤と青色が螺旋状になっているライダースピリット、ビルド ラビットタンクフォームが青年の場に現れる。さらにその効果で青年は『仮面ライダークウガ タイタンフォーム』を新たに加えた。

 

だが、その効果はアスラが前のターンに伏せていたバーストのトリガーとなって………

 

 

「召喚時効果発揮後によりバースト発動!!……双翼乱舞!!カードを2枚ドロー!!………なぁエール……」

「なによ?」

「……もうちょっとドローしたいからソウルコアを払って双翼乱舞のメイン効果を発揮させてくれ!」

「はぁ!?なんでよ!!アンタさっきソウルコアの移動は私に任せるって言ったばっかじゃない!!」

「まぁまぁ、後悔はさせねーから!!」

 

 

バースト効果を持つマジックカード『双翼乱舞』はバースト発動時にノーコストで2枚ドローし、その後、通常のコストを払う事でさらに追加で2枚のカードをドローできる。

 

ただ、今アスラとエールのコアは龍騎に乗っている2つと勇気の紋章の上に載っているソウルコアのみ。ソウルコアを動かす事ができないアスラは龍騎を消滅させる事でしか追加効果を発揮できないのだ。だからこうしてエールに懇願している。

 

 

「…………ハァ……わかったわよ………私は勇気の紋章の上にあるソウルコアと龍騎のコア1つを払って、双翼乱舞のその後の効果、アスラに追加で2枚ドローさせるわ」

「サンキューエール!!この借りは期待しててくれよな!!」

「はいはい、まぁ私の足を引っ張られるのも癪だしね」

 

 

エールがソウルコアを支払い、アスラに4枚ものカードをドローさせた。だが、手札が増えたからとて、青年は悠長に彼らを待ったりはしない。このターンで畳み掛けて来る………

 

 

「……先ずは邪魔な勇気の紋章を破壊する……オレは仮面ライダークウガ タイタンフォームのチェンジを発揮!!対象はラビットタンク!!」

 

 

ー!!

 

 

「効果によりネクサスカード1つを破壊する。消え去れ、勇気の紋章!!」

「っ!!……そんな、私の勇気の紋章が……!!」

 

 

勇気の紋章がヒビ割れ、崩れ去っていく。これでアスラ達は自分達のライフ減少時に迎撃する事ができなくなった。

 

 

「そしてその後、対象となったスピリットと入れ替える……来い!!仮面ライダークウガ タイタンフォーム!!」

 

 

 

ー【仮面ライダークウガ タイタンフォーム】LV1(1)BP6000

 

 

 

ラビットタンクがデジタル粒子に変換され、青年の手札に戻ったかと思えば、代わりに紫のボディを持つ大地の戦士、仮面ライダークウガ タイタンフォームが現れた。

 

 

「さらにオレは手札に戻ったこのラビットタンクを召喚!……召喚時効果で再び新たなライダースピリットを手札に加える」

 

 

 

ー【仮面ライダービルド ラビットタンクフォーム】LV1(1)BP3000

 

 

チェンジの効果で手札に戻っていたラビットタンクが再び現れ、また新しいライダースピリットのカードを手札へと加えた。

 

 

「そしてバーストを伏せ、アタックステップッッ!!……3体のライダースピリットでアタック!!」

「っ!!来たぞエール!!…ライフで受けるか!?」

「受けるしかないでしょ!!…アンタがさっき生意気にコア使わせるから!!」

「っしゃぁ!!んじゃライフで受ける!!……ぐぅっ!?」

「っ!!……凄いダメージ………」

 

 

 

 

〈ライフ5➡︎4➡︎3➡︎2〉アスラ&エール

 

 

 

3体のライダースピリットによる波状攻撃がアスラとエールのライフを次々と破壊して行く。その際に彼らはロン同様、通常以上の凄まじいバトルダメージを味わってしまう。

 

 

「くっ……ロン、オマエずっとこんなダメージ食らってたのか………!」

「大した事ないだろ……その程度で痛がるようならオマエはその程度の男」

「ボロッボロのヤツがんな事言ってんじゃねェェェー!!!…嘘に決まってんだろ!!痛くねーし!!」

「……なにアンタまで強がってんのよ………」

 

 

いつもの事だがちょっとした事で言い合いになるアスラとロン。ロンはアスラとどちらが先に頂点王になるか競い合っているため、どんな事であってもアスラには勝ちたいのだろう。

 

クールな見た目だが、彼は意外と負けず嫌いなのだ………

 

 

「………ターンエンドだ」

手札:2

場:【仮面ライダーW サイクロンジョーカー】LV1

【仮面ライダービルド ラビットタンクフォーム】LV1

【仮面ライダークウガ タイタンフォーム】LV1

【パンドラボックス】LV1

【パンドラボックス】LV1

【パンドラボックス】LV1

バースト:【有】

 

 

そんなアスラ達3人の言葉の掛け合いなど全く気にも止めず、銀髪の青年はそのターンをエンドとした。

 

と、その時だった。アスラ達の耳に聞き覚えのある声が聞こえて来たのは…………

 

 

「あっ…アスラさーん!!エールさーん!!ロンさーん!!!……ご機嫌麗しゅうですわ〜!!」

「………ローザ……」

 

 

ここでコラボダンジョンの罠を突破して来たローザが3人と合流を果たした。ローザの明らかな緊張感の無い声に同じエックスの身分を持つエールは呆れる。

 

 

「おぉ!!ローザァァァー!!あの罠突破して来たんだな!!スッゲェェェー!!!」

「ふふ、えっへん!!ですわ!!」

 

 

アスラがローザとの再会を喜ぶ。そんな彼に褒めちぎられたローザはドヤ顔を披露した。

 

 

「あれ、ところでそちらのお方はどちら様でしょうか??……何故アスラさんとエールさんがバトルを…………ハッ、まさか、これもコラボダンジョンの罠!!?」

「うん。もう説明が面倒だからそう言う事にしておくわ」

 

 

勝手に現在の状況を解釈するローザ。いい加減ツッコミに回るのに疲れて来たエールはそう言う事にしておくことにした。

 

 

「ロンさん!!私あれ程コラボダンジョンは危険であると言いましたのに!!…こんなに傷だらけになって!!」

「………」

「……なんですか、その澄ましたお顔?」

 

 

天然が過ぎるローザとの会話は基本的に面倒臭い。それをカラー戦で既に学習しているロンはスーンとした澄まし顔でこの状況を華麗に流していた。まぁ、なんと言うか、ほぼ無視に近い。

 

 

「にしてもアイツ、めちゃくちゃ強いじゃ無い!!……どうなってんのよ、ライダースピリットの複数持ちなんて……!!」

「大丈夫だエール!!オマエの『メタルグレイモン』で一気に大逆転だぜ!!」

 

 

このバトル。アスラは既に対局を見ている。逆転の鍵を握るのはエールの持つオメガのデジタルスピリット、「メタルグレイモン」であると踏んでいた。

 

 

「はぁ!?…さっきの双翼乱舞の借りはどうしたのよ!?アンタがやっつけなさいよ!!……それに成熟期もまだドローできてないのよ!!」

 

 

そう。

 

エールもできれば早くメタルグレイモンを呼び出しておきたかった。しかし、その進化前であるグレイモンが未だに手札には来て来ないのだ。元々コストが高いメタルグレイモンは召喚しづらいし、無理に召喚したら使えるコアが減るため、エールは召喚を躊躇っていた………

 

が、アスラには小さな脳味噌なりの策があった………

 

 

「だから大丈夫だって!!……オレが足場を作る!!…このターンで決めるぞ!!」

「……っ!?」

 

 

アスラの言っている意味がわからなかったエールだが、あまり悠長に喋る事はできない。そのターンを進行していく………

 

 

 

[ターン06]アスラ&エール

 

 

 

「メインステップ!!行くぞエール!!……オレはドラゴンヘッド1体とシャムシーザーを3体を連続召喚だァァァー!!!」

 

 

 

ー【ドラゴンヘッド】LV1(1)BP1000

ー【シャムシーザー】LV1(1)BP2000

ー【シャムシーザー】LV1(1)BP2000

ー【シャムシーザー】LV1(1)BP2000

 

 

 

「!!」

 

 

龍の頭部のみとなったスピリット、ドラゴンヘッドと、赤い身体に数本のトゲを生やしたトカゲ型のシャムシーザーが3体場に現れる。

 

アスラの言っていた「足場」とはこう言う事だ。これなら大量に軽減シンボルを有しているメタルグレイモンは………

 

 

「たったの1コストで召喚できる………」

「あぁ!!ぶちかましてやれエール!!オマエの実力!!」

 

 

このタイミングのためにアスラは必要以上に手札を掻き集めた。

 

アスラはこのバトル、ずっとエールのバトスピに期待していた。メタルグレイモンならばこの状況を打開できると思っていた。それは新人交流戦の時にそれと対峙したアスラだからこそ感じた事であって………

 

そしてエールはそのアスラの、仲間の期待に応える……

 

 

「えぇ、しょうがないわね!!わかったわよッ!!……7コストの内、6つの軽減を確保した事により、完全体、メタルグレイモンを1コストで召喚ッッ!!」

 

 

 

ー【メタルグレイモン】LV3(4S)BP11000

 

 

 

 

「……成る程、女はデジタルスピリットの使い手だったか」

 

 

地中から地響きが鳴り、そこから体の半分がサイボーグと化した機竜型の完全体スピリット、メタルグレイモンが咆哮を張り上げながら飛び出して来た。その効果はアスラ達も知っての通り、単純且つ強力。

 

 

「召喚時効果!!……BP12000以下のスピリット1体を破壊!!」

「……タイタンフォームは効果では破壊されない」

「だったらそれ以外を破壊するまでよ!!……ビルド ラビットタンクフォームを破壊!!」

 

 

メタルグレイモンが登場するなり胸部のハッチを開き、そこからミサイルを発射。そのミサイルは一直線の弾道を描き、青年のラビットタンクフォームを破壊した。

 

これで一気にアスラとエールが優勢………

 

になったかに見えたが………

 

 

「その程度でオレに勝てると思ったか?……召喚時効果発揮後のバースト、仮面ライダークウガ ライジングマイティを発揮!!……シンボル1つ以下のスピリット1体を破壊する。散れ、メタルグレイモン!!」

「っ!!……そんな!?」

「さらに場にクウガがいればカードを2枚ドローする……クウガ タイタンフォームがいるため、カードをドロー……」

 

 

青年が伏せていたバーストカードが勢い良く反転すると共にメタルグレイモンの足場から火柱が立ち上り、それをあっさりと焼き尽くしてしまう。

 

 

「そしてその後召喚する……来い、ライジングマイティ!!」

 

 

 

ー【仮面ライダークウガ ライジングマイティ[2]】LV1(1)BP6000

 

 

 

青年の場が赤く輝いたかと思えば、そこには新たなるクウガ、赤いボディを持つライジングマイティが現れていた。

 

 

「……せっかく召喚したのに………このままじゃ………」

 

 

究極体が扱えないエール。完全体のメタルグレイモンが通じないのならば事実上負けたに等しい。

 

内心では既に敗北を覚悟していた…………

 

だが、

 

それをアスラは許さない………

 

 

「まだだ、まだだエールゥゥゥー!!!」

「アスラ!?」

「言ったろ、この借りは期待しててくれってなァァァー!!!……オレはマジック、コールオブロストを使用!!……トラッシュからスピリット1枚を持ち主の手札に戻す!!………トラッシュにあるエールのメタルグレイモンをエールの手札に戻す!!」

「!!」

 

 

アスラはこの程度の逆境で根を上げたりはしない。手札からマジックを使用し、エールの手札にメタルグレイモンのカードを握らせた。

 

エールは気づいた。今の自分は1人では無い。一緒に旅をして来たアスラが目の前にいる。コモンでチビでうるさいけど、心の底から信用している彼がいる……………

 

こんなに心強いパートナーは他にはいない………

 

 

「もっかいいけェェェー!!!」

「わかってるわよ!!私はエックス、この世で最も気高い一族!!だからこのバトルは私が終わらせてあげるわッッ!!……ドラゴンヘッドとシャムシーザー1体を消滅させ、メタルグレイモンをLV2で再召喚!!」

 

 

 

ー【メタルグレイモン】LV2(3)BP9000

 

 

 

アスラのドラゴンヘッドとシャムシーザーの2体が消滅したかと思えば、エールの心から出た強い叫びと共に再びメタルグレイモンが咆哮を張り上げながら地中から飛び出して来た。

 

 

「召喚時効果でクウガ ライジングマイティを破壊!!」

「!!」

 

 

再びメタルグレイモンは胸部のハッチを開いてミサイルを発射。ライジングマイティを爆破に追い込んだ。これで青年の場に残ったのは疲労しているクウガ タイタンフォームとW サイクロンジョーカーのみ………

 

対するアスラとエールの場は龍騎と2体のシャムシーザー………そしてメタルグレイモンの4体。青年の残りライフは4………ここに来てようやくアスラ達が完全な優勢に立って見せた。

 

 

「アタックステップ!!……行きなさい、メタルグレイモンッ!!……アタック時効果でBP10000以下のW サイクロンジョーカーを破壊して回復!!」

「!!」

 

 

 

ー【メタルグレイモン】(疲労➡︎回復)

 

 

 

メタルグレイモンが左手のアームを伸ばし、青年のW サイクロンジョーカーを貫いた。W サイクロンジョーカーは堪らず爆発してしまう。

 

ただ、ここまで追い詰められていると言うのに、青年はその鉄仮面とも言える冷徹な表情を崩さない。

 

その理由が彼の手札にはあって………

 

 

「そのアタックはライフで受ける」

 

 

 

〈ライフ4➡︎3〉謎の青年

 

 

メタルグレイモンが左手のアームを伸ばし、今度は青年のライフ1つを貫いて見せた。

 

 

「アスラ!!アンタのシャムシーザー借りるわよ!!」

「あぁ!!どんどん使え!!」

「シャムシーザー1体でアタックッッ!!」

 

 

エールがアスラのシャムシーザーでアタックを仕掛ける。地上を這って進むシャムシーザーが向かう先は当然青年の残り3つのライフ。

 

だが、彼はここだと言わんばかりに手札のカードを引き抜き、反撃に転じ…………

 

 

「フラッシュ!!仮面ライダーW ルナトリガーのチェンジを発揮!!対象はクウガ タイタンフォーム!!」

 

 

ー!!

 

 

「この効果により、ライダースピリット、龍騎を疲労!!……追加効果でトラッシュにコア1つを追加!!」

「なにっ!?」

 

 

ー【仮面ライダー龍騎】(回復➡︎疲労)

 

 

弾道の読めない黄色い弾丸がアスラの龍騎を襲う。龍騎はさらに撃ち抜かれ、膝を付いて疲労状態へと陥ってしまった。

 

 

「さらにその後、対象となったスピリットと回復状態で入れ替える!!……タイタンフォームと入れ替わり、来い!!…W ルナトリガー!!」

 

 

 

ー【仮面ライダーW】LV1(1)BP3000

 

 

 

……ルナ、トリガー!!

 

 

クウガ タイタンフォームがデジタル粒子に変換され、青年の手札に戻り、代わりに銃を武器に持つ右半身が黄色、左半身が青色のライダースピリット、W ルナトリガーが現れた。

 

 

「チェンジの効果でブロッカーが!?……アスラさん、エールさん!!」

「大丈夫だローザ」

「へ?」

「この程度の壁、アスラが越えられないわけがない……!!」

 

 

チェンジの効果を巧みに使い、このターンを凌ぎ切る算段だと理解したローザは思わずアスラ達の名を叫んでしまうが、ロンは真逆に冷静でいた………

 

それは昔からアスラと言う人間を知っている彼だからこそで………

 

 

「アスラァァァー!!!期待してんだからねッッ!!」

 

 

エールが腹の底からアスラの名を叫ぶ。

 

 

「あぁ!!任せろォォォー!!」

 

 

それに応えるようにアスラも腹の底で叫ぶと、彼は最後の手札を引き抜いて、それを使用する…………

 

 

「フラッシュマジック、ストライクベントッッ!!……BP8000以下のスピリット1体を破壊し、カードを1枚ドローする!!……不足コストはメタルグレイモンのLVを下げて確保!!……龍騎、ルナトリガーを破壊だッッ!!」

「なにっ!?」

 

 

この土壇場でようやく青年の冷徹な鉄仮面に綻びが生じる。

 

龍騎は左手にある龍を象ったバイザーにストライクベントのアドベントカードを装填。

 

……『ストライクベント!!』

 

と、音声が鳴ると、龍騎の右手に赤き龍の頭部が装着される。龍騎はさらにそこから炎の塊を発射し、青年の場にいたW ルナトリガーを焼き尽くした。

 

 

「シャムシーザーのアタックは継続中よ!!」

「くっ!!……ライフで受ける!!」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉謎の青年

 

 

結果的にブロックされなかったシャムシーザーの渾身の体当たりが青年のライフ1つを砕いた。

 

 

「……凄い、アスラさん………あのプライドのお高いエールさんがあそこまで誰かを信じ切るなんて……」

 

 

この光景を目の当たりにして、ローザは驚愕していた。それは幼い頃からエールを知っている存在だからこそ口に出来る事。育てられ方もあって、あの誰に対してもどうしても高飛車な態度を取ってしまうエールが誰かを根拠も無しに信用しているなど、自分からしたらとてもではないが信じがたかった。

 

 

「アスラはそう言うヤツだ。昔から」

「!?」

「アイツと一緒にいるとどうしてもバカが飛び火して、最後までバトルを諦めたく無いと思ってしまう……あの女も影響されたんだろ」

 

 

アスラの心情。「諦めないのがオレのバトスピ」

 

エールもそんなアスラに似てきたと言えば怒られそうだが、確かに彼女にとって良い意味の影響を与えられていたのは間違いなくて………

 

 

「このバトル、アスラ達の勝ちだ!!」

 

 

ロンはアスラとエールの勝利を確信した。

 

 

「っしゃぁ!!エールッッ!!……後は2体目のシャムシーザーとメタルグレイモンのアタックで勝てるッ!!」

「えぇ、先ずはシャムシーザーでアタックよ!!」

 

 

エールの指示により、シャムシーザーが地上を這って移動する。目指す場所は当然青年の残り2つのライフ。

 

 

 

 

 

オレはアイツらに負けるのか??

 

 

完璧だった場を崩され、一気に劣勢に立ってしまった青年はこのバトルでの敗北が頭を過っていた。

 

だが、その直後。

 

その脳裏にはまた別のモノも映し出された…………

 

それは彼にとって掛け替えの無い、大事な思い出…………

 

 

 

ー『………ふふ……じゃあ、私に何かあったら必ず助けてね…トゥエンティ!!』

 

 

色鮮やかな花園で自分に微笑んで語りかけて来てくれたのは自分が最も愛し、最も信頼する者。

 

そうだ。オレはあの子の………

 

『カナ』のために…………

 

『カナ』のために…………

 

 

 

負けてはダメなんだァァァァァァァァァ!!!!!!

 

 

 

「「!!」」

 

 

 

これまでの冷徹だった青年からは想像もつかないような怒号が発せられる。その鬼気迫る様子は明らかに異常そのモノ。アスラとエールはこれまでにない程のプレッシャーを感じた。

 

そして青年はこのアタックを防ぐべく、手札のカードを1枚引き抜いて………

 

 

「フラッシュマジック、救世神撃波!!カードを1枚ドローし、バーストを伏せる!!」

「っ!!ここに来てバーストカードを伏せやがった!?」

 

 

激昂する青年は咄嗟に引き抜いたマジックで、咄嗟にその効果でドローしたカードをバーストゾーンに伏せた。

 

 

「そのアタックはライフで受ける!!」

 

 

 

〈ライフ2➡︎1〉謎の青年

 

 

2体目のシャムシーザーの体当たりが青年のライフをさらに破壊し、遂に残り1つまで追い込む事に成功するが…………

 

青年の伏せたバーストが勢い良く反転して…………

 

 

「ライフ減少により、バースト発動!!……アルティメットウォールッ!!………その効果によりこのアタックステップを終了させる!!」

「なにっ!?」

「ウソ、ここまで来てまだあんなカード握ってるなんて………」

 

 

青年の発動させたバースト効果により、アスラとエールの場に立ち込める猛吹雪。シャムシーザーはおろか、龍騎やメタルグレイモンでさえも身動きが取れない。

 

 

「くっ……決め切れなかった………ターンエンドよ」

「大丈夫だ!!ここバッチリ凌いで次のターンで絶対勝つぞ!!」

「っ!……えぇ、そうね!!任せなさい!!」

アスラ手札:1

エール手札:3

場:【シャムシーザー】LV1

【シャムシーザー】LV1

【仮面ライダー龍騎】LV1

【メタルグレイモン】LV1

【ミラーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

結果的にメタルグレイモンをブロッカーとして残す形でエンドとなったアスラとエール。次はあの青年のターン。ライダースピリットを集める意外に何か別の使命があるのか、先程までと違って余裕を失った彼はこのターンからさらなる攻撃をアスラ達に仕掛けてくるのは明白であって………

 

 

[ターン07]謎の青年

 

 

 

「メインステップ………マジック、双翼乱舞。デッキから2枚のカードをドローし、仮面ライダービルド ラビットタンクフォームを召喚!!……効果を発揮し、オレは新たなライダースピリットを手札に加える」

 

 

 

ー【仮面ライダービルド ラビットタンクフォーム】LV2(4S)BP6000

 

 

 

青年はこのバトルで2体目となる鋼のムーンサルト、ラビットタンクを召喚し、今一度その効果で新たなるライダースピリットをデッキから引き込んだ。

 

 

「アタックステップ!!……ラビットタンクでアタックを行う!!」

 

 

攻撃を仕掛ける青年。さらにこのフラッシュタイミングで手札に加えたライダースピリットの効果を発揮させて………

 

 

「フラッシュチェンジ!!……対象はラビットタンク!!」

 

 

ー!!

 

 

ラビットタンクが黒くて禍々しい何かをベルトに装着する。そうした途端。ラビットタンクは黒い靄に身が包み込まれていき…………

 

新たなる進化を遂げる…………

 

 

…………ヤベーイ!!

 

 

そんな音声が鳴り響いた。それと同時に黒い靄が晴れて行く………

 

そこにいたのは赤と青のビルドではなく、これでもかと黒く変色した真っ黒なビルド………

 

その名は…………

 

 

 

「仮面ライダービルド ラビットタンクハザードフォーム!!」

 

 

 

ー【仮面ライダービルド ラビットタンクハザードフォーム】LV3(4S)BP12000

 

 

「な、何アレ……アレがライダースピリットだって言うの??」

「なぁに!!色が黒くなっただけだろ!!」

 

 

その見た目の異常さに恐怖を覚えたエール。アスラは同様の気配を感じつつも、エールを心配させまいと無理矢理気丈に振る舞った。

 

だが、2人の予想は残念な事に的中する………

 

このライダースピリットは見た目通り………ヤバイ。

 

 

「チェンジ効果!!…BP14000以下のスピリットを全滅させるッッ!!」

「なに!?………うぁぁ!?」

 

 

ハザードフォームから放たれるドス黒いオーラがアスラとエールの場にいるスピリット、シャムシーザー2体、龍騎、メタルグレイモンはなす術なく吹き飛ばされてしまう。

 

そして悲劇はまだまだ続き………

 

 

「え??……うぁぁあ!?!」

 

 

吹き飛ばされたメタルグレイモンはエールの近場で力尽き、大爆発を起こしてしまった。エールの悲鳴がアスラの耳を貫き、彼は思わずその方へと顔を向けるが………

 

そこで目に移したのはボロボロの状態で転がっているエールだった…………

 

 

「エールさん!?」

「エールーーー!!!!!……テんメェェぇぇえ!!!」

 

 

青年に怒りを爆発させるアスラ。ローザもいても立ってもいられなくなって、思わずエールのそばに駆け寄った………

 

 

「ハザードフォームのアタックは継続中だ!!……クタバレッッ!!」

「ッッ!!……ぐああぁぁぁぁ!!」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉アスラ

 

 

知らぬ間にアスラの目の前に立っていたハザードフォームが全力でライフバリアごとアスラをぶん殴る。アスラは余りの威力にBパッドごと吹き飛ばされてしまい、そのままレンガでできたダンジョンの壁に激突。

 

その際に壁は崩れ、アスラはこの部屋とは別の部屋まで飛ばされてしまった。

 

 

「アスラーー!!!!」

 

 

ロンがアスラの名を叫ぶ。本当ならば立ち上がってアスラと共に戦いたいがどうしても手出しできないのが歯痒かった…………

 

 

ー…

 

 

「……ぐっ……あ、あのヤロー……今更本気出して来やがった………」

 

 

崩れ去った瓦礫の山。そのすぐ横で倒れているアスラはそう呟いた。

 

身体はもうボロボロ。全身が逃げろと悲鳴を上げている。

 

だがそれでもアスラは………

 

 

「早くしねーとエールが……!」

 

 

倒れた仲間。エールの事を考えていた。早くしないとあの青年にやられるのは時間の問題だったからだ。こんなところでのんびりとしてられない。

 

………そんな時だ。

 

アスラのすぐそばで聴き慣れた鳴き声と足音が聞こえて来たのは…………

 

 

 

 

「むえぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」⬅︎ツッテケテー!

 

 

謎のオレンジ小動物、ムエがアスラの元までツッテケテーと走り寄って来た。

 

 

「………ムエ……!?」

 

 

ムエはそのまま瓦礫の山を「むえぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」と叫びながら飛び越え、アスラの元まで辿り着いたかと思えば、そのまま通り過ぎてしまう。

 

アスラがその方へと首を傾けると…………

 

 

「むえっ…むえ〜!」

 

 

そこにはある1枚のカードが落ちていた。

 

赤いカードだ。ムエはそのカードをアスラに示すかのように口に咥えた。

 

ただ、その赤いカードの名前は…………

 

アスラもよく知っていたあのカードだ………

 

 

「こ、これって………ひょっとして…………」

 

 

このカードがなんだって良い。構やしない。今はこれに懸けるしかないのだから………

 

そう思うと、アスラはムエが咥えているそのカードに手を伸ばし、触れると、そのカードは最初に龍騎を手にした時同様、Bパッド上のデッキに溶け込んで行った…………

 

 

ー…

 

 

 

「エールさん!!エールさん!!……目を開けてください!!」

 

 

場面は戻り、コラボダンジョンの宝物庫。ローザは気を失ったエールに必死に声を掛けていた。

 

その時に彼女は約1年前の事を思い出していて………

 

 

ー『凄いじゃないかローザ!!来年から青のカラーリーダーに抜擢だって!?』

ー『最も気高きエックスの者でもその若さで成し遂げる者は少ないぞ!!大したものだ!!』

ー『オマエはアルファ家の誇りだ!!』

 

 

それは15にして青のカラーリーダーとなった自分を称賛し、讃える声。正直言って嬉しかった。こんなに誰かが自分に期待してくれているのだから。

 

そして当時、それと同時に聞こえて来たのは………

 

 

ー『それに比べてローザと同じ歳のオメガ家の長女は究極体も思うように操れないみたいだな。毎日特訓しているらしい』

ー『特訓??エックスが!?……ふふ、醜い事この上無いな』

ー『フハハハ!!まさかエックスの者にそんな落ちこぼれが生まれるなんてな!!……やはり真なるエックスは我々アルファ家だ!!』

 

 

この時、ローザは何も言わなかった………

 

見た事があるからだ。エールが毎日特訓していたその姿を………

 

泥だらけになって声を枯らして、息を切らして……それでも懸命に究極体を呼び出そうとするその姿を………

 

これが醜い??

 

そんな訳あるものか………

 

 

「もし、私がエールさんの立場だったらとっくに諦めてたかもしれません」

 

 

この世で最も気高きエックスの人間達は元々生まれ持った違い稀なるバトルセンスと引き継がれて来た強力なカードがあるため、努力を全くしない。

 

それは弱き者がする事であると常に否定している………

 

だがエールはそれを知っていながらもただ目標のために懸命にそのエックスが恥ずべき行為を繰り返して来た…………

 

 

「私は努力ができるアナタを尊敬してます!!だから目を開けてください!!目を開けてエックスの人達に努力は本当は恥ずべき行為では無いと証明してあげてください!!」

 

 

ローザの必死な呼びかけにもエールは応じず、その瞳を閉じたままだった。脈はあるし、呼吸もしているため、死んではいない。おそらくは気を失っているだけ………

 

それに気づいたローザは僅かばかり安堵した。

 

だが、その目の前にはローザごとエールを殺さんとするビルド ハザードフォームが既に存在していて………

 

 

「!!」

「ハザードフォームのアタック終了時効果、ライフ1つをボイドに置く………終わりだ………!!」

 

 

ハザードフォームが右の拳を構え、そこに黒い力を込める。ローザを貫くべく、それを一直線に放った…………

 

ローザがもうダメかと思った………

 

………その直後だった………

 

………目の前に小柄の少年が現れたのは…………

 

 

……『ガードベント!!』

 

 

「オォォラァァアァァァー!!!」

 

ー!!

 

 

その少年とはさっき別の部屋まで吹き飛ばされたアスラ。本来龍騎が纏う赤き龍の胴体を模した盾を手に、その黒い塊を弾き返して見せた………

 

 

「っ………なんだあの盾は……!?」

「ガードベント……トラッシュに龍騎が2枚以上あればこのターン、オレ達のライフは1つしか減らない。オレはハザードフォームにブン殴られる前のフラッシュタイミングでこれを使ってた………!!」

 

 

赤き盾を投げ捨てながらそう答えるアスラ。因みに2枚目の龍騎のカードはエールの勇気の紋章のLV2効果で事前に破棄していた。

 

 

「あ、アスラさん………!!」

「よそ見すんな顔色悪いの………オマエの相手はこのオレだァァァー!!!!」

 

 

既にボロボロで限界のアスラ。『仲間を護る』と言う心と『頂点王になる』と言う目標だけが彼の身体を突き動かしていた…………

 

しかし、そのBパッドにはムエが見つけてくれたカードのお陰か、新たに赤い光を微かに灯されていた…………

 

 

「……何なんだ!?………何なんだオマエは!!………何故そんな姿になってまでオレに食らいつこうとする!?…何故諦めずに立ちはだかって来る!?」

 

 

青年はアスラの異常なまでの執念に僅かな恐怖心を抱いてしまい、切羽詰まった様子で思わず問いかける。

 

 

「オレは……生まれつきソウルコアが使えない人間だ……!」

「そ、ソウルコアが使えない!?……そんな方が!?」

「それでもオレはこの世界で一番強いカードバトラー……頂点王になって見せる!!……そのためにオレは今を生きている!!」

 

 

アスラは堂々と胸を張って青年の質問に答えた。そのアスラの言葉に最も驚いたのはすぐそばにいたローザだ。

 

それもそのはずであろう。ソウルコアが使えない人間など前代未聞だ。今まで見たこともなければ聞いた事もない。

 

到底信じられない話だが、ローザはそれが直ぐに嘘ではない事を悟る。アスラのBパッドからソウルコアが消滅したのだ。おそらくエールが気を失って強制リタイアとなってしまった事が理由であろう。

 

 

「………ソウルコアが………じゃあ本当にソウルコア無しでこの人、本気で頂点王を目指して……!!」

 

 

ローザはアスラがソウルコアを本当に使えないと確信した途端、頭の中に過って来た。今まで彼がどれだけの苦労を重ねて来たか、どれだけ周囲の人間から蔑まれて来たかを…………

 

エックスの人間でありながら落ちこぼれで、家族からも蔑まれて来たエール・オメガを知る彼女だからこそアスラの置かれている立場をより深く、且つ瞬時にそれを理解してしまい………

 

 

「ソウルコアが無い分際で頂点王だと!?………大事なモノを失ったのでは無く、大事なモノを初めから失っているオマエが根拠の無いつまらん戯言を口にするなッッ!!」

「うるせェェェー!!!……オレは誰に何を言われようと、必ず頂点王になるッ!!」

「不可能だ!!…今からオレはそこに転がっている女諸共オマエをここで抹殺する!!」

「そんな事はさせねぇぇェェェ!!!」

 

 

この世で最も身分が低いとされるコモンの分際で………

 

ソウルコアが使えない存在の癖に………

 

複数のライダースピリットを操る化け物とも呼べる青年に啖呵を切るアスラ。今一度ソウルコアが無いBパッドを立てて自分のターンを行う………

 

 

[ターン08]アスラ

 

 

「メインステップゥゥゥー!!……オレはマジック、フェイタルドローを使用!!…ライフが2以下の時、カードを3枚ドロー!!」

 

 

 

ここに来て手札増強カードを引き当てたアスラ。その効果で0枚だった手札を一気に3枚まで回復させた。

 

 

「さらにオレは、ドラゴンヘッドを2体をLV2と3で連続召喚!!」

 

 

ー【ドラゴンヘッド】LV3(7)BP6000

ー【ドラゴンヘッド】LV2(2)BP2000

 

 

アスラの場にこのバトルで2、3体目となるドラゴンヘッドが現れた。

 

 

「さらにバーストをセットしてアタックステップッ!!……ドラゴンヘッド、いけぇ!!」

 

 

気迫に満ち溢れているアスラはドラゴンヘッドでアタックを仕掛ける。ドラゴンヘッド1体が宙を飛翔する。青年の残りライフは1であるため、いずれかのドラゴンヘッドのアタックが通ればアスラの勝ちだが…………

 

 

「フラッシュマジック…セイントフレイムッ!!!」

「!!」

「不足コストはハザードフォームのLVを下げて確保!!…効果によりBP10000まで敵のスピリットを破壊する!!……ドラゴンヘッド2体を射抜け!!」

 

 

突如として雨のように降り注ぐ聖なる炎を宿した矢。それらはアスラのドラゴンヘッドを射抜き、撃墜させた。

 

 

「そんな、スピリットが……」

「くっ……アスラ!!」

 

 

ローザやロンもアスラの圧倒的に追い詰められた事を理解する。アスラの手札は0枚で後は場に残ったミラーワールドとバーストカードだけだ…………

 

 

「………なにやってんのよ……バカスラ……!!」

「っ!!…エールさん!?……よかった、意識が!!」

「エール!!」

 

 

その時、エールの意識が微かに回復した。エールは今でも朦朧とする中で懸命にアスラに声を掛けて………

 

 

「あんなヤツ早く倒しちゃいなさいよ………アンタはこのエックスである私が唯一認めてあげたコモンなんだからね………アスラ!!」

「っ!!……あぁ、任せろっ!!」

 

 

エールはアスラがここからさらに逆転して見せると信じて止まない。アスラはそんな彼女の気持ちをしっかりと受け止めて…………

 

 

「オマエに何ができる………生まれた時からソウルコアが使えないゴミ以下が!!」

 

 

 

青年がアスラに言った。オマエでは決してこの世界で勝ち上がる事はできないと言う意味を込めて…………

 

だが、アスラはそんな青年の言葉を一蹴するように鋭い眼光で彼を睨みつける。

 

 

 

 

オレにソウルコアはねぇ…………だけどオレはオマエには無い、友が、仲間が…………目標があるッ!!

 

 

 

 

今………

 

アスラの最後の一手が繰り出される………

 

 

「スピリットの破壊後によりバースト発動ッッ!!」

 

 

ー!!

 

 

ドラゴンヘッドの破壊後により、アスラが伏せていたバーストが勢い良く反転して見せた。

 

そしてその瞬間に姿を見せたのは全長6メートルはあるであろう巨大な赤き龍…………

 

 

「馬鹿な………コイツは………」

 

 

爆音の咆哮を張り上げながら消滅して行く赤き龍。そして、その直後にアスラの場に現れたスピリットは他でも無い…………

 

 

「第二の仮面ライダー龍騎をバースト召喚ッッ!!」

 

 

 

ー【仮面ライダー龍騎[2]】LV2(3)BP7000

 

 

 

赤きライダースピリット、仮面ライダー龍騎………その第二のである。外見は最初の龍騎とは全く変わらないが、唯一の差異は最初からソードベントによる柳葉型の剣を所持している所だ。

 

 

「アレがアスラのライダースピリット龍騎の……第二の姿……」

 

 

その明らかにパワーアップを遂げた龍騎を見て、ロンは思わず口を開いた。

 

 

「だが、その程度のBPではオレのハザードフォームは超えられない!!」

 

 

青年の言う通り、アスラの第二の龍騎と彼のビルド ハザードフォームには大きなBPの差がある。普通では超えられない………

 

ただし、これはあのソウルコアの無いイレギュラーな存在であるアスラを選んだライダースピリット龍騎の第二の姿…………

 

普通な訳がない………

 

 

「第二の龍騎、バースト効果ッッ!!」

「!!」

「相手の最もBPの低いスピリット1体を破壊する!!……今のオマエの場はハザードフォーム1体だけだァァァー!!!」

「なにっ!?」

 

 

第二の龍騎は登場するなりその手に握られた剣に燃え滾る真っ赤な炎を蓄積……………

 

 

「……バーニングセイバァァァー!!」

「!!」

 

 

そしてその剣を横一線に振るう龍騎。剣からは炎の斬撃が飛び交い、それは瞬く間に青年のハザードフォームを斬り裂き、焼き尽くして行った…………

 

 

「トドメだッ!!……第二の龍騎でアタック!!」

 

 

アスラの指示により、龍騎が剣を構え、地を駆け出した。狙うは当然残り1つの青年のライフ………

 

彼の手札には最早抵抗する術は残って無くて…………

 

 

「オマエみたいな………オマエみたいなゴミ以下がオレに勝ってはダメなんだァァァー!!!!」

「例えゴミだろうがそれ以下であろうが関係ねぇ!!!」

 

 

 

 

オレは頂点王になるッッ!!!

 

だからゴミだろうがそれ以下だろうが!!!

 

先ずはオマエを超える男になるァァァッ!!!

 

 

 

 

 

「……っ!!!」

 

 

 

 

〈ライフ1➡︎0〉謎の青年

 

 

 

刹那。

 

アスラやその仲間や友の想い全てを乗せた、第二の龍騎の太刀筋は青年の最後のライフを斬り裂いた…………

 

 

 




《オマケストーリーズ!!》

『ケモノって?』


「なぁローザ、結局ケモノって具体的にどんな存在だったんだ??」

アスラがローザに聞いた。

「はいアスラさん!!アレは作者様が私をあの場で足止めするため『だけ』に用意した設定ですわ〜!」
「……え?……サクシャサマって誰??……ってか、設定!?ドユコト!?」

言葉の内容が全くわからないアスラは困惑する。当然だ。

「あっ…今、丁度この↑で喋ったお方ですわ!!」
「え!?上!?…どこ!?空しかねぇぞ!?」
「もうローザ!!アンタは余計な事喋るなッ!!」


******


《キャラクタープロフィール》
【トミオ・ブスジマ】
性別:男
年齢:15歳
身長:167cm
身分:レア
使用デッキ:『アルケニモン』
好きなモノ:お金儲け、女
概要:体格太めのアスラの同期。前作同様、色々と不幸な目に遭う事が多い。口癖は「ブッハハ」

《用語設定》
【オオカブ町】
オウドウ都周辺の6つの町の1つで、緑のカラーリーダー、ヘラクレスが住う町でもある。全長約30メートルはある巨大な樹木が特徴的。そこそこ広い市場がある。この町に限った事ではないが、カラーリーダーに雇われた多くの自警団を有している。


******


最後までお読みくださり、ありがとうございました!!





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