機界変生   作:からくり丸

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第一話

カーテンから射す陽光が、布団で横になっている正虎を明るく照らしていた。

 

「夢か……?」

陽光で目が覚めた正虎が独り言を言うが、そうでは無いことはわかっていた。

少なくとも自分の認識ではあそこで斬られて終わっていたのだ。

 

「異世界と言ったな、あの女は」

そう言いながら上半身を起こす、視界の隅に異様に長くなった紅い髪が目に入る。

そして下を見ると見馴れない柄物の服とそれに包まれているる非常に豊かな膨らみが二つついていた。

その次に右腕を見ると生身の腕に変わり銀色の腕が着いていた。

最後に部屋を見る、和室のようだが窓など一部は障子ではなく窓になっていた。

 

「……」

常人ならば半狂乱になるようなことでも正虎は冷静にどっしりと構えていた。

おもむろに右腕の方の服の裾をまくるとちょうど斬られた所を境に肌色から銀色に変わっていた。

 

「違和感も無しか」

右腕を何度も握り、感触を確認する。

気持ち悪いほど違和感はなかった。

 

「なんとも面妖な……いや魔道に堕ちてるのに面妖もないか」

そう言いながらも立ち上がろうとする。

 

「たいほうちゃん起きたんだ」

その言葉ともに襖が開き、そこに目を向けると

銀髪の髪に何故か白地に黒く爆撃と書いたTシャツとショートスカートを着たとても小柄な女性が立っていた。

 

「貴女は……?」

少なくとも歳は十代前半に見える女性に対して言う。

 

「……あっごめんね、自己紹介からしないとね」

軽い謝罪のあとにそう言うと女性は小さくとも少し格好つけるように表情を作る。

 

「騎械人ずいかくよ、本来の名は横川田(よこかわだ)みく、魔法少女名はホワイティーア

よろしくねたいほうちゃん」

 

「たいほう?魔法少女?」

その言葉とともに微妙な間が流れる。

 

「折角出来た後輩を前にして緊張するのはわかるが、緊張しすぎだぞみく」

男の声がずいかくの後ろから微妙な空気を打ち破る。

 

「色々と気になるところはあるだろうが、まずは飯にしよう

みく、テーブル出してくれ」

 

「はーい」

小柄のずいかくを優に越える黒地に白く雷撃と書いたTシャツを着た男性が、土鍋を乗せたおぼんを手に部屋に入ってきた。

 

「一応消化の良い粥にしたがその様子なら大丈夫そうだな」

収納からずいかくが出したテーブルにおぼんを置くと、お椀に粥を盛る。

 

「すまない、いただこう」

ほのかに匂うだしの香りが鼻腔をくすぐる、その粥を口に運んだ。

柔らかい味が口の中に広がった。

 

「おいしい」

 

「高兄の作る料理は絶品だからねー」

 

「そう言われると作った身としてはありがたい」

上機嫌な男性を尻目に粥を次々に口を運んでいく。

男性が盛ると正虎が食べる。

瞬く間に土鍋の中は無くなっていった。

 

「馳走になった、恩をきる」

空になったおわんをテーブルに置き、正虎は一礼する。

 

「貴殿は?」

 

「俺は騎械人しょうかく、人としての名は有賀高文(ありがたかふみ)だ」

そう言うとしょうかくはいそいそと片付けを始める。

 

「そこの馬鹿「馬鹿言うな!!」はさっきの説明の通りだ

そこの箪笥にとりあえずの服が入ってるから着替え終わったら色々と説明する

着付けはそこの「そこは体型似てる高兄がやって」いやみくもあっちなら「めんどい」……はぁ、ちょっと待ってろ

みくは待ってる間、アニメでも見てろ」

 

「はーい」

 

そう二人で漫才じみたかけあいしながら部屋から出ていく。

 

「有賀殿と横川田殿か、悪い御仁では無さそうだ」

それと同時に薄っぺらい笑顔を貼りつけた連中と比べるとなと、心の中で呟く。

少し手持ち無沙汰になったので這うように動き窓に向かうと、

窓越しに外の景色を覗いた。

この部屋は2階のようで眼下には道が見え、朝だからかジョギングする人間や犬を散歩する人間が確認できた。

 

「端から見れば、太平の世だが……」

少なくとも正虎の目には平和そうに見えた。

外の景色を見ていると襖を開ける音が聞こえる。

 

「む……?」

 

「入るぞ」

女性の声とともに長身の女性が入ってきた。

 

「有賀殿か?」

黒髪に黒いスーツの見覚えの無い女性だったがそれがしょうかくであったことに何故か気がつく。

 

「正解だ、間に合わせので申し訳ないがこれを着てくれ」

しょうかくは収納から赤いジャージを取り出した。

 

 

 

 

洋風なリビングにて3人の女性が椅子に座りテーブルで向かい合っていた。

 

「で、ここはどこで私はどうなっている」

少しの沈黙の末正虎が話を切り出す

 

「ひえいさんめ、説明を投げたな」

しょうかくはその言葉に少し頭を抱えながらそう言った。

 

「ひえい?」

 

「契約の時にやたらフリルがいっぱいついた人が居たろ?」

 

「居たな」

謎の空間に居た女性を正虎は思い出す。

 

「いきなり人が来るからって告げた時は驚いたよねー」

 

「ひえいさんの話は今は関係ないから置いとくとしてたいほうさん何か聞きたいことはあるか?」

 

「まずそのたいほうというのが気になるのだが」

正虎のその言葉にしょうかくははっとした顔になる。

 

「すまない、自己紹介してほしい」

とても気まずそうな顔をしながらしょうかくは言った。

 

「……松原正虎だ」

松原家の長男と名乗ろうと思ったが今は異世界であり、前の世界の身分もあってないようなもんだろうと思い辞めた。

 

「まさちゃんだね」

 

「俺達はさっき言った通りだ

で、たいほうとは何かか……今はひえいさんに力を与えられた者達……騎械人(きかいじん)に与えられる、名前のような物と思ってくれ」

 

「ふむ?」

 

「高姉、説明しなくていいの?」

先程までの笑顔とは違い半分怪訝な顔でずいかくはしょうかくに言う。

 

「言えぬことか、何気にせずにいい

これまでの所作から有賀殿が悪人ではないことはわかっている

そもそもここは異世界なのであろう、貴殿らの助力がないとどうにもならん」

少なくとも言えないと言ってくれるだけ正虎は嬉しかった。

 

「それにだ、松原正虎はあの森の中で死んだのだ

数奇な運命にて蘇ったが、一度終わった身だ

たいほうという名も悪くない、むしろしっくりきている」

言葉の通りたいほうという名は妙にしっくり来るのだ、まるで前から呼ばれていたかのように。

 

「うーん、でもこの世界で表で呼ぶ名前は必要だし、まさちゃんって呼ぶよ」

そう言うとにっこりとずいかくは笑顔を作る。

 

「たいほうさん、いや松原さん

例え世界が変わっても名前は大事だ、それが騎械人に成る前の名なら尚更にな」

 

「有賀殿と横川田殿がそういうならば」

 

「あっでも今のまさちゃんは女の子だねー正虎じゃ変かも」

ずいかくは少し茶化すと少し考えるような顔をする。

 

「確かに今の姿で正虎はないか、有賀殿はどう言った名で?」

 

「あやかだ」

ずいかくがニコニコとしてる中淡々と答えるしょうかく。

 

「名前の件は後で考えてくれ、今は最初の疑問について松原さんの肉体、騎械人について話そう」

このままでは話が進まないと感じ、強引にしょうかくは話を切り替える。

 

「騎械人とはひえいさんにより力を与えられた者達のことだ

与えられる機能は多岐に渡るが、松原さんはまず起動を済まさないといけない」

 

「察するにこの躰の真価を全く発揮出来てないということか

何をすればいい?」

 

「己の内に起動キーがあるはずだ」

 

「己の内……失礼、床に座らせてもらう」

そう言うと正虎は椅子から離れると床に正座をし、目を閉じる。

前の世界でそうであったように己の霊力を練ろうとする。

その時ふと引っ掛かりを覚える、力の出力と質がおかしいことに。

この力があればあやつらを見返すことも……。

いや最早自分には関係無いことを考えるべきではないか。

一瞬邪念が芽生えるがそれを振り払い、霊力と思われるナニカを練りつつ己の内に埋没していく。

とあるフレーズが脳裏に写った。

 

「夢幻空母たいほう起動」

世界が変わる。

 

「どうやら起動できたみたいだな」

 

「なるほど、これが起動」

目を閉じている筈の正虎の視界には透明なウィンドウが多数写ってた。

それは自分の肉体の状態を表してたり、どの武器が格納されてるかであったり、マニュアルだったり、他にも色々だ。

それを手早く丁寧に確認していく。

ただ見た限りでは義手についての情報はなかった。

 

『起動確認しました』

その言葉と共に光が集まり人の形をとる。

その言葉は現実の躰の耳で捕らえてはおらず、心の意思に届いていた。

 

『あなたのサポートをさせていただく永遠騎(エタマキナ)たいほうです』

紅い髪に一部がとても豊かな、巫女服の長身の女性が軽く微笑みお辞儀をする。

何故かそれが衣服を除いて今の自分の姿であると何故か察する事ができた。

 

『同じ名か』

 

『騎械人と永遠騎は基本的に2人で一つ、例え死が来ようとも分かつことは出来ません』

 

『マニュアルに書いてあった通り、思考を共有し肉体や名すらも同化する騎械人と永遠騎はまさに人機一体というべきか』

 

『怖じ気づきましたか?』

 

『そのような物は無いのは知っておるだろうに

これからよろしく頼む』

 

『はい、受けたまわりました』

 

心の中で会話を終え、正虎は目を開く。

変わらず目に写る透明なウィンドウを視界の邪魔にならないように隅に行くように念じると立ち上がる。

 

「改めて挨拶を騎械人たいほう、人としての名は松原正虎

以後よろしく頼む」

そう言うと正虎は深々とお辞儀した。




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