終わりからの始まり   作:神信陸

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X775年

 どれだけの時間が経過しただろう。

 数日なようにも感じられるし、数ヶ月経ったようにも感じられる。

 

 まあ、どうでもいいことか。

 もう予定なんてないんだから。

 

 その現実がオレの心に重く突き刺さる。

 

 予定がない。

 この言葉はこう言い換えられる。

 目的がない。

 生きる目的が──理由がない。

 

 いっそのこと、死んでしまいたい。

 

 守りたいと望んだモノは、皆消えていく。

 大切な人が死んだ。

 恩人が死んだ。

 彼女に勝手に、一方的に立てた誓いを果たせなかった。つまり、約束を守れなかった(・・・・・・)

 人も約束も守りたいモノは消えていく。

 

 オレのせいで。

 

「ひぐっ······ひっ······うっ···」

 

 涙が、流れた。

 年甲斐もなく、或いは年相応に泣き崩れる。

 部屋の隅で蹲って、膝を抱いて、嗚咽を洩らしながら、泣き続ける。

 

「死にたい···」

 

 けど、死ぬのはダメだ。論外だ。

 死が──自殺が贖罪になんて、決して成り得ない。成っていいはずがない。

 単なる逃避が、逃亡が、逃奔が。

 向き合いもせず逃げただけの"死"に、何の意味がある。

 それが償いになるのか。

 そんなことない。そんな筈ない。

 

 自分を"罰して"いるんじゃない。自分を"救って"いるだけだ。

 オレが"死"に求めるモノが"救い"であっていいわけがない。

 救われる価値なんて、オレにはない。求める権利すら、ありはしない。

 

 何度も。

 何度も何度も、数え切れないくらいに多くの人の希望を潰して、潰して、潰して。

 絶望を、恐怖を、狂気を、振りまき続けて。

 そんなオレに。

 

 報いを受ける覚悟はあった。

 望んでいたくらいだ。

 けど、なんで、

 

「こんなかたちなんだよぉ······」

 

 分かってる。

 これが報いなんだったら、最も効果的な手を使われているだけなんだと。

 そういう風に育てられたオレには、それが当たり前の生活環境だったオレには、オレ自身に何かが起こる以上に、大切なモノ達が傷ついて、消えていく方が辛いって、分かってる。

 

 けど、皆オレなんかとは違ったのに。

 オレなんかとは違うのに。

 あんな目に遭っていいような人達じゃないのに。

 

 なのに、オレはまだ、生きる目的(希望)を欲する。

 渇望する。熱望する。切望する。

 

 死を恐れ、生に執着するほどの守りたいモノ(希望)を。

 

 そしてオレなんかでは太刀打ちできない強者を。

 生きたいと、そう望んで、けれども殺されたい。

 

 死にたいと望んで死ぬのは逃げているだけだ。

 死にたいと望んで殺されるのは救われているだけだ。

 

 死にたくない(逃げたくない)

 殺してもらいたくない(救われたくない)

 

 ただ、殺してもらいたい。

 相手の意思を持って、殺されたい。

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