終わりからの始まり   作:神信陸

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3話 何だっていいだろ

「大丈夫? ルーシィ?」

 

 そう言って、ギルドのカウンター席に座り、力尽きて突っ伏した私を気遣ってくれたのはミラさん。

 億劫ではあれど、心配してくれたのに無視するのは失礼なので返事をする。

 

「だいじょばないです···」

 

「あはは。みたいね」

 

 よしよし、と言ってミラさんは私の頭を撫でる。

 

「けどあのくらいで済んで良かったじゃない。前に似たようなことがあった時には···あ~···これは言わない方がいいかも」

 

「何があったんですか···いえ、言わなくていいです」

 

 気になるけど知らない方がいい気がする。

 はあ~、災難な出来事だったとはいえ、ファントムとの一件で有耶無耶になってたと思ってたんだけどな~。

 マスターからのお説教やその他諸々、色々あったけれど、それらを知っているミラさんやエルザ、それに一緒に罰を受けたナツとグレイまで(みんな)口を揃えて「あのくらいで済んで良かった」と言う。

 帰りの道中にナツたちが言っていた「あれ」とはそんなに恐ろしいものなのか。

 

「知らなけりゃその方がいいことだよ。少なくとも」

 

 そう言って、持っていた五、六冊積み重なった本をカウンターに置いて隣の席に座った彼は、積まれた本の一番上の一冊を取って読み始める。

 

「それ(なん)の本?」

 

「細工関連。ちょっと私用でさ」

 

「私用って、ガルナ島のことと何か関係があるんですか?」

 

 「ああ、まあ」と、煮え切らない、歯切れの悪い返事がくる。

 

 ガルナ島。

 ナツとハッピーに唆されて挑戦したS級クエストの依頼の目的地。

 依頼内容は月を破壊してくれというもの。

 正確には肉体が悪魔となり、理性を失っていく奇妙な現象が起こり、その解決を依頼されたのだ。

 そのガルナ島に、リンさんも来ていた。

 ガルナ島に向かうために、港で船を調達しようとしていた時に出会ったのだ。

 バレたらギルドに連れ戻される、ということから誤魔化そうとはしたものの、早々にバレて、ああ終わった、と、そう思った時、リンさんが提案してきたのだ。

 

 ──便宜上、オレが依頼を受けたことにしようか?

 

 と。まあ結果的にマスターに怒られたのは変わらなかったんだけど。

 話を聞いてみれば彼は私用でガルナ島に行こうとしているところだったらしく、自分は依頼に一切関わらないことを条件にガルナ島までの移動を手伝ってくれたのだ。

 島に上陸した後は早々に何処かに行って、本当に助けてくれなかったどころか、何をしていたかすら分からないのだけれど。

 

 気にはなるんだけど···。

 

 ──何だっていいだろ

 

 あ、駄目だ。思い出すだけで恐ろしい。

 すっごい形相で睨むんだから聞けない。

 忘れよう。うん。

 

「···って、あれ?」

 

 リンさんがいない。

 

「仕事に行ったわよ」

 

 ええ、いつの間に。

 

「ああそれと一つ伝言。「敬称敬語は気持ち悪い。次会ったとき直ってなかったら──」どうなるか聞く?」

 

「いえ結構です!」

 

 リンさ···リン。

 彼に対する私のイメージは、怖い人で固定された。

 妖精の尻尾(フェアリーテイル)にいる人って、変な人ばかりだ。

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