やっぱり此処は少し冷えるな。
そして酷く懐かしい。
けれど、不思議と見覚えみたいなのは感じないな。
天候の影響かな。
思えば、天気の良い日に此処に来たのは初めてだな。
どの時も吹雪いてたけど、今回は珍しく晴れてやがる。
最低でも年四回。
それだけの頻度で、もう十年近くなるってのにな。
まあだからと言って、何か違いがあるかと聞かれれば、それは全くってくらいないんだけど。
別に、観光に来た訳でもないし。
風景の違いやら気温の違いやら、変化があったからって何にもねえ。
そもそも、メインの活動が屋内でやることだし。
天気の良し悪し何て、直ぐ気にならなくなる。
風景を五感が捉えなくなる、という意味でも。
精神衛生上の意味でも。
オレがやってるこの活動は、好き好んで、勝手にやってることではあるけれど、この活動の一端に"アイツの為"というのがあるところが業腹なんだ。
そもそもとして、オレはアイツのことが嫌いだから。
自認するくらいには、酷く理不尽で、八つ当たり気味な理由なのだけれど。
言ってしまえば、それは立場、というか、生い立ち、というか。
そんなモノが起因した、嫉妬なのだ。
羨ましい
と思い、
妬んで、
だから別に、それを除外してみれば──イヤ、どっち道嫌いだな。
アイツはあの人を憎んでる。
そして、あの人を憎んでる自分を嫌悪している。
その思考が。
矛盾した思考が。
自己嫌悪が。
オレに似ている。
オレはオレが嫌いだ。
そして、全ての人間が嫌いだ。
誰も彼もが。
理由ありきで嫌いだ。
理由もなく嫌いだ。
多少なりとも神格視してるあの人も。
猫可愛いがりしていたあの娘のことだって。
きっとオレは嫌っている。
尊敬し、憧れる人。
何よりも誰よりも、オレの中で大きな心の支えとなった人。
そんな彼女たちのことさえもきっと、嫌っている。
オレはそんなオレが、嫌いで憎くて仕様がない。
オレ自身が、何よりも誰よりも、嫌いで憎くて仕方がない。
本当に、嫌いだ。
自分自身が。
ドイツもコイツもが。
人が一人で生きていけるなんてことはありはしない。
人が一人で助かるなんてことはありはしない。
人が一人で幸せになれるなんてことはありはしない。
けどさ。
人が不幸になるのだって、人が誰かに助けられなきゃいけない状況になるのだって、人が死んでいくのだって。
一人では不可能なんだ。
人が幸せになるためには
けど人を不幸にするのは他人だ。
人が助かるためには他人が必要だ。
けど人が助けを求める原因は他人だ。
人が生きていくためには他人が必要だ。
けど人の死に一番深く関わるのは、他人だ。
だから嫌いなんだ。
オレに幸せをくれた、助けてくれた、生かしてくれた
オレという他人が、不幸にして苦しませて、殺した。
それら全ての原因が他人であり、人だ。
オレを産んだ親も、オレを育てた爺も、オレが守ろうとした家族も、オレを助けたあの人も。
全てが原因だ。
人間が原因だ。
アッハハ。
こんな考え方だと、まるで人類の絶滅でも考えてると思われそうだな。
冗談キツい。
オレは寧ろ守ろうとしてるんだぜ、人を。
まあ、それだけだけど。
だからその為に必要なんだったら、オレは。
他の人類を滅ぼしてやる。
その後のことは知らん。
ま、人が一人で生きていけない以上、実行はしないだろう。
けど、オレはそういう思考回路を持つ人間だ。
ああ、ホント。
こんな自分が、オレは嫌いだ。
今回は楽園の塔編の最中です。
まあ、だからなんだ、って話かもしれませんが。
だって今回の話、語り部が誰か明言してませんから。
まあ深い意味はなく、単純に頭の中で出来上がっている二、三のルートのどれになっても大丈夫なように、っていう保険なだけですけど。