主人公に勝てなくても幸せにはなったオリ主 作:ヅダはISなんぞに劣る筈がない!!
私が更識家当主『楯無』を就任する日…この名を受け継げば私は本当の意味で更識の人間となる…もはや子供だからなんて言い訳は許されない。その為に私は今日まで育てられて来たのだから。
だからこそ……妹には…簪ちゃんには私のように暗い道を歩むような人生を歩んで欲しくない、できるなら本音ちゃんと一緒に陽の光の下で…普通の幸せを考えて生きていて欲しい。
だからこそ……私は今日、妹に伝える。
『無能なままでいなさいな。』
何もしなくていい、無理をしないで、無茶をしないで……『更識』で貴女の価値を見出さないで…きっと機械弄りが得意な簪ちゃんはその才能をどんどん伸ばすでしょう…。でも、それはいけない…そうすれば貴女も引きずり込まれてしまう…私が進もうとする…日陰の中に…。
だから私は……はっきり言おう…最愛の妹に……たとえ拒絶されてしまおうとも。
愛する者の為になら嫌われても構わない……それが家族でしょう?
さぁ伝えよう…。
と、さっきまでは思っていたわ、簪ちゃんの部屋の前に立つまでは…。
「かんちゃーん、お花飾りはこれでいいかなー?」
「うん、ありがとう…そしたら、これ…掛けるの手伝って…。」
「ん?なになに〜…『刀奈お姉ちゃん!更識家当主、就任おめでとう!』…この横断幕かんちゃん1人で作ったの?すっごーい!」
「お姉ちゃんに…お祝いしてあげたくて…。誕生日とかも私は何もしてあげられなかったから…。」
「お姉ちゃん思いの妹を持ってお嬢様は幸せだね〜っ!」
「ほら本音、早くしないと刀n…楯無お嬢様が来るからお菓子は置いて。」
「むぅ、ちゃんと手伝ってるよー!お菓子はただのつまみ食いだもん!」
「つまみ食いもダメ… 虚さん、クラッカーの用意は…?」
「はいこれ、あとはお嬢様が部屋に入ってくるのを待つだけで…。」
「ドアを開けたらクラッカーがパパパパーン!だね!」
い、言えねえ…!こんなお祝いムードな相手に『無能でいなさい』とか言えるわけない…!こんな状況で言ったが最後、最悪簪ちゃんどころか本音ちゃんにも虚ちゃんにも嫌われかねない……!それだけは避けないと!!布仏姉妹には私の『無能でいなさい』発言の後に…。
『楯無就任の日に無能でいなさいと言われた?……もしかして本心は…。』
みたいな感じで何となく私の本心を簪ちゃんに悟らせて姉妹の寄りを戻す為に必要なんだからぁ!…どすればいい!?今日という日を逃したら…後日『無能でいなさいな』をやってもそれはただの悪口!本当の意味を悟らせるにはどうしても就任当日の今日言わないとダメなのにぃぃいいいい!!!
「お姉ちゃん、私の作った扇子…どう?達筆の文字が浮かび上がってメモ帳とかカンペとして使える機能を付けた自作なんだけど…?」
「ありがとう簪ちゃん!お姉ちゃん本当に嬉しい!!愛してる簪ちゃぁんっ!」
「むぐっ…お、お姉ちゃん…む、胸が…息出来な…っ」
結果から言えばめっっっっちゃお祝いパーティ満喫したわ、つい我慢できなくて今まで抑えてた分簪ちゃんを猫可愛がりしてたら何か次の日から顔を赤くして私を避けるようになっちゃったけど……あ、姉妹仲は悪くないわよ?今でも偶に私と一緒のお布団で寝たいと甘えて来るところが可愛いのよねぇ……ってあれ?織斑くん…?何処行くの?ねぇちょっと!楯無お姉さんの昔話くらい付き合ってよ!わかったから!もう裸エプロンしないk
……え?俺は一夏じゃなくて秋十だよ?
………………ごめんなさい。部屋を間違えました。
「へぇ、篠ノ之さんと鳳さんが二人揃って医務室送り…ねぇ、何かあったか知ってる?ラウラさん。」
「いや、だが2人とも寮の自室…キッチンで爆発に巻き込まれたと噂らしい。」
「はぁ?IS学園って国際的な教育機関でしょ?そんな事故が起きたら人の首が飛びそうな施設で爆発って…大丈夫?学園建てた会社が手抜き工事とかしてないよな?」
「さぁな、まぁIS学園は人工島を利用したちょっとした街みたいなものだからな…ほとんどの施設が学園を締めているとはいえ食堂にトレーニングルームに射撃場に…建設するのに莫大な金額が流れているんだ。袖の下に入れようと何処かで金と手を抜いていても可笑しくは無いだろう。」
「まぁ防犯の要でもあるドアが木刀で簡単に突き破られるような寮じゃぁ…ねぇ。」
「人を悪く言うのは軍人として避けたいが……それは箒の腕力がおかしいだけだと思うぞ…多分。」
学園に来て馴染めるだろうか不安はあったが織斑千冬教官の教え子という点や一夏や秋十が真っ先に私と交流を深めてくれた事からそれ繋がりで織斑家ファンクラブなる生徒達を通じて私にも友達が沢山できた、黒兎隊と教官のアドレスしか入ってなかった私の携帯も今では友達の名前でいっぱいだ…本来の任務を忘れてはいないが、学生としてこの3年間を生徒として青春してみるのも悪くは無いな。
「ところで俺はハニーと夕食食べようかなぁって思ってるけど、ラウラさんはどうする?」
「む、食堂で済ませようと思っていたが……私を誘って大丈夫なのか?シャルと恋人水入らずの方が…?」
「何言ってるんだよ、可愛い可愛いハニーの手料理だよ?そんなの友達に自慢しなくてどうするんだよ?ほら、俺の惚気の為にラウラさんには夕食をご馳走様してあげるよっ!」
「わわっ、こら、背中を押すんじゃないっ…わかったわかった。付き合ってやるから…。」
「廊下の真ん中で騒ぐもんじゃない、他の生徒に迷惑だ。」
「きょ、教か…織斑先生!」
「げ、姉ちゃん!?」
「実の姉をみて第一声が『げ』は無いだろう…全く、もうすぐ夕食の時間だがお前達は食堂に行かないのか?」
「はい!いいえ、今秋十に夕食を誘われてご馳走になる所です!」
「あ、そうだ。姉ちゃんも一緒にどう?俺の未来の奥さんは料理が絶品なんだよ。」
「ふむ……そうだな、義理の姉として弟の妻に相応しいかどうか料理を味見してやろうじゃないか。」
教官は冗談らしく笑いながらそう告げる、成程…きっと教官の守りたいものというのはこういう…暖かいものの事なのだろう、家族の事になれば教官は頬を綻ばせ微笑みを浮かべていた…。
「あ、おかえりダーr…お、おおお織斑先生!?」
「ただいまハニー!ハニーの手料理を自慢したくて誘っちゃったよ。」
「……ボーデヴィッヒ、今デュノアが織斑弟におかえりと言っていたように聞こえるが。」
「はっ!秋十に頼まれて私が一夏の部屋に、秋十はシャルの部屋で過ごしております!」
「あ!?ちょっと!?」
「秋十からは『ほら、ラウラさんは兄貴の護衛に来たんだろ?なら兄貴が1番無防備になる寝床…寮の部屋に一緒に居た方がいいんじゃないかな?』と提案を受け、それは名案だと思い部屋を交換しました!」
「……………ほう。」
「え、あーっ…は、ハニー!?ほら、今遠目で部屋から誰か出ていくように見えてたけどアレは何かあったのかな!?俺すっごく気になるなぁー!!気っになぁーるっなぁー!!(CV.子○武人)」
「ダーリンがテラ子○に…え、えーと料理を教えて欲しいって頼まれて今一緒に作ってたんだよ。料理は完成したけどちょっと作り過ぎちゃて…そ、そうだ!良かったら織斑先生とラウラも一緒に…あはは。」
「………まぁ、今回は見逃して置いてやろう。」
結論から言おう、私達4人は仲良く病院へと搬送された。原因は食べたポトフに絵の具と香水がタップリ入っていたそうだ…タチの悪い食中毒になったかと思ったぞ…。しかし絵の具を入れたセシリアも悪いが秋十のヤツめ、いくら何でも香水を台所に置きっぱなしにするのはどうかしてるぞ。しかも見た目は『紳士服を着た蜂がハチミツを舐めているイラスト』とは…料理初心者のセシリアが調味料と間違えてもおかしくはな………くもないけど……あぁ、死ぬかと思った。しばらく他人の家で食事をご馳走にはなりたくない……。ところで一夏よ、私は体内に医療ナノマシンを仕込んでいるから軽傷で済んだが…何故シャルと織斑教官は未だに意識不明なのに秋十はその日の内に退院してリンゴを剥きながら床に正座するセシリアに『彩りが足りないからって変なもん入れるやつが何処にいるんだよ!』と説教しているんだ?
昔の話…………
「へぇ…ここが中国か…黒い噂をネットで聞くけど意外と観光名所って感じだなぁ。」
「まぁここ観光名所だからな。しかし束、よくお前が知らない他人の為にここまでする気になったな。」
「まぁいっくんと箒ちゃんの友達なんだし、そのリンリンだかランランだか知らないけど箒ちゃんの頼み事なら断れないよ~。」
「すいません、束さん。」
「姉さん…私が転校したくないと我儘を聞いて貰ったばかりなのに…本当にすいません。」
「気にしないでよ!束さんも家族と離れ離れはぶっちゃけ嫌だから政府の人にお願いしただけだしさ、まぁ両親の方は政府の人が生活を全面サポートするって言った途端に『ちょっと夫婦水入らずの時間を過ごしたい』とか言って島根まで飛びやがったけど……。」
「まぁ父さんと母さんは姉さんに苦労した分羽根を伸ばしてきて欲しいから私が秋十に『両親を唆して欲しい』と頼んだのですが。」
「箒ちゃんったら酷い!束さんそんなに手のかかる子供じゃないもん!」
「言っとくがお前、少し前までご近所から『中学生になって他人様の家の小学生の男の子をあっちこっち連れ歩くショタコン』って噂されていたからな。」
「マジで!?あれほとんどあっくんが束さんを振り回してたからね!?」
「あれ?そう言えば秋十は?」
「おーい兄貴!!見てよこのゴーグル!そこのおっさんから聞いたんだけど中国軍が独自開発した機密兵器の『物が透けて見えるゴーグル』だって!こんな凄いのがたったの8000元!いい買い物したぜ!」
「……………カモられてる…。」
「アイツがナチュラルに中国語話してた事実はともかく、アレただの…。」
「うん、中国軍ってのあってるけどアレただの壊れた暗視スコープだね。」
「秋十…お前という男は…だから一夏に負けるのだ。」
「畜生…!畜生…!こんなのって…こんなのって…!!」
「あっくん、普通に考えてインチキだってわかるでしょ…。」
「大通りのど真ん中で号泣するんじゃない。周りの人が路上パフォーマンスと間違えてスマホ構えてるではないか。」
俺と秋十、箒は家庭の事情で転校した鈴に久しぶりに顔を見に行こうと中国へやってきた、まぁ飛行機は束さんが用意して貰った人参のボディにうさ耳を模した翼というふざけたプライベートジェットに乗ってきたけど…中学生3人だけで外国は危ないから束さんと千冬姉が保護者として着いてきてくれている。
まぁ、秋十…時々頭の良さに似合わないバカをやるところ、お兄ちゃんは嫌いじゃないからな。
「それで、鳳さんの家ってどこなの?」
「知らずに来たのか秋十……なぁ箒。」
「私も知らんぞ。てっきり一夏が知ってるとばかり…。」
「言い出しっぺの秋十が知ってるかと…。」
「文通してる兄貴ならわかってるかと…。」
「何!?一夏!?お前鈴と文通しているのか!?」
「え、あぁ…そうだけど…。」
「貴様……っ!」
え?俺悪い事してないよな?鈴とは友達なんだから連絡位は取りたいし…。
「何故私にも教えてくれないんだ!私だって鈴と友達だぞ!」
あ、確かに。それは俺が悪かったな…。
「ごめん箒、俺達みんな箒とメールアドレス交換してるしいいかなって…。」
「馬鹿者、メールではなく手書きだからこそ伝わる気持ちもあるだろう!」
「そうだぞ兄貴、まぁ鳳さんが文通言い出してそれを兄貴にしか伝えなかった俺も悪かったけど」
「チェストォお!」
「ぐへぇ!?」
「あ、秋十ぉぉぉおおおお!?」
「話が全く進まん……。」
ご尤もです、千冬姉。
「なんで私達が外に…。」
「仕方ないだろう、秋十が『束さんと一緒に鳳さんのスマホをハッキングして自宅の場所調べるから待ってて!』と言って私達を置いてこの……この……多分ネカフェ?に入ってしまったのだからな。」
「それで束さん、例の物は?」
「もちろんできてるよー!はい、ヤクル○の容器に入った惚れ薬。いやぁ箒ちゃんに告白する事なく失恋したかと思ったら今度は中国娘とは、あっくんは切り替え早いねー。」
「いやぁ…それほどでも…。」
「褒めてないからね?」
「で、これを飲めば…。」
「うん、あっくんが望んだ通りに『同じ惚れ薬を飲んだ相手を強く意識する。』効果が出てくるよ、まぁ意識するだけで本当に惚れるかどうかは当人同士の好意次第かな?」
「よっしゃぁ!」
「でもいいの?束さんなら完全にあの中国娘をあっくんメロメロの好き好き大好きにできる惚れ薬作れるよ?」
「それじゃダメなんだよ………いや、これも本当はダメだけど…これを飲めば鳳さんは俺を一夏の兄貴と比べずに織斑秋十という一人の男として見てくれる…その上で告白して断られてこそ……俺は鳳さんを諦めきれるんだよ。」
「惚れさせる為じゃなくてフラれる為に惚れ薬飲ませる奴なんてあっくん位しかいないだろうね…。」
「いらっしゃい一夏!箒!秋十!千冬さん…それと…。」
「こんちゃー!束さんだよー!日本ではそれなりに有名人だよ!」
「いや名前が分からなかったんじゃなくて……篠ノ之博士…あの、ISを作った…。」
「そう!本来の目的は宇宙を飛ぶためのものだけど大衆共に受け入れて貰うために『女性しか動かせない事を除けばどんな危険な場所でも安全に作業できるパワードスーツ』として発表したんだよね!もちろんISの実機で実演してデタラメだの虚構だの言う連中を黙らせてやったよ!」
「最近アマゾンの密林の火災も消防隊仕様のISが消火してもう鎮火寸前なんだっけ?」
「そうそう!日本の地震やアメリカの台風の後の被災地の復興にも大活躍っ!そんな世界最高の発明をした大天才がこの篠ノ之束なのだー!ひかえおろー!!」
「え、えーと…ははーっ」
「いや、鈴…乗らなくていいからな?」
一応メールで来ることは伝えたけどまさかメールした翌日に来ると思ってなかったのか鈴は最初驚いていたが友達との再会が嬉しいのかすぐ笑顔で迎え入れてくれた。
「それはそうと済まなかったな鈴、急にやって来てお茶まで出してもらって…。」
「気にしないでよ箒、別に何か用事があった訳でもないし…それに友達がわざわざ日本から中国まで会いに来てくれたんだからお茶位ださなきゃこっちが罰当たっちゃうわよ。」
最初は何故か仲が悪そうな雰囲気だった箒ともいつの間にかいつも一緒にいる…鈴にとって男の親友が俺なら女の親友は箒って感じの仲になってたんだよな…やっぱり武術をやってる者同士通じ合う所があるのかな?そういえば弾が鈴をからかって秋十が箒を茶化しては箒と鈴のダブルパンチで2人仲良く吹っ飛ばされてたなぁ…何故かいつも秋十が弾の下敷きになってたけど。
どうせなら弾や数馬も誘って……ダメだ束さんがokする予感がしない。
「それで最近学校はどうなのよ?弾のやつはやっぱり秋十とナンパ失敗記録伸ばしてるの?」
「ちょっと!俺があんな中学デビューと一緒にされちゃこまるぜ!このグラサンに懸けて!俺はナンパなんて不埒なことは…。」
「そう言って『金髪お姉さん』だの『僕っ子大学生』だの『バイク一筋な姉御肌』だの弾に言いくるめられて休みの日に仲良くナンパに繰り出してたのは何処の誰だっけかなぁ~?」
「…ぐう…」
「ぐうの音を出すな馬鹿者…まぁ秋十は最近弾の奴の誘いに乗らずに一夏一筋だがな。」
「………まだやってるの?」
「ああ、『最近は音楽の授業のテストで勝負しろー!』って言ってさ名前忘れたけど英語の歌を歌うテストだったんだけど…秋十は『英語は完璧だけどドイツ訛りが酷すぎて音程が取れてない。』って言われて『普通に音痴未満』って言われた俺が紙一重で勝ったぜ!」
「自慢することかそれは…。」
「さっき中国語で挨拶された時もそうだけど何で秋十は外国語話す度に『イギリス訛りのイタリア語』とか『黒人訛りの中国語』とか『中国人の話すロシア語』とかどれもこれも言葉と発音がアベコベなのよ…しかも誰一人として『日本人の発音とは思えない。』みたいな評価してるし……。英語の先生びっくりしてたわよね…。」
「だって教えて貰う講師の人が悪いし…。」
「前から気になってたがお前は誰からそういう事を教わるんだ?私の後輩がスクーター壊して困ってた時も自動車修理工もビックリな手際でバラバラに分解して組み立て直しながら修理してたし……束か?」
「IS以外の機械関係は束さんじゃないよ?というか束さんもそれ前々から気になってたんだけど…。」
「やべ…ま、まぁまぁ!俺の事はいいじゃん!今は鳳さんの事話そうよ!ね?ね?」
「だから私は鈴でいいって……もう、本当に頑なに名字でしか呼ばないんだから。」
………
「でさ、兄貴がすっ転んで頭が弾くんの股間に…ぷぷっ」
「ぷっ…っ…ははっあははははっ!ただボーリングしてただけで…くふっ…そ、そんな奇跡起きる?ぷはっ…私もそれ見たかったなぁ。」
「所がどっこい…ここに録画した動画がございますお代官様。」
「ふふ、秋十も悪よのう…。見せて見せて!」
「やめろよ2人とも……俺の顔面であの感触味わって…うげぇ…やっと忘れてきたと思ったのに……。」
「それでも手放したボールがストライクを取ってしまう当たり一夏はこういう事は運が良いものだな。」
「わかるわぁ…一夏にジュース買ってもらうと結構な確率で自販機のルーレット当てるのよね。」
「お、おい!お前らそんな理由で俺をパシらせてたのかよ?」
「いいじゃんか兄貴、逆にいえば篠ノ之さんも鳳さんもいっつも兄貴にジュース奢ってたんだしさ。」
「そういう秋十は俺にジュース買わせる時何だかんだで金出さないよな。」
「あ、いやそれは…あはははっ」
「あ、もうこんな時間…みんなそろそろ帰らないと…。」
「え?もうそんな時間?」
「む…まだ話し足りないが…しかし明日も学校があるからな…。」
「そんな、俺まだ鈴と話せてないこといっぱい…。」
「無理を言うな一夏、束だって予定を無理して空けてここまで私達を連れてきてくれたんだ。」
「そっか……なら途中まで見送るわ!帰り道も話はできるでしょ?」
「「「「鈴(鳳さん)(リンリン)……」」」」
「今リンリンって言ったの誰よ!?」
…………
「はぁ…今日の昼に鈴と再会して夕方にまた離れ離れ…ちょっと寂しいな…。」
「気にするな一夏、顔が見たければスマホでテレビ電話でもすればいい。」
「鈴のやつ…本当は自分も寂しいだろうに私達に気を使って…ふっ…最初に会った頃に比べて成長したな…。」
「千冬姉……あれ?秋十…どうかしたのか?」
「え?いや……なんか昔話に花咲かせてる内に何か忘れた気がしてて……。あと忘れ物した気がする。」
「忘れ物?大丈夫か?」
「スマホも財布もパスポートもあるし…グラサンは鳳さんにあげたし…。」
「『離れても友情は海を越えても変わらないぜ、鳳さん。』とか言ってたが鈴のやつ普通に『これいらないんだけど…』みたいな顔して受け取っていたな。」
「まぁ忘れるような事だし…俺にとってそこまで未練はなかったもんなんだろうな。」
「とか言ってその忘れ物のせいで鈴が困ってたらどうするつもりだ…。」
「たかが忘れ物で?………電話もメールもできるんだから困るなんて事はないでしょ?」
『あんたが置いていった日本土産のヤ○ルトをパパとママが飲んだら私の目を盗んでは所構わずおっぱじめるようになったんだけど?!どういうことよ!!??男女の営みも知らない乱が偶然ベランダで盛る2人を目撃して寝込んじゃったのよ!?このアホ秋十ぉっ!!!』
「ごめっ!本当に忘れてた…っ…てか乱って誰?」
「心配するな鈴、原因を作った2人には私がお仕置きしておこう……とりあえず一夏、しばらく織斑家の食事は全てキノコづくしにしろ。お残しは私が許さん。」
「そんな殺生な!?」
「秋十って泣くほどキノコ嫌いだもんな…。」
「で、篠ノ之博士はMs.織斑に『聖なる勇者の剣ごっこ』とやらを受けて動けない…ですか?」
「すいません、姉が本当にすいません…。」
「うぅ…マスターソードの台座じゃないよぅ…そこは勇者の剣を封印してる岩じゃないよう…。」