ロクでなし魔術師たちの奇妙な冒険   作:焼き餃子・改

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第二十二話 「『覚悟』が必要な時」

 ドン、と何かが発射された音が裏路地に響いた。

 次に巻き起こるは血華(けっか)。それと同時に天へ昇る火線。回転して螺旋を描く火線。

 ジョレンの放った爪弾―――『(タスク)』は―――

 

「ジョレン……ジョースタァァ……!」

「!?」

 

 チェックは死んでいない。爪弾によってその右頬は抉り飛ばされ、口が千切れそうになっていた。そして、チェックの命の代わりに吹き飛ばされたのは―――

 

「え、『皇帝(エンペラー)』を弾いた衝撃で爪弾の軌道が……」

 

 クルクルと舞い飛んだ『皇帝(エンペラー)』の姿を見て、ジョレンが呻くように声を発する。チェックがこちらに向けた『皇帝(エンペラー)』の銃口は撃つためのものではなかった。爪弾の軌道上に置くことでわざと弾かせ、爪弾の軌道を若干ずらすためのものだった。

 

「まだ、だ……!」

「ッチ、待て!」

 

 再び距離を取ろうと踵を返して駆けだすチェックの背を左手の爪弾を全弾発射しながら追いかける。チェックはこちらをちらっと振り返り、すぐそばに合った曲がり角に入り込み、爪弾を避ける。その体の動かし方はルミアを抱えているというのに、ジョレンは距離を取られないように全力で走るのが精いっぱいで追撃の余裕が無い程に見事なものだった。

 

「このままじゃ……!」

 

 ジョレンの視界に入ってきたのは裏路地の終わり、大路地の風景だった。あと数秒もしないうちに、チェックは大路地へと出て人ごみの中に紛れることが出来る。そのまま逃げられるのも時間の問題だった。

 

「ジョレン=ジョースター……!」

「な……!?」

 

 そう焦ったジョレンを後目に、チェックはピタッと止まり、チラリとこちらを一瞥して。

 

「今から、この女を離してやるよ……」

「何!?」

「ほら、ジョレン=ジョースター。受け取れよ……」

「あ……た、立ち上がれない……」

 

 反論をする間もなく、チェックはルミアを突き飛ばすように大路地の方に放り出した。元々両膝と両肘を負傷して、どうしても立ち上がることのできないルミアの身体は突き飛ばされた勢いに抗えず、そのまま大路地へと―――

 

「どうした? 早く受け止めに行かないと―――」

「えっ……」

「ッ!? な……馬鹿な!? そんな馬鹿な!?」

「『他の男』に取られても俺は知らんぞ?」

 

 次の瞬間、どん、と大路地にいた人にルミアの身体がぶつかった。そして、ぶつかった人は咄嗟にぶつかったルミアの方に振り向いて。

 

「ルミア=ティンジェル!? こんなところにいたか!?」

「王室親衛隊だと!? く、クソ―――ッ!?」

「れ、レン君!?」

 

 その人の正体を見た瞬間、ジョレンは駆けだした。見れば、もう既にルミアに向かって抜剣しかけている。全力疾走でチェックの横を駆け抜け、射程距離内に入ったと同時に右手の爪弾を三発発射する。

 

「!? うぐぁ―――!?」

「ルミア、大丈夫―――」

「まぁ、もっとも……受け止めたところで、だな」

「こ、この……!」

 

 どうやら、王室親衛隊の衛士にとっても完全に予想外の出来事だったらしく、向かってくる爪弾には全く気付かずに全弾喰らって、倒れ伏す。

 だが、安堵は出来ない。見なくても分かる、自分の後ろでチェックが何を構えているのか。

 スタンド『皇帝(エンペラー)』。出し入れ自由、リロード不要、軌道操作可能の拳銃。その暗殺者のスタンドの銃口がこちらを向いている。振り返っての撃ち合いは絶対不利、勝ち目無し。ならば、取る行動は一つしかない。

 

(このままルミアを引っ張って、角に隠れる! 視界外に逃れられれば、まだ―――)

 

 まだ、一撃で急所は撃ち抜かれないかもしれない―――そして、すっ飛んで隠れるためにルミアの方を掴んで抱き寄せた時、その声は不意に耳に届いた。届いてしまった。

 

「あれ、レン兄さん?」

「ジョレンさん? こんなところに……」

「は……? り、リリィ……?」

「え……それって……」

 

 にわかに騒がしくなってきた大路地。その人ごみの中にいた。

 車椅子に乗っているリリィと何故かそれを押しているミクリがそこにいた。ルミアは振り向く前にその言葉を聞いて、呆然とした表情になっていて。

 その瞬間、ジョレンは悟った。ここで避けることは出来ない。だって、避けてしまったら―――

 

「死ね、ジョレン=ジョースター」

「レン君、今……!」

「ッ!」

 

 もう遅い。まだ裏路地側を見ているルミアの表情が氷点下を振り切ったかのように青ざめた。ルミアに『皇帝(エンペラー)』は見えないが、その引き金を引く仕草が目に入ったのだろう。避けることはできない。避けてしまったら―――目の前にいるリリィに当たってしまう。チェックはジョレンの目の前にいる人物を誰か知っている。

 狙っていたわけではないだろう。ここにリリィがいるのは単なる偶然だ。だが、偶然であっても、ここにいる以上―――利用されないわけはない。ジョレンが避けても弾丸操作は使わないだろう。ただ究極の二択を迫るのみ。

 

(お、俺は……俺は―――)

「!? レン君!?」

「兄さん? 一体何が―――」

 

 バッとルミアを突き飛ばした。リリィのいる方向へと。そして、チェックの方に振り返り―――

 

「ッガ……!?」

「レン君!」

「に、兄さん!?」

「ジョレンさん!?」

 

 次の瞬間、左胸に開く一つの穴。そのスタンド弾は普通の人には見えなくても、開いた穴はその場にいる全員が平等に見ることができて。

 ルミア、リリィ、ミクリの声が重なる中、ジョレンの身体が力を失い、重力に従って崩れ落ちる。

 だが。

 

「ッガフ……クソ……痛ぇ……」

「!? 馬鹿な!?」

 

 ガクリと片膝をついて、左胸を抑えるが―――まだ死んでいない。こみあげてくる血を吐き出しながらも、まだ完全な致命傷ではなかった。撃たれた場所は完全に急所。心臓をえぐるかといったところだったのに。

 

「そんなはずは……今の弾丸は心臓を傷つけたはずだ……なのに、なんで……」

「『覚悟』……したからな」

「なんだと?」

「『覚悟』だよ……あんたの弾丸を避けずに受ける覚悟……あんたのおかげだよ……あんたが追い詰めてくれなくちゃあ、この方法は取らなかっただろうさ……! 避けるのは元から悪手だったぜ……もし、足でもやられてたら、どうしようもなくなっていた……!」

 

 左胸を抑える右手からシルシルシルシルという音がする。それはルミアも何度も聞いた音で、チェックがもっとも警戒していたはずの音だった。

 

「回転で皮膚を硬化させた……! 同時に胸の筋肉を限界以上に収縮させて……弾丸が心臓に到達する前に止めさせてもらった……! 衝撃であばらの骨は絶対に折れたけどなァ……!」

「そ、そんなことが……だがッ!」

 

 再び『皇帝(エンペラー)』を構えるチェック。その左手が撃鉄を下ろすより早く―――

 

「ミクリィ――――――ッ!」

「!?」

「足だ! 俺の足を動かしてくれ、頼む!」

「ジョレンさん……!」

「あいつをぶっ飛ばす、頼む―――」

「ッ! 『アース・ウインド・アンド・ファイヤー』!」

 

 ミクリは状況を全く把握できてはいなかったが、ジョレンの姿、そして差し迫った危機を知らせるその声を聞き、咄嗟に帯状へと分解し、ジョレンの足へと巻き付いた。そして―――

 

「な、何ッ!? それはッ!?」

「うぉぉぉ――――――ァァ!」

 

 『ブーツ』に変身したミクリの力を借りて、ジョレンは跳んだ。4、いや5メトラほどの高さまでに跳び上がったジョレンの身体に、チェックは咄嗟に照準を合わせることが出来なかった。

 変身中であってもミクリ自身の筋力は発揮できる―――『バトルロワイアル』で服に変身したミクリがジョレンの身体を引っ張った時と同じように、ミクリの筋力を借りて、普通ではありえないほどの高さまで跳躍したのだった。

 

「馬鹿な、スタンド使いだと!? 他にもスタンド使いがいたのか!?」

「驚いている暇があるかッ!? チェック―――ッ!」

「くッ……だがッ!」

 

 結局、飛び込んだ場所は左右を挟まれた裏路地だ。回避場所は少ないし、何よりも跳躍時には決定的な隙が出来る。着地の瞬間だけは、どうすることもできない。チェックは冷静に着地予想地点に『皇帝(エンペラー)』の照準を合わせ―――

 

「やれ、『皇帝(エンペラー)』」

 

 数秒もかかった跳躍からの着地の瞬間、チェックは引き金を引いた。時間がゆっくりになったかと思えるような緊張感の中、放たれた『皇帝(エンペラー)』の弾丸が何の障害もなく、ジョレンへと向かってくる。だが、それを見てもジョレンは何の行動も起こさない。ただ、ぼんやりとその弾丸を見つめて―――

 

「レン君!? は、早く鉄球で防御しないと―――」

 

 ルミアの切羽詰まった声にジョレンは思い出したかのように口を開いて。

 

「違う、ルミア……鉄球で防御するんじゃあない。ここは……違う」

「え……?」

 

 そう言うや否や、ジョレンはゆるりと左手を構え―――

 

「《光り輝く護りの障壁よ》」

「ふぉ、【フォース・シールド】!?」

「!?」

 

 ジョレンの目の前に広く展開された黒魔【フォース・シールド】。流石のチェックも弾丸を引き付けられて展開された障壁には対応しきれず、『皇帝(エンペラー)』の弾丸は障壁に阻まれ、受け止められる。

 

「だ、だけど【フォース・シールド】じゃ―――」

 

 【フォース・シールド】では解除するまでは身動きが取れない。解除に数秒かかり、それまでに相手が再び銃を撃ってくるなど見るまでもなく分かる。

 だが―――

 

「そんなことはないぜ……? なぁ、ミクリ……!」

「えぇ、そんなことはないですね?」

 

 ガクッとジョレンの身体が一瞬揺れる。それと同時に、ブーツの底から―――車輪が生成されて。

 

「なんだと!? まさかッ!?」

「行くぞ、歯を食いしばれ、暗殺者」

 

 瞬間、凄まじい勢いで車輪が一人でに回転し、チェックへと突進しながら、【フォース・シールド】を解除して。

 残り5メトラ。ブーツになっていたミクリが不意に変身を解除して。

 

(クソ、爪弾どころか鉄球の射程距離内……! ここは『皇帝(エンペラー)』で撃ち落として!)

「なぁ、何か勘違いしてないか?」

「な、何を……?」

 

 チェックの問いに答えることもなく、ジョレンはただ拳を強く強く握りしめ、一歩。

 

「『アース・ウインド・アンド・ファイヤー』……!」

「お、おい……まさか……!?」

 

 ミクリが帯状へと分解して―――二つの『グローブ』に変身して、ジョレンの拳に装着されると同時に、二歩。

 

「歯を食いしばれと言ったぞ……!」

「じょ、ジョレン=ジョースタ―――ッ!」

 

 咄嗟に『皇帝(エンペラー)』を投げ捨て、両腕でガードするチェックに向かって、ゆっくりと弓を引き絞るように拳を振りかぶりながら、三歩。

 

「オラァ――――――ッ!」

「!? こ、このパワーは!?」

「ふん、ボディから顎にかけてがら空きになったようだぜ……!」

「ガフッ!? ァ……!?」

 

 ジョレン+ミクリのパワーで放たれる拳。左のアッパーカットで空いたガードの間に突っ込むように放った右のボディーブローがチェックの腹に深々と突き刺さり、そして拳を振り切った勢いで、チェックの身体が軽々と宙に舞い、後ろの壁まで突き飛ばして。

 

「な、なんで……ガッ……爪弾じゃないん、だ……!?」

「なんでだと……決まってる」

 

 血へどを吐き出しながら問われた言葉に、グローブも外れた拳を握ったり離したりしながら、ゆっくりとチェックの眼を見据えながら、ジョレンは答えた。

 

「リリィが後ろにいるのに……爪弾なんて撃つわけないだろ……」

「……それも……ッフ……覚悟、か」

 

 力なく壁にもたれ倒れつつあるチェックだったが、その視線から感じられる威圧感は未だ揺るぎない。ジョレンはそれを誤魔化すためか、単純にとどめを刺すつもりでか、鉄球に手を伸ばそうとして―――

 

「……それに、時間切れか」

「何……?」

 

 ふと、ジョレンはチェックの視線が自分に向けられていないことに気づき、チェックが見る先をゆっくりと追って。

 いつの間にか、自分とミクリのすぐ後ろに二人の人影が立っていた。

 一人は鷹のように鋭い目をした青年。細身だが骨太、立ち振る舞いの端々から冷淡さのようなものを滲ませていた。

 もう一人は人形のように無表情な少女。その綺麗な青い髪はうなじの部分で雑に括られており、何か人間的な生活の痕をそこから見出すのはとても難しい。

 そして二人とも、黒い特徴的な外套を身にまとっている。

 そんな突如現れた二人に驚愕の眼差しを向けていると、今度は遠くから一人の男が息せき切らせては知ってきて―――

 

「はぁ……はぁ……ジョレン! ルミア! 無事か!?」

「ぐ、グレン先生……」

「先生。来てくれたんですか……」

「お前ら、なんてケガしてんだ……!」

 

 グレンは一瞬、もう少し早く来れなかったことに悔し気な表情をするが、すぐにルミアの方から法医魔術(ヒーラー・スペル)をかけていく。そして、ジョレンの立っている先、満身創痍で壁にもたれている男に目を向けて。

 

「あ、あいつは一体何者なんだ……? あいつにここまでやられたのか?」

「えぇ……あいつはスタンド使い……この混乱に乗じて、俺に宿った聖なる遺体を奪いに来た、組織の刺客みたいで……」

「スタンド使いだと……? あいつが、か……?」

「スタンドはどうやら、普通の人には見えないみたいです……多分、同じスタンド使いにしか。俺にはあいつのスタンド……拳銃の形をしたスタンドが転がっているのが見えてますけど」

 

 にわかに信じられない、といった様子のグレンをチェックは無視して、黒の外套を纏った二人組を見て、まるで諦めたかのような儚い笑みを浮かべた。

 

「帝国宮廷魔導師団、か……これじゃあ、無理、だな」

 

 そうぽつりと呟くと同時に、ジョレンにだけは見えていた拳銃のスタンド『皇帝(エンペラー)』が光の粒子となって散っていく。

 二人には、それは見えていないはずだが、散ったと同時に男の方はチェックに向けて左手を構えた。

 

「宮廷魔導師団……? あの人たちが?」

「あぁ、俺の元同僚だ。特務分室《星》のアルベルト。《戦車》のリィエル。今回の王室親衛隊の暴走の調査のために来たらしいが、またこれはとんでもないタイミングだったな」

 

 グレンが裏路地の方を一瞥すれば、そこはとんでもない瘴気のようなものが漂っていると錯覚するほどに殺気で満ち溢れていた。アルベルトもチェックもどちらも殺意だけを滲ませ、それが裏路地という空間で濃縮しているようだった。

 一般人でも簡単に気づけるほどの殺気に当てられ、ジョレンもグレンも、普段能面のミクリも、ルミアもリリィも、全員が無意識に脂汗をかいてしまっている。

 そんな周りをよそにアルベルトは満身創痍のチェックに対して言葉を飛ばした。

 

「スタンド使い、か。話に聞くには、魔術でも観測できない不可思議な力を使う者。かといって古代魔術(エインシャント)でもない……。見るのは初めてだ。だが、そんなことは今は良い。何が目的だ? 聖なる遺体とはなんだ?」

「……言うと思うのか?」

「思わんな。だが、軍本部まで連れ帰れば自白魔術なりなんなりがある。それを使われるまで黙っているつもりか?」

 

 アルベルトは左手を油断なく構えながら、一歩踏み出す。チェックは絶体絶命の状況なのだ。身体中にダメージがあり、まともに立てなくなっている。ここから何か策を打ったところで、何か出来るとはこの場の誰もが思えなかった。

 しかし、チェックはその笑みを崩さない。最初、諦めているように思えたが、それは諦めたというよりも、結果が変わらないから、何もしないでいる、といった感じで―――

 

「それは無理……だと言っておこうか」

「…………」

「さっき、俺……時間切れだって言ったよな……」

「何の話だ」

「だから、そのままだよ。『時間切れ』だ。こんなにボロボロにされても横にずれるだけの力があってよかったと言ったところか……」

「な、何……!?」

 

 その時、ずるり、とチェックの後ろから誰かの手が伸びた。チェックの手ではない。だが男の手ではある。それが、ゆっくりと、壁とチェックの背の間からどんどん這い出てくる。その明らかに異常すぎる光景にさしものアルベルトも動揺を隠し切れず、反応が遅れてしまい―――

 

「何してるアルベルト!? さっさと撃て!」

「ッ、《雷槍よ》」

 

 グレンの一喝に押されるように放たれる黒魔【ライトニング・ピアス】。そのどこまでも真っすぐな雷閃がチェックの心臓を撃ち貫かんとした瞬間。

 

「《光の障壁よ》」

「【フォース・シールド】!?」

 

 チェックの背から這い出てくる左手がこちらを向き、背中から聞こえる誰かの呪文によって六角形(ハニカム)状の結界が展開され、心臓を貫くはずだった雷閃を完全に防ぐ。

 そして、唖然としている皆の前に、背中と壁の間の隙間から一人の人が遂に姿を現した。

 ウェーブがかった金色の長髪をなびかせ、動きやすい紺色のジャケットに身を包んだ大柄な美丈夫だ。その男は結界を展開したまま、目の前にいる相手を一瞥し、チェックに心配そうな声をかけた。

 

「首尾は……良くはないな。大丈夫か?」

「すまない……思ったよりもずっと手ごわかった、クソ……いくらか折られた」

「いいさ、生きていればいい。撤退する」

 

 短い応答を済ませると同時に男は【フォース・シールド】を解除し、ポケットから一枚の大きくて真っ白な布を取り出し、それで自分とチェックを覆い被せた。そして、結界が解除された瞬間、宮廷魔導師団の二人は押し付けられたバネが解放されたかと思わんほどの瞬発力で動いていた。

 

「逃がさない! 何もさせない! 叩き切る!」

「ッチ……《雷槍よ》」

 

 アルベルトが放つ雷光とリィエルのいつの間にか錬成されていた身の丈ほどもありそうな大剣を振り下ろす致命的な威力の攻撃が布で覆いかぶさっている刺客二人に殺到する。振り下ろされた衝撃で地面が抉れ、瓦礫が舞う中―――

 

「!? 手ごたえが無い……」

「馬鹿な……いなくなっている……だと?」

 

 既に布の下にいるはずの男二人は忽然と姿を消してしまっていた。まるでさっきまでのが夢か幻だったんじゃないかと言わんばかりに影も形も無くなっていた。

 だが、ジョレンもルミアも知っている。そんなはずはない、と。確かにチェックと名乗った刺客はいたし、おそらくチェックの背中から現れた男も本物だったのだ、と。だとしたら、可能性は一つしかない。

 

「スタンド能力だ……背中から現れた男の……」

「あ、あんなことまで……あれが、スタンド……」

 

 ルミアどころか、さっきまで見て戦ったジョレンも唖然とせざるを得ない。あまりにも今まで経験してきたこととは次元が違い過ぎて、どうしても疑ってしまいたくなってしまう。

 だが、一番理解出来ていないのは―――

 

「ねぇ……兄さん……」

「ッ!」

「兄さん、そのケガはどうしたんですか……? さっきの人はなんだんですか……? なんで、帝国宮廷魔導師団の人が……? さっきからそこで倒れている王室親衛隊の人は一体……? どう、なっているんですか……? 今……?」

「り、リリィ……」

 

 元々、リリィには関わらせまいと黙っていたこと。

 でも、この時。

 それすらも甘い考えだったということを、あの刺客二人は最後にジョレンに思い知らせていったのだった。

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