漆黒の妖狐   作:千本虚刀 斬月

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下卑た狂喜

 

 

 

 聖職者であるエクソシスト達が末期に抱いた様々の負の念が、怨念と化していく。その怨念の所為で駒王町の氣が濁り、澱み、腐っていく。

 

テニス部の活動を終え、帰宅中の清芽と白音。

 

「まったく、これでは此方の気が滅入ってしまいますわね。教会の皆様方には可及的速やかな解決を願いたいものですわ」

 

白音としても心底同意する。仙術使いとしては、今の町の空気は耐え難く不快だ。

 

だが、教会が派遣してきた人員だけでは、聖剣奪還までは出来るかも知れないが、犯人一味の打倒は不可能だろう。

 

ふと見知った一行を見つけた。神父の格好をし更にフードを目深に被った悪魔3人、路地裏に続く狭い路に入っていった。

 

白音が周囲の気配を探ると、幾何か離れた位置に先日の聖剣使い達の氣が感じ取れ、どうやら3人の後を付いてきている模様。何かしらの取引でもして協力関係を結んだのだろうか?

 

「ふむ、もしかして囮捜査と言うやつかしら?少し、気になりますわね。」

 

清芽は興味津々と言った様子で首をつっこみたそうにしている。白音にしても気にならないと言ったら嘘になるが、清芽が同行している現状では少々悩ましいところだ。

 

清芽とて自衛の手段は無くも無い。確かに陰陽術や鬼道を習ってはいるが、その腕前は未だ未熟と言わざるを得ない。式神行使や呪術については流石に優秀だが、未だ中級下位と言ったところ。白兵戦はからっきしだ。

 

そう逡巡している間に事態が動いてしまった。人払いの結界が一帯に展開されたのだ。

 

結界の基本にして極意は、異常を周囲に覚らせない事。だというのにこの結界は余りに露骨だった。

 

更に奥にはもう1種の結界。来る者は拒まず、去る者は逃がさないタイプの結界。

 

「――誘い、ですね」

 

「釣られてきた方々まとめて一網打尽しようということかしら?随分と自信家ですこと」

 

路地裏の奥から剣戟音が漏れ響くと同時に、清芽と白音の背後から殺気と共に光槍が降り注ぐ。

 

「!?危ない!」

 

「きゃっ!!」

 

咄嗟に回避したものの、結界内部に追い込まれてしまった。そして、獲物を逃がすまいと立ち塞がる堕天使の分隊。

 

コカビエルに付き従う堕天使なのだろう。霊圧から察するに中級1下級4と言ったところか。

 

更に、後方には哄笑を上げながら凶刃(エクスカリバ―)を振う破戒僧侶(サイコキラー)と、必死に食らいつく若手下級悪魔3人。少々意外だが、戦闘の趨勢は拮抗している。今のフリードは複数のエクスカリバ―を同時に所持するに留まらず行使できている事実に舞い上がって酔っている。本来であれば多彩な武装とえげつない戦法、品性下劣な口撃をもっと織り交ぜていただろうに、エクスカリバ―に固執してしまっている。故に、悪魔達はエクスカリバ―に意識を全集中させている事が功を奏しているのだ。

 

下級堕天使達は舌舐めずりしながら光槍を手に形成し、愉悦に貌を染める。しかし、その狂喜は軽くて薄くて安っぽい。正しく雑魚モブの典型例であろう。

 

「ふふ、こうなっては戦うしかありませんわね、白音?」

 

「・・・同感ですが、何でちょっと嬉しそうなんですか?(もしかして、軽く瘴気に当てられてます?)」

 

白音は村雨を構え、清芽は呪符を手挟む。

 

狭い路地裏では堕天使の飛翔能力や数の利をまともに活かせず、逆に猫の機動力を活かせる地形である。

 

白音の霊圧に恐れを為した下級堕天使達は、弄べる程容易い獲物では無いと理解した様で、光槍を一斉に投擲してきた。

 

「!――呪相・密天!!」

 

清芽は投槍の軌道をずらし、すかさず白音が斬り込む。

 

即座に2体が灰燼と帰し、斬撃から逃れようと上空へ飛上がった2羽に清芽が蒼火墜を放ち、1羽は焼滅し、1羽は黒翼を失い墜落。小隊長の中級堕天使が庇うために前に出るが、白音と鍔迫り合い、その隙に清芽が呪相・氷天で後ろの下級堕天使にトドメを刺す。更に、独生き残った中級堕天使は氷のせいで退路が塞がった状態だ。

 

その有様に破戒僧侶(サイコキラー)が若手下級悪魔3人を相手にしながら侮蔑の嘲笑を浴びせる。

 

「おいおいおい。旦那ァ、普段あんだけ偉そうにしてたクセにそいつぁちょいとダセェんじゃねーデスかね~?ビッチ2匹くらいさっくり殺ちゃってくださいよ~!」

 

「ッ黙れ!・・・こうなっては致し方あるまい。」

 

中級堕天使は光の短剣を幾つか形成し、後方の清芽を狙い撃つ。

 

そうなると白音としては清芽を庇う事になり、隙が生じてしまった。即座に追撃に備えて身構える。

 

だが中級堕天使は懐から小瓶を取り出し、中身を呷る。途端に霊圧が大きく上昇した。圧だけならリアス・グレモリーを少しだが確実に上回っている。

 

「ふふふ、連中からは随分とふっかけられたが、高値に見合う効果はある様だな。」

 

「――成程、噂に聞く『蛇』ですか。少し、厄介ですね・・」

 

これで連中が『禍の団(カオス・ブリゲード)』と関わりがあるのは確定。その関係がただの取引程度に留まっているのなら未だしも、事と次第によっては予期していなかった大物が追加で派遣されるかも知れない。

 

「(そうで無くとも、最上級堕天使(コカビエル)が『蛇』の効力を得て強化されたら、本気になった姉様達でもないと太刀打できないでしょうね。少なくとも今の私ではきっと勝てない)」

 

「おんや~?愉しいバトルの最中にのんびり考え事かい?そんなんじゃさ、死んじゃうよ?死んじゃうぜ!死んじゃえよッ!!」

 

そう言いながら狂神父は襲いかかって来た。しかも、白音では無く、力の劣る清芽に。

 

側に控えている老神父(バルパー・ガリレイ)の助言のおかげもあって、夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)の能力で幻覚を見せ、自身を透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)の能力で不可視状態にした事で若手下級悪魔3人を巧く欺いた様だ。

 

だが

 

「へぶらっ?!」

 

仙術使いの猫魈として突出した感知能力を誇る白音には通じない。そもそも、最強と謳われた聖剣の一つと言えど、砕け散った成れの果て。個々の能力は中級鬼道並の性能しか発揮出来てない。

 

「アナタ達は危険です。―――『村雨』!」

 

能力を解放する。同時に猫魈としての本性を露にする。

 

狂神父は先の白音から受けた仙術白打に因って氣流が大いに乱れている。下手をすれば氣が暴発し、経絡に致命的な損傷を負いかねない。

 

「縛道の三十・嘴突三閃!!」

 

清芽が追い打ちを掛け、壁に貼り付けた。

 

「ぐっ!このっ、くされビッチ共があぁ!!」

 

「フン!先程は何やらほざいてくれたが、そのザマか!所詮は人間だったな、クハハハ!」

 

堕天使は増大した力任せに大量の光短剣を形成し、一斉に射出する。

 

若手下級悪魔3人は自分の防御で精一杯。狂神父は壁が破壊された事で解放された。そして白音は清芽の前に立ち

 

「―――断瀑!!」

 

薙ぎ払う。これで中級堕天使は片側の黒翼を失い

 

「見事だ、猫妖怪!」

 

ようやく到着した教会の聖剣使いの破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)の袈裟懸けのフルスイング。

 

堕天使は断末魔を上げる間もなく消滅した。

 

「マジかよ!?クソッタレ、やっぱり全然アテにならねぇじゃねぇか!!」

 

「反逆の徒め!神の名の下に、断罪してくれる!」

 

「ハッ!俺の前で、抜かしてんじゃねぇや!このビッチが!!・・・だが、流石に分が悪ぃや。ってな訳で、逃げさせて貰うぜ!次は最っ高に愉快なオブジェにしてやるからよ、楽しみにしてろよ。この、くされビッチ共があぁ!!」

 

狂神父はフラッシュグレネードで隙を誘い、逃亡する。老神父(バルパー・ガリレイ)はそもそもとっくに失せていた。

 

即座に追跡に移行する教会の使徒達と魔剣の先輩。

 

「・・・私達は「無論、帰って報告です」

 

報・連・相は確りと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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