少し未来のシンフォギア   作:竹流ハチ

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容姿について言及が無いのは仕様です。



Be the One
「受け継がれるガングニール」


立花響、24歳。

 

誕生日は9月13日で血液型はO型RH-。

 

好きな物はご飯&ご飯。

 

そして、特筆すべきはそのガングニールとの適合率。かつては融合症例でもあり他の装者を圧倒していたが、今尚シンフォギアだけで戦っているというのにその適合率は全装者中で頂点に君臨する。

 

何度世界を救ってきたか、数えるだけでもキリがない『英雄』立花響は私の尊敬する装者であるが、

 

「はい響、あーん」

「あーんっ、んー!おいしー!」

 

シンフォギアを纏っていない立花響は、私は嫌いだ。

 

 

 

 

国連災害対策本部本部長『立花響』、かつては日本に拠点を置くS.O.N.Gの隊員として活動していたが、双方の責任者の会議の結果立花響は国連所属の装者となり、S.O.N.Gと国連の架け橋となっている。

 

最初こそ利権やシンフォギアの運用方法について揉め事が多かったらしいが、お互いに代が変わり新しい風が吹くと妥協点と譲歩する事を知っている人達によって険悪だった仲も改善され、今では協力し合えるようになった。

 

そして私は国連所属としては初のシンフォギア装者候補生、しかもそのシンフォギアは装者の中では頂点に君臨する立花響が纏う『ガングニール』。

元々私はシンフォギアについてニュースやインタビューなどを見て知っていて、シンフォギアに関連する仕事に就きたいとも思っていたし、それ相応の努力は人並み以上にしてきたつもりだ。

 

けどまさか本当に私が憧れのガングニールを纏えるとは思いも寄らず、それまで何度も失敗してきた適性検査を受けるように指示してくれた風鳴司令から『国連本部へ栄転だ』と言われた時はその場で跳んで喜んだものだ。

 

災害救助を終えた後のインタビューで見る立花響は日本人にしては背も高く、その澄ました顔や真摯にインタビューを受ける姿から私の憧れだった。

 

その人のガングニールを受け継げるなんて夢のようだと思っていたのも今は昔。

 

「本部長、本部に奥さんを連れて来るのはやめて下さい」

「ちゃんと理事長の許可貰ってるから大丈夫だって。ねぇ未来」

「響もたまには羽を休めないと、すぐに無理をするからね」

「本部長が規律を乱してどうするんですか」

「大丈夫!ティナちゃんも連れて来ていいよ!」

「そんな人居ません!早く会議に出ますよ!」

 

立花響は妻である立花未来を毎日自分の執務室に連れ込んではこうしてイチャイチャとしていて、初めて見た時は正直幻滅した。

私が尊敬していたのはどんな時でも冷静で人命救助を一番に考える『装者の立花響』であって、公私混同を平気で行う人ではない。

 

今も会議が始まりそうだというのに弁当を食べさせて貰おうとしている立花響の手を引き、私が資料を持って部屋から連れ出すと足がもつれたようにしているが知った事ではない。今日はS.O.N.G司令である風鳴司令とあの『ザババ』がわざわざ本部まで足を運んでいるんだ。

 

部長一人の為に待たせる訳にはいかないのだから急ぎ足で第1会議室に向かい、会議室前に着いてから腕時計を確認すると既に会議は始まっている時間になっていて肩を落とした。

 

「あーもう……遅れたじゃないですか」

「ご、ごめんごめん。そう怒らないで」

「はぁ……失礼します」

 

早速心象が悪くなるとため息を吐くと部長は申し訳なさそうにしたが、それで反省の色を見せたことはないから私も諦めて扉を開けると、用意された椅子には国連関連部署のお偉い方達が既に席に座っていた。

 

そして蒼髪でショートカットが特徴の風鳴翼司令、その両脇にはバツ印の髪留めをした暁切歌と長い黒髪を下ろした月読調が立花響と向かい合うように座っている。

私が頭を下げて部屋に入ると立花響は何一つ謝罪の言葉を言うことはなく、全体を見渡す事ができる上席に座った。

 

「こうして実際に顔を合わせるのは久し振りね、風鳴司令」

「久し振りだな、その後は……聞くまでもないか」

「ええ、ティナも日々ガングニールを纏う為の鍛錬に勤しんでいるわ」

「そうか、積もる話もあるがまずは話すべき事から話そう」

「それでは来週行われる『完全聖遺物エクスカリバー輸送、及びシンフォギア化』計画についての最終調整を始める」

 

会議を仕切る立花響を私は部屋の隅で見守っているが、やはり仕事になると立花響は一転して真面目な顔で話を進めていて、普段の動向を知っている私でもあの状態の立花響に声を掛けるのは緊張する。

 

「既に知っていると思うが、完全聖遺物エクスカリバーは『持つ者を必ず勝利させる』という形を持った哲学兵装。その危険性を考慮し実験及び使用についてはこれまで一切が禁じられてきたが、シンフォギア開発の第一人者であるエルフナイン氏が開発した『FG式改良型特機装束』により完全聖遺物のシンフォギア化が可能になった為、保管のコストとリスクを考えてこの計画が実施する」

「それは装者一人が持つ力にしては強大過ぎないか?もしその装者が暴走でもすれば」

「新型シンフォギアには哲学兵装の封印という機能がある。たとえ奪えたとしても封印を解除するにはシンフォギアと同じ封印を解く必要がある。それはこれまでの実績から実質不可能であり、装者もその力を100%引き出すには少なくとも7人の絶唱が必要になる」

「つまりその人数の装者が裏切り、命を懸ける事がない限り哲学兵装としての機能は果たさないという事か」

「その通りよ。また、装者についてだが既に一人候補者が居る。それがこの子よ」

 

そう言って立花響がモニターに画像を写すと、そこにはS.O.N.G所属の装者候補生であり私の親友である『百合根律』のパーソナルデータが映し出され、それを見た国連側のお偉いさんはどよめいていた。

 

「そ、S.O.N.G所属の装者候補生なのか!?」

「エクスカリバーは国連が常に管理してきた物だぞ!?」

「気持ちは分かるが、彼女はエクスカリバーとの適合率が非常に高く、そして本人が既にS.O.N.Gに所属している以上は仕方がない」

「ならばS.O.N.Gから引き抜けばいい!」

「それは困る。此方の装者は私を含めて4人、既に退役した者を含めても5人。私は現場指揮もある為実際に動ける人間は少なく、残りはあくまでも候補生だからそう易々と現場に出すわけにはいかない。そんな中で候補生を引き抜かれては此方も手が回らなくなってしまう」

「それを言うなら此方は二人でシンフォギアは一つではないか!それも一人は本部長、もう一人は装者候補生だぞ!」

「なら此方が身を削れと?装者候補生の育成は全て我々に任せているのに、都合の良い時だけ引き抜くのは些か礼儀がないのではないか?」

「私達もカツカツ、文句を言われても困る」

「そうデス、文句があるなら其処の本部長を通すデス!」

 

国連が保管してきた完全聖遺物をS.O.N.G所属の装者候補生のシンフォギアに変える。それが気に食わないお偉いさんは風鳴司令に食って掛かったが人員が足りないのはS.O.N.Gも同じ、S.O.N.Gの内情にも詳しい立花響を通せと言われるとお偉いさんは唸り声を上げた。

 

「本部長!」

「………風鳴司令、代わりにイチイバルの装者候補生が中学卒業後、此方に引き抜かせて貰えませんか?」

 

お偉い方に『どうか良い決断を』と迫られた立花響は暫く思案した後、そう切り出すと調子付いていたザババの二人は途端にうろたえ、風鳴司令も困ったように眉を顰めた。

 

イチイバルの装者といえば雪音クリス、広域殲滅を得意として優秀な装者ではあるけど、雪音クリスではなく装者候補生の方を選んだのに何か理由があるのだろうか?

 

「……拒否する」

「拒否されては困る、此方も譲歩して装者が決まっている完全聖遺物を引き渡すのだからそれ相応の対応をして頂かないと」

「イチイバルの装者候補生はまだ幼い。それをいきなり国外での活動に駆り出すのは危険だ」

「だから中学卒業後、つまりはそれまでに其方で教育をして貰えば問題ない。もしくは調整中のアガートラームの装者候補でもいいが、それは其方が困るのでは?」

「………検討しておこう」

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

そうして会議が進み、計画の最終調整が『実施可能』という判断で終わると会議も終わり其々が退出して行ったから私は使った資料を片付け始めた。

 

ずっと喋りっぱなしだった立花響も資料を手に持ったまま椅子に座り込むと、大きく背伸びをしながら背もたれに身体を預けていた。

 

「あー疲れた……何度やっても慣れないねぇ…偉そうに喋るってのは」

「良かったのですか?」

「んー?」

「イチイバルの装者候補生、まだ小学生ですよ?」

「大丈夫大丈夫、あの子滅茶苦茶しっかりした子だから。この話をしたら中学を出たらこっちに来てくれるよ」

「でも肝心のイチイバルが無いなら意味が」

「イチイバルは近い内にあの子の物になるよ」

 

イチイバルの装者候補生とは日本に居た時に顔を合わせていたけど、優秀ではあるけどまだまだ育ち盛りの子供といった様子でとてもじゃないが装者にするには若過ぎる。

 

それにイチイバルの装者もまだ現役だと言葉を続けようとすると、少し食い気味に言葉を遮られたから驚いて立花響の方を見てみると、立花響は目を閉じていて気を落ち着かせるように肩で呼吸をしていた。

 

立花響はイチイバルの装者とも面識があるのだから、イチイバルの装者が現在どうなっているのかというのは知っていても当然か。

 

「何かあったのですか?」

「いや、何でもない」

「口調、変わってますよ」

「………いやぁ、ティナちゃんには敵わないなー」

 

私と接する時は口調を崩す立花響がわざわざ威圧感を纏うという事は、そうしなければ己の役割を果たせないから。

 

人情ではない、より多くの命を平等に救う為の手段を講じる国連の職員としての機械的な役割を。

 

「何か悩み事ですか?」

「………クリスち、イチイバルの装者は」

「雪音クリス、知ってますよ」

「……クリスちゃんはね、もうイチイバルを纏えないの」

「っ、どうしてですか?」

「シンフォギアは装者の心象によってその歌を奏でるけど、『うたのおねえさん』になったクリスちゃんが子供達と歌う事をイチイバルは許してくれなかった。少しずつクリスちゃんの適合係数は下がっていって、それでもそれを補う程の経験でこれまで戦ってきたけど、クリスちゃんは幸せになればなるほど力を失っていった」

「………」

「クリスちゃんは最後まで戦うって言ってたけど、私はもう十分戦ったと思ってる。だから」

「イチイバルを受け継がせて、無理矢理前線から外す」

「ホント、ティナちゃんは頭が良いね」

 

国連災害本部本部長の肩書きに相応しい酷く合理的でシンプルな判断、『イチイバルの装者候補生を引き抜き、弱くなった雪音クリスを退役させる』というのは風鳴司令からすれば反論のしようがない提案だったのだろう。

 

今はまだ装者候補生だから本人が望めば国連所属になる事も容易く、雪音クリスの性格上その席を譲る事はないだろう。

 

かと言って適合率の低下を隠している風鳴司令が共に戦ってきた戦友に戦力外通告なんて突き付けないだろうし、装者候補生に前倒しで受け継がせるなんて事もしないだろう。

 

ならばイチイバルの装者候補生は現状のS.O.N.Gでは『不必要』と主張するしかない、この話は拒めない引き抜きと同義という訳か。

 

「ホント、クリスちゃんに恨まれちゃうよ……」

「本部長…」

「ホント……こんな事をする為に此処に居るんじゃないのに…ッ!」

 

立花響は自らが講じた搦め手を憎むように資料を握り締め、その握られた拳を机に振り降ろすと机に置かれていたコーヒーのカップが宙を舞い、地面に叩きつけられると粉々に砕け散った。

 

それはまるで、理想が現実に打ち砕かれたのように。

 

 

 

 

「ハァ……ハァ…!」

『ティナ君、これ以上は』

「もう一度お願いします!」

『君の身体が…』

「いいから、お願いします!」

 

あの会議から数日後、私は無性に身体が動かしたくなったから本部長からガングニールを借りてはトレーニングルームに籠ってひたすらに訓練を続けた。

 

私は適合係数が平均よりも遥かに低いからアームドギアの発現には至っていないけれど、アームドギアが無くても戦っている本部長の手前でそんな泣き言は言っていられない。

 

幼い頃から習っていたカポエラが功を奏し、私は足技を主体に戦い方を身に付けていったけどそれでも立花響には遠く及ばない。

あの人は私のような恵まれた環境ではなく、超えなければいけない壁ばかりだったからあそこまで強くなれた。

 

初めから融合症例だったから、今の適合率まで上げることができた。

 

「ハァァァァッ!」

 

私とは、出来が違うんだ。

 

渾身の蹴りを放ってノイズの群れを一掃するとトレーニングルームの景色が無機物な壁へと変わり、誰が勝手に止めたんだとモニタールームを見上げると、其処では立花響がオモチャで遊ぶ子供を見下ろすように私を見ていた。

 

『凄く強くなったね、ティナちゃん』

「っ、貴女に言われても嬉しくない……」

『えっ?』

「何でもありません、今日は疲れたので上がらせて貰います」

 

折角温まってきたのに興が削がれてしまったから私はシンフォギアを解除し、トレーニングルームから退出してからもう一度聖詠が浮かぶか試してみたけど、やっぱり私の適合率では少しの気の持ちようで浮かばなくなる。

 

立花響は悪くない、悪いのは弱い私なんだ。国連へ来る前に律から言われた通り、私は焦っているのかもしれない。

 

ロッカールームで汗だくになったトレーニングウェアを脱ぎ、バスタオルだけを持って個室のシャワーで嫌な感情と一緒に汗を流していると扉が開く音が聞こえてきた。

 

「ガングニールも安定してるね」

「………」

「明日の輸送作戦、ガングニールはティナが使って護衛する方向で決めたからそのつもりで」

「なっ!?」

 

今は立花響と顔を合わせたくなかったからそのまま無視しようとしていると、声色を変えてエクスカリバー輸送計画での護衛を立花響ではなく私がやる事になったと言い出した。

 

それには異論しかないから個室から飛び出ると、其処で腕を組んで立っている立花響の真剣な表情に驚かされた。

 

まさか、本気で言ってるの…!?

 

「な、何で私なんですか!?」

「何かダメな理由が?」

「何で本部長がガングニールを纏わないんですか!?イチイバルの装者もマトモに運用できないって言ったのは本部長じゃないですか!?」

「心配しなくてもイチイバルの装者は今の貴女よりは遥かに強い。そんな事よりも資料に目を通して明日に備えなさい」

「質問に答えてください!何故私がガングニールを纏うんですか!」

 

エクスカリバーは絶対に守り切らなければいけない完全聖遺物、そんな重要な任務に装者候補生であり未熟な私が参加するなんて余りにも無謀だ。

それこそ世界を何度も救ってきた立花響がガングニールを纏うべきなのに、どうして急にそんな事を言い出すんだ。

 

伝えるべき事は伝えたと言わんばかりに立ち去ろうとしたその背中に問いただすと、立花響は足を止めたけど振り返る事はなかった。

 

「貴女は決めた筈、ガングニールを纏うと」

「それはそうですけど、最初の任務が」

「最初は近所の火事や建物の倒壊に派遣されるとでも?冗談も休み休みにしなさい。貴女はシンフォギア装者、その任務に優劣を付けるなら適性検査をやり直す事になるわ」

「ッ………貴女がそんな人だと思わなかった…ッ!」

 

私だっていつかは重要な任務に参加するというのは覚悟していた、けどそれは立花響がガングニールを纏えなくなってから正規の手続きで受け継いだ後の話の筈だった。こんな形でいきなりガングニールを纏った所で私に出来ることなんてたかが知れている。

 

そんな事は誰よりも最前線で戦ってきた立花響が一番知っている筈なのに、こんな不意打ちみたいなやり方をされるなんて心底失望した。

いつもの立花響なら私を試す為にこんな無茶苦茶なんてしない。私が尊敬していた立花響なら、私が『ガングニールの装者』だと自信を持てるくらいもっと強くなるのを待ってくれていた筈なのに。

 

「初めからシンフォギアを纏えた貴女に私の気持ちなんて分からないんだ…ッ!」

 

私がどれだけ期待されてるかなんて聞かなくても分かってる。世界的英雄の立花響の跡を継ぐのだから中途半端な力では引き継いだ任務を失敗する可能性だってあるし、その失敗が国連にとって痛手になる事だって理解してる。

 

それなのに無理矢理任務に参加させるなんて、それではまるで『失敗してもそれは装者の所為』という言い訳を用意してるようなものだ。

所詮適合率の低い私の事なんて適合者が出てくるまでの『繋ぎ』としか思ってないんだ。そっちがそのつもりなら私はもう立花響を尊敬だなんてしない。

 

私がどれだけ皆の才能を羨んでるかも知らない立花響を追い越してシャワールームから出て行き、そのまま自室に籠ってひたすら明日の計画についての資料を確認した。

全ては立花響を越える為に、初めからガングニールを纏えていた天才を越える為に凡人に出来ることをするまでだ。

 

 

 

 

 

『聖詠は浮かんだか?』

『いえ……』

『これでガングニール以外は全部試したか』

『はい……ですがどれも』

『アリア、下がっていいぞ。静香入れ』

 

日本に拠点を置くS.O.N.Gが何処で適合者を集めているのか、それを見抜くことがS.O.N.G入隊への一番の近道だと思ってノイズの出現パターンを割り出し、ノイズ災害での生存者が最も多かった場所は一見ただの学校に見える私立リディアン音楽院だった。

 

けど海や山に近く防衛に向いた立地や交通網の整備具合から明らかに何かしらの優遇されているのは間違いなかった。

その事をメールで確認すると当然関与はしていないと否定されたが、調べるに当たって書き上げたS.O.N.Gについてのレポートを送ると返信は来なかったが、代わりにS.O.N.G職員の迎えが来た私は五人目の装者候補生として入隊する事となった。

 

最初の装者候補生で天羽々斬を最も得意とする同年の『百合根律』、小学五年生ながらイチイバルと適合し才覚溢れる『静香・ロンドリューソン』、ザババとの適性を示した双子強盗『譜吹姉妹』に続いた私は全ての適性テストで最高点数を叩き出し、入隊までの経緯が特殊でも精神鑑定では問題もなくまさに順風満帆なスタートを切った。

 

だが、私はとんでもない所でつまづいた。

 

『ティナ……』

『………』

『……ううん、何でもない』

 

シンフォギアとの適合率、6%。

 

それは適合率を上げるLiNKERの使用が許可される最低30%を大きく下回っていて、一般人よりも遥かに低い適合率では聖詠すら浮かばず、私は『器用貧乏』の烙印を押されたも同然だった。

 

どんなに他が優れていても適合率が低いので装者にはなる事が出来ず、寧ろ私の成績なら優秀な分析官としての席も用意出来るとも言われたけれど、それに対する返答は最後の最後まで引き伸ばした。

 

『《enjerr Ichaival tron》』

 

天羽々斬と異様なまでの適合を見せた律、まだ小学生なのにテストに合格しイチイバルとの適性もあった静香、二つで一つという特異な聖遺物と適合した双子装者の空と海美。そしてアガートラームの適合者。

 

歴とした適合者でありテストにも合格できた他の皆とテストだけの私、どちらが優秀かなんて火を見るよりも明らかだった。

 

『あれま〜、遂にガングニールだけになっちゃった〜』

『でもまだガングニールがあるんだし、希望を捨てちゃ駄目だよ〜?』

『あっ、希望だけ持ってたら駄目だった時が可哀想か〜』

『……風鳴司令にもう戻るって伝えておいて』

『うん………二人ともこっちに来なさいッ!』

『きゃ〜、りっちゃんが怒った〜!』

 

どんなに馬鹿にされても、私にはまだガングニールが残っていた。これまでの結果を踏まえたら適性検査を受けさせて貰えるかも怪しかったけれど、そのチャンスに私の全てをぶつけるしかなかった。

 

私には、後がなかったんだ。

 

 

 

 

「あの、大丈夫デスか?」

「大丈夫です、資料なら全部読み通してきました」

「いや、めちゃんこ眠そうなんデスけど…」

「無理しないで、キツイなら響さんに」

「あの人を頼らなくたってやれます!」

 

国連本部地下にある聖遺物保管所から輸送されるエクスカリバーの入ったケースとダミーのケースの計三つ。それを私とザババの二人がそれぞれ一つずつ護衛しながら軍港まで運び、其処からは軍艦を使った海上輸送と鉄道輸送の二手に分かれる。

 

ザババの二人は絶対的ではあるが市街で戦うには余りあるその力を考慮して海路を、そして私は幾らでも支援ができる鉄道での輸送という振り分けになっている。

その分単位でのスケジュールの全ては頭の中に叩き込んだ、たとえ何が起きようと今の私なら必ず対応できる筈だ。

 

「気合いバリバリなのはいいんデスけど」

「無理しないでね」

「はい!よろしくお願いします!」

「うーん…」

 

軍港までの道のりだけだが二人と一緒に行動するのだから私は頭を下げてから軍用車に乗り込むと、二人も腑に落ちないといった様子だが同じ車に乗り込み、なるべく輸送車とバレないようにする為に護衛車は無しでの任務が始まった。

 

本部から出てから道なりに進んでいるように見えても全ての交差点に差し掛かる瞬間に青になるように細工をしていて、危険な街中を最短での駆け抜けれるようにしている。

 

ここまでしても悪どい連中というのは嗅ぎ付けてくるから、その時は私達が先陣を切って殲滅しなきゃいけないだろう。

 

「それで、国連はどう?」

「どう、とは?」

「楽しい?」

「いえ、特には。私はスイスに知り合いがいる訳でもありませんし」

「それじゃあ友達を一杯作るデスよ」

「そんな暇があるなら訓練します」

「相変わらずのハイパー堅物デスね……」

「お世話様です」

 

ザババの二人とはS.O.N.Gで何度も顔を合わせ、歳もそれなりに近いから話もした事があるから二人が同じ大学に通ったり同じ部屋に住んだりと仲が良いことは知っている。

 

一方で『クソ真面目』と呼ばれる私は友人も少なくて遊びらしい遊びも知らない非常識人。その身を剣と称す風鳴司令に気を掛けて貰わなければ、ひたすら資料室とトレーニングルームに籠る癖がある私の存在なんて認識すらされていなかっただろう。

 

全ては私の僅かな適性を信じてくれた風鳴司令への恩に報いる為、私は何としてでもガングニールを使い熟さないといけないのだから休んでいる暇などない。

 

「そんなに端末とにらめっこして楽しいデスか?」

「衛星からの映像で周辺に怪しい車両が居ないか確かめてるだけです」

「そこまで自分達でしなくても司令達がやってくれてる」

「自分でも確認してた方が意思疎通がしやすいので」

「ハァ、少しは丸くなってると思ったんだけど」

「………私はお二人程強くないので、肩の力を抜いてる暇なんて無いんです」

 

私の両脇に座るこの二人は誰にもなし得なかった偉業を成し遂げ、その単純な戦闘能力は立花響も大きく上回る。戦う事が全てではないシンフォギアだけれど、装者候補生にとっては誰よりも強いというのは憧れるものだ。

 

それは私も同じだったし、エルフナインさんの研究室に忍び込んで何度か資料を覗いた事があるけど私にはまるで理解が出来なかった。二人は風鳴司令のように厳格な態度は取らないがそれに見合った実力は兼ね備えているんだ。なら尚更のこと、私がそれに釣られてふざけていたら追い付ける訳もない。

 

初代装者達に流されず『私は私だ』と自分に言い聞かせると二人は呆れたようにため息を吐き、暁切歌が指を鳴らすと私の端末を一瞬で『氷漬け』になってしまった。

 

金属すらも凍結させてしまう程の冷気に驚いて私が手から落とすと、車の床にぶつかった端末は粉々に砕け散ってしまった。

 

「な、何するんですか!?」

「おおー、今日は調子いいデス!」

「狙い通りにいった」

「こんな所で試さないで下さい!」

 

私の手作りの端末を壊されたのだから文句の一つくらい言おうと思ったけど、二人の戦闘能力を考慮すればそれで力の調子を測れるのは安い物なのだから、色々言葉を飲み込んで前を向いて座り直した。

 

全く、こういう所さえなければ手放しに尊敬できるというのに。

 

「羽が一枚生えた程度のペーペーには分かんないかもデスが、アタシ達がこれを習得したのは強かったからじゃないデスよ。初めから強かったらあんな地獄みたいな勉強しないデス」

「勉強でどうにかなるものでは…」

「私達は他の装者と比べて単体での能力は明らかに劣っていた。けど、そんな泣き言を言っていたら誰よりも頑張った響さんに顔向けが出来ないから死にものぐるいで勉強した」

「………私はあんな人嫌いです」

「おっ、これは意外な言葉デスね」

「確かにその功績は英雄と呼ぶに相応しいし、私でなければ気にしない事かもしれません。けど上っ面だけ格好付けて、奥さんを執務室に連れて来るような公私混同をする人に二人がそこまで肩入れするのが私には納得できません」

 

立花響を慕っている二人には悪いが、あの人がやっているのは力を持つ暴君とさして変わらない。自分が一番力を持っているのだからと好き放題にやって規律を乱して、誰かの上に立つ時だけ英雄の皮を被る。

 

そして、人の成長度なんて度外視で作戦に投じる無謀さからは歴戦の装者の貫禄のカケラもなく、まさに『愚直』と言うべき人だ。

 

それでも立花響を慕う二人からの叱責は覚悟していたから身構えていたが、何故か二人からは怒声が飛んで来なかったから顔色を伺うと、二人は私に怒るというよりも唖然といった様子で目を丸くしていた。

 

「え、まさか何も聞いてないんデスか?」

「何をですか?」

「未来先輩の事とかデスよ」

「融合症例という事と立花響の奥さんという事以外は特に」

 

何ですか、その可哀想なモノを見る目は?

 

「ティナはもうちょっと友達作るデスよ……」

「他の装者候補生は皆知ってるよ……」

「よ、余計なお世話です!大体律が教えてくれなかったから律だって知らない筈です!」

「響さんがただ強いから凄いと言われてると思ってたの?」

「そんなので凄いって言われるのなら前の司令なんか素手でアームドギアへし折ったりしてるデスよ」

「素手で……じゃなくて!何で立花響はそんなに凄いって言われてるんですか?」

「そうデスねー、言うならば『愛』デスね」

「何故そこで『愛』なんですか……?」

 

 

 

 

 

 

『焦る気持ちも分かるデスが、あまり根詰めちゃ駄目デスよ』

『ティナはティナらしく、それが響さんが求めてるティナだと思う』

 

ザババの二人はそう言い残して軍艦に乗り込んで出航し、一人取り残された私は国連の職員と共に貨物列車に乗り込むとすぐさま発車され、遥か東の日本を目指して数日を掛けた輸送作戦が実行された。

 

けど私は二人の言葉が信じられず列車の中でもその事ばかりを考えていて、気が付けばいつの間にか欧州を過ぎてロシアの南部を列車は走っていて、辺りは一面の銀世界だけれど私の心の中はずっと翳ったままだった。

 

「どうして私を……」

 

立花響のS.O.N.Gからの離脱、そして国連所属の装者になった経緯は聞いていたがその二年前に起きた事件について聞かされた私は度肝を抜かされた。

 

融合症例二号となった小日向未来さんを完全聖遺物として国連の管理下に置かせない為に、立花響は誰にも何も言わずに日本を飛び出して二人だけでスイスへと向かった。

 

そして欧州での救助活動に尽力してひたすら功績を残すことで、小日向未来を管理するのはそれに見合った力を持つ自分だと証明した。

 

二年間1日たりとも休む事なく災害救助に赴き、愛した人とのすれ違いの日々が続いても決して諦めないその想いが国連の上層部を動かし、日本の成人式の日だけは国連から与えられた休日として帰国。

けどそこで待っていたのは地球のレイラインに合わせて絶唱し、日本に向かうガングニールを見つけ出した装者達との再会と和解。

 

そこからは二人が何を言っていたのかは覚えていない、私にはそこまでしか聞く勇気が無かったんだ。

 

私が不真面目で公私混同をする人だと呼んだ立花響は、誰よりも己の信念に忠実に生きていた。自分に嘘を吐かず、辛い選択だとしても守ると決めたモノを最後まで守り通そうとする勇気を持っている人だった。

 

「どうして……私を選んだの…?」

 

そして、私をガングニールの装者候補生に選んだのは適性検査を受けるように指示を出した風鳴司令ではなく、何の面識もない立花響本人だったなんて私自身知らされていなかった。

 

その理由は何度考えても答えが出ないから直接本人から話を聞こうにも立花響は何故か通信に出ることはなく、私はただ列車に揺られる事しか出来なかった。

 

私はどのシンフォギアとも適合出来なかったクソ真面目だけが取り柄の不良債権。装者になる唯一のチャンスだったガングニールとの適合率を測る適性検査の時だって、コッソリ盗み出したLiNKERを使って立花響レベルの適合率になるまで無理矢理引き上げて誤魔化していた。

 

そんな事がバレたら取り柄のクソ真面目さえ無くなり、ただ面倒くさいだけの一般人になってしまう。そんな事にはなりたくない、だから私は何としてでもガングニールと自力で適合しなきゃいけな

 

『ドンッ!』

 

私の願いを叶える為にも必要な力であるペンダントを強く握り締めていたその時、突然後方から爆発音が聞こえると共に列車が大きく揺れ、私はすぐに近くの固定されたコンテナに身を寄せた。

 

「きゃッ!?な、何!?」

「アリアさん、敵襲です!」

「敵襲!?所属は!?」

「分かりません!早く迎撃を!」

 

私が揺れが落ち着くのを待っていると後方車両の方から血塗れの職員の人が駆け付け、敵襲だと知らされると私の胸が緊張で苦しい程に高鳴るのを感じた。

 

パヴァリア光明結社の残党かそれともテスラ財団の残党か、それとも全く新しい敵なのか。少しでも相手の事が分かれば気も落ち着くかもしれないけど、必死に知らせてくれた職員の人に当たっても仕方ないから私はすぐに後方車両へ向かった。

 

落ち着け、実戦と言っても結局は訓練の反芻。訓練通り戦えば何の問題もない、私が積み上げてきた訓練の成果を見せるんだ。

 

自分の中にある恐怖をこれまで積み上げてきた訓練の時間で押し潰しながら最後尾の後方車両に向かっていると、突然私が乗っている車両が大きく揺れた。咄嗟に一つ前の車両に飛び込むと、私が立っていた車両は重力に反して浮かび上がり、雪原へと放り捨てられた。

 

『おやぁ?そのケース、さては貴女が装者ね』

「ッ、テスラ財団か…!」

『おやおやぁ?それにしては新顔、もしかしてハズレかしら?』

 

開いた扉から見える列車の車両を放り投げた女は全身に機械の鎧を纏い、背中に取り付けられた機械の翼でホバリングをしながら上空から私の事を見下ろしていて、私を見た事がないと言うが私はその顔には見覚えがある。

 

現代の電気社会の根底を築いたニコラ・テスラを復活させる事を目的としてかつて活動していた『テスラ財団』。ニコラ・テスラは実際に復活したけれど暁切歌によって再び黄泉に送り返され、その残党が各地に散らばっているのは知っているがその中でも目の前にいる女は幹部クラス。

 

「シャルロット・ディルバルス…!」

「おやぁ?私を知っているなんて勉強熱心ね」

 

シャルロット・ディルバルス。

生体科学者でありテスラ財団が多用する高機能機械外骨格『タイタン』の事実上の生みの親であり、テスラ財団への支援金の2割を占める大富豪。その美貌と金で多くの科学者を狂わせ、テスラ財団を築く際に大きく貢献した国際指名手配犯だ。

 

「何が目的よ!」

「あらぁ?貴女のお手手に持ってるエクスカリバー以外に目的があると思うのかしら?」

「エクスカリバーは渡さない!」

「まぁ?威勢が良いわね。それじゃあいつまでその威勢が続くか、お姉さんが試してあげるッ!」

「ッ!?」

 

やはり何処からか情報が漏洩していたようでシャルロット・ディルバルスは『エクスカリバー』が目的だと吐き、ならば絶対に渡す訳にはいかないから私がペンダントを握り締めていると、シャルロット・ディルバルスが私に手を翳すと突然私が立っていた車両が宙に浮かび上がった。

 

そして手を払うとそれに従うように車両は雪原へと吹き飛ばされ、私も空中に投げ出されたがこの位は想定の範囲内だ。

 

「《belcanty wagner Gungnir tron》」

 

私はなんとかLiNKER無しでも浮かんでくるようになった聖詠を唱えると私の身体を光の粒子が包み込み、立花響と同じ形のガングニールを形成して空中で体勢を整えて地面に着地すると、シャルロット・ディルバルスは目を見開いていた。

 

「おやぁ?」

「《ーーーー》!」

「立花響のガングニールを何故貴女が?」

 

シャルロット・ディルバルスは私がガングニールを纏っている事に驚いているようだが、そんな事を一々説明する義理なんてない。私の適合率では長期戦は不利になるから最初から全開の短期決戦と決め、地面にバンカーを叩きつけて空中を舞うシャルロット・ディルバルスに飛び蹴りを放った。

 

無論そんな直進だけの攻撃なんて避けられる事は想定内、私の動きに合わせて風に靡くマフラーをすれ違い様にシャルロット・ディルバルスの首に巻き付け、地面に着地すると共に思いっきり引っ張って地面に叩きつけた。

 

「あらぁ?」

「《ーーー》!」

 

けど私のフォニックゲインではやはり力が不足しているのか、地面に叩き付けた筈のシャルロット・ディルバルスは立ち上がると土を払う余裕すら見せていて、分かってはいたが私の攻撃が通じている様子はない。

 

だから私じゃない方が良いと言ったのに…!

 

「貴女、弱いわね」

「ッ、黙れ!」

「それ」

 

小細工が効かないのならと右腕のガントレットを引き上げ、フォニックゲインをフル充填してから一気に距離を詰めてからシャルロット・ディルバルスに拳を突き出した。

 

だけどその拳はいとも容易く片手で受け止められ、引き上げていたガントレットを打ち込んでもその衝撃ではシャルロット・ディルバルスは後退りすらせず、どれだけギアを回転させても私の腕は微動だにしなかった。

 

「はぁ、お姉さん幻滅しちゃった。折角立花響のガングニールと戦えると思ってたのに、出て来たのが見習いさんだなんて」

「あの人が出る必要なんてない…!」

「オマケに片手にお荷物を持っちゃって………ガキが大人を舐めすぎよッ!」

「キャァッ!?」

 

何とか拘束から抜け出そうとしたがシャルロット・ディルバルスの機械外骨格は想定されている出力を遥かに上回っていて、私の腕が引かれると横腹にトラックに轢かれたような衝撃が加わったかと思うと一気に視界が暗転した。

視界が戻ってからようやく蹴り飛ばされたのだと理解したその時には何度も地面に叩きつけられていた。

 

あまりの衝撃に感覚が少ししか戻らず地面に這い蹲っていると、私の左手からはケースが無くなっていることに気付き、すぐに顔を上げてケースの位置を確認するとケースは雪原の中央まで吹き飛ばされていた。

 

何とか時間を稼ぐんだ……あの中にはエクスカリバーは入っていない………あの二人なら多少の襲撃なら撃退できる筈だから此奴は私が引き付けるんだ!

 

「ヅゥ…!」

「まぁ?痛かったかしら?」

「こんなの……痛いの内に入るものか…ッ!」

「いいわぁ、そうやって痛みを痩せ我慢する表情は唆られるわぁ」

「《ーーー》!」

 

指一本でも動かそうとすると全身が軋む程の痛みが走ったけど、私は私の役目を果たす為に身体に鞭を打って立ち上がり、再びバンカーを叩き付けて一気に距離を詰めてから連撃を繰り出した。

 

だが、今度は受け止める事すらされずその全てを避けられたけど、私が手を止めれば攻撃のチャンスを与えてしまうのだから止めるなんて選択肢は無い。一発でも当たればダメージになる筈、それを積み重ねればどんな相手でも倒せる筈だ。

 

「健気ねぇ、効きもしない攻撃を繰り返すだなんて」

「効かないかどうかは当ててみないと、分からないッ!」

「っと」

 

シャルロット・ディルバルスが話に夢中になっているその隙を突き、これまでの慣れない拳打とは違って幼い頃から習っていたカポエイラで積み上げてきた蹴りを主軸にした攻め方に変えると、拳のような単調な攻撃ばかり見慣れていたからか避ける動きが大きくなった。

 

だけどそんな簡単に私の間合いは見極めさせない。

 

「貰った!」

 

頭部を狙ったハイキックは体を逸らすだけで避けられた。

 

けどその勢いを殺さずに今度は姿勢を低くして地を這うような足払いを掛け、身体を浮かせてから勢いに身体を乗せながら逆立し、身体を限界まで捻る事で全体重を乗せた回し蹴りを叩きつけた。

 

立花響のようなデタラメな威力は出ないが、今の私に出来る最高の一撃はその身体を吹き飛ばして脱線した車両に激突し大穴を開けた。

反撃が来てもいいように身構えたけれど暫くしてもシャルロット・ディルバルスが起き上がってくる様子はなく、適当に雪玉を作って穴の中に投げ込んでみても反応はない。

 

も、もしかして……!

 

「か、勝った……!」

 

初めての実戦で相手はテスラ財団の元幹部、そんな相手に勝つ事ができたのだと実感すると手を強く握り締めていたけれど、私の任務はエクスカリバーの輸送任務である事を思い出してすぐにケースを回収に向かった。

 

どれに本物が入ってるかは私達も聞かされていないけれど、どれが本物でもいいようにケースが奪われる事だけは避けなくてはいけない。たとえ私が見習いだから任される事はないとはいえ、そういった所を蔑ろにしていたらいつか足元を掬われる。

 

実戦で勝利を収めたというのに素直に喜ぶ事も出来ないこの性格もいつかは何とかしな

 

『こっちはガングニールが出てきたかと思えば大外れ。エクスカリバーはそっちみたいだわ』

 

ケースを回収しようとしたその時、背後から巨大な影が私を覆ったから振り返るとそこにはさっきシャルロット・ディルバルスが穴を開けた車両が目の前まで迫っていて、咄嗟に防御体勢を取ったがその質量に押し潰された私は車両ごと雪原に隣接する枯れ林まで吹き飛ばされた。

 

完全に不意を突かれた所為で何十トンという鉄塊に押し潰された私を殺さない為に、ガングニールは全ての衝撃を装甲に伝えて粉々に砕け散り、ガングニールが私を守ってくれたとはいえど全身の骨が砕けんばかりの衝撃を受けた私は立ち上がる事すら出来なかった。

 

「くぅ……ぁ…っ…!」

「『ほら、言った通りでしょ』。さてと、エクスカリバーも無事回収した事だし、こっちの一般人さんも殺しちゃいましょうか」

「ッ……!?」

 

エクスカリバーが回収された、それはつまりあの二人がテスラ財団の残党に負けたという事だがそんなの信じられる訳がなかった。

 

あの二人が負ける訳がないから本部長と連絡を取ろうとしても未だにノイズが走るだけで、こんな時に何をしているのか考えようとしても痛みで思考が上手く纏まらず、シャルロット・ディルバルスが遠くに転がる車両に手を翳すと車両は空に浮かび上がった。

 

「それじゃあさようなら、過去の伝説さん」

 

そして、車両に翳していた手が私に向けられて振られると、空中で支えられていた車両は重力に従って地面に倒れている私の真上から落下してきた。

 

私が弱かったから何も分からずじまいで終わるなんて、そんなのは嫌だ。私はもっと生きたい、クソ真面目なりにも私は私の人生でやりたい事があるんだ。私にだってシンフォギアを纏ってでも叶えたい夢があるんだ。

 

まだ、死ねないんだ!

 

「助けて……!」

 

 

 

 

 

『ようやく頼ってくれた』

 

車両が今にも私を押し潰さんと降り掛かり、目の前に迫る死が怖くて私は目をギュッと瞑って助けを求めたその瞬間、私の前に誰かが立つと金属がひしゃげるような爆音が真上で鳴り響いた。

 

何が起きたのかと恐る恐る目を開けるとそこにはいつもならキッチリと着こなしているスーツのボタンを全て開け、高いヒールを折って地面に足をめり込ませ、その拳を空に向けて突き上げた立花響が立っていた。

 

落ちてきていた筈の車両は遥かに彼方まで飛ばされてから地面に落ちるとその振動が微かに伝わってきて、シャルロット・ディルバルスは生身で車両を殴り飛ばした立花響を憎らしげに睨んでいるが、本部に居る筈の立花響が目の前に立っている事の方が私にとっては衝撃的だった。

 

「あーあ……ヒール折っちゃったじゃない。高いのよこの靴」

「ホント怪物ね…!」

「どうして本部長が…!?」

「ようやく尻尾を出したわね、シャルロット」

「見習いを囮に使うなんて、私が知ってる貴女のデータとは違うのだけど?」

 

囮、その言葉を聞いて私はこの場にいる理由を理解した。

 

敵からして見ればこんなだだっ広い雪原は襲って下さいと言っているようなもの、そして一番の強敵である立花響が纏う筈のガングニールは装者候補生が身に纏っている。

多少のリスクはあってもこんな絶好の機会を逃す訳がないのだから、後はその付近で待機していれば後は私達が戦っている場所に急行すればいいだけ。

 

確かに『英雄』である立花響らしくはない、けど今は『国連災害対策本部本部長』である立花響の判断は間違いなく功を奏したんだ。

 

「本部長…ガングニールを……!」

「囮?馬鹿言わないで、貴女を倒すのは私ではなくこの子よ」

「え?」

 

私の役目は果たしたから残りは全て立花響が終わらせてくれると思ってガングニールを手渡そうと腕を伸ばしたが、立花響はシャルロット・ディルバルスの発言を一蹴し、あろうことか敵に背も向けて私を見下ろした。

 

この人は一体何を考えているんだ?私はシャルロット・ディルバルスに既に負けたというのに、これ以上私の何処に勝算があると思って戦えなんて言ってるんだ?

 

「本部長、私には無理です…!」

「………」

「私にガングニールを纏う資格なんて本当は無かったんです……適性検査で」

「LiNKERを使った事なら知ってるわよ」

「ッ、ならどうして!?」

「それは貴女がガングニールを纏うに相応しい人間だったからよ」

 

ガングニールを纏うに相応しい人間?

 

「何をペチャクチャと…!」

「貴女は黙ってなさいッ!」

「ッ!?」

 

LiNKERを盗み出し、ガングニールとの適合率を偽っていた事を立花響は知っていたのなら尚更何故私がガングニールの装者候補生に選ばれたのか、それを尋ねても立花響はただ纏うに相応しい人間だからと告げた。

 

天羽奏、マリア・カデンツァヴナ・イヴ、そして立花響と継承されてきたガングニールは纏う人間に応じてその姿を変え、時には神さえも殺してしまう程の力を纏う者に与えてきた。

 

そのガングニールが私に相応しい、その言葉が私には信じることが出来なかった。

 

「貴女は何の為に戦うの?」

「私は……」

「S.O.N.Gへの加入テストは体力や知力だけではなく、拷問や尋問に対する苦しい忍耐テストだってあった。それに貴女は耐えた、それどころかその場での機転の効いた問答は高評価だったわ。それだけ賢い貴女ならもっと楽な道だって選べた筈、なのにどうして苦しい思いをしてでもS.O.N.Gに入ってシンフォギアを纏いたいと思ったの?」

「………」

「貴女が他の装者候補生に後ろめたい気持ちがあるのは知ってる。一人だけ先天的な適性が無くてどのシンフォギアも纏えないと分かった時はショックだったでしょう。でも貴女はそこで泣き言を言わず、誰よりも遅くまでトレーニングや勉強を続け、バレたらタダじゃ済まないと分かっていてもLiNKERを盗んでまでシンフォギアを纏おうとした。どうしてなの?」

 

私は、立花響という装者が好きだった。

 

テレビで映る彼女はいつだって前を向き、命と向き合って人々を助けていて、幼い私には彼女がヒーローに見えた。

 

私もヒーローになりたかった、誰かの笑顔を守れるのなら多少の辛いことも耐えられると思った。実際には多少どころの騒ぎではなかったけど、それでも私は私の夢を叶える為に毎日努力を続けてきた。

 

「誰かを助けたかったんじゃないの?」

 

全ては私の前に立つ立花響のように誰かを助けてあげられる優しい人になる為に、『正義を纏う資格がある』人になる為に。

 

この人は私の夢を知っていたから、ずっと私をすぐ側から見ててくれていたんだ。

 

「ここまでよく頑張ったわね。貴女は天羽奏でも、マリア・カデンツァヴナ・イヴでも、ましてや立花響でもない。貴女は『アリア・カバルティーナ』、唯一無二の無双の一振りの槍よ」

「っ……わたしはァっ…!」

「もう、泣かないの。ティナはもうちょっと貴女らしく生きなさい。私になるんじゃなくて、ティナというガングニールで私を超えるの。今は弱くてもそれを支えてあげられる大人は周りに沢山いるんだから、もっと子供らしく周りに甘えなさい」

「はい……はい…ッ!」

「ほら、もう立てるわね」

 

私が小さい頃から憧れた人に私も『ガングニールの装者であり今は弱くてもいい』と言われると、これまでその輝かしい功績ばかりを追い掛けてきた私は心の底から救われたような気がして涙が止まらなかった。

 

適合率の低い私でもガングニールを扱えるようになるまで一番近くからずっと見守ってくれていた立花響から手を差し伸べられ、私だってガングニールの端くれなのだと自分に言い聞かせると俄然力が湧いてきた。

 

涙を拭ってその手を握って力を振り絞って立ち上がると、シャルロット・ディルバルスはまだ私が立ち上がるのを見て目を見開いていたが私はもう泣き言は言わない。

 

「LiNKERを使う事を恥ずかしがる必要なんてない。貴女は貴女の胸の歌を信じればいいの」

「はいッ!」

「悪いわね、遮っちゃって」

「チッ、まぁいいわ。ならそこで見習いが嬲り殺されるのを見てなさい」

「ティナちゃん、見せてあげて。ティナちゃんが纏うガングニールの本当の姿を」

 

立花……いや、『響さん』は私の前から退いて私は再びシャルロット・ディルバルスと向かい合うと、遂に響さんが出てくると恐れていたようだが、私がもう一度相手をすると知るや否や嘲笑うような笑みを浮かべた。

 

けど、私にだってあの日から禁じてきたたった一つの才能があるんだ!LiNKERを使ってでもガングニールを手にした私の才能を、今度は目の前に立つ敵を倒す為に!

 

「死に損ないはさっさと挽肉になりなさい!」

「《belcanty wagner Gungnir zizzl(奏で響いた孤独な歌は夢に散る)》」

 

シャルロット・ディルバルス、『悪者』は再び脱線している車両に手を翳すと今度は容赦なくそれを私目掛けて吹き飛ばしてきたけれど、私は焦る事なく聖詠を唱えながらLiNKERを首筋に打ち込んだ。

 

そして車両が私を押し潰そうとした瞬間、脚部にシンフォギアの装甲が形成された私はそれを全力で蹴り上げ、遥か上空まで蹴り飛ばすと悪者は唖然としていたがこれが私のガングニールの真の姿。

 

響さんに憧れて真似ただけのガングニールではなく、腰だけではなく脚部にもスラスターを装着し、両腕に装着されていたガントレットも脚部の装備へと変わった私だけの『灰色のガングニール』。

 

聞こえる、私の歌が!

 

「《覚悟を纏い 正義を吠えろ》!」

「ぐっ!?」

 

腰と脚部のスラスターによる瞬時加速で一瞬で距離を詰め、慣れない拳による攻撃は全て捨てた代わりにスラスターによる補助を受けた高速の回し蹴りを連続で繰り出すと、悪者はそれを腕で受け止めたがさっきまではビクともしなかったその装甲は僅かながらに歪んでいた。

 

私の変貌ぶりに悪者は驚いているようだが、私自身もこんなに心が晴れやかに歌を歌うのは始めてだ。何の後ろめたさもなく歌える日が来るなんて思いもよらなかった。

 

全ては私を信じてくれた響さんのお陰、なら私はッ!

 

「《この身 滅びようとも》!」

「調子に乗るなひよこ風情がァっ!」

「ッ!?」

 

スラスターによる加速された蹴りに押され始めた悪者は両手を広げると線路に敷かれたレールが突如として動き出し、私に向かって鞭のように攻撃を繰り出してきた。

 

何とか回避しようとしたがその先でまた別のレールに捕まると、私はギリギリのところで左腕を外に逃がすのみで捕らえられてしまい、悪者はその掌に開いた穴を私に向けるとその中では高質量のエネルギーが充填され始めた。

 

「くたばれ三流装者ッ!」

「なら『一流』になってやるわよッ!」

 

私程度が『たった一本』のLiNKERで立花響と同レベルの適合率まで引き上げるなんて出来る訳がなかった。ならどうするのか、諦めるなんて出来るわけがない以上答えは簡単だった。

 

私は脚部の装甲から新たな『LiNKER』を射出して空いている左手で掴み取り、もう一本追加で打ち込むとフォニックゲインが急激に跳ね上がり、灰色だった足の装甲に緑色の電撃が走り始め更に力が漲ってきた。

 

纏わり付いていたレールも引き千切り、放たれたエネルギー弾を右拳で殴り飛ばして強引にかき消すと、悪者は傷一つないガングニールに驚愕しているようだが、私のガングニールはこんな攻撃に怯んだりしない。

 

「馬鹿なッ!?LiNKERの多重投与は装者が耐えられる訳が!?」

「それがティナちゃんが見出した才能、副作用すら抑える極めて高い『LiNKERとの適合』だッ!」

「《輝く未来(あす)を守る為なら 絶唱(うた)を歌おう》!」

「クッ、ならもう貴女に用はないわッ!」

 

私が更にフォニックゲインを高めた事で戦況が不利になったと悪者は感じ取ったのか、その顔を包み込むような装甲を展開すると翼をはためかせて空高く舞い飛んだがそれを逃すわけにはいかない。

 

私も空高くまで跳んで追い掛けると、悪者はそれを待っていたと言わんばかりに振り返って再び私に掌を翳した。

 

「《過去を振り切り 今を駆け抜け》!」

「来ると思ったわよお馬鹿さんッ!」

 

けど、悪者は私がラスト一本のLiNKERを打ち込んでいるのを見ると勝利を確信したその狡猾な笑みが引き攣った。

 

「私は馬鹿じゃなくて、『クソ真面目』よッ!」

 

LiNKERが全身に満たされていくと全身の装甲から電流が流れ出して限界まで適合率を引き上げられ、爆増した全てのフォニックゲインを開脚した脚のスラスターに送り込むと私の身体は高速で回転を始めた。

 

その回転により電撃を帯びた竜風を巻き起こし女の逃走ルートを全て封鎖すると、悪者は私を倒すしか道はないと正面から立ち向かってきた。

 

その心意気は買うけれど、

 

 

「《信じた正義よ》!」

 

私はクソ真面目だから一切容赦なんてしないッ!

 

 

「《響け》ェェェェッ!」

 

まさに稲妻が落ちたような轟音だった。

 

全身全霊の回転蹴りが悪者の肩に叩き付けられると強固な機械外骨格は大きく歪み、空間を裂く稲妻のように轟音を立てながら悪者を地上へ叩き落とし、遥か上空に居ても地上からは悪者が地面に叩きつけられた音が響いてきた。

 

そして今度こそ立ち上がってくる気配は無く、リアクターの反応も完全に沈黙した。

 

こ、今度こそ勝った……後はスラスターで滑空すれば何とェッ!?

 

「おわぁっ!?え、ちょっと、エネルギー切れ!?嘘でしょここ高度何百メェェェエ…!?」

 

 

 

 

 

「お疲れ様、三人共。無事テスラ財団の幹部を二人捕まえることができたわ」

「お安い御用デース」

「余裕」

「私はボロボロなんですけど……」

 

結局エネルギー切れで空から落ちた私も地面に叩きつけられノビてしまい、つい先程目覚めるといつの間にか目的地である日本の横須賀に到着していた。

 

久し振りの日本だというのに全身筋肉痛で動く気にはならなかったけど、報告だけはキチンと受けておかないと気が済まないから響さんの元に向かうと、倒された筈のZABABAの二人は何故かピンピンした様子で先に報告に来ていたのだ。

 

何事かと思ってその事を尋ねると、『アタシ達が弱いとか言うからコテンパンにした』と言い、シャルロット・ディルバルスが交信していたのは既に相方を倒して声真似をしていた切歌さんだったらしい。

 

「まぁまぁ、ペーペーは泥臭いくらいが丁度いいデスよ」

「滅茶苦茶痛い思いもしましたけど……」

「何事も勉強」

「あんなの二度とゴメンです……」

「話をするのもいいけど、まずは報告からよ。三人共ケースは無事ね?」

 

すっかり本部長モードに戻った響さんはまずは私達が運んでいたケースの安否を確認すると、私は少し汚れてしまったケースを差し出した。

 

けど二人は何故だかケースの取っ手しかなく、それを見た響さんは何とも言えない表情で二人の顔を見つめると二人もバツが悪そうに目を逸らしていた。

 

「い、いやぁ?手に持って戦ってたらいつの間にか調のシュルシャガナでぶった切られててデスね?」

「わ、私は切ちゃんのイガリマに!」

「もういいわ。全く、後輩がこんなに綺麗に運んで来たっていうのに恥ずかしくないの?」

「うぅ……」

「ごめんなさい……」

「悪いわね、私の後輩がいい加減で」

「いや、それは良いんですけどエクスカリバーはどうするんですか!?まさか海の底ですか!?」

「ああ。エクスカリバーなら此処にあるから大丈夫よ」

 

本物を運んでいたであろう二人が揃ってスーツを紛失していたからまずはそれを探すのが先決だと進言したが、響さんは何の気も無しに私のケースを開けると中から鞘に収まったエクスカリバーを取り出した。

 

………え?

 

「此処までの輸送ご苦労、後はS.O.N.Gが引き継ぐから私達は」

「ええええええッ!?私のケースに入れてたんですかッ!?」

「勿論、二人がケースを壊す可能性を考慮したらそうなったわ」

「し、信用されてないデース……」

「でもナイス采配……」

 

一番奪われる可能性の高かった私のケースにエクスカリバーを入れているなんて思っていなかったから声を大にして驚いてしまったけど、結果的にはそれが功を奏したのだ。

 

作戦の事といい、ガングニールの事といい、どうして私の事をそんなに信頼してるんだ?言っては何だけど、私と響さんでは性格は合っていないと思ってたのだけど。

 

「あの、本部長」

「お疲れ様、ティナちゃん」

「………響さん」

「何?」

「どうして私をそんなに信頼してくれるんですか?」

「……そうだねぇ」

 

私なんて素人同然の装者候補生なのに、どうして此処まで信頼してくれるのか、私はそれだけは確かめておきたかったから一個人として尋ねた。

 

すると響さんは腕を組んで『うーん』と悩む素振りを見せたが輝かんばかりの笑顔を咲かせると、

 

「私に似てるからかな」

 

そう教えてくれた。

 

「………もう、何ですかその理由」

「響さんだってテキトーじゃないデスか」

「何をー!私もちゃんとした理由で選んでるんだよ!二人はさっさと始末書を書いてくる!」

「始末書!?幹部を捕まえたのに!?」

「米国の戦闘機を何機壊したと思ってるの!始末書で済むだけ感謝してよ!」

 

全く、響さんは相変わらず変な人だ。けど、

 

「調、あの二人に残りの幹部の所在を吐かせて全員捕まえて全部丸っと帳消しデス!」

「任せて切ちゃん!」

「あっコラ待て!追うよティナちゃん!」

「はいッ!」

 

この人になら、もうちょっと甘えてみようかな。


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