ロシア西部、チェルノブイリ。
シズシズのお陰でテスラ財団のアジトが判明し、S.O.N.Gから派遣された切ちゃんとりっちゃんとシズシズ、国連からはマジメちゃんが合流して捕縛及び殲滅の為に現地へ向かうと、三人はエネルギー反応があった周辺の広大な敷地を別れて探索していた。
歴代最高の装者適性を持ってるりっちゃん、LiNKERを使えば百人力のマジメちゃん、試作型哲学兵装『魔弾の射手』が扱えるシズシズ、そしてイガリマと『ダウルダブラ』のファウストローブを纏う切ちゃん。
この四人なら敵が襲って来てもすぐに負ける事はないだろうと踏んでの広範囲の捜索は功を奏し、マジメちゃんが身に付けていたモーションカメラには捕縛対象が映し出された。
『……此方アリア。ヤオと思わしき人物を発見」
「……此方でも確認した」
「酷い……」
「見せしめかよ…!」
当時の街がそのまま残る広場を探索していたマジメちゃんは一本の街灯の前に立ってそれを見上げると、其処にはロシア語で『役立たず』と書かれたプラカードを下げたヤオの死体が吊るされていた。
仲間だろうと子供だろうと容赦無し、相手もかなり性格が悪いみたいだ。
「また振り出し、か」
『…………』
「どうした本部長?」
『…………』
「立花」
『うぇっ!?あ、あー、何か言ったかしら?』
「悩み事か?」
『いいえ、何でも無いわ。話を続けましょう』
この掛け合いも今日だけで何度目か、明らかに様子がおかしい立花も気にはなるが今回ばかりは国連と連絡を密にせず捕らえられる相手ではないから話を進めるとしよう。
「結局ヤオはネットに投稿していた動画でひけらかしていたその技術力を買われ、『タイタン』研究に利用されていた訳だな」
『だけどヤオに出来たのは装甲を強固にするだけ。だから用済み、役立たずとして処理された』
完全聖遺物『エクスカリバー』輸送作戦で襲撃してきたシャルロット・ディルバルス、アリソン・シールズの両名がまるで情報を吐かない以上、唯一の手掛かりであるヤオは生かしたまま捕らえたかったがそれも失敗に終わった。
残された情報だけで恐らくヤオは組織について何も知らなかったという事は推測出来るが、それもあくまで推測の域を出ない。何としてでも情報を手に入れたいが、『テスラ財団』はそもそもニコラ・テスラ復活の際に完全に瓦解した筈だった。
なのに今更何故その活動が活発になり、錬金術まで扱うようになっているのだ?ヤオの言っていたボスというのは何者なんだ?
「ニコラ・テスラ………暁が単独で撃破した人類史に残る最高の科学者がまた牙を向くとはな」
『暁と月読の二人が居なければ神殺しでも倒せなかった相手よ。何があってももう二度と復活なんてさせないわ』
「ほら、まだ始めたばかりデスよー」
「こっのぉぉぉ!」
錬金術。
アタシ達は錬金術師と何度も命のやり取りをしてきたから、その絶大な効果は知っている。時には何もない所から氷や炎を出し、時には金を錬成する時の反応熱をぶん投げてきたり、応用次第で無限に利用法が見つかる摩訶不思議な学問。
けどいざそれを学ぼうとした時、私達は全ての常識をひっくり返す事になった。
『目の前にリンゴがあります、これはリンゴですか?』
エルフナインに最初に出された問題でまず響先輩とクリス先輩と翼先輩が脱落した。
『5キロ離れた所に本があります。135ページの二行目を読んでください』
ここでマリアが脱落した。
『錬金術に於ける分解とは何ですか?』
『今あるものを違う物に構築するにはどうすればいいですか?』
『そもそも錬金術とは何ですか?』
最早何のこっちゃさっぱり分からない質問ばかり投げ掛けられたけれど、アタシと調はそこで諦める訳にはいかなかった。
他の人達がみんな新たな力を手にしていく中で、アタシと調だけはザババのユニゾンしかない半人前だった。けど響先輩が未来先輩の為に自分の人生の全てを賭けた行動に出たと聞いて、アタシ達は強くならなきゃいけないと悟った。
アタシ達が弱いまんまじゃ他の皆にも迷惑を掛けてしまう。だからアタシ達はアタシ達で強くなる必要があった。
その為に、アタシ達は『錬金術』に手を出した。
「外れデース」
「切ちゃんばっかりズルい〜!」
「イガリマを貸してあげてるんデスから文句を言わない」
エルフナインの意地悪なナゾナゾの答え。
それは『己の答えを信じろ』だ。
それがリンゴかどうか分からないなら、それを完全に分解して構成物質からリンゴであると結論付ければいい。遥か先にある本の一文が分からないなら、自分が分かる文に書き換えてしまえばいい。
錬金術に必要なのは己の真理を貫く事であり、その真理を世界の理に適った形に書き換えるのが錬金術。
例えばブドウをリンゴに再構築するのは構成物質を理解すれば出来る、あとはそれが間違っていないと己を信じる心があるかどうかが重要になる。自分を否定すれば当然分解した知識が頭の中で暴れ出し、数日間ブドウの構成物質が頭から離れなくなってしまう。
そして、錬金術を理解して分かったキャロルの『想い出の焼却』とは、莫大なエネルギーを秘めた想い出を燃料とした廃人真っしぐらのジェットエンジンみたいな物という事だ。
使えば使う程力を手に入れる事ができるけど自分が追い求めた真理が分からなくなり、全て燃やし切ればただの知識と肉の塊となってしまうのだろう。
「そんな大振りじゃ当たってあげれないデスよ」
「ああもう!海未、ヘルプゥゥ!」
『ほい来た〜!』
「あっ、コラ!狡いですよ!」
「「私達は二人で一人!後で怒られようと二人でなら怖くない!」」
後で調と組手をやる予定だった海未がいきなり乱入してくると、二人は早速ザババのユニゾンでフォニックゲインを急激に高め始め、技の出が速くなると流石に片手で相手するには厳しくなってきた。
アタシと調が纏うイガリマとシュルシャガナの装者候補生、『譜吹 空』と『譜吹 海未』の譜吹姉妹は問題こそ沢山あるけれどLiNKER無しでシンフォギアを纏えるという点と適合率だけで言えばアタシ達よりも優れてる。
二人の素の身体能力の高さは『譜吹姉妹捕獲作戦』に駆り出されたアタシだからこそ痛いほど知ってるし、ザババのユニゾンも初めから使い熟してるから根っからの装者向き。
ていうか、型にハマらない二人は装者に向き過ぎてるんデスよ。
「ならアタシがゲンコツくれてやるデスよ!」
流石にユニゾンまで使われてはアタシが怪我しかねないから保管庫からダウルダブラを呼び出し、その破滅の音色を奏でると起動したダウルダブラの弦は私の身体に纏わり付いてきた。
ダウルダブラの弦がアタシの制服を引き裂いて全身の装甲を形成し、本体が背中に接続されてハーブを模した翼へ姿を変え、最後に四元素の装飾がされた帽子が降ってきたからそれを手で被り直した。
これがアタシが纏う深緑色のファウストローブ、『衝琴・ダウルダブラ』。アタシが信じた真理の装甲。使うつもりはなかったけど、二人がどうしても見たいと言うのならそれに答えなきゃ錬金術師の名が泣くデス。
「ず、ズルいぞ〜!」
「ダウルダブラは使わないって切ちゃん言ってたのに〜!」
「喧しい!今日という今日は年上を敬うって言葉をその身に叩き込んでやるデスからね!」
まずは目の前でニャァニャァ鳴いてる子猫共を吊り下げてやるデスよ!
「イッタタ〜」
「大人気な〜い」
「自業自得デス」
『何だ、暁が二人と組手をするなんて珍しいな』
「あっ、司令。二人がアタシのダウルダブラを見てみたいってテレパシーで伝えてきたからお望み通りにしてただけデスよ」
ダウルダブラの弦で二人を簀巻きにして天井から吊り下げて反省させていると、響先輩との打ち合わせが終わったのか翼先輩が秘書代わりにしている律を連れてトレーニングルームに入ってきた。
その手には二人分の分厚い封筒が持たれていて、そういえばもう月末である事を思い出し、アタシもファウストローブを解除した。
吊り下げられていた二人は急に糸が消えても綺麗に着地し、いつもは逃げ回っているのに今日だけは翼先輩に擦り寄っていき、その周りを囲うようにクルクルと回り出した。
「あ〜ん、現金の良い匂い〜」
「お給料お一つ下さいな〜」
「全く、お前達はもう少し慎ましくしたらどうだ?」
「いいからいいから〜」
「今月は福田さん何人かな〜?」
翼先輩も「先月と変わる訳ないだろ」と呆れながら二人にS.O.N.G隊員としてのお給料を手渡すと、こういう時だけは封筒を両手で受け取った二人は早速封筒を開けて中身を確認していた。
「にーしーろー……」
「ピッタリ〜。来月も頑張ろ〜」
「で、朝から訓練に熱を入れていたようだが宿題はしたのか?」
二人はお給料を受け取ってそそくさと退散しようとしたけれど、その首根っこを翼先輩が掴んで宿題をしたのか問い正すと、二人はそれはそれは爽やかな笑みを浮かべてお互いの顔を見つめ合っていた。
「「やったもんね〜」」
「よし、なら私が答え合わせをしてやる。行くぞ」
「「いやああ……!」」
翼先輩を前にして堂々と嘘を吐いた二人は結局引き摺られながら資料室へと連行され、その様子を律は可笑しそうに笑っていた。
律はクソ真面目のティナと同じく真面目だけど、ティナよりは人との付き合い方を知っている分装者候補生達のお姉さん的立ち位置で、その実力も翼先輩の折り紙付きなのだから実質装者と言っても過言ではない。
それにエクスカリバーの装者にもなる予定だから、気を抜いてたらアタシ達も追い抜かれちゃうから気を付けないと。
「律はちゃんと終わってるデスか?」
「勿論、学校の友人と一緒にやってますよ。シズちゃんも周りの子に合わせたペースでやってるみたいですし、悪い子はあの子達だけですよ」
「全く、あの二人が後継者とはザババも泣いてますよ」
「宿題とは無縁の生活を送っていたのですから、大目に見てあげればいいじゃないですか」
「駄目デス、ただでさえ学校をサボる二人をこれ以上甘やかしたらいざという時に何をしでかすか分かんないデスよ」
S.O.N.Gの入隊テストを合格するんだから頭は良いのにその行動が非常にバカっぽい二人は通学路を歩いてるだけですぐに行方を眩まし、学校から保護者である翼先輩へ確認の電話が鳴る度に万が一の時を考えて捜索隊が派遣される。
そして大抵はゲーセンか銀行で時間を潰してるから連行されては翼先輩に怒られるの繰り返し、学ばないのではなく『学ぶ気がない』二人には翼先輩も手を焼いている。
「何をしでかすか分からないのはアガートラームの装者候補も同じでは?」
「アッチはマリアが付きっ切りで監視してるから大丈夫デスよ。本人も今の所は事を起こそうともしてないデスし」
「私はあまり信用していないので、あの子が出て来ないように尽力するまでです」
「随分と嫌われたもんデスね」
『切歌ちゃん、聞こえる?』
誰にでも優しい律でもアガートラームの装者候補には厳しいから苦笑していると、普段から付けている小型インカムから響先輩の声が聞こえてきた。
だけど普段の仕事モードならアタシの事も苗字で呼ぶし、そもそもオペレーターや翼先輩を介さずに直接話し掛けてくるなんて珍しい。
「聞こえるデスよ?」
『周りに誰か居る?』
「……いやぁ、そんな話此処でするなんて恥ずかしいデスよ!今外に出るから待ってて下さいデス!」
「何方ですか?」
「フッフッフ、こう見えてもアタシはモテるんですよ。ああ何でもないデスよー」
響先輩が本部長モードじゃないのに周りを気にする様な事を言い出すというのはよっぽどの事。だからアタシも律は適当にあしらい、テレポートジェムを叩き割って都心のビルの屋上に転移した。
「場所は変えたデスよ」
『便利だね』
「それで、何かあったデスか?」
『………切歌ちゃんに極秘の任務をお願いしたいの。とても危険だし、何が出てくるかも分からない。けど、切歌ちゃんにしか頼めないの』
「おぉ、如何にも特殊部隊って感じの任務デスね。因みにその危険ってのはどのレベルですか?ニコラ・テスラ位なら」
『フィーネ、もしかしたらそれよりも厄介かもしれない』
あの変態のオッサンくらいならアタシ一人でも対処出来るから自信満々に答えたけど、響先輩の口から出てきたのは金輪際聞くことはないと思っていた名前だった。
フィーネかそれ以上って……
「響先輩、何を掴んだんデスか?」
『まだ私の勘の域を出ないんだけど……』
「ぐぇぇ……」
「疲れたぁぁ……」
鬼司令からのお説教と宿題からようやく解放されて机に突っ伏すと、「明日は朝からミーティングなのを忘れるなよ」と地獄の宣告を告げてから鬼司令は私達の部屋から出て行った。
けど今日は月一回のお楽しみがあるのだからすぐさま部屋の扉に鍵を掛け、チェーンも二重に掛けてから机の上の勉強道具を片付けると向かい合って座った。
「今月は46人だったね、空!」
「これでようやく100分の1、さっさと取り返さないとね!」
私達がS.O.N.G入隊の際に取られた全財産7923万8534ドル、その僅か1%だけどようやく取り返したのだから今日はお祝いだと溜め込んでいる現金を全て机の上に乗せると、机は大きく軋んだけどその音も今は恋しく感じる。
ここまで長かった……折角私達が頑張って稼いでいたお金を全て取られたのだからこの先どうなるのやらと思ったけど、S.O.N.Gの隊員というのも中々悪くない『お仕事』だ。テキトーに訓練して、テキトーに勉強してればそれだけで四大卒の大企業のお偉いさん並みの給料が貰えるんだから。
しかも衣食住は完備、多少の買い物は予算が降りるし、怪我したって医療費だって掛からないんだからスーパーホワイト企業だ、お国様様ね。
「ハァァァ……お札の温もりに包まれるね〜」
「あっ、私もする〜」
海未は早速お札の山に顔を突っ込むと幸せそうな顔をしているから私も真似をすると大量のお札が宙を舞い、視界一杯にお金があるこの感覚は何度体験しても心地良い。
ここまで苦労も全ては大切な家族と一緒だから乗り越えられた、私達は互いに見つめ合いながらそう思い返していると自然と手が伸びていきお互いの頭を撫で合った。
「ありがとう、空」
「此方こそ、ありがとう海未」
アメリカで『ルパンの子猫』という異名で通っていた私達は真っ当な『銀行強盗』として働いていた。聖遺物『ルパンのモノクル』のお陰でどんな金庫や電子ゲートでも解除出来た私達は色んな銀行に入って現金を盗み出した。
宝石とか株券とかは大した興味もなくて、この世で最も利用価値がある『お金』だけを盗み出していた私達は色んな人達に追われたし、色んな人達と手を組んできたけどその殆どは警察に御用となった。
理由は簡単、強盗に入った後は私達だけ聖遺物を使って逃げて、他の人達は囮になってくれたのだから私達が賞金首になっても誰にも捕らえられる事は無かった。
あの二人が私達の前に現れるまでは。
「ねぇ〜、もう面倒だから銀行行こうよ〜」
「でもモノクル取られちゃったし、切ちゃん達が出てきたらまた怒られるよ〜」
初めて会った時に『私達と組んでお仕事をしたい』と言って近付いて来た切ちゃんと調ちゃんは怪しさ満点で、二人からは銀行強盗をする人間には無い正義感みたいな奴を感じたから凄く警戒していたけど、その警戒心はすぐに解けてしまった。
『ど、どうやって逃げたの?』
『ん?内緒デスよ』
『まさか警察のスパイ?』
『それでも私達を置いていった二人に追い付けない』
今はテレポートジェムという滅茶苦茶便利アイテムの存在を知ってるから騙されないけど、当時は錬金術なんて信じてなかった私達はどんな場所に置いて行っても必ずアジトに一足先に帰って来る二人をある種尊敬していた。
私達よりもずっと凄い銀行強盗が居るなんて思っていなかったから私達は二人から色んな事を教わったし、色んなことを話した。どうしてお金だけを盗むのか、盗んだお金をどうするのか、これまでの平々凡々な同業者には語らなかった私達のルーツを沢山語った。
そして、
『さぁて、決算の時間デスよ二人共』
『ッ!?騙してたの!?』
『卑怯者〜!』
『銀行強盗に言われる筋合いはない』
三十時間を超える必死の逃走も虚しく捕まえられた。
それからは国際指名手配犯だった私達の罪を帳消しにする代わりに、逃走中に適性があると分かったイガリマとシュルシャガナの装者候補生としてリディアンの生徒としての生活を余儀なくされたけど、今となってはその生活もそこまで悪くはない。
リディアンでは美人姉妹として名を馳せて派閥を作ってみたり、元々手先は器用だから手芸部なんかにも入ってみたり、これまで学校なんて行った事無かったけど皆が行くだけはあって中々楽しい所だ。
「それに〜、敵の幹部を取っ捕まえたらきっとボーナス出るんじゃない?」
「ボーナス……それって福田さん何枚分!?」
「確か切ちゃんがテスラさん倒した時は口座の桁数が2桁増えたって言ってたかな〜?」
「2桁!?なら私達なら億に乗っちゃうよ!?」
「だから次の任務は私達でやる為にも、今は良い子にしてなくちゃ」
「そうだね、空!」
私達の決意は決して揺るがない。
お金を貯めて貯めて貯めて、お金で買えない物が無くなった時に私達は初めて命題を証明することが出来るんだ。
それまでは海未と私は一連托生、永遠の家族なんだ。
『テスラ財団に打って出るぞ』
超鬼畜司令が朝のミーティングの第一声でそう切り出すと、それまで打つ手なしと言っていたのに突然のその発言にシズシズは怪訝そうな表情を浮かべていた。
『何か手があるんですか?』
『前々から考えてはいたが、失敗した時の損失を考えてその手は使わないようにしていたのだが状況が状況だから背に腹は変えられない。テスラ財団は多くの出資者達から集めた支援金を元に活動していたが、財団が瓦解した現在でも活動しているという事は大口の出資者でも居ない限りそろそろ資金も切れてくる頃だろう』
『まさか、S.O.N.Gがその出資者になるという事ですか?』
『いやいやいや、駄目だろ!?他の国にバレたら厄介じゃ済まないぞ!?』
『だからこそ今回は面の割れていないメンバーでの極秘作戦になる。まずエルフナイン、今回はお前に出資者として最前線に出てもらう事になる』
『き、緊張します……』
『装者に関してだが、アガートラームの装者は緊急の際の援護として待機させているがエルフナインの護衛に付くのは譜吹、お前達だ』
大口出資者ナインちゃんの護衛に私達が任命されて早速ボーナスチャンスが巡って来たと私達はハイタッチを交わしていると、何故か超鬼畜司令は何とも言い難い神妙な面持ちでいる中でシズシズが手を挙げた。
『何だ?』
『その資金は何処から出てくるのですか?国連の口座からとなると最悪お金の動きで勘付かれる可能性があると思います』
『問題はそこで、お前達をこの任務の護衛に任せるのもその為だ』
『どういう意味〜?』
『此方に余裕があると思わせる為に今回は1000万ドルを一括で払う。ただしS.O.N.Gで用意出来たのは100万ドルと少しだ』
『全然足りませんね、ウチが出しましょうか?』
『いや、百合根の家から出すのも危険だろう。その為、私達が保管していた金を使う事にした』
『………まさか』
『譜吹、お前達が強盗で集めた金で残りを賄う事にした』
「司令の鬼〜!」
「悪魔〜!」
「「やっさいもっさい〜!」」
「あははは……」
私達が必死に働いて貯めたお金を誰かに持ち逃げされるかましれない作戦に使うなんて言い出したから断固拒否すると、今度は『なら今回の任務から外れるか』なんて実質一択の選択肢を出してきて、泣く泣くだけど承諾する事で作戦は開始した。
新たに作られたナインちゃんの口座に一千万ドルが入れられ、私達が見守られながらテスラ財団の資金援助用の口座に私達のお金は送金されてしまった。
私達が必死に貯めたお金が顔も知らない犯罪者の手に渡る悔しさを不意にしない為にも暴れ出すのを堪えていると、すぐにテスラ財団から『直接会って話がしたい』という提案がされ、二つ返事でそれを了承するとアメリカにあるレストランに来るように指示が来た。
「同じ額真っ当に貯めたら返してくれるって言ってたのに〜!」
「大人の嘘吐き〜!」
「ま、まぁまぁ、今回の作戦が終われば僕からもお願いしますから」
「絶対だからねナインちゃん!」
「ナインちゃんは信じてるからね!」
「もうすぐ着きますのでお静かに」
緒川っちの運転する車がワシントンの郊外にあるレストランに近付いて来ると、元々アメリカ育ちの私と海未は街の雰囲気や立ち並ぶお店の看板を見て大体事の次第を理解して黙り、車はやっぱり『ロシア料理店』の前に停められると内心溜息が出た。
空の様子を伺ってみてもいつになく深刻な顔をしてるから気付いてるみたいだけど、アタシ達一点絞りの状況を作り出せる相手に無策で敵対するのは流石の私でも無謀だと分かる。
あちゃあ、それじゃあどうしよっかな〜?結構深い所にまでスパイが入り込んじゃってるな〜。
「それでは行きますよ、二人共」
「どうしよっかな〜?」
「どうしようかね〜?」
「はぁ、分かりました。半分は先に返して貰えるよう僕が何とか司令を説得しますから付いて来てください」
今後の身の振り方を考えているとナインちゃんが何とも気前の良いことを言ってくれたから私達は取り敢えず車から降り、ナインちゃんが降りられるようにドアを開けてあげるとナインちゃんも気合を入れていつになく神妙な面持ちを見せていた。
取り敢えずは様子見、その後はガーッといって後は空と流れに任せようかな?
「ありがとう、二人共」
「それでは行くとしますか」
『遥か遠くから見てるけど、面倒だからしくじんなよー』
私が人の居ない寂れたロシア料理店の扉を開けると、耳のインカムからはアガートラームの装者候補の声が聞こえてきた。マリちゃんの護衛兼メイドとして雇われているアガートラームの装者候補が本当に出てくるとは、鬼畜司令もこの作戦に本気で命運を懸けているんだろう。
ナインちゃんは指定のあったテーブルに座り、私達もその隣で護衛として立っていると時折通行人が此方を見ているけど、お店に入って来ようとはしなかった。少し寂れた街角にあるロシア系の料理店、S.O.N.Gも此処がマフィアの隠れ蓑になっている事くらいは知ってるんだろうけど、私達が此処に偶然呼ばれる筈がないから目的は多分お金じゃない。
ホントどうしよっかなぁ………コレ後に引けなくなっちゃうし……流石に今度は牢屋行き待った無しだし………
「空どうする?」
「うーん……あの子が出て来てるならもう引けないしぃ、しょうがないからあっちからお金貰うしかないでしょ〜」
「……そっか」
「どうしたんですか二人共?」
「ううん、何でもないよ〜」
『ああ、貴女が今回我々に出資してくれたエルフナインさんだな?』
空がそうしたいのなら私はその通りにしようと覚悟を決めると、店の扉の鈴が鳴ると共に紺色のスーツを着た女が私達に話し掛けてきた。
銀髪のポニーテールに鋭い目付き、そしてその歩いているだけなのに溢れ出ている他者への威圧感。自分の父親を殺して成り上がった時から何にも変わってないし、変わるつもりもないみたいだね。
「座っても?」
「ええ」
「それでは失礼する」
ナインちゃんも何とかお金持ちキャラを演じ切ろうと負けじと胸を張っていて、『バーバヤーガ』も余裕の表情を浮かべながらナインちゃんと向かい合うように座った。
ラストチャンスは今しかない……今ならまだ引き返せる………でも……私達は…
「可愛い二人だな」
「ええ、私のお気に入りよ」
「へぇ、奇遇ね。『私もそうだったのよ』」
「え?」
『エルフナイン其処から逃げろッ!その二人はスパイだッッ!!』
バーバヤーガは私達を従えていると思っているナインちゃんを嘲笑い、私達が知り合いだと告げるとアガートラームの装者は私達が『裏切る』つもりでいる事に気付いてしまった。
アガートラームの装者との戦闘を避ける為、すぐに私達はナインちゃんとバーバヤーガの腕を掴むと店の扉を蹴破ってアガートラームの装者が入ってきた。
「逃さないからな……!」
「………」
空がテレポートジェムを持っているのを見て間に合わないと分かったアガートラームの装者は憎らしげに私達を睨んできたけど、空が土産を投げ渡してから私達はテレポートジェムでかつてのアジトへ飛び去った。
もう……引き返せない…
「やられた…私の失態だ……!」
「何言ってんだよ!そんな後から耳が腐る位謝ればいいだろ!早く見つけろよ!」
「っ、藤堯どうだ!?」
「テレポートジェムを使われた所為で地球上全域を捜索する事になるので、少なくとも後30分は掛かります!」
「縮められるか!?」
「仰せのままに!」
あの二人を護衛に選んだのは未だ作戦に本格投入をした事が無く、顔が割れていないと判断したから。
だがこの作戦の一番危惧すべき点があった。それが『譜吹姉妹の過去の交友関係』。二人は誰とも組まない強盗犯だという点を過信し過ぎていた所為でエルフナインが誘拐されてしまった。突然の事態で装者候補生達も動揺していたが、雪音が喝を入れてくれたお陰で何とかやるべき事は整理出来た。
二人が本当に裏切ったのかは分からない。私達が譜吹達を作戦に出すという確証がないのにも関わらず直接接点のあった相手が偶然現れるなんて思えない。
だが、何人せよ三人を見つけ出さなければあの二人はまた己の進む道を誤ってしまう。自分達に課した命題を達成する為に再び手を汚してしまう。
あの二人の歪んだ運命を正してやれるのは私達大人だけなんだ。
『風鳴司令』
行方を眩ませた三人を探す為にオペレーター達に指示を出していると立花からライフライン回線から直接連絡が入り、画面に表示されるとその神妙な面持ちから既に状況は知っているのだろう。
「申し訳ない、本部長。私の責任だ」
『此方で認可は降りた。暁、月読両名の指揮権は私が預かる』
「っ、どういう意味だ!?」
『今回の裏切りは擁護出来ない。エルフナイン女史を必ず生きた状態で取り返す為、国連本部だけで作戦を行う事にする』
「それはどうでもいい!だが何故暁達が必要なんだ!」
『……譜吹姉妹は私が始末する。それが彼女達の選んだ道の結末よ』
『譜吹達を始末』。それが本部長となって常に辛い決断を迫られてきて、大人としてあるべき姿を身に付けていった立花が下した決断という訳か。
「ならば断固として拒否するッ!今回の件は我々で始末を着ける!」
『今エルフナイン女史を失う意味が分かっているの?』
「分かっているッ!だが二人はまだ進むべき道を見極められていないだけだッ!まだ引き返せる事も理解出来ず、がむしゃらに生きようとしているだけで始末なぞ言語道断だッ!」
『二人の出生については同情する、だが同情だけで世界は救えない』
「同情なぞではないッ!これは二人がS.O.N.Gの装者候補生達として私と培ってきた信頼だッ!」
確かに二人は学校はサボる、容易に人の物を盗む、平気で他人が傷付く言葉を吐く。
だが二人はS.O.N.G入隊前に私と交わした『二度と強盗はしない』という約束だけは決して破らなかった。それは私達と一緒に居る事が二人にとっても苦ではなく、目先の金よりも私達との日常を選んでくれていた。
ならばここで私が二人を信じてやらねば誰が二人を信じてやれると言うのだ。皆の命を預かっている司令官として二人は必ず私達が連れて帰る。
「今回の件は此方でカタを付けるッ!手出しは無用だッ!」
『………一時間待ちます、それで進展が無ければ私が終わらせに行きます』
如何に立花と言えど今回ばかりは了承する訳にはいかず断固拒否すると、やはり立花本人も心から納得して出した答えではなかったようで、藁にもすがる様な視線を私に合わせてきたから私も頷いて応えてから通信を切った。
すまない立花、お前ばかりに辛い役割を押し付けて………だが私達は必ずお前の期待に応えてみせる。
「いいか!1時間以内にエルフナインの救出、及び譜吹姉妹を確保するぞ!」
「少しお灸を据えに行きましょうか」
「全く、世話の掛かる年上ですね」
「全くデス」
「毎度毎度懲りない」
またあの二人に振り回される事になった装者達も呆れているが、誰も二人を責めようとはせずただ『友人』を助ける為に覚悟を決めて笑みを浮かべてくれていた。
二人で無茶する事ばかり覚えている譜吹達に、無茶をするのはお前達ばかりではないと教えてやらねばな。
「ああそうだ!手の掛かる二人を連れ戻して全員で説教をするぞ!」
「「「了解!」」」
『あっ、大団円の所悪いんだけど、思いの外早く見つかるかもしれないわよ』
「久し振りだな、『クラウディア・カンターレ』『シャフライ・ラスモーニャフ』」
「その名前で呼ばないで」
「あー、そういえば今は譜吹『姉妹』だったか?物好きだなお前達も」
いつの間にテレポートジェムを手に入れていた譜吹さん達が転移した先は、かつて二人がアジトとして使っていた古びたアパートの一室だった。僕は手錠で両手を背後に組まされた状態で椅子に座らされているけど、意外にも危害は加えようとはしてこなかった。
それに譜吹さん達は僕達でも知らない二人の『本名』で呼ばれていて、少なくとも目の前にいるこの女性は僕達よりも二人の出生を知っているという事だ。
「空を悪く言うな……!」
「おー、熱い信頼関係だな。余りの熱さに寒気がするよ」
「何の用なの?貴女の依頼なら受けない、そう言った筈よ」
「言われたな、だから殺そうとしたのに逃げられた」
「私達はお金以外は盗まない。そう決めていると何度も言ったのに『聖遺物を盗んで来い』だなんて言うからでしょ、バーバヤーガ」
普段の言動とは明らかに違い、ハッキリとした喋り方と凛とした態度を見せている空さんは『バーバヤーガ』と呼ばれた女性と言葉を交わしているが、どうやら三人は並々ならぬ関係だったみたいだ。
それに二人の『お金以外は盗まない』という誓いはたとえ命を狙われようとも曲げなかった信念、人生を懸けて辿り着こうとした命題の為なら命すら惜しくないという覚悟の表れ。
それだけ二人の絆が強く、そして歪なモノに変わったのはやはり二人が決して語ろうとはしない『血の繋がっていない』姉妹である事が関係しているのだろう。
「お前達だけが自由に盗みが出来て、私達が出来ないのは不公平だろう?だからお互いの利益を考えて一度盗んで欲しいと言っただけだろ?」
「貴女と私達を一緒にするな。私達は人を平気で殺すような野蛮人とは違う」
「一緒だろ?同じ犯罪者、同じ穴の狢だよ。なら仲良くした方が得だと思わないか?」
「思わないわ。私達は私達、貴女は貴女のお仲間と仲良くしてなさい」
「流石、育ちの良いお金持ちのお嬢様は言う事が違うな」
お金持ち?
「何だ?貴女は知らないのか?この空って奴はな…」
「黙れクソババァ!これ以上空を悪く言ったらぶっ殺してやる!」
「おー怖い怖い。ちゃんと躾はしておいてくれよクラウディア嬢」
「……海未、ちょっと外の空気を吸って来なさい。こっちは私が片付けておくから」
「……うん」
バーバヤーガが空さんの事を『お金持ち』だと言うと海未さんはそれに激昂して殴り掛かろうとしたけど、空さんがその間に割って入ると海未さんは憎らしげに睨み付けながらも部屋の外へと出て行った。
二人共僕達の前では『ただの強盗犯』としての仮面を付けていたという事なのだろうか?けど、どうしてバーバヤーガは2人の事をそんなに知っているんだ?
「何が目的なの?お金?聖遺物?」
「両方だ。お前達に逃げられた後に幸いにもテスラ財団が声を掛けてくれたお陰で金稼ぎも楽にはなったが、余り事を大ごとにするとお前達が出て来るだろう?だからシンフォギアを持っているお前達を雇いたいと思ったのよ」
「断る」
「勘違いしないでよ?勿論やり方はお前達に任せる、人を殺したくないというのならそうすればいい。現金しか盗まないというのならそれでもいい。ただ私達にも分け前を寄越せ、そう言ってるだけよ」
「…………」
「『金で買えない物が無くなった時、金で買えないモノを識る』、素晴らしい命題じゃないか。特にお前が言ってるのがいい、言葉の重みが違うな」
「……この人と二人きりにして」
「ああ、その間にコソ泥ちゃんと仲良くしてくるとしよう」
譜吹姉妹の命題まで口にしたバーバヤーガは空さんの言う通りに部屋から出て行くと、空さんは私と向かい合うように椅子に座ってから申し訳なさそうな表情を見せた。
恐らくは現在テスラ財団の資金源となっているのがバーバヤーガの強盗団。かつては譜吹姉妹もその強盗団に居たけれど、その方針に合わず抜け出したというのが大凡の筋書きなのだろう。だけどやはり腑に落ちないのがどうして二人はそこまで命を預け合える程の関係になったのか。
全く人種も違う相手を『姉妹』と呼んでいるのか。
「裏切ってごめんなさい。謝ってももう遅いのは分かってるけど………これが私達の生き方なの…」
「気にしないでください。僕も初めての経験で緊張してますから」
「ふふっ……変わってますね」
「それよりも教えて下さい。あのバーバヤーガとは何者なんですか?どうしてお二人の事をあんなに知っているのですか?」
「………海未の両親は先代のバーバヤーガの元で働いていた『強盗犯』なんです。二人は先代のバーバヤーガと私の事で揉めて殺されてしまい、代わりに私達が二人の代わりに盗みのノウハウを叩き込まれました。その際に偶然手に入れたのが『ルパンのモノクル』で、強盗団から抜けた私達はそれで逃げ回りながらお金を貯めていきました」
海未さんの御両親が強盗犯、つまり海未さんは生粋の悪の元で生まれ育ったのか。けどそんな中でも海未さんの中には善性が生まれた……いや、それを伝えたのが空さんという訳か。
何となくですけど、話が読めてきました。
「辛い事を聞くかもしれませんが、空さんは幼い頃に『誘拐』されましたか?」
「………はい。私は誘拐され、そして見捨てられた子供です」
『今日からお前の命は俺が預かる。精々邪魔にならないようにな』
小学校からの帰り道、私は誘拐された。
誘拐されている最中はよく分からず怖くて泣いていたけど、私を捕まえた人達の家に連れて来られると何となくだけれど私は誘拐されたのだと実感した。
でも状況を理解するに連れて怖さは薄れていき、いつになれば家に帰れるのだろうとのんびり考える余裕まであった。
だって私の家はお金持ちなんだから私の身代金なんて要求金額を倍にしてでも払える、だから待ってればいずれは帰れるのだという安心感があったのだから。
『貴女、お名前は?』
『……シャフ』
『シャフ、お友達になりましょうか』
『友達?』
『ええ、友達よ』
私を誘拐した二人の一人娘、綺麗な整えられた銀髪に碧眼の『シャフライ・ラスモーニャフ』は扉の陰に隠れながら私の様子を見ていたから声を掛けると、シャフは初めて友達が出来たと嬉しそうにした。
でも、私はシャフを見下していた。
だってシャフの両親は誘拐犯、対して私はハリウッドを唸らせたモデルの母に大企業の会長の父。私とは身分どころか人間としての格すら違うのだと愉悦に浸っていて、小動物を飼うような思いで声を掛けただけなのだから。
だから解放されるまでの暇潰しの遊び相手として使おうと思っていた。
けど、シャフは違った。
『クラウディアは何処に住んでたの?』
『クラウディアって良い匂いがするね』
『クラウディアはどんな所に行ったことがあるの?』
『クラウディアのお父さんとお母さんはどんな人?』
シャフは半歩引いて話してる私との会話を凄く楽しそうにしてくれて、色んな事を聞いてきてはそれに様々な反応を見せてくれた。
驚いてみたり、嬉しそうにしてみたり、時には羨ましげに、時には怒ってみたり。
シャフは私の事を本当の親友として接してくれて、これまで私の取り入れろうとしてきた子供達とは全く違っていた。生まれも育ちも違う私の事をもっと知りたいという気持ちだけで、私から何かを得ようとは一切してこなかった。
それに、シャフの両親もとても優しかった。
『服はやっぱりブランド物がいいのか?』
『アレルギーとかはないの?』
『シャフが迷惑を掛けてないか?』
『シャフの事をお願いね』
それは私が美化した過去なのかもしれないけど、二人からは私を傷付けたくないという思いが感じられて、シャフと仲良くする事には何も口を出してこなかった。
これまで付き合う人間は両親に選ばれてきた私にとってはシャフが初めて自分の意思で選んだ友達、最初は歪んだ感情だったけれど私は少しずつシャフに心を開いていった。
『お前の両親は金はビタ一文払わないとさ』
あの日までは。
私の両親はバーバヤーガに対して身代金を支払う事を拒否し、代わりに警察に丸投げするという事をマスコミの前で宣言した。
その日、私はシャフと一緒にバーバヤーガの元へ連れて来られてくると大事に伸ばしていた私の水色の髪は無造作にナイフで切られ、シャフは拳銃を持たされるとその銃口は私に向けられた。
『シャフ、撃ち方は分かるだろ?悪いのはこの子のお父さんとお母さんだ』
『出来ないよ…クラウディアは友達だもん……!?』
『ボス考え直してくれ!その子にはまだ使い道があるだろ!?』
『そうよ!何なら盗みを覚えさせればいい、見た目だってこれから良くなるって分かってるのにわざわざ殺さなくても!』
『黙ってろ。彼奴らはこの俺をコケにしたんだぞ?ならそのお返しをしてならなきゃな』
幼い私には状況が理解できなかった。
だって私の両親はお金持ちなんだから身代金くらい簡単に払える筈なのに、私の為なら払ってくれると信じてたのに私が殺されそうになる意味が理解できなかった。
私はただただシャフが握っている拳銃が怖くて泣いていると、シャフの両親は何とかバーバヤーガを宥めようとしたけれど、短気な先代は頭に血が上っていて最早止める事は出来なかったんだろう。
『ボス!』
『っせーな!ならお前等から死ね!』
先代はシャフが握っていた拳銃の銃口を無理やりシャフの父親に向けると、シャフの手を掴んで力強く握った。
初めて聞く銃声は私の胸の奥にまで響いてきて、私は泣いているシャフの姿を最後に見て意識を失った。
次に目覚めた時には私はシャフの家のベッドに寝かされていて、何か悪い夢でも見たのかと思ったけどベッドの隣で血塗れになっているシャフを見てアレが全部現実なんだと悟った。
シャフは拳銃を握ったままカタカタと手を震わせ、時折壊れたようにおかしな声を上げて口元だけを笑わせながら涙を流していた。
『えへ、へへ、ワタシ、どうなっちゃうんだろ』
『…………』
『ねぇ、エヘ、クラウディア、あは、ワタシ、どうしたらいいの?』
自分の両親を無理矢理だとしても自分の手で殺してしまったシャフが壊れてしまうのも無理はなかった。シャフの両親は確かに誘拐犯で犯罪者だったけど、最後の一線だけは超えないようにしていた。
自分の娘に触る手を血で汚すような事はしていなかったし、シャフにも人を傷付ける行為はやってはいけないと教え込んでいた。
真っ当な両親に教え込まれた処世術で平気な他者を蹴落とす心の無い私、罪人だけれど他者を慈しむ心がある両親に大切に育てられた優しいシャフ。
人として愛されるべきなのがどちらかなんては言われるまでもない。
私にはシャフにはない知恵があった、シャフには私にはない心があった。なら私達は力を合わせるしかなかった。
『シャフ、大丈夫。これからは私がずっと側にいるから』
『でも、クラウディアは、カエラナキャ』
『………ううん、私の帰る場所はシャフが居る場所だよ。だからシャフも私を頼っていいからね』
『……っぐ、うわああああん!』
「今でも覚えてます、シャフのあの時の涙を。だから二度とシャフを泣かせない為に私は死にものぐるいで生きて、そして私達の人生を狂わせたお金を貯めた」
「………使う為のお金ではなかったんですね」
「並大抵の物は大金を支払えば買える、けど本当に大切なモノはお金じゃ絶対に買えない。私達は大切なモノを識る為にお金を貯めていたんです」
話すつもりはなかった私達の過去、それを聞いたエルフナインさんは同情の視線を向けてきたけど別に同情して欲しくて話した訳じゃない。
私達が巻き込んでしまったのだからそれに見合うだけの話をしなきゃいけないと思った、ただそれだけの事だ。
「これからどうするつもりなんですか?」
「バーバヤーガは信用出来ない。けど私達は引き返せない所まで来てしまった、だから私は海未を守る為にも戦い抜きます」
「……恐らく、S.O.N.Gだけじゃなく響さんが出てきます。そうなったらたとえザババのユニゾンを使っても勝てる相手じゃないですよ」
「その時は、海未を置いて死んだりしませんよ」
私達は手を汚し過ぎた。今更命乞いなんてするつもりはないし、した所で罪が無くなる訳じゃない。私達は一緒に生きて一緒に死ぬと決めたんだ、なら最後の最後まで私達の信念を貫き通すまでだ。
私が身の上話を一通り話し終えるとバーバヤーガと海未が一緒に部屋に入ってきたけど、何処か海未の様子がおかしいのがすぐに分かった。
「話は纏まったか?」
「聖遺物は死んでも盗まない、けどお金なら盗んであげる」
「聖遺物が無いと困るのだが?」
「そこを曲げるつもりは毛頭無い。嫌なら自分で」
「空……盗もう」
「何言ってるの!海未に何を吹き込んだのよッ!」
「何、大した事じゃない。君の人生を壊したのは間違いなく海未の両親だ。断るようなら私も全力でお前達の人生を邪魔してやるとね」
「相変わらず外道ね………海未、よく聞きなさい。私は貴女の両親を恨んでなんか
「もう嫌なのッッ!!!」
私は別に海未の両親を恨んでなんかいないと伝えようとしたけど、海未は私の言葉を遮るように声を荒げ、そんな海未は見た事がないから私も言葉が詰まってしまった。
「もう嫌なの……私バカだから空に迷惑ばかり掛けて…空に辛い思いばかりさせて………悪いのは全部私なんだもん…」
「海未………」
「このおばさんも一回だけでいいって言うし……一回だけやろう…」
「戻れなくなるわよ」
「そんなの分かってるよッ!でも空が嫌な思いをするくらいなら、戻れなくていい…」
「………そう」
海未はバーバヤーガに相当な嘘八百を吹き込まれたのか、私が何を言っても考えを変えようとはせず、もう私に嫌な思いをさせたくないと涙を流しながら必死に伝えてきた。
普段は考え事をしたりしない海未にそこまでされたら私も折れるしかない、海未の側に近寄ってからまずは余計な事を吹き込んだバーバヤーガの顔面をぶん殴り、それから強く震える海未を抱き締めた。
「分かった、一回だけやりましょう。それで私達はまた自由になるの。お金はまた貯め直しになるけど」
「お金なんて無くていい………」
「………そうね、大切なモノはもう見つかってるものね」
命題の答えはもう見つかった。私達が腕に抱いている『家族』こそが私達にとっての大切なモノ、お金なんかじゃ買えない大切な家族なんだ。
「ッゥ……まぁいい。二人の涙ぐましい決意に免じて殴った事は許してあげる。それじゃあコレからが貴女の出番よ。何か手頃に破壊活動が行える完全聖遺物、知らない?」
「そうですねー、ガングニールなんて如何ですか?生きてますよ?テロリストの拠点に対する破壊活動ならお手の物です」
「面白い事を言う奴ね、別にお前に聞かなくてもいいって事を教えてやろうかしら?」
「っ、その人を傷付けるな!」
床に伏していたバーバヤーガは血を拭いながら立ち上がり、今度はエルフナインさんの元に近寄ると拳銃を突き付けながら完全聖遺物の情報を聞き出そうとしたけど、エルフナインさんがそれにふざけて答えると眉間に青筋を浮かべていた。
バーバヤーガも父親譲りの短気な奴だから私が止めに入ろうとすると今度はその銃口が私に向けられ、すぐに海未が割って入ろうとしてきたけどそれを何とか腕で抑えつけた。
「別にお前達の両方が必要な訳じゃない。覚えておきなさい」
「ふざけるな、私達はお前の指図は受けない。その人を傷付けるようなら私が相手をしてやる」
「………そう、なら仕方ない」
バーバヤーガはそう言うと引金に掛けた指を強く握り、
「死ね、クラウディア」
再びあの時の銃声が鳴り響いた。
『ねぇ、クラウディア』
『クラウディアじゃなくて、空って言ってるでしょ〜?』
『ぶぅ、日本語難しいんだもん〜』
『でもお勉強は大事だしね〜。それで、何か用?』
『空ってさ、あのお空の事?』
『そうだよ、あのお空の事。あの空みたいに誰にも買えない、そして自由な人間になるの』
『そっか、なら私は海がいいな〜。空の色を映していつでも一緒になれるし〜、誰にも買えないし!』
『そうね……そうしましょうか。私達はコレから生まれ変わるの。過去を捨てて、私達の命題を解きに行くわよ、譜吹海未!』
『もぉ、口調が堅いよ〜。でも、何処までも付いて行くよ、譜吹空!』
部屋に響いた銃声、拳銃の銃口から漏れる硝煙、そして床に落ちた薬莢の音。
空さんは目を強く瞑っていたけど、痛みが無いからか目を少しずつ開けていくと其処には錬金術による土の元素の壁が築かれていた。
二人は咄嗟に僕の方を見たけれど僕にはそこまでの錬金術を使える実力はない、僕はただキャロルから受け継いだ知識があるだけ。だから知識を理解してくれた装者に託したんだ。
『見つけたデスよ、不良娘達!』
全装者の中で最も戦闘能力が高く頼れる装者の声が頭上から聞こえてくると、ダウルダヴラを纏った声の主は天井をぶち抜いてから二人の前に降り立った。
「流石です、切歌さん」
「暁切歌…!?」
「ウチの娘が世話になったデスね…!」
深緑色のダウルダブラのファウストローブを纏った切歌さんは滅多な事では見せない怒りの表情を露わにして、相手が生身の人間だろうと全力で顔面を殴り飛ばすとバーバヤーガは部屋の壁を突き抜けて遥か彼方まで吹き飛んでいった。
「何で切ちゃんが……!?」
「空が教えてくれたデス」
「あっ!?それ僕のテレポートジェムですか!?」
どうしてこんなに早く居所が突き止められたのかと海未さんは驚いているけれど、切歌さんは笑顔を見せながら取り出したのは僕が隠し持っていたテレポートジェムで、手錠を引き千切って貰ってから確認するとやはり何個か無くなっていた。
一体いつの間に……
「テレポートジェムは一度登録した場所なら正確に飛べる。つまりアタシ達が知ってる場所で空達が隠れそうな場所だけに絞る事が出来たんデスよ」
「………エルフナインさんを連れて帰って下さい」
「何言ってるんデスか。空達も帰るデスよ」
「帰れって言ってるの!」
「空!?」
相変わらずの手癖の悪さだとある意味感心しつつもその機転の良さに救われたのだから良しとしていると、空さんは切歌さんに差し伸べられた手を弾いて胸のペンダントを握り締めた。
けど切歌さんはそれには反応を示さず、ただ笑って二人を見つめた。
「こんな所でトレーニングデスか?やるなら本部で幾らでも」
「私達はもう後には引けないのよッ!これ以上皆を私達の過去に巻き込みたくないのッ!だから、帰ってッ!」
「エルフナイン、退がってるデスよ」
「でも……」
「言っておくけど、今回は手加減なんてしないデスよ」
「海未、いいわね?」
「……うん!私達は何処までだって一緒だよ!」
戦い合う必要なんて無いのに、譜吹さん達は自分達が決めた道に他の人を巻き込まない為に私達を遠ざけようとしている。
でも切歌さんはそんな二人を決して見放そうとはせず、二人が暴れたいと言うならと戦う意志を見せると二人は手を握り合った。
「《seas deed igalima tron》」
「《skarius shui shagna tron》」
二人の聖詠が建物全体に響き渡ると共に、二人は余計な被害を出さない為に窓から飛び出していき、切歌さんもそれを追い掛けていった。
僕には二人を止める事は出来ないけど、僕は僕に出来ることをしないと!
「《ーーー》!」
「ほぉ、二人も普段は本気じゃなかったデスね?二人のフォニックゲインをビシバシ感じるデスよ」
誰も私達の戦いに巻き込まない為に少しずつ街から外れていき、街の郊外にある廃工場に辿り着くと思う存分戦えているけれど、私達の攻撃は一切切歌さんには届かずにいた。
普段から錬金術だけでイガリマを纏った私と渡り合っていたけど、ダウルダブラを纏った切歌さんの錬金術によるシールドは私達の攻撃を物ともせず弾き返し、切歌さんが軽く指を振るうだけで放たれる弦は少し触れるだけでもシンフォギア全体が軋んでいる。
響さんを差し置いて最強と云われる切歌さん、どんなに戯けてみせていてもその実力は紛れもない本物だ。
「《ーーー》、海未!」
「《ーーー》!」
「おっと」
私がなるべく気を引き付けてから海未に背後から強烈な一撃を与えようとしても、切歌さんは背中に目でも付けてるんじゃないかと疑いたくなる勘の良さでシールドを張り、海未のアームドギアがどれだけ唸り声を上げても傷一つ付けられずにいた。
ザババのユニゾンでもビクともしないだなんて、何もかもがケタが違い過ぎる……!?
「二人して心がバラバラになってるデスよ。本当のザババのユニゾンはこんなもんじゃないデスよ」
「っ、うるさいッ!」
「早まらないで!?」
切歌さんの安い挑発に海未が乗ってしまい、アームドギアの回転数を上げて大振りで切り掛かったけど切歌さんはそれを容易く避けると、ダウルダブラの弦で作り上げたドリルが海未のお腹に突き立てられた。
凄まじい火花と共に海未のシンフォギアに亀裂が入っていき、慌てて止めに入ろうとすると切歌さんは海未を私目掛けて投げ飛ばしてきたから受け止めたけれど、切歌さんが生み出した暴風に私達は遥か上空まで吹き飛ばされてそのまま廃材の山に叩き落とされた。
「ハァ……ハァ……!」
「何を迷ってるんデスか?二人の気持ちがバラバラの状態でアタシに勝てると本気で思ってるデスか?それなら心外デスね」
私達の気持ちがバラバラ、そんな事はこれまで無かったのに今日に限って海未の事を考えるとどうしても判断が鈍ってしまう。
私を心のある人間に変えてくれた海未の為に私はずっと一緒に生きてきた。人生をお金に狂わされた私達だからこそお金では買えないモノを追い求めて、それは掛け替えのない家族であると識った。
なのにどうして、私達はこんな事をしてるんだろう?私達は何で切歌さんと戦っているんだ?何で切歌さんと戦っているとこんなに胸が締め付けられるような気持ちがするんだ?どうして海未の為に戦う事がこんなに辛いんだ?
この戦いは本当に海未の為になっているのか?
未だ立ち上がれずにいる海未を守る為にもなんとか私は立ち上がり、アームドギアを構えて切り掛かると一撃目は容易に避けられてしまったけど、私のアームドギアの真骨頂は相手に動きを読ませない三次元攻撃。
アームドギアから伸びた鎖が切歌さんの背後からその身体に巻き付くと、その動きを完全に封じた。
「空は一人でもそこそこやるみたいデスね。でも」
「なっ!?」
けれど完全に動きを封じた筈の切歌さんが火の鎧を身に纏うと、拘束していた鎖はドロドロに溶け落ちてしまった。
「一人前には程遠いデスね」
その余りの熱気に怯んでいると炎を一点に収束された拳が私の胸に叩き付けられ、身体が弾け飛びそうな一撃を受けた私は視界が何度も逆さまになりながら廃工場を突き抜けて河川敷まで吹き飛ばされてしまった。
私のシンフォギアが……一撃で………!?
「空!?」
「ッゥ……大丈夫、意識はあるから…」
「大丈夫じゃないよ……!全然大丈夫じゃない……!」
「おーい、生きてるデスかー?」
イガリマの装甲が砕け散り地面に伏していると駆け寄ってきた海未に抱え起こされ、空を見上げると無機物な翼をはためかせている切歌さんが飛んでいて、その様子からはまるで疲れていないように見える。
アレが本物の正義………自己中心的なやり方しか出来ない私達には到底なれやしない正義の味方という訳か………
「気は済んだデスか?」
「まだ終わってない!ザババはまだ一人残ってる!」
「……ホント、これまで良い大人に巡り会えなかったみたいデスね」
「空、隙を見て逃げて。まだ一個テレポートジェム持ってるでしょ」
「何言ってるの……?」
「私、『クラウディア』に会えて本当に良かった。クラウディアのお陰で私は沢山のことを知って、沢山の事を乗り越えられた。だから、今度は私がクラウディアにお返しをする番だよ」
今にも泣きそうな程涙を溜めたまま笑みを浮かべた海未は私を瓦礫に寄りかからせると、ボロボロなまま切歌さんと向かい合ったけどその手は震えていて、私に気付かれまいと強く握り締めていた。
何をしてるんだ私は……何で海未一人だけに怖い思いをさせているんだ…!
「《Gatrandis babel ziggurat edenal》」
「ッ、何処まで大馬鹿なんデスか……!」
「《seas deed igalima tron》……!」
海未を一人ぼっちになんてさせやしない。私達は命を分け合った姉妹、最後の最後まで一緒に生きて、一緒に散ると決めたんだ。
もう一度立ち上がる為にシンフォギアを纏い直すと、もう心がボロボロになってしまっているから装甲なんて形成出来なかったけど、海未の手を握れて歌さえ浮かんでくればそれで十分だ。
「空……」
「《Emustolronzen fine el baral zizzl》」
私達が最後に歌う命の絶唱、たとえ切歌さんを倒す事は出来なくても私達の歌を忘れないでいてくれればもうそれで良い。私達が確かに姉妹として生きていたという証を誰かが覚えていてくれたらそれでいいんだ。
だから力を貸して、イガリマ。
「「《Gatrandis babel ziggurat edenal》」」
海未の手からは震えが止まり、最後に二人で歌い合えるという喜びが溢れてくるとそれは涙に変わり、私達はお互いの歌を忘れない為に目を閉じて意識を集中させた。
私の隣に立つ人が私が今生の命を懸けて守ると誓った人、たとえ次に何に生まれ変わったとしても必ず海未見つけ出して今後こそ二人で自由に生きてみせるんだ。
さぁ、命に炎を灯して次に行こう………海未。
「「《Emustolronzen fiっ」」
最後の歌詞を歌い上げようとしたその時、突然前から強い衝撃を受けた私達はそのまま後ろにお尻を着くように倒れてしまった。
そして私達を押し倒したソレは私達を強く締め付けてきて、思わず目を開けると聴いてくれていた切歌さんが私達を両腕で強く抱き締めているのだと理解した。
凄く力強くて………温かい……
「何で子供の癖にもっと我儘が言えないんデスか……子供なんだからもっとアタシ達を頼って欲しいデスよ…!」
「………頼れる訳がない。私達は手を汚してしまったのに」
「手なんて石鹸で洗えばいいじゃないデスかッ!どんなに汚れても汚れても、引き返せないなんて事なんて絶対にないんデスよッ!」
「嫌なんだもん………私達の所為で誰かが傷付くなんて…」
「だったら強くなればいいじゃないデスかッ!アタシはアタシが弱い所為で誰かに傷付いて欲しくなかったから強くなった!頑張って頑張って強くなった!なのに、二人が初めから諦めて不幸になろうとしてるのを見捨てられる訳ないじゃないデスか!」
私達の道は誰かに認めて貰える道じゃなかった。人が頑張って稼いだお金を盗むのだから、その先に待つ未来が薄暗い場所だって分かってた。それでも私達はお金じゃ買えない大切なモノを探す為に人生を、命を懸けてその命題に立ち向かった。
私と海未の絆は決してお金じゃ買えないモノだと、お金なんかじゃ決して揺るがないモノだと証明したかった。
私達は本物の『家族』になれたんだと証明したかった。
「もう無理しなくていいんデスよ。自分達の絆が絶対に揺るがないモノだって知りたくて悪い事をして、その所為で誰にも頼れなくなった気持ちはよく分かる。でも、だからって大人を頼っちゃダメなんて誰も言わないデスよ。やんちゃな子供程大人っていうのは気に掛けたくなるんデス」
「…………」
「二人の命題の答えは『信頼』。たとえ血が繋がってなくても、たとえ生まれが違っても、お互いを信頼し合えば本物の家族になれる。一人じゃどうしようもなく弱くても、お互いの手を握れば誰にも負けない気がしてくる。それはアタシと調も信じている世界の真理ですよ」
「………怒らないの?」
「そりゃあ、間違った事をしたんだから怒るデスよ。でも二人を責めたりはしない、もう引き返せないって思うならアタシが二人を引っ張って一緒に前へ進んであげるデス」
私達が頼っていい大人、そんな人が居るなんて思っていなかった。大人は皆私達が悪者だって言うと思ってた、犯罪者の娘なんだから親が親なら子も子だと後ろ指を指されると思ってた。
なのに切歌さんは私達を全く責めようとはしなくて、私達が間違っても一緒に歩いてくれると言ってくれた。私達が頼ってもいい大人だと言ってくれた。
「ほら、二人とも言うことがあるデスよね?」
「「………ごめんなさい」」
「はい、許してあげるデスよ」
こんなにも迷惑を掛けたというのに、私達が謝ると切歌さんは嫌な顔一つ見せずに笑顔で許してくれた。
二人だけで生きる為に私達がずっとずっと飲み込んできた言葉をようやく『大人』に吐き出せた事が嬉しくて、私達が頼ってもいい大人に縋り付きながら嬉しくて、何度も何度も謝りながら泣き喚いた。
「もぉ、モテモテで困っちゃうデスよ」
「えぐっ、別に、切ちゃんの事なんて…!」
「っん、切歌さんなんて二番目です……!」
「はいはい、ツンデレはクリス先輩だけで………って、やっぱり生きてたですか」
謝っても心が軽くなってもやっぱりすぐには素直にはなれず、でも切歌さんはそれを分かってくれた上で受け止めてくれていた。
だけど背後から狙われていると気付くと、また元素の壁を形成してバーバヤーガが放った銃弾を防ぎ切った。その勘の良さにも驚いたけれど、それよりもどうしてファウストローブを纏った切歌さんの拳を顔面に受けて無傷なのか、私にはそっちに思考が奪われてしまった。
「どうして生きてるの……?」
「殴った時に分かったデスけど、微かに人の肌とは違う弾力だったデス。多分、アレは人形デスね」
「人形…?」
『ご明察だな、暁切歌』
土手の上から拳銃を撃っていたバーバヤーガは跳躍してから土手の下に降りてくると、その着地により地面が大きく揺れてその足元は深く沈んでいた。
人造人間……でも私が殴った時は確かに人程の体重しかなかったのに……
「戦闘用に乗り換えでもしたですか?」
「当然だ、流石にお前の相手は戦闘用でなければ難しいからな」
「言ってくれるデスね、そんなオモチャでアタシが倒せると思ってるならヘソでカップ麺が作れるですよ」
「本物のバーバヤーガは何処に行ったの…」
「本物?私が『本物』だ!私は永遠の、そして不滅の命を手に入れた!この私こそが現代に蘇った輪廻転生システム『リインカネーション』だ!」
「っ……空、シンフォギアを貸すデスよ。彼奴は確実に此処で捉える必要が出てきたデス」
バーバヤーガは輪廻転生システムなんて突拍子も無い事を言い出したけれど、それを聞いた切歌さんを目付きを変えてバーバヤーガと向き合うと私に手を差し出してきた。
かつてニコラ・テスラを黄泉に送り返した切歌さんの『とっておき』が見れるのなら、そうは思いはしたけど私と海未はお互いに視線を合わせるだけで頷くと痛みを我慢して立ち上がり、切歌さんの前に立った。
「ちょっと!?」
「私達だって装者なんです。それに、此奴は海未の両親を殺した張本人」
「私達でケリを着けなきゃ気が済まない!」
「もぉ、我儘なんデスから……」
「我儘な子供の方が可愛い、違いますか?」
「ハイハイ、見ててあげるデスからチャチャっとやっつけるデスよ」
私達の過去を清算する為にイガリマは譲らないと伝えると切歌さんには呆れたように手を払われてしまったけど、私達は頼れる大人に見守られながら戦う事に胸が高鳴っていた。
迷いが無くなった今なら分かる、海未がどうしたいのか、私にどうして欲しいのか。
『一緒にバーバヤーガをぶっ飛ばす!』
「いくよ空」
「ええ、海未」
「《
「《
私達は心象である聖詠を唱えて再びシンフォギアを纏うと、さっきまで心がバラバラだったのに心が通じ合っているのを感じるとシンフォギアはそれに応えるように力を与えてくれた
一人だけの歌じゃない。二人の歌を合わせるザババのユニゾンにより普段の数倍の力と勇気が湧いてきて、私の『藍色のイガリマ』と海未の『水色のシュルシャガナ』の装甲が形成されると周囲に私達の歌が鳴り響いた。
私達だけのユニゾンでフォニックゲインも最高潮に達し、一気に距離を詰めて互いのアームドギアで同時にバーバヤーガへ切り掛かった。
「お前達は所詮は私の手の上で踊る運命なんだよ!」
「《自由になりたかった 心のないマリオネットは嫌だった》!」
「《君に会えて良かった 奇跡にも負けない輝きを知った》! 」
私達の攻撃をバーバヤーガはその手で容易く受け止めたけれど、海未のアームドギアである『チェーンソー』が海未の怒りに呼応してエネルギーを噴出すると刃が急速に回転し始め、バーバヤーガの左手は火花を散らしながら削り取られていった。
その硬さは私達がトレーニングで想定していた『タイタンmrkⅢ』に劣らず確かに強固ではあったけど、海未の真っ直ぐな想いがその程度で止まる訳がなく更に回転数を上げるとバーバヤーガもすぐさま海未を蹴り飛ばしていた。
「ちっ、それがザババのユニゾンか!」
「それだけだと思うな!これは私達が歌う、『絆のユニゾン』だ!」
「私達は前に進むと決めた、だからもう迷わない!」
「戯言を、所詮は赤の他人同士にお前達に絆なぞ生まれるものか!」
バーバヤーガは私のアームドギアである『鎖鎌』を力尽くで引き寄せて私に殴り掛かってきたけれど、跳躍しながらそれを回避しつつその身体に鎖を巻き付け、フォニックゲインから変換された強力な電撃を一気に流し込んだ。
《私刑 電撃流し》
機械で出来た身体だというのなら当然電気が一番効く筈、現にバーバヤーガは慌てて鎖を引き千切ったけれど全身から電流を迸らせていて、すぐには反撃出来ずに憎らしげに私を睨むだけだった。
「《君が私に教えてくれた 》!」
「《君が想い出をくれた》」
「小癪な!」
「「《一人じゃないと》!」」
その隙を突いた海未はアームドギアを巨大化させて地面に突き立ててキャタピラのように地面を抉りながらバーバヤーガに向かって突進し、電撃によって動きが鈍っているバーバヤーガはそれを正面から受け止めたものの大きく後退った。
《final dead chainsaw》
けど流石は人造人間なだけあってすぐに踏み止まると、ボロボロに引き裂かれた腕で無理矢理振り払って海未の軌道を変えると海未は私の隣に降り立ち、バーバヤーガは何かを取り出そうとスーツの胸ポケットに手を入れていた。
「どうやらこの身体の武装では役不足みたいだな………っ!?」
「お探し物はコレかしら?」
けど私達だってバカじゃない。
ヤオの時みたいにテレポートジェムを使われる可能性があった、だから最初にわざわざ受け止めやすいように跳躍して回避した時に私が盗んでいたテレポートジェムを取り出すと、バーバヤーガは初めて私達に動揺した表情を見せてくれた。
そのお返しにテレポートジェムを粉々に握り潰すと、バーバヤーガは分かりやすいくらいに顔を赤くして激昂していた。
「貴様ら…!」
「決めるよ、空!」
「ええ、海未!」
「《海と真実を受け止めて》!」
「《空と色んな色に染まって》!」
バーバヤーガはどうやら相当な馬鹿なようで私達が攻撃する前に仕留めればいいと思ったのか、すぐに殴り掛かってきたけれど私達はバーバヤーガとは違ってS.O.N.Gで訓練を受けてきた。
誰かを守る為に、大切な人を守る為に、訓練の時には分からなかった鬼司令からの半ば虐待に近い扱きのお陰でバーバヤーガの動きが止まっているように見える。
私達は殴り掛かってきたバーバヤーガに足払いをかけて転ばせると、地面に鎖を打ち込んでバーバヤーガの身体を地面に縫い合わせる事で動きを完全に封じ、私と海未は互いのアームドギアを最大まで巨大化させて空高く跳んだ。
「「《絆の
『極刑 ZABABAchainsaw penalty』
そしてお互いのアームドギアを振り下ろすと私の鎌はバーバヤーガの頭を刈り取り、海未のチェーンソーが胴体を完全に真っ二つに引き裂いた。
シンフォギアに対抗し得る程のエネルギーの行き場を失った身体を途端に光を放ち始めたけど、その身体は切歌さんが生み出した暴風によって川の方へ吹き飛ばされ、川の底へと沈んでいった。
そして川の中で火が灯ったかと思った次の瞬間、爆音と共に夕暮れの空を突かんばかりの水柱が立ち登り、空に舞った水飛沫が太陽の光を浴びると小さな虹を描いていた。
「ふぃ〜……やったね空」
「そうね、海未」
「全く、詰めが甘いデスよ」
これで私達を縛る因縁は全て断ち切った、後は私達が自分の意思で歩く道を決めていくんだ。
戦いを、そして過去の清算を終えた私達はシンフォギアを解除すると疲れがドッと溢れてきてその場に座り込んでしまったけれど、気分はこれまでにないくらいスッキリしていた。
「いいんだもん〜、私達の後片付けは切ちゃんがしてくれるんだし〜」
「誰が後片付けするなんて言ったデスか!?」
「さぁ〜、誰だったかな〜」
「ふふっ、任務も終わった事だしエルフナインさんを連れて帰りましょう」
「二人とも後でもう一回お説教デスからね!」
『よくもやってくれたな小娘共ッ!』
輪廻転生システムというものが何かは分からないけど、必要な情報は詰まってそうなバーバヤーガの首を携えて本部に帰投しようとしたその時、廃工場の方から死んだ筈のバーバヤーガの声が聞こえてきた。
確実に仕留めた、手応えだってしっかりあったのにどうなっているんだと驚いていると、川の土手を必死に乗り越えてきたエルフナインさんが転がるように河川敷に降りてきた。
そして、土手の向こうにあった廃工場が謎の爆発によって吹き飛ぶとその爆風に煽られて私達も倒れてしまい、切歌さんだけは冷静な様子でエルフナインさんを助け起こしていたけれど、私達は自分の目に映る物が信じられず何度も目を擦った。
「どうしたデ………デカイデスねー」
「な、何アレ!?」
「何なの……あれもタイタンなの…!?」
「アレがバーバーヤーガが隠していた切札、『タイタンmrk7』です!」
廃工場から昇り立つ黒煙の向こうから現れたのは山かと錯覚する程の巨大なタイタンだった。
全長10mは優にありそうな金属の鎧が私達の方へ一歩足を踏み出すと、それだけで地震が起きたかのような地響きが鳴り渡り、私達は余りの大きさに驚いていると切歌さんは何も言わずに手を差し出してきた。
「自分でやるデスか?それともアタシに任せるデスか?」
「お、お任せします!」
「素直でよろしい。それじゃあ二人に見せてあげるデスよ、アタシの『とっておき』を!」
「えっ!?ココでやるつもりなんですか!?」
「ここでやらなきゃ名が廃るデスよ!」
「避難しますよ!」
暁さんは手渡したイガリマを強く握り締めると、
「イガリマ、『ダブルコントラクト』!」
暁さんはその身体ごと緑色の炎で燃え上がった。
『アパート三件、工場五件、市道3㎞破損、窓ガラス総計9542枚、よく死人が出なかったわね』
「あはは………ゴーストタウンになってたからデスかねぇ…」
『本気で言ってるのかしら?』
「すみません……」
切歌さんが見せたとっておきはタイタンmrk7を消し飛ばし、バーバヤーガの魂をリインカネーションでも復活出来ないように完全に消し去ったけど、その反動による被害も尋常ではなかった。
バーバヤーガのデータが入った首を持ち帰ったというのに私達は正座させられ、画面越しに響さんに怒られていると今度ばかりは鬼司令も助け舟を出してはくれなかった。アレだけ迷惑を掛けたんだ、切歌さんが良くても司令や響さんからの説教を今回ばかりは甘んじて受けるしかない。
そもそもエルフナインさんを誘拐したのは事実なんだ、暫くの牢屋生活もやむなしだろう。
『しかし、譜吹姉妹の機転の効いた作戦には助かったわ』
「え?」
『裏切りと受け止められてもおかしくない行動をしながらも見事敵の幹部の情報を持ち帰った。その功績は賞賛に値するわ』
「そんな、私達は……!」
「そら、甘えておけ。本部長はああ言うしかないんだ」
『どういう意味かしら?』
「そのままの意味だ」
私達は自分のやった事への償いはするつもりだったけど、響さんも翼さんも私達に責任が被らないように都合の良い解釈で話を進めてくれていて、本当の事を知っているオペレーターの人達も何も言わずに今回の捜索の痕跡を消してくれていた。
……そうか、私達はずっと大人達に背中を押して貰っていたんだ。なのに私達はずっと二人だけで生きてるって勘違いをしていただなんて。
『二人のお陰でテスラ財団の尻尾は掴めそうよ。だから二人には賞与を支給しようと思っているのだけど、幾ら位がいいかしら?好きな額を言ってみなさい』
『本部長……あの二人に任せたら凄い金額取られますよ…!』
『その凄い金額を回収出来たのよ。どうせ素の持ち主に返さない金なんだから欲しい人が居るならあげるだけよ』
テスラ財団の資金源となっていたバーバヤーガの強盗団が潰れたお陰で私達が出資したお金も数十倍になって返ってきて、その一部を貰っても言いと言われると私達は視線を合わせた。
そして、海未も同じ答えだとすぐに理解したから手を握り合った。
「「全部ください!」」
「ええ!?そこは要らないって言う所デスよ!?」
「だって〜、何処かの誰かさんが私達のお金を勝手に使うし〜」
「貰えるお金ならぜ〜んぶ貰いたいもんね〜」
「「ね〜」」
私達は確かにお金で買えないモノを見つけた。けど世界にはきっとまだお金で買えないモノがある、私達はそれを守る為に戦うんだからお金を貯めるという目的は捨てる訳にはいかない。
けど、勿論強盗なんてもうするつもりはない。そんな事をしなくたって悪い奴を取っ捕まえて、そのお金が世間様に流せないお金ならそのお金を全部貰ってしまえばいい。
『………ふっ、仕方ないわね。今回の多大な功績に免じて言う通りにするわ。けどやるからには次にも期待するわよ、いいわね?』
「「はい!」」
「えぇ……ズルいデスよ〜」
『二人のことは任せたわよ、暁』
「……しょうがないデスね、了解です本部長」
私達はもう二人ぼっちじゃない、こんなに頼れる大人達に甘えていいんだ。なら私達はそれにとことん甘えて、そして認められるようになろう。
「せめてアタシに勝てるようになるまでビシバシ鍛えるデスから、覚悟するデスよ!」
「「は〜い!」」
そしていつの日か、S.O.N.Gの皆が私達のかけがえのない『仲間』だと証明しよう。
それが私達の新たな命題だ。
「結局、あの二人は違ったね」
「だから言ったじゃないデスか、あの二人はそんな事をする子じゃないって」
「切歌ちゃんの意見は主観的過ぎるの」
クリスちゃんが私に極秘で送ってきた『S.O.N.G内部にスパイがいる』というメッセージ。
今回はエルフナインちゃんの詳しい事情までは知られてはいなかったみたいだけど、ザババのユニゾンを知られていたり此方の作戦要員を知った上での接触。
明らかに何処からか情報が漏れている。けどそれすらもテスラ財団を操る為に練り上げられた糸のように思えてならない。
全てが上手くいき過ぎてる、そんな気がする。
「おぉ、響先輩が難しい言葉を……」
「怒るよ」
「ご、ごめんなさいデス」
『全く、切歌も少しは大人らしくしたらどうなの?』
「マリアに言われるとは、手厳しいですね」
『てかさぁ、何でその話アタシの前でする訳?嫌味かなんか?』
現役装者を引退し、理解のある俳優と結婚したマリアさんの豪邸では四人のメイドが働いている。そして、そのメイドでありアガートラームの装者候補である少女はソファに座って足を組むばかりか、テーブルに足を乗せて踏ん反り返りながら私を睨み付けてきた。
『言っても信じないだろうが、私達は地味に忙しい』
『そうね、ある程度は情報を持ってるとはいえ、海外に行ける程時間はないわ』
『そうダゾ!アタシ達も行っていいなら行きたいゾ!』
アガートラームの装者の後ろに控える少女達も自分達の無実を主張していて、私としてもマリアさんの監視下の中で犯罪組織に加担できるとは私も思ってはいない。
けど、唯一アガートラームの装者だけは行動範囲が広いから今回はその確認と新たな命令を与える為にやって来た。
「この話をしてる時点で相応の信用はしてるよ。でも、此方も少し人がいるから来て欲しいの」
『へぇ?アタシの力が必要なんだ、どうしようかな〜?』
「行きなさい、家の事は三人で充分よ」
『チッ、あいあい行けばいいんでしょ、ンドクサイ』
「それじゃあ新しい任務を与えるよ。アガートラームの装者候補、『ガリィ・トゥーマーン』は本日付けで正式に国連災害対策本部重要機密保護部隊部隊長として任命する。ティナちゃんの上司だから仲良くね」
かつては私達と戦い、そして消えて無くなった筈のガリィちゃんは心を宿して新たに復活した。けど、いきなり役職持ちだと聞いて浮かべた性根の腐った笑顔はそう変わりはしないようだ。
「はぁーい、ガリィちゃん頑張りまぁす」