バンドリ 無口なギタリスト Re:Try 作:NoMuSoN34
「雫!俺はハードロックがやりたいんだ!!」
「蒼二君!私はポップロックがやりたいよ!」
こんにちは、2人のケンカを見ながらミルクティーを飲んでいる野村です。
状況を軽く説明する。
今日は新しいシングルを出すための会議をしているのだが。2人が恒例の理想押し付け大会に発展したのだ。
タイトル曲は決まっていてレコーディングまで終わっているのだが。
問題はカップリング曲をどうするかで揉めている。
「2人とも、気持ちは分かるが、今は大事な時期、慎重に曲を決めたい。」
悠博の言葉は最もである。俺達はデビューしたばかりでファンや知名度もまちまち、今こそ慎重に行動しなければ将来に悪影響を及ぼす。
「それなら尚更ポップロックの方がいいじゃん!!」
「なにおー!今はハードロックの方が受けが良いんだよ!」
ぐぬぬぬ!
「2人ともいい加減にしろ!!」
悠博の罵声で2人は黙る。
「いずれ2人のやりたい事が必ず出来るようになる。だから、大規に任せよう。なっ?」
悠博はそう言って俺を見つめる。
結局は俺のセンスに全てかかっているか、プレッシャーを掛けてくるなんてテクニシャンだな悠博。
「今こそリーダーに任せるんだよ」
俺はリーダーになった覚えはないが?
「「「いやいや!」」」
「大くん以外にいる?」
いやいや、喋らないリーダーとか聞いたことねぇから
「いいじゃん!ひまりがリーダーやるくらいだぜ?」
あいつはちゃんとまとめようと努力してるから良いんだよ。
仮にも俺が3人をまとめようとしたことなどない。
「まぁ、それは後にしよう。カップリング曲のジャンルは何にするんだ?」
3人は緊張気味で俺のことを見る。
本気なのが伝わってくる。まぁ時代の流れを考えて俺は伝える。
ミクスチャーロック。
「まじか!?」
「あの〜マニピュレーターいないよ?」
俺が何もなしにするとは思ってはいまいな?
「宛があるんだな?」
俺は頷く。
実は最近、海外で出会ったある人が日本に来ているらしい。
俺はアポをとって、この後会いに行く予定になっている。
「じゃあ先に俺らは新曲を練習に入るか」
「そうだな」
こうして、一旦会議は終了して各々スタジオに入って練習を始めた。
さて、俺も向かうかね。
俺はギターを1本背負って来たのは。
高級ビルの最上階。
事情は理解しているからあまり驚いていないが、傍から見たらすげぇの一言だろうな。
部屋入るのに顔認証とか、時代の進歩は早く感じるのは決して俺だけではないだろう。
とまぁそれは置いといて、俺はインターホンを鳴らしその人を待っているのだが……
突如ドアが独りでに開いた。
「welcome!中に入って来て。」
突如声が響く。
その言葉に従い、道を真っ直ぐに進むと、そこには小さな女の子が立っていた。
「Hello、NoMuSoN!」
彼女が、今回マニピュレーターをお願いした……玉手ちゆ
またの名を、CHU×2
俺は適当に挨拶を済ませるとスタジオに通された。
勝手な予想だが、口じゃなくて実力で示せという事だろう。
「音源を頂ける?貴方の音楽を早く聴きたいわ」
ごめん、こいつ俺のファンだったの忘れてたよ。
「OK.貴方のこのExcellentな曲、私がマニピュレートします!」
ちゆはオレの曲を気に入ったようだ。
今回はお仕事として頼むので、然るべき報酬も用意してある。
彼女から見ても悪い報酬では無いはずだ。
「それにしても、貴方の音楽はますます進化しているわね。時代の最先端を射抜いているのがわかっている。」
お褒めいただき光栄です。
確かに俺は時代に流れを見ている。俗に言う流行だな。
自分の中では決して折れないプライドはあるが。流れに逆らってばかりでは上手く生きれないものだ。
勿論流されっぱなしでは終わるつもりは無い。たまには自分の思い描くものを演奏するさ、アイツらがそうするようにな。
「では改めて、会えて嬉しいわ大規!」
ちゆは、笑顔を俺に向ける。
彼女はチュチュと呼ばないと怒るのだが、俺だけは違うらしい。
現にあだ名しか呼ばないはずが、俺の事は名前で呼んでいる。
「また、会えたわね。」
そっとお腹の当たりに腕を回してきた。
相変わらず、自分の思い描く音楽を作りきれていないようだな。
「No、出来てはいるけれど、見合った演奏者がいないのよ。」
確かに、それが1番辛いところだよな。
実際俺もソロでやって来て、合間にサポートを頼まれることも多々あり、スカウトもあったのだが、俺は全部断っていた。
理由は、演奏していて閃くバンドではなかったからだ。
なんというか、かっちり当てはまらない感じがしたから。
だからこそ、綺麗に意志が揃うメンバーを探すのは一苦労だ。
「私は諦めない。貴方が見つけたように、私も探し続けるわ!」
ちゆも、見ぬ間に逞しくなったようだ。
絶対見つかる。何故なら、ちゆは音楽が大好きだから。
俺は打ち合わせを終わらせて、次にやってきたのはとあるスタジオ、ある人に会うためにここに来たのだが、すぐに見つかった。
「あっ……先輩」
綺麗な髪の毛に袖のない革ジャンを着ている彼女。和奏レイ
彼女に会いに来た。
俺は軽く挨拶をする。
「先輩、今日はどうしたんですか?」
俺は事情を説明する。俺がバンドでプロになった事と、ちゆの事、説明すると祝福の言葉が帰ってきた。
「おめでとうございます!ついに先輩もプロになったんだ!」
レイは嬉しそうだった。
昔はますきと3人でバンドを組んでライブハウスを沸かしていたものだが、まさか3人揃ってプロになるとは当時の俺は思いもしなかった。
「それと、そのプロデューサーの件ですが、1度会ってみます。」
頼むと、俺はお願いしておいた。あいつにもバンドをやる辛さと、演奏した時の楽しさをしっかり受け止めて欲しいからな。
「先輩、この後お時間有りますか?」
レイが唐突に予定を聞いてきた。勿論忙しいが、少しだけなはあると伝えた。
「実は、ますきがご飯食べに行こうってさっきから誘ってきてるんですよ」
ますき、絶対狙って連絡入れたな……
ラーメン屋に行くらしく、俺は強制連行を余儀なくされた。
到着後、ますきが前で待機していた。
「レイ、先輩、おそいじゃねぇかよ」
「お話しながら来てたら、つい足を止めたりしちゃって遅くなっちゃた。」
ますきとレイが話を始めたので、俺はスマホで時間と通知を確認する。
湊さんやら、香澄やらとチャットが来ているが返すのは後にしよう。
俺はスマホをしまい2人に顔を戻すと………
「先輩、デート中にスマホを見るのはダメなんだぜ?」
ますきからデートなんて言葉が出るとはな明日は槍が降るな
「うるせぇ!」
「ふふっ」
何時ものじゃれ合いをしているとレイが笑う。
「先輩、何食べますか?」
レイが注文を聞いてきたので、俺は塩ラーメンを頼むことにした。
こってりしたのは得意ではない、年甲斐もなく胃もたれがするのだ。
「店長、塩と醤油2つ」
「あいよぉ!」
「にしても、3人揃ってご飯も何年ぶりだ?」
「大規さんが中学を卒業してからだから、約2年とかだね。」
「……」
そうか、もう2年にもなるのか……
俺達3人でバンドをやっていた時は、主にコピーが多く、たまに俺の作ったインストを演奏するのが基本だった。
それが以外にも有名になって、各地のライブハウスにちょくちょく呼ばれていた。
その後は進展も無く、静かに解散したな。
その気になれば、3人でプロのバンドとしてやっていくことも出来たが、2人の可能性はもっと先にあると感じた俺は、あえてプロの道を今は諦めたのだ。
「先輩……、AXELLは楽しいですか?」
レイの表情は一変して、少し心配そうな顔をしている。
「レイ、どうしたんだ?」
「大規さん、私達が演奏していた時よりも今の方が楽しそうだから」
「嫉妬かー?可愛いな」
「ますき!」
確かに可愛いな。
レイの言っていることは概ね正しい。
確かに今のバンドは楽しい、どんな音楽をやっても必ずみんなの反応や
演奏を聴いていて本当に飽きない。
2人と共に駆け抜けたあの時よりも演奏は上達し、心構えも変わっている。
だからこそ、レイが嫉妬するのも無理もないということだ。
「大規さん、1回でいいからまた3人でライブしようぜ!そうすれば、レイも納得するだろ!」
「ちょっとますき!」
いや、一理あるか……プロになってから予定が立て込んでいるが、近いうちに予定を開けておこう。
「先輩、お嬢の賄いいる?」
俺はますきの問に頷いた。
ますきのチャーハンは上手いからついつい食べてしまう。
なんか、このメンバーとあって思い出したが、あいつは…元気でやっているのだろうか。
ずっとギターを教え続けていたのだが、高校はこっちに通うと言われて2年ほど音沙汰が無い。
まぁ、あいつは絶対来るだろう。根性は俺に似た者だ。
「さてと、そろそろお開きにするか」
「そうだね。私これからリハがある。」
俺はこの後は家で寝る。
「じゃあ先輩!今日はありがとう!」
「先輩、ありがとうございます。」
こうやって見ると、2人とも可愛い後輩だな。
以前に比べ、音楽に対する思いや、技術は凄く上達したが。それでも根っこは変わらない。俺の大事な人達。
また、みんな集めてどっか行こう、そう思った。