バンドリ 無口なギタリスト Re:Try 作:NoMuSoN34
ライブ当日、午前7時。
俺達は集まって最後の合わせをしている。
4人ともすこぶるコンディションは良いようだ。
俺に関しては何も言うまい。
「よっし、これくらいにしておこうか。」
「じゃあ紅茶入れるね!」
「あっ、手伝います!」
女子二人は飲み物を入れに行った。
蒼二はハイハットを使って適当にリズムをとっている。
AXELLの中でも俺に次いで努力家なのでこれはいつも見る光景だ。
悠博はスマホを触っている。恐らくまりなさん達と連絡をとっているのだろう。
俺は悠博にこの後の予定を聞いてみた。
「8時半には向こうに着いておこう。そこから挨拶と準備を昼までに終わらせて13時に開演だな。俺達の番は予定では17時半になってる。」
なるほど、小規模なイベントらしい予定だ。
最近でかい所ばかりライブしてたから感覚が狂ってるのかもな。
と言っても、サークルはここいらではかなりの収容数を誇る箱ではあるのだが。
「紅茶出来たよー!」
「お菓子も用意しました!」
「茜も馴染んだよな〜。」
そうだな。
確かに来た時と今では別人である。
「大規、ギターが現場に届いたってさ。」
……それいちいち報告することか?
「いや、今回ヤバいの使うだろ?」
「「「やばいの?」」」
あー、あれか。
この前作らせた超高級ギターの事だろう。
「なんか……やばそう。」
「確か新車のファミリーカー買えるくらいの額だったよな?」
「えぇ!?」
「大規、そんなん使っていいのか?」
良いんだよ目立つし
「まぁいいんじゃね?俺も目立つドラムセット憧れるし。」
「確かに…、私もベースはメイン機以外は特殊なものばかりだし。」
そう、皆目立つ楽器を使うのだ。
つまり、必然的に俺も目立つ楽器でないと埋もれるのだ。
本当はさビンテージのレスポールとかストラトとか使いたいよ。
「……なんかすまん。」
「ごめんなさい」
謝るな。
だがしかし、目立つ楽器を使うのが悪いという訳では無い。
これは一種の商売でもあるのだから。
蒼二や雫が使っているのはシグネイチャーモデルと呼ばれる物で、簡単に言うとその人の為に作られた楽器なのだ。
そう、この2人はエンドースメント契約を各企業と結んだ。
彼らの楽器がアマチュアの演奏者やコレクター達に注目され、それが購入されると企業的には儲けとなるのだ。
こんな些細なことでも経済は回るのである。
ちなみに俺は契約していない。全て自分の稼いだ金で買った楽器である。
エンドース契約するとその企業の作った楽器しか使えないなど色々制約があるから、俺みたいに色々なギターを使うやつには不向きなのだ。
「そろそろ、行こうか。」
「そうだな!」
そんな訳で俺達は家を後にして、circleへと足を運ぶ。
「おはよーございます。AXELLです。」
何事もなくcircleに着いた俺達はそうそうにスタッフの皆様に挨拶をする。
今回唯一のプロバンドなのでスタッフの対応もかなり丁寧だ。
以前まではここまで待遇されてなかったしな。
「まりなさん、今回もよろしくお願いします!」
「任せてっ!プロになってからは初のライブ、期待してるね!」
「胃が痛いんだが…」
蒼二、今更何言っても引き返せないぜ?
「わーってるよ!まぁ自信を持って演奏するのが俺達の役目だからな。」
それもあるが……横に本気でお腹痛そうな子がいるから。
「」ガクガク
「テンプレじゃね?」
3週間でテンプレになるのは草
「茜ちゃん、人見知り?」
「はっはい……」
要修正だな。
「茜、これからはプロなんだ。せめて挨拶くらいは出来るようにな?」
「あう……努力します。」
「ほら!練習がてらまりなさんに挨拶してこい!」
「はい〜!」
蒼二は人に何か教える時スパルタになるから疲れるんだよな。
「うるせ!」
「はっ初めまして!今回からAXELLでマニピュレーターをやることになりました。茜でしゅ!」
((((かわいいな))))
「そうなんだ!私は月島まりな!宜しくね!」
「はい〜!」
茜は以外と大物かもな。
「だな、コミュ障はデマだろ」
「なんやかんや勇気はあるしな。さてと、先にリハ終わらせるか。」
そうだな。どうせアイツらも見に来るだろうな。
「茜ちゃんが緊張するから今回は閉鎖しよう、出来るよな?」
勿論、既に手は打ってある。
「さすがリーダー!」
「お預け食らう姉さんの顔が笑えるな」
「またボコられるぞ?」
それも含めて笑ってやる。
「なんでだよ!」
ほら、さっさとリハ始めよう。この後の予定も詰まっている。
「了解!」
リハーサルが終わった。
箱でやるとまた迫力が増すと改めて思ったよ。
あと合わせの時にチラッと扉を見ると沢山の人影が見えた、何時ものあいつらだろうな。そこまでして気になるものなのだろうか?
「よっしゃ!撤収だ!」
「雫は撤収完了であります!」
「茜もです!」
「俺は元より機材など無い!」
「俺も!」
「大規!」
うちのスタッフに任せてる。そうそうにはけるぞ。
「よし、ここから本番までは別行動にしよう。17時に集合な。」
悠博の言葉を聞いた俺達は各々別行動となった。
さて、どこに身を隠すかな。あっ、そういえばこの近くに借りてる倉庫あるじゃん、そこで練習しよう。
俺は1人、隠れ家(ギター倉庫)へとやって来た。
例の倉庫の話をした後ちょうどいい場所に土地があったのですぐさま買い取り倉庫を作った。
ギターを始めた頃の自分が見たらひっくり返るだろう。
この位置ならガルパに出る時は直ぐに持ち出せるからトラブルの時とかは便利かもな。今回みたいに身を隠すのにもうってつけだ。
にしても、よくこれだけのギターを集められたものだ。
軽く100は超えてる。
しかも殆どがメーカーの限定やら半世紀前のビンテージなどの厳選された物でマニアが見たら泣くんじゃないだろうか?
おっと、語りすぎた。悪い癖だな。
時間もいい頃だcircleの待機部屋に向かうとしよう。
ちなみに、すぐメンテナンスに取り掛れるように専用の工房が倉庫内の一室にある。
自分でメンテナンスする事が殆どだったが、ココ最近はお世話になっていたリペアマンの方が専属で付いてくれる事になったので工房に入ることは少なくなった。
俺は待機部屋に着くと皆各々のルーティーンをこなしていた。
話すと長くなるので後日語るとしよう。
「大規、案外遅かったな。」
ギター弾いてたらこの時間になったんだ。
「ほんと頭上がんねーな。」
褒めるな。
「あと3分だよ!」
「そろそろ行こうぜ!」
「新生AXELLの凱旋だぁ!」
そんな訳で、ステージに集まった俺達は前任のpoppin partyの事をじっと見ている。
いやー、やっぱり心洗われるな〜。
あんなに楽しそうなバンドは見てる側も楽しくなる。
彼女達も、その内大きなバンドになるだろうな。
「ありがとうございました!poppin partyでした!」
「次はAXELLさんです!なんと新メンバーも参加するとか」
「こらっ!早く行くぞ!」
戸山、爆弾を投下したな。
市ヶ谷、気をしっかりな。
「5人とも、お疲れ様〜」
「ありがとうございます!先輩達の演奏、楽しみです!」
5人とも全力でこなしたのか汗をかき、呼吸が乱れていた。
でもとても爽やかに笑っていて、微笑ましく思う。
「じゃあ、いつものやろうか!)
悠博の言葉に3人が頷き、円陣を組んだ
「新体制での初ライブ、非常に緊張するけど、失敗を恐れず楽しみましょう!」
「俺たちが!」
「AXELL!!」
円陣が終わると、蒼二から順番にステージへ上がっていく、一人一人お立ち台に上がって観客を煽っていくのはよく見る光景だと思う。本来ならば俺も一人でステージへ上がるのだが、今日は茜が初のライブなので、一人で上がるのは中々辛いと思い、今回は2人で上がることにした。
順番が来たので、俺はそっと茜の横に立ち、茜の顔を見た。表情が強ばって眉毛がピクピクしている。とても緊張しているのが伺えて、俺もつられて少し緊張してしまった。
「大規もつられてどうするんだよぉー」
悠博に苦笑いされてしまった。しっかりしなくてはと思い気を引き締める
。
すると茜がクスッと笑った。
「大規さんでも、緊張することあるんですね。」
まぁ人間ですからね。誰だって緊張はするよ。ウン。
「2人とも〜早くきなよ〜!」
雫に急かされたので、俺と茜は目を見合わせ。笑った。
「行きましょう!大規さん!」
どうやら、大分解れたみたいだ。俺は安心してステージへと歩き出した。
今日も最高のライブにしよう。