人によっては嫌な気分になるかもしれません。
「あー、だりぃ」
「そんなこと言わないでください、ロード翔悟。仕事なんですから」
「そんなこと言っても最近忙しすぎるから......」
ことの起こりは少し前。ユーノが次元渡航者とみられる少女と戦い、はやてもピンクの髪の少女に襲撃された。
そして、マテリアルと呼ばれるなのは達によく似た少女達が復活したらしい。
「マテリアル達が最初にいたのって3ヶ月前だろ?俺達その時まだいなかったよね」
「そうですね。捜索しろと言われてもよくわからないのですが......」
俺達の仕事は次元渡航者らしき少女とマテリアル達の捜索。
「しかし、ほんと似てるな。理知的ななのはに、元気っ娘なフェイト、偉そうなはやてと言ったところかな」
「本物とは全く違いますね」
マテリアルはなのは達を基にして作られたらしい。性格の違いはあるが。
『翔悟君』
「なのはか。どうした?」
なのはは、ユーノと一緒に捜索をしていた。
『アミタさんを見つけたんだけどね、逃がしちゃった』
「アミタさん?」
『うん、アミティエ・フローリアンさん。親しい人はアミタって呼ぶんだって』
アミティエ・フローリアン。どこかで聞いたことのある名前だ。
『不思議な魔法を使ってね、すごい速さだったんだ~』
「だったんだ~、って呑気だな。お前は」
『翔悟の方はどうなんだい?』
「全然収穫なしだ、ユーノ。今度見つけたらお得意の鎖で縛っちゃえよ、とシーニーの目が語っています」
『いや、そういうのはまず話を聞いてからじゃないと』
「でもよ、マテリアルは3ヶ月前に倒したんだろ?『闇の欠片事件』だっけ?何で復活してるんだ?」
『わからない。もしかしたらあの次元渡航者の人と関係してるのかもしれないけど』
「だから見つけたら縛ればいいのです。話を聞くのはまずそれから」
「だからシーニー、それダメだって」
『まぁ、わたし達も探すから翔悟君も頑張ってね』
「おう」
通信を切り辺りを見回すが、
「誰もいないな」
「探知もしていますが、ひっかかりませんね」
「ま、とりあえずここら辺をもうちょ......なぁ、あれ」
「どうしまし......もう1人のロード翔悟!?」
そこにいたのは、もう1人の俺だった。全体的に色が黒い。
「まさかの双子疑惑!?」
「いえ、そんなはずは。あ」
「あ、ってなに?」
「言うのを忘れていましたが、あれは闇の欠片ですね。闇の書の残滓が魔導師の過去の記憶を再現したものです。特に負の部分が反映されてますが」
「俺そんなこと聞いてないぞ」
「その話の時トイレに行ってましたからね。後で伝えようと思っていましたが失念しておりました。申し訳ありません」
「まぁ、いいけど。で、あれがあるとどうなるんだ?」
「具体例を申し上げますと、貴方の闇の欠片が誰かに危害を加えるとします。そうすると顔などは貴方と全く一緒なので、貴方に容疑がかかります。簡単に言うと冤罪ですね」
俺の闇の欠片が仲間攻撃→よくもやりやがったな!→いや、俺じゃねぇよ!、といった感じか。
「わかりやすい例をありがとう。倒そう、今すぐ。冤罪はごめんだ」
「そのことですが、戦うということに関して協力できません」
「なんで?」
「その偽物といえど、姿は貴方ですので。攻撃するのに抵抗が......」
「あー、なら俺1人で頑張るか」
「頑張ってください」
「おーい、そこの俺の闇の欠片」
呼び掛けるが振り向かない。そのままどこかに飛んでいきそうだ。
「待てって!」
肩を掴んで止めるが
ブォッ!
「あぶねぇ!」
体を反らして避ける。いきなり斬ってきた。
その手に持つのは俺の持つものと違う、大罪武装“
「誰だ?お前」
「俺はお前の本物だ。少し話をしようか」
「俺に話しかけないでくれ。不愉快だ」
(なんつーか、前世の俺を過激にしたみたいだな)
人を信じることができなかった日々。人の行動をなにか裏が有るんじゃないかと思っていたあの頃。とにかく人と接するのが怖かった。
闇の欠片が負の記憶を反映するならば、その感情が固まってより負の感情が強くなっても不思議ではない。
少しは克服できたとはいえ―それで苦手だが―思い出したくはない記憶だ。
「いや、だから話を......」
「そうやって、どうせ裏でもあるんだろ?だから人間は信用できない!」
俺の闇の欠片が斬りかかってきた。
「昔の俺ってめんどくせぇな!」
ガキィッ!ガァンッ!
(太刀筋もほぼ一緒。あとは武器の違いだけか)
シーニーを頼りたいところだが、あてにはできない。闇の欠片は本気で俺のことを殺そうとしていた。姿が同じだからといって躊躇していれば、やられてしまう。
「「はぁぁぁぁぁぁぁ!」」
ザシッ!
「「ぐっ!」」
このままでは、共倒れだ。
「シーニー、迷うな!やれ!」
「わ、わかりました!ブラスター......」
ジャガッ!
“嫌気の怠惰”刀身が展開している。あれは......
「まずい、超過駆動だ!逃げろ!」
「大罪武装、嫌気の怠惰。超過駆動」
黒いもやの様なものが溢れ、俺達を包んだ。
“嫌気の怠惰”の超過駆動の効果は「自分にとって悪であると理解する箇所」に"嫌気"の力場を発生させ拘束するというものだ。バインドの様なものと考えていい。
(嫌気って重いなっ!)
俺が拘束されている場所は、両の手から肩にかけてだ。もしかしたら、人と接する場所という意味かもしれない。人と接するのが苦手な俺にとって、手は悪だと感じているのかもしれない。
シーニーは胸部を拘束されていた。原作で貧乳だから悪に感じていた、というのがあるがシーニーはシグナム並みにある。悪に感じる理由がわからない。
俺はこの状況で武器を扱うこともできない。しかし、相手は待ってはくれない。なので
「結べ、悲嘆の怠惰!」
体ごと回転する感じで向かってくる相手に攻撃をした。動けないと思っていたのか、相手は防御もせずくらっていた。
「ぐぅぅぅぅっ!」
俺はこれで限界だ。とても重い拘束に無理をしてやったのだ。
「くそがっ!」
シュゥゥゥゥン
俺の闇の欠片はいなくなった。消えたのか、もしくはどこかに転移していったのか?
「九死に一生を得るってこのことだな」
俺の闇の欠片がいなくなったことで、“嫌気の怠惰”の拘束は無くなった。
「大丈夫ですか!?ロード翔悟!」
慌ててシーニーが近づいてきた。
「ああ、なんとかな。しかし超過駆動やってくるとは思わなかったぞ」
超過駆動はできるのだが、やってしまうと一気に魔力が無くなってしまうので、後々の戦闘に支障がでる。しかし、俺の闇の欠片はやってきた。そこまで俺を、人間を殺したいほどだったのだろうか?
「あの......ロード翔悟」
「なに?」
向けてくるのは不安そうな目。
「ロード翔悟は私のことを信用してますか?嫌いではないですか?」
「それって......」
恐らくさっきの戦闘で俺の闇の欠片が言っていたことを気にしているのだろう。
負の感情といえ、元々は俺の気持ち。俺がシーニーのことを嫌いではないか心配しているのだろう。
「正直に言ってください」
「そんなわけないだろ。昔はああいう感じだったけど、今は違う。信用もしてるし、嫌いなわけない」
「そうですか、良かったです......」
「でも嫌いなわけないって言ってることは、好きでもないってことですよね」
「え?」
「いえ......なんでもないです。とりあえず、怪我の手当をしに行きましょう」
「?ああ。そういえば」
とりあえず、気になっていることを聞いてみることにした。
「嫌なら話さなくてもいいんだけど、なんで胸部に嫌気の拘束があったの?」
胸と言うのはなんか、恥ずかしかった。
「それはですね、闘うときに邪魔じゃないですか?重いですし。なんでこんな大きめなんでしょうね?私を創った人の気が知れません」
とりあえず、この話はここだけの秘密にしておこう。聞かれたら怒られそうだ。主にはやてに。
●●
「追跡続行だよ」
私は
「ああ、フェイト。ん?あれって、翔悟じゃないかい?」
「ほんとだ。あれ、でも翔悟のバリアジャケットあんな色だったっけ?」
翔悟のバリアジャケットは、青い武者の甲冑みたいなのだ。でもあのバリアジャケットは暗い青だ。
「くそっ!あの野郎......ぐっ!」
苦しそうに頭をおさえている。とても辛そうだ。
「もしかして翔悟の闇の欠片じゃないのかい?」
「そうかもしれない。ねぇ、翔悟」
近づいて呼び掛けると、
「っ!」
向けられるのはとても憎悪のこもった瞳。
「やっぱり、闇の欠片かい!?」
「またか......さっきもお前らみたいなのがいたけどよ。目障りなんだよ!」
そう言って大きな剣を持って迫ってくる!
「フェイトッ!」
ガキィッ!
バルディッシュをハーケンフォームにして防御する。すごい力だ。
「ちょっと待って!」
「うるさい!俺の邪魔をするな!」
「話を聞けって言ってるんだよ!」
横からアルフが攻撃をする。
「ぐっ!そうやって......」
翔悟の闇の欠片は私を見て
「笑顔で言ってるやつほど信用できねぇんだよ」
「!?」
「フェイトがそんな訳ないだろ!」
アルフが闇の欠片に向かって攻撃する。
「俺はな、ずっと見てきたんだよ。そうやって笑って、裏で騙してるやつをな」
「そんなわけない!」
ガシャン!ガシャン!
『Zanber form』
「そんなんじゃ、誰ともわかりあえないよ!私はなのはに教えてもらった!バルディッシュ!」
『Yes, sir.』
「くっ!」
バキィィィィンッ!
「なっ!?」
翔悟の展開した防御魔方陣を砕く!
「だから、話を聞いて!」
『Jet Zamber.』
「はあああああああああっ!」
ズシャァァァァァッ!
「がああああああああああっ!」
「フェイト!大丈夫かい?」
「うん。それより、闇の欠片は?」
「そこにいるよ」
翔悟の闇の欠片はもう消えかかっていた。
「翔悟......」
「ちっ、負けたか」
「翔悟、信じなければわかりあえない。それじゃあ駄目だよ!」
「ふんっ、それはどうかな?だが......」
「え?」
「そういうことは、本物のほうに言え」
「どういうこと?」
「自分で考えろ。おっと、消えるのか......」
「そう。夢が覚めるんだよ」
「アルフだったか?」
「なんだい?」
「いい拳だったよ。父親とケンカしたときのこと思い出した。あれがあったから幾分かましになったのかな?」
「それって......」
シュゥゥゥゥン
翔悟の闇の欠片は消えてしまった。
「翔悟もあんな風に私達のこと思ってるのかな......」
「そんなわけないだろ、フェイト。翔悟はあたし達にいつも優しいじゃないか」
「でも......」
思い出すのは皆と話したこと。
『翔悟って私達に遠慮してるというか、後ろに下がって見てる感じよね』
『そうかな?翔悟君、緊張してるだけでしょ?』
『あのねぇ、すずか。もう転校して1ヶ月よ。いくらなんでも長すぎよ』
『そういえば』
『どうしたの?はやて』
『あのな?前に翔悟君の家で皆でご飯食べたときあったやろ?』
『それがどうかしたの?はやて』
『お礼しよう思うて、私の家でご飯食べへんかって、誘ったんよ?そしたら用事あるって断られたんよ。それでな?その後3回くらい誘ったんやけど、やっぱり用事あるって断られてな』
『そういえば、今日も用事あるって言ってたね』
『最近はすぐ帰っちゃうし』
『よし、なら今度捕まえて引っ張っていきましょう!』
『『『『おー!』』』』
(翔悟はどう思ってるのかな......。最近ぼーっとしてることと関係してるのかな?)
この事件が終わったら聞こう、と私は心に誓った。
感想、アドバイスなどよろしくお願いいたします。