原作なに?リリカルなのは?   作:一方逃避

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更新を一ヶ月以上空けてしまい、申し訳ありません。
今後も、よろしくお願いいたします。


13話:変わるべき今 GOD

 久しぶりに、見るあの頃。

 

 何もかもが信じられなかった、あの頃。ただ毎日を自堕落に、作業のように過ごしていたあの頃を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねー、次なんだっけー?」

 

「体育じゃね?」

 

「いや、2か月で終わると思うぜー」

 

「いや、一年は続けてみせるから!」

 

 今は、授業と授業との合間の時間。この中学校では、俗に10分休みと呼ばれているこの時間。

 

 次の授業の準備をする二人組、最近付き合い始めた、女子に関しての話をする男子達、その他にも好きな漫画やアニメ、ゲームの話をする者、寒くなってきたためか、暖房の近くに集まり談笑する女子達もいた。

 

(次は体育か……)

 

 周りの発言から次の授業を知り、準備をする。俺の学校の冬の体育は柔道だった。

 

(納豆にネギ入れて、白米にかけて食いてえ……)

 

 あの頃の俺は、周りの行動に流されていた。しかし、それでも馴染むことはなかった。

 

「さっみー!」

 

「早く、ヒーターの所に行こうぜ!」

 

 冬の体育館の床は冷たい。俺は剣道で慣れているが――柔道は畳の上だからその分、冷たくはないと思う――周りの人間達はそうではないようだ。

 

 畳は授業の度に敷かねばならない。ノルマは1人に2枚ほど。ちゃんと2枚運ぶ人間と、1枚運ぶ、もしくは運ばない人間がいるのはいつものことだ。俺は後者だった、1枚運ぶ方の。

 

 俺はどうしても、集団で何かをする、ということが出来なかった。班行動なりなんなり。よく今まで生きてこれたものだ。

 

 「それじゃあ、整列して!」

 

 体育教師の呼び掛けに応じ、畳の上に正座をして並ぶ。

 

「あー、1人余るなあ」

 

「そうだなあ、誰が余るかなあ」

 

 クラスの男子が2人、期待するような目で俺をチラチラ見ていた。いつも、仲の良い2人組。ストレートに言えばいいものを。仕方のない。

 

「俺、余るよ」

 

「おお! マジサンキュー!」

 

 俺のクラスには1人、不登校のやつがいた。いじめなどではなく、単純に学校に来るのが面倒さいだけらしい。つまりだ、そいつが来ないと男子の人数が奇数になり、二列になると余ってしまう。しかも、半永久的に。クラスの人間達は仲の良いやつと、一緒にやりたがる。だから、俺が余ればその様にできる。

 

(俺も助かるっちゃあ、助かるんだけどね……)

 

 俺は柔道があまり好きではなかった。痛いのは人間誰でも好きではないだろう。剣道のは我慢できるが、柔道は慣れなかった。打ち所が悪いと、下半身不随になったり、最悪死ぬというのもあまり、やる気にならない要因だった。ただの俺のワガママだが、この状況は少しありがたかった。無論、余れば3人で組まされるが、そこはどうとでもごまかせる。余らない状況ではしかたがないので、ちゃんとやっているし。

 

(早く、終わんないかなあ……)

 

 別に俺は、このクラスでいじめられていたり、省られているわけではない 。俺が周りに馴染めていないだけだ。しかし、もうこの状況を変えるには遅すぎる。それこそ、違う運命を辿らなければ不可能だろう。

 

 この頃を思い出す度に、俺は思う。

 

 俺は一体、何をするためにこんな所にいるのだろう、と。

 

 勉強するためだろうが、そこにはなんの生産性もなかった。人間性、社会性、協調性…………。そんなものは、学べなかった。

 

 これが、俺の思い出したくなくても思い出してしまう、忌々しい記憶。俺が、今の俺である原因を作った過去。この世界でも夢に見てしまう、最悪の過去だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

(ったく、最悪な夢見ちまった……)

 

 なのは達とさっき話したせいで、夢に見てしまったのかもしれない。その時にいるかの様に鮮明で、それでいて第三者の視点から眺めている様な不思議な夢だった。

 

 あの少女達は、良い人達だ。もちろん、シグナム達ヴォルケンリッターの皆も。ただ、なのは達は少し、強情で頑固だ。そこは少し困る。善意でやっているのかもしれないが、触れられたくないことはある。それに…………まだ、信じきれないんだよなぁ。

 

 やっぱり、どうしても人間を信じることは今でもそう簡単には出来なかった。心の奥底では信じきれてはいない。こんな自分が嫌になる。それでも、どうして俺がこんな風になったのかも、よくわからない。故に、対処のしようがなかった。

 

「起きられましたか。御加減は如何ですか? ロード翔悟」

 

 そんな風に俺が暗くなっていると隣から声が。何故か、妙に近い。

 

 

「なーんも、変わり…………シーニー、なんで隣に寝てんの?」

 

「添い寝ですが、何か?」

 

 隣にはシーニーが寝ていた。いや、確かに添い寝とか男子が憧れているだろうけどさ、今やることじゃなくね?

 

「添い寝って、いや何故?」

 

「貴方がうなされていたもので、つい。そしたら、止まりましたが」

 

 なにそれ、超はずかしい。しかも、うなされてたのかよ……。めんどくさいことになりそうだ。

 

「どうなさったのですか? 何か怖い夢でも?」

 

「なんでもねえよ」

 

「なんでもないはずがないです。正直に言ってください」

 

 ほら、めんどくさいことになった。あまり、根掘り葉掘り聞かれて気持ちの良いものでもない。ただ、それで引き下がるシーニーではなかった。

 

「正直に言ってください!」

 

「…………」

 

 見つめ合う俺とシーニー。寝ながら何をしているのだろう。見つめ合うといっても、そこに甘い雰囲気などは有るはずはなく、ただの一触即発の様な空気が有るだけだ。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「あーっ、もう! わかったよ、話せば良いんだろ、話せば!」

 

 俺は結局、折れてしまった。俺は家族には甘い。ただでさえ、孤立していたのに家庭でさえ孤立してしまうのは怖かったし、避けたかった。シーニーは形はどうであれ、この世界での俺の唯一の家族。隠すなんて、無理だった。それに、シーニーには色々世話になってるしね。ああ、鋼の心が欲しい……。

 

「前から思ってたけどシーニー、俺の姉ちゃんと少し似てるな」

 

「貴方の姉、ですか?」

 

「そうそう。料理はシーニーほど出来ないけど、雰囲気とか俺が黙るとじっと見つめてきて、喋らせようとする所とかね」

 

 俺の姉は、体が弱かった。持病も持っていたし。冗談で「添い寝する?」とか言ってたのも一緒だな。仲は……悪くはなかっただろう、多分。喧嘩は時々してたけど。

 

「貴方が言わないからです」

 

「人間誰しも、聞かれたくないことの1つや2つ、あるもんだよ。シーニーだってそうだろう」

 

「私は融合機なので、よくわからないです」

 

「お前………人間だろ? 融合機とかそんなの関係ないの。ここに存在してるし、人間なの」

 

 こいつは……。変なところで自分のことを持ち出す。俺にとって、シーニーが融合機とか人間だとか考えたことはないが、融合機だから~、と言うのは、なんかやめて欲しい。いいじゃん、区別なんかしなくて。

 

「そういうものなのですか?」

 

「そうだ!」

 

 そう、そういうものだ。ぜっっっっったいに! 忘れないで欲しい。

 

「話が逸れましたね。それではお聞かせ願えますか?」

 

「俺が見てた夢は、昔のことだよ。中学生の頃の夢をね……」

 

 体を起こして、話し始める。

 

 本当に、思い出したくもない。俺のトラウマ。あの頃があったから、俺は人と接するのに拒絶感を感じるようになった。その前にからも兆候は有ったが、本格的になったのは中学生の頃からだろう。人生って、一ヶ所で転ぶと後々着いてくるな。

 

「出来れば夢の内容を伺いたいところですが……今はやめときます。とても、辛そうなお顔をしてますから」

 

「あ……そうしてもらえると助かるかな」

 

 シーニーのこういう所は好きだ。俺の本当に嫌なことは強要しない。本当に姉そっくり。

 

「ですが、何故話してくれたのですか? 嫌なら、だんまりを決め込むことも出来たでしょうに」

 

 これは、言いづらいというか恥ずかしい。でも、言わないとまた聞かれるんだろうなぁ。

 

「家族だから……」

 

「あの、もう一度。よく、聞こえません」

 

 冗談でもなく、本当に聞こえないのだろう。小さく言い過ぎた。だから、今度は大きな声で。

 

「家族だからだよ。家族にはあんま隠し事はしたくねえんだよ」

 

「家族ですか……」

 

「そう。シーニーは俺にとって、母さんで、姉で、妹は無理があるけど……家族なんだよ。だから、大事にはしたいんだ。シーニーはどうなんだ?」

 

 そうすると、シーニーは俺の目を見て、真っ直ぐに

 

「私にとって貴方は、仕えるべき主であり、お守べきかけがえのない存在です」

 

 そして、とシーニーは突然、真面目な顔から笑顔になって、

 

「可愛い弟みたいな、大切な家族です

! でも、フェイトさん達とも仲良くしてください。フェイトさん達とも貴方ならすぐに仲良くなれます。そうすれば、昔のことなんて大丈夫です!」

 

 家族と言ってくれたのは嬉しかった。でも、仲良くとか少しハードル高いぞ。

 

「簡単に言うけどさ……」

 

「大丈夫です、貴方なら。私にも、こんなに優しくしてくれているのですから」

 

 シーニーの顔には不安なんて見られなかった。有るのは自信だけ。そこまで、俺を信じてくれているのか。

 

「うん……まあ、頑張ってみる」

 

「はい!」

 

 変われるわけがないと思っていた、今の自分。この世界でなら、変われるかもしれない。今こそ、変わるべきなのかもしれない。

 

 負け続きな今の俺。でも、勝てるかもしれない。そう、自分自身に…………。




StrikerSの構想はかなり有るのですが、肝心の今の話の執筆があまり進まないです。

試験があるので、次の投稿は12月に入ってからになると思います。今度は期間を空けないで投稿できるようにします。

感想、アドバイスなどよろしくお願いいたします。

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