雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら   作:ワカメの味噌汁

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第十五話

「こんなものかな。」

雁夜はそう言って長かった人形作りを終える。

聖杯戦争で重要な役割りを果たすであろうその人形の製作には普段の工房防衛用人形作製とは比べ物にはならない時間が掛かった。

 

だが雁夜はその人形の出来に満足していた。

人形の見た目は雁夜と全くと言って良い程変わらず、恐らく橙子と雁夜以外の人間は人形が雁夜だと信じて疑わないだろう。勿論製作工程で一番時間が掛かった魔術回路の製作にも成功し、全く疑い様がない。

 

雁夜がそんな事を考えていると、橙子が話しかけてきた

「そっちも終わったみたいだな。」

 

「はい。ついに終わりましたね。」

雁夜が答える。

 

「ああ、明日の朝には全ての準備が整い出発できるだろう。ところで、工房の位置はもう決めたのか?」

 

魔術工房—

それは魔術師のテリトリーであり、活動の拠点である。

聖杯戦争に置いてはそれの所在は重要な戦略的要素の一つであるため、簡単に決められる事ではない。

 

そう、雁夜も日本に帰ってきてから工房の位置を決めるためだけに冬木の地形や街並みを勉強し直していた。

 

「はい。冬木の中心街から離れた山の麓に今は使われていない二階建て廃墟があります。その廃墟とその周りを工房にしようと思っています。」

雁夜は説明する。

 

「そうか。良いところを見つけたな。」

橙子はそう言い、切り出した。

「では準備の最終工程を始めようか。」

 

 

翌朝、雁夜は橙子の運転する車で、魔術工房の予定地である廃墟を目指していた。

十数年前に出奔した冬木に帰るという行為は雁夜にとって聖杯戦争を除いても特別な意味を持つ。

 

間桐臓硯に対する復讐

出奔した時に己に硬く誓った目標。

それを今、遂に達成しようとしている。

雁夜はその心に宿した高揚感を抑えきれずにいた。

そして、遂に廃墟に着いた。

雁夜が橙子に礼を言うと、忠告が返ってきた。

 

「雁夜。お前が死ぬことは恐らくないだろう。だが、気を付けろよ。」

 

「はい。わかっています。師匠にここまでして貰って負ける訳にはいきませんから。聖杯戦争が終わったらまた訪ねます。」

雁夜は橙子に約束した。

 

「楽しみにしてるよ。じゃあな。」

雁夜の勝利と無事を願いながら、橙子は自身の拠点に帰るのであった。

 

橙子が去ったのを見守った後、雁夜は廃墟の掃除を始めた。意外に最近までは人が住んでいたらしかった事が幸いして、あまり風化していなかったのであまり手間は掛からなかった。

 

掃除が終わった後は工房作成である。

結界を何重にも張り、至る所に罠を仕掛け、防衛用の人形を配置する。

つい今朝までは廃墟だったそれは、敵の侵入を拒む立派な要塞と化していた。

 

そして遂に対臓硯用の人形の出番だ。

一日活動できる程度の魔力を溜めてあるそれに意識をシンクロさせて、起動させる。

タバコ程度の火で周囲25m程度を焼け野原にしてしまうそれの扱いには細心の注意が必要であることを肝に銘じた。動作に問題がない事を確認した雁夜は、記憶を頼りに間桐邸に向かい出発した。

 

間桐邸に着いた雁夜を察知した臓硯は意外にも間桐邸の結界を解き、雁夜の来訪を許した。

「その面、二度と見せるでないと申したはずだが。」

臓硯は言う。

 

その言葉を無視して、雁夜は言う。

「取引をしろ妖怪。俺が二年後の聖杯戦争で間桐に聖杯を持ち帰ったら、間桐をお前の呪縛から解放しろ。」

 

「カカカッ。十数年も出奔していて魔術の修行もしていないお前が何を言う。」

臓硯はあまりに馬鹿げた話しだと嘲笑した。

 

「俺に刻印蟲を植え付けろ。」

雁夜は本来なら自殺行為である筈の提案をする。

 

それを聞いた臓硯は驚いた様子だったが、冷静に返す

「雁夜、お主死ぬ気か?」

 

雁夜は続ける

「ああ、俺がこの呪われた家の最後の被害者になるのなら本望だ。」

 

雁夜の英雄的自己犠牲に多大なる嫌悪感を感じた臓硯はそれを承諾した。雁夜が苦しみ抜いて死ぬことを望みながら

「良いだろう。早速蟲蔵に行くからついて来い。」

 

蟲蔵に着いた直後、臓硯は雁夜を蟲の海に蹴り落とし、指示を出そうとしたが、雁夜の笑い声に遮られてしまった。

「まずはそこで一週間「ハハハハハハッ、ハーハッハハハハハハッ」

蟲の海の中で雁夜は爆笑していた。

 

「なんだ?何が可笑しい。」

臓硯にはわからなかった。これから地獄の苦痛を味わうというのに、何が面白いのか。

 

「間桐臓硯、お前の負けだ。」

雁夜はそう言い、人形の中に残っていた魔力を全て肌のルーンに集中させた。

 

その瞬間、人形は炎に包まれた。

炎は血管内の爆薬にも瞬時に引火して、蟲蔵を灼熱地獄に変え、臓硯と蟲を全て焼き殺した。

 

人形が発火時点で魔術工房の本体に意識を戻していた雁夜は、復讐を成功させたこと、つまり臓硯を殺した喜びを味わった。

 

 

 

 

 

 

 

 




第十五話です。

雁夜は遂に復讐を達成しました。
ここまで長かったです。

次からは遂に聖杯戦争編です。楽しみにていてくれると嬉しいです。
聖杯戦争編の第一話として、次はマスターの戦力解説をする予定です

今日も駄文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
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