雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら   作:ワカメの味噌汁

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第三話

夢を見ていた。

周りは薄暗かったが、雁夜には自分が何処に居るのかが直ぐにわかった。

 

蟲蔵

 

間桐の魔術工房であるそこは五百年にもわたる間桐臓硯の間桐支配の象徴であり、彼の絶対的な力の象徴でもあった。

 

雁夜は臓硯の蟲に蹂躙されていき、肉片になって行く母の死体を泣きながら見つめていた。

その泣き顔を見ながら「次はお前だ」というようにニヤニヤ笑っている臓硯。

 

雁夜が復讐を、臓硯を斃すと誓ったの記憶であった。

 

「…おい、起きろ」

橙子のそんな呼び掛けで雁夜は起こされた。

 

「随分うなされていたようだが、大丈夫か?」

橙子は心配そうに尋ねる

 

「はい…大丈夫です。少し昔の夢を見ただけです」

雁夜は答え、身体を起こす。

 

「そうか…」

橙子はそれ以上聞かなかった。

聞いてはいけないと察したのである。

 

「とりあえず昨晩約束した魔眼封じだ。」

そう言って、一見普通の眼鏡にしか見えないものを雁夜に渡した

 

「それを掛けている間はお前の魔眼は作動しない。ほら、掛けてみろ。」

 

橙子のそんな促しに答えて、魔眼封じを掛ける

「本当だ…線が、ほつれが見えない。」

 

そんな雁夜の様子を見て、橙子は満足気だ。

 

「まあいい。朝食があるから、ちょっと待ってなさい。」

雁夜が言われたとおり素直に待っていると、橙子が朝食を持ってきた。

 

「昨日の昼から倒れていたから、半日ぐらい何も食べていないだろう。」

 

そういえばそうだ、と思う。

昨日は色々な事があり過ぎた。

間桐からの出奔、臨死体験、橙子との出会い、そして「直死の魔眼」の発眼。

濃厚過ぎる一日を改めて振り返りつつ、橙子から朝食を受け取る。

 

「ありがとうございます。」

感謝の言葉を言い、雁夜は半日ぶりの食事を始める

メニューはサンドウィッチとスープという、極めてシンプルなものであったが、半日ぶりの食事は身体にとても美味しかった。

 

「食べ終わったらシャワーを浴びてこい。見たところ最低限の衣類とかは持っているようだから、特に問題はないな。」

 

そう言われた雁夜は朝食を頬張りつつ、橙子に質問する。

「蒼崎さんは、俺に魔術を、あの妖怪を斃す術を教えてくれるんですか?」

 

「ああ、勿論だ。だがその前にお前の言う妖怪の魔術がどのような物なのか教えてくれないか?それを知らなければ対策のしようもない。」

 

雁夜は自身の家の魔術が蟲と呼ばれるおぞましい使い魔を使ったものであること、臓硯は身体を蟲で作り変えることによって五百年もの時を生きながらえていることを説明した。

 

「ふむ。全く世の中には色々な魔術があるものだな。お前の言う妖怪の使う魔術は厄介だが、お前が真面目に修行すればいつか斃すことができるだろう。なんせお前には『直死の魔眼』があるのだからな」

 

そんな橙子の言葉に、雁夜は喜びを隠せない。

「本当ですか!?」

 

「ああ、本当だとも。だがその魔眼を使いこなすには強靭な肉体が必要不可欠だ。今日からお前には基本的な魔術を教えるから、肉体強化は自分で励むように。」

 

橙子のそんな言葉を聞き、雁夜は自分の未来が希望を感じた。いつか臓硯を殺せるようになると思うと、不思議とやる気が満ち溢れてきた。

 

 

 

 




第三話です。

型月世界では肉体強化、あるいは肉体改造と言えばあの人ですよね。あの人自体はストーリーには出てくる予定はありませんが(笑)

読んでくれている方々、本当にありがとうございます。
楽しんでいただければ幸いです。
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