雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら 作:ワカメの味噌汁
しまった!
炎の壁を消した瞬間の隙をついての舞弥がダガーで斬りかかって来るのを視認した時臣は心中でそう叫ぶ。
そう、時臣は予期せぬ事を上手く対処するのを苦手としているのだ。
そんな事を考えているうちにも、舞弥は確実に時臣との間合いを詰めて来ていて、遂に両者間の距離は、1メートル程にまで詰まってしまった。
そんな危機的状況に焦って冷静な思考が出来なくなった時臣は、反射的に後ろに二歩下がり、目の前一帯の地面を覆っている草木に火を放つ。
全く考えも無しに行ったこの放火は、危機改正の一手となった。そう、目の前の草木に火を点けられた舞弥は、そのまま進行するわけにはいかず、左方向に回避する。
「クッ」
時臣の思わぬ一手で自身の策−距離を詰めて有利な接近戦に持ち込む−を妨げられてしまった舞弥は悔しさを露わにする。
しかし、そう思っている間にも戦闘は続行しているため、気を抜くわけにはいかない舞弥は時臣に向かってキュリコM950の掃射を行う。
しかし、それはまたもや時臣の作り出した炎の壁によって防がれてしまった。
冷静な判断を持って闘いを進めて行く舞弥であるが、状況は不利になる一方であった。先程時臣が反射的に放った炎は周囲の草木にすぐさま燃え移り、気が付けば辺りは火の海。そんな状況では時臣との距離を詰めることは出来ず、自身の持つ飛び道具も時臣の作り出す炎の壁を前にしては全く効果をなさない。
「そろそろ終わりにしようかね。」
自身の勝利を確信し、余裕と優雅さを取り戻した時臣はそう言い、魔術礼装のステッキに魔力を込める。
「Intensive Einascherung(我が敵の火葬は苛烈なるべし)
――」
そう詠唱した時臣が放った炎は、先程の物とは違い、確実に舞弥を捉える為に放たれた物であった。
舞弥それを避けきる事が出来ずに、炎に包まれる。
その様子を見て、自身の勝利を確認した時臣は、二人の戦闘をそばで見守っていたアイリスフィールに尋ねる。
「貴女も戦うのかね?」
「マダム、いけない...!」
その問いを聞いてアイリスフィールよりも先に反応したのは、全身に火傷を負い死にかけている舞弥だった。
舞弥のその忠告を聞いても、アイリスフィールの決心は揺るがない。
「私と舞弥さんは遠坂時臣、貴方を直ぐに排除して、言峰綺礼を止めなければいけません。奴を、衛宮切嗣に会わせるわけにはいかないのです!」
「成る程...」
アイリスフィールの固い決意の篭った言葉を聞いた時臣は、感嘆する。
「しかし、どうやって私を倒すつもりなのかね?」
時臣のその問いに、アイリスフィールは持っていた針金に魔力を通すことで答える。
「私が切嗣から教わったのは、車の運転だけではなくてよ。」
「生きること。そして、生き抜くこと!」
そう宣言したアイリスフィールは、針金を烏型の使い魔に変える。
アイリスフィールに使役されているそれは時臣を攻撃すべく、時臣に向けて飛び立った。
「その決意は素晴らしい物だが...それでは私を倒せない。」
そう言った時臣は炎を針金の使い魔ではなく。アイリスフィールに向けて放つ。
そう、時臣の作り出せる炎の最高温度では針金を構成している鉄を溶かす事が出来ないからだ。
それを見たアイリスフィールは、使い魔に自分を守らせ、炎の直撃さえ避けられた物の、腕に重大な火傷を負ってしまった。
「ふむ。私の勝利の様だね。」
そう言った時臣は、綺礼をサポートするべく、その場を離れるのであった。
第三十九話です。
調子に乗ってたらセイバー陣営が脱落しそうな展開になってしまいました…
今日も駄文にお付き合い頂き、ありがとうございました。