雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら 作:ワカメの味噌汁
翌朝、聖杯戦争開始から取っていなかった長い睡眠から目覚めた時臣は、自分が遠坂邸の魔術工房ではなく、言峰教会にいる事を改めて認識し、それによって昨日の出来事が実際に起こったという事実を改めて認識させられた。
「師よ、お身体は休まりましたでしょうか?」
時臣が目覚めた事に気が付いた綺礼は切り出す。
「ああ、お陰様でね。」
綺礼のその問いに、時臣は穏やかな声調で答える。
時臣の答えを聞いて少し安堵したのか、綺礼はホッと溜息をつき、続ける。
「直ぐに朝食をお持ちしますので、もう少しお休みになられていて下さい。」
「ああ、わかった。ありがとう。」
綺礼のその提案に、時臣は感謝しつつ同意する。
時臣のそんな返答を聞いた綺礼は、奥の部屋に消えた。その様子を確認した時臣は再び横になり、一人思考に耽る。
私は...無力だ...
ロード=エルメロイの魔術礼装を前に何もする事が出来なかった...
考えるのは勿論、昨日のアインツベルン城でのロード=エルメロイとの戦いについてだ。
時臣はロード=エルメロイを倒す事は疎か一撃の攻撃すら与える事が出来なかった自分が情けなく、失意のどん底に叩き落とされていた。
それだけではない...
半年もの歳月を掛けて作った魔術礼装も破壊されてしまった。
あれなしでは他のマスター達と戦う事が出来ない...
考えれば考える程、時臣の絶望は深まって行く。
そんな負のスパイラルに時臣が陥り始めた時、綺礼が朝食を持って戻って来た。
「師よ、朝食をお持ちいたしました。お口に合えば良いのですが...」
綺礼はそう言い、朝食のパンとサラダとスープを時臣に手渡す。
「ありがとう。」
朝食を受け取った時臣は礼を言い、食事を始める。
「うん。美味しいよ。」
時臣は純粋な感想を言うが、その声は何処と無く弱々しく、まるで昨日までの時臣とは別人の様だ。
だが、ひとまず時臣が朝食を気に入った事に安堵した綺礼は、ホッと息をつき、言う。
「それは良かったです。」
綺礼のそんな言葉を聞いて少し安心したのか、時臣は一人でに語り始める。
「私は...私は、ロード=エルメロイの魔術礼装を前に一撃の攻撃すら当てる事が出来なかった...」
そう言う時臣の声には明らかな失意と絶望が含まれていた。
「それだげではない...半年掛けて作った魔術礼装も壊されてしまった。」
「もう、ダメだよ...綺礼。戦う希望が全く出てこない...」
時臣のそんな心内を聞いた綺礼だが、どんな言葉を掛けて良いのかわからなかった。
「ですが、師よ...」
綺礼が何を言うべきか迷っていると、時臣が質問をした。
「昨日言っていた...衛宮切嗣との戦闘を中断した理由は何だったんだい?」
その問いに、綺礼はアサシンが脱落した事を告げる。
「そうか...」
時臣はそう言い、続ける。
「綺礼。もし、もしよかったら...私の代わりにアーチャーのマスターとして聖杯戦争に復帰してくれないかな?」
時臣のその提案を聞いた綺礼は言う。
「ですが師よ、それでは師の聖杯戦争が終わってしまいます。」
しかし、時臣の決意は揺るがない
「もし嫌なら、一時でも良い。少し心の整理をしたいんだ...」
時臣の失意を目の当たりにした綺礼は渋々同意する。
「わかりました。ですが、心の整理がついたら直ぐに言って下さい。」
「ああ、わかった。」
時臣は答え、朝食を食べる事に集中するのであった。
第四十七話
ケイネスに一撃の攻撃すら当てられずに敗北し、おまけに魔術礼装まで破壊されてしまった時臣は、失意に耐えられずアーチャーのマスター権を綺礼に譲渡しました。
今日も駄文にお付き合い頂き、ありがとうございました。