雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら 作:ワカメの味噌汁
雁夜が切嗣の両手を切り落としたことによって二人の闘いの決着が付いたのとほぼ同刻。
セイバーはバーサーカーとの闘いの真っ只中にいた。
このスピード、この技術、それにこの力...
悔しいがどれを取っても私のそれらの数段上だ...
セイバーはバーサーカーの繰り出す斬撃を何とか受け流しつつも考える。
そう、セイバーは数分前の戦闘開始から、バーサーカーの力強く、そして精巧な剣技に苦戦し、防戦一方の闘いを強いられていた。
生前はブリテンの騎士王として円卓の騎士達を纏めた自分がただの一撃の攻撃も出来ない戦いを強いられているとは...
セイバーは思う。
一体バーサーカーは何者なのだ。
セイバーは考える。
聖杯から与えられた情報によると奴の得物はこの国の伝統的な武器である日本刀。しかし、奴の纏っている黒い霧の向こうにぼんやりと見えるはフルプレートだ。
この奇妙とも言える組み合わせには全く覚えがなく、手掛かりになりそうにない。
そんな事を考えながらふと、切嗣が戦っている方を見ると切嗣に残された方の手が切り落とされているのが見えた。
これで切嗣は両手を失い、戦闘不可能になったか...
そして、切嗣が令呪を失ったことで、私達の契約は実質上無効となった...
ハハッ、もう終わりだな。私達は。セイバーは余りにも辛辣な状況に、希望を失った。
せめて...せめて騎士としてランサーとの決闘の決着は付けてからがよかった...
セイバーが絶望の淵でそんな事を考えていると、聞き覚えのある声が聞きこえた。
「セイバー、なにをしている!」
そう、ランサーだ。
ランサーの隣には、ランサーのマスターらしき人物もいて、切嗣を倒した魔術師に何やら話しかけている様子だ。
二人の登場により、セイバーは失った希望を取り戻した。
ケイネスが自身のサーヴァント、ランサーと目的地の戦場に到着した時にはもう、蒼崎雁夜が衛宮切嗣の両手を切り落とし戦闘不能にした後であった。
蒼崎殿が武闘派なのは十分わかっていたつもりだが...
あの魔術師殺しを無傷で倒すとは...
雁夜の驚くべき戦闘能力に、ケイネスはただ驚き、感心するが、本来の目的を忘れてはいない。
「素晴らしい戦闘能力をお持ちのようですな、蒼崎殿。」
ケイネスは雁夜に話しかける。
「いや、それほどでもありません。して、ロード・エルメロイ、何用ですかな?ただそれを言いに来ただけではありますまい。」
雁夜は、ケイネスの目的が他にある事を察して尋ねる。
「いやいや、私自身は大した用にはありません。」
「ですが、蒼崎殿のバーサーカーが今相手にしているセイバーは私のランサーと決闘中でありまして。どうにかセイバーとの戦いを私達に譲ってはくれませんかな?」
そんなケイネスの申し出を聞いた雁夜は一瞬考える。
バーサーカーとセイバーの戦いは明らかにバーサーカーが優勢。このまま放置してもバーサーカーの勝ちは揺るがないだろう...
その点、もしランサーがセイバー討伐に失敗してセイバーの左手の呪いが解けても、バーサーカーが負けることは殆ど考えられない...
また、バーサーカーの使役は大量の魔力を要する...
ここはランサーに任せるが良いか。
「わかりました。この戦い、ランサーに譲りましょう。」
雁夜はそう言って、バーサーカーを霊体化させる。
「そういう訳だ。セイバー。始めようか。」
ランサーは嬉しそうに言う。
「ああ−いざッ!」
そして、セイバーとランサーの決闘が再開された。
第六十四話です。
大まかな流れ(セイバーとランサーが決闘を再開する)は決まっているのですが、なかなか展開が思いつかなく、大変でした。
今日も駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。