雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら   作:ワカメの味噌汁

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第七十三話

聖杯から溢れ出した泥に飲み込まれた雁夜は、自身が見知らぬ南国の島にいることに気がついた。

 

これが...

聖杯の内部か...

聖杯から漏れ出し泥に飲み込まれたのは突然の出来事であったが、度重なる改造により既に人間の域を卓越している脳機能と高速思考を活用して、冷静に自身が置かれている状況を考察する。

 

細部までは考察しきれていないが、大まかな状況は把握しきれた頃、雁夜はある女に話し掛けられた。

 

「おめでとうございます、間桐雁夜。いえ、蒼崎雁夜と呼んだ方が正しいかしら。」

その女、アイリスフィールは雁夜に話し始めた。

 

「ここは聖杯の内部。貴方の願いが叶う場所。」

 

アイリスフィールは澄み渡る星空に浮かぶドス黒い物体を指差し、言う。

「あれが聖杯。」

 

「まだ形を得てはいないけど、もう器は十分に満たされています。」

「あとは祈りを告げるだけで良い。」

「そうする事で、アレは初めて外に出て行く事ができるのです。」

「さあ、お願いします。早くアレに形を与えて下さい。」

アイリスフィールは待ち切れない。と言う風に言う。

 

アイリスフィールの懇願を受けた雁夜は、尋ねる。

「一つ聞いて良いかな?」

アイリスフィールは快諾する。

「ええ。何なりと。」

「お前は...誰だ?」

 

「私はアイリスフィール。アイリスフィール・フォン・アインツベルン。」

 

雁夜は目の前の女がアイリスフィールであるかどうかを高速思考を使用し考え。結論にいたった。

「...いや、違うな。確かにアイリスフィール・フォン・アインツベルンは今回の聖杯の器ではある。」

「しかし、彼女は既に死んでいる。」

「それに、もし何らかの方法で意識を保っていたとしてもアサシン、キャスター、ランサー、そして通常のサーヴァント数騎分の魂の比重を持つライダーを取り込んで自我を保てるはずがない。」

 

「そうね。これが仮面である事は否定しないわ。」

「私は既存の人格を殻として被らなければ、他者との意思疎通が出来ない。」

 

女のその回答に、雁夜は納得し、言う。

「成る程、お前が聖杯の意思か。」

 

聖杯の意思は返答する。

「ええ。その解釈は間違っていない。私には意思があり願望がある。」

「この世に生まれ出たいという願望が。」

 

聖杯の意思の回答を聞いた雁夜は、言う。

「そうか...俺には聖杯に願う望みは無い。」

 

雁夜がそう言ったのを聞いた聖杯の意思は、酷く狼狽し、尋ねる。

「そんな...!?」

「私の唯一の願望を叶えてくれないと言うの⁉」

 

そんな聖杯の意思とは対照的に、雁夜は冷静だ。

「聖杯の内部に取り込まれたのは俺だけではないはず。」

「他の奴に頼めば良いだろ。」

 

「それもそうね...」

聖杯の意思がそう呟いたと思うと、雁夜の意識は冬木市民会館に戻っていた。

 

 

〜おまけ〜

ケイネス先生の場合。

 

「さあ、お願いします。早くアレに形を与えてあげてください。」

アイリスフィールは懇願する。

 

「いや...私には他人の力で叶えて貰いたい願望などないよ。」

アイリスフィールの頼みを否定して、ケイネスは答える。

 

しかし、アイリスフィールも諦めない。

「貴方には、蒼崎雁夜を超えたいという願いがあるはず‼」

 

「確かに蒼崎殿を倒すのは私の目標だが...」

「他人に叶えて貰いたいワケではないのだよ。」

ケイネスはそう答えると、続ける。

「私は...生まれ持った才能で、何をやっても上手く行った。」

「やっと...やっと、努力するべき目標が出来たんだ。」

「それを聖杯に潰させるなどあり得ないだろう?」

 

「わかりました。」

アイリスフィールがそう答えたかと思うと、ケイネスの意識は冬木市民会館に戻っていた。




第七十三話です。

聖杯の内側編でした。
雁夜には願いがなく、ケイネスには願いはあるが、自分で努力して達成したい夢なので聖杯の意識の申し出を拒否しました。

因みにこの二次創作での綺礼の願いは、自分の願望を知りたい、です。

今日も駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
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