雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら 作:ワカメの味噌汁
雁夜の彷徨海での生活が始まってしばらくたったある時、
雁夜は自室の机に座り一枚の紙を前に悩みこんでいた。
成績優秀で、既に天才と認知されている雁夜が何を悩んでいるのか。
その紙は彷徨海在籍一年目の魔術師全員に提出義務がある、研究分野調査用紙である。
肉体改造魔術を研究すると決めていた雁夜であったが、一口に肉体改造と言っても一つではないため直ぐに決めることができない。そう、肉体改造魔術は大まかに二つのカテゴリーに分けられるのだ。
一つ目は筋力強化魔術。主に封印指定執行人志望や何らかの理由で戦闘向きの魔術を行使する魔術師に好まれるこの魔術はその名の通り、純粋に筋力強化魔術に特化している。本来ならば基礎魔術の一つである筋力強化であるが、研究するとなると基礎魔術の域を遙かに超え、高等魔術の一部となる。その効果は勿論基礎魔術としての筋力強化を凌駕し、使用者に莫大な力をもたらす。また、この分野を研究する魔術師は筋力強化をサポートするために筋肉自体を改造することもできる。
二つ目は神経系強化魔術。この魔術は神経系を魔術または肉体改造によって強化するという物である。主に神経系の情報伝達速度を格段に速めたり、脳の情報処理能力を高めたり、本来はあり得ない反射-例えば特定の音に魔術回路が反射して隆起する-などを可能とする魔術もしくは肉体改造を専門的に研究したい魔術師に人気の分野である。
さて、どちらにしようか。
どちらを研究してももう一つの分野を学ぶことができないわけではないが、どうしても分野した方には劣ってしまう。
雁夜の成績を持ってすればどちらの分野を希望しても間違いなく希望通りの研究をすることができる。だが、それも雁夜を悩ませている要因の一つでもあった。
かれこれ一時間以上机に向かって悩んでいた雁夜は、気晴らしにでもするかと思い、その日に届いたが未開封のままであった橙子からの手紙の封を切った。
「雁夜へ
元気にしていますか?彷徨海での生活には慣れましたか?
私は元気にしていますが、貴方が居なくて寂しいです。とても寂しいです。早く貴方の一時帰国の時が来てほしいです。早く貴方に会いたいです。早く貴方と話たいです。早く貴方と…
(中略)
さて、そろそろ本題に入りましょう。
恐らくそろそろ研究選択があると思います。
貴方のことですから色々学びたい事があるのでしょうが、神経系強化魔術を選択してください。前に説明した様に貴方のその魔眼は脳とセットです。ですから脳の処理能力を上げることで魔眼をより効果的に運用する事が出来るはずです。
蒼崎橙子より」
とても寂しいらしい橙子からの手紙には神経系強化を選択しろと書いてあった。
師が言うならばそうなのだろうと思い、雁夜は研究分野調査用紙に神経系強化魔術と記入し、一時間以上も苦しんだ悩みから解放されたのであった。
第九話です。
彷徨海についての設定は全て妄想です。
前に直死の魔眼についてのご指摘を頂いたのですが、本作では、雁夜の母が浄眼持ちの家系出身で雁夜も無意識だったが、浄眼持ちであった。その浄眼が臨死体験によって直死の魔眼に変化した。という設定にすることに決めました。(正直深く考えないで書き始めてしまったんで、この点に関しては見逃してくれると助かります。)理由は後ほどの展開でわかると思います。
これに限らず質問、ご指摘等がありましたら遠慮せずにしてくださると嬉しいです。
今日も駄文にお付き合い頂いたき、ありがとうございました。