今回はかなり短めです。それでは、どうぞ。
ラウラが同居してから数日後。無人機戦の後にすっかり修復されたアリーナにて、ラウラはかほにボコボコにされていた。
「うあぁぁぁぁ!!」
「はっはっはっ! 激情のあまり攻撃が単調だぞ!」
ラウラの専用機『シュヴァルツェア・レーゲン』から放たれるワイヤーブレードを、ラファールを纏ったかほはスイスイと避け、時にはナイフで弾いている。
(攻撃が当たらない! レールカノンは破壊された! プラズマ手刀は距離を詰めるのを許してくれない! これでもまだ己の強さに満足しないというのか!?)
西住かほの強さを知るために模擬戦を挑んだのが、十数分前のこと。手始めにレールカノンを撃とうとした瞬間、ライフルで砲口を撃たれて暴発し、使い物にならなくなった。
遠距離がダメなら近距離でと考えてプラズマ手刀で切りつけようとしたが、瞬時にマシンガンを両手に持って弾幕を張ってきた。迂闊に近付くことが出来ず、近接戦は断念。今はワイヤーブレードで攻撃する手を封じようとしたが、慣れてるかのように避けられてしまっている。
ラウラは、「ある事情」により一時は落ちこぼれと蔑まれたものの、千冬の指導によって頂点へと返り咲き、それ以降強者の立場にあった。故に学園でも敵はいないと思っていた。それがどうだ? いざ上級生と戦ってみれば、自分は手も足も出ない。日本語の教科書にあった「井の中の蛙」と言うのは己のことだったのだと思い知らされた。
「くっ、ううっ……」
今まであった自信がボロボロにされた。どう足掻いても勝てない。一度そう思い込むと、ずぶずぶと負の感情が自身を襲う。
――――力を望むか?
(な、なんだこの声は……?)
――――この力を手にすれば、目の前の敵を打ち負かすことが出来るぞ?
(私は……)
まるで甘美な誘惑だった。もしかしたら、本当に……そう思わせてしまうほどの誘いだった。
だが、練習機であるにもかかわらず優位に立っている先輩を見たとたん、その声は気持ちの悪いものへと変わった。
(断る! 今目の前にいる先輩は、専用機を持たないであの強さなのだ! 私は、私の力で勝ち上がってみせる!)
――――愚かな……。
気付いた時には、機体が解除され、かほに身体を支えられていた。
「大丈夫か? 機体が解除されてもボーっとしたままだから心配したぞ」
「あ、いえ……大丈夫です……」
先ほどの声は何だったのか疑問に感じたが、それよりもシャワーを浴びてスッキリしたい。その気持ちでいっぱいだった。
(そう言えば、ボーデヴィッヒはタッグトーナメントに出ると言っていたな。パートナーは確か、シャルロット・デュノアだったか)
夕飯の後、かほは食器を片づけながら今後の事を考えていた。ラウラは今日の模擬戦がよっぽど疲れたのか、軽くシャワーを浴びるとすぐに寝てしまった。
(それにしても、最後に感じたあの不気味な気配は、一体……)
模擬戦の終盤、ラウラは突然動きを止めてしまい、ボーっとし始めたのだ。それと共に彼女の機体から発せられる不気味な気配に、かほですら一瞬たじろいでしまった。まるで、人間に存在する負の感情を全て含んだような、異様な感じ。彼女はすぐに正気を取り戻していたが、それでも不安が残る。
(私は……何かとんでもないものを引き出してしまったかもしれない)
もし彼女の身に何かが起こったら、その時はその身をもって責任を取ろう。そう決めた彼女の顔は、傍から見れば真剣そのものだった。
読んでいただき、ありがとうございます。少し不穏になり始めました。さて、どうなるか。
それでは、次回もお待ちください。