タッグトーナメント当日。アリーナは悲鳴と喧騒に包まれていた。避難を呼び掛けるアナウンスとサイレンが鳴り響く。
「やれやれ。まさか、VTシステムを実際に搭載するとは、頭のおかしな人間がいるものだ」
楯無と通じていることで極秘事項にも詳しいかほは、この騒ぎの元凶を睨み付ける。
最初は、ラウラ&シャルロットと、セシリア&鈴の戦いであった。代表候補生どうしの戦いだけあって、その戦いは目を見張るものがあり、会場はいきなり盛り上がった。
セシリアが狙撃をしようとするが、ラウラがワイヤーブレードで多方向から攻めて妨害し、鈴がそんな彼女に攻撃しようとすると、シャルロットがハンドガンを両手に持ってパートナーの守りに入る。どちらのタッグも、アリーナでの訓練を見たときは出来ていなかった連携が出来ており、かほも満足そうに試合を見ていた。
しかし、試合後半。鈴がラウラに急接近し、それをAICで止めようとしたところを、何とセシリアがシャルロットの攻撃を掻い潜って距離を詰めたのだ。遠距離攻撃に向いた機体が距離を詰めてきたことに動揺し、その隙を突かれて2人から衝撃砲とインターセプターの攻撃を受けて、機体が解除された。
その時だった。機体が解除されたとたん、泥のような物が彼女を覆ったのだ。その姿は、かつてテレビでも見たことのある姿をしており、かほはすぐに異常を察したのである。
「VTシステムのVは、ヴァルキリーのVだったか? だがあの姿は、ブリュンヒルデの方が正しいだろうに」
避難する生徒やVIPをよそに、独り言を続けるかほ。その視線の先には、パートナーの変貌に戸惑っているシャルロットと、同じように動けないでいるセシリアと鈴の姿があった。
「後輩を守るのが、先輩の役目だからな」
そう呟くと、出撃用のピットへ向かう。そこには千冬と真耶の姿があった。
「出撃するつもりか」
「えぇ」
「許可できんぞ」
「申し訳ありませんが、今回ばかりは不良になります」
「それを止めるのが教師の役目だ」
千冬とかほが睨み合う。2人から発せられる殺気にも似た空気に、真耶は戸惑うばかりだった。
「先生も、あれがどういう代物かご存知でしょう。あれは周りの生徒だけではなく、ボーデヴィッヒすら破壊する」
「だからこそ、行かせるわけにはいかないのだ。確かに私は、お前にラウラの世話を頼んだ。だが、なぜそこまでする?」
「…………」
かほの拳が強く握られる。
「ISとは、人が操るパワードスーツでありながら、人が扱いやすいように、自らのパワーなどを調整する。だがあれは違う! 人の意思を無視し、ただ力を与える存在などパワードスーツに、いや、兵器にあらず!」
かほの目は、今までに無い怒りに満ちていた。その気迫に千冬は目を見開き、真耶は涙目になる。
「何より……苦しむ後輩を見捨てるなど、私には出来ません。これは生まれつきの性分です」
そう言うや否や、ハンガーに掛けられていたラファールを瞬時に纏い、アリーナへと飛び出していった。
「に、西住さん! 待ってください! 戻って!」
「……もう無駄だ、山田先生」
「ですが、危険です! いくら自分の考えを持っていたとしても、相手は……!」
「あぁなった西住は、止めるのが難しい。いや、あの目つきは、もはや相手を倒さない限り止まらないだろう」
千冬は思い出す。彼女がまだ一年生だった頃、自分の攻撃を受け続けてもなお立ち上がり続けた彼女を。汗や涙で顔がグシャグシャになりながらも、『打鉄』の剣を支えに立ち続け、こちらを睨み続けた彼女を。今の彼女の覇気は、あの時に匹敵すると感じていた。
(何が、彼女をあそこまで駆り立てるのだ……)
泥のような物がラウラを包み込み、姿が変わる。手に持っている武器を見て、シャルロットは呟いた。
(あれは……雪片? 確かあれは、かつての織斑先生が……)
彼女も、幼い頃にブリュンヒルデの活躍をテレビで見ていた。だからこそ覚えている。
(まさか、あれは織斑先生を真似して……!)
その時、銃声と共に相手が動き出した。剣を振るうと、何かを弾いたような音がする。
「やはり、弾丸を弾いたか」
「え……? 西住先輩……?」
シャルロットも、目の前に現れた人物の事は知っていた。クラスメイトでありパートナーでもあるラウラの、今のルームメイト。セシリアが「射撃に関して追い越したい人」とも言うほどの実力者、西住かほ。学園の有名人の一人が現れたことに戸惑いを隠せなかった。
「な、何でここに!?」
「ルームメイトであり、一度は模擬戦をしている関係だ。あぁなっては、見過ごすことは出来んよ。何より……」
かほは、相手を睨み付ける。
「アイツは、私にとって非常に不愉快な存在だ……!」
その気迫と目付きに、シャルロットは冷や汗が流れるのを感じた。
次回は、VTシステム戦です。戦闘シーンを書くのは苦手ですが、頑張ります。
それでは、次回をお待ちください。