VTシステムとの戦いが始まった。かほが得意のマシンガンで攻撃をするが、相手は手に持つ刀で弾いてしまう。
(やはり、ただでは食らわないか)
相手はブリュンヒルデ。そう簡単に攻撃を受けてはくれないだろう。そして、超人じみた動きをラウラは強制されている。このままでは精神面だけではなく、肉体面もダメージを受けてしまう。慎重に相手を探る時間さえも許してはくれないようだ。
(……ここは、後輩にも協力をしてもらわねば、救うことは難しい)
刀で斬りかかってくるのを避けると、かほは自分の近くにいる3人に通信を開く。
『オルコット、凰、デュノア、聞こえるか?』
『聞こえておりますわ』
『通信も異常なしね』
『先輩、どうかしましたか?』
『あのブリュンヒルデ擬きを倒し、ボーデヴィッヒを救出する。手を貸してくれ』
かほの頼みに、3人は驚愕する。
『で、ですが、あの姿……織斑先生のコピーですよ!?』
『コピーとはいえ、ブリュンヒルデを相手にするなんて……』
『いくら何でも無茶です!』
ブリュンヒルデこと織斑千冬の名前は大きい。その強さは、選手を引退してからも健在である。セシリア達からすれば、コピーであれ、当時の世界最強を相手にするのだ。絶望という言葉以外に、何があろうか。
『代表候補生がそう簡単に諦めるんじゃない!!』
しかし、かほは諦めかけている3人に一喝した。
『私は、幾度も絶望的な状況に立たされてきた……。しかし、“彼女たち”はどれだけ厳しい状況でも諦めず、私に力を与えてくれた! 私が戦い抜いて来られたのは、私の力だけではない。仲間たちが! どのような状況でも諦めなかった不屈の仲間たちが居たからだ! そして今も、私には仲間たちがいる!』
整備を担当してくれる布仏姉妹、幼い頃から協力し合ってきた楯無に簪、自分に家族の温もりを教えてくれた両親、自分の強さを評価してくれる学園の教師……。かほは前世だけではなく、今の世界における多くの人々の顔を思い出していた。
『相手が強いから簡単に諦めるのか? それを選ぶくらいなら私は……全力でぶつかる方を選ぶ』
そう言い残すと、かほはロケットランチャーを取り出してVTシステムに撃った。当然切り捨てられるが、それによって爆発が起こり、相手の視界が悪くなる。かほはそこを突いて距離を一気に詰めた。
「シングル・ファランクスと言ったところか!」
かほの手に握られているのは、ラファールの拡張装備『クアッド・ファランクス』から流用したガトリングガン。刀を振るうには近すぎる距離で、その引き金が引かれた。
「消えろ、まがい物がぁ!!」
弾丸の雨が放たれ、ラウラを覆う泥がズタズタにされていく。弾が無くなると、銃口から煙が立ち上った。VTシステムはよろよろと立ち上がり、刀を向ける。
(やはり、所詮は過去のデータからコピーした存在。私が1年の頃に戦った先生は、もっと動きが速かった。いくら弾丸を弾けると言えど、至近距離でこれだけ受ければ……何っ!?)
しかし、刀を持つ手をダラリと降ろしたかと思うと、あっという間に泥が再生してしまった。その事に動揺したほんの一瞬で、かほは突きを食らい、壁に叩きつけられる勢いで吹き飛ばされた。
「がっ、はぁ……!」
操縦者を守る『絶対防御』によって致命的なダメージは防げたものの、壁に打ち付けられた痛みは中々消えない。
「まだ、だ……! 舐めるんじゃないぞ、紛い物が……! ボーデヴィッヒも返してもらう……!」
歯を食い縛って立ち上がり、ハンドガンを向ける。VTシステムはかほにトドメを刺そうと、ゆっくりと歩いてくる。
その瞬間、横から飛んできたミサイルによって相手は吹き飛ばされた。
「何っ!?」
ミサイルの飛んできた方向へ目を向けると、そこにはスターライトMkⅢを構えているセシリアがいた。
「シャルロットさん、鈴さん!」
「うん!」
「まっかせなさい!」
シャルロットがマシンガンで、鈴が衝撃砲を撃ち続けることで、VTシステムの動きを制限する。
(私としたことが……相手の姿を見て、諦めそうになっていましたわ!)
(あんだけ言われて指を咥えて見てるだけとか、アタシの性分じゃないっての!)
(ボクも……ラウラを助けたい!!)
「……立ち上がってくれると信じていたよ」
かほが微笑むと、ナイフを展開する。収納していた銃は撃ち尽くしてしまったからだ。
「3人とも、良くやってくれた! 決めるぞ!」
「「「はいっ!!」」」
ブルーティアーズによる一斉射撃、衝撃砲による最大出力の砲撃、そしてパイルバンカーとナイフの一撃。これらを受けた瞬間、4人の目の前は真っ白になった。
読んでいただき、ありがとうございます。
諸事情により、今週の更新はこの話が最後になるかも知れません。ですが、次回を待って頂ければ幸いです。