タッグトーナメント戦から少し経ち、季節は初夏。生徒会室にてかほは……裁縫をしていた。
「よーし、出来たぞ」
「またキズ熊を作ってるの?」
「何を言う楯無。これはキズ熊ではない。『ボコられ熊のボコ』という名前がある」
かほは、前世の影響もあってか戦車や空母のプラモデルを作ることが多い。しかし、学生寮で同室者がいるとなると、接着剤などを使うことに遠慮してしまう。
そこでかほは、IS学園に入学してからは、ワッペンやぬいぐるみを作ることを趣味としているのだ。しかし……
「前作ってたワッペン、あれ何なの?」
「アリクイだ」
「私の知ってるアリクイは、新体操のリボンをクルクルさせていないんだけど?」
「だがアリクイだ」
「会話が噛み合ってるようで噛み合ってない!?」
楯無から見るとそのセンスは独特で、彼女の作品を気に入っているのは、妹の従者である本音くらいだ。なおアリクイの前は、尻を向けているカバのワッペンを作っていた。
「『オイラがボコボコにしてやるぜ!』」
「あの、かほちゃん? ぬいぐるみを動かしながら台詞を言われても……」
「『や~ら~れ~た~』」
「何もしてないのに!?」
クールな印象が強いかほだが、実はこのような可愛らしい一面も持っているのである。
そして、ボコのぬいぐるみを抱きかかえつつ、かほは話しかける。
「楯無。一年生は臨海学校に行ってるんだったな?」
「えぇ、そうよ。今ごろは海で泳いでるんじゃないかしら?」
「……何も起きないことを祈りたいな」
「……そうね。クラス対抗戦にタッグトーナメント、学園の行事があるたびにトラブルが起きている」
「一年生たちは……大丈夫だろうか」
ボコに視線をやりながら話すかほに、楯無はあるものを感じた。
「かほちゃん。後輩の子達を信じましょう?」
「信じる? いきなり何を言い出すんだ、楯無。私は一年生たちのことは……」
「過度に干渉するのは、お節介になるわよ? 実際、どちらのイベントも貴女が介入してるじゃない」
「うっ……」
「時には見守ることも必要だと思うわ」
「……確かにな。私は少し、介入し過ぎたかもしれん」
苦笑いするかほ。ボコを隣に置くと、裁縫道具を片付ける。
「では、後輩たちが実りのある学習をしてくることを期待しよう」
「そうしましょうか」
2人の笑いあう声が、生徒会室を満たした。
後に、千冬からの報告で、天災科学者こと篠ノ之 束がやって来て箒に専用機を渡そうとしたことに、2人は頭を抱えることになる。
ちなみに、本来の歴史で起こるはずだった『銀の福音』の暴走は、IS委員会による抜き打ち検査によってアラスカ条約に違反している事が発覚し、計画は凍結されているのであった。
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