戦車の魂を持つ少女は、大空を舞う   作:G大佐

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憎しみの氷

 アリーナに、銃声が鳴り響く。ぶつかり合うのは、かほとフォルテ・サファイアである。

 

「あんたが、あんた達生徒会が、ダリル先輩を!」

(チッ、こうも恐ろしくなるとはな……。愛とは凄まじいものだ)

 

 鬼のような形相で、専用機『コールド・ブラッド』を操るフォルテ。彼女は、先日スパイ容疑で生徒会に拘束されたレインの相棒であり、恋人である。

 長い間慕い続けていた先輩。やがて愛する人へと昇華し、時には肌も重ねた。

 しかし、そんな幸せな日々も、目の前の女が所属する生徒会によって壊された。

 

「凍れぇ!」

「くっ!」

 

 フォルテの専用機は、冷気を操る能力を持つ。発砲しようとしたライフルが凍らされ、暴発して使い物にならなくなる。

 コンビを、愛する人を失ったフォルテの攻撃は、とても激しいものだった。ライフルの暴発から続けて、つららの弾丸がかほに迫る。

 

「………」

 

 得意のライフル二挺持ちで、つららを撃ち落とす。しかしフォルテも気付いている。かほが撃ちながらも近付いてきていることを。

 

(ラファールに搭載されてるパイルバンカー……『盾殺し』を使うつもりッスか)

 

 鋭くなったその目つきが、かほを捉えている。

 

(かほと楯無コンビは、私たちイージスのライバルだった……。そこまでして私たちを陥れたいんスか!)

 

 強すぎる怒りは、ありもしない解釈を招いた。かほ達は生徒会としてレインを拘束したに過ぎず、イージスを解散させたい為ではない。

 

「凍りつけぇ!」

「っ!」

 

 足元を凍らせ、かほを拘束する。動きが止まったその一瞬に、かほの頭上に氷塊を生成し、落下させた。パイロットを守るために発動した絶対防御によって、エネルギーが大きく減少する。

 

(これで……トドメ!)

 

 動けないかほに向かって攻撃しようとした、その瞬間……

 

「ふんっ!」

「なっ!?」

 

 接近戦を仕掛けたフォルテに、かほは瞬時にダガーを展開して防ぎ、流れるように反撃する。

 

「しゃ、射撃が得意のはずじゃ……」

「確かに得意なのは射撃だ。だが……」

 

――接近戦が出来ないとも不得意とも言ってない。

 

(なら回り込めば……!)

「甘い!」

「っ!? 氷が……溶けてる!?」

 

 脚部のスラスターを僅かに起動させ、熱を放出。内側からジワリジワリと溶かしていたのだ。後ろから仕掛けようとしたフォルテを捉え、ダガーを突きつける。パイロットを守るために絶対防御が発動し、エネルギーが減る。

 

「…………」

「……うっ……」

「……」

「なん、で……何で勝てないんスか……!」

「……」

「イージスは『神の盾』だから……砕かれてはいけないんス……! なのに……なのに……何で生徒会に勝てないんスか!」

 

 大粒の涙をボロボロと溢しながら叫ぶフォルテ。かほは、肯定も否定もせず、ただ黙って聞いている。

 

「ダリル先輩が居なくなって……1人になっても強いんだって証明したかったのに……!」

「……戦うときは1人かもしれない。だが、支える者は居る」

「え……」

 

 一言だけ呟くと、呆然と立ったままのフォルテを背に、アリーナを後にした。

 

 

 

 

 

「……憎まれ役、やらせちゃったわね」

「気にしないでください、ベルベット先輩」

 

 夕方の廊下でかほに声をかけたのは、ベルベット・ヘル。3年のギリシャ代表候補生だ。

 気分が沈んでいるフォルテをどうにか元気付けられないかと相談し、その結果、かほが戦うことになったのだ。

 

「元から生徒会を憎んでもいたようですし、体動かせばスッキリするでしょう」

「……私はダメね。どう声をかければ良いか、分からなかった」

「彼女は周りが見えていなかっただけです。きっと、今なら……」

 

 かほは、俯くベルベットを通りすぎていった。

 




読んでいただき、ありがとうございました。次回もお待ちください。
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