戦車の魂を持つ少女は、大空を舞う   作:G大佐

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お待たせしました。今回は百合回です。それでは、どうぞ。


少女2人は伝え合う

 青空の下に楯無は立っていた。

 

「ここは……どこ?」

 

 侵入者と戦っていた所までは覚えていた。だがなぜ野外に居たのかが分からない。

 すると、何か歓声が聞こえた。

 

「……?」

 

 何やら競技が行われているようだ。モニターに映る光景に、人々は歓声を上げている。

 

「何あれ……戦車?」

 

 モニターの向こうでは、第二次世界大戦時の戦車たちが撃ち合っている。だが、うっすらと見えた彼女の姿に驚いた。

 

「かほちゃん!?」

 

 いつもよりも大人っぽい姿だが、その顔は確かにかほだった。楯無は大急ぎで、選手がいるであろう場所へと走る。

 

『リー、ナイス砲撃だったな』

『ありがとうございます、Ⅳ号さん!』

『相変わらずⅣ号の射撃の正確さは化物じみてるな』

『砲手と装填手の実力だよ。お前の方も良い腕してるじゃないか、三突』

 

 独特な格好をした女性たちと共に、かほは談笑している。楯無は、なぜここに居るのか尋ねようとした。

 

「かほちゃん! 何でここに……」

 

 だが、他の女性が楯無をすり抜けた。よく見ると、自分の体は透けている。

 

「どうなっているの……。うっ!?」

 

 すると、目の前が真っ白になる。

 目を開けると、今度は倉庫らしき場所にいた。かほは戦車に寄り掛かっている。

 

『死期を悟るとは……こう言うことだろうな……』

「え……?」

『なぁ、みんな……。ここの人たちのことを……頼んだぞ……』

 

 かほは微笑みながら消えていく。

 

「い、嫌! 逝かないで、かほちゃん!」

 

 かほに向かって手を伸ばす。再び目の前が真っ白になり―――

 

 

 

 

 

「かほちゃん!!」

「うおおっ!?」

 

 ベッドから楯無が飛び起きる。突然のことに、かほも驚いた。

 

「ここ、は……医務室?」

「かた、な……刀奈!」

「わっぷ!」

 

 自分のいる場所が医務室だと理解した楯無だったが、かほが喜びのあまり抱きついてきた。

 

「かほちゃん?」

「本当に……目が覚めて……良かった……!」

 

 すぐに彼女の様子がおかしいことに気付いた。かほは肩を震わせ、泣いていたのだ。

 

(あれは夢? でも、あれは確かにかほちゃんだった……)

 

 ふと、楯無は思い出す。中学生の時に起こった、かほの錯乱。今でこそ落ち着いたが、あの錯乱の後に彼女は大人っぽさに磨きが掛かったのだ。

 

「……ねぇ、かほちゃん」

「どうした!? どこか痛むのか!? それとも腹が減ったか!?」

 

 心配のあまり、普段とは違い楯無をやたらと心配するかほ。そんな姿に苦笑しながら、首を横に降る。

 

「不思議な夢を見たの。かほちゃんそっくりな女の人が居てね? その人は、Ⅳ号って呼ばれていたの」

「っ!」

「かほちゃん。中学の時の事と、私がみた夢、偶然とは思えないの。……何を隠してるの?」

「そ、それ、は……」

 

 かほは珍しく動揺している。目が泳ぎ、口は何か言葉を紡ごうとパクパク開いたり閉じたりを繰り返している。

 沈黙が続いた後、かほは決心したように見つめる。

 

「……到底、信じられない話だぞ」

「構わないわ。貴女のことを知りたいの」

 

 そして、かほは遂に語り出す。自分の正体を、前世での『西住』とは自分にとって特別な名前であると言うことを、全てを語った。

 

「―――と、言うことだ」

「まるで、漫画みたいね……。戦車の魂が女の子に生まれ変わるなんて……」

「だが、私は前世の記憶があり、そして西住かほとして存在している。それは事実だ」

「……ねぇ、かほちゃん」

「何だ?」

「私が見た夢で、かほちゃんは他の人たちに、様々な人たちの事を託したわ。……死んじゃって、後悔は無いの?」

「有るわけ無いだろう。命を持つ者は、いつかは終わりを迎える。私も、前世では長いこと動いた。寿命を迎えるのは自然なことだったのさ」

「そう……。もう一つ、質問いい?」

「おう、構わんぞ」

「貴女は……生まれ変わって嬉しい?」

「…………」

 

 夕焼けの医務室に沈黙が訪れる。目をつむるかほは、思いを巡らせているようだった。

 

「全てを思い出したときはとても辛かった。だが、刀奈やみんなと出会えて、後悔したことなんか無いさ」

 

 微笑みながら答えるその姿は、夕焼けも相まって美しいものだった。

 

 

 

 

 

 その後、保険医に今日一日の安静を伝えられ、かほがその付き添いを引き受けた。

 

「今日は随分と積極的ね?」

「そうか?」

「かほちゃんなら、『それくらい自分でやれ』とか言いそうだもの」

「お前なぁ、私がどれ程心配したか……」

「ありがとう」

 

 突然のお礼に、かほの動きが止まる。

 

「かほちゃんの最期、見ちゃったから……。かほちゃんが、居なく、なっちゃうんじゃないかって……!」

 

 ポロポロと大粒の涙を流す楯無。

 

「私、私……!」

「私だって怖かったんだ!」

 

 保健室に大きな声が響いた。今度は楯無がポカンと固まる。

 

「お前が死んだらって思うと……怖くて仕方がなかった! 私は……お前が……!」

 

 互いに涙を目に浮かべながら、告白し合う2人。

 

 やがて2人は少しだけ見つめ合うと……唇を重ねた。

 

(あぁ、私は気付かぬ内に、刀奈の事が……)

(かほちゃんの事が……)

 

((好きだったんだ……))

 

 2人はずっと、唇を重ね続けた。

 




読んでいただき、ありがとうございました。
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