正直、セシリアを強化し過ぎたかもしれない……。
それでは、どうぞ。
セシリア・オルコットには、両親が居ない。
それは、まだ自分が幼かった頃のこと。両親は仕事の関係で自分を家に置いていき、そして列車事故に巻き込まれた。
泣いた。自分を愛してくれた両親が突如消えてしまったことに。
そして怒った。唯一自分の事を案じてくれた、とある親戚からの情報によって。
『君の両親は、殺されたんだ』
その後、その親戚は
ある時、自分が最も信頼しているメイド、チェルシー・ブランケットから真実を告げられた。
彼女には、エクシア・ブランケットという妹がいるのだと言う。その少女は心臓に病を患っており、それは当時の医療技術では助かる見込みは絶望的であった。
しかし、彼女は延命に成功した。
そしてそれを行なったのが、セシリアの両親であった。だが、そうするしか無かった。どの医者にも首を横に振られ追い詰められた二人は、悪魔に魂を売るしかなかったのだ。
そして、エクシアに埋め込むISコアを提供した悪魔が、『
裏切られた両親は、政府にかの組織の存在を密告しようとした。オルコット家は名門貴族である。だからこそ、耳を貸してくれるだろうと。
しかし、その密告先までもが、悪魔の手先だったのだ。
両親は列車事故の巻き添えという形で、暗殺された。
この真実を知ったとき、セシリアの中の“何か”が切れた。
『お父様とお母様を……叔父様を奪った輩を…………チェルシーを悲しませるものを……絶対に許しませんわ!!』
そこからである。彼女が強さを、力を渇望するようになったのは。
代表候補生になるまでの間に、どれほど吐き、どれほど泣き、どれほど血まみれになったことだろう。貴族嫌いの候補生から、陰湿な苛めを受けたことだってある。
だが、彼女は折れなかった。両親と叔父の仇を取るために、他人の不幸を蜜とする役人を討つために、エクシアという少女を救うために、ひたすら訓練を重ねた。
そして、IS学園の見学の時に、彼女は自身のプライドを撃ち砕かれた。
『何ですの……あれは……!』
次々と表示される電子ターゲット。その的は、アーチェリーの的のように必ずしも中央が高得点とは限らない。不規則に表示される最高得点を、その生徒は次々と撃ち抜いていく。
反応速度も素晴らしい。ターゲットが表示され、狙いを定め、引き金を引く、そして次の弾をリロードする。これ等を一瞬のうちにやらなければならず、しかもターゲットは後ろや上空にも表示されるのだ。その生徒は、そんな人間離れともいえる早業を軽々とこなしている。
『すみません! あの射撃をしている生徒は、どういう方なんですの!?』
『西住さんですか? 彼女は、一年生の中でもトップクラスの射撃センスを持っていて、元から腕は良かったんですが……さらに訓練を続けていたようですよ』
『西住……』
自分が入学したら、きっと先輩になるであろう人物。射撃を続ける彼女は、まるで的という存在にのみ集中しており、自分も含めた見学生の視線すら感じていない雰囲気を思わせた。
(才能だけではない……! 才能を持ちつつも、それに驕らず、訓練を……それも過酷な訓練を続けてきたと言うのですか……!)
そして、口角が上がる。
(やはり、学園に見学に来て正解でしたわ! 上には、やはり上がいる! あの方をも越えられない限り、私は亡国機業を討てない!)
足りない、足りない、足りない!
もっと、もっと、もっと!
その感情だけが、帰国してからの彼女の動力源となったのだ。
生徒たちが訓練で使うアリーナ。入学式が終わったばかりの頃は、一年生が慣れない操作に戸惑いながらも、機体を動かそうとする光景があった。しかし、一週間も過ぎると、上級生が訓練機を使うようになってくる。
そんなアリーナだが、今は他の生徒たちが、静かに“二人の戦い”を見ていた。
「っ! …………! っ!」
「…………! っ! っ!」
二人は会話をしていない。集中しているからだ。次々と表示される電子ターゲットを、セシリアとかほは撃ち抜いていく。
「ねぇ、あれって射撃訓練の中でもとびきりハードな奴じゃなかったっけ?」
「うん……。表示間隔は短いし、200個という的を撃ち抜かないといけないの」
「あの専用機持ちの子、西住さんとほぼ互角の勝負してるんだけど……」
「今年の代表候補生……ヤバいかも」
199個目の的を撃ち抜き、残り1個。偶然にも、両者の的は背後に現れた。
(そこ!)
「っ!」
二人が同時に引き金を引き、得点パネルが撃ち抜かれる。そして、リザルトに入った。
西住かほ……100点×200個
セシリア・オルコット……100点×195個、95点×4個、80点×1個
「……私の、負けですわね」
「だが、いい勝負だった」
かほが手を差し出す。セシリアもそれに応じ、力強く握手した。
「私は、大切な人のために、私に着いてきてくれている人のために、ひたすら強さを求め続けますわ。いつしか貴女を追い越して見せますわ」
「ふっ、私とて誇りというものがある。そう簡単には越させないさ」
二人は、アリーナにいる生徒たちからの歓声と拍手を浴びながら、不敵な笑みを交わすのだった。
~おまけ~
汗をかいた二人は、寮の大浴場に入ることにした。お嬢様なセシリアだが、「日本のセントーというものに興味がありますわ!」という理由もあるそうだ。
だが、更衣室で服を脱いだ際に、それは起こった。
「ふぅ……。どれ、汗でも流し……て…………」
「……? どうかしましたか?」
かほの目が、驚愕によって見開かれる。
(ISスーツを着ている時点で分かってはいたが……デカい!)
かほは自分の胸を見る。
人はそれを、まな板、もしくは絶壁という。
「……お前の勝ちだ」
「何がですの!?」
落ち込むかほと、それに慌てるセシリア。そんな奇妙な光景があったそうだ。
読んでいただき、ありがとうございました。
前書きでも言いましたが、セシリアを強化し過ぎたか……?
ま、まぁとりあえず、次回をお待ちください。