「という訳で、ラウラと共に暮らしてほしい」
「何が『という訳で』ですか?織斑先生」
かほと楯無の部屋に千冬とラウラが訪れ、いきなり「ラウラの世話を頼みたい」と言ってきたことに、冷静にツッコミで返すかほ。もちろん理由は説明されたが、それでも突然すぎることに、かほはジト目で千冬を見る。なお、今はプライベートモードなのか、ラウラの事を名前で呼んでいる。
「確かに私たちの部屋は広いですから、もう一人暮らす分には問題ありませんよ。ですがね先生、何事も事前連絡が必要だと思いませんか」
「楯無には連絡しておいたぞ」
「私に連絡が行ってなかったら意味無いでしょうに!」
そしてかほは、チラリとラウラを見る。二人の会話について行けてないのか、ポカンとしていた。
(顔写真だけだったから身長まで分からなかったが、随分と小柄だな。それでも隊長の座に上り詰めるとは、相当なものだろう)
「ラウラ。お前の同居人となる西住かほだ。お前の先輩に当たるのだから、敬語でな」
「ら、ラウラ・ボーデヴィッヒ、です……。よろしくお願いします……」
上級生と接することが無く、どちらかと言うと上の立場にいることが多かったため、慣れない敬語で挨拶し、ぺこりと頭を下げる。その様子に、かほは不思議な気持ちになった。
(何というか、幼い子供を見ている気分だな)
そう思いつつも、返事をするのを忘れない。
「西住かほだ。よろしく頼む。同居人がもう一人いるが、来たら紹介しよう」
「は、はい」
こうして、ラウラとかほ、そして楯無との生活が始まった。なお、かほの同居人が楯無だと知り、ラウラは仰天する。
(ろ、ロシアの代表であり生徒会長の、更識楯無だと!?)
彼女は、少しでも試合に勝てるように、どの国の代表候補生が学園にいるのか調べてはいた。その中でもインパクトが強かったのが、その若さで代表になった楯無だったのである。
だからこそ疑問に残る。楯無が千冬の特訓を生き抜いたのは分かる。だが、代表候補生でもない西住かほとは何者なのだろうか。
「うふふ、かほちゃんは強いのかって思ってるでしょ?」
「っ!? そ、それは……」
「顔に出てたわよ~? 疑問に答えるなら、強いわよ」
「生徒会長がそう言うほどとは……。では何故、代表候補生に選ばれないのです?」
「違うわ、ボーデヴィッヒちゃん。選ばれないんじゃないの。かほちゃん自身が、専用機を貰うのを拒んでるのよ」
「代表候補生になるのを拒む……!?」
信じられなかった。ISに乗るというならば、専用機を貰えるというのは名誉な事である。だというのに彼女は拒んでいるのだという。
「信じられない……。ならば彼女は何を求めているのです?」
「“強さ”だそうよ。まだ専用機を貰えるほどに強いとは思ってないから、今はまだ代表候補生にならないんですって」
「強さ……」
かほの方へ視線を向けると、彼女は歌を口ずさみながら夕飯を作っている。今はソーセージ、ジャガイモ、玉葱、人参をコンソメスープの素で煮ているようだ。
「あの歌は……パンツァーリート?」
「あら、やっぱり知ってたのね? かほちゃん、意外と戦車が好きでたまーに軍歌を口ずさんでるのよ。どこで覚えたのかしらね?」
よく見ると、彼女の机には戦車に関する書籍が置かれている。ISが主役となったこの時代、戦車や軍艦というものは、あくまで備え付け程度の存在にしか見られていない。ISだけあれば十分と思っている女性もいる中で、かほは珍しく他の兵器にも興味を向けているのだ。
(本当に何なんだ、この女は……)
ラウラの中で、かほに対する疑問が大きくなった。
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