人理修復を終え、17歳から学生生活を送るようになったわたしとマシュ。お偉いさん方への説明に3か月ほどかかって、わたしたちは晴れて普通(?)の学生としての時間を取り戻せたのである。
まあ、失った1年は、マシュ一緒にいるということで、これから取り返していこう。
そう決めて、入学して、偶然マシュと同じクラスになったが、そのおかげか、友達作りを疎かにしてしまった。違うクラスになったら、それはそれでいやだったし、そこはいいだろう。
ちょっとオタクな趣味があって、腐のグループに連れていかれかけたが、わたしのバイト先の息子さんの南雲くん、そしてその友達(お世話役みたいになりつつある)の香織、雫と一緒にいることが多い。
香織は南雲くんに好意があるようだが、南雲くんはいつも割と露骨なアピールをされているのに気づいていない。ここはニヤニヤしながら見守っておこう。
香織も雫も、男子人気も女子人気も高いため、クラス中から冷たい視線が南雲くんに浴びせられ、当人は困っているようだ・・まあ、頑張れ・・・南雲くん、香織・・。
ちなみに、マシュはわたしの嫁√しかないので、嫉妬なんてさせない。
「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」
「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」
一体何が面白いのかゲラゲラと笑い出す男子生徒達。
南雲くんに話掛けてきたのは、檜山大介といい、毎日飽きもせず日課のようにハジメに絡む生徒の筆頭だ。近くでバカ笑いをしているのは斎藤良樹、近藤礼一、中野信治の三人で、大体この四人が頻繁に南雲くんに絡む。
南雲くんへの嫉妬の結果がこれだ。実際は、わたしも一緒に南雲くんのお母さんと仕事をしていたのだが、彼らがそれを知る由もなく。
結局、一徹くらい大丈夫と思って寝ずにVRマシュをしていたわたしに一番ダメージが入っていた(実は鞄の中にも隠して入れてある)。
「南雲くん、おはよう!今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」
いつも通り、香織が声を掛ける。うん、ここで落ち込んでマシュにフォローされたら何も言えない・・・仕方ない。
「昨日はお疲れ様です!」
「おはよう白崎さん。あと、藤丸さん・・職場じゃないから公私混同しないで・・」
疲れ果てた表情で、南雲くんは机に突っ伏した。
これで完璧だ・・いつも通りを装いつつ、南雲くんのフォローもする。
「大丈夫です、ハジメさん。昨日、VRマシュをしてる人もましたから///」
赤面しつつそう言ったのは、マシュだった。
そういうフォローの仕方は間違ってるよ、マシュ・・。実際してないからね・・。
・・・?何でそのことをマシュが知ってるの!?
そして、マシュの右手には、わたしがアイマスクと称して持ってきているそれを右手に持っていた。
「「「「VRマシュ!!??」」」」
「何故そのことを知っている!?」
クラス中の視線が、一気にわたしに集まる・・が、私がその視線から目を逸らすと、「またアイツか・・」とでも言うような、大きなため息が漏れた。
「先輩のことは何でも知ってますから・・・」
と微笑む純粋な笑顔の中は、狂気に染まっていた・・・。
その発言に、今度は教室が凍り付く。
「な、南雲くん・・・。毎日大変ね・・・」
「香織またそんなヤツの世話焼いてるのか?香織は優しいな」
「まったくだ。やる気のないヤツにゃあ何を言っても無駄だと思うけどなぁ」
雫がそう切り出すと、天之河くん、坂上くんと続く。坂上くんは、努力や熱血、根性といった言葉が好きで、いつも寝てばかりの南雲くんは気に入らないらしく、フンっと鼻で笑って興味がないように無視した。
「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。はは、まあ自業自得とも言えるから仕方ないよ」
「わかっているなら直すべきじゃないか?いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ」
天之河くんにこう言われるも、〝趣味の合間に人生〟を座右の銘とし、親の元(母は売れっ子漫画家で、わたしと一緒に手伝い。父はゲームプログラマーで、こちらも手伝いをしている)で即戦力級の技術を持っている将来安定の南雲くんは、苦笑いをするのだった。
「あはは・・」
(もういっそ、こいつら異世界召喚とかされないかな? どう見てもこの四人組、そういう何かに巻き込まれそうな雰囲気ありありだろうに。……どこかの世界の神か姫か巫女か誰でもいいので召喚してくれませんか~~)
ハジメがそんなことを考えていると、地面が光り、魔法陣が完成していた。
(先輩、魔術でしょうか?見たこともない文字ですが・・・召喚に似た感覚があります)
(わたしも魔術にはそこまで詳しくはないけど、召喚?・・あとは拘束?マシュ、警戒して)
わたしたちは全員、金縛りのような状態になっていて、体の自由が利かない。
クラスの担任で、マスコットのような存在の愛子ちゃんこと、愛子先生が、
「皆、教室から出てください!」
と叫びながら駆け寄ったのと同時に、光がわたしたちを包んだ。
備品やら鞄やらを残して、わたしたちは姿を消した。
その後、神隠しとして大事件となり、神秘の隠匿のため、魔術協会の仕事が増えたのは、別の話である。