その拳はハジメに
ハジメの姿が影のように消えて、檜山の拳が空を切る。拳が当たる前にハジメが尻餅をついたのだ。
落雷のような轟音と鏡に反射したような光が急に発生して、尻餅をついたのだ。
「どうした、何があった!?」
轟音を聞いて駆け付けた人たちが「敵襲か!?」と叫んだり、「またフジマルが何かやらかしたか!」と嘆きながらその場にたくさん人が集まる。
「い、いや、俺たちはただ訓練してたら急に・・・」
檜山たちがたじろぎながら答えた。そのあと、事情聴取をされた。だが、自分たちも何も知らないで急に発生したので、すぐに解散になった。
身体が重かったので、座り込むと、余計に重く感じてそのまま図書館で眠ってしまった。
「南雲くん、大丈夫だった!?」
その夜、全員で集まって話し合いになり、話を聞いた瞬間に香織がハジメに駆け寄った。ハジメが図書館で倒れていたと聞いて全員が集まったのだ。
「うん、大きな音と光が発生しだけで、僕には特に何の影響も・・・・」
言い切る前に、ハジメはその場で倒れてしまった。倒れる前に覚えているのは、床にぶつかって痛かったことだ。
「「「南雲(くん)!?」」」
派手に倒れたのでよく視ると、どうやら魔力の大半を使ってしまったようだ。重症じゃなさそうでよかったが、今回の件は、南雲くんが発動させたのだろうか。
「香織、魔力が切れちゃっただけっぽいから。それ以上締め付けたら逆に南雲くんが・・・」
焦って南雲くんを揺さぶっていたせいで、余計に顔色が悪くなっていた。
魔力吸収を応用した魔法陣を使って、魔力を与え、香織が治癒すると、顔色はみるみるうちによくなっていった。
「で、何があったの?」
雫が、檜山くんたちに視線を向けると、説明を始めた。その話によると、4人で南雲くんの訓練を行っていたところ、急に光と音が発生したらしい。でもおかしいな・・・音はともかくとして、南雲くんに
「ふぅん・・訓練、ねぇ?」
雫は視線を鋭くし、今度は訝しむような視線を向けた。でも、魔力だけこんなに減らすほどの、スパルタ訓練は思いつかない。やっぱり、南雲くんが自分で発動させたのだろうか。
「訓練するのはいいけどオーバーワークは身体を壊す。しっかり南雲の体調のことも考えろ」
対照的に、一切疑いを持っていない天之河くんが、注意する。
「南雲がこんなになるまで必死に訓練してたはな・・・・。図書館に籠りきりだと思っていたが、見直したぜ」
と、続いて坂上くん。そんな感じではなさそうだけど、ここは黙っておくことにした。
さっき視たときに、南雲くんから誰かへのパスが繋がっているのを感じた。
ということは、ゴーレムでも錬成したのか、それとも・・・・・いや、それはないだろう。異世界まで来て、
あれ、今のセリフめっちゃフラグっぽいな・・。
「先輩、さっきの南雲さんは・・・」
マシュも気づいていたようだ。もう一度、今回の件について詳しく調べてみる必要がありそうだ。
「あの、立香ちゃん僕、南雲くんから幽霊みたいな気配を感じて・・・」
後ろに立っていた恵里が、震えながらそう呟いた。想像しうる限り、最悪な事態かもしれない。
この幽霊が、英霊だったとしたら、南雲くんの魔力だけでは召喚できない。つまり、
「そうなんだ・・・怖かっただろうに、わざわざ伝えてくれてありがとう、恵里。でも、わたしが見た限り、悪霊とかじゃなさそうだし、大丈夫だと思うよ」
何かに取り憑かれたり、悪霊の気配なんかを感じなかったのは事実だし、あまりこの件に深くかかわらないようにしておかないと・・・。
「え、立香ちゃんも幽霊が見えるの!?」
あ、ヤバ。マシュ・・・はもう部屋に戻ってるか・・・。何とか誤魔化さないと!?
「いやぁ、ほら、その、霊感的な・・・・」
多少なりとも魔術に手を染めた人間として、こんな事態にまで巻き込むわけにはいかない・・・。
わたしは、へたくそな言い訳をして、その場から立ち去ろうとする。
「ちょっと待って!怖いから、今日は寝るまで一緒にいて?」
ボクっ娘との朝チュンイベントか!?と一人で盛り上がっていたが、ずっと話を聞いて、寝落ちしてしまった。
翌日、南雲くんの右手を見ると、
よくよく考えると、魔術回路もないのに、令呪が浮かぶわけもなかったのだ。
なら、何かとパスが繋がっているのは、恵里が幽霊を見たのは、一体どういうことなんだろうか。魂でも錬成したのだろうか。如何に神代とはいえ、そんな魔法はトータスの神代魔法くらいでしか、聞いたことがない。