シナノは全13話、もう少しで完結なので極力短いスパンで書き上げたいなと思いつつ、忙しくなったら難しくなりそうな……。
という事で12話です。毎回完結前になると畳み方に悩みます……。
では、よろしくお願いします。
「右舷に敵砲被弾!」
「ダメージコントロール、甲板の武装は生かせよ!」
「戦闘継続できない艦はすぐに下がらせるんだ、いいな!」
友軍を従えて先陣を切るゲルバデス級のモニターの一角には、仲間を救うべく留まり続ける旗艦の姿が映されている。
――やはり、見立て通りだ。
微笑んだ指揮官は足を踏み出す。
「我らの同胞を救わんとするシナノを守るのが我々に課せられた使命だ。必ず持たせるぞ」
両舷や艦底部から煙を引きながら、それでも足と砲撃の手を緩める事なく突き進む艦に続くように、単縦陣でガミラス艦隊が敵の喉元に肉薄しつつあった。
後方からゲルバデス級の前に躍り出たコスモタイガーの編隊が放った魚雷とミサイルが行く手を阻む敵艦を沈め、破片を艦体で押し退けてガミラス艦隊が進む。
敵の攻撃は、間違いなくガミラス艦隊に向いている。
そのはずだったが。
「本艦隊の後方に抜けられました!」
「なんだと⁉︎」
「我が方の攻撃の目が向いていない敵艦隊最外周を大きく迂回して抜けたようです!」
「囮になったつもりが……囮に引っかかったということか……!」
「本艦に接近する艦あり、数5!」
艦橋に響いた夏姫の声に思わず立ち上がる。
「無人艦の目標を接近する艦へ、艦首に波動防壁集中展開! 迎撃用意!」
沙耶の指示で指向した砲身が一斉射を行う光が窓に入り込む。
「弾着します!」
シナノの甲板から炎が噴き出すのと同時に、砲撃が命中した敵艦が爆散する。
「被害報告!」
「波動防壁貫通。艦首パルスレーザー、1番と3番が大破! 甲板下、第四層まで貫通されています!」
「くっ……ダメージコントロール、負傷者の確認を。急いで!」
「射撃継続! 数を減らせ、ガミラス艦のダメージも限界を超えるはずだ!」
尊の指示で砲撃と共に放った艦首魚雷は彼方まで届き、いくつかの爆発を起こした。
――まだ、動けない。
モニターに映る救助隊からの信号は、今も無いまま。
――私はまた、救えないの……。
「技師長、無人艦とシナノの射撃システムを一緒にできますか?」
視線を上げると、戦術長はまっすぐ前を見つめたまま。
「なんのつもり?」
「無人艦の自動照準ではガミラス艦を支援できません。本艦からの手動照準で、前方のガミラス艦を支援します。それと、シナノの主砲の代わりを勤めてもらう」
「……全部を、手動で?」
「僕がやります」
「負担が大きすぎるよ」
振り返った彼の瞳は、以前より力強く、まっすぐに見えた。
「仲間をみんな救うなら、そんな事は言ってられません」
「うん、だから私でもサポートする。後方は任せて」
「お願いします。……いいですね、艦長」
「ええ。もちろんよ」
直後、通信席に通知が鳴り響く。
「救助隊から一報。『負傷者を連れて帰還する。他生存者の救出のため内火艇を2隻要請する』以上です!」
――届いた。やっと、私にも……!
「シーガル受け入れ用意! 内火艇を即時発進、生存者を救出します!」
入れ替わりで飛び立つ内火艇の脇を抜けて着艦したシーガルはエレベーターを降りて格納庫に入る。
管制室からその連絡を受けた沙耶は、大きく息を吐いて目を開けた。
「生存者収容と同時に空母2隻からの波動砲をもって突破口を開き、本艦は無人艦を引き連れ最大速力で敵艦隊を突破。要塞へ肉薄します」
振り向いて言葉を聞く面々が静かに頷く。
それに表情が緩んで、言葉が砕ける。
「また、無理をさせるわ」
「いいんだよ。艦長なんだから、うちらに無理言ってなんぼでしょ。やるよ、航海長。うちは、アンタのこと信じることにしたんだ。できるだろ」
「……やってみせます」
「おうよ。エンジンは任せな」
「機関長、エンジンですが、僕に考えがあります」
立ち上がって会話を止めた尊は、沙耶を見つめていた。
――いい目になったわ、彼も。
「作戦、聞かせて」
数多の光が瞬く。
隊列を組んで突き進むガミラス艦は徐々に炎に包まれていった。
それでも仲間のために盾となり続けた彼らは、そこに見えた光をなんと思うだろう。
目を見開き、背後からやってきたそれを見る。
既に機関は満足に動きはしない。
回避は不能。だが不思議と、逃げようとは思えなかった。
なぜかは彼らにも分からない。
ただ、それが直撃しない事だけは、理解できた。
艦隊のすぐ後ろで眩い光と共に分裂したそれは、周囲を火の海に変えていった。
その光景を遮るように艦隊のすぐ上を通り抜けた巨艦の影は、あの時見た”英雄”と重なっていく。
――また、アレに救われるのか。
――また、ともに戦えないのか。
「入電!」
「読み上げろ」
「『動ける艦は、動けない艦を曳航して撤退せよ。ここから先は――」
接近してきた空母に曳航されていくのがわかる。
既に遠く離れたその影に手を伸ばし、拳を握った。
――再び託そう。我々が信じた、あの艦に。
「『ここから先は、シナノが引き受ける』」
使える全ての火力を投射しながら最高速で進む艦の傍には、2隻の無人艦が砲を放ちながら同航する。
無人艦の主砲は不規則な指向と発砲を繰り返していた。
それは戦術長の席のパネルに随時手動で入力されたポイントに砲撃しているためであり、忙しなく目と手を動かす彼の姿があった。
「敵要塞まで、あと10分!」
「シナノ、無人艦共に徐々に被弾が増えています。本当に……」
「今速度は落とせない。エネルギー消費を抑えないと……」
沙耶が答えた直後に感じた衝撃と同時に、飛行甲板を含めた複数箇所から炎が噴き出る。
「航空隊はガミラス艦隊の撤退支援を徹底して! 本艦がどれだけ被弾しても、こっちに一機も来させないで」
――そう、これでいい。
拡散波動砲で開いた突破口に向かって、救助を終えたシナノが最高速度で突入すること。
提案された作戦は、これを行う事で敵の目をシナノに引きつける事であった。
その通り、残っている敵の攻撃は着実にシナノへ集まりつつある。
「艦長、エンジンがヤバいぞ! いつ溶け出すかわからん!」
「機関科クルーは退避、エンジンの出力はそのまま。もう少し耐えさせて」
「また無理言ってくれる……やってみるけどさぁ!」
モニターに向き直った蓮は、機関をモニターから遠隔操作できるように切り替えた。
シナノが通り過ぎた場所には、シナノを見失った敵艦が指向して攻撃を加え始めていた。
その盾となった地球空母2隻の上方から、ミサイルや魚雷が降り注ぐ。
そのまま下に抜けた編隊は地球機とガミラス機で構成された即席の小隊を組んでいた。
機首を上に向けると同時に放った第二波で後続の艦のエンジンにダメージを与え、背後から来た艦砲によって動けない艦は藻屑と化した。
その背後では、損傷したガミラス艦のうち兵装が使えるものは地球空母と共に支援攻撃を行い、損傷の大きな艦は放棄されていた。
ガミラス指揮艦のゲルバデス級はガイペロン級と共に退艦した者たちを収容すべく行動を行なっている。
「旗艦はどうなっている」
「健在です。敵の包囲前に艦隊を突き抜けているようで、包囲もされていません」
「どこへ向かっているか分かるか」
「……現在位置からでは、把握できません」
「そうか……」
直後、扉が開く音と共に多くの足音が鳴り響いた。
それは共に戦ってきたガミラスの兵士達。
「艦長。我々はまだ動けます」
「今度こそ、共に肩を並べて戦いましょう。あの艦と」
「……しかし、君たちは」
打診してきた兵士の半数は怪我を負い、満足に艦を動かせる状態ではない。
前線にいたゲルバデス級の損傷はガイペロン級より激しく、動かした場合の運用は通常より難しい。
それは彼らの方がよく理解しているはずだ。
目を見た彼は、その力に負けた。
「……わかった。ただし、負傷している者は艦を降りるんだ。動けない艦の生存者はこの艦に集めてくれ」
数分後、飛行甲板からガイペロン級に向けて飛び立った機体を見送ったゲルバデス級は、飛行甲板を回転させながら加速をかけた。
地球空母の護衛を行なっていた無傷のデストリア級、ケルカピア級がそれに追随し、損傷はあるが自力航行可能なメルトリア級が最後尾について主砲塔を指向させる。
損傷の激しい艦や速度の落ちた艦は突然回頭を始めた空母の両脇に展開、砲撃を止めた艦の代わりに砲撃を与えていく。
シナノを追いかけて敵艦隊の最後尾に接触した艦隊は即座に攻撃を開始した。
瞬く間に敵の包囲を抜けたガミラス艦隊は、要塞を前にエンジンを止めようとしているシナノを視界にとどめた。
「シナノ……何を……」
「後方の地球空母より退避命令!」
「退避だと……⁉︎」
「波動砲で敵艦隊を一掃するとの事です! 我々は射線上に……」
「わかった。全艦退避!」
艦底部からスラスターを噴射し、それぞれ上方に退避を始める。
エンジンを止め、静止しかけているシナノに近づくドレッドノート級2隻を横目に。
「……成功を祈る」
――第12話 「未来へ、希望と共に」――
ありがとうございます。
次回、シナノ最終回! 2205にボラー艦が出てきましたが、シナノはこのまま最後まで進みます。
どうか最終回もよろしくお願いします。