航宙空母シナノ 太陽系防衛戦線   作:朱鳥洵

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 皆さまお久しぶりです!
 そしてあけましておめでとうございます。
 すっかり忘れ去られてしまったでしょうか、シナノの第3話です。忙しすぎて書けませんでした……申し訳ありません。
 それでは、よろしくお願いします!


第3話 「守衛の翼」

「シーガルより通信。救出活動を開始した模様」

「第一次攻撃隊が帰投してきます」

「蓮、格納庫をよろしく」

「あいよ」

「単座型を第2格納庫から射出する。ガミラス空母に爆撃機発艦要請」

 三段に分かれた飛行甲板から飛び立った機体は、翼に計九つの爆弾を懸架していた。

 七色星団でヤマトを爆撃したものの一つであり、バーガーが乗っていたのと同型の機体。

 コスモタイガーとと共に編隊を組んだ爆撃隊は再び漆黒に消える。

 艦橋から飛び出した機関長は直通のエレベーターで格納庫へ向かい、帰投した機体への補給指示を行なっていた。

「雷撃機優先で下させな!」

『本艦は艦載機収容後、ドレッドノート級と共に前進し救助活動中のシーガル及び大破した艦艇の防衛活動を行います』

「ひゅー、なかなか無茶言いなさる」

 艦内放送を聞いた蓮の下手な口笛と呟きを聞いていたのか、作業員達の伝達が通信で聞こえてくる。

「ここさっさとやらねぇと人が死ぬぞ!」

「人助けだ急げ!」

 シナノ後方から着艦の様子を確認していたゲルバデス級は沙耶からの指示を受けて飛行甲板の中腹を回転させて砲塔を宇宙へとさらけ出した。

「艦載機収容率56%」

「砲雷撃戦用意」

「艦長」

 指示を出した沙耶に、席を立ち振り向いた御上が声をかける。

「なに?」

「本艦を前に出すのは、自殺行為と見られても……」

「シナノの飛行甲板を含めた船体のサイズとそこから発生できる波動防壁の出力以外に、救出部隊を砲火から守る方法はない。もちろんドレッドノート級とゲルバデス級、先に戦場にいるガミラス艦隊を突破された場合の防衛策よ」

「……了解」

『艦載機入れ終わったぞ艦長!』

 御上が席についたのを確認した沙耶は、少し前のめりで口を開く。

「総員加速Gに備え! 最大戦速!」

 ほぼ同時にエンジンを灯した艦隊は砲塔を指向させながら前進をかけた。

 救出活動を行うシーガルに対し攻撃を用意していた艦は横から飛来した無数の陽電子の束により爆散し、爆炎の盾となるように巨艦が間に入る。

 艦底のシャッターを開けると、中から数名が破口に取りつき中へと入っていく。

 破壊されたドレッドノート級を右手に、シナノは砲門の一切を左へと向けた。

 破片はシナノの周囲に展開されていた波動防壁に遮られ軌道を変える。

 衝突コースにいたものも飛行甲板から飛び立ったコスモタイガーや甲板の機銃が破壊して無害なサイズへと変わっていく。

「攻撃艦隊、敵の兵装の4割を無効化、敵総数の3割を撃破!」

 レーダーの反応は徐々に消えている。

「攻撃続行、防衛線を押し上げて!」

 後方から放たれたシナノのミサイルが敵に命中し、それにつられて艦隊も前進していった。

 敵の上空から断続的に続く空爆が更に戦力を削る。

 後退する敵艦隊。

 しかし。

「前衛のガミラス艦から通達、増速し前進する艦を確認。特攻とみられるとのことです!」

「迎撃用意!」

 黒煙を上げ、ゲルバデス級の脇をすり抜けた艦はドレッドノート級の砲撃の間を縫って防衛線を突破する。

 シナノの砲身が僅かに下に角度をつけ、青い光を溜めはじめた。

「戦術長、砲撃は敵艦の破口に当てられる?」

「……た、多分、行けると思います」

「なら破口に当てて。そうしないとシナノは沈むわ」

「は、はい」

 前を見据え、モニターに映されたターゲットマーカーの中心を僅かにずらし、そして。

「撃ち方はじめ!」

 砲口から放たれた3本の陽電子の束は、僅かに艦の中心から逸れて1本が破口から内部へ入り込んだ。

 砲撃は内部のバルブを消し飛ばし、エンジンを粉砕する。

 内部から膨張した艦は装甲の継ぎ目からエネルギーを放出しながら爆発に消えていった。

 波動防壁に当たる破片の発光を見て沙耶はため息をつく。

「航空隊より通達。敵艦の約7割を戦闘不能に持ち込むも敵は依然戦闘の意思あり」

「救出部隊より、現在までにドレッドノート級内部に生存者確認できず。シーガル一機を引き上げ、一機ぶんの人員で捜索の行き届いていないエリアを回るとのこと」

「そう……」

 通信士からの言葉に俯く。

 ――やっぱり、私じゃ救えない……。

 ――英雄の艦だって。その同型艦だって。クソくらえ。ヤマトも、銀河も。

「ふぅ……」

 そんな思考を振り払い、沙耶はモニターを見る。

「救出部隊の任務完了まで本艦はここを動かず指揮を行う。敵の数は」

「約半数、撤退行動を開始しています」

「わかった。全艦に通達、追撃はせず周辺警戒に努めよ」

 その通信を聞いた艦と機体が反転するのを見届け、沙耶は大きく息を吐く。

 

 

 ――同刻、地球。

「武蔵を修復し、新たな旅へと向かってもらいたいと考えている」

 司令部に呼び出された近藤、有賀ら武蔵の上級士官へと長官が放ったのは意外な言葉であった。

「武蔵を、ですか」

「そうだ。今は詳しい事は言えないが……」

 長官が近藤達にモニターを向けると、そこには武蔵への改装案が映し出されていた。

「この通り、武蔵には改装命令を下そうと思う」

 その姿は、波動砲栓を取り払い波動砲を修復、さらに対空砲の増設など戦艦然としたもの。

 ドームですらも装甲を付け足し、実質的に実験艦としての運用ができない姿となっていた。

「これを――」

「自分はこの改装案を飲み込めません」

「義哉さん?」

 隣に立つ有賀を見上げる柑奈に笑いかけ、彼は続ける。

「そのあり方を変えてまで、武蔵がどうしても前線に出なければならないのですか」

「あり方……?」

「今や地球には時間断層で作られた波動砲搭載艦が多数あります。それらを作るため犠牲になったのは他ならぬ武蔵だと聞きました。クルーの中にはそれを経験した者もいます」

 裾を握る柑奈に目を配り、さらに続ける。

「武蔵に波動砲を搭載してまで防衛力を増やす状況ではないと自分は考えます」

「私も賛成です。その上で、前回の旅や地球での戦闘からご提案したい事がいくつか」

 有賀に同意し一歩前へ出たのは水月。

 ウインクで柑奈に合図を出した彼女に促されて、柑奈は手に持つ端末を手渡す。

「前回の武蔵、そしてヤマトの旅路の記録を見て、経験して、長距離を航行する艦には攻撃兵器よりも探索や防御を目的とした装備が必要だと考えています」

「現場の声は大事だ。続けてほしい」

「ガトランティス艦隊に対する武蔵の地球での戦闘目的は誘導と地上の防衛でした。その際、義哉さん……有賀戦術長は協力な攻撃兵器ではなく、艦のエネルギーを介さず遠隔に展開できる波動防壁のようなものが必要と話していました。そして私自身、現在装備されているものよりも広範囲を探査可能な装置の搭載が必要と思います。これは、それらの装備の設計案と武蔵での実地試験の提案書です」

 柑奈の言葉を聞きながら提案書に目を通し、長官はそれを置く。

「検討しよう。君たちの意志も」

「ありがとうございます」

 踵を返し部屋を出るクルー達を見送った長官と近藤は、扉が閉まるとほぼ同時に息を吐く。

「長官、お聞きしてよろしいでしょうか」

「構わない。なんだね」

「長官は、なぜ武蔵の改装案を提示されたのですか」

「こうなると、思っていたからだ」

「では、長官ご自身もアレには良い印象を持っておられなかったと」

「かもしれん。拡散波動砲試験の事は忘れてはいない」

「そうでしたか……」

「君の用件はそれだけではないだろう」

 バレてましたか、とはにかむ近藤。

「ええ。シナノの如月艦長について。彼女は何か思い悩んでいるようでした。彼女にも相談できる人物が必要かと」

「それでは君がやるといい。1時間ほどでシナノから連絡があるだろう」

「自分でよろしいので」

「君があまりにもやりたそうだったのでな」

「それはありがたい限りです。それでは、失礼します」

 

 

 ――シナノ通信室。

「定時連絡です」

『お元気かい?』

「……近藤艦長……⁉︎」

 目の前に現れた姿に驚き、彼女は固まる。

「げ、元気、です……」

『それは良かった。で、連絡は?』

 促されて目的を思い出した沙耶は、落ち着いて連絡を述べていく。

『――そうか。初陣ご苦労。生存者は……』

「いませんでした」

『なら、弔ってやらないとな』

「この後に行う予定です。……あの、近藤艦長」

『ん?』

「私はこの戦い、敵の殲滅を命じられませんでした。今回撤退した敵は、私達の戦い方を学んで来ると思います。……私は、間違った指揮をしてしまったのでしょうか」

『俺は間違いだとは思わない。君の境遇を知っていれば尚更だ。だから、自信を持て。艦長が堂々としてないと不安になるだろう?』

「……はい」

『部下に助けてもらうつもりでいい。艦長ってのはそういうもんだよ』

「私は、近藤艦長のようになれるでしょうか」

『俺を目指すなよ。俺は頼りがいのない艦長だからな。目指すならそうだな……山南さんあたりだろう』

「いえ、私の目標は近藤艦長ですよ」

『それは恥ずかしいな。いつか、有賀と君が……武蔵とシナノが並ぶのを見てみたいものだ』

「いつになるでしょうか。でも……私も楽しみです。願わくば、それが戦場ではない事を」

 そして2人笑い合う。

『困ったことがあればいつでも頼ってくれ。次の連絡を待つ』

 画面の向こうの近藤に敬礼をして、通信を消した。

 ――艦長らしく、というのを考えすぎたのかもしれない。

 そんなことを思い、沙耶は通信室を後にする。

「部下に、助けてもらう……」

 沙耶が彼の言葉を本当の意味で理解するのは、まだ見ぬ未来になるだろう。

 少し肩の力を抜いた彼女は、心なしか軽い足取りで部屋へと戻るのであった。

 

 

 ――第3話 「守衛の翼」――




 ありがとうございました。
 2作品並行作業の他色々やっているので次回はいつになるのやら。
 極力早く出せるように頑張ります!
 まだあと10話もありますからね。
 それではまた次回、お会いしましょう!
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